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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178250
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ダイシングダイボンドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221125BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221125BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221125BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084894
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】角野 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】杉村 敏正
(72)【発明者】
【氏名】福井 章洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中浦 宏
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA05
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040EB042
4J040EC061
4J040EF282
4J040EF341
4J040FA291
4J040HA306
4J040HD32
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA42
4J040NA20
4J040PA42
5F063AA18
5F063AA33
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB14
5F063CB29
5F063CC26
5F063DD64
5F063DD68
5F063DD91
5F063DD93
5F063DG04
5F063EE13
5F063EE14
5F063EE42
(57)【要約】
【課題】本発明は、ダイボンド層と粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下させることができるダイシングダイボンドフィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、前記粘着剤層の一部を露出させた状態で、前記粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含み、前記ダイボンド層は、芳香族化合物を含んでおり、前記粘着剤層の露出部分、および、前記粘着剤層における前記ダイボンド層との積層部分について、FT-IR分析を実施することにより得られる複数のパラメータを組み合わせて導出されるパラメータを、所定の数値範囲を満たすものとしている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
前記粘着剤層の一部を露出させた状態で、前記粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含み、
前記ダイボンド層は、芳香族化合物を含んでおり、
前記粘着剤層の露出部分および前記ダイボンド層との積層部分のそれぞれについて、FTIR分析を行い、
前記粘着剤層の露出部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH1とし、
前記粘着剤層の露出部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT1とし、
前記ダイボンド層との積層部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH2とし、
前記ダイボンド層との積層部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT2としたときに、
下記式(1)で算出されるRの値が1.5以下である
ダイシングダイボンドフィルム。
【数1】
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーは、炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を13モル%以上含む
請求項1に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を含む
請求項2に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を15モル%以上含む
請求項3に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項5】
前記アクリル系ポリマーは、炭素数9以上14以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位とを含む
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングダイボンドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造において、ダイボンディング用の半導体チップを得るために、ダイシングダイボンドフィルムを用いることが知られている(例えば、特許文献1)。
前記ダイシングダイボンドフィルムは、基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、前記粘着剤層の一部を露出させた状態で、前記粘着剤層に積層されたダイボンド層と、を備えている。
【0003】
そして、前記ダイシングダイボンドフィルムを用いてダイボンディング用の半導体チップ(ダイ)を得る方法として、半導体ウェハを割断処理によってチップ(ダイ)へ加工すべく半導体ウェハに溝を形成するハーフカット工程と、ハーフカット工程後の半導体ウェハを研削して厚さを薄くするバックグラインド工程と、バックグラインド工程後の半導体ウェハの一面(例えば、回路面とは反対側の面)をダイボンド層に貼付して、ダイシングテープに半導体ウェハを固定するマウント工程と、半導体チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程と、半導体チップ同士の間隔を維持するカーフ維持工程と、ダイボンド層と粘着剤層との間を剥離してダイボンド層が貼付された状態で半導体チップを取り出すピックアップ工程と、を有する方法を採用することが知られている。
そして、前記ピックアップ工程において、ダイボンド層に貼付された状態で取り出された半導体チップ(以下、ダイボンド層付半導体チップともいう)は、被着体たる配線基板に接着される。
【0004】
また、前記粘着剤層は、通常、(メタ)アクリル系樹脂などの樹脂と、該樹脂と反応して前記樹脂同士を重合させる架橋剤と、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより、前記樹脂同士の連鎖重合を可能とする活性種を発生する光重合開始剤と、を含んでいる(例えば、特許文献2)。
このような粘着剤層では、例えば、紫外線などの活性エネルギー線が照射されると硬化反応が進行するようになって、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力が低下されるようになる。
これにより、前記ダイボンド層は、前記粘着剤層から比較的容易に剥離されるようになる。すなわち、前記ピックアップ工程を比較的スムーズに実施できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-9203号公報
【特許文献2】特開2019-67996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、例えば、前記粘着剤層に紫外線などの活性エネルギー線を照射して、前記粘着剤層を硬化させた後においても、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下できないことがある。
このように、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下できないと、前記ピックアップ工程をスムーズに実施できないので好ましくない。
しかしながら、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下させることについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0007】
そこで、本発明は、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下させることができる、ダイシングダイボンドフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討したところ、上記のように構成され、かつ、前記粘着剤層がアルキル系ポリマーを含み、かつ、前記ダイボンド層が芳香族化合物を含むダイシングダイボンドフィルムにおいて、前記粘着剤層の露出部分、および、前記粘着剤層における前記ダイボンド層との積層部分について、FTIR分析を実施することにより得られる複数のパラメータを組み合わせて導出されるパラメータを、所定の数値範囲を満たすものとすることにより、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下させることができることを見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
前記粘着剤層の一部を露出させた状態で、前記粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含み、
前記ダイボンド層は、芳香族化合物を含んでおり、
前記粘着剤層の露出部分および前記ダイボンド層との積層部分のそれぞれについて、FTIR分析を行い、
前記粘着剤層の露出部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH1とし、
前記粘着剤層の露出部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT1とし、
前記ダイボンド層との積層部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH2とし、
前記ダイボンド層との積層部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT2としたときに、
下記式(1)で算出されるRの値が1.5以下である。
【0010】
【数1】
【0011】
斯かる構成によれば、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下させることができる。
これにより、ピックアップ工程をスムーズに実施することができる。
【0012】
前記ダイシングダイボンドフィルムにおいては、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を13モル%以上含む、ことが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力をより一層十分に低下させることができる。
