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特開2022-178196ローカルエッジネットワーク用通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178196
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ローカルエッジネットワーク用通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/12 20090101AFI20221125BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20221125BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20221125BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221125BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20221125BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20221125BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20221125BHJP
【FI】
H04W28/12
H04W4/44
H04W4/46
G08G1/09 F
G08G1/09 H
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084800
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】516227490
【氏名又は名称】株式会社テクノアクセルネットワークス
(71)【出願人】
【識別番号】501326067
【氏名又は名称】株式会社サイバー創研
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100199808
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 昌代
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】230116643
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】宮田 博司
(72)【発明者】
【氏名】有本 和民
(72)【発明者】
【氏名】山内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三上 博英
(72)【発明者】
【氏名】吉川 憲昭
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA26
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC27
5H181EE10
5H181FF04
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181MB02
5H181MC24
5K067AA13
5K067AA33
5K067BB03
5K067BB21
5K067DD11
5K067DD17
5K067DD24
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE25
5K067EE56
5K067FF02
5K067HH22
5K067JJ13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の自動運転等に適用できる、モバイル基地局及び複数の移動体を備えたローカルエッジネットワーク用通信システムを提供する。
【解決手段】ローカルエッジネットワーク用通信システム1において、モバイル基地局10及び複数の移動体20(車両21、ドローン22、移動型ロボット23、携帯機24、自転車25等)が、互いに共通のワイヤレスインタフェースで接続されており、複数の移動体がセンサ20aを有し、センサによって取得されるセンサ情報を、モバイル基地局及び複数の移動体間で共有するための複数のデータ階層をさらに備え、センサ情報をそのデータの特徴に応じて異なるデータ階層に分けて格納し、夫々格納されているデータの特徴に応じて、データ階層単位で、通信方式及びデータ共有エリアを含むデータ運用条件を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル基地局及び複数の移動体を備えるローカルエッジネットワーク用通信システムであって、
上記モバイル基地局及び上記複数の移動体が、互いに共通のワイヤレスインタフェースで接続されており、
上記複数の移動体が、センサを有し、
上記センサによって取得されるセンサ情報を、上記モバイル基地局及び上記複数の移動体間で共有するための複数のデータ階層をさらに備え、
上記センサ情報をそのデータの特徴に応じて異なる上記データ階層に分けて格納し、
それぞれ格納されている上記データの特徴に応じて、上記データ階層単位で、通信方式及びデータ共有エリアを含むデータ運用条件が設定されているローカルエッジネットワーク用通信システム。
【請求項2】
上記移動体が、車両を含む請求項1に記載のローカルエッジネットワーク用通信システム。
【請求項3】
上記移動体が、ドローン、移動型ロボット又はその両方をさらに含む請求項2に記載のローカルエッジネットワーク用通信システム。
【請求項4】
上記複数のデータ階層が、上記データの特徴が静的である第1層、準静的である第2層、準動的である第3層及び動的である第4層の4つのデータ階層からなる請求項2又は請求項3に記載のローカルエッジネットワーク用通信システム。
【請求項5】
