IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックi−PROセンシングソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図1
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図2A
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図2B
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図3
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図4
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図5
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図6
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図7
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図8
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図9
  • 特開-検温システムおよび検温方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178253
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】検温システムおよび検温方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084910
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 征男
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA11
5C122DA16
5C122EA55
5C122FK23
5C122FK28
5C122FK35
5C122FK37
5C122FK42
5C122GE24
5C122GE26
5C122HA65
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB06
5C122HB09
(57)【要約】
【課題】黒体炉より低廉であって黒体炉の性能を代替可能な適正基準体を参照することで周囲環境の影響を緩和し、サーマルカメラの画角内を通過する人物の検温精度の劣化を抑制する。
【解決手段】検温システムは、撮像エリアに配置された気温取得アプリケーションと接続され、撮像エリアの人物を撮像可能な撮像部を有し、撮像部により撮像された撮像画像に基づいて人物の体温を検知するサーマルカメラと、サーマルカメラの画角内に配置され、気温取得アプリケーションにより取得される周囲温度の変化に追随し易い技術的特性を有する適正基準体と、を備える。サーマルカメラは、撮像画像に映る適正基準体および人物のそれぞれの画素値と周囲温度に対応する適正基準体の温度とに基づいて、人物の体温を検知する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像エリアに配置された気温取得アプリケーションと接続され、前記撮像エリアの人物を撮像可能な撮像部を有し、前記撮像部により撮像された撮像画像に基づいて前記人物の体温を検知するサーマルカメラと、
前記サーマルカメラの画角内に配置され、前記気温取得アプリケーションにより取得される周囲温度の変化に追随し易い技術的特性を有する適正基準体と、を備え、
前記サーマルカメラは、前記撮像画像に映る前記適正基準体および前記人物のそれぞれの画素値と前記周囲温度に対応する前記適正基準体の温度とに基づいて、前記人物の体温を検知する、
検温システム。
【請求項2】
前記サーマルカメラは、ディスプレイを有する外部端末とネットワークを介して接続され、前記人物の体温の検知結果を前記撮像画像に重畳した検温結果画像を生成し、前記検温結果画像の表示を前記外部端末に指示する、
請求項1に記載の検温システム。
【請求項3】
前記サーマルカメラは、前記周囲温度に対応する前記適正基準体の温度を特定するための温度テーブルを前記適正基準体までの距離ごとに記憶するメモリを有し、前記適正基準体までの距離および前記周囲温度と前記温度テーブルとに基づいて、前記適正基準体の温度を決定する、
請求項1に記載の検温システム。
【請求項4】
前記サーマルカメラと前記適正基準体とは正対して配置される、
請求項1に記載の検温システム。
【請求項5】
前記適正基準体は、プラスチック、鉄およびスポンジのうちいずれか一つである、
請求項1に記載の検温システム。
【請求項6】
前記サーマルカメラは、閾値を記憶するメモリを有し、検知された前記人物の体温が前記閾値以上と判定した場合に、前記人物の体温が前記閾値以上となる旨を前記検温結果画像に重畳して生成する、
請求項2に記載の検温システム。
【請求項7】
撮像エリアの人物を撮像可能な撮像部を有するサーマルカメラと前記サーマルカメラの画角内に配置される適正基準体とを備える検温システムにより実行される検温方法であって、
前記撮像エリアに配置された気温取得アプリケーションにより取得される周囲温度を取得するステップと、
前記周囲温度に対応する前記適正基準体の温度を取得するステップと、
前記サーマルカメラにより前記人物の撮像画像を撮像するステップと、
前記撮像画像に映る前記適正基準体および前記人物のそれぞれの画素値と前記周囲温度に対応する前記適正基準体の温度とに基づいて、前記人物の体温を検知するステップと、を有し、
前記適正基準体は、前記周囲温度の変化に追随し易い技術的特性を有する、
