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特開2022-178171ハードコーティング組成物およびそれを用いたハードコートシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178171
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ハードコーティング組成物およびそれを用いたハードコートシート
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20221125BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20221125BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C09D175/14
C08F290/06
C09D4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084753
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】高崎 雅登
(72)【発明者】
【氏名】福永 泰隆
【テーマコード(参考)】
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J038FA111
4J038FA281
4J038GA01
4J038KA04
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA09
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB07
4J038PB08
4J038PC08
4J127AA03
4J127BA051
4J127BB041
4J127BB051
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC051
4J127BC121
4J127BD421
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF131
4J127BF13X
4J127BF13Y
4J127BF601
4J127BF60X
4J127BG131
4J127BG13Z
4J127CB151
4J127CC031
4J127CC111
4J127EA11
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】 ポリカーボネート基材との屈折率差が少なく、干渉ムラを抑制し、耐擦傷性に優れたハードコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】 上記課題は、下記(A)~(C)成分を含むハードコーティング組成物であって、
(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー
(B)芳香環を2つ含み、液体での屈折率が1.55以上の(メタ)アクリレートモノマー
(C)光重合開始剤
前記(A)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~10質量部である、前記ハードコーティング組成物によって解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)成分を含むハードコーティング組成物であって、
(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー
(B)芳香環を2つ含み、液体での屈折率が1.55以上の(メタ)アクリレートモノマー
(C)光重合開始剤
前記(A)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~10質量部である、前記ハードコーティング組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、エトキシ化-オルト-フェニルフェノールアクリレートおよび3―フェノキシベンジルアクリレートの少なくとも一つである、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーである、請求項1または2に記載のハードコーティング組成物。
【請求項4】
硬化後の屈折率が25℃において1.54以上1.60以下である、請求項1~3のいずれかに記載のハードコーティング組成物。
【請求項5】
ポリカーボネート基材の片面もしくは両面に、請求項1~4のいずれかに記載のハードコーティング組成物が硬化してなるハードコート層を有するハードコートシート。
【請求項6】
前記ハードコート層の厚さが1~50μmである、請求項5に記載のハードコートシート。
【請求項7】
前記ポリカーボネート基材の厚さが0.5~4mmである、請求項5または6に記載のハードコートシート。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかに記載のハードコートシートを含む車載用表示装置。
【請求項9】
請求項5~7のいずれかに記載のハードコートシートを含むタッチパネル全面保護板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコーティング組成物およびそれを用いたハードコートシートに関するものであり、更に詳しくは干渉ムラを抑えたハードコーティング組成物およびそれを用いたハードコートシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、加工の自由度、軽量性等に優れていることからガラスに代わる構造材料として広く使用されており、電気・電子・OA機器等のメーターカバーや液晶ディスプレーカバー、計器カバー等の自動車用途、採光用屋根材や窓ガラスのような建材用途等に広く用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂製品は最表面の耐擦傷性が十分でない為、摩擦や接触によって傷が生じやすいという問題があった。そのため、ポリカーボネート樹脂基材の表面にウレタンアクリレートやアクリレートモノマーをベースにしたハードコートを施して表面性能を向上させることで改善する技術がある。しかしながら、ポリカーボネート基材とハードコートの屈折率差が大きいと干渉ムラが発生して視認性が悪くなるといった問題がある。以上のことから、ハードコート材の組成をポリカーボネート基材の屈折率と合わせこむ必要があった。
【0003】
