(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178184
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】無線装置、その制御方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20221125BHJP
H03F 1/32 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H04B1/04 R
H03F1/32 141
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084779
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】相馬 達也
【テーマコード(参考)】
5J500
5K060
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AC22
5J500AF08
5J500AF17
5J500AF20
5J500AH19
5J500AH25
5J500AK23
5J500AK26
5J500AM13
5J500AM20
5J500AS14
5J500AT01
5J500NG03
5J500NG04
5J500NG05
5J500NH03
5J500NH08
5J500NN16
5K060BB08
5K060CC04
5K060DD04
5K060HH06
5K060KK06
5K060LL24
(57)【要約】
【課題】無線信号の線形性を向上させることが可能な無線装置、その制御方法、及び、制御プログラムを提供すること。
【解決手段】無線装置は、無線信号に歪補償成分を付与して出力する歪補償部と、歪補償部によって歪補償成分が付与された無線信号を増幅する増幅器と、増幅器の出力信号の信号対雑音比を劣化させてフィードバック信号として出力する信号対雑音比調整部と、を備え、歪補償部は、フィードバック信号から増幅器の出力信号に含まれる歪成分を推定し、推定された歪成分の逆特性を有する歪補償成分を無線信号に付与する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号に歪補償成分を付与して出力する歪補償部と、
前記歪補償部によって前記歪補償成分が付与された前記無線信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力信号の信号対雑音比を劣化させてフィードバック信号として出力する信号対雑音比調整部と、
を備え、
前記歪補償部は、前記フィードバック信号から前記増幅器の出力信号に含まれる歪成分を推定し、推定された前記歪成分の逆特性を有する前記歪補償成分を前記無線信号に付与する、
無線装置。
【請求項2】
前記信号対雑音比調整部は、
ノイズを生成するノイズソースと、
前記ノイズソースによって生成された前記ノイズと、前記増幅器の出力信号と、を合成する合成器と、
を有する、
請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記信号対雑音比調整部は、
熱雑音を生成する抵抗素子と、
前記抵抗素子によって生成された前記熱雑音を増幅する低雑音増幅器と、
前記低雑音増幅器の出力信号と、前記増幅器の出力信号と、を合成する合成器と、
を有する、
請求項1に記載の無線装置。
【請求項4】
前記増幅器の出力信号の電力を測定する電力測定部をさらに備え、
前記信号対雑音比調整部は、前記電力測定部の測定結果に基づいて、前記増幅器の出力信号の信号対雑音比の劣化度を調整する、
請求項1~3の何れか一項に記載の無線装置。
【請求項5】
前記増幅器の出力信号に含まれる前記歪成分を測定する歪測定部をさらに備え、
前記信号対雑音比調整部は、前記歪測定部の測定結果に基づいて、前記増幅器の出力信号の信号対雑音比の劣化度を調整する、
請求項1~4の何れか一項に記載の無線装置。
【請求項6】
無線信号に歪補償成分を付与して出力する歪補償ステップと、
前記歪補償成分が付与された前記無線信号を、増幅器を用いて増幅する増幅ステップと、
前記増幅器の出力信号の信号対雑音比を劣化させてフィードバック信号として出力する信号対雑音比調整ステップと、
を備え、
前記歪補償ステップでは、前記フィードバック信号から前記増幅器の出力信号に含まれる歪成分を推定し、推定された前記歪成分の逆特性を有する前記歪補償成分を前記無線信号に付与する、
無線装置の制御方法。
【請求項7】
無線信号に歪補償成分を付与して出力する歪補償処理と、
前記歪補償成分が付与された前記無線信号を、増幅器を用いて増幅する増幅処理と、
前記増幅器の出力信号の信号対雑音比を劣化させてフィードバック信号として出力する信号対雑音比調整処理と、
をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、
