(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178175
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】無線通信用中継アンテナシート
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20221125BHJP
H01Q 9/04 20060101ALI20221125BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20221125BHJP
H01Q 11/10 20060101ALI20221125BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20221125BHJP
H01Q 5/49 20150101ALI20221125BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q9/04
H01Q9/16
H01Q11/10
H01Q1/40
H01Q5/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084757
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】板倉 哲之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】槇田 知巳
(72)【発明者】
【氏名】久保 泰一
(72)【発明者】
【氏名】折井 一也
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AA07
5J046AB07
5J046PA07
5J046PA09
5J046QA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通信障害となる障害物が存在しても、簡便な方法で、無電力で安定した無線通信を行う無線通信用中継アンテナシートを提供する。
【解決手段】無線中継用アンテナシート1は、一方の面と一方の面とは反対の他方の面とを有するシート状基材2と、シート状基材2の一方の面に設けられたアンテナ回路パターン3とを備える。アンテナ回路パターン3は、第1のアンテナ部31、第1のアンテナ部31と距離的に離れて設けられた第2のアンテナ部32及び第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32とを接続する伝送線部33を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信に用いられる無電力の中継アンテナシートであって、該中継アンテナシートは、
一方の面と前記一方の面とは反対の他方の面とを有するシート状基材と、
該シート状基材の前記一方の面に設けられたアンテナ回路パターンと
を備え、
前記アンテナ回路パターンは、
第1のアンテナ部と、
該第1のアンテナ部と距離的に離れて設けられた第2のアンテナ部と、
前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とを接続する伝送線部と
を備えた、無線通信用中継アンテナシート。
【請求項2】
前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部が、線状アンテナで構成される、請求項1に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項3】
前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部が、ダイポールアンテナである、請求項1または2に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項4】
前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部が、広帯域アンテナである、請求項1または2に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項5】
前記広帯域アンテナがログペリオディックアンテナである、請求項4に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項6】
前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部がそれぞれ異なるアンテナパターンである、請求項1または2に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項7】
前記シート状基材の前記一方の面において、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部の少なくとも一方の近傍に無給電エレメントを備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項8】
前記シート状基材の前記他方の面において、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部の少なくとも一方の近傍に無給電エレメントを備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項9】
前記無給電エレメントが線状エレメントである、請求項7または8に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項10】
前記伝送線部が平行伝送路または交差伝送路である、請求項1~9のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項11】
