IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水フーラー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-接着剤の塗工方法 図1
  • 特開-接着剤の塗工方法 図2
  • 特開-接着剤の塗工方法 図3
  • 特開-接着剤の塗工方法 図4
  • 特開-接着剤の塗工方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178279
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】接着剤の塗工方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20221125BHJP
   E04F 21/04 20060101ALI20221125BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
E04F21/04
B05D7/24 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084973
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】楠田 智
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC11
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB05Z
4D075BB56Z
4D075BB60Z
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB11
4D075DB12
4D075DC01
4D075DC02
4D075EA05
4D075EA35
4D075EB33
4D075EB37
4D075EB43
4D075EB51
4D075EC01
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC13
4D075EC37
4D075EC45
(57)【要約】
【課題】 本発明は、接着剤を短時間のうちに略均一な厚みでもって基材上に塗工することができる接着剤の塗工項方法を提供する。
【解決手段】 本発明の接着剤の塗工方法は、基材上に、枠体及びこの枠体内に張設され且つ線材から構成されたメッシュ部材を有し且つメッシュ部材の開口率が40~90%であるメッシュ状治具を配設する治具配設工程と、上記メッシュ状治具の枠体内における上記基材上に液状接着剤を供給する接着剤供給工程と、上記基材上から上記メッシュ状治具を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、枠体及びこの枠体内に張設され且つ線材から構成されたメッシュ部材を有し且つメッシュ部材の開口率が40~90%であるメッシュ状治具を配設する治具配設工程と、
上記メッシュ状治具の枠体内における上記基材上に液状接着剤を供給する接着剤供給工程と、
上記基材上から上記メッシュ状治具を除去する治具除去工程とを含むことを特徴とする接着剤の塗工方法。
【請求項2】
上記液状接着剤におけるJIS K6833に準拠した25℃における10rpmでの粘度が10~100Pa・sであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤の塗工方法。
【請求項3】
上記メッシュ状治具のメッシュ部材を構成している線材の上端まで上記液状接着剤を供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着剤の塗工方法。
【請求項4】
上記接着剤は、加水分解性シリル基を有する重合体を含むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の接着剤の塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤の塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築構造物の外壁材や内装材、床面などの構造部材に意匠性や耐久性を付与するために、タイルや保護部材などの表面部材が接着剤を介して配設一体化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、構造躯体の躯体面に、表面立体模様付タイルを複数枚張設してタイル張面を形成するタイル張面の形成方法が開示されており、タイルを構造躯体の躯体面に貼着するにあたって接着剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-133245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、建築構造物のコスト削減及び工期短縮の観点から、建築構造物(構造躯体)の躯体面にタイルなどの表面部材を施工現場において貼着するのではなく、工場などにおいて、外壁材や内壁材、床面を構成する床材などの基材に、タイルなどの表面部材を接着剤を用いて予め貼着、敷設しておき、表面部材が敷設された基材を施工現場に搬送して建築構造物に配設することが行われている。
