(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178216
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】アクリル板製品の製造方法およびアクリル板
(51)【国際特許分類】
B24C 1/04 20060101AFI20221125BHJP
B44C 1/22 20060101ALI20221125BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20221125BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20221125BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B24C1/04 B
B44C1/22 C
B24C1/04 F
B05D7/02
B05D3/12 B
B05D3/12 C
B05D5/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084841
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】521217172
【氏名又は名称】渡辺人形有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩章
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075BB04X
4D075BB06X
4D075BB65X
4D075BB79X
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB43
4D075DC38
4D075DC41
(57)【要約】
【課題】マスク材の剥離時にアクリル板に傷がつくことを抑制するアクリル板製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】アクリル板製品の製造方法は、保護シートが貼付されたアクリル板を装飾する。アクリル板製品の製造方法であって、マスク材形成工程S2と、マスク材貼付工程S3と、サンドブラスト工程S5と、剥離工程S10と、を含む。マスク材形成工程S2では、アクリル板に施す図柄のマスク材を形成する。マスク材貼付工程S3では、マスク材形成工程S2の後、保護シートの上からマスク材を部分的に貼付する。サンドブラスト工程S5では、マスク材貼付工程S3の後、マスク材に向かって研磨材を噴射する。剥離工程S10では、サンドブラスト工程S5の後、アクリル板から保護シートと共にマスク材を剥離する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護シートが貼付されたアクリル板を装飾するアクリル板製品の製造方法であって、
前記アクリル板に施す図柄のマスク材を形成するマスク材形成工程と、
前記マスク材形成工程の後、前記保護シートの上から前記マスク材を部分的に貼付するマスク材貼付工程と、
前記マスク材貼付工程の後、前記マスク材に向かって研磨材を噴射するサンドブラスト工程と、
前記サンドブラスト工程の後、前記アクリル板から前記保護シートと共に前記マスク材を剥離する剥離工程と、
を含むことを特徴とするアクリル板製品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたアクリル板製品の製造方法であって、
前記マスク材貼付工程の後でありサンドブラスト工程の前に、前記アクリル板に貼付された前記保護シートの縁部の全周を粘着テープにより被覆する保護シート被覆工程を含むことを特徴とするアクリル板製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたアクリル板製品の製造方法であって、
前記マスク材貼付工程の後でありサンドブラスト工程の前に、前記マスク材の縁部の全周を粘着テープにより被覆するマスク材被覆工程を含むことを特徴とするアクリル板製品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載されたアクリル板製品の製造方法において、
前記サンドブラスト工程の後であり前記剥離工程の前に、
前記アクリル板に帯電イオンを吹き付けて、前記アクリル板の静電気を除去する静電気除去工程と、
前記静電気除去工程の後、前記アクリル板を水で洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後、前記保護シートを乾燥させる乾燥工程と、
を含むことを特徴とするアクリル板製品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載されたアクリル板製品の製造方法において、
前記サンドブラスト工程の後であり前記剥離工程の前に、前記アクリル板を所定の形状に曲げる曲げ加工工程を含むことを特徴とするアクリル板製品の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載されたアクリル板製品の製造方法において、
前記剥離工程の後、前記アクリル板に帯電防止剤を塗布する塗布工程を含むことを特徴とするアクリル板製品の製造方法。
【請求項7】
保護シートと、
前記保護シートの上から部分的に貼付したマスク材と、
前記マスク材に向かって研磨材を噴射することにより形成した図柄と、
を有することを特徴とするアクリル板。
【請求項8】
請求項7に記載されたアクリル板において、
前記保護シートの縁部と前記マスク材の縁部のうち少なくとも一方の全周を被覆した粘着テープを有する