前記伝送線部が同軸ケーブルである、請求項1~9のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項12】
前記シート状基材が、ポチエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンエーテルの中から選ばれる少なくとも1つの低誘電熱可塑性樹脂からなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項13】
前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部が、印刷アンテナ、エッチングアンテナ、導電線の埋め込みアンテナのいずれかである、請求項1~12のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項14】
前記シート状基材の前記一方の面に、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部と前記伝送線部とを覆う保護層が設けられた、請求項1~13のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【請求項15】
前記シート状基材の前記一方の面および前記他方の面のいずれか一方に粘着層を設けた、請求項1~14のいずれか1項に記載の無線通信用中継アンテナシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を通さない又は減衰退させる障害物があっても、無電力で通信距離を伸ばすことができる、無線通信用中継アンテナシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にパソコンやスマートフォンをインターネットに接続するときには、中継機となるモデムやルーターを介して、インターネット回線に接続する。無線LANルーター(Wi-Fiルーター)を利用して別の場所にあるパソコンやスマホなどの機器をインターネットに無線接続する場合、親機となる無線LANルーターと子機となるパソコンなどとをケーブルで接続する必要がないため、見栄えや使い勝手はよいが、例えば、家庭など室内で利用する場合は、扉や壁や天井などを構成する部材の材質によっては電波を通さない、または電波を減衰退させることがあり、通信が十分にできない場合がある。またRFIDタグとRFIDリーダとの間で比較的短い通信距離で無線通信を行うRFIDシステムにおいても、障害物が介在することで、同様の通信障害が起きる場合がある。
このような場合、中継装置(リピーター)や中継アンテナを設置することで通信距離の延長や、電波の届かない死角エリアへの通信を可能にすることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、室内の壁面の対向するそれぞれの面に設けた平面アンテナを壁板内に配設された高周波伝送用ケーブルで接続することで、部屋の外観を損なうことなく、各部屋で安定した無線通信を行うことができる、屋内中継用平面アンテナが記載されている。
【0004】
また、特許文献2、3には、RFIDタグと、当該RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダとを含むRFIDシステムにおいて用いられる、RFID用中継アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-96607号公報
【特許文献2】特開2006-246372号公報
【特許文献3】特表2007-515848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、通信障害となる障害物が存在しても、簡便な方法で、無電力で安定した無線通信を行うことができる、無線通信用中継アンテナシートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、無線通信に用いられる無電力の中継アンテナシートであって、該中継アンテナシートは、一方の面と前記一方の面とは反対の他方の面とを有するシート状基材と、該シート状基材の前記一方の面に設けられたアンテナ回路パターンとを備え、前記アンテナ回路パターンは、第1のアンテナ部と、該第1のアンテナ部と距離的に離れて設けられた第2のアンテナ部と、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とを接続する伝送線部とを備えた、無線通信用中継アンテナシートである。
【0008】
前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部は、線状アンテナで構成されていてよい。
あるいは、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部は、ダイポールアンテナで構成されていてよい。
【0009】
さらには、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部は、広帯域アンテナであってよい。
この場合、前記広帯域アンテナはログペリオディックアンテナであってよい。
【0010】
あるいは、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部は、それぞれ異なるアンテナパターンであってよい。
【0011】
本発明の無線通信用中継アンテナシートは、前記シート状基材の前記一方の面において、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部の少なくとも一方の近傍に無給電エレメントを備えていてよい。