上記データ運用条件が、許容遅延時間と1回あたりの許容データ転送量とを含み、
上記許容遅延時間が、第1層から第4層の順に許容値が大きくなるよう設定され、
上記許容データ転送量が、第1層から第4層の順に許容値が小さくなるよう設定される請求項4に記載のローカルエッジネットワーク用通信システム。
【請求項6】
上記データ運用条件の決定に、電波伝搬環境及び通信環境が用いられ、
上記電波伝搬環境が、上記センサ情報を取得した上記移動体と、他の上記移動体及び上記モバイル基地局との間の伝搬可能距離を含み、
上記通信環境が、利用可能な周波数、伝送帯域及び伝送速度を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のローカルエッジネットワーク用通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローカルエッジネットワーク用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全運転や自動運転支援が実用化されつつあり、また自動運転の開発も進んでいる。これらのシステムでは、例えばシステムに必要な高精度地図情報はクラウドから通信基地局を経由して車両に配信されるため、車載コンピュータと通信とを複合させた通信システムとして実現される。
【0003】
このような通信システムとして、例えば広域通信部と、狭域通信部との両方を搭載した通信システムが提案されている(特開2020-5029号公報参照)。この通信システムでは、2つの通信部を搭載することで、車車間通信の信頼性を向上させている。
【0004】
一方、広域通信部と狭域通信部の2つの通信モジュールのそれぞれから車両情報を逐次同報送信させることになるため、発熱及び消費電流増加が生じ易い。上記通信システムでは、この課題を無線基地局からの指示に基づいて他車両との遭遇の可能性がない場合には広域定期送信処理を休止することで、発熱及び消費電流を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-5029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両の安全運転、自動運転支援あるいは自動運転では、例えばデータ収集専用車両で数か月から数年に一度の頻度で収集し編集及び配信されていたカーナビ用の静的地図データに、高度安全運転支援や自動運転に必要な周辺車両、歩行者及び信号の情報、事故情報、交通規制情報などの逐次変化する情報を重ね合わせたダイナミックマップと呼ばれるデータが使用される。
【0007】
車両の自動運転等では、主に車両近傍の情報を元に制御が行われることから、上記ダイナミックマップの逐次変化する情報は、比較的狭い範囲のローカルなエリアのデータとなるものが多い。また、より精度の高い、すなわち情報量の多いダイナミックマップを得るには、ローカルな範囲を移動する移動体が取得した情報を他の移動体と共有することで、データを拡充する方法が有効である。
【0008】
このようにして得られたダイナミックデータでは、逐次変化する情報が多いため、上記従来の通信システムでは、同報送信させる情報量が膨大となり通信遅延の増大など通信環境を悪化させるおそれがある。また、予め通信時間が長くかかることを想定して、必要以上に広い範囲の情報を送信することになり、使われない情報が含まれる、受け取った時点で情報が古くなっているといった通信の無駄が発生する場合がある。また、取り扱う情報の種類が増えるに従って送信処理を休止できる期間も短くなる傾向となるため、発熱及び消費電流の抑制効果も低下するおそれがある。このため、より効率的なデータ通信システムが望まれている。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、車両の自動運転等に必要な高精度のダイナミックデータを効率よく扱えるローカルエッジネットワーク用通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るローカルエッジネットワーク用通信システムは、モバイル基地局及び複数の移動体を備えるローカルエッジネットワーク用通信システムであって、上記モバイル基地局及び上記複数の移動体が、互いに共通のワイヤレスインタフェースで接続されており、上記複数の移動体が、センサを有し、上記センサによって取得されるセンサ情報を、上記モバイル基地局及び上記複数の移動体間で共有するための複数のデータ階層をさらに備え、上記センサ情報をそのデータの特徴に応じて異なる上記データ階層に分けて格納し、それぞれ格納されている上記データの特徴に応じて、上記データ階層単位で、通信方式及びデータ共有エリアを含むデータ運用条件が設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のローカルエッジネットワーク用通信システムは、車両の自動運転等に必要な高精度のダイナミックデータを効率よく扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るローカルエッジネットワーク用通信システムを示す模式的構成図である。
図2図2は、図1のローカルエッジネットワーク用通信システムを用いたネットワーク構成の一例を示す模式的構成図である。
図3図3は、図1のローカルエッジネットワーク用通信システムが有するデータベースを含む階層化データベースの模式的構成図である。
図4図4は、末端データベースの地理的配置例を示す地図である。
図5図5は、中間データベース及び主データベースの地理的配置例を示す地図である。
図6図6は、道路網に対応したモバイル基地局の構成例を示す。
図7図7は、移動体間でのデータ転送に用いるデータの構成例を示す。
図8図8は、図7のデータ転送を実現できる図1の車両の一例を示す模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0014】
