(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178220
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】三次元立体構造体
(51)【国際特許分類】
A47B 13/00 20060101AFI20221125BHJP
A47B 17/00 20060101ALI20221125BHJP
A47B 96/04 20060101ALI20221125BHJP
A47G 5/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A47B13/00 Z
A47B17/00 Z
A47B96/04 Z
A47G5/00 Z
A47G5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084850
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】509174912
【氏名又は名称】大日化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】平澤 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】鳴川 肇
【テーマコード(参考)】
3B053
【Fターム(参考)】
3B053NQ09
3B053NQ10
3B053SE10
(57)【要約】
【課題】平らなボードを基準としてこのボードの面全体に非一様の形状を付与して、起立したボードの負荷に対する安定性を全体的な面形状の観点から向上することができる形状にボードを賦形した三次元立体構造体を提供する。
【解決手段】本発明の三次元立体構造体は、少なくとも1枚のボード(10)で構成され、該ボード(10)の少なくとも下端部(10a)が、基準となる平らなボードの下端部において真っ直ぐに延びる下端基準線(D-BL)とは異なる形状且つ該ボード(10)の上端部(10b)とは異なる形状に賦形され、当該下端部(10a)の局部的な賦形により前記ボード(10)の面全体が非一様な立体形状に作られている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のボードで構成され、
該ボードの少なくとも下端部が、基準となる平らなボードの下端部において真っ直ぐに延びる下端基準線とは異なる形状且つ該ボードの上端部とは異なる形状に賦形され、
当該下端部の局部的な賦形により前記ボードの面全体が非一様な立体形状に作られていることを特徴とする三次元立体構造体。
【請求項2】
前記下端基準線とは異なる形状にする賦形が、平らなボードを予め加工することによって行われる、請求項1に記載の三次元立体構造体。
【請求項3】
前記下端基準線とは異なる形状にする賦形が、治具によって行われる、請求項1に記載の三次元立体構造体。
【請求項4】
前記ボードの上端部が、基準となる平らなボードの上端部において真っ直ぐに延びる上端基準線とは異なる形状に賦形され、
該上端部の賦形が、平らなボードを予め加工することによって行われ、
前記ボードの下端部の形状と上端部の形状が異なっている、請求項1~3のいずれか一項に記載の三次元立体構造体。
【請求項5】
互いに対向配置した2枚のボードを含む三次元立体構造体であって、
該2枚のボードの少なくとも下端部が、基準となる平らなボードの下端部において真っ直ぐに延びる下端基準線とは異なる形状に賦形され、
各ボードの局部的な賦形により各ボードの面全体が非一様な立体形状に作られていることを特徴とする三次元立体構造体。
【請求項6】
横並びに配置した複数のボードを含む三次元立体構造体であって、
前記複数のボードの各々の少なくとも下端部が、基準となる平らなボードの下端部において真っ直ぐに延びる下端基準線とは異なる形状に賦形され、
この局部的な賦形により各ボードの面全体が非一様な立体形状に作られていることを特徴とする三次元立体構造体。
【請求項7】
前記複数のボードが同じ高さ寸法を有する、請求項6に記載の三次元立体構造体。
【請求項8】
前記複数のボードのうち、一部のボードの高さが異なる寸法を有するものの、
前記複数のボードの上端縁が同じ高さレベルに位置している、請求項6に記載の三次元立体構造体。
【請求項9】
前記複数枚のボードが互いに連結されている、請求項6に記載の三次元立体構造体。
【請求項10】
前記横並びの複数のボードにおいて、基準となる平らなボードの下端部において真っ直ぐに延びる下端基準線上に配置された少なくとも一つの土台又は治具を含み、
該少なくとも一つの土台又は治具によって前記ボードの下端部の端が前記下端基準線からオフセットされ、これにより隣接する2枚のボードの間にトラス要素が形成され、また、このトラス要素によって略三角形の隙間が形成されている、請求項7に記載の三次元立体構造体。
【請求項11】
1枚のボードと治具との組み合わせを単位として少なくとも一つの単位を含む三次元立体構造体であって、
前記ボードの下端部において、該ボードの幅方向の端が前記治具によって固定されると共に該ボードの下端部が前方に向けて膨らみ出した形状に賦形されていることを特徴とする三次元立体構造体。
【請求項12】
前記ボードの下端部の幅方向の端を前記治具に対して固定する固定具を含む、請求項9に記載の三次元立体構造体。
【請求項13】
前記治具が、その長手方向両端に一対のフックを有し、該一対のフックに前記ボードの下端部の幅方向両端が係止される、請求項9に記載の三次元立体構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元立体構造体に関し、より詳しくはテーブルの上に置くのに都合の良いパーティション、照明具、調度品などに適用可能な構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス対策として飛沫防止パネルをテーブルの上に設置することが推奨されている。市販の飛沫防止パネルの多くは、3、4mm厚の平らな透明アクリルボードを主体に構成され、この硬質のアクリルボードを起立状態でテーブル上に設置する、及び/又は転倒を防止するための治具としてのベース部材が用いられる。ベース部材は、平らなアクリルボードの下端部を受け入れるスリットを有する細長い部材で例えば構成され、この細長い部材の底面は、テーブルの上に安定して着座するために平らな面で構成される。
