(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178197
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ハンドタオル
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A47K10/16 C
A47K10/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084801
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA01
2D135AA10
2D135AA17
2D135AB06
2D135AB11
2D135AC09
2D135AD16
2D135AD22
2D135CA00
2D135DA05
2D135DA06
2D135DA11
2D135DA15
2D135DA16
(57)【要約】
【課題】マルチスタンド式インターフォルダで加工しても、加工後にナーリングがしっかり残り、使用中等にプライ剥がれが起こらず、使用感良好であり、美観に優れかつ、吸水性も良好なハンドタオルの提供。
【解決手段】2プライのシート片Sを1組ずつ折り曲げて互いに重ねて積層したハンドタオルであって、シート片Sは、坪量が14.9/m
2以上17.9g/m
2以下、厚さが0.52mm/10ply以上0.81mm/10ply以下であり、シート片Sにはナーリング2が施され、シート片Sのシート長さ(mm)に対する、ナーリング幅(mm)の割合であるナーリング幅割合が1.0%以上5.0%以下であり、シート片Sのシート長さ(mm)に対する、シート片Sの端部からナーリングの幅方向中央までの長さ(mm)の割合であるナーリング位置が2.5%以上12.5%以下である、ハンドタオル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2プライのシート片を1組ずつ折り曲げて互いに重なりあうように積層し、紙製のカートン又はフィルムパックに充填した、ハンドタオルであって、
前記シート片は、坪量が14.9/m2以上17.9g/m2以下、厚さが0.52mm/10ply以上0.81mm/10ply以下であり、
前記シート片にはナーリングが施され、
前記シート片のシート長さ(mm)に対する、ナーリング幅(mm)の割合であるナーリング幅割合が1.0%以上5.0%以下であり、
前記シート片のシート長さ(mm)に対する、前記シート片の端部から前記ナーリングの幅方向中央までの長さ(mm)の割合であるナーリング位置が2.5%以上12.5%以下である、ハンドタオル。
【請求項2】
前記シート片には前記ナーリングが少なくとも2か所に施されている、請求項1に記載のハンドタオル。
【請求項3】
前記ナーリングは、押し付け部分と非押し付け部分とを有し、前記ナーリングの全面積に対する前記押し付け部分の合計面積の割合である、前記ナーリングの押しつけ部分の面積率が3.0%以上20.0%以下である、請求項1又は請求項2に記載のハンドタオル。
【請求項4】
前記押し付け部分の深さが50μm以上120μm以下である、請求項3に記載のハンドタオル。
【請求項5】
ティッシュソフトネス測定装置TSAで測定されるTS7値が14.8dBV2rms以上23.5dBV2rms以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のハンドタオル。
【請求項6】
ティッシュソフトネス測定装置TSAで測定されるD値が1.2mm/N以上2.5mm/N以下である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のハンドタオル。
【請求項7】
前記シート片同士をCD方向にこすり合わせたときの静止摩擦係数が0.45以上0.85以下である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のハンドタオル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドタオルに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレや洗面所での手洗い後の手拭きとして、また、食品等の衛生管理が必要な製品の製造や包装等にかかわる手指の洗浄用として多く利用されている紙製のハンドタオルは、坪量を高めて吸水性を高めた高坪量品であり、従来は主にロータリー式インターフォルダ(以下「ロータリーフォルダ」ともいう)で加工されている。ロータリーフォルダでは、一対の2次原反ロールから繰り出された各2次原反シートを走行させて先端側から裁断し、次いで裁断した2次原反シート片を一対のロールで折り畳むとともに順次重ね合わせて積層シート束に加工している。
【0003】
一方、ロータリーフォルダとは別に、マルチスタンド式インターフォルダ(以下「マルチフォルダ」ともいう)という加工機がある。マルチフォルダでは、折り畳みプレートを有する折畳み装置をシートの走行方向に80機乃至120機程度配置してフォールディング部を構成し、各折畳み装置に2次原反シートを2枚並べて同時に連続的に供給してこれらを折り畳みつつ、ライン上流側の折畳み装置で折り畳んだ2次原反シートの上にライン下流側の折畳み装置で折り畳んだ2次原反シートを順次積層し、最下流で積層シート束としている。生産性の高いマルチフォルダは、従来はティシューの製造に多く使われてきたが、ハンドタオル等の高坪量品の加工に利用する検討が進められている。
【0004】
2plyのハンドタオルは、プライ同士の剥がれを防止するために、加工する際にナーリング(エッジエンボス、コンタクトエンボス)が施される。ナーリングはマシンワインダー又はロータリーフォルダ、マルチフォルダ等における加工機上で、シートの走行方向(MD方向)に沿って施される。
