(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178260
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084920
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】恒川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】梅村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】百鬼 聡
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA25
3D030DA35
3D030DA45
3D030DA55
3D030DA56
3D030DA64
3D030DA65
3D030DA66
3D030DA69
3D030DB13
3D030DB81
(57)【要約】
【課題】把持部が把持を検知するセンサ層を備えていても、簡便に、製造できるハンドルを提供すること。
【解決手段】操舵時に把持する把持部R1に、把持を検出可能なセンサ層13が配設されて構成されるハンドルW1である。把持部R1が、芯材4と、芯材の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層10と、センサ層13と、を備えて構成される。センサ層13は、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤28から形成され、型成形時における被覆層の成形型の型面に塗布されて、被覆層の成形時に、被覆層の表面側に、配設される。さらに、センサ層13は、表面側に配設される保護層16に覆われて、配設される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵時に把持する把持部に、把持を検出可能なセンサ層が配設されて構成されるハンドルであって、
前記把持部が、芯材と、該芯材の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層と、前記センサ層と、を備えて構成されるとともに、
前記センサ層が、
導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成され、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成とし、さらに、
表面側に配設される保護層に覆われて、配設されていることを特徴とするハンドル。
【請求項2】
前記保護層が、型成形により配設される発泡ウレタンからなる表皮層として、配設され、
前記センサ層の裏面側における前記芯材側の前記被覆層としての第1ウレタン層と、前記センサ層の表面側における前記表皮層としての第2ウレタン層と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【請求項3】
前記第2ウレタン層が、前記第1ウレタン層より密度を高くして配設されていることを特徴とする請求項2に記載のハンドル。
【請求項4】
前記第1ウレタン層と前記第2ウレタン層とが、前記第1ウレタン層に対する前記第2ウレタン層のずれを抑制可能に、前記センサ層を間にして、相互に嵌合する嵌合部、を有して構成されていることを特徴とする請求項2若しくは請求項3に記載のハンドル。
【請求項5】
前記保護層が、ウレタン系塗料からなるトップコート層として、配設されるとともに、
該トップコート層の前記ウレタン系塗料を第1のモールドコート剤とし、前記センサ層を形成する前記モールドコート剤を第2のモールドコート剤として、順次、前記被覆層の成形型の型面に、塗布し、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、前記センサ層と前記保護層とが、配設される構成としていることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【請求項6】
前記保護層が、前記センサ層の外表面に貼着される表皮材として、配設されて、
発泡ウレタンからなる前記被覆層が、
前記芯材側の第1ウレタン層と、前記センサ層の裏面側の第2ウレタン層と、前記第1ウレタン層と前記第2ウレタン層との間に配設されるシールド層と、を備えて構成され、
前記シールド層が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなる第1のモールドコート剤から構成され、
前記センサ層が、第2のモールドコート剤から構成されて、
前記第1モールドコート剤が、型成形時における前記第1ウレタン層の成形型の型面に塗布されて、前記第1ウレタン層の成形時に、前記第1ウレタン層の表面側に、配設される構成とし、
前記センサ層としての前記第2モールドコート剤が、型成形時における前記第2ウレタン層の成形型の型面に塗布されて、前記第2ウレタン層の成形時に、前記第2ウレタン層の表面側に、配設される構成としていることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【請求項7】
前記保護層が、前記センサ層の外表面に貼着される表皮材として、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が操舵時に把持する把持部に、把持を検出可能なセンサ層が配設されて構成されるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハンドルでは、操舵時に把持する把持部に、静電容量の増加により、把持を検出可能な導電性材料を配合してなるセンサ層、が配設されて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。センサ層は、ハンドルの把持部の表面側に巻き付けられる表皮材に配設されていた。表皮材は、不織布や皮革等の基材層と、基材層に積層される弾性体層と、弾性体層の外表面側のコート層と、から構成され、弾性体層が、発泡ウレタンに導電性材料を含有させて、センサ層としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のハンドルでは、把持部における芯材の周囲に設けられた発泡ウレタン等からなる被覆層の表面に、センサ層を有した表皮材を巻き付けて形成するものであり、被覆層に接着剤を塗布し、そして、把持部の断面略楕円形状の被覆部の外表面に、シワ無く表皮材を巻きつけることから、センサ層を設けた把持部の製造に手間がかかることとなっていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、把持部が把持を検知するセンサ層を備えていても、簡便に、製造できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハンドルでは、操舵時に把持する把持部に、把持を検出可能なセンサ層が配設されて構成されるハンドルであって、