ことを特徴とするアクリル板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクリル板製品の製造方法およびアクリル板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サンドブラストによって、ガラス板に装飾として図案を加工することが知られている。例えば、従来の製造方法では、サンドブラストによってガラス板に図案を刻印する前に、図案を切り抜いたカッティングシート(登録商標、以下「マスク材」と記載する。)を直接ガラス板上に貼付している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のガラス板と同様に、マスク材を直接アクリル板上に貼付すると、マスク材を剥離するときにアクリル板に傷がつくおそれがある、という課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題に着目してなされたもので、マスク材の剥離時にアクリル板に傷がつくことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の態様では、本開示のアクリル板製品の製造方法は、保護シートが貼付されたアクリル板を装飾する。本開示のアクリル板製品の製造方法であって、マスク材形成工程と、マスク材貼付工程と、サンドブラスト工程と、剥離工程と、を含む。マスク材形成工程では、アクリル板に施す図柄のマスク材を形成する。マスク材貼付工程では、マスク材形成工程の後、保護シートの上からマスク材を部分的に貼付する。サンドブラスト工程では、マスク材貼付工程の後、マスク材に向かって研磨材を噴射する。剥離工程では、サンドブラスト工程の後、アクリル板から保護シートと共にマスク材を剥離する。第2の態様では、本開示のアクリル板は、保護シートと、マスク材と、図柄と、を有する。マスク材は、保護シートの上から部分的に貼付した。図柄は、マスク材に向かって研磨材の噴射により形成した。
【発明の効果】
【0007】
よって、第1の態様と第2の態様では、マスク材の剥離時にアクリル板に傷がつくことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例のアクリル板製品が用いられたケースを示す図である。
【
図2】実施例のアクリル板製品の製造方法の工程の順番を示す図である。
【
図3】実施例のマスク材貼付工程を行った状態を示す図である。
【
図4】実施例のマスク材貼付工程を行った状態の断面図であって、
図3のA-A線の断面図である。
【
図5】実施例の被覆工程を行った状態を示す図である。
【
図6】実施例の被覆工程を行った状態の断面図であって、
図5のB-B線の断面図である。
【
図7】実施例のサンドブラスト工程における研磨材を噴射している状態を示す図である。
【
図8】変形例のアクリル板製品が用いられたパーテーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示によるアクリル板製品の製造方法およびアクリル板を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0010】
実施例におけるアクリル板製品1は、
図1に示すように、例えばケース100の側面のケース枠として用いられるものである。なお、ケース100には、例えば不図示の人形が収納される。アクリル板製品1の表面1aには、図柄1cが彫刻されず、アクリル板製品1の裏面1bには、サンドブラスト加工により図柄1c(文字、図形または記号等)が彫刻される(装飾される)。なお、
図1の図柄1cは、市松模様であるが、これに限られない。
【0011】
次に、
図2~
図7を参照して、アクリル板製品1の製造方法を説明する。
【0012】
アクリル板製品1は、
図2に示す工程を含む順番にて一人の作業者(一つの業者)により製造される。以下、順番に各工程について説明する。なお、以下において、塗布工程S11が終了した後のものを「アクリル板製品1」と記載し、塗布工程S11が終了する前のものを「アクリル板10」と記載する。
【0013】
まず、切断工程S1において、アクリル板10がケース枠の寸法に合わせて切断される。アクリル板10は、不図示の板材切断機(パネルソー)により切断される。アクリル板10の厚さは、例えば2mmである。アクリル板10は、アクリル板10の表面10aと裏面10bの両面に保護シート11(プロテクションシート)が貼付された状態であり(
図4等参照)、剥離工程S10まで保護シート11は剥離せずに各工程が行われる。なお、アクリル板10は、アクリル樹脂が板状に成形されたものであり、実施例では透明である。
【0014】
ここで、アクリル板10には、キャスト板(キャスト材)と押出板(押出材)の二種類が存在する。キャスト板は、二枚のガラス板の間にアクリル樹脂を流した後、硬化させたものである。押出板は、アクリル樹脂をローラーで押し出したものである。実施例のアクリル板10は、押出板を用いる。
【0015】
次に、マスク材形成工程S2において、アクリル板10に施す図柄1cのマスク材2が形成される。
図1の図柄1cの場合、マスク材形成工程S2において、アクリル板10に施す図柄1cと同じ形状の穴部21がマスク材2に形成される(
図4等参照)。言い換えると、マスク材形成工程S2において、マスク材2からアクリル板10に施す図柄1cと同じ形状が切り出される。マスク材2に形成された穴部21の周囲には、マスク材2が残っている状態である。マスク材2は、粘着剤付きシート(例えばカッティングシート(登録商標))である。形状は、不図示のカッティングプロッターにより形成される(切り出される)。カッティングプロッターは、コンピュータ制御により、予め入力されたデータに基づいて、粘着剤付きシートから図柄1cを切り出すものである。マスク材2は、例えば、マスク層2b、粘着層2c、不図示の剥離紙層が積層されたものである(
図4等参照)。マスク材形成工程S2が行われた状態では、穴部21は、マスク層2b、粘着層2c、剥離紙層のうち、カッティングプロッターによりマスク層2bと粘着層2cが切り抜かれた状態であり、剥離紙層が残る。剥離紙層により、複数の穴部21の位置関係が保持される。マスク材2から剥離紙層が剥離されると、粘着層2cが露出される。マスク材2の強度は、サンドブラスト工程S5において噴射される研磨材4の粒子の大きさ(粒子径、