【0003】
特許文献1に開示の飛沫防止パネルは、正面視矩形の透明な硬質ボードで構成され、硬質ボードは、下端から上端に亘ってその幅方向に等しく湾曲した形状に成形されている。このように面全体が一様に湾曲した形状に賦形された硬質ボードには、幅方向中間部分において、その上部の両面にマイクが設けられ、下部の両面にスピーカが設けられている。この飛沫防止パネルは店舗のレジに設置されて、店員と顧客は、飛沫防止パネルを挟んで、マイクとスピーカを通じて会話できる。
【0004】
特許文献2はテーブルの上に設置される卓上衝立を開示している。この卓上衝立は、面全体が横断面湾曲した形状の、つまり幅方向に湾曲した硬質ボードで構成され、この硬質のボードは正面視逆U字形の形状つまり上端部分の両端部分がラウンドした形状を備えている。この特許文献2に開示の卓上衝立は、特に透明であるとは指定されていないことから、不透明な衝立である。
【0005】
特許文献3は、作業テーブルの執務領域を囲むブースパネルを開示している。ブースパネルは、使用者の正面に起立する板状の正面部材と、執務領域の両側に位置する左右の側面部材とを有している。このブースパネルは、作業テーブルの執務領域を区画する部材であることからパーティションの一種であるということができる。
【0006】
特許文献4は、必要なときにテーブルに簡易に設置可能なパーティションを開示している。このパーティションは折り畳み可能な板状部材で構成されている。具体的には、板部材を幅方向に4つの領域に区分する合計3本のヒンジラインを有し、この3本のヒンジラインで屈曲可能である。左右の領域は使用者の正面の左右に位置し、例えば左領域を手前側に屈曲させ、右領域を奥側に屈曲させることで、テーブルの上に自立させて設置できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】意匠登録第1676124号公報
【特許文献2】意匠登録第1643404号公報
【特許文献3】特開2017-213265号公報
【特許文献4】実用新案登録第3229360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは飛沫防止パネルの開発を進める中で、従来の飛沫防止パネルを構成するボードはその全面の形状が平坦あるいは横断面湾曲した形状であり、起立するボードは、外部からの負荷に対する安定性が限定的であるとの気付きを得た。そして、平らなボードを基準として思考した結果、本発明を案出するに至ったものである。
【0009】
本発明の技術的課題は、平らなボードを基準としてこのボードの面全体に非一様の形状を付与して、起立したボードの負荷に対する安定性を全体的な面形状の観点から向上することができる形状にボードを賦形した三次元立体構造体を提供することにある。本発明は、全体的な面形状の観点から造形上の面白さや、これに光を当てて意匠上の面白さを表現する素材にも適用可能である。したがって、本発明は、飛沫防止パネルに限定されず、パーティション(典型的にはテーブルに設置するパーティション)、照明具、調度品に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、基本的には、
少なくとも1枚のボードで構成され、
該ボードの少なくとも下端部が、基準となる平らなボードの下端部において真っ直ぐに延びる下端基準線とは異なる形状且つ該ボードの上端部とは異なる形状に賦形され、
当該下端部の局部的な賦形により前記ボードの面全体が非一様な立体形状に作られていることを特徴とする三次元立体構造体を提供することによって達成される。
【0011】
本発明の詳しい説明及び本発明の他の目的は、以下の本発明の好ましい実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従う三次元立体構造体を構成する一例のボードであり、下端部を賦形したボードの斜視図である。
【
図2】本発明に従う三次元立体構造体を構成する他のボードであり、下端部を賦形したボードの斜視図である。
【
図3】本発明に従う三次元立体構造体を構成する別のボードであり、下端部を賦形したボードの斜視図である。
【
図4】本発明に従う三次元立体構造体を構成し、下端部と上端部を賦形したボードの一例の斜視図である。
【
図5】本発明に従う三次元立体構造体を構成し、下端部と上端部を賦形したボードの他の例の斜視図である。
【
図6】本発明に従う三次元立体構造体を構成し、下端部と上端部を賦形したボードの別の例の斜視図である。
【
図7】本発明に従う三次元立体構造体を構成し、下端部と上端部を賦形したボードの更に別の例の斜視図である。
【
図8】本発明に従う三次元立体構造体を構成し、下端部と上端部を賦形したボードの更に別の例の斜視図である。
【
図9】本発明に従う三次元立体構造体を示し、下端部を湾曲に賦形した2枚のボードを互いに対面して配置した構造体であって、各ボードが内側に膨出した湾曲形状である。
【
図10】本発明に従う三次元立体構造体を示し、下端部を湾曲に賦形した2枚のボードを互いに対面して配置した構造体であって、各ボードが内側に膨出した湾曲形状である。
【
図11】
図10に図示の三次元立体構造体の一つの具体例を説明するための図であり、2枚のボードの間に人工大理石の成型品を設置して、この成型品を回転させることにより、2枚のボードの下端部に湾曲した形状を付与する賦形部材として機能させる例を説明するための図である。
【
図12】
図10の三次元立体構造体の作用を説明するための図であり、(I)は、2枚のボードの下端部を大きく湾曲させた状態を示し、(II)は、2枚のボードの下端部の湾曲を小さくさせた状態を示す。
【
図13】複数のボードを横並びに配置し、隣接する2枚のボードの上端部と下端部とを互いに連結した実施例の三次元立体構造体の斜視図である。
【
図14】
図13の三次元立体構造体の隣接するボードを連結する構造を拡大した説明図である。
【