前記把持部が、芯材と、該芯材の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層と、前記センサ層と、を備えて構成されるとともに、
前記センサ層が、
導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成され、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成とし、さらに、
表面側に配設される保護層に覆われて、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るハンドルでは、被覆層の形成時に、同時に、センサ層が配設されて、別途、被覆層に、センサ層を設けたシート材を巻き付ける等する場合に比べて、簡便に、センサ層を有した把持部を具備するハンドル、を製造することができる。すなわち、センサ層が、モールドコート層(インモールドコート層)としており、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤を、被覆層を型成形する際の成形型の型面に、予め、塗布しておくだけでよく、後は、単に、被覆層を成形するだけで、センサ層を設けた被覆層を形成できる。さらに、比較例として、例えば、センサ層をモールドコート層とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層の外表面側に、塗布し、そして、硬化させて、センサ層を形成する場合では、成形後の被覆層の外表面に、プライマーを塗布したり、あるいは、ウレンタン系塗料の塗布後の乾燥の工数も必要となってしまうが、この場合に比べて、本発明のモールドコート層からなるセンサ層を設けたハンドルでは、既述のプライマーの塗布工程や乾燥工程が不要となることから、簡便に、製造できる。さらにまた、センサ層が、発泡ウレタンからなる被覆層と同種のウレタン系塗料としていることから、相互の溶融性(接着性)も良好であり、センサ層のずれも生じ難い。さらに、本発明のハンドルのセンサ層は、その表面に保護層が配設されており、直接、把持部の表面側で露出されないことから、耐久性よく、把持部の把持検知を行うことができる。
【0008】
したがって、本発明に係るハンドルは、把持部が把持を検知するセンサ層を備えていても、簡便に、製造することができる。
【0009】
そして、本発明に係るハンドルは、前記保護層が、型成形により配設される発泡ウレタンからなる表皮層として、配設され、
前記センサ層の裏面側における前記芯材側の前記被覆層としての第1ウレタン層と、前記センサ層の表面側における前記表皮層としての第2ウレタン層と、を備えて構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、保護層としての表皮層が、第2ウレタン層として構成されて、弾力性を設けて構成できることから、把持部を把持する際の感触を良好にすることができる。また、第2ウレタン層の発泡ウレタン材料に、所定の顔料を添加しておけば、表皮層を所定の配色として形成できて、ハンドルの意匠性を向上させることができる。
【0011】
この場合、第2ウレタン層は、第1ウレタン層より密度を高くして配設されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、センサ層の内周側の第1ウレタン層の密度より、センサ層の外表面側の第2ウレタン層の密度が高ければ、第1ウレタン層に比べて、第2ウレタン層の誘電率を向上させることができることから、センサ層と芯材との間で生ずる寄生容量の変動量を相対的に抑制するとともに、センサ層の把持検知の感度を向上させ、把持検知の精度を向上させることができる。
【0013】
さらに、センサ層を間にして第1ウレタン層と第2ウレタン層とが配設される場合には、前記第1ウレタン層と前記第2ウレタン層とが、前記第1ウレタン層に対する前記第2ウレタン層のずれを抑制可能に、前記センサ層を間にして、相互に嵌合する嵌合部、を有して構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明に係るハンドルでは、前記保護層が、ウレタン系塗料からなるトップコート層として、配設されるとともに、
該トップコート層の前記ウレタン系塗料を第1のモールドコート剤とし、前記センサ層を形成する前記モールドコート剤を第2のモールドコート剤として、順次、前記被覆層の成形型の型面に、塗布し、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、前記センサ層と前記保護層とが、配設される構成としてもよい。
【0015】
このような構成では、被覆層の成形型の型面に、順次、第1モールドコート剤と第2モールドコート剤とを塗布して、被覆層を成形すれば、センサ層と、センサ層を保護する保護層としてのトップコート層とを、同時に形成できて、一層、簡便に、耐久性を有したセンサ層を備えた把持部を形成できる。また、センサ層が、トップコート層に覆われて、把持部の外表面側に、配設されていることから、把持検知の感度を良好にすることもできる。
【0016】
さらに、本発明に係るハンドルでは、前記保護層が、前記センサ層の外表面に貼着される表皮材として、配設されて、
発泡ウレタンからなる前記被覆層が、
前記芯材側の第1ウレタン層と、前記センサ層の裏面側の第2ウレタン層と、前記第1ウレタン層と前記第2ウレタン層との間に配設されるシールド層と、を備えて構成され、
前記シールド層が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなる第1のモールドコート剤から構成され、
前記センサ層が、第2のモールドコート剤から構成されて、
前記第1モールドコート剤が、型成形時における前記第1ウレタン層の成形型の型面に塗布されて、前記第1ウレタン層の成形時に、前記第1ウレタン層の表面側に、配設される構成とし、
前記センサ層としての前記第2モールドコート剤が、型成形時における前記第2ウレタン層の成形型の型面に塗布されて、前記第2ウレタン層の成形時に、前記第2ウレタン層の表面側に、配設される構成としてもよい。
【0017】