あるいは、前記シート状基材の前記他方の面において、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部の少なくとも一方の近傍に無給電エレメントを備えていてよい。
前記無給電エレメントは、線状エレメントであってよい。
【0012】
本発明の無線通信用中継アンテナシートにおいて、前記伝送線部は、平行伝送路または交差伝送路であってよい。
あるいは、前記伝送線部は、同軸ケーブルであってよい。
【0013】
本発明の無線通信用中継アンテナシートにおいて、前記シート状基材は、ポチエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンエーテルの中から選ばれる少なくとも1つの低誘電熱可塑性樹脂からなるものとすることができる。
【0014】
前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部は、印刷アンテナ、エッチングアンテナ、導電線の埋め込みアンテナのいずれかであってよい。
【0015】
本発明の無線通信用中継アンテナシートは、前記シート状基材の前記一方の面に、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部と前記伝送線部とを覆う保護層が設けられたものとすることができる。
【0016】
本発明の無線通信用中継アンテナシートはまた、前記シート状基材の前記一方の面および前記他方の面のいずれか一方に粘着層を設けたものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信障害となる障害物が存在しても、簡便な方法で、無電力で安定した無線通信を行うことができる。具体的には、本発明の無線通信用中継アンテナシートを、建造物を構成する部材に対して、例えば、扉や壁、窓などの建築物の建具に、粘着層を介して容易に貼り付けることができ、これにより、通信距離の延長や、電波の届かない死角エリアへの通信を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は、本発明の無線通信用中継アンテナシートの一例を模式的に示す平面図、(b)はその断面図である。
【
図2】(a)は、本発明の無線通信用中継アンテナシートの別の一例を模式的に示す平面図、(b)はさらに別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】(a)は、本発明の無線通信用中継アンテナシートに用いられる広帯域アンテナの一例を模式的に示す平面図である。(b)は広帯域アンテナを構成する第1部分パターンの一例を模式的に示す平面図、(c)は広帯域アンテナを構成する第2部分パターンの一例を模式的に示す平面図である。
【
図4】(a)は、広帯域アンテナを用いた本発明の無線通信用中継アンテナシートの一例を模式的に示す平面図、(b)は別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図5】本発明の無線通信用中継アンテナシートの第1のアンテナ部と第2のアンテナ部に異なるアンテナパターンを設けた一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】無給電エレメントを設けた本発明の無線通信用中継アンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。
【
図7】無給電エレメントを設けた本発明の無線通信用中継アンテナシートの別の一例を模式的に示す平面図であって、(a)はシート状基材のアンテナ回路パターンが設けられた一方の面を模式的に示す平面図、(b)はシート状基材のアンテナ回路パターンが設けられていない他方の面を模式的に示す平面図である。
【
図8】(a)は、本発明の無線通信用中継アンテナシートの伝送線部に交差伝送路が設けられた一例を模式的に示す平面図、(b)は交差伝送路を構成する第1部分パターンの一例を模式的に示す平面図、(c)は交差伝送路を構成する第2部分パターンの一例を模式的に示す平面図、(d)はその断面図、(e)はその別の一例を示す断面図である。
【
図9】本発明の無線通信用中継アンテナシートの伝送線部に同軸ケーブルが設けられた一例を模式的に示す平面図である。
【
図10】(a)は、本発明の無線通信用中継アンテナシートの貼り付け態様の一例を示す模式図、(b)は貼り付け態様を上面から見た図である。
【
図11】本発明の無線通信用中継アンテナシートの貼り付け態様の別の一例を示す模式図である。
【
図12】無給電エレメントを設けた本発明の無線通信用中継アンテナシートのさらに別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図13】本発明の無線通信用中継アンテナシートに用いられる広帯域アンテナの別の一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1(a)は本発明の無線通信用中継アンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。
図1(b)は本発明の無線通信用中継アンテナシートの一例を模式的に示す断面図である。
図1(a)を参照して、無線通信用中継アンテナシート1は、シート状基材2と、シート状基材2の一方の面に設けられたアンテナ回路パターン3とを備えている。アンテナ回路パターン3は、第1のアンテナ部31と、第1のアンテナ部31と距離的に離れて設けられた第2のアンテナ部32と、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32とを接続する伝送線部33とを有する。
