(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178218
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 29/12 20060101AFI20221125BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H02K29/12
G01D5/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084844
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕章
(72)【発明者】
【氏名】枡谷 智矢
(72)【発明者】
【氏名】脇本 佳季
【テーマコード(参考)】
2F077
5H019
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077FF13
2F077FF31
2F077UU26
2F077VV02
5H019AA04
5H019BB01
5H019BB06
5H019BB15
5H019BB17
5H019CC03
5H019DD07
5H019FF01
5H019FF03
(57)【要約】
【課題】回転電機において、渦電流を利用するセンサの検出結果に対する周辺の金属部材による影響を低減する。
【解決手段】ロータと、ロータを回転可能に支持する非回転部と、ロータと一体に回転するセンサロータと、センサロータに軸方向に対向するコイルを有し、コイルへの通電によりセンサロータに渦電流を発生させることでロータの回転に係るパラメータの値に応じた電気信号を生成するセンシング部と、非回転部に固定され、センシング部を支持するセンサ支持部と、を備え、センサ支持部は、高透磁率材料又は金属材料を含む材料により形成され、センシング部を覆う、回転電機が開示される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
ロータを回転可能に支持する非回転部と、
前記ロータと一体に回転するセンサロータと、
前記センサロータに軸方向に対向するコイルを有し、前記コイルへの通電により前記センサロータに渦電流を発生させることで前記ロータの回転に係るパラメータの値に応じた電気信号を生成するセンシング部と、
前記非回転部に固定され、前記センシング部を支持するセンサ支持部と、を備え、
前記センサ支持部は、高透磁率材料又は金属材料を含む材料により形成され、前記センシング部を覆う、回転電機。
【請求項2】
前記センサ支持部は、前記センシング部における前記センサロータに対向する側が開口する態様で、前記センシング部を部分的に覆う、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記センサ支持部は、前記センシング部における前記センサロータに対向する側とは逆側を覆うとともに、前記センシング部における軸方向に交差する各方向の側を覆う、請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記センサ支持部は、高透磁率材料を含む樹脂材料により形成された樹脂ケースの形態、金属ケースの形態、外周部又は内周部を金属メッキした樹脂ケースの形態、外周部又は内周部に金属部材が固定された樹脂ケースの形態、及び、金属材料の層と高透磁率材料の層を有する樹脂ケースの形態、のうちのいずれか1つの形態である、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記センシング部は、前記コイルが実装された基板の形態であり、
前記センサ支持部は、前記センシング部と一体化された形態である、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
センシング部のコイルで発生させた磁界によりセンサロータにおいて発生する渦電流を利用して、ロータの回転に係るパラメータ(例えば回転角度)の値に応じた電気信号をセンシング部にて生成する回転検出器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機においては、ケース内の限られた空間に多様な構成要素が配置されているので、センシング部の周辺にセンサロータ以外の金属部材が位置する場合も多い。従って、渦電流を利用するセンサの検出結果は、このような周辺の金属部材による影響を受けやすくなる。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、回転電機において、渦電流を利用するセンサの検出結果に対する周辺の金属部材による影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ロータと、