このような構成では、第2モールドコート剤からなる第2モールドコート層としてのセンサ層の芯材側には、導電性材料を含有した第1モールドコート剤からなる第1モールドコート層が、シールド層として、配設されており、芯材側の寄生容量の影響を抑えて、センサ層における把持検知の感度を向上させることができる。そして勿論、把持部の表面側におけるセンサ層を覆う保護層が、センサ層に貼着される表皮材としており、表皮材の意匠により、把持部の意匠性を向上させることができる。
【0018】
勿論、前記保護層が、前記センサ層の外表面に貼着される表皮材として、配設されるハンドルでは、把持部を、芯材と、芯材の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層と、センサ層と、センサ層を保護する保護層としての表皮材と、から構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
【
図2】第1実施形態のハンドルにおける把持部の断面図であり、
図1のII-II部位に対応する。
【
図3】第1実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図4】第1実施形態のハンドルの製造工程を説明する図であり、
図3の後の状態を示す。
【
図5】第1実施形態の変形例のハンドルを示す概略平面図である。
【
図6】
図5に示すハンドルにおける把持部の断面図であり、
図5のVI-VI部位に対応する。
【
図7】
図5に示すハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図8】
図5に示すハンドルの製造工程を説明する図であり、
図7の後の状態を示す。
【
図9】第2実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
【
図10】第2実施形態のハンドルにおける把持部の断面図であり、
図9のX-X部位に対応する。
【
図11】第2実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図12】第3実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
【
図13】第3実施形態のハンドルにおける把持部の断面図であり、
図12のXIII-XIIII部位に対応する。
【
図14】第3実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図15】第3実施形態のハンドルの製造工程を説明する図であり、
図14の後の状態を示す。
【
図16】第4実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
【
図17】第4実施形態のハンドルにおける把持部の断面図であり、
図16のXVII-XVII部位に対応する。
【
図18】第4実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図19】第1実施形態の他の変形例のハンドルを示す概略平面図である。
【
図20】第1実施形態のさらに他の変形例のハンドルを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のハンドルW1は、
図1,2に示すように、図示しない車両の操舵時に把持する略円環状の把持部R1と、把持部R1の中央のボス部Bと、把持部R1とボス部Bとを連結するスポーク部S(L,R,B)と、を備えて構成されている。スポーク部Sは、ボス部Bから左右両側に延びるスポーク部SL,SRと、ボス部Bから後側に延びるスポーク部SBと、を備えている。また、ハンドルW1は、ボス部Bの上部側に配設される二点鎖線で示したエアバッグ装置105と、ハンドル本体H1と、ボス部Bの下部側を覆う図示しないロアカバーと、を備えて構成されている。
【0021】
ハンドル本体H1は、把持部R1、ボス部B、及び、スポーク部Sを連結するアルミニウム合金等の金属材からなる芯材3、を備えて構成されている。芯材3は、把持部Rに配設される把持芯材部4と、ボス部Bに配設されるボス芯材部5と、把持芯材部4とボス芯材部5とを連結するように、スポーク部S(L,R,B)に配設されるスポーク芯材部6(L,R),7と、を備えて構成されている。ボス芯材部5は、車両のステアリングシャフトと結合される鋼製のボス5aを配設させている。また、スポーク芯材部6は、左右のスポーク部SL,SRに配設されるスポーク芯材部6L,6Rと、後部側のスポーク部SBに配設されて、ボス芯材部5側で左右に分岐し、そして、把持芯材部4側で結合されるような2本のスポーク芯材部7,7と、から構成されている。
【0022】
なお、ボス部Bには、エアバッグ装置105に覆われたハンドル本体H1の部位に、把持検知回路100が配設されている。把持検知回路100は、後述するセンサ層13から延びる図示しないリード線が結線されており、運転者の手が把持部R1を把持するように、把持部R1のセンサ層13に接近した際に、静電容量が上昇することから、その上昇を検出して、運転者の把持を検知する。
【0023】
そして、把持部R1は、
図2に示すように、芯材3の把持芯材部4と、把持芯材部4の周囲を覆うように、型成形により形成される発泡ウレタンからなる被覆層10と、被覆層10の表面に配設されるセンサ層13と、センサ層13の表面側に配設される保護層16と、から構成されている。
【0024】
センサ層13は、導電性材料を含有したウレタン系塗料(導電性フィラーとして、導電性カーボンや金属酸化物等の粉末、を混ぜ込んだウレタン系塗料)からなるモールドコート剤28から形成され(
図3参照)、型成形時の被覆層10の型面21a,22aに塗布されて、被覆層10の成形時に、被覆層10の表面側に、配設される構成としている。
【0025】
なお、第1実施形態の場合、センサ層13は、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料から形成されている。
【0026】
保護層16は、第1実施形態の場合、型成形により配設される発泡ウレタンからなる表皮層17として、配設されている。
【0027】
すなわち、第1実施形態の場合、発泡ウレタンは、センサ層13の裏面側における把持芯材部4側の被覆層10としての第1ウレタン層11と、センサ層13の表面側における表皮層17としての第2ウレタン層18と、を備えて構成されている。
【0028】
なお、第1実施形態の場合、センサ層13が、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料からなって、被覆層10の表面を暗色の黒色で覆っており、表皮層17は、黒色でなく、意匠性を高めるために、明色のベージュ系の顔料を含有させた発泡ウレタンが使用されて、成形されている。
