IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノ株式会社の特許一覧

特開2022-178133膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置
<>
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図1
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図2
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図3
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図4
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図5
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図6
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図7
  • 特開-膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178133
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】膜ろ過システム、膜ろ過方法、薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20221125BHJP
   B01D 61/20 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F1/44 C
B01D61/20
B01D61/22
B01D65/06
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084698
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥平 里彩
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006JA53Z
4D006KA01
4D006KA64
4D006KA67
4D006KB13
4D006KC03
4D006KC16
4D006KC21
4D006KD04
4D006KD11
4D006KD16
4D006KD17
4D006KD24
4D006KD30
4D006KE02P
4D006KE06P
4D006KE15Q
4D006KE16P
4D006KE23Q
4D006KE30Q
4D006MA01
4D006PA01
4D006PB02
(57)【要約】
【課題】ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な膜ろ過システムを提供する。
【解決手段】メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置10と、サブろ過膜を用いてメイン膜ろ過装置10の被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置12と、メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、サブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段として圧力計26と、圧力計26により検知された、サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて所定の出力を行う出力手段として出力部14と、を備える、膜ろ過システム1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置と、
サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過装置の被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置と、
前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段と、
前記サブろ過抵抗検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて所定の出力を行う出力手段と、
を備えることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項2】
請求項1に記載の膜ろ過システムであって、
前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで通水することを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜ろ過システムであって、
前記サブろ過抵抗検知手段により検知された、前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項4】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過工程と、
サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過工程の前記被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過工程と、
前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うメイン薬品添加逆洗工程と、
前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うサブ薬品添加逆洗工程と、
前記サブ薬品添加逆洗工程において行われた薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて所定の出力を行う出力工程と、
を含むことを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項5】
請求項4に記載の膜ろ過方法あって、