ロータを回転可能に支持する非回転部と、
前記ロータと一体に回転するセンサロータと、
前記センサロータに軸方向に対向するコイルを有し、前記コイルへの通電により前記センサロータに渦電流を発生させることで前記ロータの回転に係るパラメータの値に応じた電気信号を生成するセンシング部と、
前記非回転部に固定され、前記センシング部を支持するセンサ支持部と、を備え、
前記センサ支持部は、高透磁率材料又は金属材料を含む材料により形成され、前記センシング部を覆う、回転電機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、回転電機において、渦電流を利用するセンサの検出結果に対する周辺の金属部材による影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本実施例によるモータの断面構造を概略的に示す断面図である。
【
図2A】本実施例による回転センサにおけるセンサロータとセンシング部を示す斜視図である。
【
図2B】本実施例による回転センサにおけるセンサ支持部を示す斜視図である。
【
図3】本実施例による回転センサのセンシング部とセンサロータとの関係を示す図である。
【
図4】本実施例によるセンサロータにおけるセンシング部と軸方向に対向する部分を、軸方向に視て示す図である。
【
図5】本実施例によるセンシング部により生成されるセンサ出力(電気信号)の波形を説明する概略図である。
【
図7A】本実施例による回転センサの一部を示す概略的な断面図である。
【
図7B】本実施例による回転センサにおけるセンサ出力の波形の特徴を説明する概略図である。
【
図8】他の実施例によるセンサ支持部を説明する概略的な断面図である。
【
図9】更なる他の実施例によるセンサ支持部を説明する概略的な断面図である。
【
図10】更なる他の実施例によるセンサ支持部を説明する概略的な断面図である。
【
図11】更なる他の実施例によるセンサ支持部を説明する概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
図1Aは、本実施例によるモータ1の断面構造を概略的に示す断面図である。
図1Bは、
図1AのQ1部の拡大図である。
【0011】
図1Aには、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
【0012】
また、
図1Aには、回転軸12の方向(すなわち軸方向)に平行なX方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。以下の説明において、X1側とX2側の各用語は、相対的な位置関係を表すために用いられる場合がある。
【0013】
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0014】
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
【0015】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側の表面に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータコア32は、ロータシャフト34に焼き嵌め又はその類により固定されてよい。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
【0016】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなる。ロータコア32の磁石孔324には、永久磁石321が埋め込まれる。あるいは、永久磁石321のような永久磁石は、ロータコア32の外周面に埋め込まれてもよい。なお、永久磁石321の配列等は任意である。
【0017】
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられる。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32の軸方向の端面を覆う。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32からの永久磁石321の離脱を防止する離脱防止機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスをなくす機能)を有してよい。
【0018】
エンドプレート35A、35Bは、非磁性材料により形成される。エンドプレート35A、35Bは、好ましくは、アルミにより形成される。この場合、切削が容易となり、エンドプレート35A、35Bによるロータ30のアンバランスの調整機能を効果的に実現できる。ただし、変形例では、エンドプレート35A、35Bは、ステンレス鋼等により形成されてもよい。
