(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178286
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】位置推定装置、位置推定システム、端末、位置推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20221125BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084988
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】守安 悠
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB05
5J062CC18
(57)【要約】
【課題】端末の位置を正確に推定することができる位置推定装置、位置推定システム、端末、位置推定方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示の一実施の形態にかかる位置推定装置100は、端末が位置するエリアを示すエリア信号と、端末が受信した無線信号の電波強度とを取得する取得部101と、各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部102と、選択部102が選択した推定モデルと、取得部101が取得した電波強度とを用いて、端末のエリア内の位置を推定する推定部103を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が位置するエリアを示すエリア信号と、前記端末が受信した無線信号の電波強度とを取得する取得部と、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記推定モデルと、前記取得部が取得した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する推定部と、を備える
位置推定装置。
【請求項2】
前記推定部が推定した前記端末のエリア内の位置情報を前記端末に送信する送信部をさらに備える、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記端末に関連付けられた別の端末の連絡先情報を用いて、前記推定部が推定した前記端末のエリア内の位置情報を前記別の端末に送信する送信部をさらに備える、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記複数のエリアは、屋内の領域が複数に分割されたエリアであり、
前記選択部は、前記エリア信号が示す屋内のエリアに対応する前記推定モデルを選択する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記エリア信号が示すエリアに対応する複数の推定モデルの中から、前記端末が前記電波強度で前記無線信号を受信したタイミングに対応する推定モデルを選択する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置推定装置。
【請求項6】
端末と、
前記端末の位置を推定する位置推定装置と、を備え、
前記端末は、
自端末が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信する受信部と、
前記エリア信号と、前記無線信号の電波強度とを前記位置推定装置に送信する送信部と、を有し、
前記位置推定装置は、
前記エリア信号と、前記電波強度とを受信する受信部と、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記推定モデルと、前記受信部が受信した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する推定部と、を有する
位置推定システム。
【請求項7】
前記位置推定装置は、前記推定部が推定した前記端末のエリア内の位置情報を前記端末に送信する送信部をさらに備える、
請求項6に記載の位置推定システム。
【請求項8】
自端末が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信する受信部と、
各エリアにおいて端末が受信する無線通信の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記推定モデルと、前記受信部が受信した無線信号の電波強度を用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する推定部と、を備える
端末。
【請求項9】
端末が位置するエリアを示すエリア信号と、前記端末が受信した無線信号の電波強度とを取得し、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択し、
選択した前記推定モデルと、取得した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する、
コンピュータが実行する位置推定方法。
【請求項10】
端末が位置するエリアを示すエリア信号と、前記端末が受信した無線信号の電波強度とを取得し、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択し、
選択した前記推定モデルと、取得した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置推定装置、位置推定システム、端末、位置推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々が携帯電話等の端末を保有することが当たり前となっており、それに伴い、端末の位置情報を把握することが、様々な用途でなされている。
【0003】
関連技術として、引用文献1には、コンピュータが無線通信デバイスの位置を推定する方法が記載されている。具体的には、コンピュータが、各アクセスポイントに関して信号伝搬モデルを作成してトレーニングを行い、その信号伝搬モデルを用いて無線通信デバイスの位置を推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、端末の位置を正確に推定することができる位置推定装置、位置推定システム、端末、位置推定方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる位置推定装置は、端末が位置するエリアを示すエリア信号と、端末が受信した無線信号の電波強度とを取得する取得部と、各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、選択部が選択した推定モデルと、取得部が取得した電波強度とを用いて、端末のエリア内の位置を推定する推定部を備える。
【0007】