図15】複数のボードを横並びに配置した実施例の三次元立体構造体であって、隣接する2枚のボードの境界領域にトラス要素を形成すると共に隙間を形成する例を説明するための図である。
【
図16】複数のボードを横並びに配置した実施例の三次元立体構造体であって、隣接する2枚のボードのオーバーラップ量を調整して三次元立体構造体の幅を調整する機構を備えた三次元立体構造体を説明するための図である。
【
図17】複数のボードを横並びに配置した実施例の三次元立体構造体であって、隣接する2枚のボードの側縁に横スリットを設けて、横スリットを互いに嵌合させることで、隣接する2枚のボードを互いに固定する構造を備えた三次元立体構造体を説明するための図である。
【
図18】
図17の三次元立体構造体の一部を構成する治具又は土台の分解斜視図であり、人工大理石で作られた治具又は土台を示す。
【
図19】
図18に図示の治具又は土台を上下反転させて図示した図である。
【
図20】
図17の三次元立体構造体に含まれる治具又は土台を利用して、治具又は土台に照明ランプを設置してもよいことを例示的に説明するための図である。
【
図21】金属製の治具を含む三次元立体構造体であり、
図20の変形例を説明するための図である。
【
図22】
図21に含まれる治具又は土台の部分を拡大して示す断面図である。
【
図23】
図21に図示の三次元立体構造体の変形例を説明するための図であり、ボードに形を付与するための賦形部材として組みネジとスペーサとの組み合わせを採用した三次元立体構造体を説明するための図である。
【
図24】
図23に含まれる組みネジとスペーサとの部分を拡大して示す断面図である。
【
図25】複数のボードを横並びに配置した三次元立体構造体であって、ボードに例えばリビングヒンジを設けて、ボードを屈曲可能にすることで、三次元立体構造体の幅寸法を調整できることを説明するための図である。
【
図26】複数のボードを横並びに配置した三次元立体構造体であって、高さ寸法の異なるボードを組み込むことで高さレベルが異なる例えば複数のテーブルの上に設置したときに、三次元立体構造体の全体的な高さレベルを一致させることができることを説明するための図である。
【
図27】一枚のボードと一つの金属製治具との組み合わせからなる三次元立体構造体の一例を説明するための図である。
【
図29】
図27に図示の三次元立体構造体の下端部を幅方向に切断した断面図である。
【
図30】一枚のボードと一つの人工大理石の治具との組み合わせからなる三次元立体構造体の一例を説明するための図である。
【
図31】
図30の三次元立体構造体に含まれる固定具の一例を説明するための断面図である。
【
図32】
図30の三次元立体構造体に含まれる固定具の他の例を説明するための断面図である。
【
図33】
図30の三次元立体構造体に含まれる固定具の別の例を説明するための断面図である。
【
図34】
図30の三次元立体構造体に含まれる固定具の変形例としてフックを採用した三次元立体構造体を説明するための断面図である。
【
図35】
図34の三次元立体構造体のフックの部分を拡大して示す断面図である。
【
図36】一枚のボードと一つの人工大理石の治具との組み合わせからなる三次元立体構造体の変形例であり、治具がポケットを有している例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0013】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
図1ないし
図8は、本発明に従う三次元立体構造体を構成するボード10の典型例を示す。ボード10はテーブルの上に起立させたときに自立性を有する。ここに
図1~
図3は、下端部を賦形したボードの例を示し、
図4ないし
図8は、下端部と上端部とを賦形したボードの例を示す。
図1ないし
図8において、参照符号D-BLは、基礎となる平らなボードの下端部の形状つまりボード幅方向に真っ直ぐに延びる下端基準線を示し、参照符号U-BLは、同じ平らなボードの上端部の形状つまりボード幅方向に真っ直ぐに延びる上端基準線を示す。下端基準線D-BL、上端基準線U-BLを図示したのは、平らなボードを前提として、これを予め例えばラインヒータを用いて局部的に加熱加工して、又は、治具によって強制的に、少なくとも下端部に形を付与することを明らかにすることにあり、本発明に従う三次元立体構造体は、平らなボードを使って作られる。
【0014】
図1ないし
図8に図示のボード10は、このボード10によって飛沫防止パネルを構成する場合には、典型的には透明の自立可能なアクリルボードが採用される。
図1ないし
図8のボード10に関し、その幅方向中間を通過する中心線つまり縦中心線を参照符号12で示してある。また、ボード10の下端部の形状を説明する都合上、縦中心線12で分割して、一方の下端部を10a-1で示し、他方の下端部を10a-2で示す。
【0015】
図1に示すボード10Aは、下端部10aに湾曲形状に形成されている。下端部10aの湾曲形状の賦形は平らな基本ボードを予め例えば局部的に加熱成形することにより付与することができる。また、変形例として、後に説明する治具により強制的に湾曲に賦形されてもよい。
図1のボード10Aは、平らな基本ボードの下端部だけ湾曲に変形させるものの、上端部や上下方向中間部に関しては基本ボードのままで有ることから、
図1のボード10Aは、これをテーブルの上に起立させたときに、面全体として非一様な立体形状の面を備えた三次元立体構造体を提供することができる。
【0016】
図2に示すボード10Bは、下端部10a-1、10a-2が縦中心線12で下端基準線D-BLと交差する波形に湾曲した形状に形成されている。
図2に図示のボード10Bでは、下端部10a-1の一端及び10a-2の他端が下端基準線D-BLから反対側に離れて位置しているが、下端部10a-1の一端及び10a-2の他端が下端基準線D-BLと合流するサインカーブであってもよい。この
図2に示すボード10Bも
図1と同様に、平らな基本ボードの下端部だけ湾曲に成形し上端部や上下方向中間部に関しては基本ボードのままである。したがって、
図2のボード10Bにおいても、これをテーブルの上に起立させたときに、面全体として非一様な立体形状の面を備えた三次元立体構造体を提供することができる。
【0017】