【0019】
ロータシャフト34は、
図1Aに示すように、中空部34Aを有する。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、軸方向の両側で軸方向に開口してよい。中空部34Aは、冷却用の油が通る油路801として機能してもよい。
【0020】
なお、本実施例において、ロータコア32の磁極構成は、任意である。例えば、磁極数が8極又は8極以外であってもよいし、永久磁石321に代えて又は加えて、各磁極を形成する対の永久磁石が、径方向外側に向かうほど周方向の距離が広がる態様で配置されてもよい。また、ロータコア32は、フラックスバリアや油路等が形成されてもよい。
【0021】
また、本実施例では、ロータシャフト34は、中空部34Aを有するが、中実であってよい。また、ロータシャフト34は、2パーツ以上が結合されることで形成されてもよい。また、モータ1は、油に代えて又は加えて、冷却水(例えばライフロングクーラント)により冷却されてもよい。また、本実施例では、モータ1は、インナロータタイプであるが、アウタロータタイプであってもよい。
【0022】
本実施例では、モータ1は、ロータ30の回転に係るパラメータの値を検出する回転センサ80を有する。ロータ30の回転に係るパラメータは、任意であり、例えば、ロータ30の回転の有無や、ロータ30の所定基準角度からの回転角度、回転速度、磁極位置等であってよい。以下では、一例として、回転センサ80は、ロータ30の回転角度を検出するものとする。
【0023】
回転センサ80は、ロータシャフト34の一端側に設けられる。本実施例では、回転センサ80は、
図1Aに示すように、ロータシャフト34のX1側端部に設けられるが、X2側端部に設けられてもよい。
【0024】
図2Aは、回転センサ80におけるセンサロータ81とセンシング部82をX1側から視て示す斜視図である。
図2Bは、センサ支持部84をX2側から視て概略的に示す斜視図である。なお、
図2A(後出の
図3も同様)には、センサ支持部84の図示が省略されている。
【0025】
回転センサ80は、センサロータ81と、センシング部82と、センサ支持部84とを備える。
【0026】
センサロータ81は、導体により形成され、ロータ30と一体に回転する。センサロータ81は、回転軸12を中心とした円形状の中心孔811を有する円環状の形態である。センサロータ81は、その中心孔811にロータシャフト34が通されることで、ロータシャフト34とともに回転するように取り付けられてよい。例えば、センサロータ81は、ロータシャフト34に径方向の凹部又は凸部が形成され、センサロータ81の中心孔811の内周縁に、ロータシャフト34の径方向の凹部又は凸部に嵌合する径方向の凸部又は凹部が形成されてもよい。
【0027】
センサロータ81は、周期的に変化する外径を有する。これにより、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する。所定角度は、設計時に、磁極数等に応じて適宜決定されてよい。本実施例では、センサロータ81は、1周あたり、8つの径方向の凸部と凹部とを交互に有する。この場合、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに周期的に変化する。
【0028】
なお、変形例では、センサロータ81は、周期的に変化する外径に代えて又は加えて、周期的に変化する厚み(軸方向の厚み)を有してもよい。この場合、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での厚みが、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する。
【0029】
センシング部82は、基板820の形態であり、センサロータ81に軸方向に対向しつつ近接するように配置される。基板820は、
図2Aに示すように、軸方向に視て円弧状であってよく、全周のうちの一部の周区間のみに延在してよい。また、基板820は円弧状だけでなく、全周に延在してもよい。センシング部82は、センサ支持部84(
図1B参照)によりモータ1の非回転部(本実施例ではモータハウジング10)に支持される。
【0030】
センシング部82は、渦電流を利用して、ロータ30の回転角度を検出する。
図3から
図5は、センシング部82による検出原理の説明図である。
図3は、回転センサ80のセンシング部82とセンサロータ81との関係を示す図であり、
図4は、センサロータ81におけるセンシング部82と軸方向に対向する部分を、軸方向に視て示す図である。
図5は、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の波形を説明する概略図である。
