(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178194
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20221125BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084797
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 広宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 周治
(72)【発明者】
【氏名】田中 健志
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗員の暑さ、ムレ感を抑制し、乗員の快適性を向上させることができる車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シート空調装置に適用され、乗員が着座する車両用シート3は、送風機の作動によって形成される風が流れる複数の通風孔22が形成されたシートパッド15と、シートパッド15の表面を覆い、通気性を有する表皮と、を備える。シートパッド15の表面17には、複数の通風孔22のうち2つ以上の通風孔同士を繋ぐ線状に配置された複数の表溝23が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シート空調装置に適用され、乗員が着座する車両用シートであって、
着座する乗員の荷重を支持する樹脂成形体で構成され、着座する乗員側の面である表面(17)、および、前記乗員側の反対側の面である裏面(18)を有し、前記表面から前記裏面まで貫通し、送風機の作動によって形成される風が流れる複数の通風孔(22)が形成されたシートパッド(15)と、
前記シートパッドの前記表面を覆い、通気性を有する表皮(16)と、を備え、
前記シートパッドの前記表面には、前記複数の通風孔のうち2つ以上の通風孔同士を繋ぐ線状に配置された1つ以上の表溝(23)が形成されている、車両用シート。
【請求項2】
前記シートパッドおよび前記表皮は、乗員の背部を支えるシートバック(10)を構成し、
前記シートパッドは、前記シートパッドのうち前記シートバックの横方向(D2)の中央側に位置する中央パッド部(151)と、前記シートパッドのうち前記中央パッド部に対して前記横方向の両側に位置する一対のサイドパッド部(152、153)とを有し、
前記シートパッドのうち前記中央パッド部と前記一対のサイドパッド部のそれぞれとの境界部分には、前記シートパッドと前記表皮とを接続するための吊り溝(20)が形成されており、
前記複数の通風孔および前記表溝は、前記中央パッド部に配置されている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートパッドおよび前記表皮は、乗員の背部を支えるシートクッション(11)を構成し、
前記シートパッドは、前記シートパッドのうち前記シートクッションの横方向(D2)の中央側に位置する中央パッド部(151)と、前記シートパッドのうち前記中央パッド部に対して前記横方向の両側に位置する一対のサイドパッド部(152、153)とを有し、
前記シートパッドのうち前記中央パッド部と前記一対のサイドパッド部のそれぞれとの境界部分には、前記シートパッドと前記表皮とを接続するための吊り溝(20)が形成されており、
前記複数の通風孔および前記表溝は、前記中央パッド部に配置されている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記複数の通風孔は、前記中央パッド部のうち前記横方向の中央側に配置された1つの中央側通風孔(22d、22e、22i、22j)と、前記中央パッド部のうち前記中央側通風孔よりも前記横方向の外側に配置された1つの外側通風孔(22b、22c、22k、22l)とを含み、
前記表溝は、前記中央側通風孔と前記外側通風孔とを繋ぐ線状の部分(23b、23c、231、232)を含む、請求項2または3に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート空調装置に用いられる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に車両用シート空調装置が開示されている。このシート空調装置は、シートと、送風機とを備える。シートには、複数の通風孔が設けられている。このシート空調装置は、送風機の作動によって、複数の通風孔から空気を吸い込み、または、吹き出すことで、そのシートに着座する乗員の快適性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートのうち乗員の体が面接触する部位では、複数の通風孔の全部または一部が塞がれる。このため、乗員の体とシートとの間に風が流れない、または、体とシートとの間を流れる風が少ない。この結果、乗員が暑さ、ムレ感を感じ、不快に感じる。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、車両用シート空調装置に用いられる車両用シートであって、乗員の暑さ、ムレ感を抑制し、乗員の快適性を向上させることができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、
車両用シート空調装置に適用され、乗員が着座する車両用シートは、
着座する乗員の荷重を支持する樹脂成形体で構成され、着座する乗員側の面である表面(17)、および、乗員側の反対側の面である裏面(18)を有し、表面から裏面まで貫通し、送風機の作動によって形成される風が流れる複数の通風孔(22)が形成されたシートパッド(15)と、
シートパッドの表面を覆い、通気性を有する表皮(16)と、を備え、
シートパッドの表面には、複数の通風孔のうち2つ以上の通風孔同士を繋ぐ線状に配置された1つ以上の表溝(23)が形成されている。
【0007】
これによれば、シートパッドの表面に表溝が形成されていることによって、複数の通風孔を塞ぐように乗員の体がシートに接触した状態のときに、乗員の体のうち表溝に対向する部位とシートとの間に空気層が形成される。これにより、表溝が形成されていない場合と比較して、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0008】
また、本発明と異なり、1つ以上の表溝が1つの通風孔のみに連通している場合、表溝が連通する通風孔を塞ぐように乗員の体がシートに接触した状態のときに、表溝には風が流れない。または、表溝を流れる風が少ない。