【0029】
第1実施形態の場合、センサ層13の厚さ寸法St1は、導電性、耐久性、及び、感触、を考慮して、5~50μm程度、好ましくは、10~30μm程度の範囲内の20μmとし、表皮層17の第2ウレタン層18の厚さ寸法Ut1は、耐久性、感触、及び、センサ層13の感度、を考慮して、1~3mm程度の範囲内の2mmとしている。
【0030】
また、発泡ウレタンからなる第1ウレタン層11と第2ウレタン層18とは、誘電率を高くして、センサ層13の把持検知の感度を向上できるように、第2ウレタン層18の密度を、第1ウレタン層11の密度より高くしている。第1ウレタン層11の密度は、0.2~0.4g/cm3程度の範囲内の0.3g/cm3とし、第2ウレタン層18の密度は、0.5~0.9g/cm3程度の範囲内の0.7g/cm3としている。
【0031】
第1実施形態のハンドル本体H1の製造は、モールドコート剤塗布工程、第1ウレタン層成形工程、及び、第2ウレタン層成形工程、を経て、製造される。
【0032】
まず、モールドコート剤塗布工程では、
図3のA,Bに示すように、被覆層10としての第1ウレタン層11を成形する成形型20の割型21,22の型面21a,22aに、センサ層13を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、モールドコート剤28として、塗布装置としてのスプレーガン27により、塗布する。なお、モールドコート剤28を塗布する前には、型面21a,22aに離型剤を塗布しておく。
【0033】
ついで、第1ウレタン層成形工程として、
図3のC,Dに示すように、割型21,22からなる成形型20を型締めし、キャビティ20a内に、第1ウレタン層11を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第1ウレタン層11を成形した中間成形品15を製造し、成形型20を型開きして、中間成形品15を取り出す。
【0034】
ついで、第2ウレタン層成形工程として、
図4のA,Bに示すように、第2ウレタン層18を成形する割型25,26からなる成形型24を型開きさせて、中間成形品15をセットし、成形型24を型締めし、
図4のB,Cに示すように、キャビティ24a内に、第2ウレタン層18を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第2ウレタン層18を成形する。なお、成形前には、割型25,26の型面25a,26aに離型剤を塗布しておく。そして、第2ウレタン層18を成形した後には、型開きして、取り出せば、把持部R1を設けた成形品、すなわち、ハンドル本体H1を得ることができる。
【0035】
このように製造したハンドル本体H1では、ボス部Bの下部側に図示しないロアカバーを取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置105を取り付ければ、ハンドルW1を組み立てることができるとともに、ハンドルW1を車両に搭載することができる。なお、エアバッグ装置105を取り付ける際には、センサ層13と運転者の把持を検知可能な把持検知回路100とを、所定のリード線により、結線させておく。
【0036】
車両に搭載されたハンドルW1では、運転者の手が、把持部R1を把持するように、把持部R1のセンサ層13に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路100が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0037】
そして、第1実施形態のハンドルW1では、被覆層10の形成時に、同時に、センサ層13が配設されて、別途、被覆層10に、センサ層を設けたシート材を巻き付ける等する場合に比べて、簡便に、センサ層13を有した把持部R1を具備するハンドルW1、を製造することができる。すなわち、センサ層13が、モールドコート層14(インモールドコート層)としており、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤28を、被覆層10を型成形する際の成形型20の型面21a,22aに、予め、塗布しておくだけでよく、後は、単に、被覆層10を成形するだけで、センサ層13を設けた被覆層10を形成できる。さらに、比較例として、例えば、センサ層13をモールドコート層14とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層の外表面側に、塗布し、そして、硬化させて、センサ層を形成する場合では、成形後の被覆層の外表面に、プライマーを塗布したり、あるいは、ウレンタン系塗料の塗布後の乾燥の工数も必要となってしまうが、この場合に比べて、第1実施形態のモールドコート層14からなるセンサ層13を設けたハンドルW1では、既述のプライマーの塗布工程や乾燥工程が不要となることから、簡便に、製造できる。さらにまた、センサ層13が、発泡ウレタンからなる被覆層10と同種のウレタン系塗料としていることから、相互の溶融性(接着性)も良好であり、センサ層13のずれも生じ難い。さらに、第1実施形態のハンドルW1のセンサ層13は、その表面に保護層16が配設されており、直接、把持部R1の表面側で露出されないことから、耐久性よく、把持部の把持検知を行うことができる。
【0038】
したがって、第1実施形態のハンドルW1は、把持部R1が把持を検知するセンサ層13を備えていても、簡便に、製造することができる。
【0039】
そして、第1実施形態のハンドルW1は、保護層16が、型成形により配設される発泡ウレタンからなる表皮層17として、配設されて、センサ層13の裏面側における芯材3の把持芯材部4側の被覆層10としての第1ウレタン層11と、センサ層13の表面側における表皮層17としての第2ウレタン層18と、を備えて構成されている。
【0040】
そのため、第1実施形態のハンドルW1では、保護層16としての表皮層17が、第2ウレタン層18として構成されて、弾力性を設けて構成できることから、把持部R1を把持する際の感触を良好にすることができる。また、第2ウレタン層18の発泡ウレタン材料に、所定の顔料(実施形態の場合、ベージュ系の顔料)を添加しており、表皮層17を所定の配色として形成できて、ハンドルW1の意匠性を向上させることができる。
【0041】
さらに、第1実施形態では、第2ウレタン層18が、第1ウレタン層11より密度を高くして配設されている。
【0042】