図7参照)と噴射圧と噴射時間等によって、研磨材4により研磨されない強度に設定される。マスク材2は、アクリル板10に施す図柄1cの周囲に余裕を持たせた余裕マスク部分を残している。余裕マスク部分の大きさは、サンドブラスト工程S5にて穴部21の端部分に研磨材4が噴射された際、保護シート11の部分に直接研磨材4が噴射されない大きさに設定される。余裕マスク部分の大きさは、予め実験等によって設定される。マスク材2のアクリル板10に図柄1cを施すための穴部21と穴部21の周囲の部分(余裕マスク部分を含む)を合わせた大きさは、保護シート11の大きさよりも小さく設定される。
【0016】
次に、マスク材貼付工程S3において、アクリル板10に図柄1cを施す部分にマスク材2が配置される。その後、マスク材2の剥離紙層が剥離されながら、
図3と
図4に示すように、アクリル板10の保護シート11の上からマスク材2が部分的に貼付される。
【0017】
次に、被覆工程S4において、
図3と
図5と
図6に示すように、粘着テープ3(例えばマスキングテープ)により保護シート11の縁部11aの全周とマスク材2の縁部2aの全周が被覆される。被覆工程S4は、保護シート被覆工程S41とマスク材被覆工程S42の二つの工程を含む。先に、保護シート被覆工程S41において、粘着テープ3により保護シート11の縁部11aの全周が被覆される。実施例の保護シート被覆工程S41では、粘着テープ3によりアクリル板10の側面10cも被覆される(
図6参照)。なお、アクリル板10の側面10cは、アクリル板10の表面10aと裏面10bに接する面である。この後、マスク材被覆工程S42において、粘着テープ3によりマスク材2の縁部2aの全周が被覆される。粘着テープ3の強度は、マスク材2の強度と同様に、研磨材4により研磨されない強度に設定されることが好ましい。なお、保護シート被覆工程S41とマスク材被覆工程S42は、どちらが先に行われても良い。
【0018】
次に、サンドブラスト工程S5において、
図7に示すように、マスク材2(特にマスク材2の穴部21と穴部21の周囲部分)に向かって研磨材4が噴射される。サンドブラスト工程S5は、不図示のサンドブラスター内にて行われる。アクリル板10は、固定台6により固定される。研磨材4は、不図示のコンプレッサーを用いた圧縮空気と共に、ノズル5からアクリル板10へ噴射される(吹き付けられる)。噴射された研磨材4により、アクリル板10の裏面10bの保護シート11が削除されると共に、アクリル板10の裏面10bに
図1に示す所定の図柄1cが彫刻される。例えば、研磨材4の粒子の大きさは、90μm(マイクロメートル)~125μmである。研磨材4の噴射圧は、0.1MPaである。研磨材4の噴射時間は、1cm
2あたり5秒である。なお、研磨材4の粒子の大きさと噴射圧と噴射時間等は、彫刻される図柄1cの深さ、アクリル板10の強度等に基づいて変更される。サンドブラスターは、サンドブラスト工程S5を行う部屋である。なお、サンドブラスト工程S5では、アクリル板10は曲げ加工工程S9が行われる前であり、長尺の状態(平板状の状態)が維持されている。
【0019】
次に、静電気除去工程S6において、アクリル板10に不図示の帯電イオンが吹き付けられて、アクリル板10の静電気が除去される。静電気除去工程S6では、アクリル板10の静電気は、不図示のイオナイザー付きエアダスターにより除去される。これにより、アクリル板10と保護シート11とマスク材2に残存する研磨材4の粒子のうち、特に大きめの研磨材4の粒子が落とされる。イオナイザーは、除電器のことである。イオナイザーは、帯電イオンを発生させ、帯電イオンによりアクリル板10とマスク材2等の静電気を除電する(中和する)ものである。エアダスターは、コンプレッサーを用いた圧縮空気をノズルから放出する。イオナイザー付きエアダスターは、圧縮空気(空気)と共に帯電イオンがアクリル板10の全体に吹き付けられる。静電気除去工程S6は、例えば、アクリル板10の10cm2あたりに1秒、圧縮空気と共に帯電イオンが吹き付けられる。この時間は、イオナイザーの性能や、研磨材4の粒子の大きさ等により異なる。なお、アクリル板10に帯電イオンが吹き付けられた後、圧縮空気が吹き付けられても良い。
【0020】
ここで、サンドブラスト工程S5において、アクリル板10と研磨材4が衝突したときの摩擦により、アクリル板10に静電気が発生する。同様に、マスク材2等にも静電気が発生することがある。言い換えると、摩擦により、アクリル板10等が帯電する。このように、アクリル板10等がプラスまたはマイナスに帯電しているので、帯電している符号とは反対のマイナスイオンまたはプラスイオンの帯電イオンを吹き付ける。この帯電イオンの吹き付けにより、アクリル板10とマスク材2等の静電気が除電される。
【0021】
次に、洗浄工程S7において、アクリル板10は水により洗浄される。例えば、アクリル板10の全体が流水により洗浄される。これにより、アクリル板10と保護シート11とマスク材2に残存する研磨材4の粒子のうち、特に小さめの研磨材4の粒子が落とされる。
【0022】
次に、乾燥工程S8において、保護シート11を含むアクリル板10が乾燥される。乾燥工程S8では、アクリル板10を風通しの良い日陰に置いて、保護シート11を含むアクリル板10が自然乾燥される。乾燥度合いは、生乾きでは不十分であり、アクリル板10の全体に亘って湿り気が無くなるまで乾燥させる。乾燥の目安は、保護シート11の不図示の粘着剤が乾燥するまでである。なお、保護シート11を不図示の送風機により乾燥させても良い。アクリル板10は熱により変形するおそれがあるので、日なたでの乾燥や熱風による乾燥は避ける。
【0023】
続いて、曲げ加工工程S9において、アクリル板10が所定の形状に曲げられる。曲げ加工工程S9では、アクリル板10に熱が加えられ、不図示のベンディングマシンにより