図5では、横軸にロータ30の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形が模式的に示されている。なお、
図5(後出の
図6C及び
図7Bについても同様)では、ロータ30の回転角度における所定角度(本実施例では45度)分の時系列波形が模式的に示されている。
【0031】
センシング部82は、
図2Aに示すように、センサコイル821及び処理回路部822が実装された基板820の形態であってよい。なお、処理回路部822の機能の一部又は全部は、外部の制御装置(図示せず)により実現されてもよい。
【0032】
センサコイル821は、例えば
図3に示すように、基板820の両側の表面に形成されてもよい。なお、変形例では、センサコイル821は、基板820の両側の表面に代えて又は加えて、基板820の内層に形成されてもよい。センサコイル821は、例えばプリントされた導体により形成されてよい。センサコイル821は、X方向に平行な中心軸Oまわりに巻回されてなる。
【0033】
処理回路部822は、センサコイル821への通電によりセンサロータ81に渦電流を発生させる。具体的には、
図3に模式的に示すように、センサコイル821が通電されると、センサコイル821を貫く磁束B1が発生する。センサコイル821を貫く磁束B1は、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の表面に接触すると、センサロータ81の表面に渦電流が発生する。
図4には、渦電流の発生態様が矢印Ieで模式的に示されている。なお、
図4においては特定の向きの渦電流が模式的に示されているが、渦電流の向きは、センサコイル821を流れる電流の向きに応じて決まる。渦電流は、磁束B1を減らす磁束を発生させる向きに生じる。従って、渦電流に起因して、磁束B1を減らす磁束B2(図示せず)が発生する。磁束B2の大きさは、渦電流の大きさに比例する。渦電流の大きさは、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積が増加するほど大きくなる。本実施例では、上述したようにセンサロータ81は、周期的に変化する外径を有するので、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積は、ロータ30の回転角度が変化すると変化する。より具体的には、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積は、ロータ30の回転角度が変化すると、正弦波状に変化する。このため、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、
図5に示すように、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに、1周期の正弦波を描く。従って、このようなセンサ出力(電気信号)に基づいて、ロータ30の回転角度を検出できる。
【0034】
センサ支持部84は、モータ1の非回転部(本実施例ではモータハウジング10)に固定され(
図1A及び
図1Bに模式的に図示)、センシング部82を支持する。センサ支持部84は、接着剤や固定具、嵌合のような任意の手段で、センシング部82を支持してもよい。本実施例では、一例として、センサ支持部84は、例えば、封止用のポッティング樹脂部86を介してセンシング部82を支持する。この場合、ポッティング樹脂部86は、センシング部82とセンサ支持部84とに接合することで、センシング部82とセンサ支持部84とを一体化する。この場合、センシング部82とセンサ支持部84とが別々の部品である場合に比べて、部品点数を低減できる。また、モータハウジング10にセンサ支持部84を組み付けることでセンシング部82の組み付けが実現されるので、センシング部82とセンサ支持部84とが別々の部品である場合に比べて、組付け性が良好である。ポッティング樹脂部86は、センサ支持部84のX2側の開口から充填されてよい。なお、ポッティング樹脂部86を形成する樹脂材料は、好ましくは、後述する高透磁率材料又は金属材料を含まない。
【0035】
センサ支持部84は、好ましくは、センサロータ81にセンシング部82が軸方向に近接するようにセンシング部82を支持する。この場合、センサ支持部84は、センサロータ81とセンシング部82との間の軸方向の位置関係として、センサロータ81とセンシング部82との間の軸方向の隙間が、可動部と固定部との間に必要な最小クリアランスに対応するような位置関係を実現してもよい。
【0036】
本実施例では、センサ支持部84は、センシング部82を支持する機能に加えて、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)に対する周辺金属の影響を低減する機能(以下、「周辺金属からの影響低減機能」とも称する)を有する。周辺金属とは、回転センサ80のセンシング部82の周辺に配置される部材や部品に含まれる金属材料を表す。