【0006】
基材に接着剤を用いて表面部材を貼着させるにあたって、塗工ロール、刷毛又はスプレーなどを用いて基材上に接着剤を塗工し、接着剤上に表面部材を載置して、基材上に接着剤を介して表面部材を貼着一体化させている。
【0007】
しかしながら、基材上に接着剤を厚みが均一になるように塗工することが難しいと共に、基材上への接着剤の塗工に要する時間も掛かるという問題点を有している。
【0008】
本発明は、接着剤を短時間のうちに略均一な厚みでもって基材上に塗工することができる接着剤の塗工項方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の接着剤の塗工方法は、
基材上に、枠体及びこの枠体内に張設され且つ線材から構成されたメッシュ部材を有し且つメッシュ部材の開口率が40~90%であるメッシュ状治具を配設する治具配設工程と、
上記メッシュ状治具の枠体内における上記基材上に液状接着剤を供給する接着剤供給工程と、
上記基材上から上記メッシュ状治具を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接着剤の塗工方法は、基材上に所定のメッシュ状治具を配設し、このメッシュ状治具の枠体内に液状接着剤を供給しているので、基材の所望箇所に液状接着剤を正確に供給することができると共に、基材の所望箇所外に液状接着剤が付着する不測の事態を概ね防止することができる。
【0011】
基材上に供給する液状接着剤の量は、メッシュ状治具のメッシュ部材を目安に行うことができ、基材上に液状接着剤を正確な量でもって供給することができ、基材上に正確な厚みでもって液状接着剤を塗工することができる。
【0012】
基材上にメッシュ状治具を配設した上で、メッシュ状治具の枠体内に液状接着剤を供給するといった簡単な作業でもって基材上に液状接着剤を塗工することができるので、作業者の技量によることなく、基材上に液状接着剤を所望厚みでもって容易に且つ短時間のうちに塗工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】接着剤の塗工方法で用いられるメッシュ状治具及び基材を示した斜視図である。
図2】治具配設工程の状態を示した断面図である。
図3】接着剤供給工程の状態を示した断面図である。
図4】基材上に接着剤層が形成された状態を示した断面図である。
図5】基材上に表面部材を接着一体化された状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の接着剤の塗工方法を図面を参照しつつ説明する。接着剤の塗工方法は、先ず、基材上に、枠体及びこの枠体内に張設され且つ線材から構成されたメッシュ部材を有し且つメッシュ部材の開口率が40~90%であるメッシュ状治具を配設する(治具配設工程)。
【0015】
基材1は、接着剤が塗工される塗工面11が概ね水平になるように任意の載置面上に載置され、塗工面11上に供給された液状接着剤が過度に流動して基材1外に漏出しないように調整される。
【0016】
接着剤の塗工方法によって接着剤が塗工される基材としては、接着剤が塗工される対象物であれば、特に限定されず、例えば、建築構造物の壁部を構成している壁部材、床仕上げ材、床下地材などが挙げられる。
【0017】
壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられる。外壁部材としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、金属板、サッシなどが挙げられる。
【0018】
床仕上げ材としては、例えば、合板及びミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF:Medium Density Fiberboard)などの木質系材料、タイル、塩化ビニルシート、及び石材などが挙げられる。
【0019】
床下地材を構成する部材としては、例えば、合板、パーチクルボード、木根太、石膏ボード、スレート板、及びコンクリート板などが挙げられる。
【0020】
