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特開2022-178185積込機械の制御システム及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178185
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】積込機械の制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221125BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20221125BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F3/43 F
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084780
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
(72)【発明者】
【氏名】西郷 雄祐
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA02
2D003BB09
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】積込機械の自動制御中に、オペレータによる操作に応じて積込機械を制御する。
【解決手段】操作信号入力部は、操作装置の操作に基づく旋回体及び作業機の手動操作信号の入力を受け付ける。移動制御部は、旋回体及び作業機を駆動させる自動操作信号を生成する。出力判定部は、入力された前記手動操作信号に基づいて、前記旋回体及び前記作業機のうち、前記手動操作信号の入力があるものについて、前記手動操作信号を出力すると判定し、前記手動操作信号の入力がないものについて、前記自動操作信号を出力すると判定する。操作信号出力部は、判定の結果に基づいて、旋回体及び作業機のそれぞれについて、手動操作信号又は自動操作信号を出力する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体を支持する支持部と、バケットを有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御システムであって、
前記旋回体及び前記作業機を操作するための操作装置の操作に基づく前記旋回体及び前記作業機の手動操作信号の入力を受け付ける操作信号入力部と、
前記旋回体及び前記作業機を駆動させる自動操作信号を生成する移動制御部と、
入力された前記手動操作信号に基づいて、前記旋回体及び前記作業機のうち、前記手動操作信号の入力があるものについて、前記手動操作信号を出力すると判定し、前記手動操作信号の入力がないものについて、前記自動操作信号を出力すると判定する出力判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記旋回体及び前記作業機のそれぞれについて、前記手動操作信号又は前記自動操作信号を出力する操作信号出力部と
を備える積込機械の制御システム。
【請求項2】
前記作業機は、前記バケットを含む複数のリンク部品で構成され、
前記判定の結果が、前記複数のリンク部品のうち少なくとも1つのリンク部品について前記手動操作信号を出力することを示す場合に、前記移動制御部が、前記複数のリンク部品のうち前記少なくとも1つのリンク部品以外の他のリンク部品について、前記他のリンク部品に係る前記手動操作信号の操作量に近づくように前記自動操作信号を生成する
請求項1に記載の積込機械の制御システム。
【請求項3】
前記出力判定部は、前記旋回体及び前記作業機のうち、前記手動操作信号の操作量が前記自動操作信号の操作量未満のものについて、前記自動操作信号を出力すると判定する
請求項1または請求項2に記載の積込機械の制御システム。
【請求項4】
前記バケットを積込目標の上方から掘削開始点まで移動させる自動制御中に、上方からの平面視において前記バケットと前記積込目標とが重ならなくなる前記旋回体の旋回角度である干渉回避角度を特定する回避角度特定部を備え、
前記操作信号出力部は、前記旋回体の旋回角度が前記干渉回避角度に到達するまで、前記作業機について前記手動操作信号に関わらず前記自動操作信号を出力する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の積込機械の制御システム。
【請求項5】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体を支持する支持部と、バケットを有し前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
前記旋回体及び前記作業機を操作するための操作装置の操作に基づく前記旋回体及び前記作業機の手動操作信号の入力を受け付けるステップと、
前記旋回体及び前記作業機を駆動させる自動操作信号を生成するステップと、
入力された前記手動操作信号に基づいて、前記旋回体及び前記作業機のうち、前記手動操作信号の入力があるものについて、前記手動操作信号を出力すると判定し、前記手動操作信号の入力がないものについて、前記自動操作信号を出力すると判定するステップと、
前記判定の結果に基づいて、前記旋回体及び前記作業機のそれぞれについて、前記手動操作信号又は前記自動操作信号を出力するステップと
を備える積込機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積込機械の制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積込機械の半自動制御に関する技術が開示されている。特許文献1に係る半自動制御は、ダンプトラックなどの積込目標に対する積込完了後に、オペレータから掘削指示を受け付け、制御装置が積込機械の旋回及び作業機の駆動を制御することで、自動掘削を行う制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-041352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半自動制御による制御後のバケットの位置と、オペレータが意図するバケットの位置とは、必ずしも一致しない。
本開示の目的は、積込機械の自動制御中に、オペレータによる操作に応じて積込機械を制御する積込機械の制御システム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、積込機械の制御システムは、旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体を支持する支持部と、バケットを有し前記旋回体に取り付けられた作業機と、前記旋回体及び前記作業機を操作するための操作装置とを備える積込機械の制御装置であって、前記操作装置の操作に基づく前記旋回体及び前記作業機の手動操作信号の入力を受け付ける操作信号入力部と、前記旋回体及び前記作業機を駆動させる自動操作信号を生成する移動制御部と、入力された前記手動操作信号に基づいて、前記旋回体及び前記作業機のうち、前記手動操作信号の入力があるものについて、前記手動操作信号を出力すると判定し、前記手動操作信号の入力がないものについて、前記自動操作信号を出力すると判定する出力判定部と、前記判定の結果に基づいて、前記旋回体及び前記作業機のそれぞれについて、前記手動操作信号又は前記自動操作信号を出力する操作信号出力部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、積込機械の制御システムは、積込機械の自動制御中に、オペレータによる操作に応じて積込機械を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る作業機の掘削開始時の目標姿勢の例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る自動積込制御開始から排土開始までの積込機械の動きの例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る排土開始から自動積込制御終了までの積込機械の動きの例を示す図である。
図7】第1の実施形態における自動積込制御の開始時の作業機の姿勢と自動積込制御の終了時の作業機の姿勢とを対比する図である。
図8】第1の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態に係る自動積込制御開始から排土開始までの制御装置の動作を示すフローチャートである。
図10】第1の実施形態に係る排土開始から自動積込制御終了までの制御装置の動作を示すフローチャートである。
図11】第1の実施形態に係る制御装置の自動/手動切替判定動作を示すフローチャートである。
図12】第1の実施形態に係る作業機の操作信号の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0009】
《積込機械100の構成》
図1は、第1の実施形態に係る積込機械100の構成を示す概略図である。
積込機械100は、施工現場にて稼働し、土砂などの施工対象を掘削し、ダンプトラックなどの積込目標Tに積み込む。第1の実施形態に係る積込機械100は、フェイスショベルである。なお、他の実施形態に係る積込機械100は、バックホウショベルやロープショベルであってよい。積込機械100は、走行体110、旋回体120、作業機130及び運転室140を備える。