前記サブ膜ろ過工程において、前記メイン膜ろ過工程よりも高いフラックスで通水することを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の膜ろ過方法であって、
前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗工程において行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御することを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項7】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置であって、
サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過装置の被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置と、
前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、
前記サブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段と、
前記サブろ過抵抗検知手段により検知された、前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする薬品添加逆洗装置。
【請求項8】
請求項7に記載の薬品添加逆洗装置であって、
前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで通水することを特徴とする薬品添加逆洗装置。
【請求項9】
メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置の制御装置であって、前記薬品添加逆洗装置は、サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過装置の被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段と、を備え、
前記サブろ過抵抗検知手段により検知された、前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段を備えることを特徴とする薬品添加逆洗装置の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の薬品添加逆洗装置の制御装置であって、
前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで通水することを特徴とする薬品添加逆洗装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除濁膜等のろ過膜を用いて被処理水の膜ろ過処理を行う膜ろ過システム、膜ろ過方法、その膜ろ過システムに用いられる薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の水需要の高まりから排水を回収再利用する要求が増えている。排水を回収再利用する排水回収において、生物処理や凝集および固液分離処理の後に、除濁膜等のろ過膜を用いて懸濁物質等を含む生物処理水や固液分離水の膜ろ過処理を行う方法がある。この方法では、被処理水の性状が変動すること等によって、生物処理や凝集および固液分離処理が不安定となり、膜ろ過処理において膜のファウリング(閉塞)が発生することがある。この場合、例えば、膜の二次側から一次側に逆洗水を通水して逆洗を行い、膜表面または膜内部の付着物を物理的に剥離する物理洗浄が行われる。逆洗では解消しない膜のファウリングを解消するために、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤やアルカリ、酸等の薬品を逆洗水に加えた薬品添加逆洗液により薬品添加逆洗を行う化学的強化逆洗(CEB:Chemical Enhanced Backwash)を行うこともある。
【0003】
被処理水の性状が変動したときに、膜ろ過処理の前段の生物処理や凝集および固液分離処理を安定して行うことは困難である。生物処理が不安定になった場合に膜ろ過処理における薬品添加逆洗による薬品回復効果が不足すると主に有機物によって膜のファウリングが発生する。凝集および固液分離処理が不安定になった場合に膜ろ過処理における薬品添加逆洗による薬品回復効果が不足すると、主に小さな粒子となった金属系凝集剤等によって膜のファウリングが発生する。膜のファウリングの要因が異なれば、薬品添加逆洗に用いる薬品の種類が異なる。
【0004】
膜のファウリングが発生すると処理水が得られにくくなり、排水回収システムを停止したり、大規模な膜の薬品洗浄や新しい膜の購入が必要となる。そのため、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な方法が求められている。
【0005】
特許文献1には、有機物を含む被処理水を膜ろ過する膜モジュールを有する膜処理装置において、膜モジュールと同様の膜材質と膜形状を有し、膜面積が1/2~1/100のミニ膜モジュールを少なくとも1系列以上併設し、ミニ膜モジュールに膜モジュールと同様の被処理水を供給可能に構成した膜処理装置が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の膜処理装置では、薬品添加逆洗ではなく、膜の薬品洗浄の条件を決定することが目的である。
【0007】
特許文献2には、有機物を含む排水を膜ろ過処理する膜ろ過手段と、膜ろ過手段の膜を、酸とアルカリのそれぞれ1種類を含む、少なくとも2種類の薬品を使用した薬品洗浄(薬品添加逆洗)を定期的に行う洗浄手段と、を備え、薬品洗浄を行った際の薬品洗浄前の膜間差圧(ΔP0)と薬品洗浄後の膜間差圧(ΔP1)から算出したΔPa(=ΔP0-ΔP1)に対し、予め設定した基準膜間差圧ΔPxを参照して、次回の薬品洗浄において前回と同じ薬品を使用するか否かを選択する排水回収システムが記載されている。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の排水回収システムでは、本装置における膜間差圧に基づいて次回の薬品添加逆洗の条件を選択しているため、早期に最適な薬品添加逆洗の条件を決定することができない場合がある。特許文献2のように本装置における薬品洗浄前後の膜間差圧により薬品添加逆洗の薬品条件を決定することは、早期な薬品選定ができないことに加え、洗浄のために本装置を停止する必要がある。さらに、本装置に組み込まれている膜モジュールの容積が大きいため薬品使用量が多くなり排水量が増えるデメリットもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3656908号公報