次に、基材1の塗工面11上にメッシュ状治具2を配設する。メッシュ状治具2は、図1に示した通り、平面矩形状の一定厚みを有する枠体21と、この枠体21内に張設されたメッシュ部材22とを有している。なお、図1では、枠体21は、平面矩形状に形成した場合を示したが、基材1の形状に合わせて形成されればよく、平面円形状、平面楕円形状の他、平面三角形、平面五角形などの多角形状であってもよい。
【0021】
メッシュ部材22は、線材22aを縦横に所定間隔を存して組んで形成されており、線材22a、22a間には、上下方向に貫通した開口部22bが無数に形成されており、この開口部22bを通じて液状接着剤が基材1の塗工面11上に供給可能に構成されている。なお、メッシュ部材22の形成要領は、特に限定されず、例えば、平織状などが挙げられる。
【0022】
メッシュ部材22を構成している線材22aの直径は、0.1~1.0mmが好ましく、0.15~0.7mmがより好ましく、0.20~0.60mmが好ましい。線材22aの直径が0.1mm以上であると、メッシュ部材22の保形性を向上させ、基材1上にメッシュ状治具2を載置した状態において、メッシュ状治具2のメッシュ部材22の全体を概ね変形させることなく安定的に基材1上に受止させることができ、基材1上に液状接着剤を正確な量でもって供給することができ、所望厚みを有する接着剤層を基材1上に塗工、形成することができる。線材22aの直径が0.6mm以下であると、メッシュ状治具2の枠体21内における液状接着剤の流動性を阻害せず、枠体21内において液状接着剤を円滑に流動、拡散させて、枠体21内に液状接着剤を均一に充填することができる。なお、線材22aの直径は、線材における長さ方向に直交する面に沿った断面を包囲し得る最小径の真円の直径をいう。
【0023】
メッシュ部材22の開口率は40~90%に調整されており、メッシュ部材22の開口率を40~90%に調整することによって、後述する治具除去工程後において、基材上において、液状接着剤を適度に流動させて、液状接着剤を基材1上に平坦な状態に塗工することができ、表面部材を液状接着剤によって基材上に接着一体化することができると共に、基材1上の所望箇所に液状接着剤を正確に塗工することができる。
【0024】
メッシュ状治具2のメッシュ部材22の開口率を40%以上とすることによって、メッシュ状治具2の枠体21内に供給された液状接着剤をメッシュ部材22を構成している線材の存在にもかかわらず、枠体21内において円滑に流動、拡散させることができると共に、治具除去工程後においても、基材上に供給した液状接着剤を円滑に流動させて平滑な表面を有する接着剤層を形成することができ、表面部材を液状接着剤によって基材上に接着一体化することができる。
【0025】
メッシュ状治具2のメッシュ部材22の開口率を90%以下とすることによって、治具除去工程後において、基材上に所望厚みを有する平滑な表面を有する接着剤層を形成することができ、表面部材を液状接着剤によって基材上に接着一体化することができる。
【0026】
なお、メッシュ部材22の開口率(%)とは、メッシュ部材の平面から見た面積S1と、線材の平面から見た総面積S2とから下記式(1)に基づいて算出された値をいう。
メッシュ部材の開口率(%)=100×(S1-S2)/S1
【0027】
図2に示したように、上述のように構成されたメッシュ状治具2が、基材1の塗工面11上に載置される。メッシュ状治具2は、その枠体21の下面21aが全周に亘って基材1の塗工面11に当接した状態にして基材1の塗工面11上に載置され、枠体21内に供給された液状接着剤が枠体21外に漏出しないように調整される。
【0028】
また、メッシュ状治具2を基材1の塗工面11上に載置した状態において、メッシュ状治具2のメッシュ部材22は、その平面からみた中央部の下面が、基材1における塗工面11上に当接した状態となっている。メッシュ状治具2のメッシュ部材22における中央部の下面を基材における塗工面11上に当接させることによって、メッシュ部材22を基材1の塗工面11上に受止させて、メッシュ状治具2のメッシュ部材22の全体を基材1における塗工面11上に正確に配設することができ、基材1上に正確な量の液状接着剤を供給することが可能となる。
【0029】
次に、メッシュ状治具2の枠体21内に液状接着剤を供給する(接着剤供給工程)。メッシュ状治具2の枠体21内に供給された液状接着剤は、メッシュ部材22の開口部22b及びメッシュ部材22と基材1との対向面間に形成された隙間などを通じて枠体21内を流動して拡散し、枠体21内の全体に均一に充填された状態となる。メッシュ状治具2のメッシュ部材22の開口率が40~90%となるように調整されているので、枠体21内に供給された液状接着剤は、メッシュ状治具2のメッシュ部材22を構成している線材の存在にもかかわらず、枠体21内を円滑に流動することができ、液状接着剤によって枠体21内が隙間なく充填される。
【0030】