【0010】
走行体110は、積込機械100を走行可能に支持する。走行体110は、左右に設けられた2つの無限軌道111と、各無限軌道111を駆動するための2つの走行モータ112を備える。
旋回体120は、走行体110に旋回中心回りに旋回可能に支持される。
作業機130は、油圧により駆動する。作業機130は、旋回体120の前部に上下方向に駆動可能に支持される。運転室140は、オペレータが搭乗し、積込機械100の操作を行うためのスペースである。運転室140は、旋回体120の左前部に設けられる。
ここで、旋回体120のうち作業機130が取り付けられる部分を前部という。また、旋回体120について、前部を基準に、反対側の部分を後部、左側の部分を左部、右側の部分を右部という。
【0011】
《旋回体120の構成》
旋回体120には、エンジン121、油圧ポンプ122、コントロールバルブ123、旋回モータ124を備える。
エンジン121は、油圧ポンプ122を駆動する原動機である。エンジン121は、動力源の一例である。
油圧ポンプ122は、エンジン121により駆動される可変容量ポンプである。油圧ポンプ122は、コントロールバルブ123を介して各アクチュエータ(ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、バケットシリンダ133C、クラムシリンダ1332C、走行モータ112、及び旋回モータ124)に作動油を供給する。
コントロールバルブ123は、油圧ポンプ122から供給される作動油の流量を制御する。
旋回モータ124は、コントロールバルブ123を介して油圧ポンプ122から供給される作動油によって駆動し、旋回体120を旋回させる。
【0012】
《作業機130の構成》
作業機130は、ブーム131、アーム132、クラムバケット133、ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、及びバケットシリンダ133Cを備える。
【0013】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンを介して取り付けられる。なお、図1に示す積込機械100においては、ブーム131が旋回体120の正面中央部分に設けられるが、これに限られず、ブーム131は左右方向にオフセットして取り付けられたものであってもよい。この場合、旋回体120の旋回中心は作業機130の動作平面上に位置しない。
アーム132は、ブーム131とクラムバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピンを介して取り付けられる。
クラムバケット133は、アーム132の先端部にピンを介して取り付けられるバックオール1331と、土砂などを掘削するための刃を有するクラムシェル1332と、バックオール1331とクラムシェル1332とを開閉するためのクラムシリンダ1332Cを有する。バックオール1331とクラムシェル1332とはピンを介して開閉可能に連結される。バックオール1331とクラムシェル1332とが閉じているとき、バックオール1331及びクラムシェル1332は、掘削した土砂を収容するための容器として機能する。他方、バックオール1331とクラムシェル1332とが開くことで、収容した土砂を排土することができる。クラムシリンダ1332Cの基端部は、バックオール1331に取り付けられる。クラムシリンダ1332Cの先端部は、クラムシェル1332に取り付けられる。
つまり、ブーム131、アーム132、バックオール1331及びクラムシェル1332は、リンケージを構成する。ブーム131、アーム132、バックオール1331及びクラムシェル1332は、それぞれリンク部品の一例である。
【0014】
ブームシリンダ131Cは、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ131Cの基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ131Cの先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ132Cは、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ132Cの基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ132Cの先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ133Cは、クラムバケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ133Cの基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ133Cの先端部は、バックオール1331に接続されるリンク部材に取り付けられる。
【0015】
《運転室140の構成》
図2は、第1の実施形態に係る運転室140の内部の構成を示す図である。
運転室140内には、運転席141、操作端末142及び操作装置143が設けられる。操作端末142は、運転席141の近傍に設けられ、後述する制御装置160とのユーザインタフェースである。操作端末142は、例えばタッチパネルによってオペレータからの操作を受け付けてよい。また、操作端末142は、LCDなどの表示部を備えるものであってよい。タッチパネルは表示部の一例である。
【0016】
操作装置143は、オペレータの手動操作によって走行体110、旋回体120及び作業機130を駆動させるための装置である。操作装置143は、左操作レバー143LO、右操作レバー143RO、左フットペダル143LF、右フットペダル143RF、左走行レバー143LT、右走行レバー143RT、クラムオープンペダル143CO、クラムクローズペダル143CC、旋回ブレーキペダル143TB、開始スイッチ143SWを備える。
【0017】
左操作レバー143LOは、運転席141の左側に設けられる。右操作レバー143ROは、運転席141の右側に設けられる。
【0018】
左操作レバー143LOは、旋回体120の旋回動作、及び、アーム132の掘削/ダンプ動作を行うための操作機構である。具体的には、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを前方に倒すと、アーム132がダンプ動作する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを後方に倒すと、アーム132が掘削動作する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを右方向に倒すと、旋回体120が右旋回する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを左方向に倒すと、旋回体120が左旋回する。なお、他の実施形態においては、左操作レバー143LOを前後方向に倒した場合に旋回体120が右旋回又は左旋回し、左操作レバー143LOが左右方向に倒した場合にアーム132が掘削動作又はダンプ動作してもよい。
【0019】
右操作レバー143ROは、クラムバケット133の掘削/ダンプ動作、及び、ブーム131の上げ/下げ動作を行うための操作機構である。具体的には、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを前方に倒すと、ブーム131の下げ動作が実行される。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを後方に倒すと、ブーム131の上げ動作が実行される。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを右方向に倒すと、クラムバケット133のダンプ動作が行われる。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを左方向に倒すと、クラムバケット133の掘削動作が行われる。なお、他の実施形態においては、右操作レバー143ROを前後方向に倒した場合に、クラムバケット133がダンプ動作又は掘削動作し、右操作レバー143ROを左右方向に倒した場合にブーム131が上げ動作又は下げ動作してもよい。
【0020】
左フットペダル143LFは、運転席141の前方の床面の左側に配置される。右フットペダル143RFは、運転席141の前方の床面の右側に配置される。左走行レバー143LTは、左フットペダル143LFに軸支され、左走行レバー143LTの傾斜と左フットペダル143LFの押し下げが連動するように構成される。右走行レバー143RTは、右フットペダル143RFに軸支され、右走行レバー143RTの傾斜と右フットペダル143RFの押し下げが連動するように構成される。
【0021】
左フットペダル143LF及び左走行レバー143LTは、走行体110の左側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、積込機械100のオペレータが左フットペダル143LF又は左走行レバー143LTを前方に倒すと、左側履帯は前進方向に回転する。また、積込機械100のオペレータが左フットペダル143LF又は左走行レバー143LTを後方に倒すと、左側履帯は後進方向に回転する。