例えば、特許文献1には重合性シリカ微粒子とアクリル系化合物を含有するコーティング剤を使用して、耐擦傷性、光学的干渉縞を生じないハードコート膜を有するポリカーボネートフィルムが開示されている。しかしながら、上記コーティング剤はシリカ微粒子を含有しているため、硬い材料との摩耗を繰り返すと最表面の微粒子が脱落し、耐擦傷性が低下する懸念があるほか、溶剤を含有しているのでフィルム塗工時に人への健康被害や環境への負荷が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4084985号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、ポリカーボネート基材との屈折率差が少なく、干渉ムラを抑制し、耐擦傷性に優れたハードコーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、特定の(メタ)アクリレートオリゴマーと特定の(メタ)アクリレートモノマーと光重合開始剤とを特定量含むハードコーティング組成物によって上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記(A)~(C)成分を含むハードコーティング組成物であって、
(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー
(B)芳香環を2つ含み、液体での屈折率が1.55以上の(メタ)アクリレートモノマー
(C)光重合開始剤
前記(A)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~10質量部である、前記ハードコーティング組成物である。
<2> 前記(B)成分が、エトキシ化-オルト-フェニルフェノールアクリレートおよび3―フェノキシベンジルアクリレートの少なくとも一つである、上記<1>に記載のハードコーティング組成物である。
<3> 前記(A)成分が、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーである、上記<1>または<2>に記載のハードコーティング組成物である。
<4> 硬化後の屈折率が25℃において1.54以上1.60以下である、上記<1>~<3>のいずれかに記載のハードコーティング組成物である。
<5> ポリカーボネート基材の片面もしくは両面に、上記<1>~<4>のいずれかに記載のハードコーティング組成物が硬化してなるハードコート層を有するハードコートシートである。
<6> 前記ハードコート層の厚さが1~50μmである、上記<5>に記載のハードコートシートである。
<7> 前記ポリカーボネート基材の厚さが0.5~4mmである、上記<5>または<6>に記載のハードコートシートである。
<8> 上記<5>~<7>のいずれかに記載のハードコートシートを含む車載用表示装置である。
<9> 上記<5>~<7>のいずれかに記載のハードコートシートを含むタッチパネル全面保護板である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリカーボネート基材との屈折率差が少なく、干渉ムラを抑制し、耐擦傷性に優れたハードコーティング組成物およびそれを用いたハードコートシートを提供することができる。本発明のハードコーティング組成物を用いれば、ポリカーボネート樹脂製品の表面に、優れた耐干渉ムラ性および硬度を兼ね備えた透明なハードコート硬化膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1 .ハードコーティング組成物
本発明のハードコーティング組成物は、以下に示す(A)~(C)成分を含む。
(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー
(B)芳香環を2つ含み、液体での屈折率が1.55以上の(メタ)アクリレートモノマー
(C)光重合開始剤
【0009】
本発明のハードコーティング組成物は、硬化前の屈折率が25℃において1.52以上1.56以下であることが好ましい。また、硬化後の屈折率が25℃において1.54以上1.60以下であることが好ましく、1.55以上1.59以下であることがより好ましい。本発明において屈折率の測定方法としては、後述する実施例に記載の方法を用いることができる。
【0010】
<(A)成分>
本発明で使用される(A)成分は、2~15官能、好ましくは2~9官能、より好ましくは2~6官能の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーである。ここでいうオリゴマーとは、好ましくは構成単位の数が2以上、より好ましくは2~20程度の重合体であり、分子量の下限値は約400以上、より好ましくは1200以上のものである。オリゴマーの分子量の上限値は、好ましくは4000以下、より好ましくは6000以下である。
【0011】
(A)成分の具体例としては、以下に示す(1)~(4)の多官能(メタ)アクリレートオゴマーが挙げられる。
(1)多官能ポリオール(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわち多価アルコール(ポリオール又はポリヒドロキシ含有化合物)と、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物と、の反応によって得られるポリアクリレートまたはポリメタクリレートのオリゴマー
(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわち多価アルコール(ポリオール)と、多価カルボン酸(多塩基酸もしくは多塩基性カルボン酸)又はその無水物と、アルリル酸およびメタクリル酸やそれらの誘導体と、から得られる飽和若しくは不飽和ポリエステルのポリアクリレートまたはポリメタクリレートのオリゴマー
(3)多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわちポリイソシアネートと、活性水素及びアクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基を有する化合物と、から得られるウレタンポリアクリレートまたはウレタンポリメタクリレートのオリゴマー
(4)多官能ポリグリシジルエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわちポリグリシジルエーテルと、アクリル酸およびメタクリル酸やそれらの誘導体と、から得られるポリアクリレートまたはポリメタクリレートのオリゴマー
【0012】
上記(1)多官能ポリオール(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用される多価アルコール(ポリオール)としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量が300~1000のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2'-チオジエタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールのような2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタグリセロール、グリセロール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオールのような3価のアルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトールのような4価以上のアルコールが挙げられる。