本発明の一態様に係るローカルエッジネットワーク用通信システムは、モバイル基地局及び複数の移動体を備えるローカルエッジネットワーク用通信システムであって、上記モバイル基地局及び上記複数の移動体が、互いに共通のワイヤレスインタフェースで接続されており、上記複数の移動体が、センサを有し、上記センサによって取得されるセンサ情報を、上記モバイル基地局及び上記複数の移動体間で共有するための複数のデータ階層をさらに備え、上記センサ情報をそのデータの特徴に応じて異なる上記データ階層に分けて格納し、それぞれ格納されている上記データの特徴に応じて、上記データ階層単位で、通信方式及びデータ共有エリアを含むデータ運用条件が設定されている。
【0015】
当該ローカルエッジネットワーク用通信システムでは、複数の移動体が取得するセンサ情報のデータの特徴に応じて異なるデータ階層にその情報が格納される。そして各データ階層単位で格納されているデータの特徴に応じて運用条件を決定するので、当該ローカルエッジネットワーク用通信システムは、膨大となるデータを効率よく扱うことができる。
【0016】
上記移動体が、車両を含むとよい。当該ローカルエッジネットワーク用通信システムは、車両を含むシステムに特に好適に用いることができる。
【0017】
上記移動体が、ドローン、移動型ロボット、又はその両方をさらに含むとよい。このように上記移動体にドローン、移動型ロボット又はその両方をさらに含めることで、ダイナミックデータを高精度化し易い。
【0018】
上記複数のデータ階層が、上記データの特徴が静的である第1層、準静的である第2層、準動的である第3層及び動的である第4層の4つのデータ階層からなるとよい。データが変化する平均的な更新時間間隔は、静的、準静的、準動的及び動的の順に短くなる。つまり、この順にデータ変化の頻度が高い。このようにデータ変化の頻度によりデータ階層を構成することで、ダイナミックデータの精度及び運用効率を高めることができる。
【0019】
上記データ運用条件が、許容遅延時間と1回あたりの許容データ転送量とを含み、上記許容遅延時間が、第1層から第4層の順に値が大きくなるよう設定され、上記許容データ転送量が、第1層から第4層の順に値が小さくなるよう設定されるとよい。このように許容遅延時間を設定することで、データの更新頻度に応じて適切にデータ更新が行われる。また、上述のように許容データ転送量を設定することで、データ更新頻度が高いことにより通信量が膨大化することを抑止できるので、ダイナミックデータの運用効率の低下を抑止できる。ここで、「許容遅延時間」とは、送信データがセンサで観測された時刻を基準時刻として、この基準時刻から送信を完了するまでのエンドツーエンドの時間を指し、必ずしも基準時刻において送信を開始していることを要しない。例えば許容遅延時間が100秒である場合、実際のデータ送信は90秒から100秒において行われていてもよい。
【0020】
上記データ運用条件の決定に、電波伝搬環境及び通信環境が用いられ、上記電波伝搬環境が、上記センサ情報を取得した上記移動体と、他の上記移動体及び上記モバイル基地局との間の伝搬可能距離を含み、上記通信環境が、利用可能な周波数、伝送帯域及び伝送速度を含むとよい。このようにデータ運用条件の決定に上述の電波伝搬環境及び通信環境を用いることで、通信の品質を維持し易い。
【0021】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係るローカルエッジネットワーク用通信システムについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1に示すローカルエッジネットワーク用通信システム1は、モバイル基地局10及び複数の移動体20を備えるローカルエッジネットワーク用通信システムである。また、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1は、路側機30を備える。
【0023】
モバイル基地局10、複数の移動体20及び路側機30は、ワイヤレスインタフェースで接続されている。上記ワイヤレスインターフェイスとしては、5G、ローカル5G、4G、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、LPWA(Low Power Wide Area)、WiFi、IEEE802.11系列のインタフェース等を用いることができる。
【0024】
また、モバイル基地局10及び複数の移動体20は、互いに共通のワイヤレスインタフェースで接続されている。つまり、モバイル基地局10及び複数の移動体20は、任意の2者間で直接通信を行うことができる。さらに、例えば車両21-ドローン22-モバイル基地局10のように、1又は複数の移動体20を中継器とした通信を行うこともできる。なお、図1では図面が煩雑となることを避けるため、上記2者間の通信のうち一部を代表して図示しており、その全てが図示されているわけではない。
【0025】
図2に、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1を用いたネットワーク構成の一例を示す。上記ネットワーク構成において、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1は、そのワイヤレス通信が行える地理的範囲(データ共有エリア)に応じて複数設置され、広域がカバーされている。
【0026】
上記ネットワーク構成では、まず、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1において、後述する移動体20のセンサが情報を取得し、その情報が移動体20で処理され、移動体20の末端データベースに格納される。上記情報の一部、つまりどの移動体がどのような情報を取得したかについての情報は、路側機30で取得される情報とともに、モバイル基地局10に含まれるローカル基地局12(後述)に収集される。収集された全情報は、ローカル基地局12で処理された後、さらに後述する主基地局11で収集、処理され、主基地局11をゲートウェイ(GW)として、必要な情報が適宜クラウドXに中継される。