検温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルカメラを用いた検温システムおよび検温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の場所を撮影するサーモカメラから第1の画像データを受信し、第1の場所を撮影する第1の監視カメラから第2の画像データを受信し、第1の場所を通過した人が通過する第2の場所を撮影する第2の監視カメラから第3の画像データを受信する通信部と、第1の画像データから所定体温以上の人を検知し、検知した所定体温以上の人の画像データを第2の画像データから抽出し、第3の画像データと抽出した所定体温以上の人の画像データとを照合する制御部と、を有する情報処理装置が開示されている。これにより、施設の利用者が大勢いる場合でも、サーモカメラを用いて、発熱者を適切に検知可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-120323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、特許文献1に開示されているサーモカメラ(「サーマルカメラ」とも称する)による人物の体温の検温精度は、そのサーマルカメラが設置される場所の環境(例えば被写体である人物までの距離、その設置場所の周囲温度)の影響を受け易いため、その環境によっては安定しない可能性がある。このため、特許文献1には明記されていないが、例えば予め設定された基準温度を安定的に維持することが可能な専用電気機器(例えば黒体炉)をサーマルカメラの画角内に配置し、サーマルカメラにより撮像された画像内の黒体炉部分の画素値と基準温度(上述参照)とに基づいて画角内を通過する人物の体温を測定することが考えられる。これにより、画角内を通過する人物の正確な体温の測定が可能になると期待される。
【0005】
ところが、このような黒体炉のような専用電気機器をサーマルカメラの画角内に配置してしまうと、そもそも黒体炉自体が高額であるため、黒体炉を含めた検温システムのコストアップが避けられず、検温システムの導入の普及が困難となる可能性があった。また、サーマルカメラの画角内に黒体炉が含まれるように設置される必要があるため、黒体炉の電源線の引き回しを含めた設置が運用場所によっては困難となってしまう。一方で、検温システムの導入に関するシステムコストを下げるために黒体炉を使用しない場合には、サーマルカメラによる検温精度が下がってしまい、所定体温以上の人物を検知する際の判定を誤ってしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、黒体炉より低廉であって黒体炉の性能を代替可能な適正基準体を参照することで周囲環境の影響を緩和し、サーマルカメラの画角内を通過する人物の検温精度の劣化を抑制する検温システムおよび検温方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、撮像エリアに配置された気温取得アプリケーションと接続され、前記撮像エリアの人物を撮像可能な撮像部を有し、前記撮像部により撮像された撮像画像に基づいて前記人物の体温を検知するサーマルカメラと、前記サーマルカメラの画角内に配置され、前記気温取得アプリケーションにより取得される周囲温度の変化に追随し易い技術的特性を有する適正基準体と、を備え、前記サーマルカメラは、前記撮像画像に映る前記適正基準体および前記人物のそれぞれの画素値と前記周囲温度に対応する前記適正基準体の温度とに基づいて、前記人物の体温を検知する、検温システムを提供する。
【0008】
また、本開示は、撮像エリアの人物を撮像可能な撮像部を有するサーマルカメラと前記サーマルカメラの画角内に配置される適正基準体とを備える検温システムにより実行される検温方法であって、前記撮像エリアに配置された気温取得アプリケーションにより取得される周囲温度を取得するステップと、前記周囲温度に対応する前記適正基準体の温度を取得するステップと、前記サーマルカメラにより前記人物の撮像画像を撮像するステップと、前記撮像画像に映る前記適正基準体および前記人物のそれぞれの画素値と前記周囲温度に対応する前記適正基準体の温度とに基づいて、前記人物の体温を検知するステップと、を有し、前記適正基準体は、前記周囲温度の変化に追随し易い技術的特性を有する、検温方法を提供する。
【0009】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、黒体炉より低廉であって黒体炉の性能を代替可能な適正基準体を参照することで周囲環境の影響を緩和でき、サーマルカメラの画角内を通過する人物の検温精度の劣化を抑制できる。
【0011】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る検温システムのシステム構成例を示す図
図2A】サーマルカメラを基準としてサーマルカメラおよび適正基準体の配置例を側面視した図
図2B】サーマルカメラを基準としてサーマルカメラおよび適正基準体の配置例を平面視した図
図3】適正基準体の複数種類の候補ごとの温度追従性の有無の調査実験の結果を示すグラフ
図4】サーマルカメラに保存される適正基準体温度テーブルの一例を示す図
図5】適正基準体温度テーブルの生成概要例を示す図
図6】適正基準体温度テーブルを用いた人物の体温の検知概要例を示す図
図7】実施の形態1に係るサーマルカメラの動作手順例を示すフローチャート
図8】距離2m、気温23℃のユースケースでの適正基準体温度テーブルの選択例を示す図
図9】距離4m、気温25℃のユースケースでの適正基準体温度テーブルの選択例を示す図
図10】端末装置により表示される検温結果画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る検温システムおよび検温方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明あるいは実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
図1は、実施の形態1に係る検温システム100のシステム構成例を示す図である。図2Aは、サーマルカメラ10を基準としてサーマルカメラ10および適正基準体BS1の配置例を側面視した図である。図2Bは、サーマルカメラ10を基準としてサーマルカメラ10および適正基準体BS1の配置例を平面視した図である。
【0015】