メッシュ状治具2の枠体21内に供給される液状接着剤の量は、図3に示したように、メッシュ状治具2の枠体21内に供給された液状接着剤3の上面31がメッシュ状治具2のメッシュ部材22の上端面に略合致するように調整される。メッシュ部材22は、メッシュ状であるため、枠体21内において若干の撓みをもって張設されている。従って、メッシュ部材22の上端面は、その全体を見たとき若干、上下に変動している。そのため、メッシュ状治具2の枠体21内に供給された液状接着剤3の上面31が、メッシュ状治具2のメッシュ部材22のうち、最も上方に位置する線材22aの上端面に概ね合致するように調整されることが好ましい。
【0031】
メッシュ状治具2の枠体21内に供給された液状接着剤3を枠体21内に拡散、充填させるにあたって、ヘラなどの平滑具を用いて、枠体21内に供給した液状接着剤3を積極的に拡散させてもよい。
【0032】
このように、メッシュ状治具2のメッシュ部材22の上端面に略合致するように、メッシュ状治具2の枠体21内への液状接着剤3の供給量を容易に調整することができる。そして、メッシュ状治具2のメッシュ部材22の上端面の高さを予め、基材1上に形成したい接着剤層4の厚みに応じて調整しておくことによって、基材1上に所望量の液状接着剤を正確に供給し、基材1上に所望厚みを有する接着剤層4を容易に且つ正確に形成することができる。
【0033】
液状接着剤3は、メッシュ状治具2の枠体21内に供給される雰囲気下において液体状であればよく、メッシュ状治具2の枠体21内に供給した時点において流動性を有しておればよい。
【0034】
液状接着剤3におけるJIS K6833に準拠した25℃における10rpmでの粘度は、10Pa・s以上が好ましく、20Pa・s以上がより好ましく、30Pa・s以上がより好ましい。液状接着剤3におけるJIS K6833に準拠した25℃における10rpmでの粘度は、100Pa・s以下が好ましく、90Pa・s以下がより好ましく、70Pa・s以下がより好ましい。液状接着剤3の粘度が10Pa・s以上であると、治具除去工程後において、液状接着剤の過度な流動に起因して、基材における想定していた接着剤の塗工区画を超えて液状接着剤が流動、拡散することを防止し、基材上の所望の区画に接着剤層を正確に形成することができる。液状接着剤3の粘度が100Pa・s以下であると、治具除去工程後において、液状接着剤が良好な流動性でもって流動し、メッシュ部材の線材が存在していた空間部に液状接着剤が円滑に充填されて、表面が平坦な接着剤層を基材上に形成することができ、表面部材を液状接着剤によって基材上に強固に接着一体化することができる。
【0035】
なお、液状接着剤の粘度は、JIS K6833に準拠してBS型粘度計及びロータNo.5を用い、25℃及び相対湿度50%にて回転数10rpmの条件下にて測定された値をいう。
【0036】
液状接着剤としては、特に限定されず、例えば、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む液状接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤などが挙げられる。
【0037】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、主鎖が、一般式:-(R1-O)n-(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0038】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。
【0039】
加水分解性シリル基としては、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基、及び、シラノール基のように、湿気又は架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することによって縮合反応を生じる基をいう。なお、シラノール基とは、ケイ素原子にヒドロキシ基(-OH)が直接結合している官能基(≡Si-OH)をいう。
【0040】
加水分解性シリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基、ジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基、トリクロロシリル基などのハロゲンが結合したハロゲン化シリル基が挙げられる。
【0041】
液状接着剤の粘度の調整方法は、公知の方法によって調整されればよい。液状接着剤の粘度の調整方法としては、例えば、(1)液状接着剤中に無機微粒子を含有させることによって液状接着剤の粘度を調整する方法、(2)液状接着剤を構成している重合体の数平均分子量を調整することによって液状接着剤の粘度を調整する方法などが挙げられる。