【0009】
これに対して、本発明によれば、表溝は2つ以上の通風孔を繋げているので、乗員の着座姿勢が変わる等により、表溝で繋げられた2つ以上の通風孔のうちのいずれか1つ以上の通風孔が開放されているときに、表溝に風流れを生じさせることができる。または、表溝を流れる風を増大させることができる。これにより、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の車両用シート空調装置の正面図である。
【
図3】
図1のシート空調装置において、シートバックの表皮を除いた状態を示す図である。
【
図7】乗員の着座姿勢が通常姿勢のときの比較例1の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図8】乗員の着座姿勢が斜め姿勢のときの比較例1の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図9】乗員の着座姿勢が通常姿勢のときの比較例2の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図10】乗員の着座姿勢が斜め姿勢のときの比較例2の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図11】乗員の着座姿勢が通常姿勢のときの第1実施形態の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図12】乗員の着座姿勢が斜め姿勢のときの第1実施形態の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図13】比較例3の車両用シート空調装置において、中央側表溝が形成されたシートパッドの表面の拡大図である。
【
図14】第2実施形態の車両用シート空調装置において、中央側表溝が形成されたシートパッドの表面の拡大図である。
【
図15】乗員の着座姿勢が通常姿勢のときの第2実施形態の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図16】乗員の着座姿勢が斜め姿勢のときの第2実施形態の車両用シート空調装置の断面図である。
【
図17】第3実施形態の車両用シート空調装置において、中央側表溝が形成されたシートパッドの表面の拡大図である。
【
図18】第4実施形態の車両用シート空調装置において、中央側表溝が形成されたシートパッドの表面の拡大図である。
【
図19】第5実施形態の車両用シート空調装置において、中央側表溝が形成されたシートパッドの表面の拡大図である。
【
図20】第6実施形態の車両用シート空調装置を示す平面図であって、シートクッションの表皮を除いた状態を示す図である。
【
図21】第7実施形態の車両用シート空調装置を示す平面図であって、シートクッションの表皮を除いた状態を示す図である。
【
図22】本発明者が行った試験に用いたシートクッションのシートパッドの表面を示す図である。
【
図23】他の実施形態における中央側表溝の断面図である。
【
図24】他の実施形態における中央側表溝の断面図である。
【
図25】他の実施形態における中央側表溝の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の車両用シートが用いられた車両用シート空調装置について説明する。
図1、2に示すように、車両用シート空調装置1は、乗員2が着座するシート3と、風流れを形成する送風機4とを備える。
図1、2に示す上下方向D1、左右方向(すなわち、横方向)D2、前後方向D3のそれぞれは、シート3が車室内に設置された状態でのシート3の各方向を示す。シート3の上下方向D1は、車両の上下方向と一致する。シート3の横方向D2は、車両の左右方向と一致する。シート3の前後方向D3は、車両の前後方向と一致する。
【0014】
シート3は、車両用シート空調装置1に適用され、乗員が着座する車両用シートである。シート3は、車室内に設置される。シート3は、シートバック10と、シートクッション11とを備える。シートバック10は、シート3に着座する乗員2の背部を支える。シートバック10を上下方向D1に平行にした状態でのシートバック10の上下方向D1が、シートバック10の縦方向である。シートクッション11は、シート3に着座する乗員2の臀部を支える。
【0015】
シートバック10は、中央部12と、一対のサイドサポート13、14とを有する。中央部12は、シートバック10のうちシートバック10の横方向D2の中央側に位置する部分である。中央部12は、シートバック10の厚さ方向で、シート3に着座した乗員2の背部に対向し、乗員2の背部を後方から支持する。中央部12は、背もたれ面、座面とも呼ばれる。中央部12は、中央部12のうち上側に位置する上側中央部121と、中央部12のう上側中央部121よりも下側に位置する下側中央部122とを含む。
【0016】
サイドサポート13、14は、シートバック10のうち中央部12に対してシートバック10の横方向D2の両側に位置する部分である。サイドサポート13、14は、シート3に着座した乗員2の背部を側方から支持する。
【0017】
シートバック10は、シートパッド15と、表皮16とを備える。シートパッド15は、着座する乗員2の荷重を支持するクッション材である。シートパッド15は、柔軟性のある発泡ポリウレタン樹脂の成形体で構成される。シートパッド15には、乗員2の姿勢保持、体圧の分散、振動の抑制などの役割がある。なお、本実施形態では、シートパッド15は、1種類の発泡ポリウレタン樹脂で構成されるが、柔らかさが異なる2種以上の発泡ポリウレタン樹脂で構成されてもよい。また、シートパッド15は、発泡ポリウレタン樹脂以外の発泡樹脂成形体で構成されてもよい。
【0018】
図2に示すように、シートパッド15は、シートパッド15の乗員側の面である表面17と、シートパッド15の乗員側とは反対側の面である裏面18と、シートパッドの側方の面である側面19とを有する。表皮16は、シートパッド15の表面17および側面19を覆う。表皮16は、ファブリックまたは皮などにより構成される。表皮16は、パーフォレーションと呼ばれる図示しない複数の細かい孔を有し、通気性を有する。1つの孔の直径は例えば1mm程度である。
【0019】
図3に示すように、シートパッド15は、中央パッド部151と、一対のサイドパッド部152、153とを有する。中央パッド部151は、シートバック10の中央部12を構成する。中央パッド部151は、シートパッド15のうちシートバック10の横方向D2の中央側に位置する部分である。中央パッド部151は、上側パッド部151aと、下側パッド部151bとを含む。上側パッド部151aは、中央パッド部151のうち上側に位置する部分である。下側パッド部151bは、中央パッド部151のうち上側パッド部151aよりも下側に位置する部分である。サイドパッド部152、153は、シートバック10のサイドサポート13、14を構成する。サイドパッド部152、153は、シートパッド15のうち中央パッド部151に対してシートバック10の横方向D2の両側に位置する部分である。