【0027】
クラウドXは、ルータX1と、サーバX2と、データセンタX3とを有する。クラウドXは、ルータX1を介して各データ共有エリアのモバイル基地局10から情報を収集する。サーバX2は、収集した情報を管理し、データセンタX3は、データベース(主データベース)を有し、サーバX2の制御のもと、上記情報を格納する。なお、データセンタX3に格納される情報は、モバイル基地局10で収集、処理された情報のうち必要な情報となる。必ずしも全データが格納されるわけではない。
【0028】
上記ネットワーク構成において、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1をユースケース毎に構成してもよい。つまり、同じ地理的範囲に対して、複数の当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1を設置し、例えばMaaS(Mobility as a Service)用、農業用、工業用といった目的に応じて使い分ける構成とすることもできる。
【0029】
<モバイル基地局>
モバイル基地局10は、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1のワイヤレス通信が行える地理的範囲を統括し、制御する基地局である。具体的には、モバイル基地局10は、例えば複数の移動体20が共有すべきデータのデータ管理処理と配信制御処理とを行う。
【0030】
モバイル基地局10は、主基地局11と、ローカル基地局12とを含み、他のローカルエッジネットワーク用通信システム1のモバイル基地局10との間、あるいはクラウドXとの間の通信を行え、通信の基幹網を構成する。
【0031】
(主基地局)
主基地局11は、上記地理的範囲全体を統括及び制御する。主基地局11は、通信機能、データベース及びプロセッサを有する。また、主基地局11は、センサを有してもよい。このように主基地局11がセンサを有することで、主基地局11で取得される情報をダイナミックデータとして用いることができる。
【0032】
(ローカル基地局)
ローカル基地局12は、主基地局11の下層に属し、主基地局11が統括する地理的範囲を細分化して統括する。このため、通常、複数のローカル基地局12が設けられる。逆に、上記地理的範囲を細分化する必要がない場合は、ローカル基地局12は省略可能であり、モバイル基地局10は主基地局11のみで構成され、上記地理的範囲全体を直接統括する。
【0033】
ローカル基地局12は、通信機能、データベース及びプロセッサを有する。また、ローカル基地局12は、センサを有してもよい。このようにローカル基地局12がセンサを有することで、ローカル基地局12で取得される情報をダイナミックデータとして用いることができる。ローカル基地局12は、例えばローカル5G基地局とすることができる。
【0034】
<移動体>
複数の移動体20は、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1が管理するデータ共有エリア(ワイヤレス通信が行える地理的範囲)を移動する機器である。
【0035】
複数の移動体20には、車両21、ドローン22、移動型ロボット23、携帯機24、自転車25等が含まれ得る。このうち、移動体20が、車両21を含むとよい。当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1は、車両21を含むシステム、例えば自動運転やMaaSビジネスに用いられるV2X通信システムに特に好適に用いることができる。「V2X」とは、Vehicle to Xの略称であり、車両21と何か(他の車両21や歩行者、インフラ、ネットワークなど)との接続や相互連携を総称する技術である。このV2Xは、例えば車両21の自動運転に不可欠である。上記V2X通信システムでは、車両21で取得される時間的及び空間的に大きなダイナミックレンジを有する時系列データを取り扱う必要がある。当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1は、このような時系列データを特に効率的に取り扱うことができる。以下、移動体20が、車両21を含むことを前提に説明するが、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1が移動体20として車両21を必須の構成要素とすることを意味するものではない。
【0036】
移動体20が、ドローン22、移動型ロボット23又はその両方をさらに含むとよい。このように移動体20にドローン、移動型ロボット又はその両方をさらに含めることで、ダイナミックデータを高精度化し易い。
【0037】
複数の移動体20は、通信機能、データベース(末端データベース)、プロセッサ及びセンサ20aを有する。なお、「センサ」とは、実世界での現象を検知して、その検知された現象を、コンピュータが処理可能な信号に置き換える素子又は装置のことをいう。図1では、ドローン22がセンサ20aを有する構成を図示しているが、他の移動体20については、図示していないが、同様にセンサ20aを有している。
【0038】
各移動体20は、相互に接続されており、互いのセンサ20aにより収集した情報を上記プロセッサにより処理し、上記データベースに格納する。上記情報としては、天候、気温といった任意の自然現象や、交通渋滞、等の人工物で生ずる現象、心拍数、呼吸数、血圧等の人間のバイタル情報、車両への人物の接近、道路上への落下物の情報などのセンサで検知できる任意のものを挙げることができる。当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1では、例えば移動型ロボット23で撮影されたカメラ画像、走行用のマップデータ、ドローン22から撮影された撮影データ及びそこから生成された3D形状データ等が想定される。
【0039】
<路側機>