【特許文献2】特許第6693804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な方法膜ろ過システム、膜ろ過方法、その膜ろ過システムに用いられる薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置と、サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過装置の前記被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段と、前記サブろ過抵抗検知手段により検知された、前記サブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて所定の出力を行う出力手段と、を備える、膜ろ過システムである。
【0012】
前記膜ろ過システムにおける前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで通水することが好ましい。
【0013】
前記膜ろ過システムにおいて、前記サブろ過抵抗検知手段により検知された前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0014】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過工程と、サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過工程の前記被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過工程と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うメイン薬品添加逆洗工程と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うサブ薬品添加逆洗工程と、前記サブ薬品添加逆洗工程において行われた薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて所定の出力を行う出力工程と、を含む、膜ろ過方法である。
【0015】
前記膜ろ過方法における前記サブ膜ろ過工程において、前記メイン膜ろ過工程よりも高いフラックスで通水することが好ましい。
【0016】
前記膜ろ過方法において、前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗工程において行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御することが好ましい。
【0017】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置であって、サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過装置の被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置と、前記メインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段と、前記サブろ過抵抗検知手段により検知された、前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段と、を備える、薬品添加逆洗装置である。
【0018】
前記薬品添加逆洗装置における前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで通水することが好ましい。
【0019】
本発明は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗装置の制御装置であって、前記薬品添加逆洗装置は、サブろ過膜を用いて前記メイン膜ろ過装置の被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置と、前記サブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段と、前記サブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段と、を備え、前記サブろ過抵抗検知手段により検知された、前記薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、前記メイン薬品添加逆洗手段により行われる前記メインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する制御手段を備える、薬品添加逆洗装置の制御装置である。
【0020】
前記薬品添加逆洗装置の制御装置における前記サブ膜ろ過装置において、前記メイン膜ろ過装置よりも高いフラックスで通水することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能な膜ろ過システム、膜ろ過方法、その膜ろ過システムに用いられる薬品添加逆洗装置、および薬品添加逆洗装置の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る膜ろ過方法の一例を示すフローチャートである。
図3】膜ろ過装置における逆洗を行った際のろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)の一例を示すグラフである。
図4】膜ろ過装置における逆洗、薬品添加逆洗を行った際のろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)の一例を示すグラフである。
