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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178258
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】防水コネクタおよびシール部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084918
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】秋口 哲朗
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE14
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087RR12
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】コストの低減化が図られた防水コネクタ、およびコネクタに防水性を付与するシール部材を提供する。
【解決手段】防水コネクタのシール部材20は、インナーハウジング30とアウターハウジング40とに挟まれた、不図示の電線の周りの防水を担うファミリーシール部と、相手ハウジング2Aとの間の防水を担うシールリング部とが一体化された形状を有する。インナーハウジング30の立て板部31がシール部材20の長孔22を貫通し、その立て板部31の上部に形成された鉤形状の係止突起部311がアウターハウジングの被係止部43に係止されることにより、インナーハウジング30とアウターハウジング40がシール部材20のファミリーシール部を間に挟んだ状態に組み立てられている。相手ハウジング2Aは、シールリング部として作用する、シール部材20の第3防水部24に接する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ハウジングと嵌合するコネクタハウジングと、
連続した一体部品であって、配列された複数本の電線の各々の周囲を取り巻いて各電線の周囲を防水するファミリーシール部、および前記相手ハウジングとの嵌合時に該相手ハウジングと前記コネクタハウジングとの間に配置されて該相手ハウジングと該コネクタハウジングとの間を防水するシールリング部とを有するシール部材とを備えたことを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングが、前記ファミリーシール部を嵌合方向両側から挟む第1ハウジングと第2ハウジングとを備え、
前記シール部材が、嵌合方向に貫通する貫通孔を有し、
前記第1ハウジングが、前記貫通孔を貫通して前記第2ハウジングに係止する貫通係止部を有することを特徴とする請求項1に記載の防水コネクタ。
【請求項3】
前記貫通孔の内壁面が、前記貫通係止部の、該貫通孔内を通過する部分の周囲を防水する形状を有することを特徴とする請求項2に記載の防水コネクタ。
【請求項4】
前記シール部材が、前記第1ハウジングが嵌入する凹部を有し、該凹部の、該第1ハウジングに接する内壁面が、該第1ハウジングと該シール部材との間を防水する形状を有することを特徴とする請求項2または3に記載の防水コネクタ。
【請求項5】
前記第2ハウジングが、前記シール部材の外壁面と一周にわたって接する壁部を有し、
前記シール部材が、該シール部材と前記壁部との間を防水する形状を有することを特徴とする請求項2から4のうちのいずれか1項に記載の防水コネクタ。
【請求項6】
相手ハウジングと嵌合するコネクタハウジングを備えた防水コネクタに装備される連続した一体部品であって、
配列された複数本の電線の各々の周囲を取り巻いて各電線との間を防水するファミリーシール部と、
前記相手ハウジングとの嵌合時に該相手ハウジングと前記コネクタハウジングとの間に配置されて該相手ハウジングと該コネクタハウジングとの間を防水するシールリング部とを有することを特徴とするシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの防水を担うシール部材、および、そのシール部材を用いた防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