路側機30は、道路上に設置され、車両21の交通の制御や監視を行う機器である。路側機30には、信号機や街路灯等が含まれ、上記ワイヤレスインターフェイスによりローカル基地局12と接続されている。
【0040】
路側機30は、通信機能を有する。また、路側機30は、データベース(末端データベース)、プロセッサ及びセンサを有していることが好ましい。これらの構成を有することで、路側機30で取得された情報をダイナミックデータとして用いることができる。
【0041】
また、路側機30は、モバイル基地局10としての機能を有していてもよい。つまり、路側機30は、いわば移動しない移動体20、モバイル基地局10あるいはその両方として機能することができる。
【0042】
<階層化データベース>
当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1の主基地局11、ローカル基地局12、複数の移動体20及び路側機30が有するデータベースは、クラウドXのデータセンタX3が有するデータベースとともに、図4に示すように、階層化データベース100を構成する。
【0043】
階層化データベース100は、1の主データベース101と、この主データベース101と直接あるいは1又は複数の中間データベース102を介して間接に接続される複数の末端データベース103とを有する。複数の移動体20及び路側機30等の末端にある(下位階層を有さない)データベースは、末端データベース103を構成する。末端データベース103の情報をクラウドXへ中継する位置にある主基地局11、ローカル基地局12等のデータベースは、中間データベース102を構成する。全ての情報が集約されるデータセンタX3のデータベースは、主データベース101を構成する。また、末端データベース103は、対応するセンサ(例えば移動体20のセンサ20a)を有している。このように階層化データベース100は、データベース構造の柔軟な変更と探索の容易さ及び分散ストレージに適した分散適応配置がなされている。なお、例えば路側機30に、自身のデータを集約しつつ、さらに移動体20の末端データベースの情報を中継する中間データベースを配置するなど、中間データベースに多層構造を有する構成を採用することもできる。
【0044】
図3に示す階層化データベース100は、移動体20に配置されている末端データベース103に、複数の移動体20間で共有する末端マスタテーブル103aを有している。この末端マスタテーブル103aは中間データベース102が有する中間マスタテーブル102a及び主データベース101が有する主マスタテーブル101aで共有される。これらのマスタテーブルには、例えば特定のデータベースの上位及び下位に直結するデータベースの情報(データベースID)が格納されており、このマスタテーブルを用いることで、データベースの柔軟な追加、修正及び削除をすることができる。上記マスタテーブルは、データセンタX3が有する主データベース101により階層化データベース100に含まれる全てのデータベースで共有されるように管理される。
【0045】
マスタテーブル(主マスタテーブル101a、中間マスタテーブル102a及び末端マスタテーブル103a)は、以下の機能を有してもよい。
(1)データに道路とリンクするラべリング(道路リンク)を行い、道路リンクごとかつ新しいデータごとにマスタテーブルの更新、追加又は削除を行い、モバイル基地局10のデータ共有エリア内で収取されたデータが格納されたデータテーブルを参照できるようにする。
(2)モバイル基地局10と車両21との間でデータテーブルの内容を車両21と送受信したり、車両21間で送受信したりする配信制御手順をモバイル基地局10にて計画する場合に必要なデータ(例えば車両21の位置や速度、車両21が保有しているデータ)を有する。
これらの機能によりモバイル基地局10は、データ管理処理と配信制御処理とを同時に効率よく行うことができる。
【0046】
このデータはモバイル基地局10のデータ共有エリア内に存在する車両21とモバイル基地局10との間で常時共有する必要があり、データ量は小さいが、更新頻度は高いので、送受信チャンネルとしては、通信制御チャンネル(たとえばC-Plane)を利用するとよい。
【0047】
また、末端データベース103は、例えばセンサ20aにより取得されセンサ情報を末端実データテーブル103bに格納することができる。このデータは順次複製されて上位階層のデータベースに転送されて、主データベース101に集約されてもよいが、中間データベース102及び主データベース101では、末端実データテーブル103bの登録データへ至る検索経路と上記登録データを関連する分類情報によりグループ分けした参照値とを有する参照データテーブル(中間参照データテーブル102b及び主参照データテーブル101b)を有する構成とすることができる。参照データテーブルを持たせることで、主データベース101、中間データベース102及び末端データベース103の3階層を連携させ、登録データの検索の際、1つの仮想的なデータベースとして、利用者に必要データを提供できる。換言すれば、階層化データベース100に分散して格納されている登録データの情報を一括して1つのデータベースで扱えるようにすることで、検索の高速化、記憶容量の削減が可能となる。
【0048】
なお、階層化データベース100のデータの格納、転送、検索トラフィックの監視、階層化データベース100の配置の適正化、通信相手との通信パスの設定には、例えばオープンソースソフトウェアを用いることができる。
【0049】
<データ階層>
当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1は、センサによって取得されるセンサ情報を、モバイル基地局10及び複数の移動体20間で共有するための複数のデータ階層をさらに備える。上記センサには、少なくとも複数の移動体20のセンサが含まれる。また、主基地局11、ローカル基地局12及び路側機30がセンサを有する場合、上記センサには、これらの一部又は全部を含めてもよい。