図5】実施例1のメイン膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1を実施したときのろ過日数に対する膜間差圧(MPa)を示すグラフである。
図6】実施例1のサブ膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1を実施したときのろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)を示すグラフである。
図7】実施例2のメイン膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1+洗浄条件2を実施したときのろ過日数に対する膜間差圧(MPa)を示すグラフである。
図8】実施例2のサブ膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1+洗浄条件2を実施したときのろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0025】
膜ろ過システム1は、メインろ過膜を用いて被処理水をろ過するメイン膜ろ過装置10と、サブろ過膜を用いてメイン膜ろ過装置10の被処理水から分岐された被処理水をろ過するサブ膜ろ過装置12と、メイン膜ろ過装置10のメインろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのメイン薬品添加逆洗手段としてメイン逆洗配管32と、サブ膜ろ過装置12のサブろ過膜の薬品添加逆洗を行うためのサブ薬品添加逆洗手段としてサブ逆洗配管42と、サブ膜ろ過装置12のサブろ過膜のろ過抵抗値を検知するためのサブろ過抵抗検知手段として流量計25および圧力計26と、流量計25および圧力計26により検知されたサブ薬品添加逆洗手段により行われた薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて所定の出力を行う出力手段として出力部14と、を備える。メイン逆洗配管32は、メイン膜ろ過装置10のメインろ過膜の逆洗を行うためのメイン逆洗手段として、サブ逆洗配管42は、サブ膜ろ過装置12のサブろ過膜の逆洗を行うためのサブ逆洗手段として、機能してもよい。
【0026】
図1の膜ろ過システム1において、メイン膜ろ過装置10の被処理水入口には、メイン被処理水配管28が接続され、メイン処理水出口には、メイン処理水配管30が接続され、メイン逆洗液入口には、メイン逆洗配管32が接続されている。サブ膜ろ過装置12の被処理水入口には、メイン被処理水配管28から分岐したサブ被処理水配管38が接続され、サブ処理水出口には、サブ処理水配管40が接続され、サブ逆洗液入口には、サブ逆洗配管42が接続されている。第1薬品タンクの一例である酸タンク18の薬品出口とメイン逆洗配管32とは、第1薬品配管である酸配管34によってポンプ22を介して接続されている。第2薬品タンクの一例である酸化剤タンク20の薬品出口とメイン逆洗配管32とは、第2薬品配管である酸化剤配管36によってポンプ24を介して接続されている。酸配管34から分岐した酸配管44がサブ逆洗配管42に接続され、酸化剤配管36から分岐した酸化剤配管46がサブ逆洗配管42に接続されている。サブ被処理水配管38には、流量計25および圧力計26が設置されている。圧力計26には、出力部14が設置されている。
【0027】
膜ろ過システム1は、制御手段として制御装置16を備えてもよい。制御装置16は、出力部14、ポンプ22、ポンプ24、流量計25、圧力計26等と、有線または無線の電気的接続等によって通信可能に接続されていてもよい。膜ろ過システム1は、さらに通信手段として通信装置を備えてもよい。通信装置は制御装置16に接続されており、例えば、インターネットを経由してサーバに接続される。サーバには少なくとも記録部または演算部が設けられている。記録部には、例えば、サブろ過抵抗検知手段によって測定されたデータが保管される。演算部では、サブろ過抵抗のデータを用いた演算が行われ、警報や薬品添加逆洗の実行、薬品洗浄の実行等の出力が行われてもよいし、記録部に保管されたデータが合わせて用いられて、薬品添加逆洗や薬品洗浄の実施履歴、使用薬品量および薬品コスト等が計算され、保管または出力されてもよい。出力は再びインターネットを経由して制御装置16に送られ、出力部14に警報を出したり、薬品添加逆洗や薬品洗浄が実行されたり、洗浄条件の変更がなされてもよい。
【0028】
本実施形態に係る膜ろ過方法および膜ろ過システム1の動作について説明する。
【0029】
処理対象の被処理水は、メイン被処理水配管28を通してメイン膜ろ過装置10に送液され、メイン膜ろ過装置10において、メインろ過膜を用いて被処理水の膜ろ過処理が行われる(メイン膜ろ過工程)。得られたメイン処理水は、メイン処理水配管30を通して排出される。
【0030】
膜ろ過システム1では、メイン膜ろ過装置10を連続運転する際に例えば定期的にメイン膜ろ過装置10の洗浄が行われる。メインろ過膜の洗浄は、例えばメイン処理水の少なくとも一部がメイン逆洗水としてメイン逆洗配管32を通してメイン膜ろ過装置10の2次側から1次側に逆流されて行われる(メイン逆洗工程)。メイン逆洗排水は、メイン膜ろ過装置10の1次側から排出される。
【0031】
そしてこのメイン逆洗を行ってもメインろ過膜のファウリングが解消しない場合には、薬品をメイン逆洗水に加えたメイン薬品添加逆洗液により薬品添加逆洗が行われる(メイン薬品添加逆洗工程)。メイン薬品添加逆洗工程では、例えば、酸タンク18からポンプ22により酸配管34を通して酸がメイン逆洗配管32においてメイン逆洗水に供給され、酸洗浄が行われるか、または、酸化剤タンク20からポンプ24により酸化剤配管36を通して酸化剤がメイン逆洗配管32においてメイン逆洗水に供給され、酸化剤洗浄が行われる。酸化剤に加えてアルカリが用いられてもよい。メイン薬品添加逆洗排液は、メイン膜ろ過装置10の1次側から排出される。メイン薬品添加逆洗工程において、メインろ過膜をメイン薬品添加逆洗液に所定の時間、浸漬する浸漬工程を行ってもよい。また、メイン薬品添加逆洗工程において、メイン膜ろ過装置10の1次側から排出されたメイン薬品添加逆洗排液をメイン膜ろ過装置10の2次側に循環させてもよい。
【0032】
