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特開2022-178191光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178191
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/11 20200101AFI20221125BHJP
【FI】
H05B47/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084789
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴 和生
(72)【発明者】
【氏名】市川 重範
(72)【発明者】
【氏名】成田 瑞恵
(72)【発明者】
【氏名】篠山 千之
(72)【発明者】
【氏名】畑中 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】徳村 朋子
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA10
3K273QA01
3K273RA02
3K273SA04
3K273SA21
3K273SA38
3K273SA46
3K273TA03
3K273TA15
3K273UA20
(57)【要約】
【課題】複数領域の適正輝度バランスを考慮しつつ、適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムを提供すること。
【解決手段】画像データを取得する撮像装置110と、画像データから複数の領域の輝度を算出する輝度算出部130を有し、輝度算出部130によって算出された複数の領域の輝度に基づいて調光器具E1を調光制御する調光器具制御装置120と、を備える光環境制御システム100であって、調光器具制御装置120が、複数の領域の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分ける領域設定の情報150a、及び参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲の情報150bが記憶された記憶部150と、を有し、複数の領域の輝度が輝度許容範囲内に収まるように調光器具E1を調光制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する撮像装置と、前記画像データから複数の領域の輝度を算出する輝度算出部を有し、該輝度算出部によって算出された前記複数の領域の前記輝度に基づいて調光器具を調光制御する調光器具制御装置と、を備える光環境制御システムであって、
前記調光器具制御装置が、
前記複数の領域の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分ける領域設定の情報、及び前記参照領域の輝度と前記判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲の情報が記憶された記憶部と、
を有し、
前記複数の領域の輝度が前記輝度許容範囲内に収まるように前記調光器具を調光制御することを特徴とする光環境制御システム。
【請求項2】
前記輝度許容範囲の情報が、前記参照領域の輝度を第一の軸の値とし、前記判定領域の輝度を第二の軸の値とした直交座標系において、前記参照領域の輝度に複数の基準輝度が設定され、該複数の基準輝度のそれぞれに対応して前記判定領域の最大および最小の輝度が設定され、前記最大の輝度同士および前記最小の輝度同士が直線にて補間されることによって最大側および最小側の前記直線の間の範囲が前記複数の領域の輝度の許容範囲として設定された情報であり、
前記調光器具制御装置が、前記輝度算出部によって算出された前記複数の領域の輝度が前記輝度許容範囲内である否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記複数の領域の輝度が前記輝度許容範囲外と判定された場合、前記複数の領域の輝度が前記輝度許容範囲内に収まるように前記調光器具を調光制御する調光制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光環境制御システム。
【請求項3】
前記複数の基準輝度が、前記直線の傾きの変化点として設定されていることを特徴とする請求項2に記載の光環境制御システム。
【請求項4】
前記輝度許容範囲が、前記第一の軸における最小の前記基準輝度以下、および、前記第一の軸における最大の前記基準輝度以上の範囲において、前記最小の基準輝度および前記最大の基準輝度に対応する前記判定領域の前記最小の輝度および前記判定領域の前記最大の輝度が、前記判定領域の前記最大の輝度および前記最小の輝度から所定の傾きの直線にそれぞれ設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の光環境制御システム。
【請求項5】
前記参照領域が、窓面の領域であり、
前記判定領域が、壁面の領域または天井面の領域の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光環境制御システム。
【請求項6】
前記調光器具が、照明器具、ブラインド又はルーバーであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光環境制御システム。
【請求項7】
前記調光器具が、複数設けられており、
前記複数の調光器具が、前記照明器具、前記ブラインド又は前記ルーバーの少なくともいずれか一つの種類のものを含むことを特徴とする請求項6に記載の光環境制御システム。
【請求項8】
複数の領域の輝度を輝度許容範囲内に収める調光器具の調光制御に関する光環境制御方法において、
前記複数の領域の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分けるステップと、