図1のケース枠の形状(所定の形状)にアクリル板10が曲げ加工される。図柄1cが彫刻されたアクリル板10の裏面10bが
図1のケース100の内側になるように、アクリル板10が曲げ加工される。ベンディングマシンは、アクリル板10を曲げ加工するものである。具体的には、まず、アクリル板10がベンディングマシンのローラーで挟まれる。次に、ローラーを通じてアクリル板10に圧力が加えられることにより、アクリル板10が曲げ加工される。
【0024】
次に、剥離工程S10において、アクリル板10から、粘着テープ3とマスク材2と保護シート11が剥離される。
【0025】
次に、塗布工程S11において、アクリル板10に不図示の帯電防止剤が塗布される。帯電防止剤の塗布は、帯電防止剤を付けたシートによってアクリル板10を拭くことにより行われる。
【0026】
続いて、組立工程S12において、アクリル板製品1や背面板101が天板102と台座103とにより上下方向で挟まれる等の組立が行われ、ケース100が完成される(
図1参照)。
【0027】
次に、実施例の作用を説明する。
【0028】
アクリル板10は、ガラス板と比較すると傷がつきやすいものである。このため、一般的に、アクリル板10の両面(表面10aと裏面10b)には、保護シート11が貼付された状態にて販売されている。発明者は、この保護シート11に着目した。即ち、発明者は、保護シート11を剥離せずにアクリル板製品1の製造方法を行えば、アクリル板10へ傷がつくことを抑制することが可能であるとの知見に至った。更に、発明者は、アクリル板10に保護シート11が貼付された状態であっても、サンドブラスト工程S5の加工時の研磨材4により保護シート11を削除することができることを実験等により確認した。
【0029】
実施例では、マスク材形成工程S2の後、保護シート11の上からマスク材2を部分的に貼付するマスク材貼付工程S3が行われる。マスク材貼付工程S3の後、サンドブラスト工程S5が行われる。サンドブラスト工程S5の後、アクリル板10から保護シート11と共にマスク材2を剥離する剥離工程S10が行われる。即ち、マスク材2は、直接アクリル板10上に貼付されておらず、保護シート11の上から貼付されている。このため、保護シート11が剥離されれば、マスク材2は保護シート11と一緒に剥離される。従って、マスク材2の剥離時にアクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。
【0030】
加えて、保護シート11がアクリル板10に貼付された状態にて、サンドブラスト工程S5が行われる。このため、マスク材2に向かって噴射された研磨材4は、保護シート11やマスク材2等に飛び散ることはあるが、彫刻部分以外のアクリル板10そのものに直接飛び散ることはない。従って、飛び散った研磨材4により、アクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。
【0031】
更に、保護シート11がアクリル板10に貼付された状態であるので、少なくともアクリル板10が彫刻される面側(裏面10b側)の全体をマスク材2で被覆する必要がない。従って、マスク材2の大きさを節約することができる。
【0032】
実施例では、サンドブラスト工程S5において、アクリル板10に図柄1cが彫刻される。ここで、アクリル板に図柄等を彫刻するその他の方法としては、例えばレーザー加工がある。また、アクリル板に直接図柄等を印刷する技術として、例えばUVプリンタの技術がある。なお、「UV」は、「Ultra Violet」の略称である。
【0033】
まず、レーザー加工と実施例のサンドブラスト工程S5の加工を対比する。レーザー加工では、実施例のサンドブラスト工程S5に用いる機械等よりも高価な機械が必要である。また、レーザー加工と実施例のサンドブラスト工程S5の加工にて同じ図柄等を彫刻した場合の彫刻時間は、実施例のサンドブラスト工程S5の加工よりもレーザー加工の方が長くなる。このため、実施例のサンドブラスト工程S5は、レーザー加工よりも製造コストを低減することができる。更に、レーザー加工では、レーザー光を上下させて、レーザー光の光の一定幅ごとに走査列で図柄等が彫刻される。このため、アクリル板には一定幅ごとの間に僅かに細い走査線(隙間)が生じることがある。特に、アクリル板が押出板の場合には、アクリル板に走査線が生じやすい。一方、実施例のサンドブラスト工程S5の加工では、研磨材4の噴射によりアクリル板10を彫刻するので、アクリル板製品1にレーザー加工のような走査線が生じない。
【0034】
次に、UVプリンタの印刷と実施例のサンドブラスト工程S5の加工を対比する。UVプリンタにより直接アクリル板に図柄等が印刷された場合、アクリル板製品の図柄に光が照射されても、図柄により光が遮られてしまう。このため、UVプリンタにより印刷された図柄は発光しているように見えないので、視覚的効果は得られない。一方、実施例のサンドブラスト工程S5の加工が行われた場合、アクリル板製品1の図柄1cに光が照射されると、図柄1cが発光しているように見えるので視覚的効果が高まる。なお、光は、例えば、
図1のケース100にアクリル板製品1が取り付けられた状態にて、ケース100の内側から外側に向かって照射される。更に、UVプリンタの印刷では、アクリル板が押出板でもキャスト板でも、印刷部分の表面を引っかくと印刷面が容易に剥がれてしまう。
【0035】
このように、実施例のサンドブラスト工程S5の加工は、レーザー加工やUVプリンタの印刷よりも優れている。
【0036】
実施例では、マスク材貼付工程S3の後でありサンドブラスト工程S5の前に、アクリル板10に貼付された保護シート11の縁部11aの全周を粘着テープ3により被覆する保護シート被覆工程S41が行われる。即ち、アクリル板10と保護シート11との間の隙間が粘着テープ3により被覆される。従って、アクリル板10と保護シート11との間の隙間から研磨材4等が入ることを抑制することができる。