そのため、第1実施形態では、センサ層13の内周側の第1ウレタン層11の密度より、センサ層13の外表面側の第2ウレタン層18の密度が高ければ、第1ウレタン層11に比べて、第2ウレタン層18の誘電率を向上させることができることから、センサ層13と把持芯材部4との間で生ずる寄生容量の変動量を相対的に抑制するとともに、センサ層13の把持検知の感度を向上させ、把持検知の精度を向上させることができる。
【0043】
なお、センサ層13を間にして第1ウレタン層11と第2ウレタン層18とが配設される場合には、
図5~6に示すハンドルW1Aのように、第1ウレタン層11Aと第2ウレタン層18Aとが、第1ウレタン層11Aに対する第2ウレタン層18Aのずれを抑制可能に、センサ層13を間にして、相互に嵌合する嵌合部12,19、を有して構成されていてもよい。
【0044】
このハンドルW1Aでは、ハンドル本体H1Aの把持部R1Aにおいて、第1ウレタン層11Aと第2ウレタン層18Aとが、センサ層13を間にして、相互に嵌合する嵌合部12,19を備えている点が、第1実施形態のハンドルW1と異なるだけで、他の構成は、同じであり、第1実施形態と同じ部位、部材は、同じ符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0045】
第1ウレタン層11Aに形成される嵌合部12は、相互に離隔するように丸みを帯びて隆起する凸部12aと、凸部12aの周囲における凸部12aと相対的に凹むような凹部12bと、を備えて構成され、第2ウレタン層18Aに形成される嵌合部19は、第1ウレタン層11Aの嵌合部12と、センサ層13を介在させて、嵌合する凹凸形状としている。すなわち、嵌合部19は、第1ウレタン層11Aの嵌合部12の凸部12aと嵌合する凹部19aと、嵌合部12の凹部12bと嵌合する凸部19bと、を備えて構成されている。
【0046】
なお、第1ウレタン層11Aと第2ウレタン層18Aとは、第1実施形態のウレタン層11,18と同じものが使用されている。そして、中立点からのセンサ層13を間にした凸部12aの突出する高さ寸法h1は、約0.5mm、凹部12bの凹む深さ寸法d1は、約0.5mmとしている。
【0047】
このハンドル本体H1Aの製造は、第1実施形態と同様に、モールドコート剤塗布工程、第1ウレタン層成形工程、及び、第2ウレタン層成形工程、を経て、製造され、モールドコート剤塗布工程では、
図7のA,Bに示すように、被覆層10Aとしての第1ウレタン層11Aを成形する成形型20Aの割型21,22の型面21a,22aに、センサ層13を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、モールドコート剤28として、塗布装置としてのスプレーガン27により、塗布する。なお、モールドコート剤28を塗布する前には、型面21a,22aに離型剤を塗布しておく。
【0048】
この成形型20Aでは、割型21,22の型面21a,22aに、嵌合部12を形成可能に、凹凸部21b,22bが形成されている。
【0049】
第1ウレタン層成形工程では、
図7のC,Dに示すように、割型21,22からなる成形型20Aを型締めし、キャビティ20a内に、第1ウレタン層11Aを成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第1ウレタン層11Aを成形した中間成形品15Aを製造し、成形型20Aを型開きして、中間成形品15Aを取り出す。その後は、第2ウレタン層成形工程として、
図8のA,Bに示すように、第2ウレタン層18Aを成形する割型25,26からなる成形型24を型開きさせて、中間成形品15Aをセットし、成形型24を型締めし、
図8のB,Cに示すように、キャビティ24a内に、第2ウレタン層18Aを成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第2ウレタン層18Aを成形する。なお、成形前には、割型25,26の型面25a,26aに離型剤を塗布しておく。そして、第2ウレタン層18Aを成形した後には、型開きして、取り出せば、把持部R1Aを設けた成形品、すなわち、ハンドル本体H1Aを得ることができる。
【0050】
このように製造したハンドル本体H1Aでは、第1実施形態と同様に、ボス部Bの下部側に図示しないロアカバーを取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置105を取り付ければ、ハンドルW1Aを組み立てることができるとともに、ハンドルW1Aを車両に搭載することができる。なお、エアバッグ装置105を取り付ける際には、センサ層13と運転者の把持を検知可能な把持検知回路100とを、所定のリード線により、結線させておく。
【0051】
車両に搭載されたハンドルW1Aでは、第1実施形態と同様に、運転者の手が、把持部R1Aを把持するように、把持部R1のセンサ層13に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路100が検知することから、運転者の把持を検知することができて、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。そしてさらに、このハンドルW1Aでは、第1ウレタン層11Aと第2ウレタン層18とが、センサ層13を間にして、相互に嵌合する嵌合部12,19を備えおり、第1ウレタン層11Aに対する第2ウレタン層18Aのずれが抑制されて、把持部R1Aの把持時に、保護層16Aとしての表皮層17Aである第2ウレタン層18Aが、第1ウレタン層11Aに対してずれず、操舵時の把持部R1Aの把持時の感触を良好にすることができる。
【0052】
なお、図例では、嵌合部12,19を、多数の点状の凸部12a,19bを設けて構成したが、第1ウレタン層11Aに対する第2ウレタン層18Aのずれが抑制されれば、成形型20Aからの離型に支障を生じさせない範囲で、三角錐状や円柱状、あるいは、把持部R1Aの周方向に沿った突条等の種々の形状で、嵌合部12,19の凹凸形状を構成してもよい。
【0053】
つぎに、
図9~11に示す第2実施形態のハンドルW2について説明する。この第2実施形態のハンドルW2では、芯材3、エアバッグ装置105、図示しないロアカバー等は、第1実施形態と同様であり、異なる点は、把持部R2の芯材3、すなわち、把持芯材部4を被覆している構造が、第1実施形態と異なっている。
【0054】