【0005】
従来から、複数のプライを重ね合わせたハンドタオル等の紙製品の、プライ同士の剥がれを防止する加工機が提案されている。特許文献1には、回転可能に軸支されたレシービングロールと、レシービングロールに対向配置されて回転可能に軸支された複数のクリンパホイールと、複数のクリンパホイールを個別にレシービングロール側に付勢する加圧手段とを備え、クリンパホイールは、その外周面に凸部を有し、レシービングロールの外周面との間に、複数枚のシートを重ねた状態で走行させて型押しにより接合し、加圧手段は、クリンパホイールに連接されたピストンロッドを有するピストンと、ピストンをその内部に摺動可能に収納するシリンダと、シリンダ内部のピストンによって隔てられた第1室と第2室とを、それぞれ別個に加圧する第1加圧手段及び第2加圧手段と、第1室及び第2室の圧力を、それぞれ別個に測定する第1圧力測定手段及び第2圧力測定手段と、第1圧力測定手段及び第2圧力測定手段によって測定される第1室と第2室との圧力差を一定に維持し、クリンパホイールのレシービングロールへの加圧力を維持する加圧維持手段と、を備えるプライボンディング装置が開示されている(請求項1)。特許文献1によれば、プライ剥がれや穴あきの発生を抑制しつつ、良好な型押しを施すことができ、プライ剥がれの発生しにくい衛生用紙が得られると記載されている(段落0013)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シート(紙)の引き出し方向がCD方向となるマルチフォルダでハンドタオルを加工する場合、シートの向きが90度変わる際に、斜め45度の角度に設置されたロール上をシートが走行する工程がある。この工程では、ハンドタオルが2plyであると、ロールに接する側の1plyと接しない側の1plyとで微妙な搬送距離の差が生じ、プライ間に剪断力(横にしごかれる力)が働き、施したナーリングが取れ易くなるという、マルチフォルダ特有の課題がある。特許文献1のように装置の構成を工夫しても、ナーリングの取れ易さはある程度改良されるものの、十分満足できる水準には達していない。ナーリングの取れたハンドタオルは使用時にプライ剥がれが起こり、使いづらい。従来のロータリーフォルダであればマルチフォルダのような工程は存在せず、ナーリングは取れづらい。
【0008】
加工時にナーリングが取れないようにしっかり施すために、施す圧力を上げる事が考えられるが、圧力が高すぎると、ハンドタオルに穴が開く、破れる等の弊害がある。1プライを構成するシート自体の坪量を低くして、紙厚を薄くするとナーリングは入りやすくなるが、ハンドタオルに大切な吸水性の機能が損なわれる。ナーリングの幅を太くすることも対策の一つとなるが、幅の広いナーリングは商品の美観を損ない、消費者からは敬遠される。
【0009】
本発明の目的は、マルチスタンド式インターフォルダで加工されても、加工後にナーリングがしっかり残り、使用中等にプライ剥がれが起こらず、使用感良好であり、美観に優れかつ、吸水性も良好なハンドタオルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来のように装置構成を工夫するのではなく、2plyのハンドタオルの各種特性、例えば、坪量、紙厚、TSA(TS7値、D値)、2plyの紙が重なり合わさる面(YDフード面)のMD方向の静止摩擦係数、製品長さに(引き出し方向に平行)に対するナーリング幅の割合(%)等を調整することで、マルチフォルダで加工してもナーリングがしっかり残り、プライ剥がれが起こらず、使用感が良好であり、美観に優れ、かつ、吸水性も良好なハンドタオルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記のハンドタオルを提供する。
【0011】
(1)2プライのシート片を1組ずつ折り曲げて互いに重なりあうように積層し、紙製のカートン又はフィルムパックに充填した、ハンドタオルであって、
前記シート片は、坪量が14.9/m2以上17.9g/m2以下、厚さが0.52mm/10ply以上0.81mm/10ply以下であり、
前記シート片にはナーリングが施され、
前記シート片のシート長さ(mm)に対する、ナーリング幅(mm)の割合であるナーリング幅割合が1.0%以上5.0%以下であり、
前記シート片のシート長さ(mm)に対する、前記シート片の端部から前記ナーリングの幅方向中央までの長さ(mm)の割合であるナーリング位置が2.5%以上12.5%以下である、ハンドタオル。
(2)前記シート片は前記ナーリングが少なくとも2か所に施されている、上記(1)のハンドタオル。
(3)前記ナーリングは、押し付け部分と非押し付け部分とを有し、前記ナーリングの全面積に対する前記押し付け部分の合計面積の割合である、前記ナーリングの押しつけ部分の面積率が3.0%以上20.0%以下である、上記(1)又は(2)のハンドタオル。
(4)前記押し付け部分の深さが50μm以上120μm以下である、上記(3)のハンドタオル。
(5)ティッシュソフトネス測定装置TSAで測定されるTS7値が14.8dBV2rms以上23.5dBV2rms以下である、上記(1)乃至(4)のいずれかのハンドタオル。
(6)ティッシュソフトネス測定装置TSAで測定されるD値が1.2mm/N以上2.5mm/N以下である、上記(1)乃至(5)のいずれかのハンドタオル。
(7)前記シート片同士をCD方向にこすり合わせたときの静止摩擦係数が0.45以上0.85以下である、上記(1)乃至(6)のいずれかのハンドタオル。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マルチスタンド式インターフォルダで加工しても、加工後にナーリングがしっかり残り、使用中等にプライ剥がれが起こらず、使用感良好であり、美観に優れかつ、吸水性も良好なハンドタオルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るハンドタオルの外観構成を模式的に示す平面図である。(a)はハンドタオルのシート片を示し、(b)はナーリングを示す。