【0037】
実施例では、マスク材貼付工程S3の後でありサンドブラスト工程S5の前に、マスク材2の縁部2aの全周を粘着テープ3により被覆するマスク材被覆工程S42が行われる。即ち、マスク材2の縁部2aの全周を被覆する粘着テープ3により、保護シート11の一部も被覆される。従って、粘着テープ3により被覆された保護シート11の部分に、直接研磨材4が噴射されることをより一層抑制することができる。また、マスク材2の余裕マスク部分が不足する場合であっても、サンドブラスト工程S5にて図柄1cの端部分に研磨材4が噴射された際、粘着テープ3により、保護シート11の部分に直接研磨材4が噴射されることを抑制することができる。加えて、人為が加わらない(自然の)状態にて、マスク材2が保護シート11から剥離することを抑制することができる。
【0038】
実施例では、サンドブラスト工程S5の後であり剥離工程S10の前に、静電気除去工程S6と、洗浄工程S7と、乾燥工程S8と、が行われる。ここで、上述したように、摩擦により、アクリル板10等が帯電する。このとき、アクリル板10は、ガラス板と比較すると静電気が発生しやすいものである。このため、実施例では、サンドブラスト工程S5の後、静電気除去工程S6が行われることにより、アクリル板10とマスク材2等の静電気が除電される。そして、静電気除去工程S6では、帯電イオンと一緒に吹き付けれられる圧縮空気により、アクリル板10と保護シート11とマスク材2に残存する研磨材4の粒子のうち、特に大きめの研磨材4の粒子が飛ばされる。加えて、静電気の作用で付着していた研磨材4も、圧縮空気により飛ばされる。更に、静電気除去工程S6の後、洗浄工程S7が行われ、流水により研磨材4が流される。洗浄工程S7では、アクリル板10と保護シート11とマスク材2に残存する研磨材4の粒子のうち、特に小さめの研磨材4の粒子が流される。このように、静電気除去工程S6と洗浄工程S7との二つの工程により、アクリル板10と保護シート11とマスク材2に残存する大小異なる研磨材4が除去される。言い換えると、静電気除去工程S6と洗浄工程S7との二つの工程により、アクリル板10と保護シート11とマスク材2に残存する研磨材4の粒子の大きさに関わらず、研磨材4が除去される。更にまた、洗浄工程S7の後、乾燥工程S8が行われ、保護シート11の粘着剤が乾燥される。これにより、保護シート11を剥離する際(剥離工程S10)、アクリル板10に粘着剤の跡が残存することを抑制することができる。従って、静電気除去工程S6と洗浄工程S7と乾燥工程S8により、保護シート11が剥離された際に、アクリル板10に傷と跡がつくことを抑制することができる。
【0039】
実施例では、乾燥工程S8の後に、曲げ加工工程S9が行われる。そして、曲げ加工工程S9の後に、剥離工程S10が行われる。即ち、曲げ加工工程S9のときには保護シート11はアクリル板10に貼付された状態である。従って、曲げ加工工程S9のときにアクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。加えて、曲げ加工工程S9の後に行われる剥離工程S10では、保護シート11とマスク材2と粘着テープ3が剥離される。
【0040】
実施例では、剥離工程S10の後、塗布工程S11が行われる。即ち、剥離工程S10の前に、静電気除去工程S6と洗浄工程S7が行われるので、アクリル板10と保護シート11とマスク材2に残存する大小異なる研磨材4が除去されている。このため、アクリル板10に帯電防止剤を塗布する際、シートに研磨材4が付着することが抑制されるので、シートに付着した研磨材4にてアクリル板10を擦ることが抑制される。従って、アクリル板10に帯電防止剤を塗布する際、研磨材4によりアクリル板10に傷(拭き筋)がつくことを抑制することができる。
【0041】
実施例では、アクリル板10は、押出板を用いた。押出板は、キャスト板と比較すると、価格が安いため、費用を抑えることができる。押出板は、キャスト板と比較すると、硬度が低いので熱により曲げ加工しやすい。このため、押出板は、キャスト板と比較すると、曲げ加工工程S9の時間を短縮することができる。なお、キャスト板は、押出板と比較すると硬度が高いが、熱により曲げ加工を行うことが可能である。
【0042】
以上説明したように、実施例のアクリル板製品1の製造方法にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0043】
(1)アクリル板製品1の製造方法は、保護シート11が貼付されたアクリル板10を装飾する。アクリル板製品1の製造方法であって、マスク材形成工程S2と、マスク材貼付工程S3と、サンドブラスト工程S5と、剥離工程S10と、を含む。マスク材形成工程S2では、アクリル板10に施す図柄1cのマスク材2を形成する。マスク材貼付工程S3では、マスク材形成工程S2の後、保護シート11の上からマスク材2を部分的に貼付する。サンドブラスト工程S5では、マスク材貼付工程S3の後、マスク材2に向かって研磨材4を噴射する。剥離工程S10では、サンドブラスト工程S5の後、アクリル板10から保護シート11と共にマスク材2を剥離する。従って、マスク材2の剥離時にアクリル板10に傷がつくことを抑制するアクリル板製品1の製造方法を提供することができる。
【0044】
(2)アクリル板製品1の製造方法であって、保護シート被覆工程S41を含む。保護シート被覆工程S41では、マスク材貼付工程S3の後でありサンドブラスト工程S5の前に、アクリル板10に貼付された保護シート11の縁部11aの全周を粘着テープ3により被覆する。従って、上記(1)の効果に加えて、アクリル板10と保護シート11との間の隙間から研磨材4等が入ることを抑制することができる。
【0045】