図3に示すボード10Cは、下端から上下方向中間部まで上下方向に延びる切り込み14を有し、この切り込み14は、ボード10Cの縦中心線12の上に位置決めされているがこのことは必須ではない。また切り込み14はボード10の一つの側縁に沿って複数形成されていてもよい。ボード10Cは、一方の下端部10a-1と他方の下端部10a-2とに亘って延びる剛性プレート22つまり治具によって、一方の下端部10a-1と他方の下端部10a-2が互いに強制的に離間され、また、下端基準線D-BLから離間するように強制的に賦形される。この
図3に示すボード10Cも上端部や上下方向中間部に関しては基本ボードのままである。従って、
図3のボード10Cにおいても、これをテーブルの上に起立させたときに、面全体として非一様な立体形状の面を備えた三次元立体構造体を提供することができる。また、
図3のボード10Cは、切り込み14によってボード10Cの下端部に局部的な隙間20が形成され、この隙間20は、ボード10Cの面と略直交する面に存在している。
【0018】
例えば、
図3のボード10Cで飛沫防止パネルを構成したときには、ボード10Cを挟んで対面する人達は、会話を通じて飛散する飛沫がボード10Cの面で受け止められる。注目すべきは、隙間20を通じて物のやり取りが可能であり、この隙間20は、ボード10Cの面と直交する面に位置していることである。したがって、会話の際に飛び交う飛沫が隙間20を通じて行き来するその数を大幅に減じた状態で、この隙間20を通じて物のやり取りが可能である。
【0019】
図4ないし
図8は、ボード10の下端部10aだけでなく、ボード10の高さ方向の一部も賦形することにより、面全体として非一様な立体形状の面を備えた三次元立体構造体を提供する例を示す。具体的には、
図4ないし
図8は、ボード10の下端部10aと上端部10bを異なる形状に賦形することを例示的に提案している。変形例として、ボード10の下端部10aと高さ方向つまり上下方向中間部とを異なる形状に賦形してもよいし、ボード10の下端部10a、上端部10b、高さ方向中間部とを異なる形状に賦形してもよい。
【0020】
図4に示すボード10Dは、下端部10aが波形の形状に賦形され、上端部10bも波形に賦形されているが、下端部10aの波形と上端部10bの波形は逆位相である。
図4に示すボード10Dの変形例として、例えば、下端部10aを波形に賦形し、上端部10bをギザギザの形状に賦形してもよい。
【0021】
図5に示すボード10Eは、下端部において、縦中心線12を挟んで、一方の下端部10a-1が直線で構成され、他方の下端部10a-2が曲線で構成されている。ボード10Eは、上端部において、一方の上端部10b-1が曲線で構成され、他方の上端部10b-2が直線で構成されている。
【0022】
図6に示すボード10Fは、下端部10aが下端基準線D-BLに関して一方側に向けて開放した湾曲形状に賦形され、上端部10bが上端基準線U-BLに関して他方側に向けて開放した湾曲形状に賦形されている。つまり、ボード10Fは下端部10aと上端部10bが反対側に向けて開放した湾曲形状を有している。
【0023】
図7に示すボード10Gは、下端部10aが波形に賦形され、上端部10bが上端基準線U-BLに関して傾斜した直線に賦形されている。
【0024】
図8に示すボード10Hは、下端部10aが下端基準線D-BLに関して一方の側に傾斜した直線に賦形され、上端部10bが上端基準線U-BLに関して他方の側に傾斜した直線に賦形されている。すなわち、ボード10Hは、下端部10aと上端部10bが直線で構成されているが、下端基準線D-BL、上端基準線U-BLに関して逆側に傾斜した直線に賦形されている。
【0025】
上記の
図4ないし
図8は例示に過ぎず、ボード10はこれを起立させたときに、高さ方向において下端部10aと他の部位とが異なる形状であれば良く、これにより、
図1ないし
図3に示すボード10Aないし10Cに比べて立体形状の面の非一様性を高めることができる。一般論として、ボードの全面が非一様の立体形状は、その非一様な面形状によって、例えば双曲面構造のように外部からの負荷に対する安定性に優れることが知られている。
【0026】
本発明に従う三次元立体構造体は複数枚のボード10で構成されていてもよく、また、治具との組み合わせで構成されてもよい。2枚のボード10を互いに対向して配置することで構成された三次元立体構造体を例示的に
図9ないし
図12を参照して説明する。
図9ないし
図12に図示のボード10は例示であり、少なくとも下端部10aが形状を有し、非直線で構成されていればよい。
【0027】
図9の三次元立体構造体100は、下端部10aが、横断面において、一方側に開放した湾曲形状に賦形された第1ボード10(1)と、他方側に開放した湾曲形状に賦形された第2ボード10(2)とを互いに対向して配置した構造を有する。なお、第1、第2のボード10(1)、10(2)の上端部10bは例えばクリップで固定される。三次元立体構造体100の高さ方向の寸法をHで示し、第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部の中央部分の離間距離をD2で示す。
【0028】
三次元立体構造体100の下端部10aは、例えば第1、第2のボード10(1)、10(2)の幅方向の2つの端の各々に、第1治具112を配置し、第1治具112によって第1、第2のボード10(1)、10(2)の幅方向各端の離間距離D1が調整可能である。また、必要であれば、第1、第2のボード10(1)、10(2)の幅方向中間部分の離間距離D2を互いに接近させる方向に位置決めなどの離間距離D2を調整するための第2治具114を配置してもよい。
【0029】
図10の三次元立体構造体110は、互いに対向する側に開放した湾曲形状に賦形された第1ボード10(1)、第2ボード10(2)で幅方向中央が膨らんだ形状を表現している。三次元立体構造体110において、第1、第2のボード10(1)、10(2)の上端基準線U-BL上を真っ直ぐに延びる上端部10bが例えばクリップで固定される。第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10aは、その幅方向Wの中間部分が例えば第3の治具116によって互いに離れる方向に位置決めされる。変形例として、第4の治具118によって、第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10aにおいて、その幅方向Wの第1、第2の端を互いに接近する方向に引き寄せることにより、