【0037】
本実施例では、センサ支持部84は、周辺金属からの影響低減機能を高めるために、高透磁率材料又は金属材料(高透磁率材料でない金属材料、以下同様)を含む材料により形成される。高透磁率材料は、比透磁率(μ/μ0、ここで、μ=透磁率、μ0=真空の透磁率)が、例えば4000以上の材料であり、Fe-Ni系合金や、Mo、Cu、Cr等を添加した多元系合金等であってよい。高透磁率材料を含む材料は、例えば、高透磁率材料のみを含む材料であってもよいし、高透磁率材料を含む樹脂材料であってもよい。金属材料は、比較的導電性の高い金属材料であり、CuやAl等であってよい。金属材料を含む材料は、金属材料のみを含む材料であってもよいし、金属材料を含む樹脂材料であってもよい。以下では、説明上、高透磁率材料を含む材料を、単に「高透磁率材料」とも称し、金属材料を含む材料を、単に「金属材料」とも称する。
【0038】
また、本実施例では、センサ支持部84は、周辺金属からの影響低減機能を高めるために、センシング部82を覆うケースの形態である。具体的には、センサ支持部84は、X2側(センサロータ81に対向する側)が開口したボックス状のケースの形態である。
図2Bに示すように、センサ支持部84は、センシング部82のX1側を覆う底面部841と、センシング部82の全周を囲む周壁部842とを含む。なお、周壁部842は、全周にわたって一定の高さ(底面部841からの長さ)を有してよい。
【0039】
センサ支持部84の周辺金属からの影響低減機能及びそれに関連する詳細な構成は、
図6A以降を参照して、以下で説明する。
【0040】
図6Aから
図7Bを参照して、比較例と対比しつつ、周辺金属からの影響低減機能について説明する。
【0041】
図6Aから
図6Cは、比較例の説明図であり、
図6Aは、比較例による回転センサ80’を概略的に示す断面図であり、
図1Aと同様、回転軸12を含む平面で切断した際の断面図である。なお、
図6Aには、周辺金属601、602が模式的に示されている。
図6Bは、比較例におけるセンサ出力(電気信号)に対する周辺金属の影響の説明図であり、
図6Aの断面図において、磁束の流れを模式的に示す図である。なお、
図6B(以下の
図7Aも同様)で示す磁束の流れは、周辺金属601、602やセンサロータ81の影響を受ける前の状態で模式的に示されている。なお、
図6Bでは、比較例による回転センサ80’のセンサ支持部84’の図示は省略されている。
図6Cは、比較例におけるセンサ出力(電気信号)の波形を説明する概略図である。
図6Cでは、前出の
図5と同様、横軸にロータ30の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、回転センサ80’により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形704、706が、基準の時系列波形702と併せて模式的に示されている。
【0042】
比較例による回転センサ80’は、本実施例による回転センサ80に対して、センサ支持部84がセンサ支持部84’で置換された点が主に異なる。
【0043】
センサ支持部84’は、高透磁率材料又は金属材料を実質的に一切含まない樹脂ケースの形態であり、本実施例によるセンサ支持部84に対して材料が異なる。
【0044】
ここで、樹脂材料は、透磁率が有意に低く、かつ、導電性が有意に低いので、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)に対して実質的に影響しない。従って、
図6Bに示すように、周辺金属601、602による影響については、センサ支持部84’を考慮することなく、説明できる。
【0045】
比較例の場合、
図6A及び
図6Bに模式的に示すように周辺金属601、602が存在すると、
図6Cに模式的に示すように、周辺金属601、602の位置や大きさに応じて、センサ出力に対するオフセットが多様の態様で生じる(矢印R500、R501参照)。
【0046】
具体的には、センサコイル821への通電により生じる磁束B1が周辺金属601、602に至ると、
図3を参照して上述した原理と同様の原理で、周辺金属601、602に渦電流が生じる。このような渦電流は、同様に、磁束B1を打ち消す磁束を発生させる方向に生じる。この結果、センサ出力にオフセット(基準の時系列波形702に対するオフセット)が生じる。この場合、基準の時系列波形702に対するオフセットは、周辺金属601、602の位置や大きさに応じて変化する。
【0047】
