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特開2022-178288部材の粗面化方法および粗面化部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178288
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】部材の粗面化方法および粗面化部材
(51)【国際特許分類】
B24C 1/06 20060101AFI20221125BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20221125BHJP
B65G 11/16 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B24C1/06
B24C11/00 G
B24C11/00 Z
B65G11/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084992
(22)【出願日】2021-05-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】511102192
【氏名又は名称】株式会社オカノブラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】岡野 俊博
(72)【発明者】
【氏名】岡野 俊之
【テーマコード(参考)】
3F011
【Fターム(参考)】
3F011AA05
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送部材を提供することである。
【解決手段】本発明に係る部材の粗面化方法では、部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理が施された後に研磨処理が施されて、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m
2以上3.50mL/m
2以下の範囲内である粗面が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理を施した後に研磨処理を施して、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である粗面を形成する
部材の粗面化方法。
【請求項2】
部材に対して第1条件で湿式ブラスト処理を施して、第1粗面を有する部材を作製する第1湿式ブラスト処理工程と、
前記第1粗面を有する部材に対して、前記第1条件とは異なる条件である第2条件で湿式ブラスト処理を施して、第2粗面を有する部材を作製する第2湿式ブラスト処理工程と、
前記第2粗面を有する部材に対して研磨処理を施して、第3粗面を有する部材を作製する研磨処理工程と
を備え、
前記第3粗面は、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である
部材の粗面化方法。
【請求項3】
前記条件には、砥粒の平均径、および、分散媒に対する前記砥粒の配合比率の少なくとも一つの因子が含まれる
請求項2に記載の部材の粗面化方法。
【請求項4】
前記第2条件における前記砥粒の平均径は、前記第1条件における前記砥粒の平均径よりも小さい
請求項3に記載の部材の粗面化方法。
【請求項5】
前記第1湿式ブラスト処理工程および前記第2湿式ブラスト処理工程では、砥粒として、平均径が異なる二種類以上の砥粒が利用される
請求項3または4に記載の部材の粗面化方法。
【請求項6】
算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である粗面を有する
部材。
【請求項7】
前記算術平均高さSaは0.15μm以上0.50μm以下の範囲内であり、
前記突出谷部空間体積Vvvは0.050mL/m2以上0.100mL/m2以下の範囲内であり、
前記コア部空間体積Vvcは0.50mL/m2以上1.00mL/m2以下の範囲内であり、
前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は0.55mL/m2以上1.10mL/m2以下の範囲内である
請求項6に記載の部材。
【請求項8】
前記算術平均高さSaは0.50μm以上1.50μm以下の範囲内であり、
前記突出谷部空間体積Vvvは0.100mL/m2以上0.150mL/m2以下の範囲内であり、
前記コア部空間体積Vvcは1.00mL/m2以上2.00mL/m2以下の範囲内であり、
前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は1.10mL/m2以上2.15mL/m2以下の範囲内である
請求項6に記載の部材。
【請求項9】
前記算術平均高さSaは1.50μm以上3.00μm以下の範囲内であり、
前記突出谷部空間体積Vvvは0.150mL/m2以上0.200mL/m2以下の範囲内であり、
前記コア部空間体積Vvcは2.00mL/m2以上3.00mL/m2以下の範囲内であり、
前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は2.15mL/m2以上3.20mL/m2以下の範囲内である
請求項6に記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の粗面化方法に関する。また、本発明は、粗面化された部材にも関する。
【背景技術】
【0002】
物品搬送機構を有する装置等には、通常、物品の搬送経路を構成するシューターやガイド等の搬送経路形成部材が設けられている。搬送経路形成部材には、物品搬送処理速度向上の観点から高い滑走性や滑落性が求められている。そして、このような物性を搬送経路形成部材に付与するため、搬送経路形成部材に対してバフ研磨処理や電解研磨処理が施されることがある(なお、出願人はこのような技術が当該技術分野で周知となっていることを把握しているが、このような事実が開示された文献の存在を知らない。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、物品の搬送処理速度のさらなる向上が求められている。本発明の課題は、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送経路形成部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1局面に係る部材の粗面化方法では、部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理が施された後に研磨処理が施されて、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である粗面が形成される。なお、算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積VvcはISO 25178に規定されている。