(3)アクリル板製品1の製造方法であって、マスク材被覆工程S42を含む。マスク材被覆工程S42では、マスク材貼付工程S3の後でありサンドブラスト工程S5の前に、マスク材2の縁部2aの全周を粘着テープ3により被覆する。従って、上記(1)と(2)の効果に加えて、粘着テープ3により被覆された保護シート11の部分に、直接研磨材4が噴射されることをより一層抑制することができる。
【0046】
(4)アクリル板製品1の製造方法であって、サンドブラスト工程S5の後であり剥離工程S10の前に、静電気除去工程S6と、洗浄工程S7と、乾燥工程S8と、を含む。静電気除去工程S6では、アクリル板10に帯電イオンを吹き付けて、アクリル板10の静電気を除去する。洗浄工程S7では、静電気除去工程S6の後、アクリル板10を水で洗浄する。乾燥工程S8では、洗浄工程S7の後、保護シート11を乾燥させる。従って、上記(1)~(3)の効果に加えて、保護シート11が剥離された際に、アクリル板10に傷と跡がつくことを抑制することができる。
【0047】
(5)アクリル板製品1の製造方法であって、曲げ加工工程S9を含む。曲げ加工工程S9では、サンドブラスト工程S5の後であり剥離工程S10の前(実施例では乾燥工程S8の後)に、アクリル板10を
図1のケース枠の形状(所定の形状)に曲げる。従って、上記(4)の効果に加えて、曲げ加工工程S9のときにアクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。
【0048】
(6)アクリル板製品1の製造方法であって、塗布工程S11を含む。塗布工程S11では、剥離工程S10の後、アクリル板10に帯電防止剤を塗布する。従って、上記(4)と(5)の効果に加えて、アクリル板10に帯電防止剤を塗布する際、研磨材4によりアクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。
【0049】
次に、
図2~
図8を参照して、上記実施例の別の変形例を示す。なお、実施例と同様の構成はその説明を省略または簡略化する。
【0050】
変形例におけるアクリル板製品1は、
図8に示すように、例えばパーテーション200として使用される。変形例におけるパーテーション200は、対面式の会議室や受付の机の上に設置される。変形例におけるアクリル板製品1は、パーテーション200のうち、飛沫ガードとして用いられる部分である。アクリル板製品1の表面1aには、図柄1cが彫刻されず、アクリル板製品1の裏面1bには、サンドブラスト加工により図柄1c(文字、図形または記号等)が彫刻される(装飾される)。図柄1cは、アクリル板製品1の裏面1bの四つの隅角部(四隅)に彫刻されている。なお、
図1の図柄1cは、市松模様であるが、これに限られない。
【0051】
次に、
図2を参照して、アクリル板製品1の製造方法を説明する。なお、実施例と同様の工程については、その説明(
図3~
図7参照)を省略する。また、本変形例のパーテーション200は、曲げ加工工程S9と塗布工程S11を行わず、平板状の状態にてアクリル板10として出荷するものとする。以下において、剥離工程S10が終了した後のものを「アクリル板製品1」と記載し、剥離工程S10が終了する前のものを「アクリル板10」と記載する。アクリル板10は、アクリル樹脂が板状に成形されたもの(押出板)であり、変形例では透明である。
【0052】
まず、アクリル板10は、
図2に示す切断工程S1から乾燥工程S8までの順番にて一人の作業者(一つの業者)により製造される。つまり、作業者は、アクリル板10について、曲げ加工工程S9から組立工程S12までは行わない。そして、乾燥工程S8が終了した後、作業者は、保護シート11とマスク材2と粘着テープ3を剥離せずに、販売者やパーテーション200の設置業者等(以下、販売者等と記載する。)へアクリル板10を出荷する。
【0053】
剥離工程S10において、乾燥工程S8の後であり組立工程S12の前に、アクリル板10の使用者やパーテーション200の設置業者等(以下、使用者等と記載する。)により、アクリル板10から、粘着テープ3とマスク材2と保護シート11が剥離される。組立工程S12において、剥離工程S10の後、
図8に示すように、使用者等により、アクリル板製品1に脚部201が取り付けられ、パーテーション200が完成される。このように、変形例では、作業者と使用者等により、
図2に示す切断工程S1から乾燥工程S8まで、剥離工程S10、および組立工程S12が行われる。つまり、複数の者により、工程が行われれば良い。剥離工程S10は、組立工程S12の直前に使用者等により行われることが好ましい。
【0054】
次に、変形例の作用を説明する。
【0055】
変形例では、アクリル板製品1は、保護シート11と、マスク材2と、図柄1cと、を有する。マスク材2は、保護シート11の上から部分的に貼付されている。図柄1cは、マスク材2に向かって研磨材4を噴射することにより形成されている。即ち、マスク材2は、直接アクリル板10上に貼付されておらず、保護シート11の上から貼付されている。このため、保護シート11が剥離されれば、マスク材2は保護シート11と一緒に剥離される。例えば、剥離工程S10は、乾燥工程S8の後であり組立工程S12の前に、アクリル板10の使用者等により行われる。従って、マスク材2の剥離時にアクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。
【0056】
加えて、作業者により、保護シート11がアクリル板10の両面(表面10aと裏面10b)に貼付された状態にて、販売者等へアクリル板10が出荷される。従って、輸送の途中にアクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。また、使用者等が剥離工程S10を行うまではアクリル板10に傷がつくことを抑制することができる。
【0057】