図1(a)に示されている実施の形態では、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32は、線状アンテナで構成されている。
【0020】
図1(b)を参照して、シート状基材2のアンテナ回路パターン3が設けられた一方の面に保護層5を設け、シート状基材2のアンテナ回路パターン3が設けられていない他方の面に粘着層5を設けている。
【0021】
再び
図1(a)を参照して、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32は、全長W1が、無線通信に使用する無線周波数の波長の半分(1/2波長)の長さを有し、これをおおよそ2分割(1/4波長)した長さW2のアンテナエレメントを左右対称にコの字に設けた、ベントダイポールアンテナを構成している。
ベントダイポールアンテナのアンテナエレメントは、伝送線部33とつながる直線部(長さb)と、直線部から直角方向に折れ曲がり端部を有する折り曲げ部(長さa)からなり、アンテナエレメントの長さW2=a+bは無線周波数のおおよそ1/4波長に相当する。アンテナエレメントの折り曲げ率は〔a/(a+b)〕×100%で定義され、60%以下、好ましくは40%以下であるとよい。特に折り曲げ率を最大40%までとして折り曲げると、放射効率の悪化を非常に小さく抑えることができ、アンテナの小型化に寄与することができる。
無線周波数とアンテナエレメントの長さを例示すると、日本において移動体通信用に割り当てられた周波数帯800MHzの場合は波長λ=375mmとなり、アンテナ部の全長W1は約187mm、アンテナエレメントの長さW2は約93.5mmとなり、折り曲げ率40%であれば、直線部の長さbは約56mm、折り曲げ部の長さaは約37.5mmとなる。
【0022】
第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32とを接続する伝送線部33は、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32との間で電力信号を送信する伝送路であって、平行な2本の直線で構成された平行伝送路で構成されている。伝送線部33の長さは、特に制限はないが、例えば、5mm~500mm、好ましくは、10mm~100mmである。また、平行伝送路の間隔は、1mm~5mm、好ましくは、1.5mm~3mmである。
【0023】
上では、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32がベントダイポールアンテナである実施の形態について説明したが、本発明の他の実施の形態では、第1のアンテナ部および第2のアンテナ部が、
図2(a)に示すようなフォールデッドダイポールアンテナ(W1≒1/2λ)であってよい。
本発明のさらに他の実施の形態は、
図2(b)に示すような逆V型アンテナ(W2≒1/4λ、W2×2≒1/2λ)であってよい。第1のアンテナ部および第2のアンテナ部のアンテナパターンは、無線通信に用いられる周波数帯により適宜選んで構成することができる。
【0024】
図3を参照して、本発明のまた別の実施の形態は、前記第1のアンテナ部および前記第2のアンテナ部が広帯域アンテナである無線通信用中継アンテナシートである。
図3は、本発明の無線通信用中継アンテナシートに用いられる広帯域アンテナの一例を模式的に示す平面図である。
図3では、第1のアンテナ部31のみを示し、伝送線部および第2のアンテナ部は図示していない。第1のアンテナ部31および第2のアンテナ部は同じアンテナパターンの広帯域アンテナであってよい。
【0025】
図3を参照して、
図3(a)は、シート状基材2の一方の面に、任意の間隔dをもって折返された複数のエレメント部(l1、l2、…ln、…、nは2以上の整数である。)が給電線351、352を介して逆位相になるように対数周期的に配列した第1部分パターン311および第2部分パターン312を有し、第1部分パターン311および第2部分パターン312のそれぞれのエレメントが間隔Dをもって線対称となるように互いの給電線351、352を交差させて配設したログペリオディックアンテナの例を示している。
図3(b)は、第1部分パターン311の一例を模式的に示す平面図、
図3(c)は、第2部分パターン312の一例を模式的に示す平面図である。第1部分パターン311および第2部分パターン312のそれぞれのエレメントが間隔Dをもって線対称となるように互いの給電線351、352を交差させて配設され、
図3(a)のログペリオディックアンテナの構造になっている。
【0026】
図3(a)を参照して、第1のアンテナ部31は、任意の間隔dもって折返された1つのエレメントが1つのダイポール素子を構成し、各素子のエレメント長さl、折り返し間隔dおよびエレメント間隔Xは給電点34に向かって徐々に短くなるように複数配列されている。各寸法は、一般的な対数周期アンテナの構造式に基づき、対数周期比(寸法係数)τおよび間隔係数σを受信周波数に整合した適当な値に設定することで広帯域対数構造とすることができる。エレメントの長さは最大周波数と最小周波数の1/4λの範囲で等比的に短くなり、寸法係数τは、必要とするアンテナンの大きさから求められる寸法比で、各周波数に対応するエレメントの長さ、幅(折り返し間隔d)はこれにより決まる。また最低周波数、最高周波数及び寸法係数からエレメント本数が決定される。
周波数帯域とアンテナパターンを例示すると、周波数帯を700MHz~4000MHzとした場合、ブーム長を218.7mmとすれば、τは0.760、σは0.134、エレメント数は10となる。各エレメントの具体的な寸法例を表1に示す。
【0027】
【0028】
図13を参照して、
図13は、第1のアンテナ部および第2のアンテナ部が広帯域アンテナであるログペリオディックアンテナを用いた無線通信用中継アンテナシートを例示したものである。