【0013】
上記(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸と、多塩基性カルボン酸(無水物)と、ポリオール(ポリヒドロキシ含有化合物又は多価アルコール)との反応により得られる。より具体的には、二塩基性カルボン酸(無水物)とポリオールとの脱水縮合反応によってポリエステルポリオールを製造したのち、この反応生成物をアクリル酸又はメタクリル酸と反応させることにより、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを得ることができる。
【0014】
ポリエステルポリオールの製造に用いられる「ポリオール」とも称されるポリヒドロキシ含有化合物は、好ましくは3個以上のヒドロキシ基を有する化合物である。一般に、本発明に使用することができるポリオールは、3個~6個のヒドロキシ基、好ましくは3個~4個のヒドロキシ基、および2個~約36個の炭素原子を有する化合物である。このようなポリオールとしては、分岐鎖または直鎖脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオール、及びポリエーテルポリオールが挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタン;テトラオール、例えば、ペンタエリトリトールおよびジ-トリメチロールプロパン;およびヘキサオール、例えば、ジペンタエリトリトールを挙げることができる。
さらに、脂肪族および脂環式ポリオールを、種々の量のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと反応させて、エトキシル化および/またはプロポキシル化ポリオールを得ることができる。エトキシル化および/またはプロポキシル化ポリオールの例としては、エトキシル化トリメチロールプロパン、プロポキシル化トリメチロールプロパン、エトキシル化グリセリン、プロポキシル化グリセリン、エトキシル化ペンタエリトリトール、およびプロポキシル化ペンタエリトリトールを挙げることができる。
【0015】
芳香族ポリオールとしては、ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。
本発明に使用できるポリエーテルポリオールは、芳香族ポリエーテルおよび脂肪族ポリエーテルの両方である。ポリエーテルポリオールの脂肪族基は、直鎖、分岐鎖、または環であってよい。ポリエーテルポリオールの例としては、トリ-グリコール、例えば、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ならびに混合ポリエーテル、例えば、ポリ(プロピレン-エチレン)グリコールを挙げることができる。
【0016】
ポリエステルポリオールの製造に用いられる二塩基性カルボン酸(無水物)の例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸;ピロメリット酸;チオジグリコール酸;チオジバレリン酸;ジグリコール酸;あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸が挙げられる。これらの塩化物、無水物またはエステルを用いることもできる。好ましくはこれらの二塩基性カルボン酸の無水物が用いられる。特に好ましいものはテトラヒドロフタル酸無水物などの脂環族ジカルボン酸無水物である。
ポリエステルポリオールは、エステル結合を有するポリオールである。例えば、過剰のポリオールを二塩基酸(無水物)と反応させて、約1個~約6個のエステル結合および反応性ヒドロキシ基を有する低分子量化合物を得る。前記ポリオール単独および混合物のいずれかを使用して、ポリエステルポリオールを製造することができる。
ポリエステルポリオールは、さらに種々の量のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと反応させて、エトキシル化および/またはプロポキシル化ポリエステルポリオールとすることもできる。
【0017】
本発明で用いられる上記(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、このようにして得られるポリエステルポリオールをアクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物と反応させることにより得ることができる。
アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物のなかでは、アクリル酸を用いるのがより好ましい。
【0018】
上記(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーにおいて、ポリオール(ポリヒドロキシ含有化合物)は単一で、または他のポリヒドロキシ含有化合物と組み合わせて、使用することができる。さらに、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物は、各々単一で、または相互に組み合わせて使用することができる。ポリヒドロキシ含有化合物の混合物を用いる場合には混合エステル生成物が得られる。アクリル酸およびメタクリル酸の混合物が使用される場合も同様に、生成物は混合アクリレートオリゴマーとなる。
【0019】
好ましいポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、テトラヒドロフタル酸無水物及びトリメチロールプロパンと、アクリル酸とを常法によりエステル化反応させることにより得られ2~4官能のアクリレートオリゴマーである。
【0020】
上記(3)多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られるイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物が挙げられる。
【0021】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造においてウレタン化反応に用いられるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート、 (例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート) 、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのジまたはトリイソシアネート、あるいはジイソシアネートをシアヌレート化させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。