図1に示すように、検温システム100は、サーマルカメラ10と、気温計20と、適正基準体BS1と、端末装置50とを含む構成である。気温計20の測定結果(周囲温度)のデータが入力可能となるように、気温計20はサーマルカメラ10に有線で接続される。なお、気温計20とサーマルカメラ10とは有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよく、以下同様である。これにより、撮像エリアAR1への気温計20の設置の自由度が向上する。また、サーマルカメラ10と端末装置50とは、ネットワークNW1を介して互いにデータを送受信可能に接続される。
【0016】
ネットワークNW1は、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、4Gあるいは5G等のセルラー方式移動通信システム、Bluetooth(登録商標)およびWiGig(Wireless Gigabit)のいずれかに準じた無線ネットワークであるが、これらに限定されなくてよい。なお、ネットワークNW1は、USB(Univesal Serial Bus)ケーブル、あるいは有線LANなどの有線ネットワークでもよい。以下の説明において、サーマルカメラ10により撮像された画像(以下「撮像画像」と称する)には、撮像画像のデータだけでなく、その撮像画像を撮像したサーマルカメラ10のカメラID(Identification)と撮像日時の情報とが含まれる。
【0017】
サーマルカメラ10は、被写体(例えば人物)の体温を検知(検温)するために、撮像エリアAR1(図2Aおよび図2B参照)を人物(例えば来場者GST1)が通過するための場所(例えば、撮像エリアAR1に入るためのゲートもしくは入り口に相当する場所)に配置される。図2Aおよび図2Bでは、例えば、撮像エリアAR1は来場者GST1がイベントの会場に入るまでのエントランスゲートであり、通路幅1.5[m:メートル(以下同様)]内を来場者GST1が図2B中の進行方向に移動して通過するエリアである。サーマルカメラ10は、例えば撮像エリアAR1の床から高さ2[m]の位置に固定して配置される。
【0018】
ここで、撮像エリアAR1は、上述した場所に限定されず、例えば建物内のエントランス、建物内で行われるイベントの会場入り口、空港ターミナルの保安検査場の入り口、鉄道あるいは新幹線の自動改札機付近、屋内あるいは屋外の駐車場入り口であってもよく、目的の被写体が出現する場所に応じて適宜変更されてよい。なお、撮像エリアAR1が屋外の駐車場入り口である場合、太陽光が影響するのであれば検温が困難となるため、太陽光が影響しない環境であることが好ましい。
【0019】
気温取得アプリケーションの一例としての気温計20は、サーマルカメラ10が配置される撮像エリアAR1(例えばサーマルカメラ10と適正基準体BS1との間の任意の位置)の周囲温度(気温)を測定して取得する。図2Aおよび図2Bでは、例えば、気温計20は、来場者GST1が通過する通路幅1.5[m]の通路の付近に配置される。上述したように、気温計20とサーマルカメラ10とは有線で接続されているので、気温計20により測定された周囲温度(気温)の測定結果はサーマルカメラ10に入力される。
【0020】
適正基準体BS1は、撮像エリアAR1内であってかつサーマルカメラ10の画角AG1内に含まれる位置に配置される。例えば図2Aおよび図2Bに示すように、適正基準体BS1は、撮像エリアAR1の床GNDから高さ2[m]の位置に三脚等で固定されたサーマルカメラ10から3[m]離れて三脚等で固定されて配置される。したがって、適正基準体BS1は、サーマルカメラ10により撮像される撮像画像に映る位置に配置されることになる。また、適正基準体BS1は、気温計20により取得される周囲温度(上述参照)の変化に追随し易い技術的特性を有する物体である。適正基準体BS1は、従来の黒体炉BK1よりも低廉であって黒体炉BK1の性能を代替可能である。
【0021】
ここで、実施の形態1に係る適正基準体BS1に求められる要件について、既存の黒体炉BK1と比較しながら図3を参照して説明する。図3は、適正基準体BS1の複数種類の候補ごとの温度追従性の有無の調査実験の結果を示すグラフである。黒体炉BK1は、既に知られているように、周囲温度の影響を受けることなく、予め設定された基準温度を安定的に維持することが可能な専用電気機器である。黒体炉BK1をサーマルカメラ10の画角AG1内に配置してサーマルカメラ10の撮像画像に映る黒体炉BK1の位置および基準温度を設定することで、その撮像画像に映る人物の検温精度の向上が可能となる。
【0022】
ところが、上述したように、黒体炉BK1のような専用電気機器をサーマルカメラ10の画角AG1内に配置してしまうと、そもそも黒体炉BK1自体が高額であるため、黒体炉BK1を含めた検温システムのコストアップが避けられず、検温システムの導入の普及が困難となってしまう。また、サーマルカメラ10の画角内に黒体炉BK1が含まれるように設置される必要があるため、黒体炉BK1の電源線の引き回しを含めた設置が運用場所によっては困難となってしまう。一方で、検温システムの導入に関するシステムコストを下げるために黒体炉BK1を使用しなければ、サーマルカメラ10による検温精度が下がってしまい、所定体温以上の人物を検知する際の判定を誤ってしまう可能性がある。
【0023】
そこで、実施の形態1では、既存の黒体炉BK1に代えて、黒体炉BK1に代替する適正基準体BS1が導入され、サーマルカメラ10の画角AG1内に含まれるように撮像エリアAR1に配置される。これにより、検温システム100のシステムコストの増大を抑制可能できるだけでなく、黒体炉BK1を採用している時と同様に、サーマルカメラ10による検温精度の劣化を抑制可能となる。ここで、適正基準体BS1が黒体炉BK1に代替することができるために、実施の形態1に係る適正基準体BS1には、次の要件を満たす必要があるものが採用される。
【0024】
[適正基準体BS1の要件]
(要件1)黒体炉BK1の発熱部分と同等程度の面積(例えば10cm[センチメートル]×10cm[センチメートル])を有すること。
(要件2)軽くて丈夫であり、安価であること。