このような基準の時系列波形702に対するオフセットは、周辺金属601、602が固定物である場合は、固定値となるので、補正可能である。しかしながら、周辺金属601、602の有無や、配置、位置、大きさ等が変化しうる搭載条件では、搭載条件ごとに、補正値を適合する必要が生じる。すなわち、比較例による回転センサ80’は、個々の搭載条件ごとに補正値を適合する必要性が高く、それ故に、汎用性が低くなる。
【0048】
これに対して、本実施例によれば、センサ支持部84は、上述したように、高透磁率材料又は金属材料により形成され、かつ、センシング部82を覆うことで、周辺金属からの影響低減機能を有する。これにより、周辺金属601、602の有無や、配置、位置、大きさ等が変化しうる搭載条件においても、基準の時系列波形702に対するオフセットを略一定値に維持することが可能である。これにより、汎用性の高い回転センサ80を実現できる。
【0049】
図7A及び
図7Bは、本実施例の場合の説明図であり、
図7Aは、センサ出力(電気信号)に対する周辺金属の影響の説明図であり、
図6Bと同様の断面視において、磁束の流れを模式的に示す図である。なお、
図7Aで示す磁束の流れは、周辺金属601、602や、センサロータ81、センサ支持部84等の影響を受ける前の状態で模式的に示されている。
図7Bは、本実施例によるセンサ出力(電気信号)の波形を説明する概略図であり、前出の
図5と同様、横軸にロータ30の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、本実施例の回転センサ80により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形700が、基準の時系列波形702と併せて模式的に示されている。
【0050】
高透磁率材料は、樹脂材料とは異なり、透磁率が有意に高い。従って、センサ支持部84が高透磁率材料により形成される場合、センサ支持部84は、内外からの磁束をシールドする磁気シールドとして機能する。
【0051】
具体的には、センサコイル821への通電により生じるセンサコイル821を貫く磁束B1は、センサ支持部84を通過しない磁束に実質的に限定される。このため、例えば
図7Aに示すような磁束B1のうちの、磁束線B1-2、B1-3のような磁束線に係る磁束は、センサ支持部84内を流れる。このため、磁束線B1-2、B1-3のような磁束線に係る磁束は、周辺金属601、602に渦電流を発生させたとしても、センサ出力に影響し漏れ磁束に対しても同様に機能し、かかる漏れ磁束は、センサ支持部84内を流れる。このため、周辺の磁気回路からの漏れ磁束が発生したとしても、センサ出力に影響しない。
【0052】
このようにして、本実施例によれば、センサ支持部84が高透磁率材料により形成される場合、センサ支持部84が磁気シールドとして機能することで、周辺金属601、602の有無や、配置、位置、大きさ等が変化しうる搭載条件においても、基準の時系列波形702に対するオフセットを略一定値(0又は0に近い一定値)に維持することが可能である。
【0053】
金属材料は、樹脂材料とは異なり、有意な導電性を有する。従って、センサ支持部84が金属材料により形成される場合、センサ支持部84は、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)に対して影響する反面、周辺金属からの影響を相殺する機能を有することになる。
【0054】
具体的には、センサコイル821への通電により生じる磁束B1は、常にセンサ支持部84の金属材料により一定の影響を受ける。すなわち、センサコイル821への通電により生じる磁束B1は、センサ支持部84において渦電流を発生させる。このような渦電流は、磁束B1を打ち消す磁束を発生させる方向に生じる。この結果、
図7Bにおける時系列波形700に示すように、センサ出力にオフセット(基準の時系列波形702に対するオフセット)が生じる(矢印R700参照)。この場合、基準の時系列波形702に対するオフセットは、センサ支持部84の位置や大きさに応じて変化するが、同じ設計(例えば同じ部品番号)の回転センサ80であれば一定である。
【0055】
他方、センサコイル821への通電により生じる磁束B1が周辺金属601、602に至ると、
図3を参照して上述した原理と同様の原理で、周辺金属601、602に渦電流が生じる。このような渦電流は、同様に、磁束B1を打ち消す磁束を発生させる方向に生じる。この点は、上述した比較例と同様である。
【0056】
本実施例では、周辺金属601、602のような周辺金属において生じる渦電流に起因した磁束の影響は、センサ支持部84において相殺される。具体的には、周辺金属において、例えば磁束B1を減らす磁束B3(図示せず)が発生したとすると、その磁束B3分の変化に起因して、センサ支持部84において渦電流の変化が発生する。例えば、周辺金属601、602のような周辺金属が存在しなかった場合にセンサ支持部84において生じる渦電流を、基準渦電流Irefとすると、磁束B3分の変化に起因して、基準渦電流Irefに対して変化が発生する。このような渦電流の変化は、磁束B3を打ち消す磁束を発生させる方向に生じる。このようにして、センサ支持部84における渦電流の変化(基準渦電流Irefに対する変化)によって、周辺金属601、602のような周辺金属において生じる渦電流に起因した磁束の影響が打ち消される。