前記歪補償処理では、前記フィードバック信号から前記増幅器の出力信号に含まれる歪成分を推定し、推定された前記歪成分の逆特性を有する前記歪補償成分を前記無線信号に付与する、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置、その制御方法、及び、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波やマイクロ波の通信装置では、送信アナログ回路の出力信号の線形性を改善するため、Digital Pre-distortion(DPD)と呼ばれる歪補償技術が用いられている。DPDでは、送信アナログ回路の非線形応答特性を多項式関数によりモデル化し、モデルから得られた歪の逆特性を、送信アナログ回路への入力信号に付与する。モデルの推定には、リッジ回帰法を用いる手法が知られている。リッジ回帰法とは、最小二乗法における残差の二乗和に多項式の係数の大きさに応じた正則化項を付加したものを評価関数とし、その評価関数が最小になるような多項式の係数を決定する手法である(特許文献1参照)。
【0003】
リッジ回帰法において評価関数の最小化によりモデルのパラメータを求める手続きは、入力データがガウス分布に従う不確実性を持っていると仮定して最尤推定によりモデルのパラメータを求める手続きと等価であることが知られている。また、この場合、リッジ回帰の評価関数の正則化項の係数は、事前分布となるガウス分布の分散に比例した値として解釈することができることが知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
その他、特許文献2には、歪補償を行った送信信号を送信する複数の送信部を有する基地局であって、各送信部が、送信信号を増幅して出力する第1の増幅器と、第1の増幅器の出力を減衰してフィードバックするフィードバック経路と、フィードバック経路を介してフィードバックされた信号に基づいて算出される歪補償係数に基づいて歪補償を行う歪補償部と、を備えた基地局が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-273214号公報
【特許文献2】特開2018-78532号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pattern Recognition and Machine Learning, Christopher M. Bishop, Springer, ISBN-13: 978-0387-31073-2, pp.28-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や非特許文献1等の関連技術では、増幅器の歪モデルを推定する際、より妥当なモデルを得るために、デジタル信号処理の一環として評価関数に正規化項を付加している。しかしながら、関連技術では、デジタル信号処理に熟知していなければ正規化項に相当するパラメータを適切に設定することができない、という課題があった。即ち、関連技術では、依然として、通信装置の出力信号(無線信号)の線形性を向上させることができない、という課題があった。
【0008】
本開示の目的の一つは、上述した課題を解決する無線装置、その制御方法、及び、制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態によれば、無線装置は、無線信号に歪補償成分を付与して出力する歪補償部と、前記歪補償部によって前記歪補償成分が付与された前記無線信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力信号の信号対雑音比を劣化させてフィードバック信号として出力する信号対雑音比調整部と、を備え、前記歪補償部は、前記フィードバック信号から前記増幅器の出力信号に含まれる歪成分を推定し、推定された前記歪成分の逆特性を有する前記歪補償成分を前記無線信号に付与する。
【0010】
一実施の形態によれば、無線装置の制御方法は、無線信号に歪補償成分を付与して出力する歪補償ステップと、前記歪補償成分が付与された前記無線信号を、増幅器を用いて増幅する増幅ステップと、前記増幅器の出力信号の信号対雑音比を劣化させてフィードバック信号として出力する信号対雑音比調整ステップと、を備え、前記歪補償ステップでは、前記フィードバック信号から前記増幅器の出力信号に含まれる歪成分を推定し、推定された前記歪成分の逆特性を有する前記歪補償成分を前記無線信号に付与する。
【0011】
一実施の形態によれば、制御プログラムは、無線信号に歪補償成分を付与して出力する歪補償処理と、前記歪補償成分が付与された前記無線信号を、増幅器を用いて増幅する増幅処理と、前記増幅器の出力信号の信号対雑音比を劣化させてフィードバック信号として出力する信号対雑音比調整処理と、をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、前記歪補償処理では、前記フィードバック信号から前記増幅器の出力信号に含まれる歪成分を推定し、推定された前記歪成分の逆特性を有する前記歪補償成分を前記無線信号に付与する。