【0022】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造においてイソシアネート化合物の製造に使用されるポリオール類としては、上記(1)多官能ポリオール(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用される多価アルコールとして例示した化合物を挙げることができる。
上記ポリオール類とポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に用いられる「活性水素およびアクリロイルオキシ基(又はメタアクリロイルオキシ基)を含有する化合物」としては、水酸基及びアクリロイルオキシ基(又はメタアクリロイルオキシ基)を含有する化合物である。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0023】
本発明で特に好ましく使用される多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、または、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートと活性水素および(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物との反応生成物が挙げられる。
更に具体的には、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレートオリゴマー、トリメタクリレートオリゴマー、ジアクリレートオリゴマーもしくはジメタクリレートオリゴマー;ジ(2-ヒドロキシエチル)モノ(2-ヒドロキシヘプタン)イソシアヌレートのトリアクリレートオリゴマー、トリメタクリレートオリゴマー、ジアリレートオリゴマーもしくはジメタクリレートオリゴマー;及びウレタン結合で繋がった両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物(分子量1200以上)が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは市販品を用いることができる。市販品の具体例としては、UN-3320HC(根上工業)、UA-510H(共栄社化学)、CN968(サートマー)、Eb-220(ダイセルサイテック) 、U6HA(新中村化学)等が挙げられるがこの限りではない。本発明では特に、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーを好ましく使用することができる。
【0024】
上記(4)多官能ポリグリシジルエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用されるポリグリシジエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0025】
本発明における(A)成分である2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、好ましくは35~65質量%であり、より好ましくは40~60質量%である。(A)成分の含有量が30質量%未満では充分な硬度が得られない。また、(A)成分の含有量が70質量%を超えると硬度は充分であるものの耐干渉ムラ性が不充分となる。
【0026】
<(B)成分>
本発明で使用される(B)成分は、芳香環を2つ含み、液体での屈折率が1.55以上の(メタ)アクリレートモノマーである。具体的には、EO変性-オルト-フェニルフェノールアクリレート、エトキシ化-オルト-フェニルフェノールアクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレートが好ましく挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマーの液体での屈折率は1.55~1.61が好ましい。さらに好ましくは1.56~1.60である。液体での屈折率が1.55未満もしくは1.62以上だとハードコーティング組成物として硬化した際に耐干渉ムラ性が不十分となる。
【0027】
芳香環を2つ含み、液体での屈折率が1.55以上の(メタ)アクリレートモノマーは市販されているものを用いることができる。具体的商品としてはOPPE(第一工業製薬)、POB-A(共栄社化学)やA-LEN-10(新中村化学工業)等が好ましく挙げられるがこの限りではない。
【0028】
本発明において(B)成分である(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して30~70質量%であり、好ましくは35~65質量%であり、より好ましくは40~60質量%である。(B)成分の含有量が30質量%未満では充分な硬度が得られない。また、(B)成分の含有量が70質量%を超えると耐干渉ムラ性は充分あるものの硬度が不充分となる。
【0029】
<(C)成分>
本発明で使用される(C)成分は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、一般に知られているものが使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等が挙げられるがこの限りではない。
【0030】
光重合開始剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~10質量部であり、好ましくは1~7質量部であり、より好ましくは2~5質量部である。含有量が0.1質量部未満では硬化不良を来すことがある。一方、含有量が10質量部を超えると硬化塗膜の着色が目立つ様になる。
【0031】
<その他の成分>
本発明のハードコーティング組成物には、上記(A)~(C)成分以外にその他の成分として、界面活性剤、シリコーン系、アクリル系重合物等の表面調整剤、一般的な希釈剤、紫外線吸収剤等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0032】
2 . ハードコートシート
本発明のハードコートシートは、ポリカーボネート基材の表面一方または両面に本発明のハードコーティング組成物の硬化塗膜が形成されていることを特徴とする。ポリカーボネート基材は、従来公知の成形用ポリカーボネート樹脂材料から成形されるものであればよい。ポリカーボネート樹脂は、ポリヒドロキシ化合物の炭酸エステル重合物であり、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量の他のポリヒドロキシ化合物とホスゲンとから界面重合法により得られる熱可塑性ポリカーボネート重合体か、または上記芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により作られる分岐していてもよい熱可塑性ポリカーボネート重合体が挙げられる。一般的には、ビスフェノールAを芳香族ジヒドロキシ化合物の主原料とする炭酸エステル重合物が使用される。ポリカーボネート樹脂は、通常の押出成形によりシートを製造できることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は15,000~40,000程度であり、好ましくは20,000~35,000、より好ましくは22,000~30,000である。特に耐衝撃性が求められる用途では27,000~30,000がより好ましい。ポリカーボネート樹脂には、一般に用いられる各種の添加剤を添加してもよく、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、染顔料などが挙げられる。