【0005】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この部材の粗面化方法を用いることによって、バフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有する部材を作製することができることが明らかになった。このため、この部材の粗面化方法を実施することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送経路形成部材を製造することができる。
【0006】
本発明の第2局面に係る部材の粗面化方法は、第1湿式ブラスト処理工程、第2湿式ブラスト処理工程および研磨処理工程を備える。なお、ここで、用いられている「第1」および「第2」の文言は、相対的に異なることを示すためだけに用いられているものであって、絶対な序列を示すために用いられているものではない(すなわち、例えば、湿式ブラスト処理工程が3回以上行われる場合、ここにいう第1湿式ブラスト処理工程および第2湿式ブラスト処理工程は、最初の2回の湿式ブラスト処理工程を意味するのではなく、最後の2回の湿式ブラスト処理工程を意味する。)。第1湿式ブラスト処理工程では、部材に対して第1条件で湿式ブラスト処理が施されて、第1粗面を有する部材が作製される。なお、第1湿式ブラスト処理工程の前に、部材に対して1回または複数回の湿式ブラスト処理工程が実施されていてもかまわない。第2湿式ブラスト処理工程では、第1粗面を有する部材に対して第2条件で湿式ブラスト処理が施されて、第2粗面を有する部材が作製される。なお、ここで、第2条件は、第1条件とは異なる。研磨処理工程では、第2粗面を有する部材に対して研磨処理が施されて、第3粗面を有する部材が作製される。なお、ここで、第3粗面は、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である。また、算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積VvcはISO 25178に規定されている。
【0007】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この部材の粗面化方法を用いることによって、バフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有する部材を作製することができることが明らかになった。このため、この部材の粗面化方法を実施することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送経路形成部材を製造することができる。
【0008】
本発明の第3局面に係る部材の粗面化方法は、第2局面に係る部材の粗面化方法であって、上記条件には、砥粒の平均径、および、分散媒に対する前記砥粒の配合比率の少なくとも一つの因子が含まれる。
【0009】
本発明の第4局面に係る部材の粗面化方法は、第3局面に係る部材の粗面化方法であって、第2条件における砥粒の平均径は、第1条件における砥粒の平均径よりも小さい。
【0010】
本発明の第5局面に係る部材の粗面化方法は、第3局面または第4局面に係る部材の粗面化方法であって、第1湿式ブラスト処理工程および第2湿式ブラスト処理工程では、砥粒として、平均径が異なる二種類以上の砥粒が利用される。なお、かかる場合、第2湿式ブラスト処理工程で用いられる二種類以上の砥粒の平均径は、それぞれ第1湿式ブラスト処理工程で用いられる最も大きな砥粒の平均径よりも小さければよい。
【0011】
本発明の第6局面に係る部材は、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である粗面を有する。
【0012】
発明者らの鋭意検討の結果、上記粗面を有する部材は、バフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有することが明らかになった。このため、この部材を搬送経路形成部材として利用することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる。
【0013】
本発明の第7局面に係る部材は、第6局面に係る部材であって、算術平均高さSaは0.15μm以上0.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.050mL/m2以上0.100mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは0.50mL/m2以上1.00mL/m2以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.55mL/m2以上1.10mL/m2以下の範囲内である。
【0014】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記粗面を有する部材は、特にダンボール箱や、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパックについてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有することが明らかとされた。
【0015】
本発明の第8局面に係る部材は、第6局面に係る部材であって、算術平均高さSaは0.50μm以上1.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.100mL/m2以上0.150mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは1.00mL/m2以上2.00mL/m2以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は1.10mL/m2以上2.15mL/m2以下の範囲内である。
【0016】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記粗面を有する部材は、特に包装箱(例えば、薬箱)や、ペットボトル用キャップ、樹脂製容器(例えば、目薬容器)についてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有することが明らかとされた。
【0017】
本発明の第9局面に係る部材は、第6局面に係る部材であって、算術平均高さSaは1.50μm以上3.00μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.150mL/m2以上0.200mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは2.00mL/m2以上3.00mL/m2以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は2.15mL/m2以上3.20mL/m2以下の範囲内である。
【0018】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記粗面を有する部材は、特に包装袋(例えば、おしぼりの包装袋や飴の包装袋)や、ゴム栓、紙コップについてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有することが明らかとされた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1、比較例1および比較例2の試験板の被処理面に対するダンボール箱、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器およびティーパックの滑落角度を比較する棒グラフ図である。