【発明の効果】
【0012】
前記一実施の形態によれば、無線信号の線形性を向上させることが可能な無線装置、その制御方法、及び、制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1にかかる無線装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す無線装置に設けられた信号対雑音比調整部の第1の具体的な構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す無線装置に設けられた信号対雑音比調整部の第2の具体的な構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す無線装置に設けられた信号対雑音比調整部の第3の具体的な構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示す無線装置に設けられた信号対雑音比調整部の第4の具体的な構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態2にかかる無線装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態3にかかる無線装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0017】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかる無線装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、無線装置1は、歪補償部11と、増幅器12と、信号対雑音比調整部(SN比調整部)13と、を備える。なお、SN比とは、Signal to Noise比の略である。
【0018】
歪補償部11は、無線装置1に入力された無線信号(入力信号)に歪補償成分を付与して出力する。なお、歪補償成分は、後段の増幅器12の出力信号に含まれる歪成分の逆特性を有する。増幅器12は、歪補償部11によって歪補償成分が付与された無線信号を増幅する。増幅器12の出力信号は、無線装置1の出力信号として用いられるとともに、フィードバック経路を介して、歪補償部11にフィードバックされる。
【0019】
ここで、フィードバック経路上には、信号対雑音比調整部13が設けられている。信号対雑音比調整部13は、増幅器12の出力信号の信号対雑音比(SN比)を劣化させて、フィードバック信号として出力する。つまり、信号対雑音比調整部13は、増幅器12の出力信号におけるノイズ成分を増大させて、フィードバック信号として出力する。
【0020】
歪補償部11は、フィードバック信号から増幅器12の出力信号に含まれる歪成分(増幅器12の非線形応答特性)を推定し、推定した歪成分の逆特性を有する歪補償成分を、無線装置1に入力された無線信号(入力信号)に付与する。それにより、増幅器12の出力信号に含まれる歪成分が相殺されるため、増幅器12の出力信号(即ち、無線装置1の出力信号)の非線形性が向上する。
【0021】
ここで、SN比を劣化させたフィードバック信号は、SN比を劣化させる前のフィードバック信号(即ち、増幅器12の出力信号)が、ガウス分布に従って近似的に摂動を受けたもの、とみなすことができる。また、SN比の劣化量は、ガウス分布の分散としてとらえることができる。このような条件において、歪補償部11による多項式関数を用いた歪成分のモデル推定(多項式モデル推定)に、最小二乗法を用いたモデル推定を採用している場合、当該モデル推定は、SN比が劣化していない増幅器12の出力信号に対する、リッジ回帰による多項式モデル推定、と等価になる。
【0022】
リッジ回帰は、多項式モデルの複雑性を抑えることでより妥当な多項式モデルを安定して得る手法であり、歪補償部11における最小二乗法を用いた多項式モデル推定においてより高性能な歪補正効果が期待されるモデルを得ることができる。なお、歪補償部11における多項式モデル推定には、最小二乗法を用いたモデル推定が採用される場合に限られず、リッジ回帰による多項式モデル推定が既に採用されていてもよいし、ニューラルネットワークを用いた推定手法が採用されていてもよい。何れの場合でも、多項式モデルの複雑性抑制効果を得ることができる。
【0023】
なお、SN比の劣化量の程度を変化させることで、モデル推定の際の評価関数の正則化項の係数を変化させることと同様に、多項式モデルの複雑性を制御することが可能となる。例えば、SN比の劣化量が小さすぎる場合には、外乱の影響を受けるため精度の高いモデル推定を行うことができない。また、SN比の劣化量が大きすぎる場合にも、ノイズが支配的になるため精度の高いモデル推定を行うことができない。そのため、増幅器12の想定される出力及び非線形性に応じて最も歪補償の効果が得られるSN比を予め測定しておき、増幅器12の動作状態に応じて信号対雑音比調整部13においてSN比を調整することが望ましい。なお、信号対雑音比調整部13によってSN比を劣化させたフィードバック信号のSN比は、増幅器12の出力レベルによらず一定になるように制御されてもよい。