【0022】
右フットペダル143RF及び右走行レバー143RTは、走行体110の右側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、積込機械100のオペレータが右フットペダル143RF又は右走行レバー143RTを前方に倒すと、右側履帯は前進方向に回転する。また、積込機械100のオペレータが右フットペダル143RF又は右走行レバー143RTを後方に倒すと、右側履帯は後進方向に回転する。
【0023】
クラムオープンペダル143CO及びクラムクローズペダル143CCは、左フットペダル143LFの右側に配置される。クラムオープンペダル143COはクラムクローズペダル143CCの左隣に配置される。クラムオープンペダル143COが押し下げられると、クラムバケット133が押し下げ量に応じた速度で開く。クラムクローズペダル143CCが押し下げられると、クラムバケット133が押し下げ量に応じた速度で閉じる。
【0024】
旋回ブレーキペダル143TBは、右フットペダル143RFの右側に配置される。旋回ブレーキペダル143TBが押し下げられると、コントロールバルブ123と旋回モータ124とを結ぶ油圧回路のリリーフ圧を増大させる。具体的には、旋回ブレーキペダル143TBが押し下げられたときに、コントロールバルブ123と旋回モータ124とを結ぶ油圧回路に設けられた可変リリーフバルブのソレノイドを励磁することで、可変リリーフバルブのリリーフ圧を増大させる。これにより、旋回に係るブレーキ力を増加させることができる。
【0025】
開始スイッチ143SWは、例えば左操作レバー143LOのハンドル部分に設けられる。なお、開始スイッチ143SWは、運転席141に着座したオペレータの近傍に位置するように配置されればよい。開始スイッチ143SWが押下されると、制御装置160に自動積込指示信号が出力される。制御装置160は、自動積込指示信号の入力を受け付けると、後述する自動積込制御を開始する。
【0026】
《計測系の構成》
図1に示すように、積込機械100は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブーム角度センサ153、アーム角度センサ154、バケット角度センサ155、検出装置156を備える。
【0027】
位置方位演算器151は、旋回体120の位置及び旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器151は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器151は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器151は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。旋回体120が向く方位とは、旋回体120の正面に直交する方向であって、作業機130のブーム131からクラムバケット133へ伸びる直線の延在方向の水平成分に等しい。
【0028】
傾斜計測器152は、旋回体120の加速度及び角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)を検出する。傾斜計測器152は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器152は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0029】
ブーム角度センサ153は、ブーム131に取り付けられ、ブーム131の傾斜角を検出する。
アーム角度センサ154は、アーム132に取り付けられ、アーム132の傾斜角を検出する。
バケット角度センサ155は、クラムバケット133のバックオール1331に取り付けられ、クラムバケット133の傾斜角を検出する。
第1の実施形態に係るブーム角度センサ153、アーム角度センサ154、及びバケット角度センサ155は、地平面に対する傾斜角を検出する。なお、他の実施形態に係る角度センサはこれに限られず、他の基準面に対する傾斜角を検出してもよい。例えば、他の実施形態においては、角度センサは、ブーム131、アーム132及びクラムバケット133の基端部に設けられたポテンショメータによって相対回転角を検出してもよいし、ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C及びバケットシリンダ133Cのシリンダ長さを計測し、シリンダ長さを角度に変換することで傾斜角を検出するものであってもよい。
【0030】
検出装置156は、積込機械100の周囲に存在する物体の三次元位置を検出する。検出装置156の例としては、ステレオカメラ、レーザスキャナ、UWB(Ultra Wide Band)測距装置などが挙げられる。検出装置156は、例えば運転室140の上部に、検出方向が前方を向くように設けられる。なお、検出装置156は、積込機械100の周囲を撮像可能であれば、どこに設けられてもよい。例えば、運転室140外の旋回体120の側壁等に設けられていてもよい。また検出方向は前方を向かなくてもよい。検出装置156は、物体の三次元位置を、検出装置156の位置を基準とした座標系で特定する。なお、他の実施形態に係る積込機械100は、複数の検出装置156を備えてもよい。
【0031】
《制御装置160の構成》
図3は、第1の実施形態に係る制御装置160の構成を示す概略ブロック図である。
積込機械100は、制御装置160を備える。制御装置160は、操作端末142に実装されるものであってもよいし、操作端末142と別個に設けられ、操作端末142からの入出力を受け付けるものであってもよい。制御装置160は、操作装置143から操作信号を受信する。操作信号は、操作対象と駆動速度を示す。以下、操作信号が示す駆動速度の大きさを操作量ともいう。制御装置160は、受信した操作信号又は計算によって生成した自動積込制御のための操作信号をコントロールバルブ123に出力することで、作業機130、旋回体120及び走行体110を駆動させる。以下、操作装置143から受信した操作信号を手動操作信号ともよび、計算によって生成した操作信号を自動操作信号ともよぶ。
【0032】
制御装置160は、プロセッサ610、メインメモリ630、ストレージ650、インタフェース670を備えるコンピュータである。ストレージ650は、プログラムを記憶する。プロセッサ610は、プログラムをストレージ650から読み出してメインメモリ630に展開し、プログラムに従った処理を実行する。
【0033】
ストレージ650の例としては、半導体メモリ、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等が挙げられる。ストレージ650は、制御装置160の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース670を介して制御装置160に接続される外部メディアであってもよい。メインメモリ630及びストレージ650は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0034】
プロセッサ610は、プログラムの実行により、計測データ取得部611、マップ生成部612、操作信号入力部613、作業機位置特定部614、積込目標特定部615、開始角度特定部616、回避角度特定部617、目標姿勢決定部618、移動制御部619、クラム制御部620、出力判定部621、操作信号出力部622を備える。
【0035】
計測データ取得部611は、積込機械100の計測系による計測データを取得する。具体的には、計測データ取得部611は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブーム角度センサ153、アーム角度センサ154、バケット角度センサ155、及び検出装置156から計測データを取得する。計測データ取得部611は、傾斜計測器152が計測した旋回体120の角速度を積分することで、旋回体120の角度を算出する。
【0036】
マップ生成部612は、検出装置156から取得した計測データを用いて積込機械100の周囲を表すマップデータを生成する。マップ生成部612は、例えばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術によってマップデータを生成する。マップデータは、車体座標系で表される。車体座標系は、旋回体120の旋回中心を原点とし、前後方向に伸びる軸、左右方向に伸びる軸、上下方向に伸びる軸で表される直交座標系である。検出装置156は、旋回体120に固定されているため、マップ生成部612は、SLAMの計算結果を、旋回中心と検出装置156との位置関係に基づいて平行移動させることで、車体座標系のマップデータを生成することができる。マップ生成部612が生成したマップデータは、メインメモリ630に記録される。
【0037】
操作信号入力部613は、操作装置143から手動操作信号の入力を受け付ける。手動操作信号には、ブーム131の回動操作信号、アーム132の回動操作信号、クラムバケット133の回動操作信号、クラムバケット133の開閉操作信号、旋回体120の旋回操作信号、走行体110の走行操作信号、ならびに積込機械100の自動積込指示信号が含まれる。