【
図2】実施例2、比較例1および比較例2の試験板の被処理面に対する包装箱(薬箱)、ペットボトル用キャップ、樹脂容器(目薬)および樹脂容器(汎用)の滑落角度を比較する棒グラフ図である。
【
図3】実施例3、比較例1および比較例2の試験板の被処理面に対する包装袋(おしぼり)、包装袋(飴)ゴム栓および紙コップの滑落角度を比較する棒グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本発明の実施の形態に係る粗面化部材>
本発明の実施の形態に係る粗面化部材は、例えば、包装物等の物品を搬送する搬送ラインを構成する装置(例えば、計量機や、充填機、包装機、搬送排出機等)のホッパー、シューター、バケット、フィーダー、コンベアベルト(トラフ式等)の搬送経路を形成する搬送経路形成部材(包装材接触部材)等や、包装材を切断するための刃物等に応用され得る。なお、この粗面化部材は、金属や樹脂から形成され得る。そのような金属としては、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS316等)、アルミニウム合金、SS材(例えば、SS400等)等が挙げられる。そして、この粗面化部材では、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である粗面が滑走面または滑落面とされる。
【0021】
なお、算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcは独立して調整することができるものではない。現時点でその効果を確認することができたものの代表例に係る粗面のパラメータは以下の通りであるが、本発明がこれらの代表例に限定されることはない。
【0022】
(代表例1)
算術平均高さSa:0.15μm以上0.50μm以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvv:0.050mL/m2以上0.100mL/m2以下の範囲内
コア部空間体積Vvc:0.50mL/m2以上1.00mL/m2以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.55mL/m2以上1.10mL/m2以下の範囲内
なお、このような粗面は、特にダンボール箱や、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパックの滑走性・滑落性向上に有効である。
【0023】
(代表例2)
算術平均高さSa:0.50μm以上1.50μm以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvv:0.100mL/m2以上0.150mL/m2以下の範囲内
コア部空間体積Vvc:1.00mL/m2以上2.00mL/m2以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:1.10mL/m2以上2.15mL/m2以下の範囲内
なお、このような粗面は、特に包装箱(例えば、薬箱)や、ペットボトル用キャップ、樹脂製容器(例えば、目薬容器)の滑走性・滑落性向上に有効である。
【0024】
(代表例3)
算術平均高さSa:1.50μm以上3.00μm以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvv:0.150mL/m2以上0.200mL/m2以下の範囲内
コア部空間体積Vvc:2.00mL/m2以上3.00mL/m2以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:2.15mL/m2以上3.20mL/m2以下の範囲内
なお、このような粗面は、特に包装袋(例えば、おしぼりの包装袋や飴の包装袋)や、ゴム栓、紙コップの滑走性・滑落性向上に有効である。
【0025】
<本発明の実施の形態に係る粗面化部材の作製方法>
ところで、本発明の実施の形態に係る粗面化部材は、第1湿式ブラスト処理工程、第2湿式ブラスト処理工程および研磨処理工程を経て製造される。なお、必要に応じて、第1湿式ブラスト処理工程前に前処理工程が実施されてもかまわない。以下、これらの工程について詳述する。
【0026】
(1)第1湿式ブラスト処理工程
第1湿式ブラスト処理工程では、部材に対して第1条件で湿式ブラスト処理が施されて、第1粗面を有する部材が作製される。
【0027】
第1条件の項目としては、例えば、砥粒の形状や構造、砥粒の材質、砥粒の平均粒子径(50%粒子径)、分散媒の種類、分散媒に対する砥粒の割合、砥粒分散液の吐出圧、砥粒分散液の吐出角度、砥粒分散液噴射ノズルの被処理面までの距離、処理時間等が挙げられる。
【0028】
砥粒の形状は多角形または球形であることが好ましい。砥粒の構造としては単層構造であることが好ましい。砥粒の材質はセラミックであることが好ましい。分散媒は水であることが好ましい。分散媒には、平均粒子径の異なる二種以上の砥粒を分散させるのが好ましい。なお、平均粒子径の異なる二種の砥粒を分散媒に分散させる場合、大きい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して5.0g以上9.0g以下の範囲内で含まれることが好ましく、6.0g以上8.0g以下の範囲内で含まれることがより好ましく、小さい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して0.5g以上3.5g以下の範囲内で含まれることが好ましく、1.0g以上2.5g以下の範囲内で含まれることがより好ましい。砥粒分散液の吐出圧は0.3MPa以上0.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液の吐出角度は被処理面に対して60°以上90°以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液噴射ノズルの被処理面までの距離は50mm以上300mm以下の範囲内であることが好ましい。処理時間は、例えば300mm×300mmの面積を処理する場合、5分以上とすることが好ましい。
【0029】
また、上記代表例1のパラメータを有する粗面を形成するには、45μm以上55μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、15μm以上25μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して5.5g以上6.5g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して2.0g以上2.5g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0030】