【0033】
ポリカーボネート基材にはあらゆる形状の成形品が含まれるが、本発明の効果を生かすにはシート状物がより好ましい。シート状物の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.5~4.0mm、より好ましくは1.0~3.0mm程度である。シート状物は、熱成形により所望の形状に賦型することもできる。
本発明においては、ポリカーボネート基材に、本発明のハードコーティング組成物を塗布して硬化塗膜を形成する。硬化塗膜を形成するコーティング処理は、ロールコート、スピンコートや特開2004-130540号公報に提案された方法などが適用できる。紫外線によって硬化する際は、酸素存在下では硬化阻害を起こすことがあるので、窒素雰囲気下での硬化やPETフィルムなどのカバーフィルムをかぶせる方法、ガラス基板とポリカーボネート樹脂の間に塗料を挟み込む方法などが好ましい。
【0034】
種々の塗装方法に対応するためにはハードコーティング組成物に有機溶剤を加えて粘度調整を行うことが出来る。
【0035】
紫外線によって硬化したハードコート層の厚さは、通常1~50μmであり、好ましくは3~30μm、より好ましくは4~20μm、特に好ましくは5~12μmである。ハードコート層の厚さが1μm未満であると表面硬度の改良効果が不十分になりやすく、逆に50μmを超えると裁断加工性が低下し、コスト的にも不利である。
【0036】
本発明におけるハードコート層はさらに修飾されてもよい。例えば、反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施すことができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘導体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
上記のように作製されたハードコートシートは、車載用表示装置やタッチパネル全面保護板に好ましく使用することができる。
【実施例0037】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は実施例の態様に制限されるものではない。
【0038】
以下の実施例及び比較例では、ポリカーボネート基材として、三菱瓦斯化学株式会社製ユーピロンNF-2000からなる、厚み1.5mmのシート状成形品を用いた。
【0039】
ハードコーティング組成物を構成する成分として、以下の構造式で表される各材料を用い、下記表1に記載した通りの配合比(質量部)となるように用いた。
CN968((A)成分):サートマー製、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー
UA―510H((A)成分):共栄社化学(株)製、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー
【化1】
【0040】
POB-A((B)成分):共栄社化学(株)製、3-フェノキシベンジルアクリレート、屈折率1.567
【化2】
【0041】
A-LEN―10((B)成分):新中村化学工業(株)製、 エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート、屈折率1.577
【化3】
【0042】
PO-A:共栄社化学(株)製、フェノキシエチルアクリレート、屈折率1.519
【化4】
【0043】
CH:共栄社化学(株)製、シクロヘキシルメタクリレート、屈折率1.460
【化5】
【0044】
L-A:共栄社化学(株)製、ラウリルアクリレート、屈折率1.443
【化6】
イルガキュア184((C)成分):BASF(株)製、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0045】
実施例及び比較例中の各物性の評価は以下の方法で行った。
1)屈折率:アタゴ製デジタルアッベ屈折計 DR-A1-Plusを用いて25℃の条件下で測定した。
2)干渉ムラ評価
各積層体における干渉ムラの発生を次のようにして評価した。フナテック社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用い、目視にて得られたシートの干渉縞の有無を検査し、下記基準で評価した。得られたシートの塗工面の反対側に3M製黒色プラスチックフィルムテープを貼合し、塗工面に干渉縞検査ランプをあて、反射観察にて評価を行った。
○:干渉ムラが観察されるが、極めて薄く、実使用上問題ないレベル。
×:干渉ムラがはっきり観察される。
【0046】
3)密着性:JIS-K5400-5-6に準じ、カッター刃で1mmピッチで縦横6本ずつの刻みを入れ、25マスを刻んだ。そこにニチバン製のセロハンテープをしっかりと密着させ、60°手前方向に剥がした。塗膜の剥離が無い場合を合格(○)とし、1マスでも剥離した場合は不合格(×)とした。
【0047】
4)耐擦傷性:♯0000のスチールウールにて100g/cmの荷重で15往復させ5本未満の傷が付くものを合格(○)、5本以上の傷が付くものを不合格(×)とした。
【0048】
下記表1の組成で調合された各ハードコーティング組成物を用い、以下の手順で硬化塗膜を上記ポリカーボネート基材上に形成し、各ハードコートシートを得た。
100℃にセッティングされた熱風循環乾燥機中で加温された1.5mm厚のポリカーボネート基材(ユーピロンNF-2000)に調合されたハードコーティング組成物をのせ、バーコーターで硬化後の塗膜厚みが5~10μmになるようにひき、その上に100μm厚のPETフィルムをのせ、ハンドローラーでレベリングさせた。これに、出力密度120W/cmのメタルハライドランプを用い、光源下14cmの位置でコンベアースピード1.0m/分の条件で紫外線を照射して硬化塗膜を形成した。硬化後、PETフィルムを剥離し、ハードコーティング組成物の硬化塗膜を有するハードコートシートを得た。
【0049】
得られたハードコートシートの評価結果を下記表2に記載した。実施例1~4のハードコートシートは、すべての性能を満足するものであった。一方、比較例1~6のハードコートシートは、すべての性能を満足するには至らず、総合判定は不合格であった。
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。