【0024】
このように、本実施の形態に係る無線装置1は、歪補償部11にフィードバックされる増幅器12の出力信号のSN比を、信号対雑音比調整部13を用いて劣化させる。それにより、本実施の形態に係る無線装置1は、歪補償部11において、リッジ回帰による多項式モデル推定と同程度の高精度な歪成分のモデル推定を行うことができる。それにより、本実施の形態に係る無線装置1は、増幅器12の出力信号に含まれる歪成分を効果的に抑制することができるため、増幅器12の出力信号(無線信号)の線形性を向上させることができる。
【0025】
また、無線装置1では、多項式モデル推定の高精度化のためにデジタル信号処理のアルゴリズムを変更する必要がない。そのため、例えば高速なデジタル信号処理の実現のためにApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)が実装されている場合でも、半導体の再製造が不要であるため、コストの増大が抑制される。
【0026】
続いて、
図2~
図5を用いて、信号対雑音比調整部13の具体的な構成例について説明する。
【0027】
(信号対雑音比調整部13の第1の具体的な構成例)
図2は、信号対雑音比調整部13の第1の具体的な構成例を、信号対雑音比調整部13aとして示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、信号対雑音比調整部13aは、合成器21と、ノイズソース22と、を備える。ノイズソース22はノイズの発生源である。合成器21は、増幅器12の出力信号と、ノイズソース22により生成されたノイズと、を合成してフィードバック信号として出力する。それにより、信号対雑音比調整部13aは、増幅器12の出力信号のSN比を劣化させることができる。
【0029】
(信号対雑音比調整部13の第2の具体的な構成例)
図3は、信号対雑音比調整部13の第2の具体的な構成例を、信号対雑音比調整部13bとして示すブロック図である。
【0030】
図3に示すように、信号対雑音比調整部13bは、合成器31と、低雑音増幅器32と、抵抗素子33と、を備える。抵抗素子33は、熱雑音を生成する。低雑音増幅器32は、抵抗素子33によって生成された熱雑音を増幅する。合成器31は、低雑音増幅器32の出力信号と、増幅器12の出力信号と、を合成してフィードバック信号として出力する。それにより、信号対雑音比調整部13bは、増幅器12の出力信号のSN比を劣化させることができる。
【0031】
(信号対雑音比調整部13の第3の具体的な構成例)
図4は、信号対雑音比調整部13の第3の具体的な構成例を、信号対雑音比調整部13cとして示すブロック図である。
【0032】
図4に示すように、信号対雑音比調整部13cは、可変減衰器41を備える。可変減衰器41は、増幅器12の出力信号のレベル(振幅)を減衰させることにより、増幅器12の出力信号のSN比を劣化させることができる。
【0033】
(信号対雑音比調整部13の第4の具体的な構成例)
図5は、信号対雑音比調整部13の第4の具体的な構成例を、信号対雑音比調整部13dとして示すブロック図である。信号対雑音比調整部13dは、信号対雑音比調整部13cに設けられた可変減衰器41の具体例を示している。
【0034】
図5に示すように、信号対雑音比調整部13dは、電圧源51と、抵抗素子52と、シャントのダイオード53と、を備える。電圧源51は、グランドと抵抗素子52との間に設けられている。抵抗素子52は、電圧源51とフィードバック経路との間に設けられている。ダイオード53では、アノードがグランドに接続され、カソードがフィードバック経路に接続されている。電圧源51は、出力電圧を変更可能に構成されている。
【0035】
ここで、信号対雑音比調整部13dは、電圧源51の出力電圧を変更して、ダイオード53への印加電圧を変更することにより、ダイオード53のインピーダンスを変化させることができる。それにより、信号対雑音比調整部13dは、増幅器12の出力信号のレベル(振幅)を減衰させて、増幅器12の出力信号のSN比を劣化させることができる。
【0036】
なお、信号対雑音比調整部13は、上記の具体的な構成に限られず、同等の動作を実現可能な他の構成に適宜変更可能である。
【0037】
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2にかかる無線装置2の構成例を示すブロック図である。
図6に示す無線装置2は、
図1に示す無線装置1と比較して、電力測定部61をさらに備える。
【0038】