(要件3)熱容量が既定値よりも小さく、周囲温度の変化に追随し易いこと。
(要件4)黒体炉BK1と異なり、電源を必要としない。
【0025】
なお、(要件3)の追随の許容値の目安として、適正基準体BS1が配置場所(例えば撮像エリアAR1)に置かれてからの経過時間が2分程度で周囲温度との差分が3℃以内となり、かつ、同経過時間が10分程度で周囲温度との差分が1℃以内となることが挙げられる。
【0026】
図3の横軸は、適正基準体BS1が配置場所に置かれてからの経過時間[分]を示す。図3の縦軸は、適正基準体BS1の候補となる各種のサンプルの測定温度[℃]を示す。この調査実験の結果として、図3では、適正基準体BS1の候補となる各種のサンプルを外気温15℃で冷却した後、気温25[℃]の室内にて温度測定を行った結果が示されている。サーマルカメラ10と適正基準体BS1の候補となる各種のサンプルとの間は、2[m]離れて配置された。
【0027】
ここで、適正基準体BS1の候補となる各種のサンプルは、(1)ゴム、(2)スポンジ、(3)プラスチック、(4)陶磁器、(5)鉄1(例えばシリコン樹脂塗装)、(6)鉄2(例えばシリカ塗装)、(7)木材、の7種類である。これらのサンプルの中で、上述した周囲温度の変化に追随し易いこと((要件3)参照)を満たすものは、(1)ゴム、(2)スポンジ、(5)鉄1の3種類であった。したがって、実施の形態1に係る適正基準体BS1は、(1)ゴム、(2)スポンジ、(5)鉄1のうちいずれかが該当する。つまり、これらの適正基準体BS1を採用することで、適正基準体BS1は、サーマルカメラ10が配置される撮像エリアAR1の周囲温度の変化に追従して温度変化することが可能となる。
【0028】
サーマルカメラ10は、撮像部11と、入力インターフェース回路12と、メモリ13と、ストレージ14と、通信インターフェース回路15と、プロセッサ16とを含む構成である。
【0029】
撮像部11は、光学系(例えばレンズ)とイメージセンサとを含む構成であり、光学系に対応する画角AG1内に含まれる被写体(例えば撮像エリアAR1に入ってきた人物である来場者GST1)を撮像する。
【0030】
レンズは、例えばフォーカスレンズおよびズームレンズを含み、被写体により反射された光である入射光を入射し、必要に応じて可視光カットフィルタ(図示略)を介してイメージセンサの受光面(撮像面)に被写体の光学像を結像する。可視光カットフィルタ(図示略)は、レンズを透過した入射光(被写体からの光の一例)のうち可視光(例えば400~700nm[ナノメートル]の波長を有する光)を遮断する分光特性を有している。
【0031】
イメージセンサは、複数の画素(例えばそれぞれの受光素子上にFIR(Far Infrared Ray)光に感度を有するフィルタが設けられた画素)を有して構成される。イメージセンサは、上述した複数の画素により構成される受光面(撮像面)に受けたFIR光を電気信号に変換し、この変換によって、受光されたFIR光の強度に応じた電気信号(アナログ信号)をプロセッサ16に出力する。このアナログ信号は、撮像部の一例としてのプロセッサ16により、デジタル形式の撮像画像のデータに変換される。これにより、プロセッサ16によって撮像画像のデータが生成される。なお、この撮像画像のデータはイメージセンサによって生成されても構わない。
【0032】
入力インターフェース回路12は、気温計20と有線(例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブル)で接続されたインターフェース回路を用いて構成され、気温計20の測定結果(つまり、撮像エリアAR1の周囲温度の測定結果)のデータを気温計20から取得して入力する。このデータは、入力インターフェース回路12からプロセッサ16に入力される。
【0033】
メモリ13は、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)とを用いて構成され、サーマルカメラ10の動作の実行に必要なプログラムおよびデータ、更には、動作中に生成されたデータもしくは情報を一時的に保存する。RAMは、例えば、サーマルカメラ10の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えば、サーマルカメラ10を制御するためのプログラムを予め記憶して保持する。言い換えると、プロセッサ16は、ROMに記憶されているデータを用いてプログラムを実行することで、コンピュータであるサーマルカメラ10に、本開示に係る検温方法に関する各種の処理を実行する。
【0034】
ストレージ14は、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリデバイス、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)を用いて構成され、サーマルカメラ10の動作中に生成されたデータもしくは情報を恒常的に保存する。ストレージ14は、例えば検温システム100の実運用が開始されるまでに予め生成された適正基準体温度テーブル(図4参照)のデータを保存する。
【0035】
ここで、適正基準体温度テーブルTBL1,TBL2,TBL3について、図4および図5を参照して説明する。図4は、サーマルカメラ10に保存される適正基準体温度テーブルTBL1,TBL2,TBL3の一例を示す図である。図5は、適正基準体温度テーブルTBL1,TBL2,TBL3の生成概要例を示す図である。適正基準体温度テーブルTBL1,TBL2,TBL3は、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離ごとに生成され、撮像エリアAR1のサーマルカメラ10から適正基準体BS1までの任意の位置における周囲温度[℃]と、その周囲温度[℃]のときの適正基準体BS1の温度の測定結果とを対応付ける。
【0036】