また、上記代表例2のパラメータを有する粗面を形成するには、95μm以上105μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、45μm以上55μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して6.0g以上7.0g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して1.5g以上2.5g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0031】
また、上記代表例3のパラメータを有する粗面を形成するには、395μm以上405μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、95μm以上105μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して7.5g以上8.5g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して1.0g以上2.0g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0032】
(2)第2湿式ブラスト処理工程
第2湿式ブラスト処理工程では、第1粗面を有する部材に対して第2条件で湿式ブラスト処理が施されて、第2粗面を有する部材が作製される。
【0033】
第2条件の項目は、第1条件の項目と同様であって、例えば、砥粒の形状や構造、砥粒の材質、砥粒の平均粒子径(50%粒子径)、分散媒の種類、分散媒に対する砥粒の割合、砥粒分散液の吐出圧、砥粒分散液の吐出角度、処理時間等である。
【0034】
砥粒の形状は多角形または球形であることが好ましい。砥粒の構造としては単層構造であることが好ましい。砥粒の材質はセラミックであることが好ましい。なお、ここで、使用される砥粒の平均粒子径は、第1湿式ブラスト処理工程で用いられる砥粒の平均粒子径よりも小さい。分散媒は水であることが好ましい。分散媒には、平均粒子径の異なる二種以上の砥粒を分散させるのが好ましい。なお、平均粒子径の異なる二種の砥粒を分散媒に分散させる場合、大きい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して4.5g以上7.5g以下の範囲内で含まれることが好ましく、5.0g以上7.0g以下の範囲内で含まれることがより好ましく、小さい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して0.5g以上3.5g以下の範囲内で含まれることが好ましく、1.0g以上3.0g以下の範囲内で含まれることがより好ましい。砥粒分散液の吐出圧は0.1MPa以上0.3MPa以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液の吐出角度は被処理面に対して30°以上60°以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液噴射ノズルの被処理面までの距離は50mm以上300mm以下の範囲内であることが好ましい。処理時間は、例えば300mm×300mmの面積を処理する場合、4分以上とすることが好ましい。
【0035】
また、上記代表例1~3のパラメータを有する粗面を形成するには、1.5μm以上2.5μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、0.1μm以上1.0μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して5.0g以上7.0g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して1.0g以上3.0g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0036】
(3)研磨処理工程
研磨処理工程では、第2粗面を有する部材に対して研磨処理が施されて、第3粗面を有する部材が作製される。なお、この研磨処理工程では、本発明の主旨を損なわない限り、種々の研磨処理が行われてもよいが、特殊研磨処理が行われるのが好ましい。
【0037】
特殊研磨処理では、樹脂やゴム等の弾性コア材に微細な砥粒を積層した粒子が圧縮空気または遠心力で第2粗面上を滑走させられる。なお、ここで、粒子としては樹脂製のコアに砥粒を被覆した粒子であることが好ましい。また、そのコアの直径は0.1mm以上0.8mm以下の範囲内であることが好ましく、砥粒の直径は1.0μm以上8.0μm以下の範囲内であることが好ましく、圧縮空気の圧力は0.1MPa以上0.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。また、粒子の投射角度は被処理面に対して30°以上60°以下の範囲内であることが好ましく、処理時間は、例えば300mm×300mmの面積を処理する場合、8分以上であることが好ましい。
【0038】
なお、この研磨処理工程では、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内となると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内となるように被処理面が粗面化される。
【0039】
(4)前処理工程
前処理工程は、部材の被処理面の算術平均高さSaが1.0μm以上である場合に行われることが好ましい。これは、後工程の第2湿式ブラスト処理工程および研磨処理工程において所望の粗面度の表面を得るためである。前処理としては、例えば、特殊研磨等の研磨処理等が挙げられる。特殊研磨処理では、被処理面に対して、樹脂やゴム等の弾性コア材に微細な砥粒を積層した粒子が圧縮空気または遠心力で滑走させられて、切削や研磨等により形成された凹凸痕が除去されて表面粗さが低減される。なお、ここで、粒子としては樹脂製のコアに砥粒を被覆した粒子であることが好ましい。また、そのコアの直径は0.1mm以上0.8mm以下の範囲内であることが好ましく、砥粒の直径は1μm以上8μm以下の範囲内であることが好ましく、圧縮空気の圧力は0.2MPa以上0.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。また、粒子の投射角度は被処理面に対して45°以上60°以下の範囲内であることが好ましく、処理時間は30分以上45分以下の範囲内であることが好ましい。
【0040】
<湿式ブラスト処理の特徴>
本発明の実施の形態に係る粗面化部材の作製に用いられる湿式ブラスト処理は以下の特徴を有する。
(1)乾式ブラスト処理に比べて細かい凹凸を形成することができる。
(2)乾式ブラスト処理に比べて凹凸構造の均一性が高い。
(3)砥粒の残留リスクが少なく、クリーンな表面仕上げを行うことができると共に、処理後の洗浄工程を省略し得る。
(4)乾式ブラスト処理に比べて被処理面の変形リスクが低く、薄板材にも適用可能である。
(5)乾式ブラスト処理に比べて被処理面の発熱が少なく、処理焼けが生じない。
(6)粒度が異なる砥粒を混ぜて使用することができるため、乾式ブラスト処理に比べて砥粒の選択の幅が広くなり、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを向上させやすい。
【0041】
<本発明の実施の形態に係る粗面化部材の特徴>