上記の通り、排水回収等における膜ろ過処理において膜のファウリング(閉塞)が発生する場合がある。膜ろ過処理の膜のファウリング要因としては、主に、前段の生物処理工程に起因する有機物や、前段の凝集および固液分離処理工程に起因する無機凝集剤由来の金属粒子の2つである。被処理水の性状が変動したときに、膜ろ過処理の前段の生物処理や凝集および固液分離処理が不安定となることが主な要因で、メイン膜ろ過装置10に流入する有機物や金属粒子等の量が変化するため、ファウリングの主要因も変化してしまう。膜のファウリングの主要因が異なれば、薬品添加逆洗に用いる薬品の種類が異なってくる。
【0033】
膜ろ過システム1では、メイン膜ろ過装置10によるメイン膜ろ過工程とは別に、サブ逆洗手段およびサブ薬品添加逆洗手段を備えたサブ膜ろ過装置12によるサブ膜ろ過工程を設け、サブろ過抵抗検知手段である流量計25および圧力計26により検知された、サブ膜ろ過工程におけるろ過抵抗値に基づいてサブ膜ろ過装置12における薬品添加逆洗の状況に応じた出力、例えば薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値の差があらかじめ定めた閾値を超えた場合に警報等の出力を出す。これによって、被処理水の性状が変動しても、サブ膜ろ過装置12において早期に最適な洗浄条件を決定して、メイン膜ろ過装置10においてその洗浄条件で薬品添加逆洗を行って膜のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能となる。
【0034】
メイン膜ろ過装置10とは別にサブ膜ろ過装置12を設けることによって、メイン膜ろ過装置10を停止しなくても薬品添加逆洗の最適な洗浄条件を決定することができ、メイン膜ろ過装置10の稼働時間を最大限にすることができる。
【0035】
サブ膜ろ過装置12を用いた薬品添加逆洗の最適な洗浄条件を決定する方法の例を以下に説明する。
【0036】
メイン被処理水配管28から分岐された被処理水は、サブ被処理水配管38を通してサブ膜ろ過装置12に送液され、サブ膜ろ過装置12において、サブろ過膜を用いて被処理水の膜ろ過処理が行われる(サブ膜ろ過工程)。得られたサブ処理水は、サブ処理水配管40を通して排出される。
【0037】
このように膜ろ過システム1では、メイン膜ろ過装置10を連続運転する際にメイン被処理水配管28から分岐された被処理水は、サブ膜ろ過装置12にも通水される。そして、サブ膜ろ過装置12においても例えば定期的にサブろ過膜の洗浄が行われる。サブろ過膜の洗浄は、メインろ過膜と同様に、例えばサブ処理水の少なくとも一部がサブ逆洗水としてサブ逆洗配管42を通してサブ膜ろ過装置12の2次側から1次側に逆流されて行われる(サブ逆洗工程)。サブ逆洗排水は、サブ膜ろ過装置12の1次側から排出される。サブ逆洗工程は、定期的に行われてもよいし、流量計25および圧力計26により検知されたろ過抵抗値に基づいて、例えば流量計25および圧力計26により検知されたろ過抵抗値が所定の逆洗基準値を超えた場合に行われてもよい。
【0038】
そしてこのサブ逆洗を行ってもサブろ過膜のファウリングが解消しない場合には、薬品をサブ逆洗水に加えたサブ薬品添加逆洗液により薬品添加逆洗が行われる(サブ薬品添加逆洗工程)。サブ薬品添加逆洗工程では、例えば、酸タンク18からポンプ22により酸配管34、酸配管44を通して酸がサブ逆洗配管42においてサブ逆洗水に供給され、酸洗浄が行われるか、または、酸化剤タンク20からポンプ24により酸化剤配管36、酸化剤配管46を通して酸化剤がサブ逆洗配管42においてサブ逆洗水に供給され、酸化剤洗浄が行われる。酸化剤に加えてアルカリが用いられてもよい。サブ薬品添加逆洗排液は、サブ膜ろ過装置12の1次側から排出される。サブ薬品添加逆洗工程において、サブろ過膜をサブ薬品添加逆洗液に所定の時間、浸漬する浸漬工程を行ってもよい。また、サブ薬品添加逆洗工程において、サブ膜ろ過装置12の1次側から排出されたサブ薬品添加逆洗排液をサブ膜ろ過装置12の2次側に循環させてもよい。
【0039】
なお、メイン逆洗工程において、メイン逆洗配管32がメイン逆洗手段として機能し、サブ逆洗工程において、サブ逆洗配管42がサブ逆洗手段として機能することになる。メイン薬品添加逆洗工程において、酸タンク18、ポンプ22、酸配管34等が第1薬品供給手段、例えば酸供給手段として、酸化剤タンク20、ポンプ24、酸化剤配管36等が第2薬品供給手段、例えば酸化剤供給手段として機能し、酸供給手段および酸化剤供給手段に加えてメイン逆洗配管32がメイン薬品添加逆洗手段として機能することになる。サブ薬品添加逆洗工程において、酸タンク18、ポンプ22、酸配管34、酸配管44等が第1薬品供給手段、例えば酸供給手段として、酸化剤タンク20、ポンプ24、酸化剤配管36、酸化剤配管46等が第2薬品供給手段、例えば酸化剤供給手段として機能し、酸供給手段および酸化剤供給手段に加えてサブ逆洗配管42がサブ薬品添加逆洗手段として機能することになる。
【0040】
ここで、サブ薬品添加逆洗工程の開始前および終了後に被処理水をサブ膜ろ過装置12に通水し、サブろ過抵抗検知手段である流量計25および圧力計26によってサブ薬品添加逆洗工程の開始前および終了後の流量および圧力からろ過抵抗値が測定される。流量計25および圧力計26により検知された流量の低下や圧力の上昇から算出されたろ過抵抗値に基づいて、例えば、サブ薬品添加逆洗を行った際の薬品添加逆洗前のろ過抵抗値(R)と薬品添加逆洗後のろ過抵抗値(R)から算出したΔR(R-R)が例えばあらかじめ定めた閾値であるCEB基準値を超えた場合に警報等の所定の出力が行われる(出力工程)。被処理水の水温が変動し、ろ過抵抗値の温度依存性を排除したい場合には、さらにサブ被処理水配管38に温度計を設置し、測定した被処理水の水温に基づく粘性等を考慮してサブろ過膜のろ過抵抗値を算出することが望ましい。
【0041】
これによって、サブ膜ろ過装置12におけるサブろ過膜のファウリングの発生を早期に検知することができる。サブろ過膜のファウリングの発生を検知した場合にサブ膜ろ過装置12において最適な薬品添加逆洗の条件を決定し、メイン膜ろ過装置10においてサブ膜ろ過装置12で決定した最適な洗浄条件で薬品添加逆洗を行えば、被処理水の性状が変動しても膜のファウリングを抑制することができ、メイン膜ろ過装置10の安定運転が可能となる。あらかじめサブ膜ろ過装置12において最適な薬品添加逆洗の条件を決定することによって、メイン膜ろ過装置10を運転を停止しなくてもよく、メイン膜ろ過工程を継続してもよい。これによって、メイン膜ろ過装置10の稼働時間を最大限にすることができる。