【0038】
作業機位置特定部614は、計測データ取得部611が取得した計測データに基づいて、旋回体120を基準とする車体座標系におけるアーム132の先端の位置P(図5)及びアーム132の先端からクラムバケット133の最下点までの高さH(図5)を特定する。クラムバケット133の最下点とは、クラムバケット133の外形のうち地表面からの距離が最も短い点をいう。
【0039】
作業機位置特定部614は、ブーム131の傾斜角と既知のブーム131の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム131の長さの垂直方向成分及び水平方向成分を求める。同様に、作業機位置特定部614は、アーム132の長さの垂直方向成分及び水平方向成分を求める。作業機位置特定部614は、積込機械100の位置から、積込機械100の方位及び姿勢から特定される方向に、ブーム131及びアーム132の長さの垂直方向成分の和及び水平方向成分の和だけ離れた位置を、アーム132の先端の位置Pとして特定する。また、作業機位置特定部614は、クラムバケット133の傾斜角と既知のクラムバケット133の形状とに基づいて、クラムバケット133の鉛直方向の最下点を特定し、アーム132の先端から最下点までの高さH及び先端から最下点までの水平距離D(図5)を特定する。
【0040】
積込目標特定部615は、操作信号入力部613に自動積込指示信号が入力された場合に、マップ生成部612が生成したマップデータに基づいて、積込点を決定する。積込点とは、積込目標T(例えば、ダンプトラックのベッセル)より上方の位置である。自動積込制御では、アーム132の先端が積込点に到達したときに、ダンプ制御が開始される。具体的には、積込目標特定部615は、マップデータと既知の積込目標Tの形状とから、積込目標Tの位置及び形状を特定する。例えば積込目標特定部615は、三次元パターンマッチングによって積込目標Tの位置を特定する。積込目標特定部615は、特定した積込目標Tの上面の中心点とクラムバケット133の形状に基づいて積込点を決定する。
【0041】
開始角度特定部616は、操作信号入力部613に自動積込指示信号が入力されたときに旋回体120が向く方位と、積込点が存在する方位との間の角度を開始角度として特定する。自動積込指示信号が入力されたときに旋回体120が向く方位は、積込機械100の自動積込制御の開始時に旋回体120が向く方位ともいえる。つまり、開始角度特定部616は、自動積込制御の開始時に旋回体120の旋回中心から作業機位置特定部614が特定したアーム132の先端の位置へ伸びる線分と、旋回体120の旋回中心から積込点へ伸びる線分とのなす角を、開始角度として特定する。
【0042】
回避角度特定部617は、積込目標特定部615が特定した積込目標Tの位置及び形状に基づいて干渉回避角度を特定する。干渉回避角度とは、作業機130と積込目標Tとが上方からの平面視において干渉しないときの旋回角度である。具体的には、回避角度特定部617は、以下の手順で干渉回避角度を特定する。
【0043】
回避角度特定部617は、積込目標特定部615が特定した積込目標Tの位置及び形状に基づいて、積込目標Tの外形のうち旋回体120の旋回方向の最も後方の点p1(図5)を特定する。回避角度特定部617は、自動積込制御の開始時の旋回体120の旋回中心からアーム132の先端の位置へ伸びる線分と、旋回体120の旋回中心から特定した積込目標Tの外形の点へ伸びる線分とのなす第1角度φ1(図5)を求める。回避角度特定部617は、作業機位置特定部614が特定したアーム132の先端の位置と、既知のクラムバケット133の形状とに基づいて、クラムバケット133の外形のうち旋回体120の旋回方向の最も前方の点p2(図5)を特定する。回避角度特定部617は、旋回体120の旋回中心からアーム132の先端の位置へ伸びる線分と、旋回体120の旋回中心から特定したクラムバケット133の外形の点へ伸びる線分とのなす第2角度φ2を求める。回避角度特定部617は、第1角度φ1と第2角度φ2の差から、さらに制御余裕分の角度φ3を減算することで、干渉回避角度θ1(図5)を求める。
【0044】
目標姿勢決定部618は、積込目標特定部615が決定した旋回中心から積込点までの距離及び高さに基づいて、アーム132の先端が積込点に位置するときの作業機130の姿勢を計算し、作業機130の排土開始時の目標姿勢を決定する。また、目標姿勢決定部618は、予め定められた作業機130の掘削開始時の目標姿勢をストレージ650又はメインメモリ630から読み出すことで、作業機130の掘削開始時の目標姿勢を決定する。図4は、第1の実施形態に係る作業機130の掘削開始時の目標姿勢の例を示す図である。掘削開始時の目標姿勢は、例えばクラムバケット133が走行体110と干渉しない程度に接近し、かつクラムバケット133の底面が走行体110の底面を含む平面Z1と接触しない程度に接近するような姿勢である。つまり、掘削開始時の目標姿勢におけるクラムバケット133は、旋回中心からの距離が、走行体110に外接する仮想円柱より外側に形成される干渉禁止領域Z2より外側に位置する。このような目標姿勢は、次の掘削作業に入りやすい姿勢である。なお、干渉禁止領域Z2を走行体110相当の直方体でなく仮想円柱によって規定することで、旋回体120の旋回時に走行体110とクラムバケット133との接触が生じることを防ぐことができる。掘削開始時の目標姿勢に係るクラムバケット133の底面は、平面Z1と並行となってもよいし、平面Z1に対して鋭角をなしてもよい。目標姿勢は、例えば車体座標系におけるブーム131の先端、アーム132の先端、及びクラムバケット133の刃先の位置によって表される。なお、作業機130の姿勢は、作業機130を構成する各部品の車体座標系における位置及び角度を含む。
【0045】
図3に示す移動制御部619は、操作信号入力部613が自動積込指示信号の入力を受け付けた場合に、積込目標特定部615が特定した積込点、回避角度特定部617が特定した干渉回避角度に基づいて、クラムバケット133を積込点まで移動させるための旋回体120と作業機130との複合動作を実現する自動操作信号を生成する。具体的には、移動制御部619は、作業機130の姿勢が目標姿勢決定部618が決定した排土開始時の目標姿勢となるように作業機130を駆動させるための自動操作信号を生成する。また、移動制御部619は、旋回角度が干渉回避角度に至るまでに作業機130の姿勢が排土開始時の目標姿勢となるように、旋回開始タイミングを調整する。すなわち、移動制御部619は、旋回体120の旋回を開始した場合に、当該旋回による旋回角度が干渉回避角度に到達するまでに作業機130が目標姿勢とならない場合、旋回体120の旋回操作信号を生成せず、作業機130の操作信号のみを生成する。他方、移動制御部619は、旋回による旋回角度が干渉回避角度に到達するまでに作業機130が目標姿勢となると判定した場合、旋回体120の旋回操作信号及び作業機130の操作信号を生成し、旋回体120と作業機130との複合動作を実現する。
【0046】
また、移動制御部619は、アーム132の先端が積込点に到達した後、旋回体120を開始角度特定部616が特定した開始角度まで旋回し、作業機130の姿勢が目標姿勢決定部618が決定した掘削開始時の目標姿勢となるように旋回体120及び作業機130を駆動させるための自動操作信号を生成する。
【0047】
クラム制御部620は、アーム132の先端が積込点に到達したときに、クラムバケット133を開く自動操作信号を生成する。またクラム制御部620は、旋回体120の旋回角度が開始角度と干渉回避角度の差の角度を超えたときに、クラムバケット133を閉じる自動操作信号を生成する。なお、クラム制御部620は、アーム132の先端が積込点に到達する前であっても、上方からの平面視においてクラムバケット133と積込目標Tとが重なっているときに、クラムバケット133を開く自動操作信号を生成してもよい。
【0048】
出力判定部621は、操作信号入力部613に入力された手動操作信号と移動制御部619が生成した自動操作信号とに基づいて、旋回体120、ブーム131、アーム132、クラムバケット133、クラムシェル1332のそれぞれ(制御対象)を、手動操作信号と自動操作信号の何れによって制御するかを判定する。出力判定部621は、制御対象ごとに自動操作フラグの値をメインメモリ630に記録し、管理する。出力判定部621は、自動操作フラグがONである制御対象を自動操作信号によって制御し、自動操作フラグがOFFである制御対象を手動操作信号によって制御すると判定する。
操作信号出力部622は、出力判定部621の判定結果に基づいて、操作信号入力部613に入力された手動操作信号、又は移動制御部619が生成した自動操作信号を出力する。
【0049】
《自動積込制御時の動作》
ここで、図面を参照しながら、第1の実施形態に係る自動積込制御時の積込機械100の動きについて説明する。
図5は、第1の実施形態に係る自動積込制御開始から排土開始までの積込機械100の動きの例を示す図である。図6は、第1の実施形態に係る排土開始から自動積込制御終了までの積込機械100の動きの例を示す図である。
【0050】