【0050】
上記センサ情報は、そのデータの特徴に応じて異なる上記データ階層に分けて格納される。具体的には、複数の移動体20等が有するデータベースが複数のデータ階層を有し、各データは、その種類に応じて特定のデータ階層に格納されることとなる。
【0051】
また、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1は、それぞれ格納されている上記データの特徴に応じて、上記データ階層単位で、通信方式及びデータ共有エリアを含むデータ運用条件が設定されている。
【0052】
上記データ運用条件としては、上記ワイヤレスインターフェイスで採用される通信方式、上記プロセッサによる上記データの処理方法、上記データを格納するデータベース、上記データを共有する地理的範囲等が挙げられる。中でもデータの処理方法が好ましく、上記データ運用条件が、データの処理方法の一種である許容遅延時間と1回あたりの許容データ転送量とを含むことがより好ましい。
【0053】
上記データ運用条件の決定には、車両21と当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1内の通信相手との電波伝搬環境、通信環境、エネルギー消費量、遅延や伝送誤りを含む品質要件、エネルギー消費量、セキュリティ要件、課金要件、データの更新周期等を用いることができる。
【0054】
中でも、上記データ運用条件の決定に、電波伝搬環境及び通信環境が用いられるとよい。また、上記電波伝搬環境は、上記センサ情報を取得した移動体20と、他の移動体20及びモバイル基地局10との間の伝搬可能距離を含むとよく、上記通信環境は、利用可能な周波数、伝送帯域及び伝送速度を含むとよい。このようにデータ運用条件の決定に上述の電波伝搬環境及び通信環境を用いることで、通信の品質を維持し易い。
【0055】
上記複数のデータ階層は、上記データの特徴が静的である第1層、準静的である第2層、準動的である第3層及び動的である第4層の4つのデータ階層からなることが好ましい。データが変化する平均的な更新時間間隔は、静的、準静的、準動的及び動的の順に短くなる。つまり、この順にデータ変化の頻度が高い。このようにデータ変化の頻度によりデータ階層を構成することで、ダイナミックデータの精度及び運用効率を高めることができる。
【0056】
ここで、データの特徴が「静的」、「準静的」、「準動的」、「動的」とは、そのデータが変化する平均的時間間隔の大小を意味し、静的であるほど上記平均的時間間隔が大きく、動的であるほど上記平均的時間間隔が小さいことを意味する。隣合う指標(つまり、例えば「静的」と「準静的」と)の間の上記平均的時間間隔は、一般的に10倍以上異なる。具体的には、例えば「動的」データの平均的時間間隔は、1秒(環境認識から運転操作の変更での人の応答能力時間)、「準動的」データの平均的時間間隔は、10秒(ひとつの道路リンクを通過する時間)、「準静的」データの平均的時間間隔は、2乃至3分(ひとつのモバイル基地局10(最下位層のローカル基地局12)の範囲を通過する時間)、「静的」データの平均的時間間隔は、1時間(移動体20が移動を開始してから終了するまでの1トリップの時間)とし得る。
【0057】
上記第1層は、許容データ転送量が大きく(例えば100MB程度)、許容遅延時間が長く(例えば1000秒程度)、通信頻度の少ない(例えば1回/10日程度)大容量の静的データを扱う。この第1層に対し、複数の移動体20で取得したデータの処理、データベースへのデータの格納及びデータの配信はクラウドXから行う。通信方式は、広帯域のV2N(車両21対ネットワーク)とし、広域(例えば半径120km程度の地域単位)で複数の移動体20のデータ共有を図る。クラウドXとのデータ共有方法としては、例えばMQTTプロトコルを利用し、いったん複数の移動体20等からモバイル基地局10を介してクラウドXにデータを集約し(クラウドXの主データベースにデータを格納し)、それからモバイル基地良く10を介して複数の移動体20に対しデータを配信する方法を用いることができる。モバイル基地局10及び複数の移動体20間での上記第1層での情報共有の目的としては、例えばカーナビ向けルート設計が挙げられる。上記データとしては、車両21や路側機30が有するセンサや専用のデータ収集車両(ドローン22や移動型ロボット23)で取得した道路構造情報、レーンや路面情報を挙げることができる。
【0058】
一方、上記第1層と対極にある上記第4層は、許容データ転送量が小さく(例えば100B程度未満)、許容遅延時間が短く(例えば1秒程度)、通信頻度の多い(例えば10回/秒程度)小容量の動的データを扱う。この第4層に対し、複数の移動体20で取得したデータの処理、データベースへのデータの格納及びデータの配信は移動体20から行う。通信方式は、狭帯域のV2V(車両21対車両21)とし、狭域(例えば半径15km程度の市町村レベルの地域単位)で複数の移動体20のデータ共有を図る。また、V2Vにより遅延時間を短くし、データの局所化を図ることで通信に必要なエネルギー消費も局所化され、低減することができる。複数の移動体20間でのデータ共有方法としては、複数の移動体20に対してデータを送信するデータフラッディング方法を利用し、データを取得した移動体20がその近辺にいる移動体20に上記データを順次伝搬することで、徐々に上記データが複数の移動体20に伝わる方法を用いることができる。モバイル基地局10及び複数の移動体20間での上記第1層での情報共有の目的としては、例えば自動運転、先進運転支援が挙げられる。上記データとしては、車両21や路側機30が有するセンサで取得し、各移動体20や路側機30が有するプロセッサで処理した予測情報(近接車両、歩行者、信号の動き等)を挙げることができる。上記第4層が扱う上記予測情報は、移動体20が集める情報量が多く、その寿命が短く、かつデータを取得した場所で利用されることとなる。このような場合は、クラウドXを介するよりも、そのデータ共有エリア内でのみデータを利用する方が、通信に必要なエネルギー消費を低減できる。