本開示の一態様にかかる位置推定システムは、端末と、端末の位置を推定する位置推定装置を備える。端末は、自端末が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信する受信部と、エリア信号と、無線信号の電波強度とを位置推定装置に送信する送信部を有する。位置推定装置は、エリア信号と、無線信号の電波強度とを受信する受信部と、エリア信号に基づいて、各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、選択部が選択した推定モデルと、受信部が受信した無線信号の電波強度を用いて、端末のエリア内の位置を推定する推定部を有する。
【0008】
本開示の一態様にかかる端末は、自端末が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信する受信部と、各エリアにおいて端末が受信する無線通信の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、選択部が選択した推定モデルと、受信部が受信した無線信号の電波強度を用いて、端末のエリア内の位置を推定する推定部を備える。
【0009】
本開示の一態様にかかる位置推定方法は、端末が位置するエリアを示すエリア信号と、端末が受信した無線信号の電波強度とを取得し、各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択し、選択した推定モデルと、取得した電波強度とを用いて、端末のエリア内の位置を推定することをコンピュータが実行するものである。
【0010】
本開示の一態様にかかるプログラムは、端末が位置するエリアを示すエリア信号と、端末が受信した無線信号の電波強度とを取得し、各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択し、選択した推定モデルと、取得した前記電波強度とを用いて、端末のエリア内の位置を推定することをコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、端末の位置を正確に推定することができる位置推定装置、位置推定システム、端末、位置推定方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる位置推定装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1にかかる位置推定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態1にかかる位置推定システムの一例を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1にかかる位置推定装置の別の例を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1にかかる端末の一例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態2にかかる屋内位置推定システムの一例を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態2にかかる推定サーバの一例を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態2にかかる推定モデルの一例を示す概略図である。
【
図9】実施の形態2にかかるユーザ端末の一例を示すブロック図である。
【
図10】実施の形態2にかかるエリア信号発信機の一例を示すブロック図である。
【
図11】実施の形態2にかかる無線信号機の一例を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2にかかるユーザ端末が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態2にかかる推定サーバが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態3にかかる屋内位置推定システムの一例を示すブロック図である。
【
図15】実施の形態3にかかる推定サーバの一例を示すブロック図である。
【
図16】実施の形態4にかかる屋内位置推定システムの一例を示すブロック図である。
【
図17】実施の形態4にかかるユーザ端末の一例を示すブロック図である。
【
図18】実施の形態4にかかるユーザ端末が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図19】各実施の形態にかかる装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
(1A)
以下、図面を参照して本開示の実施の形態1について説明する。この(1A)では、端末とは別の装置である位置推定装置について説明する。
【0014】
図1は、位置推定装置の一例を示すブロック図である。位置推定装置100は、位置を推定する対象となる端末(以下、対象端末と記載)の位置を推定するものであり、取得部101、選択部102及び推定部103を備える。位置推定装置100の各部は、不図示の制御部(コントローラ)により制御される。以下、各構成要素について説明する。
【0015】
取得部101は、対象端末が位置するエリアを示すエリア信号と、対象端末が受信した無線信号の電波強度とを取得する。取得部101は、例えば端末から無線又は有線によってこれらの情報を取得しても良いし、端末以外の装置からこれらの情報を取得しても良い。また、エリア信号と無線信号は、例えば異なる信号である。
【0016】
選択部102は、各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、取得部101が取得したエリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する。選択の対象となる複数の推定モデルは、例えば学習により構築されたものである。複数の推定モデルは、位置推定装置100に格納されていても良いし、位置推定装置100以外の装置に格納されていても良い。推定モデルには、例えばエリアを示すラベルが付与されており、選択部102はそのラベルを参照することにより、特定の推定モデルを選択する。
【0017】
推定部103は、選択部102が選択した推定モデルと、取得部101が取得した電波強度とを用いて、対象端末のエリア内の位置を推定する。
【0018】
図2は、位置推定装置100の代表的な処理の一例を示したフローチャートであり、このフローチャートによって、位置推定装置100の処理が説明される。まず、位置推定装置100の取得部101は、対象端末が位置するエリアを示すエリア信号と、対象端末が受信した無線信号の電波強度とを取得する(ステップS11)。
【0019】
次に、選択部102は、複数のエリア毎の推定モデルの中から、取得部101が取得したエリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する(ステップS12)。そして、推定部103は、選択部102が選択した推定モデルと、取得部101が取得した電波強度とを用いて、対象端末のエリア内の位置を推定する。