これにより、ピックアップ工程をより一層スムーズに実施することができる。
【0014】
前記ダイシングダイボンドフィルムにおいては、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を含む、ことが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力をより一層十分に低下させることができる。
これにより、ピックアップ工程をより一層スムーズに実施することができる。
【0016】
前記ダイシングダイボンドフィルムにおいては、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を15モル%以上含む、ことが好ましい。
【0017】
斯かる構成によれば、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力をより一層十分に低下させることができる。
これにより、ピックアップ工程をより一層スムーズに実施することができる。
【0018】
前記ダイシングダイボンドフィルムにおいては、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数9以上14以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位とを含む、ことが好ましい。
【0019】
斯かる構成によれば、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力をより一層十分に低下させることができる。
これにより、ピックアップ工程をより一層スムーズに実施することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、前記ダイボンド層を前記粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下させることができる、ダイシングダイボンドフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムの構成を示す断面図。
図2A】半導体集積回路の製造方法におけるハーフカット加工の様子を模式的に示す断面図。
図2B】半導体集積回路の製造方法におけるハーフカット加工の様子を模式的に示す断面図。
図2C】半導体集積回路の製造方法におけるバックグラインド加工の様子を模式的に示す断面図。
図2D】半導体集積回路の製造方法におけるバックグラインド加工の様子を模式的に示す断面図。
図3A】半導体集積回路の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に示す断面図。
図3B】半導体集積回路の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に示す断面図。
図4A】半導体集積回路の製造方法における低温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図4B】半導体集積回路の製造方法における低温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図4C】半導体集積回路の製造方法における低温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図5A】半導体集積回路の製造方法における常温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図5B】半導体集積回路の製造方法における常温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図6】半導体集積回路の製造方法におけるカーフ維持工程の様子を模式的に示す断面図。
図7】半導体集積回路の製造方法におけるピックアップ工程の様子を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
[ダイシングダイボンドフィルム]
図1に示したように、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、基材層1上に粘着剤層2が積層されたダイシングテープ10と、粘着剤層2の一部を露出させた状態で、粘着剤層2上に積層されたダイボンド層3と、を備える。
ダイシングダイボンドフィルム20では、ダイボンド層3上に半導体ウェハが貼付される。
ダイシングダイボンドフィルム20を用いた半導体ウェハの割断においては、半導体ウェハと共にダイボンド層3も割断される。ダイボンド層3は、個片化された複数の半導体チップのサイズに相当する大きさに割断される。これにより、ダイボンド層3付の半導体チップを得ることができる。
【0024】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20において、粘着剤層2は、粘着性を有しており、ダイボンド層3を粘着することにより保持する。
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20において、粘着剤層2は、アクリル系ポリマーを含む。
なお、本明細書において、アクリル系ポリマーとは、(メタ)アクリレートモノマーを構成単位として含むポリマーである。(メタ)アクリレートとは、メタクリレートおよびアクリレートを含む概念である。請求項の特定において、
前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマー以外のモノマーを構成単位として含んでいてもよい。
【0025】
粘着剤層2は、前記アクリル系ポリマーを50質量%以上含んでいることが好ましく、70%以上含んでいることがより好ましく、80質量%以上含んでいることがさらに好ましい。
また、粘着剤層2は、前記アクリル系ポリマーを95質量%以下含んでいることが好ましく、90質量%以下含んでいることがより好ましい。
【0026】
前記アクリル系ポリマーは、重合性不飽和結合を有する紫外線硬化型の重合性ポリマー(重合性アクリル系ポリマー)であることが好ましい。
前記重合性ポリマーとしては、主鎖または側鎖の末端に、重合性のビニル基またはエチニル基を含むポリマー等が挙げられる。
なお、以下では、重合性のビニル基またはエチニル基を総称して、重合性基と呼ぶ。
なお、重合性アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーと重合性モノマーとを共重合させることにより得ることができる。
【0027】
粘着剤層2に含まれるアクリル系ポリマーにおいて、上記の構成単位は、H-NMR、13C-NMRなどのNMR分析、熱分解GC/MS分析、赤外分光法(例えば、FTIR法)などによって確認できる。
なお、前記アクリル系ポリマーにおける上記の構成単位のモル比率は、通常、アクリル系ポリマーを重合するときの配合量(仕込量)から算出される。
【0028】
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートの構成単位を含んでいることが好ましい。
前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する。
すなわち、重合後のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの構造が、前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位である。
前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位において、前記アルキルは、飽和炭化水素であってもよいし、不飽和炭化水素であってもよい。
例えば、前記アルキルは、直鎖状飽和炭化水素、分岐鎖状飽和炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素である。前記アルキルは、直鎖状飽和炭化水素または分岐鎖状飽和炭化水素であることが好ましい。
また、前記アルキルは、酸素や窒素などを含有する極性基を含んでいてもよい。
【0029】
前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、iso(sec)-ノニル(メタ)アクリレート、tert-ノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、iso(sec)-デシル(メタ)アクリレート、tert-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、iso(sec)-ウンデシル(メタ)アクリレート、tert-ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの各構成単位が挙げられる。
【0030】
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、これらの各種アルキル(メタ)アクリレート構成単位の中でも、炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを構成単位として含むことが好ましく、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを構成単位として含むことがより好ましい。
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を13モル%以上含むことが好ましい。
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を30モル%以上含むことがより好ましく、40モル%以上含むことがさらに好ましい。
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を80モル%以下含むことが好ましい。
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を15モル%以上含むことが好ましい。
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を30モル%以上含むことが好ましく、40モル%以上含むことがより好ましい。
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を80モル%以下含むことが好ましい。
前記アクリル系ポリマーが、上記のようなものであることにより、ダイボンド層3を粘着剤層2から剥離させるに際して、ダイボンド層3に対する粘着剤層2の剥離力をより一層低下させることができる。
これにより、ピックアップ工程をより一層スムーズに実施することができる。
なお、前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位における炭素数の上限値は、18である。
【0031】
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位とによって構成されていることが好ましい。
前記アクリル系ポリマーがこのように構成される場合、前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、炭素数9以上14以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位であることが好ましい。