【0057】
このようにして、本実施例によれば、センサ支持部84が金属材料により形成される場合、周辺金属601、602の有無や、配置、位置、大きさ等が変化しうる搭載条件においても、基準の時系列波形702に対するオフセットを略一定値に維持することが可能である。
【0058】
以上のように、本実施例によれば、センサ支持部84が高透磁率材料又は金属材料により形成されるので、周辺の金属部材による影響を受け難いセンサ構成(回転センサ80に係るセンサ構成)を実現できる。従って、周辺の金属部材と回転センサ80とを比較的近接した位置関係で配置することも可能であり、回転センサ80の配置自由度を高めることができる。また、周辺の金属部材と回転センサ80とを比較的近接した位置関係で配置することで、省スペース化を図ることもできる。
【0059】
ところで、本実施例によるセンサ支持部84は、センシング部82を覆うケースの形態であり、上述したように、X2側(センサロータ81に対向する側)が開口している。これにより、センシング部82による本来のセンシング機能(すなわち、
図5のセンサ出力を生成する機能)を阻害しない態様で、上述した周辺金属からの影響低減機能を高めることができる。
【0060】
また、本実施例によるセンサ支持部84は、X2側(センサロータ81に対向する側)が開口しているので、センシング部82とセンサロータ81との間の軸方向の距離の最小化を図り、センシング部82によるセンシング機能を高めることも可能となる。なお、
図6Aに示した比較例の場合、センサ支持部84’は、X2側(センサロータ81に対向する側)が開口しておらず、センシング部82とセンサロータ81との間の軸方向の距離が比較的大きくなり、センシング部82によるセンシング機能を高める観点からも不利となる。
【0061】
次に、
図8以降を参照して、上述した実施例のセンサ支持部84に代えて実現されてもよい他の実施例によるセンサ支持部84Aから84Dについて説明する。以下の説明において、上述した実施例と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0062】
図8は、他の実施例によるセンサ支持部84Aを説明する概略的な断面図であり、回転軸12を含む平面で切断した際の断面図である。
【0063】
本実施例によるセンサ支持部84Aは、上述した実施例によるセンサ支持部84に対して、底面部841に配線用孔8411を有する点が異なる。配線用孔8411は、
図8に模式的に示すように、センシング部82からの配線90を通すために利用できる。なお、センシング部82からの配線90は、図示しない制御装置に電気的に接続されてよい。
【0064】
このような
図8に示す実施例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。特に、
図8に示す実施例では、センシング部82からの配線90の配索をX1側で実現できるので、例えばセンシング部82からの配線90の配索をX2側(センサロータ81に対向する側)で実現する場合に比べて、センシング部82とセンサロータ81との間の軸方向の距離を短くでき、センシング部82によるセンシング機能を更に高めることも可能となる。
【0065】
なお、本実施例においては、配線用孔8411は、底面部841に設けられるが、周壁部842に設けられてもよい。
【0066】
図9は、更なる他の実施例によるセンサ支持部84Bを説明する概略的な断面図であり、回転軸12を含む平面で切断した際の断面図である。
【0067】
本実施例によるセンサ支持部84Bは、上述した実施例によるセンサ支持部84に対して、金属材料の利用態様が異なる。具体的には、センサ支持部84Bは、樹脂材料により形成された本体部848Bと、本体部848Bの内周部(底面部841BのX2側表面、及び、周壁部842Bの内周側表面)に形成された金属メッキ層849Bとを含む。すなわち、センサ支持部84Bは、内周部を金属メッキした樹脂ケースの形態である。この場合、金属メッキ層849Bは、上述した実施例による金属材料により形成されたセンサ支持部84と同様の機能を果たす。従って、
図9に示す実施例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、本実施例においては、金属メッキ層849Bは、本体部848Bの内周部に形成されているが、これに代えて又は加えて、本体部848Bの外周部(底面部841BのX1側表面、及び、周壁部842Bの外周側表面)に形成されてもよい。