【0020】
このように、位置推定装置100は、最初にエリアを特定し、そのエリアにおける推定モデルを用いて、対象端末のエリア内の位置を推定している。そのため、位置推定装置100は、単に電波強度と推定モデルを用いて対象端末の位置を推定する場合と比べて、端末の位置を正確に推定することができる。
【0021】
(1B)
次に、(1B)では、位置推定装置100’及び端末110を備えた位置推定システムS1について説明する。
【0022】
図3は、実施の形態1に係る監視システムの一例を示すブロック図である。監視システムS1は、位置推定装置100’及び端末110を備える。
【0023】
図3に示す通り、端末110は、受信部(レシーバ)111及び送信部112(トランスミッタ)を備える。以下、この各構成要素について説明する。
【0024】
受信部111は、端末110自身が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信する。例えば、受信部111は、エリア信号と無線信号とを異なる機器から受信しても良い。また、送信部112は、エリア信号と、無線信号の電波強度とを位置推定装置100に送信する。
【0025】
図4は、位置推定装置100’の一例を示すブロック図である。位置推定装置100’は、取得部101の下位概念としての受信部(レシーバ)104を備える。受信部104は、対象端末である端末110からエリア信号と、無線信号の電波強度とを受信する。それ以外の位置推定装置100’の要素の実行する処理は、位置推定装置100と同一であるため、説明を省略する。
【0026】
以上のようにして、監視システムS1は、(1A)と同様に、端末110の位置を正確に推定することができる。
【0027】
(1C)
次に、(1C)では、端末が自身の位置を推定する実施形態について説明する。
【0028】
図5は、端末の一例を示すブロック図である。端末110’は、自身の位置を推定可能なものであり、受信部111、選択部113及び推定部114を備える。端末110’は、不図示の制御部(コントローラ)により制御される。受信部111は、(1B)における受信部111と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
選択部113は、各エリアにおいて端末が受信する無線通信の電波強度と端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、受信部111が受信したエリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する。複数の推定モデルは、端末110’に格納されていても良いし、端末110’以外の装置に格納されていても良い。その他の推定モデルに関する説明は、(1A)に記載の通りである。推定部114は、選択部113が選択した推定モデルと、受信部111が受信した無線信号の電波強度を用いて、自端末のエリア内の位置を推定する。
【0030】
このように、端末110’は、エリア信号と、無線信号の電波強度とを位置推定装置に送信する必要なく、自端末のエリア内の位置を推定することができる。
【0031】
実施の形態2
以下、図面を参照して本開示の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1にて説明した位置推定システムS1の具体例を開示する。
【0032】
図6は、実施の形態2に係る屋内位置推定システムの一例を示すブロック図である。屋内位置推定システムS2は、推定サーバ200、ユーザ端末210、エリア信号発信機220及び無線信号機230を備える。推定サーバ200とユーザ端末210とは、ネットワークN(例えばインターネット)を介して通信可能なように接続されている。屋内位置推定システムS2において、ユーザ端末210及び無線信号機230は、1又は複数個備えられていても良い。屋内位置推定システムS2は、屋内(建築物内)におけるユーザ端末210の位置を推定するものであり、ここでは複数のエリアに分割された地下街におけるユーザ端末210の位置を推定する。エリア信号発信機220は、各エリアに1又は複数個備えられている。
【0033】
図7は、推定サーバ200の一例を示すブロック図である。推定サーバ200は、実施の形態1の位置推定装置100に対応するものであり、情報処理部201、位置推定部202及び送受信部203(トランシーバ)を備える。以下、各部について説明する。
【0034】
情報処理部201は、送受信部203がユーザ端末210から受信した、ユーザ端末210のエリア信号と無線信号の電波強度を取得し、位置推定部202に出力する。また、情報処理部201は、位置推定部202から出力された位置推定結果を送受信部203に出力する。
【0035】
位置推定部202は、特定した推定モデルを用いてユーザ端末210の位置を推定する推定処理部204と、各エリアに係る推定モデルが格納されたモデル記憶部205を有する。
【0036】
推定処理部204は、情報処理部201から出力されたユーザ端末210からのエリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを、モデル記憶部205を参照することにより選択する。そして、推定処理部204は、選択した推定モデルに対して、ユーザ端末210からの無線信号の電波強度を入力することにより、出力として、ユーザ端末210が存在するエリアにおけるユーザ端末210の位置を取得する。そして、推定処理部204は、取得したユーザ端末210の位置を送受信部203に出力する。また、モデル記憶部205は、推定処理部204が使用する、各エリアの推定モデルを記憶する。
【0037】
図8は、実施の形態2において用いられる推定モデルの一例を示す概略図である。
図8の推定モデルでは、ニューラルネットワークが用いられている。推定モデルの入力層は、この推定モデルが対象とする対象エリアで得られる各無線信号i(i=1,2…,X)の電波強度に関する。なお、Xは対象エリアで得られる無線信号の数である。入力層は、中間層1~Z(Zは1以上の数)を経由して、推定モデルの出力層に接続される。この出力層は、対象エリアに存在する位置の推定候補地点ai(i=1,2…,Y)に関する。なお、Yは対象エリアに存在する推定候補地点の数である。推定処理部204は、この推定モデルに、ユーザ端末210から受信した無線信号の電波強度を入力することで、その入力に対して最も高い出力を得た推定候補地点aを、位置推定結果として出力する。
【0038】
なお、
図8に示した中間層の数Z及び各中間層のノード数、最適化手法、活性化関数、学習率、学習回数等といった入力層及び出力層以外についてのパラメータは、推定処理部204が自動で、又は管理者が手動で、推定モデル毎に任意で設定できる。また、推定モデルは、各推定候補地点で計測できる無線信号の電波強度と計測した位置を示す番号を1セットとした教師データが作成され、その教師データを用いて事前に機械学習がなされたものである。この機械学習済の推定モデルが、事前にモデル記憶部205に格納される。