【0020】
シートパッド15の表面17には、複数の吊り溝20が形成されている。複数の吊り溝20は、表皮16を吊り込み支持するための溝である。表皮16には、図示しない複数の吊り込み部が形成されている。表皮16の各吊り込み部が、各吊り溝20に挿入され、シートパッド15に埋め込まれたワイヤ21に固定される。
【0021】
複数の吊り溝20には、第1縦吊り溝201、第2縦吊り溝202、横吊り溝203、第3縦吊り溝204および第4縦吊り溝205が含まれる。第1縦吊り溝201は、シートパッド15の表面17のうち下側パッド部151bと右側のサイドパッド部152との境界部分に配置され、シートバック10の縦方向に延び広がる。第2縦吊り溝202は、シートパッド15の表面17のうち下側パッド部151bと左側のサイドパッド部153との境界部分に配置され、シートバック10の縦方向に延び広がる。横吊り溝203は、シートパッド15の表面17のうち上側パッド部151aと下側パッド部151bとの境界部分に配置され、シートバック10の横方向D2に延び広がる。第3縦吊り溝204は、シートパッド15の表面17のうち上側パッド部151aと右側のサイドパッド部152との境界部分に配置され、シートバック10の縦方向に延び広がる。第4縦吊り溝205は、シートパッド15の表面17のうち上側パッド部151aと左側のサイドパッド部153との境界部分に配置され、シートバック10の縦方向に延び広がる。
【0022】
図3に示すように、シートパッド15の中央パッド部151には、複数の通風孔22が形成されている。複数の通風孔22は、
図2に示すように、シートパッド15の表面17から裏面18までシートパッド15を貫通している。複数の通風孔22には、送風機4の作動によって形成される風が流れる。
【0023】
図3に示すように、複数の通風孔22のうち1つの通風孔22は、上側パッド部151aに形成されている。複数の通風孔22のうち8つの通風孔22は、下側パッド部151bのうち上側の領域に形成されている。下側パッド部151bのうち上側の領域は、中央パッド部151を上下方向で3分割した領域のうち中央側の領域である。
【0024】
図3、4に示すように、シートパッド15の下側パッド部151bの表面17には、複数の中央側表溝23と、複数の外側表溝24とが形成されている。複数の中央側表溝23は、複数の通風孔22のうち2つ以上の通風孔22同士を繋ぐ線状に配置された表溝である。複数の中央側表溝23のそれぞれは、表面17に沿う方向に線状に延び広がっている。複数の中央側表溝23は、下側パッド部151bを横方向D2で三等分した部位のうち中央側の部位に、少なくとも配置されている。すなわち、複数の中央側表溝23は、下側パッド部151bのうち着座した乗員2の背中中心部に対向する部位に、少なくとも配置されている。
【0025】
複数の外側表溝24は、下側パッド部151bを横方向D2で三等分した部位のうち両端側の部位に、配置されている。複数の外側表溝24のそれぞれは、対応する複数の通風孔22のそれぞれからシートパッド15の横方向D2の中央部から離れる側に向かって線状に延びている。複数の外側表溝24のそれぞれは、表面17に沿う方向に線状に延び広がっている。
【0026】
図5、6に示すように、複数の中央側表溝23と複数の外側表溝24とのそれぞれの表溝において、表溝が延びる方向に垂直な断面での表溝の断面形状は、矩形の一辺を除いた形状である。複数の中央側表溝23と複数の外側表溝24とのそれぞれの深さは、下側パッド部151bの厚さよりも小さく、例えば、5~10mm程度である。このため、複数の中央側表溝23と複数の外側表溝24とのそれぞれは、下側パッド部151bの裏面18に到達していない。
【0027】
複数の通風孔22、複数の中央側表溝23および複数の外側表溝24の配置について、より詳細に説明する。
図4に示すように、下側パッド部151bのうち横方向D2の右側の領域に、8つの通風孔22のうち第1通風孔22a、第2通風孔22b、第3通風孔22cが上から順に配置されている。下側パッド部151bのうち横方向D2の中央側の領域に、8つの通風孔22のうち第4通風孔22d、第5通風孔22eが上から順に配置されている。下側パッド部151bのうち横方向D2の左側の領域に、8つの通風孔22のうち第6通風孔22f、第7通風孔22g、第8通風孔22hが上から順に配置されている。右側の領域は、下側パッド部151bを横方向D2で三等分した部位のうち右側の領域である。中央側の領域は、下側パッド部151bを横方向D2で三等分した部位のうち中央側の領域である。左側の領域は、下側パッド部151bを横方向D2で三等分した部位のうち左側の領域である。
【0028】
図4に示すように、複数の中央側表溝23は、横方向D2に直線状に延びる複数の横直線部23a~23eと、縦方向に直線状に延びる複数の縦直線部23f、23gとを含む。複数の横直線部23a~23eのそれぞれは、横方向D2の一方側と他方側とに位置する通風孔22同士を繋いでいる。複数の縦直線部23f、23gのそれぞれは、複数の横直線部23a~23eのうち縦方向で異なる位置にある複数の横直線部に交わり、縦方向で異なる位置にある横直線部同士を繋いでいる。
【0029】
具体的には、複数の横直線部23a~23は、第1横直線部23a、第2横直線部23b、第3横直線部23c、第4横直線部23d、第5横直線部23eを含む。第1横直線部23aは、上下方向で同じ位置にある第1通風孔22aと第6通風孔22fとを繋いでいる。第2横直線部23bは、上下方向で同じ位置にある第2通風孔22bと第4通風孔22dとを繋いでいる。第3横直線部23cは、上下方向で同じ位置にある第3通風孔22cと第5通風孔22eとを繋いでいる。第4横直線部23dは、上下方向で同じ位置にある第4通風孔22dと第7通風孔22gとを繋いでいる。第5横直線部23eは、上下方向で同じ位置にある第5通風孔22eと第8通風孔22hとを繋いでいる。
【0030】
複数の縦直線部23f、23gは、第1縦直線部23f、第2縦直線部23gを含む。第1縦直線部23fは、横方向D2の右側に位置する第1~第3通風孔22a~22cと、横方向D2の中央側に位置する第4、第5通風孔22d、22eとの横方向D2での間の位置で、第1~第3横直線23a、23b、23cのそれぞれに交わっている。第2縦直線部23gは、横方向D2の中央側に位置する第4、第5通風孔22d、22eと横方向D2の左側に位置する第6~第8通風孔22f~22hとの横方向D2での間の位置で、第1横直線部23a、第4横直線部23d、第5横直線部23eのそれぞれに交わっている。