このように構成されるアクリル系ポリマーにおいて、炭素数9以上14以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、15モル%以上含まれていることが好ましく、30モル%以上含まれていることがより好ましく、40モル%以上含まれていることがさらに好ましい。
このように構成されるアクリル系ポリマーにおいて、炭素数9以上14以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、80モル%以下含まれていることが好ましい。
このように構成されるアクリル系ポリマーにおいて、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、10モル%以上含まれていることが好ましく、20モル%以上含まれていることがより好ましい。
前記アクリル系ポリマーが、上記のようなものであることにより、ダイボンド層3を粘着剤層2から剥離させるに際して、ダイボンド層3に対する粘着剤層2の剥離力をより一層低下させることができる。
これにより、ピックアップ工程をより一層スムーズに実施することができる。
【0032】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位では、該構成単位に含まれる水酸基が、イソシアネート基と容易に反応する。
そのため、粘着剤層2中に、前記アクリル系ポリマーとして、前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位とによって構成されているものを含有させるとともに、イソシアネート化合物を含有させておくことにより、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位中の水酸基と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基とが反応するようになって、粘着剤層2を適度に硬化させることができる。
【0033】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する。
すなわち、重合後の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの構造が、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位である。
【0034】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、水酸基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリレートの構成単位であることが好ましい。
前記水酸基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリレートの構成単位において、アルキルは、通常、飽和炭化水素である。
例えば、前記アルキルは、直鎖状飽和炭化水素、または、分岐鎖状飽和炭化水素である。
また、前記アルキルは、酸素や窒素などを含有する極性基を含んでいないことが好ましい。
前記水素基含有(メタ)アクリレートの構成単位において、水酸基は、アルキルのいずれの炭素に結合していてもよいものの、アルキルの末端の炭素に結合していることが好ましい。
【0035】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、または、ヒドロキシn-ブチル(メタ)アクリレート若しくはヒドロキシiso-ブチル(メタ)アクリレートといったヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような構成単位が挙げられる。
これらの水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位のなかでも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの構成単位が好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの構成単位がより好ましい。
【0036】
本実施形態において、前記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位と、重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位とによって構成されていることが好ましい。
前記アクリル系ポリマーが、重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位を含んでいることにより、ピックアップ工程前に、粘着剤層2に活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射することによって、粘着剤層2を硬化させることができる。
具体的には、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を粘着剤層2に照射させることによって、粘着剤層2中に含まれる前記アクリル系ポリマーどうしを架橋させることにより、粘着剤層2を硬化させることができる。
架橋反応をより進行させ易くする観点から、粘着剤層2は、光重合開始剤を含んでいることが好ましい。粘着剤層2が光重合開始剤を含んでいることにより、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射させることによって、前記光重合開始剤からラジカルを発生させて、このラジカルの作用により、前記アクリル系ポリマーどうしの架橋反応をより進行させることができる。
このように、活性エネルギー線(例えば、紫外線)が照射されて粘着剤層2が硬化されると、ダイボンド層3に対する粘着剤層2の粘着力が低下する。その結果、粘着剤層2から、ダイボンド層付半導体チップを容易にピックアップすることができる。
なお、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射する前においては、粘着剤層2中において、前記アクリル系ポリマーどうしの架橋反応は十分に進行していないので、粘着剤層2は十分な粘着性を有しており、ダイボンド層3を十分に粘着して保持することができる。
【0037】
前記重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、水酸基と結合可能な官能基および重合性官能基を分子中に有するモノマーを、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位に結合させることで形成され得る。
前記水素結合と結合可能な官能基は、水酸基との反応性が比較的高いイソシアネート基であることが好ましい。このような場合、前記重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、分子両末端に、イソシアネート基と、重合性基官能基とを有するものが好ましい。
また、前記重合性官能基は、ビニル基であることが好ましい。このような場合、前記重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、分子両末端に、イソシアネート基と、ビニル基とを有することが好ましい。
また、前記ビニル基は、(メタ)アクリロイル基の一部であってもよい。
前記重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位中の水酸基に、イソシアネート基を含有する前記重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位中の前記イソシアネート基がウレタン結合した分子構造を有していてもよい。
なお、以下では、イソシアネート基を含有する前記重合性基含有(メタ)アクリレートモノマーをイソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーと呼ぶことがある。
【0038】
前記アルキル系ポリマーが、前記アルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位と、前記重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位とによって構成されているものである場合、以下のようにして得ることができる。
具体的には、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとを重合反応させて、アルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位とを含むアルキル系ポリマーの中間体を得た後、前記アルキル系ポリマーの中間体と、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーとを重合反応させることにより、前記アルキル系ポリマーを得ることができる。
すなわち、重合反応を二段階に分けて行うことにより、前記アクリル系ポリマーを得ることができる。
なお、前記アクリル系ポリマーの中間体と、前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーとの重合反応は、前記アクリル系ポリマーの中間体における水酸基と、前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーのイソシアネート基とをウレタン結合させることによって実施することができる。
【0039】
前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に、イソシアネート基を1個有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を1個有するものであることが好ましい。
このような前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、4-アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0040】
粘着剤層2は、イソシアネート化合物を含んでいることが好ましい。
前記イソシアネート化合物は、一部がウレタン化反応などによって反応した後の状態であってもよい。
前記イソシアネート化合物は、分子中に、複数のイソシアネート基を含むことが好ましい。複数のイソシアネート基を含むことにより、前記アクリル系ポリマーが、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位を有するものである場合には、粘着剤層2における前記アクリル系ポリマーどうしの架橋反応を進行させることができる。
具体的には、前記イソシアネート化合物の一のイソシアネート基を一の前記アクリル系ポリマーの水酸基を反応させ、前記イソシアネート化合物の他のイソシアネート基を他の前記アクリル系ポリマーの水酸基と反応させることによって、複数のイソシアネート基を含むイソシアネート化合物を介して、架橋反応を進行させることができる。
すなわち、前記イソシアネート化合物は、架橋剤として機能する。
【0041】
粘着剤層2は、前記イソシアネート化合物を、前記アクリル系ポリマーの100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下含むことが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下含むことがより好ましく、0.75質量部以上2質量部以下含むことがさらに好ましい。
【0042】
前記イソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、または、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。