例えば適正基準体温度テーブルTBL1は、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離が2[m]である場合に、周囲温度[℃]が23[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は25.01[℃]、周囲温度[℃]が24[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は26.45[℃]、周囲温度[℃]が25[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は27.01[℃]となることを示す。つまり、適正基準体BS1は、サーマルカメラ10から2[m]離れた位置に配置されたとしても、周囲温度の変化に追随しながら、周囲温度とあまり乖離しない程度(例えば周囲温度+2.5℃未満)の温度を保つことができている。
【0037】
同様に、例えば適正基準体温度テーブルTBL2は、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離が3[m]である場合に、周囲温度[℃]が23[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は25.13[℃]、周囲温度[℃]が24[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は26.53[℃]、周囲温度[℃]が25[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は27.57[℃]となることを示す。つまり、適正基準体BS1は、サーマルカメラ10から3[m]離れた位置に配置されたとしても、周囲温度の変化に追随しながら、周囲温度とあまり乖離しない程度(例えば周囲温度+3℃未満)の温度を保つことができている。
【0038】
同様に、例えば適正基準体温度テーブルTBL3は、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離が4[m]である場合に、周囲温度[℃]が23[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は25.21[℃]、周囲温度[℃]が24[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は26.73[℃]、周囲温度[℃]が25[℃]に対応する適正基準体BS1の温度は28.13[℃]となることを示す。つまり、適正基準体BS1は、サーマルカメラ10から4[m]離れた位置に配置されたとしても、周囲温度の変化に追随しながら、周囲温度とあまり乖離しない程度(例えば周囲温度+3.5℃未満)の温度を保つことができている。
【0039】
このような適正基準体温度テーブルTBL1,TBL2,TBL3,…は、例えば次の手順にしたがって生成される。これらの生成手順を実行するために、図1に示す検温システム100のシステム構成が使用される。図5の例では、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離は2[m]である。
【0040】
(手順Step1)撮像エリアAR1に配置されるサーマルカメラ10の画角AG1内に含まれる位置(例えば、サーマルカメラ10が配置される位置から正対する位置)に、サーマルカメラ10からの距離が同一となるように黒体炉BK1および適正基準体BS1のそれぞれが配置される。つまり、サーマルカメラ10により撮像された撮像画像IMG1に黒体炉BK1および適正基準体BS1のそれぞれが映るように、黒体炉BK1および適正基準体BS1のそれぞれが配置される。
【0041】
図5では、撮像画像IMG1とともに、サーマルカメラ10と同じ位置に仮想的にカメラ装置(図示略)を配置した時のカラー画像VL1が示されている。つまり、サーマルカメラ10により撮像された撮像画像IMG1での黒体炉BK1および適正基準体BS1のそれぞれの位置(座標)と、カメラ装置(上述参照、図示略)により撮像されたカラー画像VL1での黒体炉BK1および適正基準体BS1のそれぞれの位置(座標)とが同一となる。
【0042】
(手順Step2)黒体炉BK1の基準となる設定温度が37.5[℃]に設定される。例えば、撮像画像IMG1のデータが表示されるディスプレイ55(図1参照)に表示されるカーソルCSL1がユーザの操作デバイス56を用いた操作によって移動され、例えば黒体炉BK1部分の中心位置が指定されてその中心位置の画素値が37.5[℃]として設定される。これにより、黒体炉BK1の指定位置(例えば上述した中心位置)の画素値と設定温度の37.5[℃]とが一致するように対応付けられる。なお、37.5[℃]は検温対象となる人物(例えば来場者GST1)の体温が高温であるか否かを知る指標となる閾値の一例であって、この値に限定されなくてもよいことは言うまでもない。
【0043】
(手順Step3)気温計20により複数の周囲温度のそれぞれに応じて、適正基準体BS1の温度が測定されて記録される。例えば、撮像エリアAR1の周囲温度が21[℃]であるときの適正基準体BS1の温度は23.13[℃]であった。また、撮像エリアAR1の周囲温度が22[℃]であるときの適正基準体BS1の温度は24.17[℃]であった。また、撮像エリアAR1の周囲温度が23[℃]であるときの適正基準体BS1の温度は24.97[℃]であった。これらの測定結果を示すテーブルTBL0aが生成される。なお、グラフGPH0のように、周囲温度(気温)と適正基準体BS1の測定温度との関係がプロットされてディスプレイ55に表示されても構わない。
【0044】
このような手順Step1~手順Step3の3ステップを経ることで、1つの適正基準体温度テーブル(つまり、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離と周囲温度とにより特定される適正基準体BS1の温度を決定するための適正基準体温度テーブル)が生成される。また、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離ごとに、同様な3ステップ(上述参照)を経ることで繰り返して複数の適正基準体温度テーブルが生成される。
【0045】