本発明の実施の形態に係る粗面化部材は、従前の粗面化部材よりも滑走性・滑落性に優れる。
【0042】
なお、本発明の実施の形態に係る粗面化部材が上記のような性能を示すのは、作製時の第1湿式ブラスト処理工程において比較的な大きなスケールの複雑な凹凸が形成され、第2湿式ブラスト処理工程およびその後の研磨処理工程においてその比較的大きなスケールの凹凸に比較的小さなスケールの複雑な凹凸が形成されるからであると推察される。
【0043】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明がこの実施例には限定されることはない。
【実施例0044】
1.ステンレス鋼板の粗面化処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して、第1湿式ブラスト処理、第2湿式ブラスト処理および特殊研磨処理をこの順序で施して、被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0045】
なお、上記処理に先立って各処理用の砥粒分散液を調製した。具体的には、50%平均粒径(メジアン径)50μmのセラミック粒子を1400g、50%平均粒径(メジアン径)20μmのセラミック粒子を500g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。また、50%平均粒径(メジアン径)2.0μmのセラミック粒子を1500g、50%平均粒径(メジアン径)1.0μmのセラミック粒子を300g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。
【0046】
第1湿式ブラスト処理では、第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.4MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度90°で5分間噴射した。第2湿式ブラスト処理では、第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.2MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度60°で4分間噴射した。特殊研磨処理では、粉末ゴムに微細なダイヤモンド砥粒を積層した粒子を、0.3MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面上を滑走させた。なお、ここで、粉末ゴムの直径は0.1~0.8mmであり(平均直径は0.5mmであった。)、ダイヤモンド砥粒の直径は1.0~8.0μmであった(平均直径は4.0μmであった。)。また、特殊研磨処理の際、粒子の投射角度を被処理面に対して45°とし、その処理時間を8分とした。
【0047】
2.被処理面の表面分析
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は0.340μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.047mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは0.530mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.577mL/m2であった(表1参照)。
【0048】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:0.335μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.068mL/m2
・コア部空間体積Vvc:0.575mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.643mL/m2
【0049】
(2)滑落試験
本試験では、試験板固定板、微動回転ステージおよび固定柱から成る滑落角度測定装置を用いてダンボール箱、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパック、包装箱(薬箱)、ペットボトル用キャップ、樹脂容器(目薬)、樹脂容器(汎用)、包装袋(おしぼり)、包装袋(飴)、ゴム栓および紙コップの滑落角度を測定した。なお、この滑落角度測定装置では、試験板固定板が微動回転ステージを介して固定柱に取り付けられている。そして、水平方向に延びる軸回りに微動回転ステージを回転させると、それに連動して試験板固定板が傾斜する。また、滑落角度測定装置の設置室の温度および相対湿度を計測したところ、温度は20℃±1℃であり、相対湿度は58%±3%であった。
【0050】
具体的には、本試験は以下の手順で行われた。
第1ステップ:被処理面が上側になるように試験板を試験板固定版に固定する。
第2ステップ:試験板の被処理面が水平になるように微動回転ステージを調整する。
第3ステップ:試験板の被処理面上に上記物品を載置する。
第4ステップ:微動回転ステージを操作して0.1°ずつ試験板固定板を傾斜させる。なお、この角度変化の間隔は5秒とした。
第5ステップ:物品が滑落した傾斜角度を記録し、その傾斜角度を滑落角度とした。
なお、本試験では、同一の物品に対して上記手順を3回繰り返してその平均値を滑落角度とした。その結果、以下の表2に示される結果が得られた。
【実施例0051】
1.ステンレス鋼板の粗面化処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して、第1湿式ブラスト処理、第2湿式ブラスト処理および特殊研磨処理をこの順序で施して、被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0052】
なお、上記処理に先立って各処理用の砥粒分散液を調整した。具体的には、50%平均粒径(メジアン径)100μmのセラミック粒子を1500g、50%平均粒径(メジアン径)50μmのセラミック粒子を400g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。また、50%平均粒径(メジアン径)2.0μmのセラミック粒子を1400g、50%平均粒径(メジアン径)1.0μmのセラミック粒子を400g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。
【0053】
第1ブラスト処理では、第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.4MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度90°で5分間噴射した。第2ブラスト処理では、第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.3MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度60°で4分間噴射した。特殊研磨処理では、粉末ゴムに微細なダイヤモンド砥粒を積層した粒子を、0.2MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面上を滑走させた。なお、ここで、粉末ゴムの直径は0.1~0.8mmであり(平均直径は0.5mmであった。)、ダイヤモンド砥粒の直径は1.0~8.0μmであった(平均直径は4.0μmであった。)。また、特殊研磨処理の際、粒子の投射角度を被処理面に対して45°とし、その処理時間を8分とした。