前記参照領域の輝度と前記判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じた輝度許容範囲を設定するステップと、
前記複数の領域の輝度が前記輝度許容範囲内に収まるように前記調光器具を調光制御するステップと、
を含むことを特徴とする光環境制御方法。
【請求項9】
複数の領域の輝度を輝度許容範囲内に収める調光器具の調光制御に関する光環境制御方法において、
前記複数の領域の輝度を参照領域の輝度と判定領域の前記輝度とに分ける分離ステップと、
前記参照領域の輝度を第一の軸の値とし、前記判定領域の輝度を第二の軸の値とした直交座標系において、前記参照領域の輝度に複数の基準輝度を設定する基準輝度設定ステップと、
前記複数の基準輝度のそれぞれに対応して前記判定領域の最大および最小の輝度を設定する最大最小範囲設定ステップと、
前記最大の輝度同士および前記最小の輝度同士を直線にて補間することによって最大側および最小側の前記直線の間の範囲を前記複数の領域の輝度の許容範囲として設定する直線補間ステップとを含むことを特徴とする光環境制御方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光環境制御方法の各ステップをコンピュータによって実行することを特徴とする光環境制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置によって取得された画像データに基づいて調光器具を調光制御する光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内空間における光環境を最適にするため、撮像装置によって取得された画像データに基づいて調光器具を調光制御する光環境制御システムが用いられている。
【0003】
特許文献1には、撮像装置によって取得された画像データを人の視点に合わせた可視画像に変換し、可視画像の輝度分布に基づいて照明器具を調光制御する照明制御システムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、室内空間の所定領域における輝度分布の画像から得られた明るさ尺度値の実測範囲が所定領域に応じた目標範囲内に収まるように照明器具等の変更手段を調光制御する光環境制御システムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、室内の窓面輝度と壁面輝度が予め定めた所定の適正輝度バランス領域内に存在するように照明器具等の変更部を調光制御する光環境制御システムが記載されている。
【0006】
非特許文献1には、輝度画像と輝度画像から変換される明るさ画像を利用し、室内の明るさ感を適切に保ちながらアンビエント照明を調光制御する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2019/107060号パンフレット
【特許文献2】特許第6154100号公報
【特許文献3】特開2018-31136号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小島義包、他5名「輝度画像を利用した照明制御システムの研究」、TRANS.оfIEIEJ、Vоl.38Nо.1、[令和2年6月28日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/38/1/38_62/_pdf/-char/ja>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載された技術では、人の視点の領域の輝度分布に基づいて照明器具を調光制御するものであり、複数の領域の適正輝度バランスを保つように照明器具を調光制御するものではない。
【0010】
上記特許文献2に記載された技術では、所定の領域ごとに割り当てられた照明器具等の変更手段を調光制御するものであり、複数の領域の適正輝度バランスを保つように変更手段を調光制御するものではない。
【0011】
上記特許文献3に記載された技術では、窓面の輝度と壁面の輝度との適正輝度バランス、例えば、75%許容壁面輝度を用いた適正輝度バランスに基づく傾き一定の直線あるいはその直線を基準にした許容範囲に窓面の輝度および壁面の輝度が収まるように調光器具を制御しているため、窓面の輝度と壁面の輝度との固定された適正輝度バランスの範囲での調光制御を行うことになり、窓面の輝度と壁面の輝度との適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができない。
【0012】
上記非特許文献1に記載された研究では、複数の評価エリア(領域)の適正輝度バランスを保つように照明を調光制御するものではない。
【0013】
本発明者は上記問題点に鑑み、複数領域の適正輝度バランスを考慮しつつ、適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る光環境制御システムは、
画像データを取得する撮像装置と、前記画像データから複数の領域の輝度を算出する輝度算出部を有し、該輝度算出部によって算出された前記複数の領域の前記輝度に基づいて調光器具を調光制御する調光器具制御装置と、を備える光環境制御システムであって、
前記調光器具制御装置が、
前記複数の領域の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分ける領域設定の情報、及び前記参照領域の輝度と前記判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲の情報が記憶された記憶部と、
を有し、
前記複数の領域の輝度が前記輝度許容範囲内に収まるように前記調光器具を調光制御することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光環境制御方法は、
複数の領域の輝度を輝度許容範囲内に収める調光器具の調光制御に関する光環境制御方法において、
前記複数の領域の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分けるステップと、