【
図2】マルチフォルダで加工したときのハンドタオルの取り出し方向を説明する模式斜視図である。
【
図3】押し付け部の要部を拡大して示す模式平面図である。
【
図4】本実施形態のハンドタオルの加工に使用可能なマシンワインダーの一例を示す模式図である。
【
図5】本実施形態のハンドタオルの加工に使用可能なマルチスタンド式インターフォルダのフォールディング部の構成を示す模式図である。
【
図6】
図5に示すフォールディング部を構成する折り畳みプレート装置の模式斜視図である。
【
図7】プルユニットにより圧縮加工を行う一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、引き出し方向とは、ハンドタオルを抄紙した際の流れに対して垂直な方向、すなわちCD(Cross Direction)方向であり、幅方向とは、引き出し方向に垂直なMD(Machine Direction)方向である。
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態のハンドタオル1について説明する。
図1は、ハンドタオル1を示す。
図2は、マルチスタンド式インターフォルダからのハンドタオルのシート片S1、S2の積層体の幅方向D1を示す。
図3は、押し付け部3を示す。
図4乃至
図7は、ハンドタオルの製造方法を説明する模式図である。
【0016】
<ハンドタオル>
本実施形態のハンドタオル1は、好ましくはマルチスタンド式インターフォルダを用いて加工され、まず、原反シートを2プライ(2枚)重ね合わせて所定の坪量及び厚さを有するシート100(
図6、
図7)とし、得られたシート100にナーリングを施した後所定の寸法に切断してシート片S(
図1)とし、
図2のように2枚のシート片S1、S2を折り曲げて互いに重なりあうように積層して1組とし、この組を複数積層して積層束とし、得られた積層束を紙製のカートンやフィルムパック等に充填したものである。そして、シート片Sには、後に詳述するナーリング2が2か所に施されている。ナーリング2は、後述する所定のナーリング幅割合及びナーリング位置を有している。1組を構成するシート片S1、S2は、使用時には、一枚ずつ別々に取り出される。なお、
図2ではナーリング2の図示を省略している。
【0017】
本実施形態によれば、所定の紙質(坪量及び厚さ)を有するシート100に対して、所定のナーリング幅割合及びナーリング位置を有するナーリングを施すことで、マルチスタンド式インターフォルダで加工しても、ナーリング部分の剥がれによるプライ剥がれが顕著に抑制され、ナーリングを施していても美観が非常に良好で、吸水性を高水準に保ちつつ、手触りや取扱易さ、拭き易さ等の使用感にも優れたシート片Sから構成されたハンドタオル1が得られる。
【0018】
本実施形態のハンドタオル1の各特性は、次の通りである。
【0019】
(坪量)
本実施形態では、シート100の1プライ(原反シート)の特性として、坪量の範囲を規定する。シート100の1プライの坪量は、14.9g/m2以上17.9g/m2以下の範囲であり、好ましくは16.0g/m2以上17.5g/m2以下の範囲である。坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。シート100の坪量は、例えば、抄紙マシンへの原料吐出量を変更することで調整可能である。
【0020】
(厚さ)
本実施形態では、シート100は前述のように原反シート2プライで構成され、原反シート10プライの特性として、厚さの範囲を規定する。厚さは、0.52mm/10ply以上0.81mm/10ply以下の範囲であり、好ましくは0.58mm/10ply以上0.71mm/10ply以下の範囲である。紙厚は、JIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度)でシックネスゲージ(例えば、尾崎製作所製、ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用い、測定荷重3.7kPa、測定子直径3mmの測定条件下に、測定子と測定台との間に試料(原反シート10プライ)を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取ることで測定できる。測定を10回実施し、測定値を算術平均して厚さとする。坪量を上述の範囲とし、かつ厚さを前述の範囲にした上で、ナーリング割合及びナーリング幅を所定の範囲にすることで、シート片Sにおけるナーリング2の取れ(消失)ひいてはプライ剥がれが著しく防止されるとともに、シート片Sが優れた吸水性や水の拭き取り性を有するように構成される。シート100の厚さは、例えば、坪量、抄紙工程でシート100に施されるクレープ高さ、カレンダー処理工程でのカレンダーの強弱等を適宜選択することで、調整することができる。
【0021】
(ナーリング)
本実施形態のナーリング2は、