【0054】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は1.024μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.129mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは1.630mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は1.759mL/m2であった(表1参照)。
【0055】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:1.024μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.128mL/m2
・コア部空間体積Vvc:1.659mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:1.787mL/m2
【0056】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【実施例0057】
1.ステンレス鋼板の粗面化処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して、第1湿式ブラスト処理、第2湿式ブラスト処理および特殊研磨処理をこの順序で施して、被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0058】
なお、上記処理に先立って各処理用の砥粒分散液を調整した。具体的には、50%平均粒径(メジアン径)400μmのセラミック粒子を1800g、50%平均粒径(メジアン径)100μmのセラミック粒子を300g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。また、50%平均粒径(メジアン径)2.0μmのセラミック粒子を1200g、50%平均粒径(メジアン径)1.0μmのセラミック粒子を600g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。
【0059】
第1ブラスト処理では、第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.3MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度90°で5分間噴射した。第2ブラスト処理では、第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.4MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度60°で4分間噴射した。特殊研磨処理では、粉末ゴムに微細なダイヤモンド砥粒を積層した粒子を、0.2MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面上を滑走させた。なお、ここで、粉末ゴムの直径は0.1~0.8mmであり(平均直径は0.5mmであった。)、ダイヤモンド砥粒の直径は1.0~8.0μmであった(平均直径は4.0μmであった。)。また、特殊研磨処理の際、粒子の投射角度を被処理面に対して45°とし、その処理時間を8分とした。
【0060】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は2.110μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.172mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは2.225mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は2.397mL/m2であった(表1参照)。
【0061】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:2.155μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.179mL/m2
・コア部空間体積Vvc:2.304mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:2.483mL/m2
【0062】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【0063】
(比較例1)
1.ステンレス鋼板の研磨処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して#400のバフ研磨を実施して、その被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0064】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は0.018μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.003mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは0.025mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.028mL/m2であった(表1参照)。
【0065】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:0.020μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.004mL/m2
・コア部空間体積Vvc:0.028mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.032mL/m2
【0066】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【0067】
(比較例2)
1.ステンレス鋼板の研磨処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して電解研磨を実施して、その被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0068】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の10点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は0.196μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.032mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは0.127mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.159mL/m2であった(表1参照)。