防水性能を有するコネクタ、すなわち防水コネクタが広く使われている。そして、防水コネクタでは、シール部材が防水の役割を担っている。ここで、特許文献1には、リアカバーに弾性シール部材が一体成形された構造の防水コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-021491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配列された複数本の電線が接続された防水コネクタの場合、水分の侵入経路として、電線に沿う侵入経路と、コネクタハウジングと嵌合相手のコネクタのハウジングとの隙間からの侵入経路とが存在し、それら両方の侵入経路を断つ必要がある。このため、この種の防水コネクタの場合、いわゆるファミリーシールと呼ばれる、電線1本1本を取り巻いて電線に沿う侵入経路を断つ第1のシール部材と、コネクタハウジングを一周にわたって取り巻くように配置されて、ハウジングどうしの隙間からの水分の侵入経路を断つ、シールリングと呼ばれる第2のシール部材とが採用される。この場合、ファミリーシールとシールリングとの2つのシール部材が必要となる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、コストの低減化が図られた防水コネクタ、およびコネクタに防水性を付与するシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の防水コネクタは、
相手ハウジングと嵌合するコネクタハウジングと、
連続した一体部品であって、配列された複数本の電線各々の周囲を取り巻いて電線との間を防水するファミリーシール部、および相手ハウジングとの嵌合時に相手ハウジングとコネクタハウジングとの間に配置されて相手ハウジングとコネクタハウジングとの間を防水するシールリング部とを有するシール部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の防水コネクタは、上記のシール部材を備えている。これにより、ファミリーシールとシールリングという、互いに別体の2つのシール部材を採用した防水コネクタと比べ、低コスト化を図ることができる。
【0008】
ここで、本発明の防水コネクタにおいて、
上記コネクタハウジングが、ファミリーシール部を嵌合方向両側から挟む第1ハウジングと第2ハウジングとを備え、
上記シール部材が、嵌合方向に貫通する貫通孔を有し、
第1ハウジングが、貫通孔を貫通して第2ハウジングに係止する貫通係止部を有することが好ましい。
【0009】
本発明において、上記の貫通孔および上記の貫通係止部を備えると、ファミリーシールとシールリングとの2つのシール部材を採用した防水コネクタの場合と同様に、ファミリーシール部を嵌合方向両側から挟んだ構造を実現することができる。
【0010】
ここで、さらに、上記の貫通孔および貫通係止部を備えた場合に、その貫通孔の内壁面が、貫通係止部の、貫通孔内を通過する部分の周囲を防水する形状を有することが好ましい。
【0011】
貫通孔の内壁面を、貫通係止部の周囲を防水する形状に内壁面とすることによって、貫通係止部に沿う水の侵入経路も断つことができる。
【0012】
また、コネクタハウジングが第1ハウジングと第2ハウジングとを備えた構成において、シール部材が、第1ハウジングが嵌入する凹部を有し、その凹部の、第1ハウジングに接する内壁面が、第1ハウジングとシール部材との間を防水する形状を有することが好ましい。
【0013】
この防水形状を備えると、シール部材と第1ハウジングとの間の水の侵入経路が塞がれる。
【0014】
さらに、コネクタハウジングが第1ハウジングと第2ハウジングとを備えた構成において、
第2ハウジングが、シール部材の外壁面と一周にわたって接する壁部を有し、
シール部材が、そのシール部材と上記壁部との間を防水する形状を有することが好ましい。
【0015】
シール部材が、そのシール部材と上記壁部との間を防水する形状を有することによって、シール部材と第2ハウジングとの間も防水される。
【0016】
また、上記目的を達成する本発明のシール部材は、
相手ハウジングと嵌合するコネクタハウジングを備えた防水コネクタに装備される連続した一体部品であって、
配列された複数本の電線各々の周囲を取り巻いて各電線の周囲を防水するファミリーシール部と、
相手ハウジングとの嵌合時に相手ハウジングとコネクタハウジングとの間に配置されて相手ハウジングとコネクタハウジングとの間を防水するシールリング部とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明のシール部材を採用すると、ファミリーシールとシールリングという、互いに別体の2つのシール部材を採用する場合と比べ、低コスト化された防水コネクタを実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の本発明によれば、防水コネクタの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態としての防水コネクタの斜視図である。