【0039】
さらに、地下街の各エリアは、無線信号機230から発信される無線信号の電波強度の性質に基づいて、その分割方法が設定される。そのため、推定処理部204は、機械学習の結果、各エリア内での位置測定が正確になされるように推定モデルを導出することができる。
【0040】
図7に戻り、説明を続ける。送受信部203は、ユーザ端末210のエリア信号と無線信号の電波強度とを、それぞれ無線信号R1、R2として、ネットワークNを介してユーザ端末210から受信するインタフェースである。また、送受信部203は、情報処理部201の制御に従って、位置推定部202が得た位置推定結果を、ユーザ端末210に返信する。
【0041】
図9は、ユーザ端末210の一例を示すブロック図である。ユーザ端末210は、実施の形態1の端末110に対応するものであり、情報処理部211、エリア信号受信部212、無線信号受信部213、位置情報提示部214及びネットワーク通信部215を備える。以下、各部について説明する。
【0042】
情報処理部211は、エリア信号受信部212が受信した地下街のエリア信号及び無線信号受信部213が受信した無線信号の電波強度をネットワーク通信部215に対し出力する。また、情報処理部211は、ネットワーク通信部215が受信した位置推定結果を位置情報提示部214に対し出力する。
【0043】
エリア信号受信部212は、エリア信号発信機220から無線で発信されたエリア信号を受信するインタフェースである。また、無線信号受信部213は、無線信号機230から無線で発信された無線通信に係る無線信号を受信し、その無線信号を受信した際の電波強度を検出するインタフェースである。エリア信号受信部212及び無線信号受信部213は、例えばWi-Fi(登録商標)やBluetooth Low Energy(登録商標)といった近距離無線通信によって情報を受信可能である。また、エリア信号受信部212及び無線信号受信部213は、同一のインタフェースで構成されていても良い。
【0044】
位置情報提示部214は、ネットワーク通信部215が受信した位置推定結果をユーザに提示するインタフェースである。例えば、位置情報提示部214は、ディスプレイ等の表示部で構成され、位置推定結果を画面上に表示しても良いし、スピーカ等の音声出力部で構成され、位置推定結果を音声で出力しても良い。
【0045】
ネットワーク通信部215は、情報処理部211の制御に従って、エリア信号受信部212及び無線信号受信部213がそれぞれ取得したエリア信号及び無線通信の電波強度を、ネットワークNを介して推定サーバ200に送信する。また、ネットワーク通信部215は、ネットワークNを介して、位置推定結果を推定サーバ200から受信する。
【0046】
図10は、エリア信号発信機220の一例を示すブロック図である。エリア信号発信機220は、エリア信号発信部221及び記憶部222を備える。以下、各部について説明する。
【0047】
エリア信号発信部221は、エリア信号発信機220が設けられたエリアの識別情報をエリア信号として、ユーザ端末210に無線信号R1として常時送信する。無線信号R1は、例えば、上述のような近距離無線通信として送信される。
【0048】
記憶部222は、エリア信号発信機220が存在するエリアに固有の識別情報として割り当てられた識別情報を記憶する。この識別情報が、エリアを示す情報である。エリア信号発信部221は、その記憶部222に格納された情報を送信する。なお、識別情報は、適宜変更することが可能である。
【0049】
図11は、無線信号機230の一例を示すブロック図である。無線信号機230は、無線信号発信部231及び記憶部232を備える。以下、各部について説明する。
【0050】
無線信号発信部231は、ユーザ端末210に無線信号R2を発信する。無線信号R2は、上述の通り、ユーザ端末210でその電波強度が測定可能なものであり、推定モデルにおける端末の位置推定に用いられることができるものである。無線信号R2は、例えば、上述のような近距離無線通信として送信される。また、記憶部232は、無線信号発信部231が発信する無線信号を記憶する。
【0051】
図12は、ユーザ端末210の代表的な処理の一例を示したフローチャートである。まず、ユーザ端末210のエリア信号受信部212は、エリア信号発信機220からエリア信号を受信し、無線信号受信部213は、無線信号機230から無線信号を受信する(ステップS21)。無線信号受信部213は、無線信号を受信した際の電波強度を検出する。情報処理部201は、エリア信号と、無線信号の電波強度とをネットワーク通信部215に出力する。ネットワーク通信部215は、情報処理部201から出力されたこれらの情報を、推定サーバ200に無線で送信する(ステップS22)。
【0052】
その後、ネットワーク通信部215は、後述の通り推定サーバ200が推定した位置推定結果を受信する(ステップS23)。ネットワーク通信部215は、位置推定結果を受信した際に、情報処理部211を呼び出す。情報処理部211は、位置情報提示部214に位置推定結果の情報を出力し、位置情報提示部214は位置推定結果の情報を提示する(ステップS24)。例えば、位置情報提示部214は、表示部のモニタ画面に地下街の地図を表示し、その地図上に位置推定結果で示された位置を表示することにより、位置推定結果をユーザに提示する。なお、表示部に表示される地図情報は、ユーザ端末210に予め格納されていても良いし、推定サーバ200から位置推定結果とともにユーザ端末210に送信されても良い。あるいは、エリア信号発信機220からのエリア信号又は無線信号機230からの無線信号によって、地図情報がユーザ端末210に送信されても良い。
【0053】
図13は、推定サーバ200の代表的な処理の一例を示したフローチャートである。まず、推定サーバ200の送受信部203は、ユーザ端末210からエリア信号と無線通信の電波強度とを受信する(ステップS31)。送受信部203は、これらの情報を受信した際に、情報処理部201を呼び出す。情報処理部201は、位置推定部202にこれらの情報を出力する。位置推定部202の推定処理部204は、出力されたエリア信号(識別情報)を用いて、モデル記憶部205に記憶されているエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する(ステップS32)。
【0054】
その後、推定処理部204は、選択した推定モデルに対して、取得した無線信号の電波強度を入力する。そして、それにより得られた推定モデルの出力を、端末の位置推定結果とする(ステップS33)。情報処理部201は、得られた位置推定結果を送受信部203に出力する。送受信部203は、ユーザ端末210にその位置推定結果を送信する(ステップS34)。
【0055】
以上に示したように、屋内位置推定システムS2では、位置推定の対象となる建造物を複数のエリアに分割し、エリア毎に、無線信号機230の無線信号の電波強度を入力とした推定モデルを予め作成している。そして、推定サーバ200は、ユーザ端末210が位置するエリアにおける推定モデルを用いて、推定サーバ200のエリア内の位置を推定しているため、ユーザ端末210の屋内での位置を正確に推定することができる。