【0031】
このように、複数の横直線部23a~23eと複数の縦直線部23f、23gとによって、縦方向、横方向D2で異なる位置にある複数の通風孔22同士が繋がっている。なお、本実施形態では、第4通風孔22d、第5通風孔22eのそれぞれが、中央パッド部のうち横方向D2の中央側に配置された中央側通風孔に相当する。第1~第3通風孔22a~22c、第6~第8通風孔22f~22hのそれぞれが、中央パッド部のうち中央側通風孔よりも横方向D2の外側に配置された1つの外側通風孔に相当する。複数の横直線部23a~23e、複数の縦直線部23f、23gが、中央側通風孔と外側通風孔とを繋ぐ線状の部分に相当する。
【0032】
図4に示すように、複数の外側表溝24のそれぞれは、複数の通風孔22のうち対応する通風孔22に連通している。具体的には、複数の外側表溝24のそれぞれは、横方向D2の左右両側に位置する第1~第3通風孔22a~22c、第6~第8通風孔22f~22hのそれぞれに連通している。
【0033】
複数の外側表溝24のそれぞれは、対応する各通風孔22から、中央パッド部151の横方向D2の中央側から横方向D2の外側に向かう方向へ延び広がっている。具体的には、複数の外側表溝24は、第1~第6溝24a~24fを含む。
【0034】
第1溝24aは、第1通風孔22aに連通している。第1溝24aは、第1通風孔22aから横方向D2の右側のサイドパッド部152に向かって斜め上側に延びている。第2溝24bは、第2通風孔22bに連通している。第2溝24bは、第2通風孔22bから第1縦吊り溝201まで横方向D2に延びている。第2溝24bは、第1縦吊り溝201に連通しており、第2通風孔22bと第1縦吊り溝201とを繋いでいる。第3溝24cは、第3通風孔22cに連通している。第3溝24cは、第3通風孔22cから第1縦吊り溝201まで横方向D2に延びている。第3溝24cは、第1縦吊り溝201に連通しており、第3通風孔22cと第1縦吊り溝201とを繋いでいる。
【0035】
第4溝24dは、第6通風孔22fに連通している。第4溝24dは、第6通風孔22fから横方向D2の左側のサイドパッド部153に向かって斜め上側に延びている。第5溝24eは、第7通風孔22gに連通している。第5溝24eは、第7通風孔22gから第2縦吊り溝202まで横方向D2に延びている。第5溝24eは、第2縦吊り溝202に連通しており、第7通風孔22gと第2縦吊り溝202とを繋いでいる。第6溝24fは、第8通風孔22hに連通している。第6溝24fは、第8通風孔22hから第2縦吊り溝202まで横方向D2に延びている。第6溝24fは、第2縦吊り溝202に連通しており、第8通風孔22hと第2縦吊り溝202とを繋いでいる。
【0036】
図1、2に示すように、シートパッド15の裏面18には、裏溝25が形成されている。裏溝25は、複数の通風孔22と送風機4との間の通風路を形成する。具体的には、裏溝25は、略上下方向に延びる3本の溝25a~25cと、その3本の溝25a~25cに連通する略矩形状の空間25dを有している。略上下方向に延びる3本の溝25a~25cは、複数の通風孔22に連通している。そのため、略矩形状の空間25dも、その3本の溝25a~25cを介して複数の通風孔22に連通している。
【0037】
シートパッド15の裏面18側には、裏溝25に対応する部位に裏蓋26が設けられている。裏蓋26は、例えば、硬質フェルトやポリプロピレン、POM等の樹脂などで構成されている。裏蓋26は、裏溝25の開放面を塞ぐようにシートパッド15の裏面18に貼り付けられている。裏蓋26の後方に、送風機4が設けられている。裏蓋26には、送風機4の空気吸込口に対応する位置に開口穴27が設けられている。
【0038】
送風機4の後方には、バックフレーム28が設けられている。バックフレーム28の外縁は、シートパッド15に接続されている。裏蓋26とバックフレーム28との間にシートバック空間29が形成されている。
【0039】
送風機4は、そのシートバック空間29に配置されている。送風機4は、図示しない電気モータの駆動により羽根車を回転させることで気流を発生させるファンである。羽根車として、遠心ファンが用いられる。なお、羽根車として、軸流ファンまたは斜流ファンまたはターボファンを用いてもよい。送風機4は、表皮16の有するパーフォレーションから複数の通風孔22および裏溝25を経由して吸い込んだ空気を、シートバック空間29に吹き出すように構成されている。
【0040】
次に、本実施形態の車両用シート空調装置1と、比較例1、2の車両用シート空調装置1A、1Bとを比較する。
【0041】
比較例1の車両用シート空調装置1Aは、
図7、8に示すように、シートパッド15の表面17に、中央側表溝23と外側表溝24とが形成されていない点で、本実施形態の車両用シート空調装置1と異なる。比較例1の車両用シート空調装置1Aの他の構成は、本実施形態の車両用シート空調装置1と同じである。
【0042】
比較例1の車両用シート空調装置1Aでは、
図7に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢のときに、乗員2の背部によって複数の通風孔22の全部が塞がれる。このため、送風機4の作動時に、乗員2の背部とシートバック10との間に風が流れない、または、乗員2の背部とシートバック10との間を流れる風が少ない。この結果、乗員2が暑さ、ムレ感を感じ、不快に感じる。ここでいう通常姿勢とは、矢印A1のように、乗員2の体が前を向いており、着座した乗員2の背部が、シートバック10の中央部12の表面に対して平行な状態で、中央部12に荷重をかけて面接触する状態のことである。すなわち、通常姿勢とは、乗員2の背部の全域がシートバック10の中央部12の表面に密着した状態である。
【0043】
また、比較例1の車両用シート空調装置1Aでは、送風機4の作動時に、
図8に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わると、
図8中の破線矢印のように、複数の通風孔22のうち乗員2の背部に塞がれていない通風孔22から風が吸込まれる。これにより、乗員2の背部とシートバック10との間に風が流れる。なお、ここでいう斜め姿勢とは、矢印A2のように、乗員2の体が斜め前を向いており、着座した乗員2の背部のうち横方向D2の一方側の部位が、シートバック10の中央部12から離れた状態のことである。
【0044】