通信インターフェース回路15は、ネットワークNW1を介して接続された端末装置50との間でデータ通信(送受信)を行う。なお、図1では、インターフェースを「IF」と略記している。通信インターフェース回路15は、例えばプロセッサ16により生成された検温結果画像IMG3(図10参照)のデータを端末装置50に送信する。また、通信インターフェース回路15は、例えばサーマルカメラ10に設定される閾値(上述参照)の保存指示を受信した場合、その保存指示に含まれる閾値をメモリ13あるいはストレージ14に保存してよい。
【0046】
プロセッサ16は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphical Processing Unit)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。プロセッサ16は、サーマルカメラ10の全体的な動作を司るコントローラとして機能し、サーマルカメラ10の各部の動作を統括するための制御処理、サーマルカメラ10の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理およびデータの記憶処理を行う。プロセッサ16は、メモリ13に記憶されたプログラムおよびデータに従って動作する。プロセッサ16は、動作時にメモリ13を使用し、プロセッサ16が生成または取得したデータもしくは情報をメモリ13に一時的に保存する。例えば、プロセッサ16は、撮像部11のイメージセンサから出力された電気信号に既定の信号処理を施すことで、デジタル形式の撮像画像のデータを生成してよい。
【0047】
また、プロセッサ16は、画角AG1内の撮像画像に映る適正基準体BS1および被写体(例えば人物等の来場者GST1)のそれぞれの撮像画像上の対応する画素の画素値と、気温計20により測定された周囲温度の測定結果に対応する適正基準体BS1の温度とに基づいて、被写体(例えば人物等の来場者GST1)の体温を検知する(図6参照)。プロセッサ16は、この検知された被写体(例えば人物等の来場者GST1)の体温の検知結果を撮像画像に重畳した検温結果画像IMG3(例えば図10参照)のデータを生成する。プロセッサ16は、検温結果画像IMG3(例えば図10参照)のデータを含む、検温結果画像の表示指示のデータを、通信インターフェース回路15およびネットワークNW1を介して端末装置50に送信する。
【0048】
端末装置50は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、あるいは高性能なスペックを有するサーバコンピュータマシン等の情報処理装置である。端末装置50は、ネットワークNW1を介して、サーマルカメラ10との間でデータ通信する。
【0049】
端末装置50は、通信インターフェース回路51と、プロセッサ52と、メモリ53と、ストレージ54と、ディスプレイ55と、操作デバイス56とを含む構成である。
【0050】
通信インターフェース回路51は、上述したネットワークNW1を介して、サーマルカメラ10との間でデータ通信する。通信インターフェース回路51は、例えばサーマルカメラ10から送られた検温結果画像の表示指示(上述参照)のデータを受信してプロセッサ52に出力する。
【0051】
プロセッサ52は、例えばCPU、DSP、GPUもしくはFPGAを用いて構成される。プロセッサ52は、端末装置50の全体的な動作を司るコントローラとして機能し、端末装置50の各部の動作を統括するための制御処理、端末装置50の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理およびデータの記憶処理を行う。プロセッサ52は、メモリ53に記憶されたプログラムおよびデータに従って動作する。プロセッサ52は、動作時にメモリ53を使用し、プロセッサ52が生成または取得したデータもしくは情報をメモリ53に一時的に保存する。
【0052】
プロセッサ52は、例えばサーマルカメラ10から上述した検温結果画像の表示指示のデータを受信した場合には、その検温結果画像の表示指示に含まれる検温結果画像(図10参照)のデータをディスプレイ55に表示する。
【0053】
一方、プロセッサ52は、例えばサーマルカメラ10から上述した検温結果画像の表示指示のデータの代わりに、サーマルカメラ10により撮像された撮像画像のデータと撮像エリアAR1の周囲温度に対応する適正基準体BS1の温度のデータとを受信した場合、サーマルカメラ10に代わって、これらの受信されたデータを用いて検温結果画像(上述参照)を生成してディスプレイ55に表示してもよい。
【0054】
メモリ53は、例えばRAMとROMとを用いて構成され、端末装置50の動作の実行に必要なプログラムおよびデータ、更には、動作中に生成されたデータもしくは情報を一時的に保存する。RAMは、例えば、端末装置50の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えば、端末装置50を制御するためのプログラムを予め記憶して保持する。
【0055】
ストレージ54は、例えばHDDあるいはSSDを用いて構成され、プロセッサ52の動作中にプロセッサ52によって生成されたデータもしくは情報を恒常的に保存する。
【0056】
ディスプレイ55は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)あるいは有機EL(Electroluminescence)を用いて構成された表示デバイスである。ディスプレイ55は、例えばプロセッサ52からの検温結果画像のデータを表示する。なお、ディスプレイ55は、端末装置50とは別体の構成として設けられてもよい。
【0057】
操作デバイス56は、例えばマウス、キーボード、タッチパッド、タッチパネルなどのユーザの入力操作を受け付ける入力デバイスである。操作デバイス56は、ユーザの入力操作に対応する信号をプロセッサ52に送る。なお、操作デバイス56は、端末装置50とは別体の構成として設けられてもよい。
【0058】
次に、実施の形態1に係るサーマルカメラ10が適正基準体BS1とともに画角AG1内に含まれる人物の体温の検知概要例について、図6を参照して説明する。図6は、適正基準体温度テーブルを用いた人物の体温の検知概要例を示す図である。図6の例では、サーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離は2[m]である。