図2】組み立てられた状態のインナーハウジングとシール部材を示した斜視図である。
図3】シール部材を示した図である。
図4】シール部材の、図3(A)に示す矢印Y3-Y3に沿う断面図(A)と、図4(A)に示す円R1の部分の拡大図である。
図5】シール部材とインナーハウジングとの組立体の、図2に示す矢印X3-X3に沿う断面図である。
図6】シール部材とインナーハウジングとの組立体の、図2に示す矢印Y2-Y2に沿う断面図(A)と、図6(A)に示す円R2の部分の拡大図である。
図7図1に示した防水コネクタの、矢印X1-X1に沿う断面図(A)と、図7(A)に示した円R3の部分の拡大図である。
図8】防水コネクタの、図1に示した矢印X2-X2に沿う拡大断面図である。
図9】防水コネクタの、図1に示した矢印Y3-Y3に沿う断面図である。
図10】防水コネクタの、図9に示した円R4の部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態としての防水コネクタの斜視図である。この図1には、相手コネクタ2と嵌合した状態の防水コネクタ1が示されている。
【0022】
この防水コネクタ1には、本発明の一実施形態としてのシール部材が搭載されている。シール部材については、後述する。
【0023】
また、この防水コネクタ1のコネクタハウジング10は、インナーハウジングとアウターハウジングとで構成されている。コネクタハウジング10の構造についても、後述する。
【0024】
図2は、組み立てられた状態のインナーハウジングとシール部材を示した斜視図である。すなわち、この図2は、図1に外観を示す防水コネクタからアウターハウジングを取り去って、その内側に備えられているインナーハウジングとシール部材を示した図である。
【0025】
シール部材20は、インナーハウジング30の上部と、そのインナーハウジング30の側面の上部とを覆うように、インナーハウジング30に被せた状態に配置されている。このインナーハウジング30は、本発明にいう第1ハウジングの一例に相当する。
【0026】
シール部材20は、嵌合方向、すなわちこの図2の上下方向に貫通した多数の電線挿通孔21が形成されているファミリーシール部20Aを有する。このファミリーシール部20Aに形成されている各電線挿通孔21には、不図示の電線が1本ずつ挿し込まれる。このファミリーシール部20Aは、本発明にいうファミリーシール部の一例に相当する。
【0027】
また、このシール部材20には、その長手方向両端部を含む3か所に、幅方向に延びた長孔22が形成されている。これらの長孔22には、その下方から、インナーハウジング30に備えられている立て板部31が挿し込まれてシール部材20の上方にまで突き抜けている。長孔22は、本発明にいう貫通孔の一例に相当し、立て板部31は、本発明にいう貫通係止部の一例に相当する。長孔22および立て板部31については、後述する。
【0028】
図3は、シール部材を示した図である。ここで、図3(A)は、シール部材の斜視図、図3(B)は、図3(A)に示す矢印X4-X4に沿う断面図である。
【0029】
シール部材20は、ゴム等の弾性部材で形成されている。シール部材20の下部には、図3(B)の断面にみられるように、下向きに開いた凹部201が形成されている。このシール部材20は、インナーハウジング30に被さるように、すなわち、インナーハウジング30が凹部201に嵌まり込むように配置される。
【0030】
また、電線挿通孔21の内壁面には、図3(B)の断面にみられるように、上下方向に凹凸を繰り返す波形状を有する第1防水部211が形成されている。この凹凸が、この電線挿通孔21に挿し込まれた電線を取り巻いて、電線の周りを防水する。
【0031】
また、このシール部材20は、その外周面の上半分に、第2防水部23を有する。この第2防水部は、上下方向に凹凸を繰り返す波形状となっていて、その波形状を形成している凹や凸が、このシール部材20の一周にわたって延びている。この第2防水部23は、後述するアウターハウジングとの間の防水を担っている。
【0032】
さらに、このシール部材20は、その外周面の下半分に、第3防水部24を有する。この第3防水部24も、第2防水部23と同様、上下方向に凹凸を繰り返す波形状となっていて、その波形状を形成している凹や凸が、このシール部材20の一周にわたって延びている。この第3防水部24は、相手コネクタ2(図1参照)を構成している相手ハウジング(後述する)との間の防水を担うシールリング部20Bである。このシールリング部20Bは、本発明にいうシールリング部の一例に相当する。