【0042】
サブ膜ろ過装置12におけるサブろ過膜は、例えば、メイン膜ろ過装置10におけるメインろ過膜と同様の膜材質と膜形状と膜孔径とを有し、メインろ過膜よりも膜面積が小さい膜が用いられる。メイン膜ろ過装置10よりも小型のサブ膜ろ過装置12で薬品添加逆洗の最適な洗浄条件を決定すれば、最適な薬品添加逆洗の条件の決定に要する薬液消費量を最小限に抑制することができる。
【0043】
サブ膜ろ過装置12(サブ膜ろ過工程)において、メイン膜ろ過装置10(メイン膜ろ過工程)よりも高いフラックスで通水することが好ましい。これによって、サブ膜ろ過装置12におけるサブろ過膜のファウリングの発生をより早期に検知することができる。サブろ過膜のファウリングの発生を検知した場合にサブ膜ろ過装置12において早期に最適な薬品添加逆洗の条件を決定し、メイン膜ろ過装置10においてサブ膜ろ過装置12で決定した最適な洗浄条件で薬品添加逆洗を行えば、被処理水の性状が変動しても膜のファウリングを抑制することができ、メイン膜ろ過装置10の安定運転が可能となる。
【0044】
特許文献1に記載の膜処理装置の実施例では、本装置とミニ膜モジュールにおいて同じフラックスで通水し、ミニ膜モジュールにおける膜間差圧が150kPaを超えてから膜の薬品洗浄を行っているため、ファウリングの発生をより早期に検知することが困難であり、被処理水の性状の変動に早期に対応することが困難である。
【0045】
サブ膜ろ過装置12(サブ膜ろ過工程)におけるフラックスは、メイン膜ろ過装置10(メイン膜ろ過工程)におけるフラックスの例えば2倍~10倍であり、4倍~6倍であることが好ましい。サブ膜ろ過装置12におけるフラックスがメイン膜ろ過装置10におけるフラックスの2倍未満であると、サブろ過膜のファウリングの発生をより早期に検知することできない場合があり、10倍を超えると、ファウリング発生の評価を過剰にしてしまい、予測精度が下がるおそれがある。
【0046】
また、例えば、圧力計26により検知された、サブ膜ろ過装置12におけるサブ逆洗の前後のろ過抵抗値やサブ薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、メイン膜ろ過装置10において行われるメインろ過膜のメイン逆洗の条件やメイン薬品添加逆洗の条件を制御してもよい。例えば、サブ膜ろ過装置12における逆洗直後の抵抗上昇や薬品添加逆洗直後の抵抗上昇の傾向から、メイン膜ろ過工程の逆洗の条件、例えば、メイン逆洗の頻度や、薬品添加逆洗の条件、例えば、メイン薬品添加逆洗の頻度、メイン薬品添加逆洗で用いるメイン薬品添加逆洗液の薬品濃度、メイン薬品添加逆洗で用いる薬品の種類等を制御すればよい。これらの制御は手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。
【0047】
より具体的な薬品添加逆洗の条件を決定する方法の一例について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0048】
サブ膜ろ過装置12において、メイン膜ろ過装置10のメイン被処理水配管28から分岐された被処理水について所定の時間、膜ろ過処理が行われた後、例えば定期的にサブ逆洗が行われ、サブ逆洗を行ってもサブろ過膜のファウリングが解消しない場合には、薬品添加逆洗が行われる。薬品添加逆洗が行われた際の薬品添加逆洗前のろ過抵抗値(R)が測定され(S10)、例えば洗浄条件1(例えば、薬品として酸化剤が用いられる)で薬品添加逆洗が行われた(S12)後、薬品添加逆洗後のろ過抵抗値(R)が測定され、例えば制御装置16によって薬品添加逆洗前のろ過抵抗値(R)と薬品添加逆洗後のろ過抵抗値(R)の差であるΔR(R-R)が算出される(S14)。制御装置16は、算出されたΔRに対し、あらかじめ設定した基準ろ過抵抗上昇度であるCEB薬品条件変更基準ΔRrefを参照する。
【0049】
ΔR≦CEB薬品条件変更基準ΔRrefとなった場合には、一つめに評価された洗浄条件1によってろ過抵抗が十分に低下した(すなわち、薬品添加逆洗は十分である)と判断されるため、制御装置16によってメイン膜ろ過装置10の薬品添加逆洗を洗浄条件1で行うように指示が出され、メイン膜ろ過装置10において洗浄条件1で薬品添加逆洗が行われる(S20)。この場合、サブ膜ろ過装置12における二つめの洗浄条件2による薬品添加逆洗は行われずに、終了してもよい。
【0050】
ΔR>CEB薬品条件変更基準ΔRrefとなった場合には、次の薬品添加逆洗において前回と異なる薬品条件である洗浄条件2が使用される。例えば洗浄条件2(例えば、薬品として酸が用いられる)で薬品添加逆洗が行われた(S16)後、薬品添加逆洗後のろ過抵抗値(R)が測定され、例えば制御装置16によって薬品添加逆洗前のろ過抵抗値(R)と薬品添加逆洗後のろ過抵抗値(R)の差であるΔR(R-R)が算出される(S18)。例えば制御装置16は、算出されたΔRに対し、CEB薬品条件変更基準ΔRrefを参照する。
【0051】
ΔR≦CEB薬品条件変更基準ΔRrefとなった場合には、二つめに評価される洗浄条件2によってろ過抵抗が十分に低下した(すなわち、薬品添加逆洗は十分である)と判断されるため、制御装置16によってメイン膜ろ過装置10の薬品添加逆洗を洗浄条件2で行うように指示が出され、メイン膜ろ過装置10において洗浄条件2で薬品添加逆洗が行われる(S22)。この場合、サブ膜ろ過装置12における次の洗浄条件による薬品添加逆洗は行われずに、終了してもよい。
【0052】
ΔR>CEB薬品条件変更基準ΔRrefとなった場合には、次の薬品添加逆洗において前回と異なる薬品条件である洗浄条件が使用され、以降、ΔR≦CEB薬品条件変更基準ΔRrefとなるまで(Nは1以上の整数)、S10からS14と同様のフローで継続して行われる。
【0053】
洗浄条件2以降では、前回と異なる洗浄条件を用いればよく、例えば、洗浄条件1とは異なる薬品を使用してもよいし、洗浄条件1と同じ薬品を使用して異なる薬品濃度としたり、異なる洗浄濃度、洗浄時間としてもよい。
【0054】
ΔR≦CEB薬品条件変更基準ΔRrefとなった場合に、制御装置16によってメイン膜ろ過装置10の薬品添加逆洗の洗浄条件が制御されてもよい。例えば、制御装置16によってポンプ22やポンプ24が制御されてもよい。