【0056】
一般に、端末の位置情報は、例えばGPS(Global Positioning System)により特定することができる。GPSの手法では、地球周回軌道に配置された複数の人工衛星が発信する電波を利用することで、電波を受信する端末の位置を高い精度で割り出すことができる。しかしながら、建造物の中や、地下等では人工衛星の電波が届かないことが多く、GPSの手法では位置を特定することが難しくなる。
【0057】
また、無線通信機から発信する電波強度をそのまま用いて、機械学習等で計測した電波強度と屋内の位置を対応させるモデルをシステムが生成し、そのモデルを用いて端末が屋内の位置を推定することも考えられる。しかしながら、屋内に存在する物体が無線通信に電波干渉する場合がある。この電波干渉の状況によっては、特定のエリアにおいて、事前に計測した電波強度と異なる電波強度の値が計測されることがある。そのため、この特定のエリアでは、端末は、モデルを用いたとしても、自身の位置を正しく推定できない。
【0058】
しかしながら、屋内位置推定システムS2は、位置推定の対象となる領域を、無線通信の電波強度の性質に基づいて複数のエリアに分割し、そのエリア毎に推定モデルを生成している。これにより、推定サーバ200が推定する位置の精度を向上させることができる。また、屋内位置推定システムS2は、屋内の領域について、ユーザ端末210の位置を推定することができる。
【0059】
また、推定サーバ200は、推定処理部204が推定したユーザ端末210のエリア内の位置情報をユーザ端末210に送信することができる。これにより、ユーザ端末210のユーザは、自身が有する端末の位置を把握することができる。
【0060】
なお、屋内位置推定システムS2にユーザ端末210が複数存在する場合には、推定サーバ200は、送信されたユーザ端末210の識別情報に基づいてユーザ端末210を識別し、そのユーザ端末210について記憶された連絡先に位置推定結果を送信しても良い。この場合、ユーザ端末210は、エリア信号と無線信号の電波強度とをネットワーク通信部215で送信する際に、自身の識別情報を併せて送信し、推定サーバ200は、その識別情報を用いてユーザ端末210の連絡先を取得する。なお、連絡先は、メールアドレス、電話番号、デバイストークン等、任意の種類の連絡先であって良く、位置推定結果の送信は、例えばメール、SMS(Short Message Service)、所定のアプリケーション上でのプッシュ通知としてなされる。
【0061】
実施の形態3
以下の実施の形態では、実施の形態2の各種バリエーションについて説明する。
【0062】
図14は、実施の形態3に係る屋内位置推定システムの一例を示すブロック図である。屋内位置推定システムS3には、推定サーバ200の代わりに推定サーバ200’が設けられている。また、屋内位置推定システムS3は、実施の形態2の屋内位置推定システムS2と比較して、ユーザ端末210’をさらに備える。なお、ユーザ端末210’の構成はユーザ端末210と同じであるため、説明を省略する。
【0063】
図15は、推定サーバ200’の一例を示すブロック図である。推定サーバ200’は、推定サーバ200における構成要素のほか、連絡先記憶部206をさらに備える。連絡先記憶部206は、ユーザ端末210の識別情報に関連付けて、ユーザ端末210’の連絡先を事前に記憶している。連絡先の具体例は、上述の通りである。
【0064】
また、ユーザ端末210は、エリア信号と無線信号の電波強度とをネットワーク通信部215で送信する際に、自身の識別情報を併せて送信する。この識別情報は、ユーザ端末210内に格納されており、ネットワーク通信部215が通信を行う際に用いられる。推定サーバ200’の情報処理部201は、送受信部203がユーザ端末210のエリア信号と無線信号の電波強度とを受信する際に、ユーザ端末210の識別情報を併せて取得する。
【0065】
推定サーバ200’の推定処理部204は、実施の形態2と同様にして、ユーザ端末210が存在するエリアに対応する推定モデルを選択し、その推定モデルを用いて、ユーザ端末210が存在するエリアにおけるユーザ端末210の位置を推定する。その後、情報処理部201は、ユーザ端末210の識別情報を用いて、ユーザ端末210の識別情報に関連付けられて連絡先記憶部206に記憶されたユーザ端末210’の連絡先を参照する。その後、ネットワーク通信部215は、ユーザ端末210’の連絡先に、ユーザ端末210の位置推定結果を送信する。
【0066】
ユーザ端末210’において、ネットワーク通信部215は、ネットワークNを介して、位置推定結果を推定サーバ200から受信する。情報処理部211は、ネットワーク通信部215が受信した位置推定結果を位置情報提示部214に対し出力し、位置情報提示部214は、その位置推定結果をユーザに提示する。
【0067】
実施の形態3の推定サーバ200’は、
図13に示したフローチャートにおいて、ステップS31~S33に記載された処理を実行する。その後、ステップS34にて、推定サーバ200’の送受信部203は、ユーザ端末210ではなく、ユーザ端末210’に対して位置推定結果を送信することになる。
【0068】
また、実施の形態3のユーザ端末210は、
図12に示したフローチャートにおけるステップS21~S22の処理を実行し、ユーザ端末210’は、
図12に示したフローチャートにおけるステップS23~S24の処理を実行する。なお、以上に示した処理以外に実施の形態3のサーバ又は各端末で実行される処理は、実施の形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
このように、実施の形態3に係る屋内位置推定システムS3では、ユーザ端末210のユーザ(ユーザA)とは別のユーザ端末210’のユーザ(ユーザB)が、ユーザAの位置を把握することができる。したがって、例えばユーザAを子供、ユーザBをその親とした場合に、親の側からは子供の位置を把握することができるので、子供が屋内で迷子になった場合であっても、親は子供の位置を推定し、子供を探すことができるという効果がある。
【0070】
なお、推定サーバ200’の送受信部203は、ユーザ端末210’だけでなく、ユーザ端末210に対しても位置推定結果を送信しても良い。あるいは、推定サーバ200’は、ユーザ端末210’について、その位置を実施の形態2と同様に推定し、その位置推定結果をユーザ端末210に送信して、ユーザ端末210の位置情報提示部214に提示させても良い。また、ユーザ端末210’の位置推定結果は、ユーザ端末210’にも送信され、ユーザ端末210’の位置情報提示部214に提示されても良い。このようにすることで、各ユーザ端末を有するそれぞれのユーザが、自身と相手の位置を両方とも把握することができる。そのため、各ユーザは、より効率的に相手を探すことができる。
【0071】
実施の形態4