【0069】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:0.202μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.030mL/m2
・コア部空間体積Vvc:0.190mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.220mL/m2
【0070】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【0071】
【0072】
【0073】
[実施例および比較例で作製された試験板の滑落角度の比較検証]
表2から明らかなように、いずれの実施例に係る試験板も、いずれの比較例に係る試験板の滑落角度よりも低い滑落角度を示した。これは、実施例に係る試験板は、比較例に係る試験板よりも滑走性・滑落性に優れることを示している。なお、実施例1に係る試験板は、特にダンボール箱、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパックについて、比較例1および比較例2に係る試験板よりも優れた滑走性・滑落性を示した(表2および
図1参照)。また、実施例2に係る試験板は、特に包装箱(薬箱)、ペットボトル用キャップ、樹脂容器(目薬)、樹脂容器(汎用)について、比較例1および比較例2に係る試験板よりも優れた滑走性・滑落性を示した(表2および
図2参照)。また、実施例3に係る試験板は、特に包装袋(おしぼり)、包装袋(飴)、ゴム栓および紙コップについて、比較例1および比較例2に係る試験板よりも優れた滑走性・滑落性を示した(表3および
図2参照)。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理を施した後に研磨処理を施して、算術平均高さSaは0.15μm以上0.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.050mL/m
2
以上0.100mL/m
2
以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは0.50mL/m
2
以上1.00mL/m
2
以下の範囲内であり、前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は0.55mL/m
2
以上1.10mL/m
2
以下の範囲内である粗面を形成する
部材の粗面化方法。
【請求項2】
部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理を施した後に研磨処理を施して、算術平均高さSaは0.50μm以上1.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.100mL/m
2
以上0.150mL/m
2
以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは1.00mL/m
2
以上2.00mL/m
2
以下の範囲内であり、前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は1.10mL/m
2
以上2.15mL/m
2
以下の範囲内である粗面を形成する
部材の粗面化方法。
【請求項3】
部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理を施した後に研磨処理を施して、算術平均高さSaは1.50μm以上3.00μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.150mL/m
2
以上0.200mL/m
2
以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは2.00mL/m
2
以上3.00mL/m
2
以下の範囲内であり、前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は2.15mL/m
2
以上3.20mL/m
2
以下の範囲内である粗面を形成する
部材の粗面化方法。
【請求項4】
算術平均高さSaは0.15μm以上0.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.050mL/m2以上0.100mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは0.50mL/m2以上1.00mL/m2以下の範囲内であり、前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は0.55mL/m2以上1.10mL/m2以下の範囲内である粗面を有する
部材。
【請求項5】
算術平均高さSaは0.50μm以上1.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.100mL/m2以上0.150mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは1.00mL/m2以上2.00mL/m2以下の範囲内であり、前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は1.10mL/m2以上2.15mL/m2以下の範囲内である粗面を有する
部材。
【請求項6】
算術平均高さSaは1.50μm以上3.00μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.150mL/m2以上0.200mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは2.00mL/m2以上3.00mL/m2以下の範囲内であり、前記突出谷部空間体積Vvvと前記コア部空間体積Vvcの和は2.15mL/m2以上3.20mL/m2以下の範囲内である粗面を有する
部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の粗面化方法に関する。また、本発明は、粗面化された部材にも関する。
【背景技術】
【0002】
物品搬送機構を有する装置等には、通常、物品の搬送経路を構成するシューターやガイド等の搬送経路形成部材が設けられている。搬送経路形成部材には、物品搬送処理速度向上の観点から高い滑走性や滑落性が求められている。そして、このような物性を搬送経路形成部材に付与するため、搬送経路形成部材に対してバフ研磨処理や電解研磨処理が施されることがある(なお、出願人はこのような技術が当該技術分野で周知となっていることを把握しているが、このような事実が開示された文献の存在を知らない。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、物品の搬送処理速度のさらなる向上が求められている。本発明の課題は、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送経路形成部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1局面に係る部材の粗面化方法では、部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理が施された後に研磨処理が施されて、算術平均高さSaは0.15μm以上0.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.050mL/m