図10の三次元立体構造体110を形作ることができる。
図10の三次元立体構造体110は、第1、第2のボード10(1)、10(2)の縦中心線12と第3の治具116の軸線Axとでトラス要素Teが構成され、三次元立体構造体110の構造を強化することができる。
【0030】
図11は、
図10の三次元立体構造体110の具体的な実施態様120を示し、
図10の三次元立体構造体110と同じ要素には同じ参照符号を付して、適宜その説明を省略する。
図11を参照して、第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10aにおいて、その幅方向Wの中間部分に第3の治具116が配置されている。第3の治具116は、比較的重量物の例えば人工大理石で構成された成型品122で構成され、この成型品122は平面視略楕円の形状を有している。第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10a同士で囲まれた内部空間において、その幅方向Wの中間部分に成型品122を設置することで、第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10aに湾曲形状の形を付与することができる。すなわち、成型品122は、第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10aを湾曲した形状に付与する賦形部材として機能する。そして、矢印Aで示すように成型品122の向きを調整することにより、
図12の(I)、(II)から分かるように第1、第2のボード10(1)、10(2)の湾曲に賦形した下端部10aの湾曲度合いを調整することができる。例えば、成型品122にランプ124を設置することで、
図10の三次元立体構造体110を照明具又は光る調度品として提供することができる。
【0031】
図9ないし
図12の三次元立体構造体100、110、120は、第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10aを予め湾曲形状に成形したボードであってもよい。変形例として平らなボードを用いて、そして、第1ないし第4治具112、114、116、118を配置し、この治具によって第1、第2のボード10(1)、10(2)の下端部10aを強制的に変形させると共に、三次元立体構造体100、110、120の厚みつまり離間距離D1又はD2を調整可能としてもよい。
【0032】
図9ないし
図12の三次元立体構造体100、110、120を構成する第1、第2の透明ボード10(1)、10(2)の少なくとも一方は、予め湾曲した形状に成形してもよく、そして、少なくとも他方は平らなボードを第1ないし第4治具112、114、116、118を使って湾曲形状に賦形してもよい。
図9ないし
図12の三次元立体構造体100、110、120は例えば厚み1~3mmのアクリルボードで構成してもよいが、それよりも薄い0.5~1mmのアクリルボードで構成することができる。厚み0.5~1mmのアクリルボードは可撓性を有するため、円筒状に丸めて円筒ケースに収めて物流することができる。すなわち、三次元立体構造体100、110、120に含まれるボードは、円筒状に丸めて円筒ケースに収めて物流できる可撓性を有していてもよい。
【0033】
図13ないし
図26は、複数のボード10を幅方向Wに並べた構造の三次元立体構造体200の具体例を例示的に示す図である。
【0034】
図13に図示の三次元立体構造体200Aは例えば3枚の透明ボード10で構成され、
図14からよく分かるように、隣接するボード10の側部を互いにオーバーラップさせた状態で上端部と下端部とを組みネジ202で物理的に連結した構成を有している。ボード10の数は2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。したがって、ボード10の数「3枚」は単なる一例に過ぎない。この三次元立体構造体200Aは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。3枚のボード10の大きさは好ましくは共通しており、高さ800mm、幅800mm、厚み1~3mm、例えば2mm厚の透明アクリルボードで構成されている。変形例として、ボード10の厚みは0.5~1mmであってもよい。
【0035】
なお、図示の三次元立体構造体200Aは、同じ形に賦形された3枚のボード10で構成されているが、異なる形に賦形されたボード10を採用してもよい。また、3枚のボード10の高さが異なっていてもよい。
【0036】
図15に図示の三次元立体構造体200Bは、下端部が波形に賦形されたボード10を例えば3枚横並びに配置した構成を有している。好ましくは、3枚のボード10の上端は、上述した組ネジ202(
図14)を用いて互いに連結するのがよい。3枚のボード10の下端部の端は下端基準線D-BLからオフセットされ、これにより隣接する2枚の透明ボード10の境界領域にトラス要素Teが形成され、そして、このトラス要素Teによって略三角形の隙間Thが形成される。
【0037】
図15の三次元立体構造体200Bは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。3枚のボード10の大きさは共通しており、高さ800mm、幅800mm、厚み1~3mm、例えば2mm厚の透明アクリルボードで構成されている。変形例として、ボード10の厚みは0.5~1mmであってもよい。
【0038】
図16の三次元立体構造体200Cは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。そして、基本的な構造は、