変形例では、アクリル板製品1は、粘着テープ3を有する。粘着テープ3により、保護シート11の縁部11aの全周およびマスク材2の縁部2aの全周は被覆されている。即ち、上記のような輸送の途中や使用者等が剥離工程S10を行うまでは、人為が加わらない(自然の)状態にて、保護シート11がアクリル板10から剥離することを抑制することができる。また、上記のような輸送の途中や使用者等が剥離工程S10を行うまでは、人為が加わらない(自然の)状態にて、マスク材2が保護シート11から剥離することを抑制することができる。従って、上記のような輸送の途中や使用者等が剥離工程S10を行うまでは、人為が加わらない(自然の)状態にて、保護シート11とマスク材2が剥離することを抑制することができる(剥離補償)。
【0058】
加えて、保護シート11とマスク材2が剥離することを抑制することができるので、輸送の途中にアクリル板10に傷がつくことをより一層抑制することができる。また、粘着テープ3によって保護シート11の縁部11aの全周が被覆されていることにより、アクリル板10の側面10cに傷がつくことを抑制することができる。
【0059】
変形例では、図柄1cは、アクリル板製品1の裏面1bの四つの隅角部に彫刻されている。ここで、アクリル板10は、透明性がガラス板よりも高いため、パーテーション200に用いた場合、人がパーテーション200に接触したり、パーテーション200への接触によりパーテーション200を破損させたり、するおそれがある。これに対し、変形例では、図柄1cは、アクリル板製品1の裏面1bの四つの隅角部に彫刻されている。これにより、人は、アクリル板製品1の外形形状を認識することができる。従って、人がパーテーション200に接触したり、パーテーション200への接触によりパーテーション200を破損させたり、することを抑制することができる。また、アクリル板製品1の裏面1bの縁に沿って、図柄1cが彫刻されても良い。これにより、四つの隅角部に図柄1cが彫刻される場合よりも、縁に沿って図柄1cが彫刻された場合の方が、アクリル板製品1の外形形状に対する人の認識度が向上する。つまり、人は、アクリル板製品1の外形形状を、より一層認識することができる。このため、人がパーテーション200に接触したり、パーテーション200への接触によりパーテーション200を破損させたり、することをより一層抑制することができる。なお、図柄1cは、四つの隅角部または縁に沿ったものに限らず、アクリル板製品1の中央部等の別の位置に彫刻されても良い。このように図柄1cが彫刻されても、人がパーテーション200に接触したり、パーテーション200への接触によりパーテーション200を破損させたり、することを抑制することができる。
【0060】
以上説明したように、変形例のアクリル板製品1にあっては、下記に列挙する効果が得られる。なお、アクリル板製品1の製造方法は、実施例のうち切断工程S1から乾燥工程S8までと同様の製造方法により製造されることで、実施例の(1)~(4)の効果も併せて得られる。
【0061】
(7)アクリル板10は、保護シート11と、マスク材2と、図柄1cと、を有する。マスク材2は、保護シート11の上から部分的に貼付した。図柄1cは、マスク材2に向かって研磨材4を噴射することにより形成した。従って、マスク材2の剥離時にアクリル板10に傷がつくことを抑制するアクリル板10を提供することができる。
【0062】
(8)アクリル板10は、粘着テープ3を有する。粘着テープ3は、保護シート11の縁部11aとマスク材2の縁部2aのうち両方の全周を被覆した。従って、上記(7)の効果に加えて、輸送の途中や使用者等が剥離工程S10を行うまでは、人為が加わらない(自然の)状態にて、保護シート11とマスク材2が剥離することを抑制することができる。
【0063】
以上、本開示のアクリル板製品1の製造方法を実施例と変形例に基づき説明し、本開示のアクリル板10を変形例に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例と変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0064】
実施例では、一人の作業者(一つの業者)が切断工程S1から組立工程S12までを行う例を示したが、これに限られない。つまり、
図2に示す工程において、複数の業者に分業されても良い。例えば、一つの業者(または一人の作業者)が切断工程S1から乾燥工程S8までを行い、別の業者(または別の作業者)が曲げ加工工程S9から組立工程S12まで行っても良い。このように工程を二つに分けた場合、一つの業者から別の業者へ輸送するとき、アクリル板10は、保護シート11と、マスク材2と、図柄1cと、粘着テープ3と、を有する。言い換えると、乾燥工程S8と曲げ加工工程S9との間の工程間の輸送時に、アクリル板10は、保護シート11と、マスク材2と、図柄1cと、粘着テープ3と、を有する。このため、上記(7)と(8)に記載の効果を奏することができる。なお、この場合、一つの業者が製造する物は、アクリル板製品1になる前の中間製品(半製品)となる。そして、別の業者が、中間製品のアクリル板10をアクリル板製品1(最終製品)に製造する。
【0065】
変形例では、一人の作業者(一つの業者)が切断工程S1から乾燥工程S8までを行い、使用者等が剥離工程S10と組立工程S12を行う例を示したが、これに限られない。例えば、アクリル板10について、曲げ加工が必要な場合には作業者の工程に曲げ加工工程S9を追加しても良い。このため、この例では、作業者と使用者等により、
図2に示す切断工程S1から剥離工程S10までが行われる。従って、実施例の(5)の効果が得られる。また、上記の場合のように、切断工程S1から乾燥工程S8までの工程と、曲げ加工工程S9と、を一つの業者と別の業者により行っても良い。この場合でも、上記(7)と(8)に記載の効果を奏することができる。
【0066】
実施例と変形例では、切断工程S1を含む製造方法の例を示したが、これに限られない。要するに、アクリル板10の切断が不要な場合には、切断工程S1を省略しても良い。
【0067】