【0042】
上記(1)の方法において、平均粒子径が小さい(例えば、平均粒子径が0.1μm以下)無機微粒子を含有させることによって液状接着剤の粘度を上昇させることができる。平均粒子径が大きい(例えば、平均粒子径が0.5~1.0μm)無機微粒子を含有させることによって液状接着剤の粘度を低下させることができる。
【0043】
なお、無機微粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式の粒度分析測定装置を用いて測定した値とする。例えば、無機微粒子をその濃度が10質量%となるようにメタノール中に投入した後、超音波ホモジナイザーを用いて1kwの出力で超音波を10分間に亘って照射して懸濁液を得る。この懸濁液についてレーザー回折・散乱式の粒度分析測定装置(例えば、島津製作所製 商品名「SACD-2100」)により無機微粒子の体積粒度分布を測定し、この体積粒度分布の累積50%の値を無機微粒子の平均粒子径とする。
【0044】
無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。
【0045】
上記(2)の方法において、液状接着剤を構成している重合体の数平均分子量を高くすることによって、液状接着剤の粘度を上昇させることができる。液状接着剤を構成している重合体の数平均分子量を低くすることによって、液状接着剤の粘度を低下させることができる。
【0046】
次に、メッシュ状治具2を基材1上から除去する(治具除去工程)。基材1上に載置しているメッシュ状治具2を上方に持ち上げることによって、基材1上からメッシュ状治具2を除去する。
【0047】
基材1上のメッシュ状治具2を基材1上から除去すると、メッシュ状治具2のメッシュ部材22の線材22aが存在していた部分には液状接着剤が充填されておらず、空隙部となっているが、液状接着剤は、所定の粘度を有し、優れた流動性を有しているので、線材22aに起因して形成された空隙部に液状接着剤が円滑に流入して空隙部が充填され、基材1上には、空隙部のない表面(上面)が平坦な接着剤層4が形成される(図4参照)。
【0048】
基材1上に形成された接着剤層4は、上記空隙部内に液状接着剤3が流入した上で形成されていると共に、メッシュ状治具2の枠体21が載置されていた基材1上にも液状接着剤3が流入するので、基材1上にメッシュ状治具2を載置した状態における枠体21内に供給された液状接着剤3の厚みよりも薄くなる。従って、メッシュ状治具2のメッシュ部材22の上端面の高さを予め、基材1の塗工面11上に形成したい接着剤層4の厚みよりも若干高く形成しておく必要がある。
【0049】
このように、接着剤の塗工方法は、所定の開口率を有するメッシュ部材を備えたメッシュ状治具2を用いることによって、基材1の塗工面11上に所望厚みを有する接着剤層4を容易に且つ正確に形成することができる。
【0050】
そして、図5に示した通り、基材1の塗工面11上に形成された接着剤層4上に、タイルや化粧シートなどの表面部材を載置し、接着剤層4を必要に応じて硬化させて基材1上に接着剤層4又は接着剤層の硬化物を介して表面部材5を接着一体化させることができる。
【0051】
上述の通り、基材1上に形成された接着剤層4はその表面が平滑に形成されていることから、表面部材5と接着剤層4との接触面積を増加させることができ、表面部材5を基材1上に接着剤層4又は接着剤層の硬化物を介して強固に接着一体化することができる。
【実施例0052】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
実施例及び比較例にて用いられた化合物を以下に示す。
【0054】
・加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(ポリオキシアルキレン系重合体、カネカ社製 商品名「MSポリマーS-303」)
・エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 商品名「エピコート828」)
・ケチミン化合物(日東化成社製 商品名「エポニットK-100」)
・硬化触媒(有機錫、日東化成社製 商品名「ネオスタンU-130」)
・脱水剤(日本ユニカ社製 商品名「NUCシリコーンA171」)
・エポキシシランカップリング剤(グリシドキシトリメトキシシラン、信越化学社製 商品名「KBM-403」)
・酸化防止剤(ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
・コロイダル炭酸カルシウム(白石工業社製 商品名「CCR」、平均粒子径:0.12μm)
・重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製 商品名「ホワイトンSB」、平均粒子径:0.68μm)