図15の三次元立体構造体200Bと同じであり、3枚のボード10の下端部の端は下端基準線D-BLからオフセットされ、これにより隣接する2枚のボード10の境界領域にトラス要素Teが形成され、そして、このトラス要素Teによって略三角形の隙間Thが形成され、この隙間Thを通じて、矢印Bで示すように、対面者は物を遣り取りできる。
【0039】
図16に図示の三次元立体構造体200Cは、その全体の幅を調整する機構を備えている。この幅調整機構210はU字状の形状のガイドで構成され、このガイド(幅調整機構210)は、一方のボード10の上部角部の上端縁に例えば接着剤212で固着される。そして、隣接する他方のボードの上部角部の上端縁がガイド(幅調整機構210)に摺動可能に受け入れられる。このガイド(幅調整機構210)の作用によって三次元立体構造体200Cは、隣接するボード10との間のオーバーラップ量を調整することで、三次元立体構造体200Cの全体的な幅を調整することができる。
【0040】
図17に図示の三次元立体構造体200Dは、3枚のボードの各ボード10の両側縁においてその上下方向中間部に横スリット250が形成されている。この横スリット250の配置位置は、上下方向中間部に限定されない。好ましくは、上下方向中間部よりも上部に横スリット250を設けてもよい。この三次元立体構造体200Dは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。例えば3枚のボード10の大きさは共通しており、高さ800mm、幅800mm、厚み1~3mm、例えば2mm厚の透明アクリルボードで構成されている。変形例として、ボード10の厚みは0.5~1mmであってもよい。
【0041】
3枚のボード10は、下端部が予め波状に加工されていてもよいし、3枚のボード10は平らなボードであってもよい。
【0042】
三次元立体構造体200Dは、3枚のボード10を組み上げるとき、隣接する2つのボード10の互いに対向する側縁の横スリット250が嵌合され、これにより複数のボード10同士が互いに連結され且つ固定された状態となる。テーブルの上には、治具として複数の土台230が設置され、各土台230は、例えば大理石で作られた持ち運びが自在であるが3枚のボード10を支持するのに十分な重量物である。
【0043】
複数の土台230は下端基準線D-BL上に配置され、各ボード10の幅方向端が土台230にネジ260で固定される。3枚のボードが平らなボードで構成されている場合、下端基準線D-BL上に配置された複数の土台230よって3枚のボード10の下端部を強制的に賦形することができる。したがって、土台230は、ボード10の下端部に形を付与する賦形部材としての機能を有している。任意であるが、この実施例では、土台230は半割構造であり、2つのハーフ土台232で構成されている。2つのハーフ土台232は、中間部分を絞り込んだ連結ピース234を用いて一体化される(
図18)。
図19は、2つのハーフ土台232を上下反転した斜視図である。各ハーフ土台232は、その底面に連結ピース234の半分を受け入れる溝236を有し、2つのハーフ土台232を位置決めしたのちに、連結ピース234を溝236に収容することによって2つのハーフ土台232が物理的に一体化されて土台230を構成する。三次元立体構造体200Dの幅方向端に位置するボード10の外端部は、ハーフ土台232にネジ止めすることができる。
【0044】
図20に図示の三次元立体構造体200Eは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。透明ボード10の数は任意であり、また、同じ形状のボード10の組み合わせでなく、異なる形状のボード10の組み合わせで構成してもよい。
【0045】
図20に図示の三次元立体構造体200Eは、互いに隣接する2つのボード10、10が
図13の三次元立体構造体200Aと同様に、互いにオーバーラップしており、その上端部が組みネジ202で互いに連結されている。変形例として、ボード10の相互連結に関して組みネジ202に代えて、横スリット250(
図17)を採用しても良い。
図20の三次元立体構造体200Eは、先述した複数の土台230を含み、この複数の土台230は
図17に図示の三次元立体構造体200Dと同様に、下端基準線D-BL上に配置され、各ボード10の幅方向端が土台230にネジ260で固定される。
【0046】
土台230に、光源240としてのランプが配置され、この光源240によって三次元立体構造体200Eを下方から上方に向けて照明可能である。参照符号242は光源240に電源を供給するケーブルを示す。
図20に図示の例では、土台230の重心部分に光源240が配置されているが、例えば、土台230の両端部に、ボード10の端面を受け入れる溝を設け、この溝の底面に、単数又は複数の点光源(LED)や面光源などの光源240を設けるようにしてもよい。ボード10は、その端面に光を当てるとボード10自体が導光路となってボード10の内部を通過する。この特性を利用した照明具又は調度品あるいはパーティション、つまりボード10の端面、周面に光が入射するように光源240を設けることで、ボード10の内部を光が通過する照明具又は調度品あるいはパーティションとして、本発明の三次元立体構造体をユーザに提供することができる。
【0047】
この
図20の三次元立体構造体200Eにおいても、三枚のボード10の下端部は予め賦形されていてもよいし、平らなボードを用いて、この平らなボードを土台230によって強制的に賦形してもよい。
【0048】
図21に図示の三次元立体構造体200Fは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。この三次元立体構造体200Fは、上述した
図20の三次元立体構造体200Eの変形例でもある。この三次元立体構造体200Fに採用された土台又は治具230は、人工大理石ではなくて金属製であり、三次元立体構造体200Fの奥行き方向両端に、三次元立体構造体200Fの幅方向に延びる溝238(
図22)を備えている。隣接する2つのボード10の幅方向一端部、これに対向する幅方向他端部が土台230の互いに対向する溝238に受け入れられることにより、ボード10の下端部が下端基準線D-BLとは異なる形状の賦形が維持され、または下端基準線D-BLとは異なる形状に賦形される。つまり、