図16は、実施の形態4に係る屋内位置推定システムの一例を示すブロック図である。屋内位置推定システムS4は、推定サーバを備えておらず、ユーザ端末410が自身の位置を推定し、ユーザに提示することができる。なお、屋内位置推定システムS4におけるエリア信号発信機220及び無線信号機230は実施の形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
図17は、実施の形態4に係るユーザ端末410の一例を示すブロック図である。ユーザ端末410は、ネットワーク通信部215に代えて位置推定部216を備える。位置推定部216は、位置推定部202と同様に、特定した推定モデルを用いてユーザ端末410の位置を推定する推定処理部204と、各エリアに係る推定モデルを有するモデル記憶部205を有する。
【0073】
実施の形態4において、推定処理部204は、エリア信号受信部212から出力されたエリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを、モデル記憶部205を参照することにより選択する。そして、推定処理部204は、選択した推定モデルに対して、無線信号受信部213が取得した無線信号の電波強度を入力することにより、出力として、ユーザ端末210が存在するエリアにおけるユーザ端末210の位置を取得する。そして、推定処理部204は、取得したユーザ端末210の位置を位置情報提示部214に出力する。また、モデル記憶部205は、各エリアの推定モデルを記憶する。なお、以上に示した処理以外に実施の形態4のユーザ端末410で実行される処理は、実施の形態2のユーザ端末210で実行される処理と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
図18は、ユーザ端末410の代表的な処理の一例を示したフローチャートである。まず、ユーザ端末410のエリア信号受信部212は、エリア信号発信機220からエリア信号を受信し、無線信号受信部213は、無線信号機230から無線信号を受信する(ステップS41)。無線信号受信部213は、無線信号を受信した際の電波強度を検出する。情報処理部211は、位置推定部216にこれらの情報を出力する。位置推定部216の推定処理部204は、出力されたエリア信号を用いて、モデル記憶部205に記憶されているエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する(ステップS42)。
【0075】
その後、推定処理部204は、選択した推定モデルに対して、取得した無線信号の電波強度を入力する。そして、それにより得られた推定モデルの出力を、自端末の位置推定結果とする(ステップS43)。情報処理部201は、位置情報提示部214に位置推定結果の情報を出力し、位置情報提示部214はその位置推定結果の情報を提示する(ステップS44)。
【0076】
この実施の形態4では、ユーザ端末410がネットワークに接続できない(例えばインターネットに接続できない)環境下にあっても、自身の屋内での位置を推定することができる。
【0077】
実施の形態5
この実施の形態では、同一のエリアにおける推定モデルとして、2以上にさらに区分された推定モデルが設定されている。位置推定の処理においては、位置推定の対象となるタイミングに応じた推定モデルが選択されることで、よりユーザの位置を正確に推定することができる。
【0078】
以下、実施の形態2に記載された屋内位置推定システムS2を例にとって説明する。
図7におけるモデル記憶部205には、所定のエリアについて、エリアが人で混雑している時間帯Aにおける推定モデルAと、エリアが人で混雑していない時間帯Bにおける推定モデルBが格納されている。推定モデルAは、時間帯Aにおける、各推定候補地点で計測できる無線信号の電波強度と計測した位置を示す番号を1セットとした教師データAが作成され、その教師データAを用いて事前に機械学習がなされたものである。また、推定モデルBは、時間帯Bにおける、各推定候補地点で計測できる無線信号の電波強度と計測した位置を示す番号を1セットとした教師データBが作成され、その教師データBを用いて事前に機械学習がなされたものである。これらの機械学習済の推定モデルが、所定のエリアにおける推定モデルとして、事前にモデル記憶部205に格納される。
【0079】
ユーザ端末210の無線信号受信部213は、無線通信の電波強度の情報を取得する際に、その電波強度を取得した際の時間帯の情報についても取得する。そして、ユーザ端末210は、
図12のステップS22において、エリア信号と無線通信の電波強度とをネットワーク通信部215を用いて送信する際に、電波強度を取得した際の時間帯の情報についても送信する。
【0080】
推定サーバ200の送受信部203は、
図13のステップS31において、ユーザ端末210からエリア信号、無線通信の電波強度及び電波強度を取得した際の時間帯の情報を受信する。送受信部203は、これらの情報を受信した際に、情報処理部201を呼び出す。情報処理部201は、位置推定部202にこれらの情報を出力する。位置推定部202の推定処理部204は、出力されたエリア信号を用いて、モデル記憶部205に記憶されているエリア毎の推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する。このとき、推定モデルとして、上述の推定モデルA、Bが選択されることになる。そして、推定処理部204は、電波強度を取得した際の時間帯が時間帯Aであれば推定モデルAを選択し、電波強度を取得した際の時間帯が時間帯Bであれば推定モデルBを選択する。以上の処理が、
図13のステップS32で実行される。
【0081】
なお、実施の形態2において、モデル記憶部205は、各エリアの時間帯Aに関する推定モデルを記憶するモデル記憶部205Aと、各エリアの時間帯Bに関する推定モデルを記憶するモデル記憶部205Bとに分割されても良い。この場合、推定処理部204は、最初に電波強度を取得した際の時間帯を参照してモデル記憶部205A又は205Bを特定し、その後、特定したモデル記憶部205に格納された推定モデルの中から、エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択することができる。
【0082】
また、同じエリアにおいて、所定の日の性質(例えば曜日)に応じて複数の推定モデルが定義されても良い。例えば、同じエリアにおいて、人が混雑していない平日と、人が混雑している休日及び祝日のそれぞれについて、上述の教師データが作成されることで、推定モデルが生成されても良い。また、時間帯と所定の日の性質とを組み合わせた複数の推定モデルが生成されても良い。例えば、あるエリアの混雑状況を反映した推定モデルとして、平日の17時~21時、平日の21時~17時、休日又は祝日の10時~21時、休日又は祝日の21時~17時といった4種類の推定モデルを定義しても良い。この場合も、モデル記憶部205は、上述の4種類の推定モデルをそれぞれ格納する4つの記憶部に分割されても良い。これにより、推定処理部204が推定モデルを選択する処理を早くすることができる。