比較例2の車両用シート空調装置1Bは、
図9、10に示すように、シートパッド15の表面17に、中央側表溝23が形成されていない点で、本実施形態の車両用シート空調装置1と異なる。比較例2の車両用シート空調装置1Bの他の構成は、本実施形態の車両用シート空調装置1と同じである。
【0045】
比較例2の車両用シート空調装置1Bでは、シートパッド15の中央パッド部151の表面17に、複数の外側表溝24が形成されている。
図9に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢のとき、中央パッド部151のうち横方向D2の両端側に位置する通風孔22は、複数の外側表溝24を介して、車室内空間と連通する。このため、乗員2の着座姿勢が通常姿勢のときに、送風機4が作動すると、
図9中の破線矢印のように、車室内の空気は、表皮16のパーフォレーション、外側表溝24、通風孔22、裏溝25、送風機4、シートバック空間29の順に流れる。これにより、乗員2の背部のうち横方向D2の両端側の部位と、シートバック10との間に風が流れる。
【0046】
しかし、中央パッド部151のうち横方向D2の中央側に位置する中央側通風孔22は、乗員2の背部のうち横方向D2の中心側の領域である背部中心部がシートバック10の表面に密着することで、背部中心部によって塞がれる。すなわち、背部中心部に対向する位置にある中央側通風孔22を塞ぐように、背部中心部がシートバック10の表面に面接触する。このため、乗員2の背部中心部とシートバック10との間には風が流れない。または、背部中心部とシートバック10との間を流れる風が少ない。この結果、乗員2が、暑さ、ムレ感を感じ、不快に感じる。
【0047】
また、比較例2の車両用シート空調装置1Bでは、送風機4の作動時に、
図10に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わると、破線矢印のように、乗員2の背部に塞がれていない中央側通風孔22から空気が吸込まれる。これにより、乗員2の背部中心部とシートバック10との間に風が流れる。このとき、外側表溝24を風が流れるため、比較例1の車両用シート空調装置1Aと比較して、乗員2の背部とシートバック10との間に流れる風が多い。
【0048】
本実施形態の車両用シート空調装置1では、
図11、12に示すように、シートパッド15のうち中央パッド部151の表面17に、複数の外側表溝24に加えて、複数の中央側表溝23が形成されている。複数の中央側表溝23は、複数の通風孔22のそれぞれを互いに繋ぐ線状に配置されている。複数の中央側表溝23は、シートパッド15のうち着座した乗員2の背中中心部に対向する部位に少なくとも配置されている。
【0049】
図11に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢のとき、比較例2の車両用シート空調装置1Bと同様に、送風機4が作動すると、破線矢印に示すように、車室内の空気は、外側表溝24を通って、中央パッド部151のうち横方向D2の両端側に位置する複数の通風孔22から吸い込まれる。さらに、比較例2の車両用シート空調装置1Bと異なり、中央側表溝23によって、背部中心部とシートパッド15との間に空気層が形成される。この結果、乗員2の着座姿勢が通常姿勢のときに、比較例1、2の車両用シート空調装置1A、1Bと比較して、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0050】
そして、本実施形態の車両用シート空調装置1では、送風機4の作動時に、
図12に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わると、中央側通風孔22が開放される。このため、破線矢印のように、中央側通風孔22から空気が吸込まれ、乗員2の背部中心部とシートバック10との間に風が流れる。このとき、中央側通風孔22に向かう風が中央側表溝23を流れる。このため、比較例1、2の車両用シート空調装置1A、1Bと比較して、乗員2の背部中心部とシートバック10との間に、風が多く流れる。これにより、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0051】
特に、本実施形態の車両用シート空調装置1では、複数の中央側表溝23は、複数の横直線部23a~23eと複数の縦直線部23f、23gとによって、縦方向、横方向D2で異なる位置にある複数の左側通風孔22、複数の中央側通風孔22、複数の右側通風孔22のそれぞれを互いにつないでいる。このため、シート3に着座した乗員2が着座姿勢をどのように変えても、複数の通風孔22のいずれか1つ以上が開放された状態になることで、複数の中央側表溝23に、開放されている通風孔22に向かう風流れを形成することができる。これにより、比較例1、2の車両用シート空調装置1A、1Bと比較して、開放されている通風孔22に向かって乗員2の背部とシート3との間を流れる風を増大できる。よって、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0052】
次に、本実施形態の複数の中央側表溝23と、
図13に示す比較例3の複数の中央側表溝23Aとを比較する。比較例3の複数の中央側表溝23Aは、本実施形態の複数の中央側表溝23と異なり、2つ以上の通風孔同士を繋ぐように配置されておらず、1つの通風孔22のみに連通している。すなわち、比較例3の複数の中央側表溝23Aのそれぞれは、一端が1つの通風孔22に連通しているが、他端がその通風孔22とは別の通風孔22に連通していない。
【0053】
このため、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わっても、複数の中央側表溝23Aが連通する通風孔22を塞ぐように、シートバック10の表面に乗員の背部が接触していると、複数の中央側表溝23Aには風が流れない。または、複数の中央側表溝23Aを流れる風が少ない。
【0054】
これに対して、本実施形態の複数の中央側表溝23は、
図4に示すように、2つ以上の通風孔22同士を繋げている。このため、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わることによって、複数の中央側表溝23で繋げられた2つ以上の通風孔22のうちのいずれか1つ以上の通風孔22が開放されると、複数の中央側表溝23に風を流すことができる。または、複数の中央側表溝23を流れる風を増大させることができる。
【0055】