第2実施形態のハンドルW2でも、第1実施形態と同様に、把持部R2が、芯材3の把持芯材部4と、把持芯材部4の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層30と、センサ層33と、を備えて構成されている。センサ層33は、第1実施形態と同様に、導電性材料(導電性カーボン)を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤48から形成され、型成形時の被覆層30を成形する成形型40の型面41a,42aに塗布されて、被覆層30の成形時に、被覆層30の表面側に、配設される構成としている。さらに、センサ層33は、表面側に配設される保護層36に覆われて、配設されている。
【0055】
そして、第2実施形態の場合、保護層36が、ウレタン系塗料からなるトップコート層37として、配設されている。さらに、トップコート層37には、外表面37a側に、梨地等のシボ38が、賦形されている。
【0056】
第2実施形態の場合、センサ層33の厚さ寸法St2は、導電性、耐久性、及び、感触、を考慮して、5~50μm程度、好ましくは、10~30μm程度の範囲内の20μmとし、トップコート層37の厚さ寸法Ut2は、耐久性(耐摩耗性)とシボ模様が明瞭にとなるように、10~30μm程度の範囲内の20μmとしている。
【0057】
この第2実施形態のハンドル本体H2の製造は、モールドコート剤塗布工程、及び、ウレンタン層成形工程、を経て、製造される。
【0058】
まず、モールドコート剤塗布工程では、
図11のAに示すように、被覆層30としてのウレタン層31を成形する成形型40の割型41,42の型面41a,42aに、まず、トップコート層37を形成するウレタン系塗料からなる第1モールドコート剤47を、塗布装置としてのスプレーガン44により、塗布する。なお、型面41a,42aには、シボ模様を賦形可能な所定の凹凸が形成されている。また、第1モールドコート剤47を塗布する前には、型面41a,42aに離型剤を塗布しておく。
【0059】
ついで、塗布した第1モールドコート剤47の硬化後、すなわち、第1モールドコート層39の形成後、
図11のB,Cに示すように、センサ層33を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、第2モールドコート剤48として、第1モールドコート層39に重ねるように、塗布装置としてのスプレーガン45により、塗布する。ちなみに、トップコート層37を第1モールドコート層39とすれば、センサ層33は、型面41a,42aに対して、2番目の第2モールドコート剤48を塗布して形成されることから、第2モールドコート層34となる。
【0060】
ついで、ウレタン層成形工程として、
図11のC,Dに示すように、割型41,42からなる成形型40を型締めし、キャビティ40a内に、ウレタン層31を成形するウレタン材料を注入して硬化させれば、被覆層30のウレタン層31を成形した把持部R2を製造できて、型開きした成形型40から取り出せば、ハンドル本体H2を得ることができる。
【0061】
このハンドル本体H2では、第1実施形態と同様に、ボス部Bの下部側に図示しないロアカバーを取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置105を取り付ければ、ハンドルW2を組み立てることができるとともに、ハンドルW2を車両に搭載することができる。なお、エアバッグ装置105を取り付ける際には、センサ層33と運転者の把持を検知可能な把持検知回路100とを、所定のリード線により、結線させておく。
【0062】
車両に搭載されたハンドルW2では、運転者の手が、把持部R2を把持するように、把持部R2のセンサ層33に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路100が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0063】
そして、この第2実施形態では、トップコート層37のウレタン系塗料を第1のモールドコート剤47とし、センサ層33を形成するモールドコート剤を第2のモールドコート剤48として、順次、被覆層30の型面41a,42aに、塗布し、被覆層30の成形時に、被覆層30の表面側に、センサ層33と保護層36とが、配設される構成としている。
【0064】
そのため、第2実施形態では、被覆層30の成形型40の型面41a,42aに、順次、第1モールドコート剤47と第2モールドコート剤48とを塗布して、被覆層30を成形すれば、センサ層33と、センサ層33を保護する保護層36としてのトップコート層37とを、同時に形成できて、一層、簡便に、耐久性を有したセンサ層33を備えた把持部R2を形成できる。また、センサ層33が、薄いトップコート層37に覆われて、把持部R2の外表面側に、配設されていることから、把持検知の感度を良好にすることもできる。
【0065】
また、第2実施形態では、トップコート層37が、シボ38を配設されており、センサ層33と同じ黒系統の配色としていれば、トップコート層37が薄くとも、センサ層33の黒色の配色を把持部R2の外表面側から目立たせずに、つや消し状の黒色の意匠の把持部R2として構成できて、把持部R2の意匠性を良好にすることができる。
【0066】
勿論、トップコート層37としては、使用する第1モールドコート剤47に、黒系統以外の所望の色の顔料等を含有させて、形成してもよい。
【0067】
つぎに、
図12~15に示す第3実施形態のハンドルW3について説明する。この第3実施形態のハンドルW3でも、芯材3、エアバッグ装置105、図示しないロアカバー等は、第1実施形態と同様であり、異なる点は、把持部R3の芯材3、すなわち、把持芯材部4を被覆している構造が、第1実施形態と異なっている。
【0068】
第3実施形態のハンドルW3でも、第1実施形態と同様に、把持部R3が、芯材3の把持芯材部4と、把持芯材部4の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層50と、センサ層57と、を備えて構成されている。センサ層57は、第1実施形態と同様に、導電性材料(導電性カーボン)を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤75から形成され、型成形時の被覆層50の第2ウレタン層52の型面68a,69aに塗布されて、被覆層50の第2ウレタン層52の成形時に、第2ウレタン層52の表面側に、配設される構成としている。さらに、センサ層57は、表面側に配設される保護層60に覆われて、配設されている。
【0069】
そして、第3実施形態の場合、保護層60が、センサ層57の外表面に貼着される表皮材61として、配設されている。第3実施形態の場合、表皮材61は、皮革から形成されている。
【0070】
さらに、第3実施形態では、発泡ウレタンからなる被覆層50が、芯材3の把持芯材部4側の第1ウレタン層51と、センサ層57の裏面側の第2ウレタン層52と、第1ウレタン層51と第2ウレタン層52との間に配設されるシールド層54と、を備えて構成されている。