【0043】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチルなどが挙げられる。
前記脂環族ジイソシアネートとしては、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサンなどが挙げられる。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3’-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4’-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(α-イソシアナトイソプロピル)ベンゼン、1,4-(α-イソシアナトイソプロピル)などが挙げられる。
【0044】
また、前記イソシアネート化合物としては、トリイソシアネートが挙げられる。
前記トリイソシアネートとしては、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,6-ジイソシアナトカプロン酸-2-イソシアナトエチルなどが挙げられる。
さらに、前記イソシアネート化合物としては、ジイソシアネートの二量体や三量体などの重合ポリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
また、前記イソシアネート化合物としては、上記したイソシアネート化合物の過剰量と、活性水素含有化合物とを反応させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。
前記活性水素含有化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングルコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビット、シュクロース、ヒマシ油、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水、アンモニア、尿素などが挙げられる。
また、種々のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなども挙げられる。
【0046】
さらに、前記ジイソシアネート化合物としては、アロファネート化ポリイソシアネート、ビウレット化ポリイソシアネートなども用いることができる。
上記の各種イソシアネート化合物は、1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
前記イソシアネート化合物としては、前記芳香族ジイソシアネートと前記活性水素含有化合物との反応物であることが好ましい。
このような反応物は、イソシアネート基の反応速度が比較的遅いため、粘着剤層2に含ませた場合に、粘着剤層2において過度に硬化反応が進行することを抑制できる。
このような反応物としては、分子中にイソシアネート基を3個以上含むものを用いることが好ましい。
【0048】
粘着剤層2は、上記したように、前記アクリル系ポリマーどうしの架橋反応をより進行させ易くする観点から、光重合開始剤を含んでいることが好ましい。
前記光重合開始剤としては、α-ケトール化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、および、アシルホスフォナートが挙げられる。
α-ケトール化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。
アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、および、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2メチルプロピオニル)ベンゾイル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。
ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、および、アニソインメチルエーテルが挙げられる。
ケタール化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタール化合物が挙げられる。
芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。
光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン安息香酸、および、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および、2,4-ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。
これらの中でも、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2メチルプロピオニル)ベンゾイル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 127)を用いることが好ましい。
【0049】
粘着剤層2は、前記光重合開始剤を、前記アクリル系ポリマーの100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下含むことが好ましく、0.5質量部以上7質量部以下含むことがより好ましく、0.75質量部以上5質量部以下含むことがさらに好ましい。
【0050】
粘着剤層2は、上記した以外の他の成分を含んでいてもよい。
前記他の成分としては、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、軽剥離化剤などが挙げられる。
【0051】
粘着剤層2の厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上25μm以下であることがさらに好ましい。
粘着剤層2の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0052】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20においては、粘着剤層2の露出部分およびダイボンド層3との積層部分のそれぞれについて、FTIR分析を行い、粘着剤層2の露出部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH1とし、粘着剤層2の露出部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT1とし、ダイボンド層3との積層部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH2とし、ダイボンド層3との積層部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT2としたときに、下記式(1)で算出されるRの値が1.5以下である。
【0053】
【数2】
【0054】
前記FTIR分析は、測定装置として、フーリエ変更赤外分光光度計(Thermo Scientific社製、商品名「Nicolet iS10 FT-IR」)を用いて、以下の条件を採用することにより行うことができる。

・測定光:偏光
・測定モード:全反射減衰分光(ATR)
・測定範囲:600cm-1~4000cm-1
・測定間隔:0.5cm-1ごと
【0055】
また、ピーク高さT1およびT2、並びに、全ピーク高さの総和H1およびH2は、上記のようにしてFTIR分析を行ったときに取得された、粘着剤層2の露出部分についてのデータ、および、ダイボンド層3との積層部分についてのデータを、横軸を波数(単位はcm-1)、縦軸を検出強度(abs)としたグラフ上にそれぞれプロットした後、それぞれのデータ系列ごとにプロットしたデータどうしを繋ぐような曲線を引き、各曲線を解析することにより求めることができる。
【0056】
1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に複数のピークが認められる場合には、ピーク高さT1およびT2としては、複数のうちの最も高いピークの高さ(検出強度)を求めることにより測定することができる。
なお、ピーク高さは、波数を示す軸(横軸)からのピークの高さを意味する。
また、全ピーク高さの総和H1およびH2は、675cm-1以上900cm-1以下の範囲における各曲線上、すなわち、粘着剤層2の露出部分についての曲線およびダイボンド層3との積層部分についての曲線上に現れる、上に凸となる全てのピークの高さの総和を算出することにより求めることができる。
【0057】
ピーク高さT1およびT2、並びに、全ピーク高さの総和H1およびH2は、ランダムに選んだ任意の5箇所について求めた値を算術平均することにより求める。
なお、ダイボンド層3との積層部分については、ダイボンド層3の一方面(粘着剤層2と当接していない側の面)に、剥離用テープ(例えば、日東電工社製の商品名「ELP BT-315」)を貼り付けて、手で軽く力を加えながら粘着剤層2からダイボンド層3を剥離することにより、粘着剤層2の露出面を出現させ、その露出面からランダムに選んだ任意の5箇所について、前記FTIR分析を行う。
【0058】
なお、FT-IR分析を行ったときに675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れるピークは、芳香族化合物由来のピークを意味し、1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク(複数のピークが認められる場合には、最も高いピーク)は、カルボニル基由来のピークを意味する。
このことから、上記式(1)において、H1/T1は、粘着剤層2の露出部分における、アクリル系ポリマーの量に対する芳香族化合物の量の比を意味し、H2/T2は、ダイボンド層3との積層部分における、アクリル系ポリマーの量に対する芳香族化合物の量の比を意味している。
すなわち、上記式(1)で算出されるRの値が1.5以下であるとは、ダイボンド層3との積層部分における、アクリル系ポリマーの量を基準とした芳香族化合物の量が、粘着剤層2の露出部分における、アクリル系ポリマーの量を基準とした芳香族化合物の量と比較的近い値であることを意味している。
このことから、上記式(1)で算出されるRの値は、1.4以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。
なお、上記式(1)で算出されるRの値は、後述するように、ダイボンド層3から粘着剤層2への成分移行によって変動するものであることから、その下限値は1である。
【0059】
なお、上記式(1)で算出されるRの値は、粘着剤層2を、アクリル系ポリマーを含むものとし、ダイボンド層3を、芳香族化合物を含むものとした上で、ダイボンド層3に含まれる芳香族化合物の量を適宜調整することにより調整することができる。
また、前記Rの値は、粘着剤層2に含まれるアクリル系ポリマーを、炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位や、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの構成単位を含むものとすることにより、より調整し易くなる。
【0060】
粘着剤層2は、上記のごとき各成分を含む粘着剤組成物を、アプリケータなどを用いて樹脂フィルムなどの表面に塗布した後、塗布後の前記粘着剤組成物を乾燥させることにより、得ることができる。