第1の実施形態に係る自動積込制御は、オペレータによる手動操作によって作業機130が掘削対象である土砂を掘削し、クラムバケット133に土砂が保持された状態で、開始スイッチ143SWが押下されると開始される。自動積込制御が開始されると、積込機械100は土砂を積込目標Tの上で排土し、次の掘削開始点に作業機130を移動させる。第1の実施形態では、自動積込制御の終了時に、次の掘削処理が容易となるように、自動積込制御が開始された方向に旋回体120を向ける。また次の掘削処理が容易となるように、作業機130をクラムバケット133の底面を地面の近くまで下げ、またクラムバケット133を車体側に寄せた姿勢にする。
【0051】
具体的には、自動積込制御が開始されると、図5に示すように制御装置160は、まず作業機130(ブーム131、アーム132、及びクラムバケット133)の駆動を開始し、クラムバケット133を上方へ移動させる。遅れて、制御装置160は、旋回体120の旋回を開始させる。制御装置160は、旋回体120の旋回角度が干渉回避角度θと一致するまでに、作業機130の姿勢は排土開始時の目標姿勢となるように、旋回開始タイミングを調整する。以下、干渉回避角度θを第1干渉回避角度θともよぶ。なお、旋回体120の旋回角度が第1干渉回避角度θと一致するまでに作業機130の姿勢が排土開始時の目標姿勢となっている場合、つまりクラムバケット133の最下点の高さが積込目標Tの上面より高い場合、旋回体120の旋回によって作業機130が積込目標Tに接触することがない。その後、アーム132の先端が積込点に到達すると、制御装置160はクラムバケット133を開き、排土を開始する。
【0052】
排土開始から一定時間が経過すると、制御装置160は図6に示すように旋回体120の旋回を開始させる。旋回体120の旋回角度が開始角度θと干渉回避角度θとの差の角度θを超えるまで、制御装置160は作業機130の駆動を開始しない。以下、角度θを第2干渉回避角度θともよぶ。旋回体120の旋回角度が第2干渉回避角度θを超えると、制御装置160は作業機130の駆動を開始する。旋回体120の旋回角度が開始角度θに至ると、制御装置160は旋回体120の駆動を終了する。また作業機130の姿勢が掘削開始時の目標姿勢となると、制御装置160は作業機130の駆動を終了する。
【0053】
なお、旋回体120の旋回角度が第2干渉回避角度θを超えた後、制御装置160は操作装置143によるオペレータの操作を受け付ける。制御装置160は、オペレータによる操作を受け付けた制御対象について、自動操作信号を出力せず、手動操作信号を出力する。他方、制御装置160は、オペレータによる操作を受け付けていない制御対象については、自動操作信号の出力を継続する。
【0054】
図7は、第1の実施形態における自動積込制御の開始時の作業機130の姿勢と自動積込制御の終了時の作業機130の姿勢とを対比する図である。自動積込制御は、作業機130が土砂を掘削してクラムバケット133内に土砂が保持された状態で開始される。そのため、自動積込制御の開始時におけるクラムバケット133の姿勢133sは、掘削対象の上方において、刃を上方に向けた姿勢を取る。掘削対象を掘削するためには、刃先を掘削対象に対向させて下方からすくい上げる必要があるため、自動積込制御の開始時におけるクラムバケット133の姿勢133sから掘削作業を開始するためには、クラムバケット133の位置及び姿勢を変える必要がある。これに対し、自動積込制御の終了時におけるクラムバケット133の姿勢133eすなわち掘削開始時の目標姿勢は、地表に近い高さにおいて、刃を前方に向けた姿勢を取る。これにより、自動積込制御の終了時にクラムバケット133の姿勢を掘削開始時の目標姿勢とすることで、オペレータは、次の掘削作業へ作業を容易に移行することができる。
【0055】
《制御装置160の動作》
図8は、第1の実施形態に係る制御装置160の動作を示すフローチャートである。
積込機械100の制御装置160は、稼働中、一定の制御周期ごとに、図8に示す状態更新処理を行う。
【0056】
計測データ取得部611は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブーム角度センサ153、アーム角度センサ154、バケット角度センサ155、及び検出装置156から計測データを取得する(ステップSS1)。マップ生成部612は、ステップSS1で検出装置156から取得した計測データを用いて、メインメモリ630に記録されているマップデータを更新する(ステップSS2)。これにより、制御装置160は、積込機械100の近傍の状況を表すマップデータを常に最新の状態に保ち、マップデータに積込目標Tの最新の位置が表れるようにしておくことができる。
【0057】
作業機位置特定部614は、ステップSS1で取得した計測データに基づいて、旋回体120を基準とする車体座標系におけるアーム132の先端の位置P及びアーム132の先端からクラムバケット133の最下点までの高さHを特定する(ステップSS3)。これにより、制御装置160は、常に現在の作業機130の姿勢を特定しておくことができる。
【0058】
図9は、第1の実施形態に係る自動積込制御開始から排土開始までの制御装置160の動作を示すフローチャートである。図10は、第1の実施形態に係る排土開始から自動積込制御終了までの制御装置160の動作を示すフローチャートである。図11は、第1の実施形態に係る制御装置の自動/手動切替判定動作を示すフローチャートである。
オペレータによって開始スイッチ143SWが押下されると、制御装置160の操作信号入力部613は自動積込指示信号の入力を受け付ける。制御装置160は、自動積込信号をトリガとして、図9のステップS0から自動積込制御を開始する。
【0059】
自動積込指示信号が入力されると、制御装置160の出力判定部621は、旋回体120、ブーム131、アーム132、クラムバケット133、クラムシェル1332のそれぞれに係る自動操作フラグの値をすべてONにリセットする(ステップS0)。制御装置160は、図8に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(ステップS1)。積込目標特定部615は、ステップS1で更新されたマップデータに基づいて、積込目標Tの位置及び形状を特定する(ステップS2)。積込目標特定部615は、ステップS2で特定した積込目標Tの位置とステップS1で特定したアーム132の先端からクラムバケット133の最下点までの高さHに基づいて積込点を決定する(ステップS3)。
【0060】
開始角度特定部616は、ステップS3で決定したマップデータにおける積込点の位置に基づいて開始角度θを特定する(ステップS4)。マップデータは、車体座標系で表されるため、開始角度特定部616は、例えば旋回体120の前方に伸びる座標軸に対する積込点の位置ベクトルの角度を開始角度θとして特定する。回避角度特定部617は、ステップS2で特定した積込目標Tの位置及び形状に基づいて第1干渉回避角度θを特定する(ステップS5)。目標姿勢決定部618は、アーム132の先端が積込点に位置するときのブーム131及びアーム132の姿勢を、目標姿勢として決定する(ステップS6)。
【0061】
次に、制御装置160は、図8に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(ステップS7)。次に、移動制御部619は、ステップS7で特定された作業機130の姿勢が、ステップS6で決定した目標姿勢と近似するか否かを判定する(ステップS8)。例えば、移動制御部619は、目標姿勢におけるアーム132の先端の位置と、現在のアーム132の先端の位置との差が所定値以下である場合に、作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していると判定する。
【0062】
作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していない場合(ステップS8:NO)、移動制御部619は、ブーム131及びアーム132を目標姿勢に近づける自動操作信号を生成する(ステップS9)。このとき、移動制御部619は、ステップS7で特定されたブーム131及びアーム132の位置及び速度に基づいて、自動操作信号を生成する。
【0063】
また移動制御部619は、生成したブーム131及びアーム132の自動操作信号に基づいてブーム131及びアーム132の角速度の和を算出し、当該角速度の和と同じ速度でクラムバケット133を回動させる自動操作信号を生成する(ステップS10)。これにより、移動制御部619は、クラムバケット133の対地角を保持する自動操作信号を生成することができる。
【0064】
移動制御部619は、作業機130が旋回中であるか否かを判定する(ステップS11)。移動制御部619は、例えば旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合に旋回中であると判定する。作業機130が旋回中でない場合(ステップS11:NO)、移動制御部619は、ステップS7で特定したブーム131及びアーム132の速度に基づいて作業機130が目標姿勢となるまでの完了時間を算出する(ステップS12)。また、移動制御部619は、旋回体120が旋回を開始した場合に旋回角度がステップS5で特定した第1干渉回避角度θに到達するまでの到達時間を算出する(ステップS13)。移動制御部619は、ステップS12で算出した完了時間がステップS13で算出した到達時間未満であるか否かを判定する(ステップS14)。つまり、移動制御部619は、旋回角度が第1干渉回避角度θに到達するときに作業機130が目標姿勢となるか否かを判定する。