【0071】
シールド層54は、導電性材料(例えば導電性カーボン)を含有したウレタン系塗料からなる第1のモールドコート剤74から構成されている。そのため、センサ層57は、第2のモールドコート剤75から構成されている。すなわち、第1モールドコート剤74は、型成形時における第1ウレタン層51の成形型63の型面64a,65aに塗布されて、第1ウレタン層51の成形時に、第1ウレタン層51の表面側に、配設されて、第1モールドコート層55が形成される構成としている。また、センサ層57を形成する第2モールドコート剤75が、型成形時における第2ウレタン層52の成形型67の型面68a,69aに塗布されて、第2ウレタン層52の成形時に、第2ウレタン層52の表面側に、第2モールドコート層58となるセンサ層57が、配設される構成としている。
【0072】
第3実施形態の場合、センサ層57の厚さ寸法St3は、導電性、耐久性、及び、感触、を考慮して、5~50μm程度、好ましくは、10~30μm程度の範囲内の20μmとしている。シールド層54の厚さ寸法Stsは、10~100μm程度、好ましくは、30~60μm程度の範囲内の50μmとしている。第2ウレタン層52の厚さ寸法Ut3は、耐久性、感触、及び、センサ層57の感度、を考慮して、1~3mm程度の範囲内の2mmとしている。
【0073】
また、発泡ウレタンからなる第1ウレタン層51と第2ウレタン層52とは、略同等の密度としている。
【0074】
第3実施形態のハンドル本体H3の製造は、シールド用モールドコート剤塗布工程、第1ウレタン層成形工程、センサ用モールドコート剤塗布工程、第2ウレタン層成形工程、及び、革巻き工程、を経て、製造される。
【0075】
まず、シールド用モールドコート剤塗布工程では、
図14のA,Bに示すように、被覆層50としての第1ウレタン層51を成形する成形型63の割型64,65の型面64a,65aに、シールド層54を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、第1モールドコート剤74として、塗布装置としてのスプレーガン71により、塗布する。なお、モールドコート剤74を塗布する前には、型面64a,65aに離型剤を塗布しておく。
【0076】
ついで、第1ウレタン層成形工程として、
図14のB,Cに示すように、割型64,65からなる成形型63を型締めし、キャビティ63a内に、第1ウレタン層51を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第1ウレタン層51を成形した中間成形品56を製造し、成形型63を型開きして、中間成形品56を取り出す。
【0077】
ついで、センサ用モールドコート剤塗布工程として、
図15のAに示すように、被覆層50としての第2ウレタン層52を成形する成形型67の割型68,69の型面68a,69aに、センサ層57を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、第2モールドコート剤75として、塗布装置としてのスプレーガン72により、塗布する。なお、モールドコート剤75を塗布する前には、型面68a,69aに離型剤を塗布しておく。
【0078】
ついで、第2ウレタン層成形工程として、
図15のA,Bに示すように、第2ウレタン層52を成形する割型68,69からなる成形型67に、中間成形品56をセットし、成形型24を型締めし、キャビティ67a内に、第2ウレタン層52を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第2ウレタン層52を成形する。そして、第2ウレタン層18を成形した後には、型開きして、取り出せば、皮巻き前の中間成形品59を得ることができる(
図15のC参照)。
【0079】
その後、皮革からなる表皮材61を、センサ層57の外表面に、貼着させつつ巻き付ければ、ハンドル本体H3の把持部R3を製造することができる(
図15のD参照)。
【0080】
このように製造したハンドル本体H3では、ボス部Bの下部側に図示しないロアカバーを取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置105を取り付ければ、ハンドルW3を組み立てることができるとともに、ハンドルW3を車両に搭載することができる。なお、エアバッグ装置105を取り付ける際には、センサ層57と運転者の把持を検知可能な把持検知回路100とを、所定のリード線により、結線させておく。
【0081】
車両に搭載されたハンドルW3では、運転者の手が、把持部R3を把持するように、把持部R3のセンサ層57に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路100が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0082】
そして、第3実施形態のハンドルW3では、第2モールドコート剤75からなる第2のモールドコート層58としてのセンサ層57の芯材3(把持芯材部4)側には、導電性材料を含有した第1モールドコート剤74からなる第1のモールドコート層55が、シールド層54として、配設されており、把持芯材部4側の寄生容量の影響を抑えて、センサ層57における把持検知の感度を向上させることができる。そして勿論、把持部R3の表面側におけるセンサ層57を覆う保護層60が、センサ層57に貼着される表皮材61としており、表皮材61の意匠により、把持部R3の意匠性を向上させることができる。
【0083】
なお、保護層が、センサ層の外表面に貼着される表皮材として、配設される場合には、
図16~18に示すハンドルW4のように、ハンドル本体H4の把持部R4を、芯材3の把持芯材部4と、把持芯材部4の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層80と、センサ層83と、センサ層83を保護する保護層86としての表皮材87と、から構成してもよい。
【0084】
センサ層83は、第1実施形態と同様に、導電性材料(導電性カーボン)を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤96から形成され、型成形時の被覆層80を成形する成形型90の型面91a,92aに塗布されて、被覆層30の成形時に、被覆層30の表面側に、配設されるモールドコート層84から構成されている。さらに、このセンサ層83は、表面側に配設される皮革からなる表皮材87(保護層86)に覆われて、配設されている。