このように、本実施形態の複数の中央側表溝23がシートパッド15の表面17に形成されることで、比較例3の複数の中央側表溝23Aがシートパッド15の表面17に形成されている場合と比較して、乗員2の背部とシートバック10との間に風流れが生じやすくなる。このため、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0056】
(第2実施形態)
図14に示すように、本実施形態では、シートパッド15の下側パッド部151bの表面17には、第1実施形態で説明した複数の中央側表溝23と複数の外側表溝24とのうち複数の中央側表溝23のみが形成されている。車両用シート空調装置1の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0057】
図15に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢のとき、中央側表溝23によって、背部中心部とシートパッド15との間に空気層が形成される。この結果、比較例1、2の車両用シート空調装置1A、1Bと比較して、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0058】
そして、本実施形態の車両用シート空調装置1では、送風機4の作動時に、
図16に示すように、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から斜め姿勢に変わると、中央側通風孔22が開放される。このため、破線矢印のように、中央側通風孔22から空気が吸込まれ、乗員2の背部中心部とシートバック10との間に風が流れる。このとき、中央側通風孔22に向かう風が中央側表溝23を流れる。このため、比較例1、2の車両用シート空調装置1A、1Bと比較して、乗員2の背部中心部とシートバック10との間に、風が多く流れる。これにより、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0059】
(第3実施形態)
本実施形態では、複数の中央側表溝23の配置が第2実施形態と異なる。具体的には、
図17に示すように、本実施形態では、シートパッド15の下側パッド部151bの表面17のうち表溝設定不可範囲30を除く位置に、複数の中央側表溝23が形成されている。表溝設定不可範囲30は、何らかの理由により、下側パッド部151bの表面17のうち溝を形成できない範囲である。
【0060】
中央側表溝23は、複数の横直線部23b、23c、23d、23eと、複数の縦直線部23h、23i、23j、23k、23lと、を含む。複数の横直線部23b~23eのそれぞれは、横方向D2に直線状に延びており、横方向D2の一方側と他方側とに位置する通風孔22同士を繋いでいる。複数の縦直線部23h~23lのそれぞれは、縦方向(すなわち、上下方向D1)に直線状に延びており、縦方向の一方側と他方側とに位置する通風孔22同士を繋いでいる。
【0061】
本実施形態の車両用シート空調装置1の他の構成は、第2実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
(第4実施形態)
本実施形態では、複数の中央側表溝23の配置が第2実施形態と異なる。具体的には、
図18に示すように、本実施形態では、シートパッド15の下側パッド部151bの表面17のうち表溝設定不可範囲31を除く位置に、複数の中央側表溝23が形成されている。
【0063】
中央側表溝23は、複数の横直線部23a~23eと、複数の縦直線部23h、23k、23mと、複数の曲線部23n、23oとを含む。
【0064】
縦直線部23h、23kは、縦方向に直線状に延びており、縦方向の一方側と他方側とに位置する通風孔22同士を繋いでいる。縦直線部23mは、縦方向に直線状に延びており、1つの通風孔22(すなわち、第4通風孔22d)と1つの横直線部23(すなわち、第1横直線部23a)とを繋いでいる。
【0065】
複数の曲線部23n、23oのそれぞれは、縦方向に曲線状に延びており、表溝設定不可範囲31を迂回して、縦方向の一方側と他方側に位置する通風孔22同士を繋いでいる。具体的には、曲線部23nは、第2通風孔22bと第3通風孔22cとを繋ぐ曲線状に延びている。曲線部23oは、第7通風孔22gと第8通風孔22hとを繋ぐ曲線状に延びている。
【0066】
本実施形態の車両用シート空調装置1の他の構成は、第2実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
(第5実施形態)
本実施形態では、複数の中央側表溝23の配置が第2実施形態と異なる。具体的には、
図19に示すように、本実施形態では、シートパッド15の下側パッド部151bの表面17のうち表溝設定不可範囲32、33を除く位置に、複数の中央側表溝23が形成されている。
【0068】
中央側表溝23は、複数の縦直線部23h、23i、23j、23k、23lに加えて、斜め直線部23p、23qと、縦直線部23rと、を含む。斜め直線部23pは、第1通風孔22aに連通し、第1通風孔22aから斜め上方向に直線状に延びている。斜め直線部23qは、第6通風孔22fに連通し、第6通風孔22fから斜め上方向に直線状に延びている。縦直線部23rは、第4通風孔22dに連通し、第4通風孔22dから上方向に直線状に延びている。斜め直線部23p、斜め直線部23qおよび縦直線部23rは、繋がっている。このように、斜め直線部23p、23qおよび縦直線部23rは、表溝設定不可範囲32、33を迂回して、第1通風孔22a、第4通風孔22dおよび第6通風孔22fを繋ぐ直線状に配置されている。
【0069】
また、中央側表溝23は、曲線部23s、23tと、縦直線部23uとを含む。曲線部23sは、第3通風孔22cに連通し、第3通風孔22cから下方向に円弧の曲線状に延びている。曲線部23tは、第8通風孔22hに連通し、第8通風孔22hから下方向に円弧の曲線状に延びている。縦直線部23uは、第5通風孔22eに連通し、第5通風孔22eから下方向に延びている。曲線部23s、23tおよび直線部23uは、表溝設定不可範囲32、33を迂回して、第3通風孔22c、第5通風孔22eおよび第8通風孔22hを繋ぐ曲線状または直線状に配置されている。
【0070】
本実施形態の車両用シート空調装置1の他の構成は、第2実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
(第6実施形態)
図20に示すように、本実施形態の車両用シート空調装置1では、シートクッション11のシートパッド15に、複数の中央側表溝23および複数の外側表溝24が形成されている。
図20では、表皮を除いた状態のシートクッション11が示されている。
【0072】