【0069】
図10は、更なる他の実施例によるセンサ支持部84Cを説明する概略的な断面図であり、回転軸12を含む平面で切断した際の断面図である。
【0070】
本実施例によるセンサ支持部84Cは、上述した実施例によるセンサ支持部84に対して、金属材料の利用態様が異なる。具体的には、センサ支持部84Cは、樹脂材料により形成された本体部848Cと、本体部848Cの外周部(底面部841CのX1側表面、及び、周壁部842Cの外周側表面)に形成された金属部材849Cとを含む。すなわち、センサ支持部84Cは、外周部に金属部材849Cが固定された樹脂ケースの形態である。金属部材849Cは、本体部848Cと一体に成形されてもよいし、接着剤等により後付けされてもよい。金属部材849Cは、上述した実施例による金属材料により形成されたセンサ支持部84と同様の機能を果たす。従って、
図10に示す実施例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、本実施例においては、金属部材849Cは、本体部848Cの外周部に配置されているが、これに代えて又は加えて、本体部848Cの内周部(底面部841CのX2側表面、及び、周壁部842Cの内周側表面)に配置されてもよい。また、センサ支持部84Cがインサート成形等により形成される場合、金属部材849Cの一部又は全部は、内層として埋設されてもよい。
【0072】
図11は、更なる他の実施例によるセンサ支持部84Dを説明する概略的な断面図であり、回転軸12を含む平面で切断した際の断面図である。
【0073】
本実施例によるセンサ支持部84Dは、上述した実施例によるセンサ支持部84に対して、高透磁率材料及び金属材料の利用態様が異なる。具体的には、センサ支持部84Dは、樹脂材料により形成された本体部848Dと、金属材料の層8491Dと、高透磁率材料の層8492Dとを含む。すなわち、センサ支持部84Dは、金属材料の層8491Dと高透磁率材料の層8492Dを有する樹脂ケースの形態である。
【0074】
金属材料の層8491Dは、上述した金属メッキ層849Bと同様であってもよいし、上述した金属部材849Cと同様に、本体部848Dと一体に成形されてもよいし、接着剤等により後付けされてもよい。金属材料の層8491Dは、上述した実施例による金属材料により形成されたセンサ支持部84と同様の機能を果たす。従って、
図11に示す実施例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0075】
高透磁率材料の層8492Dは、2色成形等を利用して本体部848Dと一体に成形されてもよいし、接着剤等により後付けされてもよい。高透磁率材料の層8492Dは、上述した実施例による高透磁率材料により形成されたセンサ支持部84と同様の機能を果たす。従って、
図11に示す実施例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0076】
特に
図11に示す実施例によれば、高透磁率材料の層8492Dがセンシング部82に近い側に配置され、金属材料の層8491Dがセンシング部82から遠い側に配置されている。これにより、高透磁率材料の層8492Dによって、金属材料の層8491Dに起因したセンサ出力のオフセット(略一定のオフセット)をなくすことができる。また、金属材料の層8491Dによって、外部から到来しうる漏れ磁束の影響を金属材料の層8491D内の渦電流により低減できるので、高透磁率材料の層8492Dの薄肉化が可能である。ただし、変形例では、高透磁率材料の層8492Dがセンシング部82に遠い側に配置され、金属材料の層8491Dがセンシング部82から近い側に配置されてもよい。
【0077】
なお、本実施例においては、金属材料の層8491D及び高透磁率材料の層8492Dは、本体部848Dの内周部に形成されているが、これに代えて又は加えて、金属材料の層8491D及び/又は高透磁率材料の層8492Dは、本体部848Dの外周部(底面部841DのX1側表面、及び、周壁部842Dの外周側表面)に形成されてもよい。
【0078】
なお、
図8から
図11に示した各種実施例は、適宜、組み合わせて実現することも可能である。例えば、
図8に示したような配線用孔8411は、
図9から
図11に示した各種実施例において利用されてもよい。
【0079】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【符号の説明】
【0080】
1・・・モータ(回転電機)、10・・・モータハウジング(非回転部)、30・・・ロータ、81・・・センサロータ、82・・・センシング部、820・・・基板、821・・・センサコイル(コイル)、84、84A~84D・・・センサ支持部