【0085】
第4実施形態の場合、センサ層83の厚さ寸法St4は、導電性、耐久性、及び、感触、を考慮して、5~50μm程度、好ましくは、10~30μm程度の範囲内の20μmとしている。
【0086】
この第4実施形態のハンドル本体H4の製造は、モールドコート剤塗布工程、ウレンタン層成形工程、及び、皮巻き工程、を経て、製造される。
【0087】
まず、モールドコート剤塗布工程では、
図18のAに示すように、被覆層80としてのウレタン層81を成形する成形型90の割型91,92の型面91a,92aに、センサ層83を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、モールドコート剤96として、塗布装置としてのスプレーガン94により、塗布する。なお、モールドコート剤96を塗布する前には、型面91a,92aに離型剤を塗布しておく。
【0088】
ついで、ウレタン層成形工程として、
図18のB,Cに示すように、割型91,92からなる成形型90を型締めし、キャビティ90a内に、ウレタン層81を成形するウレタン材料を注入して硬化させて、被覆層80のウレタン層81を成形する。そして、ウレタン層81を成形した後には、型開きして、取り出せば、外周面に、センサ層83としてのモールドコート層84を配設した皮巻き前の中間成形品85、を得ることができる。
【0089】
その後、皮革からなる表皮材87を、センサ層83の外表面に、貼着させつつ巻き付ければ、ハンドル本体H4の把持部R4を製造することができる(
図18のD参照)。
【0090】
このハンドル本体H4では、第1実施形態と同様に、ボス部Bの下部側に図示しないロアカバーを取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置105を取り付ければ、ハンドルW4を組み立てることができるとともに、ハンドルW4を車両に搭載することができる。なお、エアバッグ装置105を取り付ける際には、センサ層83と運転者の把持を検知可能な把持検知回路100とを、所定のリード線により、結線させておく。
【0091】
車両に搭載されたハンドルW4では、運転者の手が、把持部R4を把持するように、把持部R4のセンサ層33に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路100が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0092】
この第4実施形のハンドルW4でも、被覆層80の形成時に、同時に、センサ層83が配設されて、別途、被覆層80に、センサ層を設けたシート材を巻き付ける等する場合に比べて、簡便に、センサ層83を有した把持部R4を具備するハンドルW4、を製造することができる。すなわち、センサ層83が、モールドコート層84(インモールドコート層)としており、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤96を、被覆層80を型成形する際の成形型90の型面91a,92aに、予め、塗布しておくだけでよく、後は、単に、被覆層80を成形するだけで、簡便に、センサ層83を設けた被覆層80を形成できる。さらにまた、センサ層83が、発泡ウレタンからなる被覆層80と同種のウレタン系塗料としていることから、相互の溶融性(接着性)も良好であり、センサ層83のずれも生じ難い。さらに、このハンドルW4のセンサ層83は、その表面に保護層86が配設されており、直接、把持部R4の表面側で露出されないことから、耐久性よく、把持部R4の把持検知を行うことができる。
【0093】
さらに、この第4実施形態では、センサ層83が、薄い皮革からなる表皮材87に覆われて、把持部R4の外表面側に、配設されていることから、把持検知の感度を良好にすることもできる。さらに、把持部R4の表面側におけるセンサ層83を覆う保護層86が、センサ層83に貼着される表皮材87としており、表皮材87の意匠により、把持部R4の意匠性を向上させることができる。
【0094】
なお、各実施形態では、把持部R1,R2,R3に、一枚状のセンサ層13,33,57を配設したが、
図19に示すハンドルW5の把持部R5のように、第1実施形態のセンサ層13を、左右で分離させたセンサ層13L,13Rとし、把持部R5の左側エリアR5Lと右側エリアR5Rとで、別々に、把持を検知できるように構成してもよい。
【0095】
また、センサ層13を分割する場合には、
図20に示すハンドルW6の把持部R6のように、センサ層13を、把持部R6の内周側と外周側とで分離させたセンサ層13Iとセンサ層13Oとし、把持部R6の内周側のエリアR6Iと外周側のエリアR6Oとで、別々に、把持を検知できるように構成してもよい。なお、センサ層を分割する場合には、モールドコート剤を塗布する際、型面にマスキングを施しておくだけで、簡単に、分割させて配置させることができる。
【0096】
さらに、各実施形態のハンドルW1,W1A,W2,W3,W4,W5では、略円環状の把持部R1,R1A,R2,R3,R4,R5を例示したが、把持部は、円環形状に限定されるものではなく、四角環状や、楕円環状等の種々の形状としていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
3…芯材、4…把持芯材部、
10,10A…被覆層、11,11A…第1ウレタン層、12…嵌合部、13…センサ層、14…モールドコート層、16…保護層、17…表皮層、18,18A…第2ウレタン層、19…嵌合部、20,20A…(第1)成形型、21a…型面、22a…型面、28…モールドコート剤、
30…被覆層、31…ウレタン層、33…センサ層、34…モールドコート層、36…保護層、37…トップコート層、40…成形型、41a…型面、42a…型面、47…(トップコート用)第1モールドコート剤、48…(センサ用)第2モールドコート剤、
50…被覆層、51…第1ウレタン層、52…第2ウレタン層、54…シールド層、55…第1モールドコート層、57…センサ層、58…(第2)モールドコート層、60…保護層、61…表皮材、63…(第1)成形型、64a…型面、65a…型面、67…(第2)成形型、68a…型面、69a…型面、74…(シールド用)第1モールドコート剤、75…(センサ用)第2モールドコート剤、
80…被覆層、81…ウレタン層、83…センサ層、84…モールドコート層、86…保護層、87…表皮材、90…成形型、91a…型面、92a…型面、96…モールドコート剤、
H1,H1A,H2,H3,H4,H5,H6…ハンドル本体、R1,R1A,R2,R3,R4,R5,R6…把持部、W1,W1A,W2,W3,W4,W5,W6…ハンドル。