【0061】
ダイボンド層3は、樹脂成分を含む。
ダイボンド層3は、熱硬化性を有することが好ましい。
ダイボンド層3に熱硬化性樹脂および熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含ませることにより、ダイボンド層3を、熱硬化性を有するものとすることができる。
【0062】
ダイボンド層3が熱硬化性樹脂を含む場合、このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0063】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、及び、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0064】
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、及び、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。
なお、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能する。
【0065】
ダイボンド層3が、熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、このような熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂が挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂におけるアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含むものが挙げられる。
熱硬化性官能基を有する熱硬化性樹脂においては、熱硬化性官能基の種類に応じて、硬化剤が選ばれる。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の成分に由来するモノマー単位を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリルニトリル等の官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマー等が挙げられる。ダイボンド層において高い凝集力を実現するという観点から、上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル(特に、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)と、カルボキシ基含有モノマーと、窒素原子含有モノマーと、多官能性モノマー(特に、ポリグリシジル系多官能モノマー)との共重合体であることが好ましく、アクリル酸エチルと、アクリル酸ブチルと、アクリル酸と、アクリロニトリルと、ポリグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体であることがより好ましい。
【0067】
ダイボンド層3は、樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めたりする観点から、熱硬化触媒(硬化促進剤)を含有していてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。
ダイボンド層3は、前記リン系化合物を含んでいることが好ましい。
前記リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリ(p-トリル)ホスフィン(TPTP)、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPP-K)、テトラブチルホスホニウムラウレート(TBPLA)、および、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロナフタレート(TBS-3S)が挙げられる。
ダイボンド層3は、前記熱硬化触媒として、イミダゾール系化合物を含んでいてもよい。
前記イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
【0068】
ダイボンド層3は、前記樹脂成分として、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂はバインダとして機能する。熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド6やポリアミド6,6等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく、かつ、耐熱性が高いために、ダイボンド層3による接続信頼性が確保し易くなるという観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0069】
上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を質量割合で最も多いモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記したものと同様のものを用いることができる。
【0070】
ダイボンド層3は、必要に応じて、1種又は2種以上の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
【0071】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20においては、ダイボンド層3が芳香族化合物を含むことが重要である。
なお、本明細書において、芳香族化合物とは、芳香族炭化水素および複素芳香族化合物を意味する。
ダイボンド層3に、前記樹脂成分として、芳香族化合物を含ませたり、前記熱硬化触媒として、芳香族化合物を含ませたりすることにより、ダイボンド層3は、芳香族化合物を含むものとなる。
芳香族環化合物としての樹脂としては、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などが挙げられる。
芳香族化合物としての熱硬化触媒としては、上記したイミダゾール系化合物や上記したリン系化合物などが挙げられる。
【0072】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20が、ダイボンド層3を粘着剤層2から剥離させるに際して、ダイボンド層3に対する粘着剤層2の剥離力を十分に低下させることができる理由について、本発明者らは以下のように推察している。
【0073】
従来のダイシングダイボンドフィルム20においては、ダイボンド層3と粘着剤層2との親和性を高める観点から、ダイボンド層3の極性(表面自由エネルギー)と粘着剤層2の極性(表面自由エネルギー)との差が比較的小さくなるように、ダイボンド層3の構成と粘着剤層2の構成とが決定されることが多い。
また、ダイシングダイボンドフィルム20においては、ダイボンド層3は芳香族化合物を含むように構成され、粘着剤層2はアクリル系ポリマーを含むように構成されることが多い。
このように構成されるダイシングダイボンドフィルム20においては、ダイボンド層3の極性と粘着剤層2の極性との差が小さいことから、ダイボンド層3が粘着剤層2上に積層されている状態において、ダイボンド層3に含まれている芳香族化合物が粘着剤層2に成分移行し易くなっていると考えられる(主として、芳香族化合物としての熱硬化触媒が成分移行し易くなっていると考えられる)。
ここで、ダイボンド層3に含まれる芳香族化合物が粘着剤層2に成分移行すると、芳香族化合物が成分移行した量に応じて、ダイボンド層3の表面(粘着剤層2との接触面)に凹部が形成されるようになると考えられる。すなわち、従来のダイシングダイボンドフィルム20においては、ダイボンド層3に含まれる芳香族化合物が粘着剤層2に成分移行し易くなっている分、ダイボンド層3の表面には、比較的大きな凹部が形成されていると考えられる。
そして、ダイボンド層3の表面に比較的大きな凹部が形成されると、上記のように、ダイボンド層3の極性と粘着剤層2の極性との差は比較的小さい場合には、粘着剤層2の一部が前記凹部内に浸入し易くなると考えられる。
このように、粘着剤層2の一部が前記凹部に浸入した状態で、粘着剤層2に紫外線などの活性エネルギー線が照射されて粘着剤層2が硬化されると、ダイボンド層と粘着剤層2との間に比較的大きなアンカー効果が生じるようになると考えられる。
その結果、ダイボンド層3に対する粘着剤層2の剥離力を十分に低下できなくなると考えられる。
【0074】
これに対し、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20では、粘着剤層2の露出部分およびダイボンド層3との積層部分のそれぞれについて、FTIR分析を行い、粘着剤層2の露出部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH1とし、粘着剤層2の露出部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT1とし、ダイボンド層3との積層部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH2とし、ダイボンド層3との積層部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT2としたときに、下記式(1)で算出されるRの値が1.5以下となっている。
上記したように、下記式(1)において、H1/T1は、粘着剤層2の露出部分における、アクリル系ポリマーの量に対する芳香族化合物の量の比を意味し、H2/T2は、ダイボンド層3との積層部分における、アクリル系ポリマーの量に対する芳香族化合物の量の比を意味している。
すなわち、下記式(1)で算出されるRの値が1.5以下であるとは、ダイボンド層3との積層部分における、アクリル系ポリマーの量を基準とした芳香族化合物の量が、粘着剤層2の露出部分における、アクリル系ポリマーの量を基準とした芳香族化合物の量と比較的近い値であることを意味している。
このことから、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20では、ダイボンド層3から粘着剤層2への芳香族化合物の移行が比較的抑制できているので、ダイボンド層3の表面に形成される凹部は、比較的小さくなっており、ダイボンド層3と粘着剤層2との間に生じるアンカー効果は比較的小さくなっていると考えられる。
その結果、ダイボンド層3を粘着剤層2から剥離させるに際して、ダイボンド層3に対する粘着剤層2の剥離力を十分に低下させることができていると、本発明者らは推察している。
【0075】
【数3】
【0076】
ダイボンド層3は、フィラーを含有していてもよい。
ダイボンド層3に含有させるフィラーの量を変えることにより、ダイボンド層3の弾性及び粘性をより容易に調整することができる。
また、ダイボンド層3の導電性、熱伝導性、弾性率などの物性を調整することができる。
フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられる。フィラーとしては、無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶質シリカや非晶質シリカといったシリカなどを含むフィラーが挙げられる。
また、無機フィラーの材質としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属単体や、合金などが挙げられる。