【0065】
完了時間が到達時間以上である場合(ステップS14:NO)、すなわち旋回角度が第1干渉回避角度θに到達するまでに作業機130が目標姿勢とならない場合、移動制御部619は旋回体120の旋回操作信号を生成しない。他方、完了時間が到達時間未満である場合(ステップS14:YES)、すなわち旋回角度が第1干渉回避角度θに到達するまでに作業機130が目標姿勢となる場合、移動制御部619は旋回体120の旋回操作信号を生成する(ステップS15)。これにより、制御装置160は、作業機130が積込目標Tと接触することを防ぐことができる。
【0066】
出力判定部621は、メインメモリ630に記録されたすべての自動操作フラグの値がONであるため、いずれの制御対象も自動操作信号によって制御すると判定する。これにより、操作信号出力部622は、ステップS9、S10、S15の少なくとも何れか1つで生成された自動操作信号を、コントロールバルブ123に出力する(ステップS16)。これにより、積込機械100が駆動する。そして、制御装置160は、処理をステップS7に戻し、制御を継続する。
【0067】
他方、ステップS11にて作業機130が旋回中であると判定された場合(ステップS11:YES)、移動制御部619は、ステップS7で特定した作業機130の旋回速度に基づいて、旋回の操作信号を停止した場合に、惰性による旋回によってアーム132の先端が積込点に到達するか否かを判定する(ステップS17)。惰性による旋回ではアーム132の先端が積込点に到達しない場合(ステップS17:NO)、移動制御部619はステップS15にて旋回操作信号を生成し、操作信号出力部622はステップS16にて旋回操作信号をコントロールバルブ123に出力する。
【0068】
他方、惰性による旋回によってアーム132の先端が積込点に到達すると判定された場合(ステップS17:YES)、制御装置160は、図8に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(図10のステップS18)。移動制御部619は、ステップS18で更新されたマップデータに基づいて、アーム132の先端が積込点に到達したか否かを判定する(ステップS19)。アーム132の先端が積込点に到達していない場合(ステップS19:NO)、制御装置160は処理をステップS18に戻し、積込点への到達を待機する。このとき、メインメモリ630に記録された自動操作信号の値はすべてONであるため、制御装置160は操作装置143の手動操作を受け付けない。
【0069】
アーム132の先端が積込点に到達した場合(ステップS19:YES)、クラム制御部620は、クラムバケット133の開操作信号を生成する(ステップS20)。操作信号出力部622はステップS20で生成した開操作信号をコントロールバルブ123に出力する(ステップS21)。クラム制御部620は、クラムバケット133の開操作信号を出力してから一定時間の経過を待機する(ステップS22)。この時間は、開いたクラムバケット133から土砂が一定量落ちるまでの時間である。なお、この時間は、クラムバケット133からすべての土砂が落ちるまでの時間より短くてよい。
【0070】
一定時間後、目標姿勢決定部618は、予め定められた作業機130の掘削開始時の目標姿勢をストレージ650又はメインメモリ630から読み出すことで、作業機130の掘削開始時の目標姿勢を決定する(ステップS23)。掘削開始時の目標姿勢は、例えばクラムバケット133が走行体110と干渉しない程度に接近し、かつクラムバケット133の底面が走行体110の底面を通る平面と干渉しない程度に接近するような姿勢である。
【0071】
次に、制御装置160は、図8に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(ステップS24)。次に、移動制御部619は、排土開始時から現時点までの旋回体120の旋回角度が、開始角度θと第1干渉回避角度θの差である第2干渉回避角度θ未満であるか否かを判定する(ステップS25)。旋回角度が第2干渉回避角度θ未満である場合(ステップS25:YES)、作業機130が積込目標Tと接触する可能性があるため、移動制御部619は作業機130の姿勢を維持する自動操作信号(中立信号)を生成する。
【0072】
ステップS25において、旋回角度が第2干渉回避角度θ以上である場合(ステップS25:NO)、移動制御部619は、ステップS24で特定された作業機130の姿勢が、ステップS23で決定した目標姿勢と近似するか否かを判定する(ステップS26)。作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していない場合(ステップS26:NO)、移動制御部619は、ブーム131、アーム132及びクラムバケット133を目標姿勢に近づける自動操作信号を生成する(ステップS27)。またクラム制御部620はクラムバケットの閉操作信号を生成する(ステップS28)。作業機130の姿勢が目標姿勢と近似している場合(ステップS26:YES)、移動制御部619は作業機130の自動操作信号を生成しない。
【0073】
また、移動制御部619は、ステップS24で特定した作業機130の旋回速度に基づいて、旋回の操作信号を停止にした場合に、惰性による旋回によってステップS4で特定した開始角度θまで旋回できるか否かを判定する(ステップS29)。惰性による旋回では開始角度θまで旋回できない場合(ステップS29:NO)、移動制御部619は旋回操作信号を生成する(ステップS30)。他方、惰性による旋回では開始角度θまで旋回できる場合(ステップS29:YES)、移動制御部619は旋回操作信号を生成しない。
【0074】
次に、出力判定部621は、図11に示すように制御対象(旋回体120、ブーム131、アーム132、クラムバケット133、クラムシェル1332)を1つずつ選択し(ステップS31)、選択した制御対象についてステップS31からステップS42の処理を実行する。
【0075】
出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグの値がONであるか否かを判定する(ステップS32)。自動操作フラグの値がONである場合(ステップS32:YES)、出力判定部621は、操作信号入力部613がステップS31で選択した制御対象を操作するための手動操作信号の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS33)。出力判定部621は、手動操作信号の操作量が遊びに相当する閾値以上である場合に、手動操作信号の入力を受け付けたと判定する。
【0076】
なお、旋回体120に係る手動操作信号は、左操作レバー143LOによる左右方向の操作信号、及び旋回ブレーキペダル143TBの操作信号である。ブーム131に係る手動操作信号は、右操作レバー143ROによる前後方向の操作信号である。アーム132に係る手動操作信号は、左操作レバー143LOによる前後方向の操作信号である。クラムバケット133の回動に係る手動操作信号は、右操作レバー143ROの左右方向の操作信号である。クラムシェル1332の開閉に係る手動操作信号は、クラムオープンペダル143CO及びクラムクローズペダル143CCの操作信号である。
【0077】
ステップS31で選択した制御対象に係る手動操作信号の入力がある場合(ステップS33:YES)、出力判定部621は、手動操作信号が、ステップS27、S28又はS30で生成された制御対象に係る自動操作信号に抵抗する操作を表すか否かを判定する(ステップS34)。具体的には、出力判定部621は、手動操作信号の操作方向が自動操作信号の操作方向と逆方向である場合、又は手動操作信号の操作がブレーキ操作である場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。例えば、出力判定部621は、自動操作信号が左回りの旋回操作を表し、手動操作信号が右回りの旋回操作を表す場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。また例えば、出力判定部621は、自動操作信号がクラムシェル1332の閉操作を表し、手動操作信号がクラムシェル1332の開操作を表す場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。また例えば、出力判定部621は、自動操作信号が左回りの旋回操作を表し、手動操作信号が旋回ブレーキペダル143TBの踏下を表す場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。
【0078】
手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作でない場合(ステップS34:NO)、出力判定部621は、手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量未満であるか否かを判定する(ステップS35)。