【0033】
さらに、このシール部材20は、凹部201の壁面に第4防水部25を有する。この第4防水部25も、第2防水部23および第3防水部24と同様、上下方向に凹凸を繰り返す波形状となっていて、その波形状を形成している凹や凸が、凹部201の内壁面に一周にわたって延びている。この第4防水部25は、凹部201に入り込んだインナーハウジング30の外壁面とシール部材20との間の防水を担っている。
【0034】
図4は、シール部材の、図3(A)に示す矢印Y3-Y3に沿う断面図(A)と、図4(A)に示す円R1の部分の拡大図である。
【0035】
シール部材20の、長手方向3か所に形成された長孔22の内壁面22Aには、図4(B)の拡大図に表れているように、上下方向に凹凸を繰り返し、その凹や凸の形状が水平方向に内壁面22の一周に亘って続く形状の第5防水部221が形成されている。この長孔22に立て板部31が挿し込まれると、この長孔22の内壁面22Aに形成されている凹凸形状のうちの凸形状の部分が立て板部31によって押し潰されて立て板部31に密着して防水性が付与される。
なお、長孔22の内壁面22Aに形成された上下方向の凹凸は、必ずしも同一の凹凸が繰り返されている必要はなく、ある1つの凹凸の形状とその凹凸の上下に並ぶ凹凸の形状が異なっていてもよい。また、上下方向の凹凸は、波形状の凹凸であってもよく、あるいは、角ばった溝や角ばった突条からなる凹凸であってもよく、さらには、三角形状のギザギザな凹凸であってもよい。この防水構造を構成する凹凸の形状のバリエーションは、ここで説明している第5防水部221に限られるものではなく、第1防水部211,第2防水部23、第3防水部24、および第4防水部25についても共通である。
【0036】
図5は、シール部材とインナーハウジングとの組立体の、図2に示す矢印X3-X3に沿う断面図である。
【0037】
この図5には、シール部材20とインナーハウジング30の断面が示されている。なお、インナーハウジング30は、複数の部材で構成されているが、インナーハウジング30の構造自体は本実施形態のテーマではなく、インナーハウジング30については、本実施形態の特徴に関連する部分の説明を除き、説明を省略する。
【0038】
また、図6は、シール部材とインナーハウジングとの組立体の、図2に示す矢印Y2-Y2に沿う断面図(A)と、図6(A)に示す円R2の部分の拡大図である。
【0039】
インナーハウジング30は、シール部材20の凹部201(図3(B)参照)に嵌め込まれるようにして、シール部材20と組み立てられている。インナーハウジング30がシール部材20の凹部201に嵌め込まれると、図6(B)に示すように、そのインナーハウジング30の外壁面がシール部材20の第4防水部25に接し、インナーハウジング30の外壁面に沿う水の侵入経路が塞がれる。
【0040】
また、このインナーハウジング30がシール部材20と組み立てられると、シール部材20の長孔22にインナーハウジング30の立て板部31が挿し込まれて、その立て板部31の上部が上に突き出た状態となる。シール部材20の長孔22には、第5防水部221が形成されており、図6(B)に示すように、この長孔22に挿し込まれた立て板部31に第5防水部221が接し、この立て板部31沿う水の侵入経路が塞がれている。
【0041】
この立て板部31の上端部には鉤形状を有する係止突起部311が形成されている。この係止突起部311は、アウターハウジングに係止される。アウターハウジングについての説明は、さらに後に譲る。
【0042】
図7は、図1に示した防水コネクタの、矢印X1-X1に沿う断面図(A)と、図7(A)に示した円R3の部分の拡大図である。ただし、この図7では、インナーハウジング30は図示されておらず、シール部材20とアウターハウジング40のみ図示されている。このアウターハウジング40は、本発明にいう第2ハウジングの一例に相当する。
【0043】
このアウターハウジング40には、シール部材20の外周面に形成された第2防水部23(図3(B)参照)に一周に亘って接する壁部41が形成されている。すなわち、シール部材20は、アウターハウジング40に対し、一周に亘って形成された壁部41の間に嵌め込まれるようにして組み立てられている。
【0044】
また、このアウターハウジング40には、シール部20の電線挿通孔21の1つずつに連通する複数の電線通過孔42が形成されている。
【0045】
また、この図7には、アウターハウジング40の被係止壁43が示されている。この被係止壁43には、後述する図10に示されているように、インナーハウジング30の立て板部31の先端の係止突起部311(図6(B)参照)が係止される。