図13に示されている実施の形態では、シート状の基材2と、シート状の基材2の一方の表面に設けられるアンテナ回路パターン3からなるアンテナシート1において、アンテナ回路パターン3は、第1のアンテナ部31と、該第1のアンテナ部31と距離的に離れて設けられた第2のアンテナ部32と、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32とを接続する伝送線部33とを備えている。
第1のアンテナ部31及び第2のアンテナ部32は、
図3(a)~(c)に示したように、第1及び第2の部分アンテナパターン311、312を含み、第1及び第2の部分アンテナパターン311、312はそれぞれ、折返し配置することで形成された複数のエレメント部lnと、複数のエレメント部lnを連結する給電線部351、352を含み、第1及び第2の部分アンテナパターン311、312のエレメント部同士が線対称の逆位相になり、給電線部同士が交差するように、対数周期的に配列されている。
【0029】
上では、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32がログペリオディックアンテナである実施の形態について説明したが、本発明の他の実施の形態では、第1のアンテナ部および第2のアンテナ部が、
図4(a)に示すようなAWXアンテナ(W2≒1/4λ、W2×2≒1/2λ)あってよい。
本発明のさらに他の実施の形態では、第1のアンテナ部および第2のアンテナ部が、
図4(b)に示すような変形AWXアンテナ(a+b=W2≒1/4λ、W2×2≒1/2λ)であってよい。AWXアンテナは2つのダイポールアンテナのエレメントを直線状ではなく、60~90度の範囲で「く」の字状に折り曲げてX字形に対向させ、給電点で並列に接続したアンテナである。X字のエレメントを垂直面内に展開することで、ダイポールアンテナよりも利得が高く、非常に広い周波数帯域で使用可能である。
【0030】
本発明のまた別の実施の形態では、第1のアンテナ部および第2のアンテナ部がそれぞれ異なるアンテナパターンであってよい。例えば、通信環境において最適な送受信が行えるように第1のアンテナ部と第2のアンテナ部にそれぞれ指向性の異なるアンテナ形状とすることができる。
このような実施の形態の例では、
図5に示すように、第1のアンテナ部がほぼ無指向性の変形AWXアンテナ、第2のアンテナ部がベントダイポールアンテナであってよい。
このような実施の形態の他の例では、第1のアンテナ部がAWXアンテナ、第2のアンテナ部を広帯域で指向性の強いログペリオディックアンテナであってよい。
【0031】
本発明の無線通信用中継アンテナシートは、シート状基材の一方の面の第1のアンテナ部および第2のアンテナ部の少なくともどちらか一方の近傍に、無給電エレメントを備えることができる。無給電エレメントは、設計の自由度が高いので指向性や周波数帯域をある程度調整でき、また入力インピーダンスの整合を取ることができる。
図6は、無給電エレメントを設けた本発明の無線通信用中継アンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。
図6を参照して、
図1に例示した無線通信用中継アンテナシート1の第1のアンテナ部31の外側近傍に、無給電エレメント6を設けている。無給電エレメント6は、単に直線状のエレメントであってもよいが、典型的には、線状エレメントで構成され、第1のアンテナ部31のエレメント形状と同じ形状を有するものとする。
無給電エレメント6は、第1のアンテナ部31または第2のアンテナ部32のエレメント形状と同じ形状とするのが典型的ではあるものの、必ずしもこれらと同じ寸法とする必要はない。無給電エレメント6の寸法は、アンテナエレメントの寸法、具体的には、各図中に示したW1、W2、a、bの寸法に対し、50~100%、好ましくは60~90%であってよい。
【0032】
本発明の無線通信用中継アンテナシートはまた、シート状基材の他方の面であって、第1のアンテナ部および第2のアンテナ部の少なくともどちらか一方の近傍に無給電エレメント部を備えることができる。
図7は、無給電エレメントを設けた本発明の無線通信用中継アンテナシートの別の一例を模式的に示す平面図である。
図7(a)はシート状基材2の、第1のアンテナ部31、第2のアンテナ部32、及び伝送線部33を有するアンテナ回路パターンが設けられた一方の面を模式的に示す平面図、(b)はシート状基材2のアンテナ回路パターンが設けられていない他方の面を模式的に示す平面図である。
図7を参照して、アンテナシート1は、アンテナ回路パターンが設けられていない他方の面の第1のアンテナ部31の近傍に無給電エレメント6を備えている。無給電エレメント6と第1のアンテナ部31をシート状基材2の異なる面に設けることで、指向性や周波数帯域をある程度調整でき、また入力インピーダンスの整合を取ることができる他、無給電エレメント6を備えてもシート状基材2を大きくする必要がなく、全体として小型の無線通信用中継アンテナシートにすることができる。
【0033】
本発明の無線通信用中継アンテナシートでは、例えば、
図6に示す実施の形態と
図7(b)に示す実施の形態とを組み合わせて、シート状基材2の両面に無給電エレメント6を設けることにより、シート形状でありながら立体的なアンテナ設計とすることが可能である。無給電エレメントは電波の送信または受信の方向に対してアンテナエレメントの前方にあると送受信の障害になる場合がある、この場合は、
図12に示すように、電波の送信または受信の方向に対してアンテナエレメントの後方に無給電エレメント6を設けることができる。
【0034】
再び
図1を参照して、本発明の無線通信用中継アンテナシートは、伝送線部が