手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量未満である場合(ステップS35:YES)、またはステップS33で手動操作信号の入力がないと判定した場合(ステップS33:NO)、出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象の制御量が目標値に到達したか否かを判定する(ステップS36)。制御対象が旋回体120である場合、出力判定部621は、旋回角度が開始角度θに到達したか否かを判定する。制御対象がブーム131、アーム132又はクラムバケット133である場合、出力判定部621は、回転角がステップS23で決定した目標姿勢に係る角度に到達したか否かを判定する。制御対象がクラムシェル1332である場合、出力判定部621は、開度がゼロに到達したか否かを判定する。
【0079】
ステップS31で選択した制御対象の制御量が目標値に到達していない場合(ステップS36:NO)、出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象を自動操作信号によって制御すると判定する。すなわち、ステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグの値はONに維持される。操作信号出力部622は、ステップS27、S28又はS30で生成された自動操作信号のうちステップS31で選択した制御対象に係る自動操作信号を出力する(ステップS37)。
【0080】
他方、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作である場合(ステップS34:YES)、手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量未満でない場合(ステップS35:NO)、または制御対象の制御量が目標値に到達した場合(ステップS36:YES)、出力判定部621は以下の処理を行う。出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象が作業機130を構成するリンク部材(ブーム131、アーム132及びクラムバケット133)であるか否かを判定する(ステップS38)。
【0081】
自動操作から手動操作に切り替える制御対象が作業機130を構成するリンク部材である場合(ステップS38:YES)、出力判定部621は、排土開始時から現時点までの旋回体120の旋回角度が、開始角度θと第1干渉回避角度θの差である第2干渉回避角度θ未満であるか否かを判定する(ステップS39)。旋回角度が第2干渉回避角度θ未満である場合(ステップS39:YES)、作業機130が積込目標Tと接触する可能性があるため、出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象を自動操作信号によって制御すると判定する。すなわち、ステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグの値はONに維持される。そして操作信号出力部622は、ステップS31で選択した制御対象に係る自動操作信号を出力する(ステップS37)。
【0082】
他方、旋回角度が第2干渉回避角度θ以上である場合(ステップS39:NO)、移動制御部619は、複数のリンク部材のうち、ステップS31で選択したもの以外のリンク部材であって、自動操作フラグがONとなっているものを特定する。例えば、ステップS31でブーム131が選択されている場合、移動制御部619は、アーム132及びクラムバケット133のうち自動操作フラグがONとなっているものを特定する。移動制御部619は、特定したリンク部材に係る自動操作信号の操作量を、ステップS27で決定した操作量から一定レートで減少させる(ステップS40)。
【0083】
図12は、第1の実施形態に係る作業機の操作信号の例を示す図である。図12では、出力される操作信号の操作量を実線で示し、ステップS27で決定した自動操作信号の操作量を点線で示し、手動操作信号の操作量を一点鎖線で示す。図12に示す例では、時刻tにおいてブーム131、アーム132及びクラムバケット133の自動操作信号の出力が開始する。その後、時刻tにおいてオペレータがアーム132を自動制御と逆方向に操作する手動操作信号の入力を開始する。またオペレータはアーム132に続いてクラムバケット133を自動制御と逆方向に操作する手動操作信号の入力を開始する。一方で、時刻tから時刻tまで、アーム132及びクラムバケット133のいずれの操作量も閾値未満であるため、出力判定部621はステップS33で手動操作信号が入力されていないと判定する。そのため、時刻tから時刻tまで、ブーム131、アーム132及びクラムバケット133の操作信号として自動操作信号が出力される。
【0084】
時刻tにおいて、アーム132の手動操作信号の操作量が閾値以上となると、自動操作信号と手動操作信号とで操作方向が反対方向であるため、出力判定部621はステップS34において手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作であると判定する。これにより、アーム132の自動操作フラグがOFFとなり、以降、アーム132の操作信号として手動操作信号が出力される。このとき、ステップS40で移動制御部619はブーム131及びクラムバケット133の自動操作信号の操作量を一定レートで減少させる。つまり、時刻t以降、出力される自動操作信号の操作量(図12実線)は、ステップS27で決定された操作量(図12点線)から一定レートで減少する。
【0085】
その後、時刻tにおいてクラムバケット133の手動操作信号の操作量が閾値以上となると、自動操作信号と手動操作信号とで操作方向が反対方向であるため、出力判定部621はステップS34において手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作であると判定する。これにより、クラムバケット133の自動操作フラグがOFFとなる。以降、アーム132及びクラムバケット133の操作信号として手動操作信号が出力される。なお、時刻tにおいてオペレータがブーム131を自動制御と同じ方向に操作する手動操作信号の入力を開始する。一方で、時刻tから時刻tまで、操作量が自動操作信号の操作量未満であるため、ブーム131の操作信号として自動操作信号が出力される。
その後、時刻tにおいてブーム131の手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量以上になると(ステップS35)、ブーム131の自動操作フラグがOFFとなる。以降、作業機130の操作信号として手動操作信号が出力される。このように、図12に示す例では、移動制御部619は、アーム132、クラムバケット133、ブーム131の順に出力する信号を手動操作信号に切り替える。最終的には作業機130の全ての軸の操作が手動操作に切り替わる。
なお、図12に示す処理はあくまで一例であって、オペレータの操作順によって、自動操作信号の切り替わりの順序およびタイミングは異なり得る。
【0086】
つまり、移動制御部619は、作業機130のうち一部のリンク部材のみが操作されたときに、他のリンク部材の自動操作に係る操作量を徐々に手動操作に係る出力に近づける。これにより、制御装置160は、作業機130の制御を滑らかに自動操作から手動操作に切り替えることができる。
そして、図11に示すように、出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグの値をOFFに書き換える(ステップS41)。出力判定部621は、これにより、操作信号の出力元を自動操作信号から手動操作信号に切り替える。次に、移動制御部619は、ステップS31で選択した制御対象に係る手動操作信号を出力する(ステップS42)。
【0087】
ステップS31からステップS42の処理によって各制御対象について自動操作信号又は手動操作信号が出力されると、出力判定部621は、メインメモリ630に記録された自動操作フラグの値がすべてOFFであるか否かを判定する(ステップS43)。つまり、出力判定部621は、全ての制御対象が手動操作に切り替わったか否かを判定する。
少なくとも1つの自動操作フラグの値がONである場合(ステップS43:NO)、制御装置160は図10のステップS24に処理を戻し、自動積込制御を継続する。他方、全ての自動操作フラグの値がOFFである場合(ステップS43:YES)、制御装置160は自動積込制御を終了する。
【0088】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係る制御装置160は、操作装置143から入力された手動操作信号に基づいて、旋回体120及び作業機130のそれぞれについて、手動操作信号及び自動操作信号の何れを出力するかを判定する。オペレータは、積込機械100の自動制御中に操作装置143を操作する場合、操作を加えていない制御対象について、自動制御を継続することを望んでいる可能性がある。そのため、オペレータによる手動操作があった場合にすべての制御対象を手動操作に切り替えると、オペレータは全操作が手動操作に切り替わったと認識せず、旋回又は作業機動作が停止し、作業効率が低下する可能性がある。これに対し、第1の実施形態に係る制御装置160によれば、旋回体120及び作業機130のそれぞれについて手動操作信号及び自動操作信号の何れを出力するかを判定するため、操作を加えていない制御対象について、自動制御を継続することができる。これにより、制御装置160は積込機械100の作業効率の低下を防ぐことができる。
【0089】