【0083】
また、実施の形態3、4においても同様に、同じエリアにおいて、複数の推定モデルが時間帯又は所定の日の性質の少なくともいずれかに応じて定義され、定義された複数の推定モデルの中から適切な時間帯における推定モデルが選択されて位置推定に用いられることができる。
【0084】
あるエリア内に多数の人が存在する場合、無線通信において電波干渉が生じることがある。このため、エリア内に多数の人が存在しない場合と比較して、ユーザ端末が同一地点に位置していてもユーザ端末が受信する電波強度が異なり、エリア内の位置を正しく推定できない可能性がある。このため、実施の形態5では、ユーザ端末が無線信号を受信したタイミングに応じて、位置推定に用いる推定モデルを使い分けることにより、より高い精度で位置の推定を行うことができる。
【0085】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態2~5において、ユーザ端末のユーザの目的地が定義されている場合に、位置情報提示部214における位置情報の提示において、地図上にユーザの自身の位置と目的地とを同時に表示させることで、目的地に向かうためのナビ機能を実現することができる。地図上の目的地情報は、ユーザ端末210が予め把握し、位置情報提示部214における位置情報の提示において地図上にその目的地情報を重ね合わせて表示させることで表示されても良い。又は、推定サーバ200が目的地情報を把握しており、ユーザ端末に位置情報を送信する際にその目的地情報も併せてユーザ端末210に送信されても良い。また、目的地だけでなく、目的地に向かうまでの進路等についても、ユーザ端末210が同様に取得し、地図上に表示させても良い。これにより、本開示に係る屋内位置推定システムは、例えば、ユーザに建築物の内部(例えば博物館、美術館といったものの内部)をガイドすることができる。
【0086】
実施の形態2において、屋内位置推定システムS2は、複数のユーザ端末210を備えていても良い。このとき、あるエリアにおける推定モデルとして、混雑度が高い推定モデルHと、混雑度が低い推定モデルLがモデル記憶部205に格納されていても良い。推定サーバ200は、
図13のステップS32において、あるエリアに関して、エリア信号と無線信号の電波強度を送信したユーザ端末210の数(端末数)が所定の閾値以上であるか否かを判定する。そして、端末数が所定の閾値以上であれば、推定モデルHを選択し、端末数が所定の閾値未満であれば、推定モデルLを選択する。また、推定モデルは、混雑状況に応じて、3段階以上の設定がなされても良い。このようにすることで、推定サーバ200は、エリアの混雑状況に応じて、正確なユーザ端末210の位置を推定することができる。
【0087】
実施の形態2において、ユーザ端末210が、複数のエリア信号発信機220からエリア信号を受信することも想定される。この場合、ユーザ端末210は、例えばエリア信号の電波強度が最大のエリア信号を推定サーバ200に送信しても良い。または、ユーザ端末210は、所定の閾値以上のエリア信号を推定サーバ200に送信しても良いし、受信した全てのエリア信号を推定サーバ200に送信しても良い。このようにして、推定サーバ200が複数のエリア信号を受信した場合、推定サーバ200は、それぞれのエリアに関する推定モデル毎にユーザ端末210の位置を推定する。そして、得られた複数の位置推定結果に基づいて、ユーザ端末210の位置を1つに特定し、その特定した位置をユーザ端末210に送信しても良い。
【0088】
実施の形態2において、ユーザ端末210のユーザは、位置情報提示部214にユーザ端末210の位置が提示された場合に、その位置が正しいか否かを示す情報、又は正しい自身の位置を示す情報について、推定サーバ200にフィードバックとして送信しても良い。推定処理部204は、各エリアについて受信したフィードバックに基づいて、各エリアの推定モデルを修正又は再度学習する処理を実行し、推定モデルの精度をより高めることができる。なお、あるエリアにおける推定モデルが曜日や時間帯等に応じて2以上に区分されている場合でも、同様の処理が実行されても良い。
【0089】
以上に示したバリエーションは、実施の形態3、4等についても適用することができる。
【0090】
上述の各実施形態における位置推定システム及び屋内位置推定システムは、位置情報を推定する技術分野全般であれば、上述の実施の形態以外の状況にも適用することができる。
【0091】
以上に示した実施の形態では、この開示をハードウェアの構成として説明したが、この開示は、これに限定されるものではない。この開示は、上述の各実施形態において説明された位置推定装置及び端末の処理(ステップ)を、位置推定装置又は端末を構成するコンピュータ内のプロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0092】
図19は、以上に示した各実施の形態の処理が実行される情報処理装置(信号処理装置)のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図19を参照すると、この情報処理装置90は、信号処理回路91、プロセッサ92及びメモリ93を含む。
【0093】
信号処理回路91は、プロセッサ92の制御に応じて、信号を処理するための回路である。なお、信号処理回路91は、送信装置から信号を受信する通信回路を含んでいても良い。
【0094】
プロセッサ92は、メモリ93からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された装置の処理を行う。プロセッサ92の一例として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のうち一つを用いてもよいし、そのうちの複数を並列で用いてもよい。
【0095】
メモリ93は、揮発性メモリや不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせで構成される。メモリ93は、1個に限られず、複数設けられてもよい。なお、揮発性メモリは、例えば、DRAM (Dynamic Random Access Memory)、SRAM (Static Random Access Memory)等のRAM (Random Access Memory)であってもよい。不揮発性メモリは、例えば、PROM (Programmable Random Only Memory)、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory) 等のROM (Random Only Memory)、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)であってもよい。
【0096】
メモリ93は、1以上の命令を格納するために使用される。ここで、1以上の命令は、ソフトウェアモジュール群としてメモリ93に格納される。プロセッサ92は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ93から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された処理を行うことができる。