図1(a)に示すような平行伝送路であるものとすることができるが、伝送線部が交差伝送路であるものとすることもできる。
例えば、
図8に示すように、伝送線部33を、一定周期の波形の形状をなす2本の交差する伝送路331,332で構成することができる。伝送線部33を構成する2本の伝送路331,332をそれぞれ一定周期の波形の形状にし、この2本の伝送路331,332を交差させ、撚り対線状に形成することで、外部磁場(ノイズ)の影響を受け難くすることができる。
【0035】
本発明の無線通信用中継アンテナシートは、伝送線部が同軸ケーブルであるものとすることができる。
これは例えば、
図9に示すように、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32のそれぞれの給電点に同軸ケーブルを接続することで、構成することができる。同軸ケーブルは、銅線の束で形成される内部導体とそのまわりを覆う網組み銅線で形成される外部導体で構成され、外部導体は、信号の漏洩や外部磁場の侵入を防ぐシールド効果があるため、高周波信号の伝達に効果的である。
【0036】
本発明の無線通信用中継アンテナシートは、3MHzから30GHzの周波数帯で好適に用いられる。
例えば、本発明の無線通信用中継アンテナシートは、3MHzから30MHzの周波数帯(HF帯)で好適に用いられる。この周波数帯では、例えば、第1のアンテナ部や第2のアンテナ部に逆V字アンテナが好適に用いられる。
本発明の無線通信用中継アンテナシートはまた、30MHzから300MHz(VHF帯)で好適に用いられる。この周波数帯では、例えば、第1のアンテナ部と第2のアンテナ部に、ベントダイポールアンテナやフォールデッドダイポールアンテナが好適に用いられる。
本発明の無線通信用中継アンテナシートはさらに、300MHzから3GHz(UHF帯)で好適に用いられる。この周波数帯では、例えば、第1のアンテナ部と第2のアンテナ部に広帯域のAWXアンテナが好適に用いられる。
あるいは、本発明の無線通信用中継アンテナシートは、26.5GHzから29.5GHz(n257)の5G新無線周波数帯を含む3GHzから30GHz(SHF帯、ミリ波帯)で好適に用いられる。この周波数帯では、例えば、第1のアンテナ部と第2のアンテナ部に広帯域のログペリオディックアンテナが好適に用いられる。
各周波数帯に用いられる好ましいアンテナの種類について例示したが、特にこれらに限定されるものではなく、通信環境において最適な送受信が行えるようにアンテナパターンを適宜設計することができる。
【0037】
以下、本発明の無線通信用中継アンテナシートの製造方法について説明する。
本発明に用いるシート状基材は、所定の厚みを有し、単層又は複数層で構成されるものでよく、紙、合成紙、熱可塑性樹脂シートなどの材料を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂等を用いることができ、これらを2種以上含有するものであってもよい。特に、26.5GHzから29.5GHz(n257)の5G新無線周波数帯を含む3GHzから30GHz(SHF帯、ミリ波帯)に用いる場合は、伝送損失による信号の遅延や損失を低減できる低損失材料であることが好ましく、低誘電率、低誘電正接の特性を有する低誘電熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。具体的には。ポチエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンエーテルからなるシート状基材が、好適に用いられる。
【0038】
シート状基材を複数層で構成する場合の例としては、紙基材上に熱可塑性樹脂を塗工やラミネートしたものを挙げることができる。
シート状基材を熱可塑性樹脂シートで構成する場合、透明な熱可塑性樹脂シートからなるものであると、全体として透明な無線通信用中継アンテナシートを好適に作製することができる。全体として透明な無線通信用中継アンテナシートは、貼り付け対象となる建築物等の被着体の意匠性を損なうことなく被着体に貼着することができる。
シート状基材には、無機微細粉末あるいは有機フィラー、分散剤、酸化防止剤、相溶化剤、紫外線安定剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等を適宜添加することができる。
シート状基材の厚みは、好ましくは0.030mm~1.000mm、さらに好ましくは0.050mm~0.500mmである。
上述のようにシート状基材は単層又は複数層(即ち、異なる材料の層の組み合わせ)で構成されていてよいが、シート状基材全体としては、可撓性又は可塑性を有することが好ましい。その理由は、後述する
図10~11に示すように、折り曲げて使用する態様に適用することができるからである。
【0039】
シート状基材の一方の面にアンテナ回路パターンを形成する場合、印刷方法、エッチングによる形成、導電線の埋め込み方式などにより、所望のアンテナ回路パターンを形成することができる。
印刷方式では、銀ペースト等の導電性インキを、スクリーン印刷やオフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷方式を用いて、シート状基材の一方の面に所望のアンテナ回路パターンからなる印刷アンテナを形成することができる。
再び
図8を参照して、
図8(a)に示すように、伝送線部33を一定周期の波形の形状をなす2本の交差する伝送路で構成する場合は、伝送線部33を構成する2本の伝送路331、332の間に絶縁層を形成するとよい。この場合は、シート状基材の一方の面に
図8(b)に示す交差伝送路を構成する第1部分パターンを印刷形成し、第1部分パターン上に絶縁樹脂を塗布形成又はラミネート形成した後、絶縁樹脂上に