前記参照領域の輝度と前記判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じた輝度許容範囲を設定するステップと、
前記複数の領域の輝度が前記輝度許容範囲内に収まるように前記調光器具を調光制御するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る光環境制御プログラムは、前記光環境制御方法の各ステップをコンピュータによって実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムによれば、複数領域の適正輝度バランスを考慮しつつ、適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る光環境制御システムの構成を示す模式図である。
図2】光環境制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】撮像装置によって取得された画像データを説明するための図であり、図3のAが撮像装置の撮像範囲を示す図であり、図3のBが撮像装置の撮像範囲内で選択された窓面の領域a1、天井面の領域a2、壁面の領域a3を示す図である。
図4】輝度許容範囲の情報を説明するための図である。
図5】輝度許容範囲の情報のもとになる被験者試験の結果を示した図である。
図6】輝度許容範囲設定方法を説明するための図である。
図7】調光制御部が調光器具に行う調光制御を説明するための図である。
図8】被験者試験の実施環境を説明するための図である。
図9】調光器具制御装置が実行する調光制御処理の手順を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態2に係る光環境制御システムの構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施形態2に係る光環境制御システムの輝度許容範囲の情報を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムを説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための光環境制御システム、光環境制御プログラム及び輝度許容範囲設定方法を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0020】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムについて、図1図9を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る光環境制御システム100の構成を示す模式図である。図2は、光環境制御システム100の構成を示すブロック図である。図3は、撮像装置110によって取得された画像データを説明するための図であり、図3のAが撮像装置110の撮像範囲を示す図であり、図3のBが撮像装置110の撮像範囲内で選択された窓面S1の領域a1、天井面S2の領域a2、壁面S3の領域a3を示す図である。図4は、輝度許容範囲の情報150bを説明するための図である。図5は、輝度許容範囲の情報150bのもとになる被験者試験の結果を示した図である。図6は、輝度許容範囲設定方法を説明するための図である。図7は、調光制御部170が調光器具E1に行う調光制御を説明するための図である。図8は、被験者試験の実施環境を説明するための図である。図9は、調光器具制御装置120が実行する調光制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0021】
本発明の実施形態1に係る光環境制御システム100は、輝度に基づいて調光器具としての照明器具E1を制御する光環境制御システムであり、天井面S2や壁面S3などの領域の光環境を良好に保つ必要があるロビー等に設けられる。
ここで、調光器具とは、照明器具E1に限定せず、例えば、ブラインド、ルーバー等を含み、調光対象となる領域の輝度の調整が可能な器具である。
本発明の実施形態の光環境制御システム100は、窓面S1の輝度と、天井面S2および壁面S3の輝度との適正輝度バランスを考慮して調光器具E1の調光制御を行うものである。
【0022】
この光環境制御システム100は、画像データを取得する撮像装置110と、画像データから3つの領域a1、a2、a3の輝度を算出し、算出された輝度に基づいて照明器具E1を調光制御する調光器具制御装置120と、を備える。
本発明の実施形態では、照明器具E1として調光可能なものを用いて光環境制御システム100を説明する。
【0023】
光環境制御システム100は、図1に示すように、撮像装置110と調光器具制御装置120とが、例えば、LAN(Local Area Network)によって接続されており、照明器具E1と調光器具制御装置120とが、例えば、BACnet(登録商標)(Building Automation and Control Networking protocol)によって接続されている。なお、図1では、1つの照明器具E1を示しているが、照明器具E1は複数あっても構わない。
【0024】
撮像装置110は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラによって実現される。
この撮像装置110は、室内の窓面S1、天井面S2および壁面S3が撮像範囲に入る位置に設置される。より具体的には、撮像装置110は、この実施形態では、明るさの調光対象領域となる窓面S1の領域a1、天井面S2の領域a2、および壁面S3の領域a3が撮像範囲に入る位置に設置されている(図3参照)。
すなわち、撮像装置110は、明るさの調光対象領域となる3つの領域a1、a2、a3が撮像範囲に入るように設置されている。
なお、本実施形態では、窓面にブラインドE2が設置されており、窓面の領域a1が窓との間にブラインドE2を介した領域になっている。なお、窓面S1にはブラインドE2が設置されていなくてもよいし、ブラインドE2に替わってルーバーが設定されていてもよい。