【0046】
図8は、防水コネクタの、図1に示した矢印X2-X2に沿う拡大断面図である。
【0047】
また、図9は、防水コネクタの、図1に示した矢印Y1-Y1に沿う断面図である。図8と同様、この図9にも、シール部材20、インナーハウジング30、アウターハウジング40、および相手ハウジング2Aが示されている。
【0048】
さらに、図10は、防水コネクタの、図9に示した円R4の部分の拡大図である。
【0049】
これら図8図10には、シール部材20とアウターハウジング40だけでなく、インナーハウジング30と、さらには、相手コネクタ2を構成している相手ハウジング2Aの、防水コネクタ1との嵌合を担う部分も示されている。
【0050】
図10に示すように、インナーハウジング30の立て板部31の、シール部材20の長孔22を通過した先端に形成されている係止突起部311が、アウターハウジング40の被係止壁43に係止している。これにより、シール部材20は、その電線挿通孔21が形成された部分がインナーハウジング30とアウターハウジング40とに挟まれた状態に、配置される。
【0051】
シール部材20の長孔22の内壁には第5防水部221が形成されている。これにより、立て板部31の周りが防水されている。
【0052】
また、図8および図10に示すように、アウターハウジング40の電線通過孔42がシール部材20の電線挿通孔21につながり、さらにインナーハウジング30の内部につながっている。これらの電線通過孔42および電線挿通孔2121に挿し込まれた状態にある電線は、インナハウジング30内に備えられている、相手コネクタ2との電気的な接触を担う端子(不図示)に接続されている。電線は、シール部材20の電線挿通孔21の内壁の凹凸からなる第1防水部211により、電線に沿う水の侵入経路が塞がれた状態となっている。
【0053】
また、アウターハウジング40は、その壁部41が一周に亘ってシール部材20の外周面に形成されている第2防水部23に接し、これにより、アウターハウジング40の壁面に沿う水の侵入経路が塞がれている。
【0054】
さらに、インナーハウジング30は、その外壁面がシール部材20の第4防水部25に一周に亘って接している。これにより、インナーハウジング30の外壁面に沿う水の侵入経路が遮断されている。
【0055】
さらに、この防水コネクタ1に相手コネクタ2が嵌合すると、相手ハウジング2Aがシール部材20の第3防水部24に一周に亘って接する。これにより、相手ハウジング2Aに沿う水の侵入経路が遮断される。
【0056】
このように、本実施形態によれば、電線の周囲を防水するファミリーシール部と、この防水コネクタ1のハウジングと相手ハウジングとの間を防水するシールリング部とを有する、連続した一体部品として成形したシール部材20を採用することで、防水コネクタ1のコストの低減化が図られている。
【0057】
また、電線挿通孔21に電線を挿し込むと、シール部材20は、電線により電線挿通孔21が広げられる向きの力を受ける。これは、すなわち、シール部材20が、図8に矢印Wで示すように水平方向に膨らむことを意味する。ここで、本実施形態のシール部材20には、電線の周囲を防水するファミリーシール部の一例に相当する電線挿通孔21が形成された部分と、ハウジングどうしの間を防水するシールリング部の一例に相当する第3防水部23との双方が形成されている。このため、電線挿通孔21に電線を挿し込んだことによる膨らみは第3防水部24にも影響を及ぼし、その膨らんだ分だけ、第3防水部24が相手ハウジング2Aに強く押し当てられてその部分の防水性能が向上する。また、本実施形態の場合は、第2防水部23もアウターハウジング40に強く押し当てられる。このように、本発明の防水コネクタ1によれば、互いに別体のファミリーシールとリールリングを採用した防水コネクタと比べ、防水性能の向上という副次的な効果も期待される。
【符号の説明】
【0058】
1 防水コネクタ
2 相手コネクタ
2A 相手ハウジング
10 コネクタハウジング
20 シール部材
20A ファミリーシール部
20B シールリング部
201 シール部材の凹部
21 電線挿通孔
211 第1防水部
22 長孔(貫通孔)
22A 内壁面
221 第5防水部
23 第2防水部
24 第3防水部
25 第4防水部
30 インナーハウジング
31 立て板部(貫通係止部)
311 係止突起部311
40 アウターハウジング
41 壁部
42 電線通過孔
43 被係止壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10