【0097】
なお、メモリ93は、プロセッサ92の外部に設けられるものに加えて、プロセッサ92に内蔵されているものを含んでもよい。また、メモリ93は、プロセッサ92を構成するプロセッサから離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ92は、I/O(Input/Output)インタフェースを介してメモリ93にアクセスすることができる。
【0098】
以上に説明したように、上述の実施形態における各装置が有する1又は複数のプロセッサは、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。この処理により、各実施の形態に記載された信号処理方法が実現できる。
【0099】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0100】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
端末が位置するエリアを示すエリア信号と、前記端末が受信した無線信号の電波強度とを取得する取得部と、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記推定モデルと、前記取得部が取得した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する推定部と、を備える
位置推定装置。
(付記2)
前記推定部が推定した前記端末のエリア内の位置情報を前記端末に送信する送信部をさらに備える、
付記1に記載の位置推定装置。
(付記3)
前記端末に関連付けられた別の端末の連絡先情報を用いて、前記推定部が推定した前記端末のエリア内の位置情報を前記別の端末に送信する送信部をさらに備える、
付記1に記載の位置推定装置。
(付記4)
前記複数のエリアは、屋内の領域が複数に分割されたエリアであり、
前記選択部は、前記エリア信号が示す屋内のエリアに対応する前記推定モデルを選択する、
付記1乃至3のいずれか1項に記載の位置推定装置。
(付記5)
前記選択部は、前記エリア信号が示すエリアに対応する複数の推定モデルの中から、前記端末が前記電波強度で前記無線信号を受信したタイミングに対応する推定モデルを選択する、
付記1乃至4のいずれか1項に記載の位置推定装置。
(付記6)
端末と、
前記端末の位置を推定する位置推定装置と、を備え、
前記端末は、
自端末が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信する受信部と、
前記エリア信号と、前記無線信号の電波強度とを前記位置推定装置に送信する送信部と、を有し、
前記位置推定装置は、
前記エリア信号と、前記電波強度とを受信する受信部と、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記推定モデルと、前記受信部が受信した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する推定部と、を有する
位置推定システム。
(付記7)
前記位置推定装置は、前記推定部が推定した前記端末のエリア内の位置情報を前記端末に送信する送信部をさらに備える、
付記6に記載の位置推定システム。
(付記8)
自端末が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信する受信部と、
各エリアにおいて端末が受信する無線通信の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記推定モデルと、前記受信部が受信した無線信号の電波強度を用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する推定部と、を備える
端末。
(付記9)
前記複数のエリアは、屋内の領域が複数に分割されたエリアであり、
前記選択部は、前記エリア信号が示す屋内のエリアに対応する前記推定モデルを選択する、
付記8に記載の端末。
(付記10)
端末が位置するエリアを示すエリア信号と、前記端末が受信した無線信号の電波強度とを取得し、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択し、
選択した前記推定モデルと、取得した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する、
コンピュータが実行する位置推定方法。
(付記11)
端末と、
前記端末の位置を推定する位置推定装置と、を備えた位置推定システムにおいて、
前記端末が、
自端末が位置するエリアを示すエリア信号と、無線信号とを受信し、
前記エリア信号と、前記無線信号の電波強度とを前記位置推定装置に送信し、
前記位置推定装置が、
前記エリア信号と、前記無線信号の電波強度とを受信し、
前記エリア信号に基づいて、各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択し、
選択した前記推定モデルと、受信した前記無線信号の電波強度を用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する、
位置推定システムが実行する位置推定方法。
(付記12)
端末が位置するエリアを示すエリア信号と、前記端末が受信した無線信号の電波強度とを取得し、
各エリアにおいて端末が受信する無線信号の電波強度と前記端末のエリア内の位置とが対応付けられた複数のエリア毎の推定モデルの中から、前記エリア信号が示すエリアに対応する推定モデルを選択し、
選択した前記推定モデルと、取得した前記電波強度とを用いて、前記端末のエリア内の位置を推定する、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【0101】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記によって限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0102】
100、100’ 位置推定装置
101 取得部 102 選択部
103 推定部 104 受信部
110、110’ 端末
111 受信部 112 送信部
113 選択部 114 推定部
200、200’ 推定サーバ
201 情報処理部 202 位置推定部
203 送受信部 204 推定処理部
205 モデル記憶部 206 連絡先記憶部
210、210’、410 ユーザ端末
211 情報処理部 212 エリア信号受信部
213 無線信号受信部 214 位置情報提示部
215 ネットワーク通信部 216 位置推定部
220 エリア信号発信機
221 エリア信号発信部 222 記憶部
230 無線信号機
231 無線信号発信部 232 記憶部
S1 位置推定システム
S2~S4 屋内位置推定システム