撮像装置110によって取得された画像データは、LANを介して調光器具制御装置120に送られる。
【0025】
調光器具制御装置120は、例えば、PC(personal Computer)によって実現される。
この調光器具制御装置120は、光環境制御システム100の調光制御に関するソフトウェアが実装されている。
より具体的には、調光器具制御装置120は、輝度算出部130と、記憶部150と、判定部160と、調光制御部170と、を有する(図2参照)。
【0026】
輝度算出部130は、撮像装置110によって取得された画像データから3つの領域a1、a2、a3の輝度を算出する。より具体的には、画像データから予め設定された3つの領域a1、a2、a3を選択し、選択した3つの領域a1、a2、a3のそれぞれの輝度を算出する。
各領域a1、a2、a3における輝度の算出処理としては、例えば、各領域a1、a2、a3のピクセル毎の輝度を算出し、各領域a1、a2、a3の全ピクセル数の平均輝度をその領域a1、a2、a3の輝度として算出する。
以下、輝度算出部によって算出された各領域a1、a2、a3の「平均輝度」を単に「輝度」という。
【0027】
記憶部150は、輝度算出部130、判定部160および調光制御部170が実施する処理に必要な情報が記憶される。
この記憶部150には、3つの領域a1、a2、a3の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分けた領域設定の情報150a、及び参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲の情報150bが記憶される。
【0028】
領域設定の情報150aは、本実施形態では、窓面の領域a1の輝度を参照領域の輝度とし、天井面の領域a2および壁面の領域a3の輝度を判定領域の輝度とする情報である。
このように3つの領域a1、a2、a3の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分けることによって、参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスに基づいた輝度許容範囲を設定することができる。
【0029】
この領域設定の情報150aは、より具体的には、窓面S1の領域a1の輝度を第一の軸(図4中、横軸)の値とし、天井面S2および壁面S3の輝度(天井面S2および壁面S3の平均輝度)を第二の軸(図4中、縦軸)の値とする情報である。
【0030】
輝度許容範囲の情報150bは、図4に示すように、参照領域の輝度を第一の軸の値とし、判定領域の輝度を第二の軸の値とした直交座標系において、参照領域の輝度に2つの基準輝度X1、X2が設定され、2つの基準輝度X1、X2のそれぞれに対応して判定領域の最大および最小の輝度(Ymax1、Ymin1、Ymax2、Ymin2)が設定され、最大の輝度(Ymax1、Ymax2)同士および最小の輝度(Ymin1、Ymin2)同士が直線にて補間されることによって最大側および最小側の直線の間の範囲が3つの領域a1、a2、a3の輝度の許容範囲として設定された情報である。
【0031】
また、本実施形態では、輝度許容範囲が、第一の軸(横軸)における最小の基準輝度X2以下、および、第一の軸(横軸)における最大の基準輝度X1以上の範囲において、最小の基準輝度X2および最大の基準輝度X1に対応する判定領域の最小の輝度(Ymin1、Ymin2)および判定領域の最大の輝度(Ymax1、Ymax2)が、判定領域の最大の輝度および最小の輝度とした傾きゼロの直線の間の範囲に設定される。
すなわち、輝度許容範囲が、第一の軸(横軸)における最小の基準輝度X2以下では、判定領域の最大の輝度Ymax2、および、最小の輝度Ymin2のそれぞれから第一の軸の値がゼロになるまで、傾きゼロの直線Lmax2、Lmin2の間の範囲に設定される。
また、輝度許容範囲が、第一の軸(横軸)における最大の基準輝度X1以上では、判定領域の最大の輝度Ymax1、および、最小の輝度Ymin1のそれぞれから第一の軸の値が設定範囲の最大値になるまで、傾きゼロの直線Lmax1、Lmin1の間の範囲に設定される。
従って、輝度許容範囲は、判定領域の最大の輝度を結ぶ直線Lmax2、Lmax12、Lmax1と、最小の輝度を結ぶ直線Lmin2、Lmin12、Lmin1との間の範囲に設定される。
【0032】
なお、本発明の実施形態では、輝度許容範囲が、本願発明者らが実施した被験者試験の結果に基づいて設定される。以下に、被験者試験の方法について説明する。
試験環境の一例としては、図8に示すように、ブラインドE2が設置された窓面S1、及び吹き抜けがあるロビー等の環境が挙げられる。
この被験者試験は、時間帯や天候によって窓面S1の領域の輝度が変化することを考慮し、時間帯が夕方であり天候が曇天の条件(以下、「条件1」という)、時間帯が昼であり天候が曇天の条件(以下、「条件2」という)、および、時間帯が朝であり天候が晴天の条件(以下、「条件3」という)の3種類の条件で実施した。
なお、本実施形態では、3種類の各条件においてブラインドE2の開閉状態についても変化させている。すなわち、条件1では、ブラインドE2を閉状態とし、条件2では、ブラインドを開状態とし、条件3では、ブラインドE2を閉状態としている。
【0033】
被験者試験は、被験者が、視点を天井面S2および壁面S3に置き、上述した条件1~3のもとで、天井面S2および壁面S3を照らす照明器具E1を消灯状態から次第に明るくし、天井面S2および壁面S3の明るさが適正と感じたところで被験者がOKのサインを示すことによって窓面S1に対して最低限必要な輝度を調べる試験である。
なお、被験者が、天井面S2および壁面S3の明るさが適正と感じたところでOKのサインを示した後、照明が明るすぎると感じたところでOKのサインを取り下げることによって、天井面S2および壁面S3の輝度の許容上限を調べることもできる。
【0034】