【0059】
撮像エリアAR1に配置されるサーマルカメラ10の画角AG1内に含まれる位置(例えば、サーマルカメラ10が配置される位置から正対する位置)でサーマルカメラ10から2[m]離れた位置に、適正基準体BS1が配置され、かつ、検温対象となる人物(例えば来場者GST1)が存在している。つまり、サーマルカメラ10により撮像された撮像画像IMG2には、適正基準体BS1および来場者GST1がともに映ることになる。
【0060】
図6では、撮像画像IMG2とともに、サーマルカメラ10と同じ位置に仮想的にカメラ装置(図示略)を配置した時のカラー画像VL2が示されている。つまり、サーマルカメラ10により撮像された撮像画像IMG2での来場者GST1および適正基準体BS1のそれぞれの位置(座標)と、カメラ装置(上述参照、図示略)により撮像されたカラー画像VL2での来場者GST1および適正基準体BS1のそれぞれの位置(座標)とが同一となる。また、サーマルカメラ10のプロセッサ16は、サーマルカメラ10および適正基準体BS1が撮像エリアAR1に配置された時点で、適正基準体BS1までの距離情報を、例えば端末装置50から受信してメモリ13に保存している。
【0061】
サーマルカメラ10では、プロセッサ16は、気温計20により測定された撮像エリアAR1の周囲温度の測定結果(例えば23[℃])を取得すると、メモリ13に保存されているサーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離情報に対応する適正基準体温度テーブル(例えば適正基準体温度テーブルTBL0b)をメモリ13から選択して読み出す。プロセッサ16は、読み出された適正基準体温度テーブルTBL0bと距離情報(上述参照)とに基づいて、撮像エリアAR1の周囲温度の測定結果(例えば23[℃])に対応する適正基準体BS1の温度(例えば25.01[℃])を決定する。
【0062】
さらに、プロセッサ16は、撮像画像IMG2中の適正基準体BS1の画素値と決定された適正基準体BS1の温度とを用いて、撮像画像IMG2中の人物(例えば来場者GST1)の体温を算出する。例えば、撮像画像IMG2中の適正基準体BS1の画素値がX1、撮像画像IMG2中の人物(例えば来場者GST1)の画素値がX2である場合、プロセッサ16は、撮像画像IMG2中の人物(例えば来場者GST1)の体温を、例えば体温=X2+(25.01-X1)と算出する。なお、体温の算出式は前述したものに限定されなくてもよい。
【0063】
また、プロセッサ16は、撮像画像IMG2中の人物(例えば来場者GST1)の顔の輪郭部分(例えば画素値が急変する部分)を示す枠WK1を撮像画像IMG2上に重畳して生成してもよい。
【0064】
次に、実施の形態1に係る検温システム100を構成するサーマルカメラ10の動作手順例を、図7図8および図9を参照して説明する。図7は、実施の形態1に係るサーマルカメラの動作手順例を示すフローチャートである。図8は、距離2m、気温23℃のユースケースでの適正基準体温度テーブルの選択例を示す図である。図9は、距離4m、気温25℃のユースケースでの適正基準体温度テーブルの選択例を示す図である。図7の説明において、必要に応じて図8あるいは図9を参照する。
【0065】
図7において、撮像エリアAR1に配置されるサーマルカメラ10の画角AG1内に適正基準体BS1と検温対象となる人物(例えば来場者GST1)とが含まれるように、サーマルカメラ10と正対する所定距離(例えば2[m],3[m],4[m])の位置に、適正基準体BS1が配置される(St11)。これにより、サーマルカメラ10により撮像される撮像画像には、適正基準体BS1および来場者GST1がともに映ることになる。
【0066】
サーマルカメラ10の電源がONされ、適正基準体BS1および検温対象となる人物(例えば来場者GST1)が含まれる画角AG1内の撮像画像がサーマルカメラ10により撮像される(St12)。撮像エリアAR1に配置された気温計20により、撮像エリアAR1の周囲温度(例えばサーマルカメラ10と適正基準体BS1との間の任意の位置)が測定されて取得される(St13)。ステップSt13で取得された周囲温度の測定結果がサーマルカメラ10に入力される。
【0067】
サーマルカメラ10では、プロセッサ16は、気温計20により測定された撮像エリアAR1の周囲温度の測定結果(例えば23[℃])を取得すると、メモリ13に保存されているサーマルカメラ10から適正基準体BS1までの距離情報に対応する適正基準体温度テーブル(言い換えると、来場者GST1の体表面温度の算出に参照するべき適正基準体温度テーブル)をメモリ13から選択して読み出す(St14)。さらに、プロセッサ16は、ステップSt14で選択された適正基準体温度テーブルから、ステップSt12で撮像された撮像画像中の適正基準体の所定位置(例えば中心位置)の画素値に対応する温度を判定して取得する(St15)。
【0068】
ステップSt14~ステップSt15の一例として、図8のように適正基準体BS1がサーマルカメラ10から正対して距離2[m]離れた位置に配置され、かつ、気温計20により測定された撮像エリアAR1の周囲温度が23[℃]である場合、プロセッサ16は、適正基準体温度テーブルTBL1を選択する。さらに、プロセッサ16は、選択された適正基準体温度テーブルTBL1から、ステップSt12で撮像された撮像画像中の適正基準体の所定位置(例えば中心位置)の画素値に対応する温度を25.01[℃]と判定して取得する。
【0069】
ステップSt14~ステップSt15の一例として、図9のように適正基準体BS1がサーマルカメラ10から正対して距離4[m]離れた位置に配置され、かつ、気温計20により測定された撮像エリアAR1の周囲温度が25[℃]である場合、プロセッサ16は、適正基準体温度テーブルTBL3を選択する。さらに、プロセッサ16は、選択された適正基準体温度テーブルTBL3から、ステップSt12で撮像された撮像画像中の適正基準体の所定位置(例えば中心位置)の画素値に対応する温度を28.13[℃]と判定して取得する。