電力測定部61は、通常動作中の増幅器12の出力信号の電力を測定する。信号対雑音比調整部13は、電力測定部61の測定結果に基づいて、増幅器12の出力信号のSN比の劣化度を調整する。それにより、無線装置2は、無線装置1の場合よりも高精度にSN比の劣化度を調整することができる。
【0039】
無線装置2のその他の構成については、無線装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0040】
<実施の形態3>
図7は、実施の形態3にかかる無線装置3の構成例を示すブロック図である。
図7に示す無線装置3は、
図1に示す無線装置1と比較して、歪測定部71をさらに備える。
【0041】
歪測定部71は、通常動作中の増幅器12の出力信号に含まれる歪成分を測定する。信号対雑音比調整部13は、歪測定部71により測定された歪成分が低減されるように(理想的には最小になるように)、増幅器12の出力信号のSN比の劣化度を調整する。それにより、無線装置3は、無線装置1の場合よりも、安定して、且つ、時間変動等の外乱の影響に対して適応的に、歪補償を行うことができる。
【0042】
無線装置3のその他の構成については、無線装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。なお、無線装置3は、電力測定部61をさらに備え、歪測定部71の測定結果に加えて電力測定部61の測定結果に基づいて、増幅器12の出力信号のSN比の劣化度を調整するように構成されてもよい。
【0043】
以上のように、上記実施の形態1~3に係る無線装置は、歪補償部11にフィードバックされる増幅器12の出力信号のSN比を、信号対雑音比調整部13を用いて劣化させる。それにより、上記実施の形態1~3に係る無線装置は、歪補償部11において、リッジ回帰による多項式モデル推定と同程度の高精度な歪成分のモデル推定を行うことができる。それにより、上記実施の形態1~3に係る無線装置は、増幅器12の出力信号に含まれる歪成分を効果的に抑制することができるため、増幅器12の出力信号(無線信号)の線形性を向上させることができる。
【0044】
また、上記実施の形態1~3に係る無線装置では、多項式モデル推定の高精度化のためにデジタル信号処理のアルゴリズムを変更する必要がない。そのため、例えば高速なデジタル信号処理の実現のためにASICが実装されている場合でも、半導体の再製造が不要であるため、コストの増大が抑制される。
【0045】
なお、特許文献2の構成では、フィードバックに用いられる増幅器の出力信号を減衰させることによりSN比を劣化させているのに対し、上記実施の形態1~3に係る無線装置では、フィードバックに用いられる増幅器の出力信号にノイズを付加することによりSN比を劣化させている。したがって、特許文献2と上記実施の形態1~3に係る無線装置とではSN比の劣化の手法が異なる。また、上記実施の形態1~3に係る無線装置では、信号レベルを保ったままSN比を調整し後段の回路にフィードバック信号を伝えることができるため、例えば後段の回路として想定されるアナログデジタルコンバータ(ADコンバータ)やパワーディテクタといった回路にとって十分な入力レベルを維持することが容易になる。それにより、ADコンバータやパワーディテクタへの入力レベル調整回路を簡便に保つことができるため、より高い品質のままフィードバック信号を取り扱うことが可能となる。
【0046】
以上、図面を参照して、本開示の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。
【0047】
上述の実施の形態では、本開示をハードウェアの構成として説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。本開示は、各無線装置1~3による制御処理を、Central Processing Unit(CPU)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0048】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、Random-Access Memory(RAM)、Read-Only Memory(ROM)、フラッシュメモリ、Solid-State Drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、Digital Versatile Disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0049】
1 無線装置
2 無線装置
3 無線装置
11 歪補償部
12 増幅器
13 信号対雑音比調整部
13a 信号対雑音比調整部
13b 信号対雑音比調整部
13c 信号対雑音比調整部
13d 信号対雑音比調整部
21 合成器
22 ノイズソース
31 合成器
32 低雑音増幅器
33 抵抗素子
41 可変減衰器
51 電圧源
52 抵抗素子
53 ダイオード
61 電力測定部
71 歪測定部