次に、図5を参照して、被験者試験の結果について説明する。
被験者試験によって、窓面S1、天井面S2および壁面S3の輝度の関係について以下の傾向が明らかになった。
・天井面S2と壁面S3の適正輝度は、窓面S1の輝度によって異なる(天井面S2および壁面S3の適正輝度は、昼夜、天候等の変化によって変化する窓面の輝度の影響を受ける。)。
・晴天と曇天とでは、窓面S1の輝度が大きく異なるが、天井面S2と壁面S3との適正輝度の差は小さい。(窓面S1の輝度が942cd/m2である条件2と、窓面の輝度が2500cd/m2である条件3とでは、天井面S2と壁面との輝度の差は小さい。)
なお、この被験者試験では、天井面S2と壁面S3との適正輝度の差が小さいため、(天井面の輝度+壁面の輝度)÷2で求められる天井面S2と壁面S3の平均輝度を天井面S2および壁面S3の輝度としている(図5参照)。すなわち、判定領域の輝度については、適正輝度の差が小さい関係にある複数の判定領域の輝度から平均輝度を求めることによって、平均輝度を判定領域の輝度として用いる。
【0035】
被験者試験の結果から、条件1(窓面S1の輝度:15cd/m2)、条件2(窓面S1の輝度:942cd/m2)、および条件3(窓面S1の輝度:2500cd/m2)の3種類の条件のもとで、50%の被験者が適正と感じた輝度を以下の数値として得ることができた。
・条件1(窓面S1の輝度が15cd/m2)の場合、天井面S2および壁面S3の平均輝度が17.0cd/m2程度。
・条件2(窓面S1の輝度が942cd/m2)の場合、天井面S2および壁面S3の平均輝度が79.5cd/m2程度。
・条件3(窓面S1の輝度が2500cd/m2)の場合、天井面S2および壁面S3の平均輝度が90.5cd/m2程度。
【0036】
また、被験者試験の結果から、窓面S1の輝度と、天井面S2および壁面S3の平均輝度との比率((窓面S1の輝度)÷(天井面S2および壁面S3の平均輝度))を以下の数値として得ることができた(図5参照)。
・条件1(窓面S1の輝度が15cd/m2)の場合、比率が0.9程度。
・条件2(窓面S1の輝度が942cd/m2)の場合、比率が11.8程度。
・条件3(窓面S1の輝度が2500cd/m2)の場合、比率が27.6程度。
この結果から、各条件1~3の比率を比較すると一定ではなく変化することがわかる。
すなわち、窓面S1の輝度と、天井面S2および壁面S3の平均輝度との適正輝度バランスが変化することがわかる。
【0037】
以下に、輝度許容範囲設定方法を例示し、本実施形態の光環境制御方法及び光環境制御プログラムについて説明する。
なお、輝度許容範囲は、上述の被験者試験の結果を用いて設定する。
まず、3つの領域a1、a2、a3の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分ける(分離ステップ)。
本実施形態では、窓面S1の領域a1の輝度を参照領域の輝度とし、天井面S2および壁面S3の領域a2、a3の輝度を判定領域の輝度とする。
なお、本実施形態では、参照領域の輝度が判定領域の輝度に影響を与えるものとして、3つの領域の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分ける。
【0038】
次に、参照領域の輝度(窓面の輝度)を第一の軸の値とし、判定領域の輝度(天井面および壁面の平均輝度)を第二の軸の値とした直交座標系に、実験値P1(2500、90.5)、実験値P2(942、79.5)、実験値P3(15、17.0)の3点をプロットする(図6のA参照)。
これら3点の実験値P1~P2は、上述した被験者試験から得られた値であり、窓面S1の領域a1の輝度と天井面S2および壁面S3の領域a2、a3の平均輝度との適正輝度バランスを満たす値である。
【0039】
次に、3点の実験値P1、P2、P3に基づいて、窓面S1の領域a1の輝度と天井面S2および壁面S3の領域a2、a3の平均輝度との適正輝度バランスの変化点となる基準輝度X1、X2を定め(基準輝度設定ステップ)、基準輝度X1、X2のそれぞれに対応して判定領域の最大および最小の輝度(Ymax1、Ymin1、Ymax2、Ymin2)を設定する(最大最小範囲設定ステップ、図6のB参照)。
基準輝度X1、X2は、後述する直線の傾きの変化点として設定される。
【0040】
なお、基準輝度X1、X2は、窓面S1の領域a1の輝度と、天井面S2および壁面S3の領域a2、a3の平均輝度との比率
(窓面S1の領域a1の輝度)÷(天井面S2及び壁面S3の領域a2、a3の平均輝度)
の変化から窓面S1の領域a1の輝度と、天井面S2および壁面S3の領域a2、a3の平均輝度との適正輝度バランスの変化傾向がわかるため、この適正輝度バランスの変化傾向に基づいて定められる。
【0041】
また、本実施形態では、判定領域の最小の輝度Yminから判定領域の最大の輝度Ymaxの範囲を実験値(実験値P1あるいは実験値P2)の第二の軸方向の値を含む範囲に設定したが、実験値の第二の軸方向の値を判定領域の最小の輝度Yminとみなし、これより高い輝度を最大の輝度Ymaxとして設定することによって許容範囲としてもよい。
より具体的には、上述した被験者試験において、天井面および壁面の明るさが適正と感じたところで被験者のOKのサインが示された輝度を最小の輝度Yminとみなし、照明が明るすぎると感じたところで被験者のOKのサインが取り下げられたところで最大の輝度Ymaxとみなす。
【0042】
最後に、最大の輝度(Ymax1、Ymax2)同士および最小の輝度(Ymin1、Ymin2)同士を直線にて補間する(直線補間ステップ)。
なお、補間される直線の式は、第一の軸の値をXとし、第二の軸の値をYとした場合、Y=aX+b
a=(Ymax1-Ymax2)/(X1-X2)
b=Ymax1-aX1
で表される。
【0043】
なお、輝度許容範囲が、第一の軸における最小の基準輝度X2以下では、判定領域の最大の輝度Ymax2、および、最小の輝度Ymin2のそれぞれから第一の軸の値がゼロになるまで傾きゼロの直線Lmax2、Lmin2の間の範囲に設定される。