図1(a)に示すように、シート片Sの引き出し方向(CD方向)上流側端部及び下流側端部の2か所に形成され、シート片Sの幅方向(MD方向)の一端から他端まで幅方向に延びて、ほぼ矩形状の平面視形状を有している。ナーリング2には、押し付け部3と非押し付け部4とが縦横に交互にかつ規則的に配列された形態を有する。押し付け部3はシート100を構成する2プライの原反シートが接合された部分であり、非押し付け部4はシート100の表面と面方向に面一な部分である。ナーリング2の形成箇所は、シート片S中の1か所でも2か所以上でもよいが、プライ剥離の防止性、シート片Sの美観等の観点から、2か所であることが好ましい。ナーリング2全体の平面視形状は本実施形態のほぼ矩形状に限定されず、任意の平面視形状とすることができ、例えば、三日月状、曲線状、規則的で鋭角の折れ線が複数連結された折れ線状、階段状等が挙げられる。また、押し付け部3の平面視形状は、本実施形態の円形に限定されず、例えば、正方形、二等辺直角三角形、六角形、八角形、星形、半球形、トランプのマーク形(ハート、ダイヤ、クローバー、スペード)等が挙げられる。ナーリング2の形成方法については後述する。
【0022】
(ナーリング幅割合)
図1(a)に示すシート片Sにおいて、ナーリング幅割合は、1.0%以上5.0%以下の範囲、好ましくは1.5%以上4.0%以下の範囲である。ナーリング幅割合とは、シート片Sのシート長さL(mm)に対する、ナーリング幅NW(mm)の百分率であり、下記式で表される。
ナーリング幅割合(%)=〔ナーリング幅NW(mm)/シート片Sのシート長さL(mm)〕×100
【0023】
ナーリング幅割合を前述の範囲にすることで、シート片Sのプライ剥がれが抑制されるとともに、美観性を一層向上させることができる。ナーリング幅割合が1.0%未満では、ナーリング2のマルチスタンド式インターフォルダ加工時の消失によるプライ剥がれが生じる傾向がある。ナーリング幅割合が5.0%を超えると、シート片Sの美観性が損なわれる傾向がある。
【0024】
(ナーリング位置)
ナーリング位置(%)は、
図1に示すように、当該ナーリング2が最も近接する側のシート片SのMD方向端部からのナーリング2の形成位置を示す指標になる数値であり、本実施形態では2.5%以上12.5%以下の範囲であり、好ましくは4.0%以上10.0%以下である。シート片Sを前述の所定の紙質(坪量及び厚さ)とした上で、ナーリング位置を前述の範囲とすることで、マルチスタンド式インターフォルダで加工してもナーリング2を残存させ、プライ剥がれを防止できる。また美観性も良好となる。なお、本実施形態では2か所にナーリング2が施されているが、1つ1つのナーリング2が前述したナーリング位置を有している。
【0025】
ナーリング位置とは、シート片Sのシート長さL(mm)に対する、シート片S端部からナーリング2の幅方向中央5までの長さx(mm)の百分率であり、下記式で表される。
ナーリング位置(%)=〔シート片S端部からナーリング2の幅方向中央5までの長さx(mm)/シート片Sのシート長さL(mm)〕)×100
ここで、
図1(a)に示すように、シート片S端部からナーリング2の幅方向中央5までの長さxとは、当該ナーリング2に最も近接する側のシート片SのCD方向端部から当該ナーリング2の幅方向中央5までの長さ(mm)であり、シート片Sのシート長さLとは、シート片SのCD方向のシート長さ(mm)である。
【0026】
ナーリング幅割合が1.0%未満であると、マルチスタンド式インターフォルダで加工するときに、ナーリング2が消失し易くなり、シート片Sにおいてプライ剥離が生じやすくなる傾向がある。また、ナーリング幅割合が5.0%を超えるか及び/又はナーリング位置が12.5%を超えると、マルチスタンド式インターフォルダで加工しても、ナーリング2の消失は非常に起こり難いものの、シート片Sの美観が損なわれ易くなる傾向がある。
【0027】
(ナーリング押しつけ部の面積率)
好ましい実施形態において、ナーリング2における押し付け部3の面積率(以下「ナーリング面接率」ともいう、%)は、例えば、3.0%以上20.0%以下の範囲であり、好ましくは5.0%以上15.0%以下の範囲である。シート片Sを前述の所定の紙質(坪量及び厚さ)とした上で、ナーリング面積率を前述の範囲とすることで、マルチスタンド式インターフォルダで加工してもナーリング2を残存させ、プライ剥がれを防止できる。なお、本実施形態では2か所にナーリング2が施されているが、各ナーリング2が前述したナーリング面積率を有している。
【0028】
ナーリング面接率とは、ナーリング2の全面積に対する押し付け部3の頂面の合計面積の百分率(%)を示すものであり、下記式により表される。ここで、ナーリング2の全面積とは、
図1(b)に示す矩形状の形状であれば、長手方向寸法NLと幅方向寸法NWとの積として表される。押し付け部3の頂面の合計面積押し付け部3の頂面の合計面積の測定方法は、後述する。
ナーリング面接率(%)=(押し付け部3の頂面の合計積/ナーリング2の全面積)×100
【0029】
(ナーリングの押し付け部の深さ)
別の好ましい実施形態では、ナーリング2の押し付け部3はシート片Sに対して凹んだ凹部として形成されており、押し付け部3の深さは、例えば、50μm以上120μm以下の範囲、又は65μm以上105μm以下の範囲である。押し付け部3の深さを前述の範囲とすることで、シート片Sの美観や吸水性を高水準に保ちつつ、ナーリング2のマルチスタンド式インターフォルダ加工による消失が一層起こり難くなり、シート片Sのプライ剥離がほぼ確実に防止される。また、シート片Sに穴が開いたり破れたりしない。押し付け部3の深さの測定方法は、後述する。
【0030】
(TS7値、D値)
更に別の好ましい実施形態では、シート片SのTS7値は、例えば、14.8dBV2rms以上23.5dBV2rms以下の範囲、又は16.9dBV2rms以上21.3dBV2rms以下の範囲である。また、シート片SのD値は、例えば、1.2mm/N以上2.5mm/N以下の範囲、又は1.5mm/N以上2.2mm/N以下の範囲である。TS7値及び/又はD値を前述の範囲とすることで、シート100が適度に柔らかくなり、ナーリング2の形成が容易になり、マルチスタンド式インターフォルダ加工後もナーリング2が残存し易い。シート片SのTS7値及びD値は、例えば、原料パルプの配合割合の選択、DDRによる叩解度合い調整、薬品の添加有無、添加量調整等により調整できる。TS7値及びD値は、いずれも、ティッシュソフトネス測定装置TSAを用い、後述の方法で測定できる。