【0055】
[液状粘着剤A~Eの作製]
表1に示した所定量の加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体、エポキシ樹脂、ケチミン化合物、硬化触媒、脱水剤、エポキシシランカップリング剤、酸化防止剤、コロイダル炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムをプラネタリーミキサーを用いて真空雰囲気下にて60分間に亘って混練して1液型の液状接着剤を得た。なお、液状粘着剤A~Eは、後述する接着剤供給工程が行なわれる雰囲気下にて液体状であり流動性を有していた。各液状接着剤について、JIS K6833に準拠した25℃における10rpmでの粘度を上述の要領で測定し、表1の「10rpm粘度」の欄に記載した。
【0056】
[メッシュ状治具]
メッシュ状治具A~Fを用意した。メッシュ状治具A~Fについて、メッシュ状治具を構成している線材の直径及びメッシュ部材の開口率を表2に示した。メッシュ状治具A~Eは、高さが10mmの一定高さを有し且つ下端面が平坦面に形成された平面長方形状の枠体21と、この枠体21内の全面に張設され且つ直径が0.25~0.5mmの金属製線材を平織状に織って形成されたメッシュ部材22とを備えていた。メッシュ部材22の下端面(線材22aの下端面)と枠体21の下端面とは同一平面状に位置していた。枠体21の各辺を構成している枠部材の厚みは10mmであった。枠体は、その全体(外形)が縦1515mm、横910mmの平面長方形状の枠状に形成されていた。
【0057】
[実施例1~11、比較例1~4]
基材1として窯業系サイディングボードを用意した。サイディングボードは、縦1515mm、横910mmの平面長方形状に形成されていた。サイディングボードの両面は平坦面に形成されていた。基材1をその上面が水平となるように載置面上に載置した。
【0058】
基材1の上面(塗工面11)上にメッシュ状治具2を載置した(治具配設工程)。基材1の外周端縁とメッシュ状治具2の枠体21の外周端縁とは合致しており、メッシュ状治具2の枠体21の下端面は全面的に基材1の塗工面11上に当接していた。また、メッシュ状治具2のメッシュ部材22の下端面は基材1の塗工面11に当接していた。
【0059】
次に、メッシュ状治具2の枠体21内に液状接着剤3を供給した(接着剤供給工程)。メッシュ状治具2の枠体21内に供給された液状接着剤3は、メッシュ部材22の開口部22b及びメッシュ部材22と基材1との対向面間に形成された隙間などを通じて枠体21内を流動して拡散し、枠体21内の全体に充填された状態となった。
【0060】
メッシュ状治具2の枠体21内に供給される液状接着剤の量は、図3に示したように、メッシュ状治具2の枠体21内に供給された液状接着剤3の上面31がメッシュ状治具2のメッシュ部材22の上端面に略合致するように調整した。
【0061】
しかる後、基材1上に載置しているメッシュ状治具2を上方に持ち上げることによって、基材1上からメッシュ状治具2を除去し(治具除去工程)、30秒間放置した。液状接着剤は、線材22aに起因して形成された空隙部に液状接着剤が円滑に流入して空隙部が充填され、基材1上に接着剤層4を形成した(図4参照)。接着剤層4において、任意10箇所の厚みを測定し、10箇所の厚みの算術平均値(平均厚み)及び標準偏差を算出した。
【0062】
そして、図5に示した通り、基材1の塗工面11上に形成された接着剤層4上に、20枚の陶磁製タイル(縦:4.5cm、横:25cm、厚み:1cm)を載置して120秒間放置した。
【0063】
接着剤層4上に載置した20枚の陶磁製タイルのうち、10枚の陶磁製タイルを接着剤層4から剥離した。剥離させた10枚の陶磁製タイルの裏面において、10枚の陶磁製タイルの総面積S3に対する接着剤が付着している総面積S4の割合(接着剤付着率)を下記式基づいて算出した。
接着剤付着率(%)=100×S4/S3
【0064】
基材1上の接着剤層4を更に23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて28日間養生して接着剤層4を硬化させた。基材1上に接着剤層の硬化物を介して陶磁製タイルが接着一体化されていた。
【0065】
各陶磁製タイルの平面引張り強さをJIS A5557に準拠して測定し、各陶磁製タイルの平面引張り強さの算術平均値を「接着強さ」とした。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【符号の説明】
【0069】
1 基材
11 塗工面
2 メッシュ状治具
21 枠体
21a 下面
22 メッシュ部材
22a 線材
22b 開口部
3 液状接着剤
4 接着剤層
5 表面部材
図1
図2
図3
図4
図5