また、輝度許容範囲が、第一の軸における最大の基準輝度X1以上では、判定領域の最大の輝度Ymax1、および、最小の輝度Ymin1のそれぞれから第一の軸の値が設定範囲の最大値になるまで傾きゼロの直線Lmax1、Lmin1の間の範囲に設定される。(図6のC参照)。
【0044】
判定部160は、領域設定の情報150aによって設定された、窓面S1の領域a1の輝度と、天井面S2および壁面S3の輝度(天井面S2および壁面S3の平均輝度)との適正輝度バランスを示す第一の軸および第二の軸による直交座標系に、輝度算出部130によって算出された3つの領域a1、a2、a3の輝度を対応付ける。
より具体的には、判定部160は、輝度算出部130によって算出された3つの領域a1、a2、a3の輝度を、第一の軸および第二の軸による直交座標系の座標に対応付ける。
【0045】
また、判定部160は、輝度算出部130によって算出された3つの領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲内である否かを判定する。
この判定部160は、第一の軸および第二の軸による直交座標系における座標(領域a1の輝度、領域a2および領域a3の平均輝度)に対応付けられた3つの領域a1、a2、a3の輝度が、第一の軸および第二の軸による直交座標系に設定された輝度許容範囲内であるか否かを判定する。
より具体的には、3つの領域の輝度(領域a1の輝度、領域a2および領域a3の平均輝度)が輝度許容範囲の判定領域の最大の輝度を結ぶ直線Lmax2、Lmax12、Lmax1と、最小の輝度を結ぶ直線Lmin2、Lmin12、Lmin1との間の範囲に収まっているか否かを判定する。
【0046】
調光制御部170は、3つの領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲内に収まるように照明器具E1を調光制御する。
この調光制御部170は、判定部160によって3つの領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲外と判定された場合、3つの領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲内に収まるように照明器具E1を調光制御する。
より具体的には、窓面S1の領域a1の輝度に対して、天井面S2の領域a2および壁面S3の領域a3の平均輝度が高い場合(図7中、点D1参照)、調光制御部170は、調光率を下げるように照明器具E1を調光制御する。
一方、窓面の領域a1の輝度に対して天井面S2の領域a2および壁面S3の領域a3の平均輝度が低い場合(図7中、点D2参照)、調光制御部170は、調光率を上げるように照明器具E1を調光制御する。
【0047】
次に、図9を参照して調光器具制御装置120が実行する調光制御処理の手順を説明する。
まず、調光器具制御装置120は、撮像装置110から画像データを取得する(画像データ取得ステップS101)。
本実施形態では、撮像範囲内に3つの領域a1、a2、a3が収まるように撮像装置110が設けられている。
撮像装置110によって取得された画像データが、LANを介して調光器具制御装置120に送信されることによって、調光器具制御装置120が撮像装置110から画像データを取得する。
【0048】
次に、輝度算出部130が、3つの領域a1、a2、a3の輝度を算出する(輝度算出ステップS102)。
【0049】
次に、判定部160が、3つの領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲内であるか否かを判定する(判定ステップS103)。
このステップS103では、判定部160が、まず、領域設定の情報150aに基づいて、3つの領域a1、a2、a3の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分ける。
より具体的には、判定部160が、窓面S1の領域a1の輝度を参照領域の輝度とし、天井面S2の領域a2および壁面S3の領域a3の輝度を判定領域の輝度とする処理を実行する。
その後、判定部160が、輝度算出部130によって算出された3つの領域a1、a2、a3の輝度を、第一の軸および第二の軸による直交座標系の座標(領域a1の輝度、領域a2および領域a3の平均輝度)に対応付け、第一の軸および第二の軸による直交座標系に座標(領域a1の輝度、領域a2およびの領域a3の平均輝度)として対応付けられた3つの領域a1、a2、a3の輝度が、輝度許容範囲内であるか否かを判定する。
【0050】
ステップS103において、判定部160が3つの領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲内と判定した場合(ステップS103:Yes)、調光器具制御装置120は処理をステップS101に戻し、上述した処理を繰り返す。
【0051】
一方、ステップS103において、判定部160が3つの領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲外と判定した場合(ステップS103:No)、調光制御部170が照明器具E1を調光制御する(調光制御ステップS104)。その後、調光器具制御装置120は処理をステップS101に戻し、上述した処理を繰り返す。
【0052】
本発明の実施形態1に係る光環境制御システム100によれば、調光器具制御装置120が、輝度算出部130によって画像データから算出された3つの領域a1、a2、a3の輝度を、参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分け、記憶部150に記憶された参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲内に3つの領域a1、a2、a3の輝度が収まるように照明器具E1を調光制御するため、3つの領域a1、a2、a3の適正輝度バランスを考慮しつつ、適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0053】