図8(c)に示す交差伝送路を構成する第2部分パターンを印刷形成するとよい。また、第1部分パターンと第2部分パターンをそれぞれ別のシート状基材に印刷形成し、第1部分パターンと第2部分パターンを、シート状基材を介して貼り合わせてもよい(
図8(d))。さらにまた、第1部分パターンと第2部分パターンを同じシート状基材の表裏に分けて印刷形成してもよい(
図8(e))。
第1部分パターンと第2部分パターンをそれぞれ分けて印刷形成する方法について、
図8に示す交差伝送路を構成した例を用いて説明したが、伝送線部が平行伝送路の場合も同様に、第1部分パターンと第2部分パターンに分けて印刷形成しても構わない。
図9に示すように、伝送線部33を同軸ケーブルで構成する場合は、シート状基材2の一方の面に第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32を印刷形成し、同軸ケーブルを第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32のそれぞれの給電点に接続するように配設すればよい。
【0040】
エッチングによる形成では、銅箔やアルミ箔を絶縁フィルムと貼り合せた基材をエッチングし、所望のアンテナ回路パターンからなるエッチングアンテナを形成する。エッチングによる形成では、絶縁フィルムをそのままシート状基材として用いてよく、また絶縁フィルムのアンテナ回路パターンを形成した面にシート状基材を貼り合せ、絶縁フィルムとシート状基材でアンテナ回路パターンを挟み込んだ形にしてもよい。エッチングによる形成の場合も、印刷形成と同様に第1部分パターンと第2部分パターンを分けてアンテナ回路パターン形成してもよい。
図9に示すように、伝送線部33を同軸ケーブルで構成する場合は、シート状基材2の一方の面に第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32をエッチング形成し、同軸ケーブルを第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32のそれぞれの給電点に接続するように配設すればよい。
【0041】
導電線の埋め込み方式では、典型的にはシート基材の一方の面に、導電線を引き回して、所定のパターン形態を描き、導電線を少なくともシート基材の一方の面の表面に埋め込み固定することで導電線の埋め込みアンテナを形成することができる。この場合、シート状基材の少なくとも一層が樹脂材料からなるものが好ましい。
シート基材の表面への導電線の埋め込み方法では、例えば、少なくともシート状基材の一方の面の表面を樹脂熱可塑性樹脂で構成するシート状基材を用い、超音波融着の原理を活用して導電線をシート状基材の表面に埋め込むことが望ましい。超音波融着を行うに際しては、導電線を繰り出しながら熱可塑性樹脂からなるシート状基材の表面を溶融させ、導電線をシート状基材の表面に埋め込むことが可能な配線描画装置を用いることができる。このような配線描画装置が備える超音波ヘッドにより、導電線をシート状基材の表面上へ繰り出しつつ、振動と加圧によりシート状基材の表面に導電線を埋め込むことができる。
シート状基材の表面への導電線の埋め込みにより、シート状基材上でのアンテナ回路パターンの位置決めを行うことができ、外部からの衝撃等による導電線の位置ずれの抑制を図ることができる。また、シート状基材の表面に導電線を埋め込むことで、シート状基材の表面上に導電線を配置することによるシート状基材の表面の凹凸の程度を低減することができる。
【0042】
導電線を用いる場合、その導電線は、少なくとも金属線を含んで構成され、好ましくは、金属線が自己融着性の絶縁被膜により被覆されてなるものとすることができる。金属線としては、例えば、銅、鉄、金、銀、銅ニッケル、ニッケルクロム、鉄ニッケルクロム等の金属線を用いることができるが、導電性を有するものであれば他の材料を用いることもできる。通信特性や耐久性、コストの観点から、金属線として銅又は銅合金が好ましい。銅合金の例としては、亜鉛、鉛、錫、銀、アルミ、ニッケル、ベリリウム、ジルコニウムなどを単独もしくは複数組み合わせてある銅合金を用いることが好ましい。
金属線を被覆する絶縁被膜としては、絶縁性の樹脂被膜であり、絶縁被膜で被覆された導電線は市販のエナメル線を使用することができる。絶縁性の樹脂被膜の具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等を挙げることができる。絶縁被膜は、典型的には黒色であるが、貼り付け対象となる被着体の色彩にあわせて絶縁被膜を任意の色に着色させてもよい。
導電線の直径は、通信特性を考慮すると、例えば、0.03mm~0.2mmである。細い導電線を形成するのは容易ではない場合もあるが、貼り付け対象となる被着体の意匠性を損なわないためには導電線はできるだけ細いほうがよく、導電線の直径は好ましくは、0.05mm~0.15mmである。
絶縁被膜を有す導電線で形成する場合、
図8(a)に示すような交差伝送路であっても、伝送線部33をなす2本の導電線をシート状基材2の一方の面上で直接重ねて交差させることができ、伝送線部33を構成する2本の伝送路の間に絶縁層を形成する必要がない。また、印刷方式やエッチングによる形成と同様に第1部分パターンと第2部分パターンに分けて形成することもできる。
図9に示すように、伝送線部33を同軸ケーブルで構成する場合は、シート状基材2の一方の面に第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32を形成し、同軸ケーブルを第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32のそれぞれの給電点に接続するように配設すればよい。
【0043】