【0055】
被処理水の性状から無機物に起因するファウリングよりも有機物に起因するファウリングがより優位に働くと考えられる場合には、例えば洗浄条件1において薬品添加逆洗の薬品として有機物の除去に効果がある酸化剤+アルカリを用いる条件が先に評価され、そのあとの洗浄条件2において薬品添加逆洗の薬品として無機物の除去に効果がある酸を用いる条件が評価される。被処理水の性状から有機物に起因するファウリングよりも無機物に起因するファウリングがより優位に働くと考えられる場合には、例えば洗浄条件1において薬品添加逆洗の薬品として無機物の除去に効果がある酸を用いる条件が先に評価され、そのあとの洗浄条件2において薬品添加逆洗の薬品として有機物の除去に効果がある酸化剤+アルカリを用いる条件が評価される。
【0056】
加えて、サブ膜ろ過装置12の薬品添加逆洗のろ過抵抗値から、ろ過抵抗上昇度(ΔRcake,ΔRbackwash,ΔRCEB)を算出し、膜閉塞挙動から考えられる警報や、運転改善提案を出力部14に出力してもよい。図3に、膜ろ過装置における逆洗を行った際のろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)の一例を示す。図4に、膜ろ過装置における逆洗、薬品添加逆洗を行った際のろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)の一例を示すグラフである。
【0057】
ろ過抵抗上昇度ΔRcakeは、膜ろ過工程1回で上昇するろ過抵抗であり、膜面に付着したケーキ等によって発生する抵抗の傾きである。ケーキ抵抗は、逆洗で回復する可逆的な膜閉塞である。ろ過抵抗上昇度ΔRbackwashは、逆洗では回復するのが困難なろ過抵抗の傾きである。ろ過抵抗上昇度ΔRCEBは、薬品添加逆洗でも回復するのが困難なろ過抵抗であり、不可逆的な膜閉塞である。
【0058】
例えば、ΔRcakeが通常よりも高くなった場合には、例えば出力部14に警報を出し、運転条件の改善提案等を提示する。警報の内容は、例えば「ケーキ抵抗異常」等が挙げられる。ケーキ抵抗異常となるケースは、膜ろ過原水の懸濁物質濃度が上昇していることが考えられるため、運転条件の改善提案内容は、例えば「前段処理水濁度を確認し、運転調整する」、「ろ過時間を半分にする」等が挙げられる。
【0059】
例えば、ΔRbackwashが通常よりも高くなった場合には、例えば出力部14に警報を出し、運転条件の改善提案等を提示する。警報の内容は、例えば「逆洗回復性異常」等が挙げられる。逆洗回復性異常となるケースは、前段の有機物処理(例えば、生物処理や凝集沈殿等)が不良となっていることが考えられるため、運転条件の改善提案内容は、例えば「前段の凝集処理の最適化(凝集剤の添加量の再検討、pHの変更等)」等が挙げられる。
【0060】
例えば、ΔRCEBが通常よりも高くなった場合には、例えば出力部14に警報を出し、運転条件の改善提案等を提示する。警報の内容は、例えば「薬品添加逆洗回復異常」等が挙げられる。運転条件の改善提案内容は、例えば「CEB薬液種変更」、「CEB濃度増加」等が挙げられる。
【0061】
制御装置16は、サブ膜ろ過装置12において被処理水を通水した際の圧力と流量等を測定したデータを記憶し、逆洗直後のろ過抵抗上昇や薬品添加逆洗直後のろ過抵抗上昇のデータを算出し、これに基づいてメイン膜ろ過装置10やサブ膜ろ過装置12の薬品添加逆洗の条件(例えば、薬品添加逆洗の頻度、薬品の種類、薬品の濃度、薬品添加逆洗の時間等)を自動で制御してもよい。
【0062】
メイン膜ろ過装置10のメイン被処理水配管28に圧力計を設置し、逆洗の前後、薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値を測定し、膜間差圧上昇をクロスチェックとして確認してもよい。
【0063】
出力部14における出力としては、サブ膜ろ過装置12における薬品添加逆洗の状況を示す表示や音等の視聴覚的に認知可能な警報の他に、薬品添加逆洗の状況に対応するための対応方法、改善提案等が表示されてもよい。出力部14は、例えば、情報を表示、出力することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示手段である表示装置や、スピーカ等の音声出力手段である音声出力装置等が挙げられる。例えば、警報の方法としては、制御盤のタッチパネル上に表示する、インターネット通信を介して運転員に通知する、監視室等に通知する等が挙げられる。
【0064】
出力部14は、薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値の差が例えばあらかじめ定めた閾値を超えた場合に警報等の出力を出してもよい。警報の閾値は、1つに予め決めてもよいし、段階的、比例的に変化させてもよい。
【0065】
制御装置16は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。制御装置16は、サブろ過抵抗検知手段により検知された、サブ膜ろ過装置12において行われた薬品添加逆洗の前後のろ過抵抗値に基づいて、メイン膜ろ過装置10において行われるメインろ過膜の薬品添加逆洗の条件を制御する機能を有する。制御装置16は、例えば、ポンプ22およびポンプ24のオン/オフや流量等を調整して、メイン薬品添加逆洗液への薬品の添加量を制御する機能を有する。
【0066】
処理対象となる被処理水は、例えば懸濁物、有機物、金属粒子等の無機物等を含む水であり、特に制限はないが、例えば、半導体製造工場、食品工場等から排出される有機物を含む排水が生物処理された(生物処理工程)生物処理水、凝集および固液分離処理(凝集/固液分離処理工程)された固液分離処理水、生物処理された後、その生物処理水について凝集および固液分離処理された固液分離処理水等が挙げられる。生物処理工程、凝集/固液分離処理工程の前後段に他の工程が入って処理された水であってもよい。
【0067】
生物処理は、微生物を用いて、被処理水の処理を行うものであればよく、特に制限はない。凝集および固液分離処理は、ポリ塩化アルミニウム等の無機凝集剤や高分子凝集剤等の凝集剤を用いて、被処理水の凝集処理および固液分離処置を行うものであればよく、特に制限はない。
【0068】