図21、
図22に図示の土台又は治具230は、ボード10の下端部に形を付与する賦形部材としての機能を有している。
【0049】
図23に図示の三次元立体構造体200Gは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。この三次元立体構造体200Gは、上述の三次元立体構造体200Fの変形例であり、横並びの複数枚のボード10の相互連結に関し、ボード10に形を付与するための賦形部材として組みネジ202とスペーサ206(
図24)との組み合わせを採用可能であることを説明する実施例である。
【0050】
図25に図示の三次元立体構造体200Iは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。この三次元立体構造体200Iは、複数枚のボード10を横並びに配置した三次元立体構造体200において、少なくとも1枚のボード10を屈曲可能な構造にすることで、三次元立体構造体200の全体的な幅寸法を調整する例を示す。
図25において参照符号400は、樹脂一体成形ヒンジ又は後加工によって作られたヒンジ部を示す。
【0051】
図26に図示の三次元立体構造体200Jは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。この三次元立体構造体200Jは、上述の三次元立体構造体200の変形例であり、横並びの複数枚のボード10は全て同じ高さ寸法を有していなくもよいことを説明する実施例である。
【0052】
図26の三次元立体構造体200Jは、複数のボード10は、相対的に高いH1のボード10(Hi)と、相対的に低いH2のボード10(S)とを含んでいる。図示の例では、複数のボード10の上端縁の高さレベルを一致させるように構成されているが、変形例として複数のボード10の下端縁の高さレベルを一致させるように構成してもよい。図示の例のように複数のボード10の上端の高さレベルを一致して構成することで、高さが異なるテーブルを並べて配置する場合、複数のボード10の上端の高さレベルを一致させた状態で三次元立体構造体200Jを設置することができる。
【0053】
以上、
図13ないし
図26を参照して、複数のボード10を横並びに配列した構造の三次元立体構造体200に関して幾つかの具体例を説明したが、これらは組み合わせが可能であるのは言うまでもない。例えば、複数のボード10を横並びに配列した構造の三次元立体構造体200において、その下端部を相互に直接的に連結した構造(
図13)と、少なくとも一つの治具又は土台230を使って隣接するボード10の下端部を強制的に離間させた構造(
図17、
図21)とを組み合わせてもよい。
【0054】
図27ないし
図37は、一枚のボード10と治具302との組み合わせからなる三次元立体構造体300及びこれに関連した図である。
図27に図示の三次元立体構造体300Aは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられる。三次元立体構造体300Aを構成する単一のボード10の大きさは、高さ800mm、幅800mmの透明アクリルボードである。三次元立体構造体300Aを構成するボード10の厚さは1~3mmであってもよいが、それよりも薄い0.5~1mm厚であってもよい。
【0055】
三次元立体構造体300Aは、横方向に真っ直ぐに伸びる治具302A(
図28、
図29)を有している。治具302Aは金属製のプレート部材で構成され、正面視したときに横方向に帯状に延びる形状を有し、その長手方向両端に、一対のフック302a、302bが形成されている。ボード10はその下端部の両端が一対のフック302a、302bによって係止されて、
図27、
図29から分かるようにボード10の下端部が前方に向けて膨らみ出した形状に賦形される。なお、
図29は、三次元立体構造体300Aの下端部の横断面図である。ボード10は治具302Aに組み付けられることにより、治具302Aの長手方向中間部分Ff(
図28)から前方に離れるように変形される。
図27に図示の参照符号16は、ボード10の下端縁の中央部分に形成された切欠きを示す。この切欠き16は治具302Aの高さ寸法と同じ又はそれよりも小さいのが好ましい。ボード10を挟んで対面する人達は、切欠き16を通じて、物のやり取りが可能である。
【0056】
図30に図示の三次元立体構造体300Bは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられ、また、
図27の三次元立体構造体300Aの変形例でもある。三次元立体構造体300Bに含まれる治具310は板状の人工大理石を加工することによって作られている。治具310は、横方向に真っ直ぐに伸びる形状を有し、その両端に固定具312、320、330を介してボード10が固定される。
【0057】
図31は、ボード10を治具310の両端部に固定する固定具312の具体例を示す。固定具312は、人工大理石の治具310の端とアクリルボード10の端を重ね合わせた状態で挟み込むコ字状の部材314と、コ字状の部材314の一端を貫通するネジ316とを含む。ネジ316を締め付けることで、このネジ316の先端でアクリルボード10と人工大理石の治具310とを固定することができる。
【0058】
図32は、ボード10を治具310の両端部に固定する固定具320の具体例を示す。
図32を参照して、固定具320は、人工大理石の治具310の端とアクリルボード10の端を重ね合わせた状態で挟み込む一対のプレート322と、この一対のプレート322の間隔を狭めて治具310とアクリルボード10とをクランプした状態にするボルト324、ナット326との組み合わせで構成されている。
【0059】
図33は、三次元立体構造体300Bに採用可能な固定具330を示す。固定具330は、アクリルボード10と人工大理石の治具310と貫通するボルト332とナット334とで構成されている。
【0060】
図34に図示の三次元立体構造体300Cは、典型的には飛沫防止パネルとして用いられ、また、
図30の三次元立体構造体300Bの変形例でもある。
図34の三次元立体構造体300Cの固定具340はクランプで構成され(