シートクッション11は、中央部41と、サイドサポート42、43とを有する。中央部41は、シートクッション11のうち横方向D2の中央側に位置する部分である。中央部41は、シートクッション11の厚さ方向で、シート3に着座した乗員2の臀部および大腿部に対向し、臀部および大腿部を下方から支持する。
【0073】
サイドサポート42、43は、シートクッション11のうち中央部41に対して横方向D2の両側に位置する部分である。サイドサポート42、43は、シート3に着座した乗員2の臀部および大腿部を側方から支持する。
【0074】
シートクッション11は、シートバック10と同様に、シートパッド15と、表皮16とを備える。シートクッション11のシートパッド15は、シートバック10のシートパッド15と同様に、中央パッド部151と、サイドパッド部152、153とを有する。中央パッド部151は、シートパッド15のうち横方向D2の中央側に位置する部分であり、シートクッション11の中央部41を構成する。中央パッド部151は、シートパッド15のうちシート3に着座した乗員2の臀部および大腿部に対向する領域である。サイドパッド部152、153は、シートパッド15のうち中央パッド部151に対して横方向D2の両側に位置する部分であり、シートクッション11のサイドサポート42、43を構成する。
【0075】
シートクッション11のシートパッド15には、シートバック10のシートパッド15と同様に、複数の吊り溝20が形成されている。複数の吊り溝20には、第1吊り溝206、第2吊り溝207が含まれる。第1吊り溝206は、シートパッド15の表面17のうち中央パッド部151と右側のサイドパッド部152との境界部分に配置され、シートクッション11の前後方向に延び広がる。第2吊り溝207は、シートパッド15の表面17のうち中央パッド部151と左側のサイドパッド部153との境界部分に配置され、中央パッド部151の前後方向に延び広がる。
【0076】
シートパッド15の中央パッド部151には、複数の通風孔22が形成されている。複数の通風孔22は、中央パッド部151のうち横方向D2の中央側の領域、かつ、中央パッド部151のうち前後方向D3での中心よりも後側の領域に、前後方向D3に互いに間をあけて一列に配置された2つの中央側通風孔22i、22jを含む。複数の通風孔22は、中央パッド部151のうち横方向D2の右側の領域に、前後方向D3に互いに間をあけて一列に配置された5つの右側通風孔22k、22l、22m、22n、22oを含む。複数の通風孔22は、中央パッド部151のうち横方向D2の左側の領域に、前後方向D3に互いに間をあけて一列に配置された5つの左側通風孔22p、22q、22r、22s、22tを含む。なお、5つの右側通風孔22k~22o、5つの左側通風孔22p~22tのそれぞれが、中央パッド部のうち中央側通風孔よりも横方向D2の外側に配置された1つの外側通風孔に相当する。
【0077】
また、シートパッド15の表面17には、複数の中央側表溝23と、複数の外側表溝24とが形成されている。
【0078】
複数の中央側表溝23は、中央パッド部151のうち5つの右側通風孔22k~22oと5つの左側通風孔22p~22tとの間の領域に、配置されている。換言すると、複数の中央側表溝23は、中央パッド部151を横方向D2で三等分した部位のうち中央側の部位に、少なくとも配置されている。
【0079】
複数の中央側表溝23は、複数の通風孔22のうち2つ以上の通風孔22同士を繋ぐ線状に配置されている。具体的には、複数の中央側表溝23は、横方向D2の一方側に位置する1つ以上の通風孔22と横方向D2の他方側に位置する1つ以上の通風孔22とを繋ぐ線状に配置されている。
【0080】
より具体的には、複数の中央側表溝23は、前後方向D3で同じ位置にある中央側通風孔22iと右側通風孔22kとを繋ぐ線状の部分であって、横方向D2に直線状に延び広がる横直線部231を含む。複数の中央側表溝23は、前後方向D3で同じ位置にある中央側通風孔22jと右側通風孔22lとを繋ぐ線状の部分であって、横方向D2に直線状に延び広がる横直線部232を含む。複数の中央側表溝23は、前後方向D3で同じ位置にある中央側通風孔22iと左側通風孔22pとを繋ぐ線状の部分であって、横方向D2に直線状に延び広がる横直線部233を含む。複数の中央側表溝23は、前後方向D3で同じ位置にある中央側通風孔22jと左側通風孔22qとを繋ぐ線状の部分であって、横方向D2に直線状に延び広がる横直線部234を含む。
【0081】
複数の中央側表溝23は、前後方向D3で同じ位置にある右側通風孔22mと左側通風孔22rとを繋ぐ線状の部分であって、横方向D2に直線状に延び広がる横直線部235を含む。複数の中央側表溝23は、前後方向D3で異なる位置にある複数の横直線部231、232、235のそれぞれと交わるように、前後方向D3に直線状に延び広がる縦直線部236を含む。複数の中央側表溝23は、前後方向D3で異なる位置にある複数の横直線部233、234、235のそれぞれと交わるように、前後方向D3に直線状に延び広がる縦直線部236を含む。
【0082】
このように、複数の中央側表溝23は、複数の横直線部231~235と複数の縦直線部236、237とによって、縦方向、横方向D2で異なる位置にある複数の左側通風孔22p~22r、複数の中央側通風孔22i、22j、複数の右側通風孔22k~22mのそれぞれを互いにつないでいる。
【0083】
また、複数の中央側表溝23は、前後方向D3で同じ位置にある右側通風孔22nと左側通風孔22sとを繋ぐ線状の部分であって、横方向D2に直線状に延び広がる横直線部238を含む。複数の中央側表溝23は、前後方向D3で同じ位置にある右側通風孔22oと左側通風孔22tとを繋ぐ線状の部分であって、横方向D2に直線状に延び広がる横直線部239を含む。複数の中央側表溝23は、前後方向D3で異なる位置にある複数の横直線部238、239のそれぞれと交わるように、前後方向D3に直線状に延び広がる縦直線部2310、2311を含む。
【0084】
このように、複数の中央側表溝23は、複数の横直線部238、239と複数の縦直線部2310、2311とによって、縦方向、横方向D2で異なる位置にある複数の左側通風孔22s、22t、複数の右側通風孔22n、22oのそれぞれを互いにつないでいる。
【0085】
複数の外側表溝24は、中央パッド部151を横方向D2で三等分した部位のうち両端側の部位に、配置されている。複数の外側表溝24のそれぞれは、複数の通風孔22のうち対応する通風孔22に連通している。複数の外側表溝24のそれぞれは、対応する各通風孔22から、中央パッド部151の横方向D2の中央側から横方向D2の外側に向かう方向へ延び広がっている。
【0086】