無機フィラーは、ホウ酸アルミニウムウィスカ、アモルファスカーボンブラック、グラファイトなどであってもよい。
フィラーの形状は、球状、針状、フレーク状などの各種形状であってもよい。
フィラーとしては、上記の1種のみを用いてもよいし、上記の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
前記フィラーの平均粒径は、0.005μm以上10μm以下であることが好ましく、0.005μm以上1μm以下であることがより好ましい。
前記フィラーの平均粒径が0.005μm以上であることにより、半導体ウェハ等の被着体に対する濡れ性や接着性をより一層向上させることができる。
また、前記フィラーの平均粒径が10μm以下であることにより、含有させたフィラーによる特性をより十分に発揮させることができることに加えて、ダイボンド層3の耐熱性をより一層発揮させることができる。
前記フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(例えば、製品名「LA-910」、堀場製作所社製)を用いて求めることができる。
【0078】
ダイボンド層3がフィラーを含有する場合、その含有量は、ダイボンド層3の総質量に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、42質量%以上55質量%以下であることがさらに好ましい。
【0079】
ダイボンド層3の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上200μm以下である。斯かる厚さは、3μm以上150μm以下であってもよく、5μm以上135μm以下であってもよい。
【0080】
なお、ダイボンド層3は、上記のごとき各成分を含む接着剤組成物を、アプリケータなどを用いて樹脂フィルムなどの表面に塗布した後、塗布後の前記接着剤組成物を乾燥させることにより得ることができる。
また、粘着剤層2へのダイボンド層3の取り付けは、上記のようにして作製された粘着剤層2上に、ダイボンド層3を積層させることにより実施することができる。
【0081】
基材層1は、粘着剤層2を支持する。
基材層1は、金属箔、繊維シート、ゴムシート、または、樹脂フィルムなどを用いて作製される。
基材層1は、樹脂フィルムを用いて作製されていることが好ましい。
基材層1は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0082】
前記繊維シートとしては、紙、織布、または、不織布などによって構成されたものが挙げられる。
【0083】
樹脂フィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステルランダム共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル交互共重合体などのエチレンの共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアクリレート;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)などのポリアミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体);セルロースまたはセルロース誘導体;含シリコーン高分子;含フッ素高分子などが挙げられる。
これらは、1種のみで用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0084】
基材層1が樹脂フィルムによって作製されたものである場合には、基材層1は、無延伸成形により得られてもよいし、延伸成形により得られてもよいが、延伸成形により得られることが好ましい。
【0085】
基材層1における粘着剤層2が積層される側の面(以下、単に表面ともいう)には、粘着剤層2との密着性を高める観点から、表面処理が施されていてもよい。
表面処理としては、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的方法または物理的方法による酸化処理などが採用されてもよい。
また、表面処理として、アンカーコーティング剤、プライマー、接着剤などのコーティング剤によるコーティング処理が施されてもよい。
【0086】
基材層1における粘着剤層2が積層されない側の面(以下、単に裏面ともいう)には、剥離性を高めるために、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの離型剤(剥離剤)などによってコーティング処理が施されてもよい。
【0087】
基材層1の厚さは、55μm以上195μm以下であることが好ましく、55μm以上190μm以下であることがより好ましく、55μm以上170μm以下であることがさらに好ましく、60μm以上160μm以下であることが最適である。基材層1の厚さを前記の範囲とすることにより、ダイシングテープ10を効率良く製造することができる。
また、ダイシングダイボンドフィルム20のダイボンド層3を効率良く割断することができる。
基材層1の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0088】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、例えば、半導体集積回路を製造するための補助用具として使用される。以下、ダイシングダイボンドフィルム20の使用の具体例について説明する。
以下では、基材層1が一層であるダイシングダイボンドフィルム20を用いた例について説明する。
【0089】
半導体集積回路を製造する方法は、半導体ウェハを割断処理によってチップ(ダイ)へ加工すべく半導体ウェハに溝を形成するハーフカット工程と、ハーフカット工程後の半導体ウェハを研削して厚さを薄くするバックグラインド工程と、バックグラインド工程後の半導体ウェハの一面(例えば、回路面とは反対側の面)をダイボンド層3に貼付して、ダイシングテープ10に半導体ウェハを固定するマウント工程と、半導体チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程と、半導体チップ同士の間隔を維持するカーフ維持工程と、ダイボンド層3と粘着剤層2との間を剥離してダイボンド層3が貼付された状態で半導体チップ(ダイ)を取り出すピックアップ工程と、ダイボンド層3が貼付された状態の半導体チップ(ダイ)を被着体に接着させるダイボンド工程と、を有する。これらの工程を実施するときに、本実施形態のダイシングテープ(ダイシングダイボンドフィルム)が製造補助用具として使用される。
【0090】
ハーフカット工程では、図2A及び図2Bに示すように、半導体集積回路を小片(ダイ)に割断するためのハーフカット加工を施す。詳しくは、半導体ウェハWの回路面とは反対側の面に、ウェハ加工用テープTを貼り付ける(図2A参照)。また、ウェハ加工用テープTにダイシングリングRを取り付ける(図2A参照)。ウェハ加工用テープTを貼付した状態で、分割用の溝を形成する(図2B参照)。バックグラインド工程では、図2C及び図2Dに示すように、半導体ウェハを研削して厚さを薄くする。詳しくは、溝を形成した面にバックグラインドテープGを貼付する一方で、始めに貼り付けたウェハ加工用テープTを剥離する(図2C参照)。バックグラインドテープGを貼付した状態で、半導体ウェハWが所定の厚さになるまで研削加工を施す(図2D参照)。
なお、バックグラインド工程において、半導体ウェハの厚さが20μm以上30μm以下と特に薄い場合には、後述するピックアップ工程において、ピン部材Pを用いて半導体チップを突き上げたときに、該半導体チップに変形や割れが生じ易くなるものの、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、上記のごとく構成されているので、ピックアップ工程において、半導体チップに変形や割れた生じることを比較的抑制することができる。
【0091】
マウント工程では、図3A図3Bに示すように、ダイシングテープ10の粘着剤層2にダイシングリングRを取り付けた後、露出したダイボンド層3の面に、ハーフカット加工された半導体ウェハWを貼付する(図3A参照)。その後、半導体ウェハWからバックグラインドテープGを剥離する(図3B参照)。
【0092】
エキスパンド工程では、図4A図4Cに示すように、ダイシングリングRをエキスパンド装置の保持具Hに固定する。エキスパンド装置が備える突き上げ部材Uを用いて、ダイシングダイボンドフィルム20を下側から突き上げることによって、ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に広げるように引き伸ばす(図4B参照)。これにより、特定の温度条件において、ハーフカット加工された半導体ウェハWを割断する。上記温度条件は、例えば-20~5℃であり、好ましくは-15~0℃、より好ましくは-10~-5℃である。突き上げ部材Uを下降させることによって、エキスパンド状態を解除する(図4C参照)。
さらに、エキスパンド工程では、図5A図5Bに示すように、より高い温度条件下(例えば、室温(23±2℃))において、面積を広げるようにダイシングテープ10を引き延ばす。これにより、割断された隣り合う半導体チップをフィルム面の面方向に引き離して、さらに間隔を広げる。
【0093】
カーフ維持工程では、図6に示すように、ダイシングテープ10に熱風(例えば、100~130℃。矢印で図示)を当ててダイシングテープ10を熱収縮させた後冷却固化させて、割断された隣り合う半導体チップ間の距離(カーフ)を維持する。
【0094】
ピックアップ工程では、図7に示すように、ダイボンド層3が貼付された状態の半導体チップをダイシングテープ10の粘着剤層2から剥離する。詳しくは、ピン部材Pを上昇させて、ピックアップ対象の半導体チップを、ダイシングテープ10を介して突き上げる。突き上げられた半導体チップを吸着治具Jによって保持する。
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20では、粘着剤層2の露出部分およびダイボンド層3との積層部分のそれぞれについて、FTIR分析を行い、粘着剤層2の露出部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH1とし、粘着剤層2の露出部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT1とし、ダイボンド層3との積層部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH2とし、ダイボンド層3との積層部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT2としたときに、上記式(1)で算出されるRの値が1.5以下であるので、ダイボンド層3に対する粘着剤層2の剥離力を十分に低下させた状態で、ピックアップ工程を実施することができる。
すなわち、ピックアップ工程をスムーズに実施することができる。
【0095】
ダイボンド工程では、ダイボンド層3が貼付された状態の半導体チップを被着体に接着させる。
【0096】
なお、本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0097】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0098】
[実施例1]