無給電エレメントは、第1のアンテナ部や第2のアンテナ部、伝送線部を形成する方法と同様、印刷方法、エッチングによる形成、導電線の埋め込み方式などで、シート状基材所定の位置に形成することができる。
【0044】
本発明の無線通信用中継アンテナシートでは、
図1(b)に例示したように、シート状基材2のアンテナ回路パターン3が設けられた一方の面に、アンテナ回路パターン3が外部に露出するのを保護する保護層5を設けることができる。保護層5は、シート状基材2の全面にアンテナ回路パターン3を被覆するように設けてもよく、アンテナ回路パターン3だけを被覆するようにシー状基材2に部分的に設けてもよい。
保護層5は、アンテナ回路パターン3を自己融着性の絶縁層により被覆された導電線で形成した場合は必ずしも必要ではないが、この場合でも、擦れなどで導電線がシート状基材から剥がれたり、衝撃で断線したりすることを防止することができる。
保護層を構成する材料の具体例としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系もしくはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ-プラスト系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂等を構成するモノマー、プレポリマーもしくはオリゴマーまたはポリマーの一種ないし2つ以上を主成分とする組成物を挙げることができる。
【0045】
保護層は、例えば、オフセット印刷やグラビア印刷等、スクリーン印刷等の印刷方式で、形成することができる。また、シート状基材と同様の透明な熱可塑性樹脂シートを、必要により接着層を介して熱プレスでラミネート形成して、保護層とすることもできる。シート状基材と保護層が透明なものであると、全体として透明な無線通信用中継アンテナシートを好適に作製することができる。全体として透明な無線通信用中継アンテナシートは、貼り付け対象となる建築物等の被着体の意匠性を損なうことなく、被着体に貼着することができる。
保護層の厚みは、例えば、印刷方式で形成する際には1μm~100μm、好ましくは5μm~50μm、熱可塑性樹脂シートを用いる際には10μm~500μm、好ましくは50μm~300μmである。
保護層はまた、アンテナ回路パターンを視覚的に隠蔽する隠蔽層とすることができる。隠蔽層は保護層を着色したものでよく、保護層そのものでも、保護層上に印刷による意匠を施したものでもよい。意匠は、貼り付け対象となる建造物や建築物の建具等の被着体と外観類似の化粧層とすることで、貼り付けた無線通信用中継アンテナシートを目立たないようにすることができる。例えば、建築物の建具等の被着体が一定パターンの模様を表面に有している場合には、外見上、当該パターンと連続的になるように貼り付けることが可能な化粧層を、保護層としてもよい。
【0046】
本発明の無線通信用中継アンテナシートでは、
図1(b)に例示したようにシート状基材2のアンテナ回路パターン3が設けられていない他方の面に、粘着層4を設けることができる。
粘着層は、例えば、無線通信用中継アンテナシートを貼り付け対象となる建造物や建築物の建具等の被着体に貼り付けるものである。粘着層としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ゴム系、ポリエステル系、セルロース系、エマルジョン等の粘着剤が使用可能である。また必要により、粘着剤の特性向上のための添加剤として、フィラーや粘着付与剤や硬化剤などを適宜使用することもできる。
粘着層の厚みは、接着力が得られる厚みであれば特に限定されず、通常は20μm~200μmとし、好ましくは25μm~75μm程度がよい。粘着層は、粘着剤をグラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、コンマコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング等の塗布方式を用いて形成できる。
図1(b)を参照して粘着層について説明したが、粘着層は、シート状基材2アンテナ回路パターンが設けられた一方の面、例えば、アンテナ回路パターン3や保護層5の上に設けることもできる。
【0047】
本発明の無線通信用中継アンテナシートによれば、建造物を構成する少なくとも2つの面を有する部材において、該部材の第1面に第1のアンテナ部を、該第1面に近接する第2面に第2のアンテナ部を配置し、第1のアンテナ部と第2のアンテナ部に接続された伝送線部で第1のアンテナ部と第2のアンテナ部との間に電力信号を送信することができる。特に、建造物を構成する部材が建築物の建具である場合に、本発明の無線通信用中継アンテナシートを好適に用いることができる。
図10は、コンクリートや土壁などの建造物の壁面に本発明の無線通信用中継アンテナシートを貼り付けた一例を示す模式図である。
図11は、建築物の建具、例えば扉に本発明の無線通信用中継アンテナシートを貼り付けた一例を示す模式図である。
図10を参照して、コンクリートや土壁などの建造物の角部に無線通信用中継アンテナシートを貼り付けることで、コードレス電話機やFAX機、加熱中の電子レンジなどの電波干渉を起こすような機器があっても通信距離の延長や電波の届かない死角エリアへの通信を可能にすることができる。また
図11を参照して、通信障害となる扉や窓などの障害物の両面を跨ぐように無線通信用中継アンテナシートを貼り付けることで、電波が遮蔽された空間の無線通信を、簡便な方法で、安定に行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 無線中継用アンテナシート
2 シート状基材
3 アンテナ回路パターン
31 第1のアンテナ部
32 第2のアンテナ部
33 伝送線部
4 粘着層
5 保護層
6 無給電エレメント