具体的には、複数の外側表溝24は、複数の右側通風孔22k、22l、22m、22n、22oのそれぞれに連なる外側表溝24k、24l、24m、24n、24oを含む。外側表溝24k~24oのそれぞれは、対応する複数の右側通風孔22k~22oのそれぞれから第1吊り溝206まで横方向D2に延びている。複数の外側表溝24は、複数の左側通風孔22p、22q、22r、22s、22tのそれぞれに連なる外側表溝24p、24q、24r、24s、24tを含む。外側表溝24p~24tのそれぞれは、対応する複数の左側通風孔22p~22tのそれぞれから第2吊り溝207まで横方向D2に延びている。
【0087】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、乗員2の着座姿勢が乗員2の臀部および大腿部の全部がシートクッション11の表面に面接触する通常姿勢のとき、中央側表溝23によって、乗員2の臀部および大腿部とシートパッド15との間に空気層が形成される。この結果、中央側表溝23が形成されていない場合と比較して、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0088】
また、乗員2の着座姿勢が通常姿勢から、乗員2の臀部および大腿部の少なくとも一部がシートクッション11の表面から離れる姿勢に変わると、開放された通風孔22から空気が吸込まれる。これにより、乗員2の臀部および大腿部とシートクッション11との間に風が流れる。このとき、開放された通風孔22に向かう風が中央側表溝23を流れる。このため、中央側表溝23が形成されていない場合と比較して、乗員2の臀部および大腿部とシートクッション11との間に、風が多く流れる。これにより、乗員の暑さ、ムレ感を抑制することができる。
【0089】
(第7実施形態)
本実施形態では、複数の通風孔22の配置が第6実施形態と異なる。具体的には、
図21に示すように、本実施形態では、中央パッド部151に、中央側通風孔が形成されていない。中央側表溝23の横直線部231は、前後方向D3で同じ位置にある右側通風孔22kと左側通風孔22pとを繋ぐ。中央側表溝23の横直線部232は、前後方向D3で同じ位置にある右側通風孔22lと左側通風孔22qとを繋ぐ。車両用シート空調装置1の他の構成は、第6実施形態と同じである。本実施形態においても、第6実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
ここで、本発明者が行った試験結果について説明する。
図22に示すように、本発明者は、シートクッション11のシートパッド15の表面に、中央側表溝23が形成された領域R1と、中央側表溝23が形成されていない領域R2とを設けた。そのシートパッド15を表皮で覆ったシートクッション11の上に乗員が座った状態で、本発明者は、車両用シート空調装置の送風機を作動させた。そして、乗員がシートクッション11から離れて3秒後に、本発明者は、サーモビューアを用いてシートクッション11の表皮の温度を測定した。
【0091】
その結果、中央側表溝23が形成された領域R1の表皮の平均温度は、30.5℃であった。中央側表溝23が形成されていない領域R2の表皮の平均温度は、32.4℃であった。中央側表溝23が形成された領域R1の方が、中央側表溝23が形成されていない領域R2と比較して、表皮の平均温度が約2℃低かった。中央側表溝23が形成された領域R1の方が、乗員が離れた直後に生じる風流れが多いため、表皮の平均温度が低くなったと考えられる。この試験結果より、シートパッド15の表面に中央側表溝23を形成することで、乗員が感じる暑さを低減できることが確認された。
【0092】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、複数の中央側表溝23と複数の外側表溝24とのそれぞれの表溝において、表溝が延びる方向に垂直な断面での表溝の断面形状は、矩形の一辺を除いた形状である。しかしながら、表溝の断面形状は、他の形状であってもよい。例えば、表溝の断面形状は、
図23に示すように、矩形の2つの角に面取り部が形成された六角形の一辺を除いた形状であってもよい。また、表溝の断面形状は、
図24に示すように、三角形の一辺を除いた形状、すなわち、V字形状であってもよい。また、表溝の断面形状は、
図25に示すように、円弧形状であってもよい。
【0093】
(2)上記した各実施形態では、中央側表溝23が複数形成されていたが、中央側表溝23が1つのみ形成されていてもよい。これらのように、中央側表溝23は1つ以上形成されていればよい。
【0094】
(3)第1実施形態では、
図4に示すように、複数の通風孔22として、中央パッド部151のうち横方向D2の中央側に通風孔22d、22eが形成されている。しかしながら、これらの通風孔22d、22eが形成されていなくてもよい。この場合、中央側表溝23は、中央パッド部151のうち横方向D2の中央側よりも横方向D2の一方側に位置する通風孔22a、22b、22cと、中央パッド部151のうち横方向D2の中央側よりも横方向D2の他方側に位置する通風孔22f、22g、22hと、を繋ぐ線状に配置されていればよい。
【0095】
(4)第1実施形態では、複数の通風孔22、中央側表溝23および外側表溝24の形成位置は、下側パッド部151bのうち上側の領域であったが、下側パッド部151bのうち下側の領域であってもよい。下側パッド部151bのうち下側の領域は、中央パッド部151を上下方向で3分割した領域のうち下側の領域である。
【0096】
(5)第1実施形態では、中央側表溝23は、下側パッド部151bの8つの通風孔22の全部に対して、通風孔22同士を繋ぐ線状に配置されている。しかしながら、8つの通風孔22のうち一部の通風孔22が他の通風孔22と繋がっていなくてもよい。すなわち、下側パッド部151bの8つの通風孔22のうち少なくとも2つ以上の通風孔22を繋ぐ線状に配置されていればよい。
【0097】
同様に、第6実施形態では、中央側表溝23は、中央パッド部151の複数の通風孔22の全部に対して、通風孔22同士を繋ぐ線状に配置されている。しかしながら、中央側表溝23は、中央パッド部151の複数の通風孔22のうち少なくとも2つ以上の通風孔22を繋ぐ線状に配置されていればよい。
【0098】
(6)上記した各実施形態では、複数の通風孔22は、送風機4の作動によって、乗員側の空間から空気を吸い込む。しかしながら、複数の通風孔22は、送風機4の作動によって、乗員側の空間へ空気を吹き出してもよい。
【0099】
(7)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0100】
15 シートパッド
16 表皮
22 複数の通風孔
23 複数の中央側表溝