<アクリル系ポリマーの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器内に、下記表1に示す配合割合で、(メタ)アクリルモノマーを入れるとともに、熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(以下、BPOという)を前記(メタ)アクリルモノマーの100質量部に対して0.2質量部を加え、さらに、前記(メタ)アクリルモノマーの濃度が52%となるように反応溶剤としてのトルエンを加えた後、窒素気流下で、62℃にて4時間重合、78℃にて2時間重合処理をし、中間体としての第1アクリル系ポリマーを得た。
この第1アクリル系ポリマーを含む溶液に、下記表1に示す配合割合で、(メタ)アクリルモノマーを入れるとともに、第1アクリル系ポリマーAの100質量部に対してジラウリル酸ジブチルスズ0.06質量部を加え、空気気流下で、50℃にて12時間付加反応処理をし、実施例1に係るアクリル系ポリマーを得た。
ここで、第1アクリル系ポリマーを得るに際して、(メタ)アクリレートモノマーとして、2-イソシアナイトエチルメタクリレート(以下、MOIという)を用いているが、MOIは、HEAと付加重合するものであるため、(メタ)アクリレートモノマーのモル%に含めていない。
なお、前記MOIとしては、昭和電工社製の商品名「カレンズMOI(登録商標)」を用いた。「カレンズMOI(登録商標)」は、イソシアネート基を有する重合性基含有(メタ)アクリレートであり、重合性基としてビニル基を有するものである。
【0099】
<粘着剤溶液の作製>
実施例1に係るアクリル系ポリマーを含む溶液に、架橋剤としてのポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)、及び、光重合開始剤(商品名「Omnirad127」、IGM Resins社製)を、下記表1に示す配合割合で加えて、実施例1に係る粘着剤溶液を作製した。
なお、下記表1に示す架橋剤の質量部、および、光重合開始剤の質量部は、実施例1に係るアクリル系ポリマーの100質量部に対する値である。
【0100】
<ダイシングテープの作製>
実施例1に係る粘着剤溶液を、シリコーン離型処理が施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケータを用いて塗布し、120℃で2分間乾燥し、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。その後、該粘着剤層上に、基材層としてのクラボウ社製のポリオレフィンフィルム(商品名「RB-0192」、厚さ120μm)を貼り合せ、50℃で24時間保存し、実施例1に係るダイシングテープを得た。
【0101】
<ダイボンド層の作製>
アクリル樹脂(商品名「SG-N80」、ナガセケムテックス社製、ガラス転移温度-23℃)100質量部に対して、エポキシ樹脂(商品名「EPPN 501HY」、日本化薬社製)210質量部、フェノール樹脂1(商品名「LVR8210-DL」、群栄化学社製)100質量部、フェノール樹脂2(商品名「HF-1M」、明和化成社製)33質量部、球状シリカ(商品名「SE2050-MCV」、アドマテックス社製、平均粒子径500nm)440質量部(球状シリカ換算)、シランカップリング剤(商品名「KBM-303」、信越化学社製)3質量部、及び、熱硬化触媒(商品名「TPP-K」、北興化学社製)0.5質量部をメチルエチルケトンに加えて混合し、実施例1に係る接着剤組成物を調製した。
次に、シリコーン離型処理が施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケータを用いて実施例1に係る接着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜について130℃で2分間の脱溶媒処理を行った。これにより、厚さ(平均厚さ)40μmのダイボンド層をPETセパレータ上に作製した(ダイボンド層付PETセパレータを作製した)。
そして、2組のダイボンド層付PETセパレータについてダイボンド層どうしを重ね合せた後(PETセパレータが外側となるように重ね合せた後)、一方のPETセパレータを剥離してダイボンド層を露出させ、露出させたダイボンド層に、さらに、1組のダイボンド層付PETセパレータのダイボンド層を重ね合せた。このようにして3個のダイボンド層を重ね合せた後、ロールラミネータを用いて貼り合せを行うことにより、厚さ120μmのダイボンド層を作製した。
なお、ロールラミネータを用いた貼り合せは、貼り合せ速度10mm/秒、温度90℃、および、圧力0.15MPaの条件で行った。
【0102】
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
まず、両面にPETセパレータが貼り合わされたダイボンド層を330mmφの円形に打ち抜いた。
次に、実施例1に係るダイシングテープからPETセパレータを取り除いて粘着剤層の一方面を露出させるとともに、両面にPETセパレータが貼り合わされたダイボンド層の一方側からPETセパレータを取り除いてダイボンド層の一方面を露出させた後、室温(23±2℃)にてダイボンド層の露出面と粘着剤層の露出面とを重ね合せた。
そして、ロールラミネータを用いて貼り合せを行うことにより、実施例1に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
すなわち、実施例1に係るダイシングテープは、ポリオレフィンフィルム、粘着剤層、ダイボンド層、及び、PETセパレータが、この順に積層されて構成されたものであった。
なお、ロールラミネータを用いた貼り合せは、貼り合せ速度10mm/秒、温度23±2℃、および、圧力0.15MPaの条件で行った。
【0103】
[実施例2]
<アクリル系ポリマーの合成>
(メタ)アクリルモノマーを下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るアクリル系モノマーを得た。
<粘着剤溶液の作製>
実施例2に係るアクリル系モノマーを用いて、実施例1と同様にして、実施例2に係る粘着剤溶液を得た。
<ダイシングテープの作製>
実施例2に係る粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、実施例2に係るダイシングテープを得た。
<ダイボンド層の作製>
実施例1と同様にして、実施例2に係るダイボンド層を得た。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
実施例2に係るダイシングテープ、および、実施例2に係るダイボンド層を用いて、実施例1と同様にして、実施例2に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0104】
[実施例3]
<アクリル系ポリマーの合成>
(メタ)アクリルモノマーを下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るアクリル系モノマーを得た。
<粘着剤溶液の作製>
実施例3に係るアクリル系モノマーを用いて、実施例1と同様にして、実施例3に係る粘着剤溶液を得た。
<ダイシングテープの作製>
実施例3に係る粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、実施例3に係るダイシングテープを得た。
<ダイボンド層の作製>
実施例1と同様にして、実施例3に係るダイボンド層を得た。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
実施例3に係るダイシングテープ、および、実施例3に係るダイボンド層を用いて、実施例1と同様にして、実施例3に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0105】
[実施例4]
<アクリル系ポリマーの合成>
(メタ)アクリルモノマーを下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係るアクリル系モノマーを得た。

<粘着剤溶液の作製>
実施例4に係るアクリル系モノマーを用いて、実施例1と同様にして、実施例4に係る粘着剤溶液を得た。
<ダイシングテープの作製>
実施例4に係る粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、実施例4に係るダイシングテープを得た。
<ダイボンド層の作製>
実施例1と同様にして、実施例4に係るダイボンド層を得た。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
実施例4に係るダイシングテープ、および、実施例4に係るダイボンド層を用いて、実施例4に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0106】
[実施例5]
<アクリル系ポリマーの合成>
(メタ)アクリルモノマーを下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係るアクリル系モノマーを得た。
<粘着剤溶液の作製>
実施例5に係るアクリル系モノマーを用いて、実施例1と同様にして、実施例5に係る粘着剤溶液を得た。
<ダイシングテープの作製>
実施例5に係る粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、実施例5に係るダイシングテープを得た。
<ダイボンド層の作製>
実施例1と同様にして、実施例5に係るダイボンド層を得た。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
実施例5に係るダイシングテープ、および、実施例5に係るダイボンド層を用いて、実施例5に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0107】
[実施例6]
<アクリル系ポリマーの合成>
(メタ)アクリルモノマーを下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係るアクリル系モノマーを得た。
<粘着剤溶液の作製>
実施例6に係るアクリル系ポリマーを用い、架橋剤(コロネートL)および光重合開始剤(Omnirad127)を下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る粘着剤溶液を得た。
<ダイシングテープの作製>
実施例6に係る粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、実施例6に係るダイシングテープを得た。
<ダイボンド層の作製>
実施例1と同様にして、実施例6に係るダイボンド層を得た。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
実施例6に係るダイシングテープ、および、実施例6に係るダイボンド層を用いて、実施例6に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0108】
[比較例1]
<アクリル系ポリマーの合成>
(メタ)アクリルモノマーを下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るアクリル系ポリマーを得た。
<粘着剤溶液の作製>
比較例1に係るアクリル系ポリマーを用い、架橋剤(コロネートL)および光重合開始剤(Omnirad127)を下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る粘着剤溶液を得た。
<ダイシングテープの作製>