【0070】
ステップSt15の後、プロセッサ16は、ステップSt12で撮像された撮像画像IMG2中の適正基準体BS1の画素値とステップSt15で決定された適正基準体BS1の温度とを用いて、ステップSt12で撮像された撮像画像IMG2中の人物(例えば来場者GST1)の体温(例えば来場者GST1の体表面付近の画素値に対応する体表面温度)を算出する(St16)。プロセッサ16は、ステップSt12で撮像された撮像画像IMG2に上述した体表面温度の算出結果を示す数値(例えば36.4[℃])を重畳した検温結果画像のデータを生成し、この検温結果画像のデータを含む検温結果画像の表示指示を生成して端末装置50に送信する(St16)。
【0071】
図10は、端末装置50により表示される検温結果画像IMG3の一例を示す図である。図10に示す検温結果画像IMG3は、サーマルカメラ10のプロセッサ16により、サーマルカメラ10により撮像された撮像画像に、来場者GST1の体表面温度(例えば顔付近)の温度の算出結果(例えば36.4[℃])が重畳されることで生成される。
【0072】
この検温結果画像IMG3は、例えば適正基準体BS1が鉄1(図3参照)であり、サーマルカメラ10と適正基準体BS1との間の距離が2[m]、気温計20により測定された撮像エリアAR1の周囲温度が24[℃]であった。この場合、プロセッサ16は、サーマルカメラ10と適正基準体BS1との間の距離(つまり2[m])であって周囲温度が24[℃]であるため、選択された適正基準体温度テーブルTBL1を参照することで、適正基準体BS1の温度を26.45[℃]と判定する。また、プロセッサ16は、撮像画像中の人物(例えば来場者GST1)の顔の輪郭部分(例えば画素値が急変する部分)を示す枠WK1を撮像画像上に重畳して検温結果画像IMG3を生成する。この枠WK1は省略されても構わない。
【0073】
以上により、実施の形態1に係る検温システム100は、撮像エリアAR1に配置された気温取得アプリケーション(例えば気温計20)と接続され、撮像エリアAR1の人物を撮像可能な撮像部11を有し、撮像部11により撮像された撮像画像に基づいて人物の体温を検知するサーマルカメラ10と、サーマルカメラ10の画角内に配置され、気温取得アプリケーションにより取得される周囲温度の変化に追随し易い技術的特性を有する適正基準体BS1と、を備える。サーマルカメラ10は、撮像画像に映る適正基準体BS1および人物のそれぞれの画素値と周囲温度に対応する適正基準体BS1の温度とに基づいて、人物の体温を検知する。
【0074】
これにより、検温システム100は、黒体炉BK1より低廉であって黒体炉BK1の性能を代替可能な適正基準体BS1を参照することで、撮像エリアAR1のサーマルカメラ10が配置された周囲環境の影響を緩和できる。また、検温システム100は、サーマルカメラ10の画角内を通過する人物(例えば来場者GST1)の検温精度の劣化を抑制できる。
【0075】
また、サーマルカメラ10は、ディスプレイ55を有する外部端末(例えば端末装置50)とネットワークNW1を介して接続され、人物の体温の検知結果を撮像画像に重畳した検温結果画像IMG3(図10参照)を生成する。サーマルカメラ10は、検温結果画像IMG3の表示を外部端末(例えば端末装置50)に指示する。これにより、端末装置50を操作する管理者(例えば検温システム100の運営者あるいは監視者)は、撮像エリアAR1に現れた1人以上の人物(例えば来場者GST1)の体温の把握を効率的に行える。
【0076】
また、サーマルカメラ10は、周囲温度に対応する適正基準体BS1の温度を特定するための温度テーブル(例えば適正基準体温度テーブルTBL1,TBL2,TBL3,…)を適正基準体BS1までの距離ごとに記憶するメモリ13を有する。サーマルカメラ10は、適正基準体BS1までの距離および周囲温度と温度テーブルとに基づいて、適正基準体の温度を決定する。
【0077】
また、サーマルカメラ10と適正基準体BS1とは正対して配置される。これにより、サーマルカメラ10は、サーマルカメラ10の画角AG1内に適正基準体BS1を捉えて撮像できるので、撮像画像中の適正基準体BS1の画素値を用いることで、撮像エリアAR1に現れた1人以上の人物(例えば来場者GST1)の体温を高精度に検知できる。
【0078】
また、適正基準体BS1は、プラスチック、鉄1およびスポンジのうちいずれか一つである。これにより、適正基準体BS1は撮像エリアAR1の周囲温度の変化に追随し易くなって経過時間とともに安定し易くなるので、サーマルカメラ10は、適正基準体BS1の温度の推移を安定的に認識して人物(例えば来場者GST1)の体温の検知精度を向上できる。
【0079】
また、サーマルカメラ10は、閾値(例えば37.5[℃])を記憶するメモリ13を有する。サーマルカメラ10は、検知された人物の体温が閾値以上と判定した場合に、人物の体温が閾値以上となる旨を検温結果画像IMG3に重畳して生成する。これにより、端末装置50を操作する管理者(例えば検温システム100の運営者あるいは監視者)は、諸事情(例えば新型コロナウイルス対策の観点)で撮像エリアAR1に進入させてはいけない人物(例えば来場者GST1)の特定を迅速に行え、監視効率を的確に向上できる。
【0080】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、黒体炉より低廉であって黒体炉の性能を代替可能な適正基準体を参照することで周囲環境の影響を緩和し、サーマルカメラの画角内を通過する人物の検温精度の劣化を抑制する検温システムおよび検温方法として有用である。
【符号の説明】
【0082】
10 サーマルカメラ
11 撮像部
12 入力インターフェース回路
13、53 メモリ
14、54 ストレージ
15、51 通信インターフェース回路
16、52 プロセッサ
20 気温計
50 端末装置
55 ディスプレイ
56 操作デバイス
100 検温システム
BK1 黒体炉
BS1 適正基準体
NW1 ネットワーク
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10