【0031】
(静止摩擦係数)
他の好ましい実施形態では、シート片Sの2plyの紙が重なり合わさる面(YDフード面)同士をCD方向に擦り合わせたときの静止摩擦係数は、例えば、0.45以上0.85以下の範囲、又は0.55以上0.75以下の範囲である。静止摩擦係数を前述の範囲とすることで、プライ間に適度な抵抗が生じ、マルチスタンド式インターフォルダによるシート100の加工において、シート100の向きが90度変わるときに、剪断力がかかっても、ナーリング2がずれたり剥がれたりし難くなる。静止摩擦係数は、ISO 15359に準拠して、自動摩擦試験機(商品名:NSF-100、野村商事(株)製)を用いて測定できる。ISO 15359では、同一サンプルを用いて静止摩擦係数を3回測定し、1回目と3回目の値を確認した上で、本明細書では1回目の値を採用する。静止摩擦係数は、例えば、マシンワインダー10におけるカレンダーの圧力の選択ひいてはシート100の厚さを調整することで、適切な摩擦係数の範囲に収めるものとする。なお、TS7値、D値、静止摩擦係数は、例えば、シート100の坪量、厚さ等を適宜選択することで、調整することができる。
【0032】
(シート片寸法、組数、包装形態)
シート片Sは、長さ(CD方向の長さ)Lが、例えば、180mm以上220mm以下の範囲であり、幅(MD方向の長さ)が、例えば、200mm以上240mm以下の範囲である。シート片Sの長さ、幅を前述の範囲とすることで、手の水分をふき取り易く、使用感に優れたものとなる。積層束中の組数は、積層束を収納するカートンやフィルムパックのサイズにより、適宜変更が可能であるが、例えば、60組以上140組以下の範囲、又は80組以上120組以下の範囲である。60組以上であれば、カートン、フィルムパックの交換頻度を少なくしつつ、使用感を向上させることができる。140組以下であれば、1箱、1パックの充填率が適切な範囲になり、シート片Sを取り出す際に破れが発生しにくい傾向がある。140組以上であると、マルチスタンド式インターフォルダ加工時のハンドタオルの搬送距離が長くなり、ナーリング2が消失しやすくなる。また、積層束の包装形態は特に限定されず、例えば、紙製のカートン、フィルム包装(ガゼット、ピロー等)等が挙げられる。また、カートンやフィルム包装の取り出し口の平面視形状も特に限定されず、種々の形状とすることができる。
【0033】
<原料パルプ>
原料パルプとしては、ハンドタオル1に使用可能な原料パルプをいずれも使用でき、例えば、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、古紙パルプ等が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。古紙パルプの中では、MSF(ミルクカートン古紙パルプ)等が好ましい。原料パルプの配合割合(質量%)は特に限定されないが、例えば、LBKPが10%以上50%以下、NBKPが50%以上90%以下、必要に応じて古紙パルプが10%以上30%以下である配合割合、LBKPが20%以上40%以下、NBKPが60%以上80%以下、必要に応じて古紙パルプが10%以上30%以下である配合割合等が挙げられる。
原料パルプを上記割合とすることで、シートが適度に柔らかく前述の数値範囲のナーリング2が施しやすい。またマルチスタンド式インターフォルダで加工してもナーリング2が残存しやすく、プライ剥がれを防止できる。
【0034】
シート100は、一般的な湿潤紙力剤とその助剤を含有してもよい。一般的な湿潤紙力剤の助剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂が好ましい。湿潤紙力剤とアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂とを併用することで、例えば、湿潤紙力剤がパルプに定着しやすくなり、シート100の湿潤強度が向上する。アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂の添加量は、例えば、絶乾パルプ重量に対して、0.01%以上0.5%以下の範囲、又は0.08%以上0.3%以下の範囲である。湿潤紙力剤としては特に限定されないが、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系のものが好ましい。湿潤紙力剤の添加量を上記範囲とし、種類を上記記載のものとすることでシートが適度に柔らかく前述の数値範囲のナーリング2が施しやすい。またマルチスタンド式インターフォルダで加工してもナーリング2が残存しやすく、プライ剥がれを防止できる。強度の調整には、上記紙力剤の他に乾燥紙力剤を用いてもよい。また、抄造時にDDR(ダブルディスクリファイナー)等で強度を調整してもよい。
【0035】
(ナーリング加工)
ナーリング(エッジエンボス、コンタクトエンボス)加工は、例えば、原反シートを2プライ重ね合わせてシート100を構成する工程において、原反シートを重ね合わせた後に実施される。ナーリング加工方法としては従来公知の方法を利用できるが、例えば、押し付け部3に対応する立体形状(頂面が平面)を有し幅方向に延びる凸部集合体が周方向に所定の間隔で複数個所に形成された周面を有する第1金属製ロールと、前述の凸部の立体形状に対応する空間形状を有し幅方向に延びる凹部集合体が周方向に所定の間隔で複数個所に形成された周面を有する第2金属製ロールとを圧接し、ニップ部において前述の凸部集合体と前述の凹部集合体とが回転同期するように各ロールの回転数及びロール径を調整した一対のナーリング用ロールを用いる方法が挙げられる。このナーリング加工方法において、一対の名へリング用ロールのニップ部にシート100を供給し、後にシート片Sになる領域の2か所にナーリング2が施されたシート100が作製される。押し付け部3の深さは、例えば、ニップ部における第1、第2金属製ロールの圧接圧の選択等により調整できる。前述の一対のロールは、一般的なエンボスロールと同様の構造を有するものである。