比較例1に係る粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、比較例1に係るダイシングテープを得た。
<ダイボンド層の作製>
実施例1と同様にして、比較例1に係るダイボンド層を得た。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
比較例1に係るダイシングテープ、および、比較例1に係るダイボンド層を用いて、比較例1に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0109】
[比較例2]
<アクリル系ポリマーの合成>
(メタ)アクリルモノマーを下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るアクリル系ポリマーを得た。
<粘着剤溶液の作製>
比較例2に係るアクリル系ポリマーを用い、架橋剤(コロネートL)および光重合開始剤(Omnirad127)を下記表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る粘着剤溶液を得た。
<ダイシングテープの作製>
比較例2に係る粘着剤溶液を用いて、実施例1と同様にして、比較例2に係るダイシングテープを得た。
<ダイボンド層の作製>
実施例1と同様にして、比較例2に係るダイボンド層を得た。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
比較例2に係るダイシングテープ、および、比較例2に係るダイボンド層を用いて、比較例2に係るダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0110】
なお、下記表1において、LAは、ラウリルアクリレート(炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート)を意味し、INAは、イソノニルアクリレート(炭素数9以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート)を意味し、2EHAは、2-エチルヘキシルアクリレートを意味し、BAは、ブチルアクリレートを意味し、EAは、エチルアクリレートを意味し、HEAは、2-ヒドロキシエチルアクリレート(水酸基含有(メタ)アクリレート)を意味する。
【0111】
【表1】
【0112】
(FTIR分析)
各例に係るダイシングダイボンドフィルムについて、上記の実施形態の項で説明したようにして、粘着剤層の露出部分およびダイボンド層との積層部分のそれぞれについてFTIR分析を行い、粘着剤層の露出部分およびダイボンド層との積層部分のそれぞれについてのデータを取得した。
次に、取得したデータを、横軸を波数(単位はcm-1)、縦軸を検出強度(abs)としたグラフ上にそれぞれプロットした後、それぞれのデータ系列ごとに、プロットしたデータどうしを繋ぐ曲線を引いた。
そして、上記曲線に基づいて、粘着剤層の露出部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和H1、粘着剤層の露出部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さT1、ダイボンド層との積層部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和H2、および、ダイボンド層との積層部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さT2を求めた。
なお、全ピーク高さの総和H1およびH2、並びに、ピーク高さT1およびT2は、上記の実施形態の項で説明したようにして求めた。
また、下記式(1)を用いて、Rの値を求めた。
各例について、上記のようにして求めた、H1、H2、T1、T2、および、Rの値を下記表2に示した。
【0113】
【数4】
【0114】
(剥離力)
各例に係るダイシングダイボンドフィルムについて、粘着剤層に対するダイボンド層の剥離力を測定した。粘着剤層に対するダイボンド層の剥離力は、粘着剤層を硬化させた後に測定した。
粘着剤層に対するダイボンド層の剥離力は、T型剥離試験により測定した。
T型剥離試験は、ダイボンド層の露出面に裏打ちテープ(商品名「ELP BT315、日東電工社製」を貼り合せたダイシングダイボンドフィルムに、日東精機製の商品名「UM-810」(高圧水銀ランプ、60mW/cm)を用いて、ダイシングテープ側から強度150J/cmの紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた後、幅50mm×長さ120mmの寸法に切り出したものを測定用サンプルとし、引張試験機(例えば、商品名「TG-1kN」、ミネベアミツミ社製)を用いて、温度25℃、引張強度300mm/分の条件で行った。
上記のようにして測定した剥離力について、下記表2に示した。
【0115】
(ピックアップ性)
割断された状態のダイボンド層付半導体チップについて、ピックアップ性を評価した。
割断された状態のダイボンド層付半導体チップは、以下の手順にしたがって得た。

(1)ハーフカットにより分割用の溝(10mm×10mm)が形成された12インチのベアウェハ(直径300mm、厚さ55μm)について、分割用の溝が形成された面にバックグラインドテープを貼り付ける。
(2)バックグラインダー(DISCO社製、型式DGP8760)を用いて、前記12インチのベアウェハを、前記バックグラインドテープを貼り付けた側と反対側の面から厚さ25μmまで研削して、バックグランドされたベアウェハを得る。
(3)バックグランドされたベアウェハにおけるバックグラインドテープの貼付面と反対側に、各例に係るダイシングダイボンドフィルムのダイボンド層を貼付して、ダイシングダイボンドフィルム付ベアウェハを得る。
(4)ダイシングダイボンド付ベアウェハを、ダイセパレータ装置(商品名「ダイセパレータDDS3200」、ディスコ社製)を用いて、エキスパンドすることにより得た。
なお、ダイセパレート装置を用いたエキスパンドは、前記バックグラインドテープをベアウェハから剥離した状態で行った。
ダイセパレート装置を用いたエキスパンドでは、クールエキスパンドを行った後、常温エキスパンドを行った。
【0116】
クールエキスパンドは、以下の手順にしたがって行った。

(1)ベアウェハに貼り付けられたダイシングダイボンドフィルムの粘着剤層上のフレーム貼着領域に、直径12インチのSUS製リングフレーム(ディスコ社製)を室温にて貼り付ける。
(2)SUS製リングフレームが貼り付けられたベアウェハを、ダイセパレート装置に装着し、該ダイセパレート装置のクールエキスパンダーユニットにて、ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンドすることにより行う。
(3)クールエキスパンドは、エキスパンド温度-15℃、エキスパンド速度100mm/秒、エキスパンド量7mmの条件で行う。

なお、クールエキスパンド後においては、半導体ウェハが複数の半導体チップへと個片化されるとともに、ダイボンド層も半導体チップ相当サイズに個片化されており、複数のダイボンド層付半導体チップが得られていた。
【0117】
常温エキスパンドは、クールエキスパンド後に、前記ダイセパレート装置の常温エキスパンドユニットを用いて、ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンドすることにより行った。
常温エキスパンドは、エキスパンド温度23±2℃、エキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量10mmの条件で行った。
常温エキスパンド後のダイシングテープについて、加熱収縮処理を施した。加熱収縮処理は、温度200℃、時間20秒の条件で行った。
【0118】
ダイシングテープを加熱収縮させた後、ピックアップ機構を有する装置(商品名「ダイボンダー SPA-300」、新川製)を用いて、個片化されたダイボンド層付半導体チップのピックアップ試験を行った。
前記ピックアップ機構を有する装置において、ピン部材による突き上げ速度は1mm/秒とし、突き上げ量は2000μmとした。
前記ピックアップ試験は、日東精機社製の商品名「UM-810」(高圧水銀ランプ、60mW/cm)を用いて、ダイシングテープ側から強度150J/cmの紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた後に行った。
前記ピックアップ試験は、5個のダイボンド層付半導体チップについて行い、ピックアップ性については、以下の基準で判断した。

優 5個のダイボンド層付半導体チップの全てがピックアップできる。
良 5個のダイボンド層付半導体チップのうち3個または4個がピックアップできる。
可 5個のダイボンド層付半導体チップのうち1個または2個がピックアップできる。
不可 5個のダイボンド層付半導体チップの全てがピックアップできない。

ピックアップ性を評価した結果について、下記表2に示した。
【0119】
【表2】
【0120】
表2より、実施例1~6に係るダイシングダイボンドフィルムでは、Rの値は、いずれも1.5以下となっており、剥離力(粘着剤層に対するダイボンド層の剥離力)が、0.3N以下と十分低い値となっていることが分かる。
そして、実施例1~6に係るダイシングダイボンドフィルムでは、いずれもピックアップ性が良好である(良または優である)ことが分かる。
特に、実施例2および5に係るダイシングダイボンドフィルムでは、剥離力が0.14Nと十分に低下しており、ピップアップ性は優と特に良好となっていることが分かる。
【0121】
これに対し、比較例1に係るダイシングダイボンドフィルムでは、剥離力が0.48Nと高い値を示しており、比較例2に係るダイシングダイボンドフィルムでは、剥離力が1.75Nと特に高い値を示していることが分かる。
そして、比較例1に係るダイシングダイボンドフィルムでは、ピックアップ性がやや不良(可)となっており、比較例2に係るダイシングダイボンドフィルムでは、ピックアップ性が不良(不可)となることが分かる。
【0122】
これらの結果より、ダイシングダイボンドフィルムにおいて、粘着剤層の露出部分およびダイボンド層との積層部分のそれぞれについて、FTIR分析を行い、前記粘着剤層の露出部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH1とし、前記粘着剤層の露出部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT1とし、前記ダイボンド層との積層部分での675cm-1以上900cm-1以下の範囲に現れる全ピーク高さの総和をH2とし、前記ダイボンド層との積層部分での1600cm-1以上1800cm-1以下の範囲に現れるピーク高さをT2としたときに、上記式(1)で算出されるRの値が1.5以下であることにより、ダイボンド層を粘着剤層から剥離させるに際して、前記ダイボンド層に対する前記粘着剤層の剥離力を十分に低下させることができることが分かる。
また、前記ダイボンド層に対する前記粘着層の剥離力が十分に低下されることにより、ピックアップ性が良好になって、ピックアップ工程をスムーズに実施できることが分かる。
【符号の説明】
【0123】
1 基材層
2 粘着剤層
3 ダイボンド層
10 ダイシングテープ
20 ダイシングダイボンドフィルム
G バックグラインドテープ
H 保持具
J 吸着治具
P ピン部材
R ダイシングリング
T ウェハ加工用テープ
U 突き上げ部材
W 半導体ウェハ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7