本発明の実施形態1に係る光環境制御システム100によれば、参照領域の輝度を第一の軸の値とし、判定領域の輝度を第二の軸の値とした直交座標系の参照領域の輝度に設定された2つの基準輝度X1、X2が、2つの基準輝度X1、X2のそれぞれに対応して判定領域に設定された最大の輝度同士および最小の輝度同士の間を補間する直線の傾きの変化点として設定されるため、2つの基準輝度X1、X2を基準として変化される参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0054】
本発明の実施形態1に係る光環境制御システム100によれば、輝度許容範囲が、第一の軸における最小の基準輝度X1以下、および、第一の軸における最大の基準輝度X2以上の範囲で傾きゼロの直線上に判定領域の最大の輝度および最小の輝度が設定されるため、第一の軸における最小の基準輝度X1以下、および、第一の軸における最大の基準輝度X2以上の範囲で輝度許容範囲を容易に設定することができる。
【0055】
本発明の実施形態1に係る光環境制御システム100によれば、参照領域が、窓面S1の領域であり、判定領域が、壁面S3の領域または天井面S2の領域の少なくとも一方であるので、窓面S1の領域a1の輝度に対する天井面S2および壁面S3の領域a2、a3の輝度の適正輝度バランスの変化に応じて照明器具E1を調光制御することができる。
【0056】
本発明の実施形態1に係る光環境制御プログラムによれば、領域設定処理によって、3つの領域の輝度が参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分けられ、3つの領域a1、a2、a3の輝度が参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲内に収まるように照明器具E1を調光制御する処理を実行するため、3つの領域a1、a2、a3の適正輝度バランスを考慮しつつ、適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0057】
本発明の実施形態1に係る光環境制御方法によれば、参照領域の輝度を第一の軸の値とし、判定領域の輝度を第二の軸の値とした直交座標系の参照領域の輝度に設定された2つの基準輝度X1、X2が、2つの基準輝度X1、X2のそれぞれに対応して判定領域に設定された最大の輝度同士および最小の輝度同士の間を補間する直線の傾きの変化点として設定されるため、2つの基準輝度X1、X2を基準として変化される参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0058】
[実施形態2]
本発明の実施形態2に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムについて、図10図11を参照して説明する。
図10は、本発明の実施形態2に係る光環境制御システム200の構成を示すブロック図である。図11は、輝度許容範囲の情報250bを説明するための図である。
【0059】
この実施形態2に係る光環境制御システム200、輝度許容範囲設定方法及び光環境制御プログラムは、輝度許容範囲の情報250bが異なる点で実施形態1の光環境制御システム100、光環境制御プログラム及び輝度許容範囲設定方法と異なる。なお、上述した実施形態1の光環境制御システム100と同一構成部分について対応する200番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0060】
実施形態2に係る光環境制御システム200は、記憶部250に記憶される輝度許容範囲の情報250bが、図11に示すように、参照領域の輝度を第一の軸(横軸)の値とし、判定領域の輝度を第二の軸(縦軸)の値とした直交座標系において、参照領域の輝度に2つの基準輝度X1、X2が設定され、2つの基準輝度のそれぞれに対応して判定領域の最大および最小の輝度(Ymax1、Ymin1、Ymax2、Ymin2)が設定され、最大の輝度(Ymax1、Ymax2)同士および最小の輝度(Ymin1、Ymin2)同士が直線Lmax12、Lmin12にて補間されることによって最大側および最小側の直線Lmax12、Lmin12の間の範囲が3つの領域a1、a2、a3の輝度の許容範囲として設定された情報である。
【0061】
なお、本実施形態2では、輝度許容範囲が、第一の軸(横軸)における最小の基準輝度X2以下、および、第一の軸(横軸)における最大の基準輝度X1以上の範囲において、判定領域の最大の輝度および最小の輝度が、傾きゼロでなく直線Lmax12、Lmin12とは傾きが異なる直線Lmax2、Lmin2、Lmax1、Lmin1の間の範囲に設定される。
【0062】
本発明の実施形態2に係る光環境制御システム200によれば、実施形態1の光環境制御システム100と同様に、調光器具制御装置220が、輝度算出部230によって画像データから算出した3つの領域a1、a2、a3の輝度を参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分け、記憶部250に記憶された参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲の情報250bの輝度許容範囲内に収まるように照明器具E1を調光制御するため、3つの領域a1、a2、a3の適正輝度バランスを考慮しつつ、適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0063】
本発明の実施形態2に係る光環境制御システム200によれば、実施形態1の光環境制御システム100と同様に、参照領域の輝度を第一の軸の値とし、判定領域の輝度を第二の軸の値とした直交座標系の参照領域の輝度に設定された2つの基準輝度X1、X2が、2つの基準輝度X1、X2のそれぞれに対応して判定領域に設定された最大の輝度同士および最小の輝度同士の間を補間する直線の傾きの変化点として設定されるため、2つの基準輝度X1、X2を基準として変化される参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0064】