【0036】
(押し付け部頂面の合計面積の測定方法)
押し付け部3の頂面の合計面積は、例えば、次のようにして求められる。まず、
図3に示すように、測定対象であるナーリング2の表面(上面)を、顕微鏡(商品名:デジタルマイクロスコープVHX-6000、(株)キーエンス製)を用いて倍率20倍で撮像し、撮像画像を得る。次に、得られる撮像画像において、押し付け部3の頂面の一つずつについて頂面の輪郭を特定し、特定された輪郭に基づいて、各頂面の面積を求め、1/20の値に変換して測定値とする。最後に、得られた測定値を合計して、押し付け部3の頂面の合計面積とする。
【0037】
(押し付け部の深さの測定方法)
押し付け部3の深さは、次のようにして測定される。まず、測定対象であるナーリング2の断面を、ワンショット3D形状測定機(商品名:デジタルマイクロスコープVR-3000、(株)キーエンス製)を用いて倍率12倍で撮像する。次に、得られるナーリング2の断面の撮像画像において、シート片Sの一方の表面から、押し付け部3の最下部までの深さを測定し、こうして30点の押し付け部3の深さを測定する。最後に、30の測定値を算術平均して、押し付け部3の深さとする。
【0038】
<ハンドタオルの製造方法>
本実施形態に係るハンドタオル1は、例えば、抄紙工程と、カレンダー処理工程と、積層工程と、圧縮工程と、を含む製造方法により得ることができる。なお、ナーリング処理は、カレンダー処理工程で行われる。以下、各工程について詳しく説明する。
【0039】
(抄紙工程)
抄紙工程では、原料パルプを所定の割合で配合し、抄紙機で抄造することで、1プライの原反シートを得る。抄造時の抄き出し水流速度/ワイヤー速度(J/W比)は、通常、0.85以上1.00以下の範囲に制御して抄紙することが好ましい。原反シートには、嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)、伸び等を付与するため、クレープ処理を施してもよい。クレープ処理では、原反シートをMD方向に機械的に圧縮して「クレープ」と称される波状の皺を形成する方法である。例えば、抄造後の原反シートを乾燥する際に、ヤンキードライヤーからクレーピングドクターにて原反シートを剥す際にクレープが形成され、原反シートを巻き取るリールの速度差(リールの速度がヤンキードライヤーより遅い)によりクレープが保持される。クレープ高さを選択することで、例えば、原反シートの厚さを適宜調整することができる。
抄紙工程で得られた原反シートは、ロールに巻き取られてクレーンやフォークリフトにより、又は、連続したラインにより、次工程に搬送される。
【0040】
(カレンダー処理工程)
カレンダー処理工程では、マシンワインダーを用い、1プライの原反シートを2プライ重ね合わせてカレンダー処理を施し、それと同時にナーリング加工を施し(不図示)、シート100を得る。
図4は、マシンワインダー10を示す。抄紙工程で得られた原反シートのカレンダー処理は、例えば、
図4に示すマシンワインダー10によって行うことができる。マシンワインダー10では、リールパートで原反シートが1プライずつ巻き取られたリール11及び12がマシンワインダー10にセットされ、原反ロール15となる。この際、1スタック目のカレンダー機13、2スタック目のカレンダー機14の順に2段階で、2枚重なった状態でカレンダー処理される(矢印D2参照)。オンマシンカレンダーでカレンダー処理することも可能である。なお、マシンワインダーで使用するカレンダーの強弱により、シート100の厚さを適宜調整することができる。また、ナーリング加工の方法は前述したとおりである。さらに、原反ロール15にナーリング加工とは別にエンボス加工を施してもよい(不図示)。エンボス加工は、例えば、カレンダー処理後に施される。
【0041】
(積層工程)
積層工程では、ナーリング加工後のシート100を積層し、積層束を得る。
図5は、積層工程で使用するマルチスタンド式インターフォルダ加工機のフォールディング部20の構成を示す模式図であり、
図6は、
図5のフォールディング部を構成する折り畳みプレート装置20a、20b、20c・・・の模式斜視図である。
【0042】
積層工程では、シート100を1組ずつ折り曲げて、これを重なりあうように折込む。シート100の折り込み形態は、ポップアップ式に順次シート100を1組ずつ取り出せる形態であれば特に限定されず、例えば、V折り、Z折り等とすることができるが、シートの中央部で2つ折りとし、積層することが好ましい。その際の積層束の長さ方向の寸法は、例えば、シート100の長さの50%以上65%以下の範囲である。シート片Sの折り込みは、マルチスタンド式インターフォルダ加工機で実施できる。シート片Sの組数は、後述するフォールディング部20の折り畳みプレート装置20a、20b、20c・・・の配置数等を工夫することによって、様々な組数でとすることができる。
【0043】
図5では便宜上、3つの折り畳みプレート装置20a、20b、20cのみを表示しているが、マルチスタンド式インターフォルダ加工機のフォールディング部20は、搬送ライン上に配置された複数の折り畳みプレート装置20a、20b、20c・・・を備える。つまり、個々の折り畳みプレート装置20a、20b、20c・・・は、それぞれシート片Sを互い違いに折り畳んで1組の折り畳み積層体とする。例えば、積層束300の組数が140組である場合、シート片Sを140組積層することとなり、折り畳みプレート装置20a、20b、20c・・・の配置数も、組数と同数の140体を搬送ライン上に配置してもよい。