【0059】
上記第2層は、許容データ転送量が上記第1層より小さく(例えば10MB以上100MB未満程度)、許容遅延時間が上記第1層より短く(例えば100秒以上1時間以下程度)、通信頻度が第1層より多い(例えば1回/日程度)準大容量の準静的データを扱う。この第2層に対し、複数の移動体20で取得したデータの処理、データベースへのデータの格納及びデータの配信は、クラウドX又は移動体20のいずれで行ってもよい。通信方式は、広帯域のV2Nに狭帯域のV2Vを併用し、中域(例えば半径50km程度の都府県レベルの地域単位)で複数の移動体20のデータ共有を図る。モバイル基地局10及び複数の移動体20間での上記第2層での情報共有の目的としては、例えばルート変更のための予知情報の構築が挙げられる。上記データとしては、車両21や路側機30が有するセンサや専用のデータ収集車両(ドローン22や移動型ロボット23)で取得した道路規制情報、工事中や渋滞情報、広域天候情報を挙げることができる。
【0060】
上記第3層は、許容データ転送量が第2層より小さく第4層より大きい範囲にあり(例えば100B以上10MB未満程度)、許容遅延時間が第2層より大きく第4層より小さい範囲にあり(1秒以上100秒未満程度)、通信頻度が第2層より多く第4層より少ない(例えば1回/秒程度)準小容量の準動的データを扱う。この第3層に対し、複数の移動体20で取得したデータの処理、データベースへのデータの格納及びデータの配信は、クラウドX又は移動体20のいずれで行ってもよい。通信方式は、狭帯域のV2Vに広帯域のV2Nを併用し、中域(例えば半径1km程度のモバイル基地局10のカバー範囲程度から、半径100km程度の複数の基地局を束ねたエリア程度までの地域単位)で複数の移動体20のデータ共有を図る。モバイル基地局10及び複数の移動体20間での上記第3層での情報共有の目的としては、走行中の停止処置、レーン変更のための予知情報の構築を挙げることができる。上記データとしては、車両21や路側機30が有するセンサで取得した事故、障害物、故障車などの存在、道路の混雑、狭域天候情報等を挙げることができる。
【0061】
上述の各層の特徴を表1及び表2にまとめて記す。なお、許容遅延時間及び許容データ転送量は、各層を代表する典型値で記載している。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1に示すように、例えばカーナビゲーション用として専用のデータ収集車両により収集及び処理され、数日または数か月ごとに配布される地図データは、数時間から数日遅れで共有され、例えば一般的な車両21により収集及び処理される自動運転に必要な情報は、1秒未満の遅れで共有することができる。上記地図データはデータ転送量が大きいが、許容遅延時間が大きいことにより、数時間から数日遅れでの共有が許されるから、例えばネットワーク負荷が軽いタイミングでデータ転送を行うことも可能となり、ネットワーク負荷を均一化できる。換言すれば、ネットワーク負荷が高い期間を低減できる。
【0065】
上述の例のように、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1では、上記許容遅延時間が、第1層から第4層の順に許容値が大きくなるよう設定され、上記許容データ転送量が、第1層から第4層の順に許容値が小さくなるよう設定されることが好ましい。すなわち、設定される上記許容遅延時間は、第1層より第2層の方が大きく、第2層より第3層の方が大きく、第3層より第4層の方が大きい。設定される上記許容データ転送量は、逆に第1層より第2層の方が小さく、第2層より第3層の方が小さく、第3層より第4層の方が小さい。このように許容遅延時間を設定することで、データの更新頻度に応じて適切にデータ更新が行われる。また、上述のように許容データ転送量を設定することで、データ更新頻度が高いことにより通信量が膨大化することを抑止できるので、ダイナミックデータの運用効率の低下を抑止できる。
【0066】
図4及び図5に階層化データベース100の地理的配置例を示す。図4に示すように、末端データベース103は、移動体20が日常移動する範囲内例えば半径15km程度の市区町村単位の情報を扱う。また、図5に示すように、中間データベース102は、半径50km程度の都府県単位の情報を、主データベース101は、半径120km程度の例えば関東地方、関西地方単位の情報を扱う。それぞれの情報は、複数の移動体20で共有される。
【0067】
図6に道路網に対応したモバイル基地局10の構成例を示す。図6では、末端データベース103によるデータの共有エリア例えば半径15km程度のデータ共有エリア内の道路地図を示す。図6で、A1~A6、a0~a5等は、連続する1本の道路の分岐位置を示している。分岐位置においては、道路が延びる方向に対して異なるラべリングがされるため、例えばA1とa0のように同一分岐位置に対して異なるラベルが当てられる。なお、図6では、一部の分岐位置のラべリングが省略されている。
【0068】
図6でP点の移動体20がQ点の移動体20にデータを送信する場合、モバイル基地局10を経由してV2N2V(L1、L2)の回線を用いるか直接V2V(L3)回線を用いるかは電波伝搬条件や利用可能な通信回線の帯域、周波数の比較により選択される。なお、P点やQ点の位置は、結節点からの距離で表す。つまり、P点であれば、例えば結節点であるa1からの距離によって表すことができる。なお、V2N2Vを用いずにV2Vを用いる場合は、使わないV2N2V(モバイル基地局10と移動体20との間の通信)のリソースを、モバイル基地局10と別の端末との間の通信に用いることができる。さらに、多くの場合において、その通信はモバイル基地局10からみて、より効率の良い通信相手となるから、モバイル基地局10のエリア内での通信容量を増大させる効果が期待できる。
【0069】