実施例と変形例では、保護シート被覆工程S41とマスク材被覆工程S42を含む製造方法の例を示したが、これに限られない。例えば、保護シート被覆工程S41とマスク材被覆工程S42のうち、一方のみの工程を含む製造方法としても良い。言い換えると、アクリル板10は、保護シート11の縁部11aとマスク材2の縁部2aのうち少なくとも一方の全周を被覆した粘着テープ3を有していれば良い。そして、保護シート被覆工程S41のみを含む製造方法の場合、少なくとも上記(1)と(2)と(7)に記載の効果を奏することができる。加えて、この場合、上記(8)に記載の効果のうち、輸送の途中や使用者等(実施例の場合は作業者)が剥離工程S10を行うまでは、人為が加わらない(自然の)状態にて、保護シート11が剥離することを抑制することができる。また、マスク材被覆工程S42のみを含む製造方法の場合、少なくとも上記(1)と(3)と(7)に記載の効果を奏することができる。加えて、この場合、上記(8)に記載の効果のうち、輸送の途中や使用者等(実施例の場合は作業者)が剥離工程S10を行うまでは、人為が加わらない(自然の)状態にて、マスク材2が剥離することを抑制することができる。
【0068】
実施例と変形例では、アクリル板10は、アクリル板10の表面10aと裏面10bの両面に保護シート11が貼付された状態であり、剥離工程S10まで保護シート11は剥離せずに各工程が行われる例を示したが、これに限られない。例えば、少なくとも図柄1cが彫刻される一方の面のみ(実施例と変形例では裏面10b)に、保護シート11が貼付された状態であれば良い。そして、剥離工程S10まで、一方の面のみの保護シート11は剥離せずに各工程が行われれば良い。このため、他方の面(実施例では表面10a)の保護シート11は、剥離工程S10よりも前に剥離しても良い。このように、他方の面の保護シート11を剥離しても、少なくとも上記(1)~(4)と(7)に記載の効果を奏することができる。
【0069】
実施例と変形例では、アクリル板10は透明である例を示したが、これに限られない。アクリル板10は、不透明であっても良いし、透光性を有していても良い。透光性を有するとは、アクリル板10を通して反対側が明確に(または、まったく)認識できない状態の性質である。このようなアクリル板10であっても、作業者の意図しない傷がつくことを抑制することができる。このため、少なくとも上記(1)~(4)と(7)と(8)に記載の効果を奏することができる。
【0070】
実施例と変形例では、アクリル板10は、押出板を用いる例を示したが、これに限られない。アクリル板10は、キャスト板を用いても良い。キャスト板でも、従来のガラス板と同様に、マスク材を直接アクリル板上に貼付すると、マスク材を剥離するときにアクリル板に傷がつくおそれがある。このため、アクリル板10はキャスト板を用いても、上記(1)~(4)と(7)と(8)に記載の効果を奏することができる。
【0071】
実施例では、アクリル板製品1が、
図1のケース枠の形状である例を示したが、これに限らず、その他の形状であっても良い。また、実施例では、アクリル板10の4ヶ所が曲げ加工されているが、例えばアクリル板10の2ヶ所が曲げ加工されても良い。アクリル板10の2ヶ所が曲げ加工された場合、アクリル板製品1は例えば直方体ケースの側面のケース枠として用いることができる。なお、実施例のアクリル板製品1が平板状の状態にてケース枠として用いられる場合、曲げ加工工程S9を省略すれば良い。
【0072】
実施例と変形例では、アクリル板製品1の表面1aには、図柄1cが彫刻されず、アクリル板製品1の裏面1bには、サンドブラスト工程S5の加工により図柄1cが彫刻される例を示したが、これに限られない。例えば、アクリル板製品1の表面1aには、図柄1cが彫刻され、アクリル板製品1の裏面1bには、図柄1cが彫刻されなくても良い。要するに、アクリル板製品1の表面1aまたは裏面1bの一方の面のみに図柄1cが彫刻されても良いし、アクリル板製品1の表面1aおよび裏面1bの両面に図柄1cが彫刻されても良い。
【0073】
実施例と上記の一例では、乾燥工程S8の後に、曲げ加工工程S9が行われる例を示したが、これに限られない。例えば、曲げ加工工程S9は、実施例のサンドブラスト工程S5の後であり静電気除去工程S6の前に行っても良い。要するに、曲げ加工工程S9は、サンドブラスト工程S5の後であり剥離工程S10の前に行っても良い。このような順番にてアクリル板製品1が製造されても、上記(5)に記載の効果を奏することができる。なお、曲げ加工工程S9がサンドブラスト工程S5の後であり剥離工程S10の前に行われた場合でも、塗布工程S11は静電気除去工程S6と洗浄工程S7と乾燥工程S8と剥離工程S10の後に行われる。
【0074】
実施例と変形例では、本開示のアクリル板製品1の製造方法を、
図2に示す複数の工程を行う方法に適用する例を示したが、これに限られない。要するに、本開示のアクリル板製品1の製造方法は、マスク材形成工程S2と、マスク材貼付工程S3と、サンドブラスト工程S5と、剥離工程S10と、を含む製造方法であれば、他のアクリル板製品の製造方法に適用しても良い。他のアクリル板製品の製造方法に適用しても、少なくとも上記(1)に記載の効果を奏することができる。
【0075】
変形例では、本開示のアクリル板10を、パーテーション200に適用する例を示したが、これに限られない。要するに、本開示のアクリル板10は、保護シート11とマスク材2と図柄1cを有するものであれば、他のアクリル板に適用しても良い。他のアクリル板10に適用しても、少なくとも上記(7)に記載の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 アクリル板製品
1a アクリル板製品の表面
1b アクリル板製品の裏面
1c 図柄
10 アクリル板
10a アクリル板の表面
10b アクリル板の裏面
11 保護シート(プロテクションシート)
11a 保護シートの縁部
2 マスク材
2a マスク材の縁部
21 穴部
3 粘着テープ(マスキングテープ)
4 研磨材