【0044】
続いて、1体の折り畳みプレート装置20aにおける折り畳みについて説明する。
図5に示すように、折り畳みプレート装置20aでは、製品幅に切断された複数のシート片Sが導入され、第1のガイドロール21によって繰出し方向を変化させられた後、1組のシート片Sが接触するように第2のガイドロール22で方向付けられ、最後に折り板23に案内されて互いに折り畳まれることによって、長尺の折り畳み積層体である未圧縮の積層束200を形成する。
【0045】
さらに、フォールディング部20は、隣り合う折り畳みプレート装置20a、20b、20c・・・の間の少なくとも1つに、コンベア30の上方に配置されたタッチロール24を少なくとも1つを備え、積層工程は、コンベア30によって搬送される被搬送物(例えば、
図5及び
図6であれば、未圧縮の積層束200)を、その上方からタッチロール24によって支持することが好ましい。
【0046】
タッチロール24は、被搬送物(例えば、シート100や未圧縮の積層束200等)を積極的に押圧して送るピンチロールやニップロールと異なり、圧をかけずに自身の自重によって被搬送物を支持するロールである。本実施形態では、組数全てのシート100が積層されるまで(フォールディング部20による積層工程を終えるまでは)は、極力シート100を圧縮しないようにすることで、シート100について紙厚、破れにくさ、手触り感等の物性のばらつきを抑制できる。この観点から、本実施形態では、タッチロール24を用いることが好ましい。これによって、シート100を個別に圧縮することなく、コンベア30上を高い安定性をもって案内することができる。
【0047】
図5では、折り畳みプレート装置20aと折り畳みプレート装置20bの間にタッチロール24が1つ配置され、折り畳みプレート装置20bと折り畳みプレート装置20cの間にタッチロール24が1つ配置され、さらに、折り畳みプレート装置20cの下流にもタッチロール24が配置されている。しかし、本実施形態では、タッチロール24は、隣り合う折り畳みプレート装置の全ての間に設ける必要はなく、少なくとも1つの間に設けるのが好ましい。
【0048】
タッチロール24は、いずれも、金属製の略円柱形状のロール体であり、その直径は例えば10mm以上50mm以下の範囲である。タッチロール24が金属製である場合、金属の種類は限定されず、例えば、アルミニウム、スチール、鉄等が挙げられる。また、タッチロール24の質量は、例えば、100g以上1000g以下の範囲である。前述の寸法形状にすると、タッチロール24の自重だけで、シート100を高い安定性で案内することができる。
【0049】
タッチロール24は、コンベア30の搬送方向(未圧縮の積層束200の搬送方向、矢印D3参照)に対して自由回転可能であることが好ましい。このように自由回転することで、搬送時に意図しない抵抗力や押圧力が発生することなく搬送速度に同期できるので、組数全てのシート100が積層されるまで(すなわち、フォールディング部20での積層工程を終えるまでは)は、極力圧縮することなく、コンベア30上を案内することができる。
【0050】
マルチスタンド式インターフォルダ加工機は、フォールディング部20の前段にPR(ペアレントロール)スタンドを多数(例えば、3つ以上)備え、PRスタンドからシート片Sをフォールディング部20に繰り出す構成とすることができる。その他、本実施形態の作用が得られる範囲内であれば、マルチスタンド式インターフォルダ加工機の構成を適宜改変してもよい。
【0051】
こうして、1体の折り畳みプレート装置20aで折り畳まれた1組の積層体は、コンベア30の下流に配置されている次の折り畳みプレート装置20bの1組の積層体とかみ合うように折り畳まれる。続けて、更に次なる折り畳みプレート装置20cで折り畳まれた積層体が、これにかみ合うように折り畳まれる。このようにして、コンベア30上に配置された折り畳みプレート装置(不図示)で折り畳まれた積層体が、順次に連続的にかみ合わされることによって、未圧縮の積層束200が得られる。
【0052】
(圧縮工程)
圧縮工程では、例えば、圧縮加工部として
図9に示すプルユニット40を用い、未圧縮の積層束200を、その上下に配置された上プルユニット41及び下プルユニット42の間を通過させることによって圧縮することができる。未圧縮の積層束200は、プルユニット40に装入されて、上プルユニット41及び下プルユニット42によって積層方向に圧縮加工されて、圧縮加工された積層束が得られる。これがカットオフソーやログソー等によって製品の長さ(ハンドタオルの長手長)にカットされてハンドタオル積層束300(「クリップ」等と呼ばれることもある。)が得られる。
【0053】
プルユニット40は、上下にそれぞれ複数組のロール(上プルユニット41及び下プルユニット42)が配置されている。これら上下のロール組には、それぞれゴムベルト等のベルトが張架されており、駆動ロール43,44によってロール45,46を回転させることにより、上下のベルトが所定の速度で走行し(矢印D4、D5参照)、両ベルトの間に未圧縮の積層束200が搬送されて、そこで圧縮加工する構成である。
【0054】
圧縮加工部は、フォールディング部20よりも下流に配置されている。具体的には、プルユニット40は、マルチスタンド式インターフォルダ加工機の最下流の折り畳みプレート装置(不図示)の下流に配置されている。プルユニット40は、最下流の折り畳みプレート装置の下流に配置されていればよく、その配置数は特に限定されないが、1つでも複数でもよい。プルユニット40の配置条件をこのように制御することで、ハンドタオル積層体300を構成するシート100の全てが、同一の圧縮力及び圧縮回数によって圧縮されるため、シート片Sごとの紙厚のばらつきひいては破れにくさ等の物性のばらつきも抑制できる。