被処理水の性状が、TOCで示される有機物の含有量が1~50mg/Lの範囲で変動し、またはICP分析法で示される鉄、アルミニウム、マンガン等の金属粒子および溶存金属等の無機物の含有量がそれぞれ0.01~20mg/Lの範囲で変動する水である場合に、本実施形態に係る膜ろ過システムおよび膜ろ過方法が好適に適用される。
【0069】
メインろ過膜、サブろ過膜は、例えば、限外ろ過膜(UF膜)または精密ろ過膜(MF膜)等の除濁膜である。膜の形状は、例えば、中空糸膜等である。
【0070】
薬品添加逆洗に用いる酸としては、特に制限はないが、塩酸、硫酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸が挙げられ、薬品添加逆洗のときの回復性等の点から、シュウ酸、クエン酸等の有機酸を用いることが好ましい。
【0071】
酸洗浄において、酸を添加した薬品添加逆洗液のpHが1~3の範囲になるように酸を添加することが好ましく、費用対効果等の観点からは、pH2~3の範囲になるように酸を添加することがより好ましい。
【0072】
薬品添加逆洗に用いる酸化剤としては、特に制限はないが、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤等が挙げられる。
【0073】
薬品添加逆洗に用いるアルカリとしては、特に制限はないが、比較的安価な水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等を用いることが好ましい。
【0074】
酸化剤+アルカリを用いる洗浄において、アルカリを添加した薬品添加逆洗液のpHが10~13の範囲になるようにアルカリを添加することが好ましく、費用対効果等の観点からは、pH11~12の範囲になるようにアルカリを添加することがより好ましい。
【0075】
薬品添加逆洗において、必要に応じて酸、アルカリ、酸化剤以外の他の薬品、例えば、界面活性剤等の膜洗浄剤等を使用してもよい。膜洗浄剤としては、例えば、ECOLABO社製のULTRASILシリーズ等が挙げられる。
【実施例0076】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>
図1に示す膜ろ過システム1を用い、凝集および固液分離処理水を表1に示す条件で通水し、逆洗および薬品添加逆洗を行った。メイン膜ろ過装置では、フラックス:1.2(m/d)で通水し、サブ膜ろ過装置では、フラックス:7(m/d)で通水した(メイン膜ろ過装置のフラックスの5.83倍)。
【0078】
【表1】
【0079】
薬品添加逆洗の洗浄条件としては、洗浄条件1:酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム+アルカリである水酸化ナトリウム(有機物に起因するファウリングに有効)、洗浄条件2:酸であるシュウ酸(無機物に起因するファウリングに有効)が考えられる。
【0080】
[洗浄条件1:次亜塩素酸ナトリウム+水酸化ナトリウムの場合]
洗浄条件1では、薬品添加逆洗液として次亜塩素酸ナトリウム+水酸化ナトリウムの水溶液(次亜塩素酸ナトリウム濃度:900mg/L、水酸化ナトリウムの濃度:280mg/L)を用いた。図5に、メイン膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1を実施したときのろ過日数に対する膜間差圧(MPa)を示す。図6に、実施例1のサブ膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1を実施したときのろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)を示す。
【0081】
図6に示すように、サブ膜ろ過装置のろ過抵抗値の測定結果より、次亜塩素酸ナトリウム+水酸化ナトリウムの薬品添加逆洗ではろ過抵抗上昇度ΔRCEBが上昇しており、薬品添加逆洗による洗浄が不十分であると判断された。
【0082】
図5に示すように、洗浄条件1で薬品添加逆洗を行ったメイン膜ろ過装置のろ過抵抗値の測定結果でも、膜差圧の上昇が確認され、薬品添加逆洗による洗浄効果が足りないと確認された。
【0083】
[洗浄条件1:次亜塩素酸ナトリウム+水酸化ナトリウム+洗浄条件2:シュウ酸の場合]
そこで、有機物に起因するファウリングに有効な次亜塩素酸ナトリウムを用いる洗浄条件1に加えて、無機物に起因するファウリングに有効なシュウ酸を用いる洗浄条件2による薬品添加逆洗も実施した。
【0084】
洗浄条件2では、薬品添加逆洗液としてシュウ酸の水溶液(シュウ酸の濃度:0.2重量%)を用いた。図7に、実施例2のメイン膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1+洗浄条件2を実施したときのろ過日数に対する膜間差圧(MPa)を示す。図8に、実施例2のサブ膜ろ過装置において薬品添加逆洗で洗浄条件1+洗浄条件2を実施したときのろ過量(m/m)に対するろ過抵抗(/m)を示す。
【0085】
図8に示すように、サブ膜ろ過装置のろ過抵抗値の測定結果より、ろ過抵抗上昇度ΔRCEBの上昇が抑えられていることが確認されたため、洗浄が十分であると判断された。
【0086】
図7に示すように、洗浄条件1+洗浄条件2で薬品添加逆洗を行ったメイン膜ろ過装置のろ過抵抗値の上昇はほとんど確認されず、安定運転することができていた。
【0087】
サブ膜ろ過装置のろ過抵抗値の測定結果に基づいてメイン膜ろ過装置において洗浄条件1および洗浄条件2を併用することによって、膜のファウリングを抑制し、6ヵ月間安定運転することができた。
【0088】
このように、ろ過膜を用いる膜ろ過処理において、被処理水の性状が変動しても、早期に最適な洗浄条件を決定して薬品添加逆洗を行って膜のファウリングを抑制することができ、安定運転が可能となった。
【符号の説明】
【0089】
1 膜ろ過システム、10 メイン膜ろ過装置、12 サブ膜ろ過装置、14 出力部、16 制御装置、18 酸タンク、20 酸化剤タンク、22,24 ポンプ、25 流量計、26 圧力計、28 メイン被処理水配管、30 メイン処理水配管、32 メイン逆洗配管、34,44 酸配管、36,46 酸化剤配管、38 サブ被処理水配管、40 サブ処理水配管、42 サブ逆洗配管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8