図35)、このクランプ340は、人工大理石の治具310とアクリルボード10に向けて側方からアクセスすることで治具310とアクリルボード10とを堅固に挟持することができる。
【0061】
図36に図示の三次元立体構造体300Dは、
図30、
図34の三次元立体構造体300B、300Cに含まれる治具310の変形例370を含む。
図37を参照して、変形例の治具370は人工大理石から作られており、その両端部に上方に向けて開口したポケット374が形成されている。このポケット374は、上方にだけ開口していてもよいし、上下に開口していてもよい。ポケット374には、マーカなどの筆記具や消し具などの文房具Stを収容すれば、
図36に図示の「TODAY‘S AGENDA」の文字やポンチ絵などをボード10に書き込むことで会話を促進することができる。
【0062】
なお、
図37に図示の変形例の治具370は、横方向に延びる本体372の長手方向中間部分に切欠き376を含み、この切欠き376を通じて、物のやり取りが可能であるが、この切欠き376は必ずしも必須ではない。
【0063】
図27、
図30、
図34、
図36の三次元立体構造体300A~300Dに関し、その適用例は典型的には飛沫防止パネルであると説明したが、三次元立体構造体300A~300Dを一つのユニットとして、これを前後や周方向に配列して相互に連結させることで調度品やランプとして用いることができる。
【0064】
本発明に適用されるボード10は、下端部10aを下端基準線D-BLから変形させて自立する形に賦形されることを特徴とする。この賦形のやり方は、加熱による塑性変形と、治具を使った弾性変形とを含む。弾性変形は、賦形しても元の平らなボードの形に復元しようとする。本発明に従って、平らなボードを基準として、ボード10の下端部10aを局部的に下端基準線D-BLとは違う形に賦形したとき、この局部的な賦形によってボード10の上端まで同じ形に変化するのは本発明の作用効果を阻害する。この問題は、ボード10の厚みに置き換えて議論することができる。ボード10が厚ければ、このような問題は発生しない。しかし、ボード10が薄くなればなるほど、ボード10の下端部10aの局部的な賦形に追従して上端部10bも下端部10aと同じ形に変化する傾向になる。本発明に適用されるボード10は、柔らかくどんな形にも抵抗なく馴染んだ形に変化できる薄さは適さない。
【0065】
本発明に適用可能なボード10は変形に対して復元力を備えた、いわゆる面の張りを有する。それが故に、ボード10が相対的に厚いと、ボード10を丸めて筒状にするのが難しくなる。換言すると、ボード10が薄くなればなるほどボード10を丸めて筒状にするのが容易であり、また、薄いほど筒状の直径を小さくすることができる。このことは、ボード10をユーザに供給する物流コストを低減できるという利点がある。すなわち、ボード10を極力小さな直径の筒状のケースに収めてユーザに供給できれば、物流コストを大幅に低減できる。
【0066】
図1に図示のボード10A、つまり下端部10aを湾曲に賦形させたボード10Aにおいて、ボード10Aの肉厚が1mm以上であると下端部10aを湾曲に賦形しても、これに追従した変形は限定的であり、上端部10bまで及ばない。しかし、ボード10Aの肉厚が1mm以下であると、下端部10aを湾曲に賦形したとき、その影響がボード全体に及ぶ傾向になる。この傾向はボード10Aの厚さが0.5mmに近づくほど大きくなり、ボード10Aが下端から上端に亘って全体的に湾曲状になる。ボード10Aが薄くて面全体に変形が及ぶ特性を備えるときには、例えば
図1に例示するように補強片Rfpをボード10Aの例えば上端部に接着すればよい。この補強片Rfpの長さは任意であるが、ボード10の幅方向一杯に延びる長さを有しているのがよい。補強片Rfpはボード10Aと同じ材料であってもよいし、別の材料、例えば金属片であってもよい。補強片Rfpをボード10Aの典型的には上端部に添設することにより、ボード10Aの上端部10bから下端部10aに向けて剛性を高めることができる。これにより、ボード10Aの下端部10aを賦形させたとき、その影響がボード10Aの上端部10bに達するのを阻止できる。これにより、ボード10Aの面全体の非一様な形状を作ることができる。なお、
図1の例では補強片Rfpが平らな帯状の形状を有しているが、補強片Rfpの形状は任意であり、
図6に図示のように湾曲であってもよいし、波形、デコボコなどであってもよい。
【0067】
補強片Rfpは、
図9~
図11を参照して説明した2枚のボード10(1)、10(2)を対向配置した三次元立体構造体100に適用してもよい。互いに対向する2枚のボード10(1)、10(2)の上端を互いに重ね合わせることで、この2枚のボード10(1)、10(2)の各上端部は実質的に厚さが2倍となるため、特に補強片Rfpは必要でないが、2枚のボード10(1)、10(2)の上端部を幅方向に真っ直ぐに延びる形状でなく、波形などの形状にするときに、予め波形に成形した補強片Rfpをボード10(1)、10(2)に添設してボード10(1)、10(2)の上端部の形状を波形に賦形するのに補強片Rfpを用いるのが都合がよい。
【0068】
補強片Rfpは、
図13などに図示の複数のボード10を横並びに配置した三次元立体構造体200に適用してもよい。また、
図27、
図30、
図34、
図36に図示の1枚のボード10と治具又は土台302、310、370との組み合わせからなる三次元立体構造体300にも適用可能である。
【0069】
一般論として、飛沫防止パネル、テーブルの上に置くのに都合の良いパーティションを製造販売する場合、ボード10は上述したように800mm×800mmと比較的大型であるため、物流コストが嵩む。この物流コストを低減するのにボード10を丸めて筒状のケースを使ってユーザに製品を供給できる経済的なメリットが大きい。参考例として、
図1ないし
図37を参照して説明した本発明の実施例に関し、ボード10を例えば0.5~1mmの比較的薄いボードを使い、その上で、ボード10の面の非一様な形状を事実上無視した設計を行って、例えばボード10の下端部10aを湾曲した形状に賦形したときにこの湾曲が上端部10bまで及ぶのを許容した飛沫防止パネル、パーティションを製造することも可能である。