【0055】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明する。
【0057】
<実施例1~13及び比較例1~6>
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を60質量%、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を35質量%、及びMSF(ミルクカートン古紙パルプ)を5質量%配合したバルブ原料を用い、原料吐出量を調整しながらドライクレープ紙(1プライ)を作製し、マシンワインダーで使用するカレンダーの強弱を調整しながら2プライを重ねあわせ、
図1に示すナーリングを施し、得られたシートをマルチスタンド式インターフォルダ加工機で積層し、坪量、紙厚、TSA値、静止摩擦係数等の異なる実施例1~13及び比較例1~6の各ハンドタオルを作製した。
【0058】
得られたハンドタオルの物性の測定方法は次の通りである。
(坪量)
JIS P 8124(1998)の坪量測定方法に従って測定した。
(厚さ)
シックネスゲージ(商品名:アップライト ダイヤルシックネスゲージ PEACOCK R1-B型、(株)尾崎製作所製)を用い、測定荷重250gf、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm 以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。試料は、ハンドタオルを5組重ねたものとし(10プライ)、測定を10回実施し、読み取り値の算術平均を求め、試料の厚さとした。
(TS7値)
ティッシュソフトネス測定装置TSA(商品名:Tissue Softness Analyzer、emtec社製)を用い、試料台に実施例1~13及び比較例1~6の各ハンドタオルを設置し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力で上から押し込んだ後に回転数2.0(/sec)で回転させ、試料台の振動を振動センサーで測定したとき、TSA上のソフトウェアで6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(単位:dBV2rms)をTS7値として求めた。
(D値)
ティッシュソフトネス測定装置TSA(商品名:Tissue Softness Analyzer、emtec社製)を用い、実施例1~13及び比較例1~6の各ハンドタオルを設置し、ブレード付きローターを回転させずに100mN及び600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、TSA上のソフトウェアで、押し込み圧力100mNと600mNとの間のハンドタオルの上下方向の変形変位量をD値として求めた。
【0059】
実施例1~13及び比較例1~6の各ハンドタオルについて、下記の評価を実施した。結果を表1、表2に示す。3項目の評価がすべて良○以上であるハンドタオルを合格品とした。
【0060】
(プライ剥がれ発生頻度)
実施例1~13及び比較例1~6の各ハンドタオルを収納箱から取り出して、100組以上使用した際の、プライ剥がれの発生頻度(%)を下記式に基づいて求め、以下の基準で評価した。
プライ剥がれの発生頻度(%)=(プライ剥がれ発生組数/使用したハンドタオル総組数)×100
優◎:プライ剥がれの発生頻度が1%未満で、プライ剥がれはほぼ発生せず、使用感が良好である。
良○:プライ剥がれの発生頻度が1%以上3%未満で、プライ剥がれの発生は少なく、使用感も問題なしである。
不可×:プライ剥がれの発生頻度が3%超え、プライ剥がれの発生を多いと感じ、使用感も満足のいく水準にはない。
【0061】
(美観)
50名のパネラーが、実施例1~13及び比較例1~6の各ハンドタオルを手に取り使用した際の美観を官能評価し、各人が1点、2点、3点、4点、5点と評価した。なお、点が多いほど良好であり、5点が最高評価である。
優◎:50名の評価の平均点が4.0点以上であり、特に気になる点はなく、美観が良好であると感じる。
良○:50名の評価の平均点が3.0点以上、4.0点未満であり、ナーリングの幅がやや広いものの、美観に問題はないと感じる。
不可×:50名の評価の平均点が3.0点未満であり、ナーリングが太い、ハンドタオルの長さ方向の中央部に寄っている等の理由で、美観が悪いと感じる。
【0062】
(吸水性、TWA)
吸水性TWA(Total Water Absorbency)は、まず、実施例1~13及び比較例1~6の各ハンドタオルから76mm×76mmの正方形の試験片を切り出し、乾燥重量(W1)を測定する。次いで、この試験片を蒸留水中に2分間浸漬した後、試験片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(RH100%)で吊るし、30分放置後の重量(W2)を測定する。(W2-W1)の値を算出し、この値をハンドタオル1m2当りに換算したものを吸水性(TWA g/m2)とする。得られたTWA値から、下記の基準で評価した。
優◎:TWA値が100g/m2以上であり、特に多くの水分をふき取ることができる。
良〇:TWA値が80g/m2以上100g/m2未満であり、手拭き用途で使用すると、問題なく水分をふき取ることができる。
不可×:TWA値が80g/m2未満であり、水分吸収量がやや少なく、手拭き用途で使用しても、手についた水分を十分に拭き取ることができない。
【0063】
【0064】
【0065】
表1及び表2から、本実施形態のハンドタオルは、マルチスタンド式インターフォルダで加工しても、ナーリングが残ってプライ剥がれ発生頻度が顕著に低下し、優れた美観を有しつつ、高い吸水性を有することが分かる。