本発明の実施形態2に係る光環境制御システム200によれば、実施形態1の光環境制御システム100と同様に、参照領域が、窓面S1の領域a1であり、判定領域が、壁面S3の領域a2または天井面S2の領域a3の少なくとも一方であるので、窓面S1の輝度に対する天井面S2および壁面S3の輝度の適正輝度バランスの変化に応じて照明器具E1を調光制御することができる。
【0065】
本発明の実施形態2に係る輝度許容範囲設定方法によれば、実施形態2の輝度許容範囲設定方法と同様に、参照領域の輝度を第一の軸の値とし、判定領域の輝度を第二の軸の値とした直交座標系の参照領域の輝度に設定された2つの基準輝度X1、X2が、2つの基準輝度X1、X2のそれぞれに対応して判定領域に設定された最大の輝度同士および最小の輝度同士の間を補間する直線の傾きの変化点として設定されるため、2つの基準輝度X1、X2を基準として変化される参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0066】
本発明の実施形態2に係る光環境制御プログラムによれば、実施形態1の光環境制御プログラムと同様に、領域設定処理によって、3つの領域a1、a2、a3の輝度が参照領域の輝度と判定領域の輝度とに分けられ、調光制御処理によって、複数の領域の輝度が参照領域の輝度と判定領域の輝度との適正輝度バランスの変化に応じて設定された輝度許容範囲内に収まるように照明器具E1を調光制御する処理を実行するため、3つの領域a1、a2、a3の適正輝度バランスを考慮しつつ、適正輝度バランスの変化に応じた調光制御を行うことができる。
【0067】
なお、本発明の実施形態1、2に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムは、3つの領域a1、a2、a3の輝度を参照領域と判定領域とに分けて各領域a1、a2、a3の輝度が輝度許容範囲内に収まるように制御するものを例示したが、領域の数は3つに限らない。例えば、判定領域の数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。なお、参照領域の輝度と判定領域の輝度との関係として、参照領域の輝度が判定領域の輝度に影響を与えるものであり、複数の判定領域の適正輝度の差が小さいものであるとよい。複数の判定領域の適正輝度の差が小さいと、複数の判定領域の平均輝度を判定領域の輝度として用いることができる。
【0068】
また、本発明の実施形態1、2に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムは、各領域の設定方法の詳細は省略したが、例えば窓面を領域として設定する場合に、撮像画像上で人が端点を指定するといった方法はもちろんのこと、視野全体の平均輝度との対比が大きい平面エリアを窓面と推定する、夜間と昼間の差分が大きいエリアを窓面と推定するなど、自動的に抽出することも可能である。
【0069】
また、本発明の実施形態1、2に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムは、参照領域の輝度に設定される基準輝度が2つであるものを例示したが、基準輝度の数は2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0070】
また、本発明の実施形態1、2に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムは、基準領域の複数の基準輝度とこれに対応する判定領域の最大および最小輝度の各点に対して、直線を用いて許容範囲を設定したが、二次曲線などの曲線を用いて許容範囲を設定してもよい。
【0071】
また、本発明の実施形態1、2に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムは、許容範囲の設定において、基準領域の複数の基準輝度とこれに対応する判定領域の最大および最小輝度の各点をあらかじめ定めることとしたが、システムを運用して蓄積されるデータを参照して、領域を設定する各点を変更して許容範囲を可変させる仕組みを用いることもできる。
【0072】
また、本発明の実施形態1、2に係る光環境制御システム、光環境制御方法及び光環境制御プログラムは、調光制御対象となる調光器具が照明器具であるものを例示したが、調光器具は、調光することができる器具であればその他の調光器具を用いても構わない。例えば、調光器具として、ブラインド、ルーバーを用いてもよいし、種類の異なる調光器具を組み合わせて用いてもよい。なお、ブラインドあるいはルーバーを調光制御する場合、ブラインドあるいはルーバーの角度を調整する。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の技術思想を具体化するための光環境制御システム100、200、光環境制御プログラム及び輝度許容範囲設定方法を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、その他の実施形態のものにも等しく適用し得るものであり、また、これらの実施形態の一部を省略、追加、変更することや、各実施形態の態様を組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
100,200 光環境制御システム、110,210 撮像装置、120,220 調光器具制御装置、130,230 輝度算出部、150,250 記憶部、150a,250a 領域設定の情報、150b,250b 輝度許容範囲の情報、160,260 判定部、170,270 調光制御部、a1,a2,a3 領域、X1,X2 基準輝度、S1 窓面、S2 天井面、S3 壁面、E1 照明器具(調光器具)、E2 ブラインド(調光器具)。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9
図10
図11