また、第1の実施形態に係る制御装置160によれば、作業機130を構成する複数のリンク部品のうち少なくとも1つのリンク部品について手動操作信号を出力する場合に、他のリンク部品の自動操作信号の操作量を、一定レートで手動操作信号の操作量に近づける。これにより、制御装置160は、作業機130の制御を滑らかに自動操作から手動操作に切り替えることができる。
【0090】
また、第1の実施形態に係る制御装置160は、旋回体120及び作業機130のうち、手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量未満のものについて、自動操作信号を出力する。つまり、制御装置160は、手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量未満の制御対象について、手動操作信号に切り替えない。これにより、制御装置160は、自動操作信号から手動操作信号への急激な切替わりが発生することを防ぐことができる。
【0091】
また、第1の実施形態に係る制御装置160は、クラムバケット133を積込目標の上方から掘削点まで移動させる自動制御中に、旋回体120の旋回角度が干渉回避角度に到達するまで、手動操作信号に関わらず自動操作信号を出力する。これにより、クラムバケット133が積込目標の上方に位置するときに作業機130又は旋回体120の手動操作の入力があったとしても、作業機130と積込目標との接触が生じることを防ぐことができる。
【0092】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0093】
上述した実施形態に係る制御装置160は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置160の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置160として機能するものであってもよい。このとき、制御装置160を構成する一部のコンピュータが積込機械100の内部に搭載され、他のコンピュータが積込機械100の外部に設けられてもよい。
【0094】
上述した実施形態に係る積込機械100は、フェイスショベルであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、バックホウであってもよい。なお、積込機械100がバックホウである場合、作業機130の掘削開始時の目標姿勢は第1の実施形態と異なる。バックホウは、作業機130を手前側に引くことで掘削を行うため、掘削開始時の目標姿勢に係るバケットの位置は旋回体120から離れていることが好ましい。例えば、積込機械100は、マップデータから掘削対象の形状を特定し、旋回体120から離れ、かつ掘削対象と近接し、刃先が掘削対象に向く角度となる姿勢を、掘削開始時の目標姿勢としてもよい。
【0095】
上述した実施形態に係る積込機械100は、クラムバケット133を有するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は通常のバケットを備えるものであってよい。この場合、積込機械100はクラム制御部620に代えてダンプ制御部を備える。ダンプ制御部は、開操作信号に変えてダンプ方向の回動操作信号を出力する。なお、制御装置160は、サイクルタイムの短縮のため、ダンプ方向の回動操作信号の出力中に、旋回体120の旋回操作信号を出力してもよい。
【0096】
上述した実施形態に係る目標姿勢は、予め設定されてメインメモリ630又はストレージ650に記録されるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、操作端末142の操作によって目標姿勢を変更可能に構成してもよい。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、操作端末142にブーム131、アーム132及びクラムバケット133の位置及び角度を表す数値を入力することで目標姿勢を変更してもよい。また他の実施形態に係る積込機械100は、オペレータの操作によって作業機130を好ましい姿勢に制御した後、操作端末142を操作することで、作業機位置特定部614が作業機130の姿勢を特定し、目標姿勢を当該姿勢で上書きしてもよい。
【0097】
上述した実施形態に係る制御装置160は、検出装置156の計測データに基づくSLAMのマップデータに基づいて積込目標を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、積込目標の緯度、経度及び向く方位の入力を受け付け、位置方位演算器151の計測結果から積込目標の車体座標系における位置及び形状を計算してもよい。また、他の実施形態に係る制御装置160は、車体座標系でなく、緯度、経度及び高度で表されるグローバル座標系に基づいて積込機械100を制御してもよい。この場合、制御装置160は、開始角度や旋回角度などの角度を、グローバル座標系の基準方位に対する角度として計算してもよい。
【0098】
上述した実施形態に係る制御装置160は、傾斜計測器152が計測した旋回体120の角速度を積分することで、旋回体120の角度を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、位置方位演算器151が計測する方位の差分に基づいて旋回体120の角度を算出してもよい。また他の実施形態においては、旋回モータ124に設けた回転角センサの検出値を用いて旋回体120の角度を特定してもよい。
【0099】
上述した実施形態に係る制御装置160は、旋回角度と干渉回避角度の比較に基づいて自動積込制御を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、クラムバケット133の位置と積込目標Tの外形のうち旋回体120の旋回方向の最も後方の点p1(図5)との比較に基づいて自動積込制御を行ってもよい。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、クラムバケット133が点p1の近傍の領域に位置するように旋回開始タイミングを調整してよい。
【0100】
上述した実施形態に係る積込機械100は、オペレータが運転室140に搭乗して直接操作するものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、遠隔操作により動作するものであってもよい。すなわち、他の実施形態では、遠隔に設けられた操作装置143から通信によって操作信号が制御装置160に伝送されてよい。この場合、制御装置160の一部または全部の構成が、操作装置143が設けられる遠隔操作室に設けられていてもよい。例えば、操作信号入力部613、移動制御部619、出力判定部621、操作信号出力部622などの構成は、遠隔操作室に設けられたコンピュータが備えるものであってもよい。
【0101】
上述した実施形態に係る自動積込制御は、クラムバケット133を掘削完了時の位置から、積込点へ移動させ、さらに次の掘削を開始するための位置へ移動させるものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、クラムバケット133を、手動操作により掘削完了時の位置から積込点へ移動させて排土し、積込機械100が積込点から次の掘削を開始するための位置への移動のみを自動制御するようにしてもよい。この場合、オペレータはクラムバケット133が積込点へ到達した後に、次の掘削を開始するための位置へ作業機を駆動させるための信号を、操作レバーなどに設けたスイッチ操作により制御装置160に出力するようにしてもよい。前述のスイッチからの信号により、制御装置160は、上述した実施形態に係る自動積込制御の場合と同様に、作業機130の姿勢が掘削開始時とは別の予め設定した目標姿勢となるように作業機130を制御する。
【0102】
上述した実施形態に係る制御装置160は、アーム132の先端の位置Pに基づいて作業機130を制御するが、アーム132の先端の位置Pはアーム132の先端の中心であってもよいし、左右にずれた位置であってもよい。また、他の実施形態においては、アーム132の先端の位置Pに代えて、クラムバケット133の任意の位置に基づいて作業機130を制御してもよい。
【符号の説明】
【0103】
100…積込機械 110…走行体 111…無限軌道 120…旋回体 121…エンジン 122…油圧ポンプ 123…コントロールバルブ 124…旋回モータ 130…作業機 131…ブーム 131C…ブームシリンダ 132…アーム 132C…アームシリンダ 133…クラムバケット 1331…バックオール 1332…クラムシェル 1332C…クラムシリンダ 133C…バケットシリンダ 140…運転室 141…運転席 142…操作端末 143…操作装置 143SW…開始スイッチ 151…位置方位演算器 152…傾斜計測器 153…ブーム角度センサ 154…アーム角度センサ 155…バケット角度センサ 156…検出装置 160…制御装置 610…プロセッサ 611…計測データ取得部 612…マップ生成部 613…操作信号入力部 614…作業機位置特定部 615…積込目標特定部 616…開始角度特定部 617…回避角度特定部 618…目標姿勢決定部 619…移動制御部 620…クラム制御部 621…出力判定部 622…操作信号出力部 630…メインメモリ 650…ストレージ 670…インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12