図7は、移動体20間でのデータ転送に用いるデータの構成例である。図7において、道路リンク名は主データベース101で主マスタテーブル101aにより管理され、中間マスタテーブル102a及び末端マスタテーブル103aに展開される。各道路リンクにおいて、ある時刻(更新時刻)の前後における差分がデータの内容(以下、「差分データ」ともいう)となる。例えば図7で、データの内容=路上障害物とは、更新時刻であるtime1の時刻前には路上障害物がなかったのに対し、time1の時刻後には路上障害物が存在していることを意味している。末端実データテーブル103b、中間参照データテーブル102b及び主参照データテーブル101bには、この更新事項、更新をした移動体20(あるいはモバイル基地局10等となる場合もあり得る)、移動体20の車両位置及び速度、データが格納されている末端データベース103のID(不図示)等が格納され、道路リンク、時系列、データベース構成などで階層化データベース100全体としてツリー構造をとる。
【0070】
末端実データテーブル103bは、以下の特徴を有することができる。
(1)道路リンクで生じる動的、準動的、準静的、静的データがデータ階層別に格納される。
(2)道路リンクで生じるデータの全て又は差分データの全てが格納される。
(3)例えば1つのモバイル基地局10の1km四方を基本として道路の分岐から分岐までを一単位として、道路の一方向もしくは双方向に対して独立したIDを付する。
(4)例えばいくつかのモバイル基地局10を束ねてひとつの末端実データテーブル103bにすることもできる。これによりひとつのマップがカバーするエリア全体をカバーすることもできる。
【0071】
図8に、図7のデータ転送を実現できる車両21の構成の一例を示す。車両21は、センサ20aと、末端データベース103と、計測部21aと、運用条件21bと、環境測定部21cと、エッジAI21dと、通信プロトコル制御部21eと、アンテナ21fとを有する。
【0072】
計測部21aは、車両21の位置座標や車速及び現在の時刻を計測する。計測部21aの計測には例えば高精度GPSを用いることができる。運用条件21bは、センサ20aにより収集されたデータを格納する階層を特定するための条件であり、例えば表1や表2に示すような情報が格納されている。環境測定部21cは、車両21の電波伝搬環境や通信環境を測定する。エッジAI21dは、データ処理を行う。通信プロトコル制御部21eは、車両21の通信方式を選択し制御する。アンテナ21fは、車両21と他の移動体20等との間の通信を行うための電波を送受信する。
【0073】
図8に示す車両21では、センサ20aで収集したセンサ情報と、計測部21aで計測された位置座標、車速及び現在時刻の情報を合わせたデータについて、エッジAI21dで、運用条件21bに基づき、データ共有エリア内データ構造の設定、差分データの抽出を行う。この差分データは、追加するデータ階層を同定され、末端データベース103に格納される。また、エッジAI21dは、その車両21が必要とするデータを自車両21が保持するデータと比較して抽出し、その必要とするデータを保持する車両21又は保持するモバイル基地局10の情報と、運用条件21bとに基づき、要求遅延、伝送誤りを含む品質要件、セキュリティ要件、課金要件、更新周期等に関する情報を通信プロトコル制御部21eに送る。通信プロトコル制御部21eでは、環境測定部21cから電波伝搬環境(伝搬可能距離)及び通信環境の情報を取得し、通信方式(例えばV2N及びV2Xの別)の選択及び切替を行い、アンテナ21fを経由して他の移動体20等と通信する。
【0074】
<利点>
当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1では、複数の移動体20が取得するセンサ情報のデータの特徴に応じて異なるデータ階層にその情報が格納される。そして各データ階層単位で格納されているデータの特徴に応じて運用条件を決定するので、当該ローカルエッジネットワーク用通信システム1は、膨大となるデータを効率よく扱うことができる。
【0075】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0076】
上記実施形態では、複数のデータ階層が、データの特徴が静的、準静的、準動的、動的である4つのデータ階層からなることが好ましいことを説明したが、1つのデータの特徴を複数のデータ階層とすることもできる。例えばデータの特徴が準動的である第3層を、半径1km程度のモバイル基地局10のカバー範囲と、半径100km程度の複数の基地局を束ねたエリアとの2つのデータ階層としてもよい。
【0077】
上記実施形態では、ローカルエッジネットワーク用通信システムが路側機を備える場合を説明したが、路側機を備えない構成も本発明の意図するところである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明のローカルエッジネットワーク用通信システムは、車両の自動運転等に必要な高精度のダイナミックデータを効率よく扱うことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ローカルエッジネットワーク用通信システム
10 モバイル基地局
11 主基地局
12 ローカル基地局
20 移動体
20a センサ
21 車両
21a 計測部
21b 運用条件
21c 環境測定部
21d エッジAI
21e 通信プロトコル制御部
21f アンテナ
22 ドローン
23 移動型ロボット
24 携帯機
25 自転車
30 路側機
100 階層化データベース
101 主データベース
101a 主マスタテーブル
101b 主参照データテーブル
102 中間データベース
102a 中間マスタテーブル
102b 中間参照データテーブル
103 末端データベース
103a 末端マスタテーブル
103b 末端実データテーブル
X クラウド
X1 ルータ
X2 サーバ
X3 データセンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8