2
以上0.100mL/m
2
以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは0.50mL/m
2
以上1.00mL/m
2
以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.55mL/m
2
以上1.10mL/m
2
以下の範囲内である粗面が形成される。なお、算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積VvcはISO 25178に規定されている。
【0005】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この部材の粗面化方法を用いることによって、特にダンボール箱や、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパックについてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有する部材を作製することができることが明らかになった。このため、この部材の粗面化方法を実施することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送経路形成部材を製造することができる。
【0006】
本発明の第2局面に係る部材の粗面化方法では、部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理が施された後に研磨処理が施されて、算術平均高さSaは0.50μm以上1.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.100mL/m
2
以上0.150mL/m
2
以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは1.00mL/m
2
以上2.00mL/m
2
以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は1.10mL/m
2
以上2.15mL/m
2
以下の範囲内である粗面が形成される。なお、算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積VvcはISO 25178に規定されている。
【0007】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この部材の粗面化方法を用いることによって、特に包装箱(例えば、薬箱)や、ペットボトル用キャップ、樹脂製容器(例えば、目薬容器)についてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有する部材を作製することができることが明らかになった。このため、この部材の粗面化方法を実施することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送経路形成部材を製造することができる。
【0008】
本発明の第3局面に係る部材の粗面化方法では、部材に対して異なる条件で複数回、湿式ブラスト処理が施された後に研磨処理が施されて、算術平均高さSaは1.50μm以上3.00μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.150mL/m
2
以上0.200mL/m
2
以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは2.00mL/m
2
以上3.00mL/m
2
以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は2.15mL/m
2
以上3.20mL/m
2
以下の範囲内である粗面が形成される。なお、算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積VvcはISO 25178に規定されている。
【0009】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この部材の粗面化方法を用いることによって、特に包装袋(例えば、おしぼりの包装袋や飴の包装袋)や、ゴム栓、紙コップについてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有する部材を作製することができることが明らかになった。このため、この部材の粗面化方法を実施することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる搬送経路形成部材を製造することができる。
【0010】
本発明の第4局面に係る部材は、算術平均高さSaは0.15μm以上0.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.050mL/m2以上0.100mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは0.50mL/m2以上1.00mL/m2以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.55mL/m2以上1.10mL/m2以下の範囲内である粗面を有する。
【0011】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記粗面を有する部材は、特にダンボール箱や、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパックについてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有することが明らかとされた。このため、この部材を搬送経路形成部材として利用することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる。
【0012】
本発明の第5局面に係る部材は、算術平均高さSaは0.50μm以上1.50μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.100mL/m2以上0.150mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは1.00mL/m2以上2.00mL/m2以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は1.10mL/m2以上2.15mL/m2以下の範囲内である粗面を有する。
【0013】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記粗面を有する部材は、特に包装箱(例えば、薬箱)や、ペットボトル用キャップ、樹脂製容器(例えば、目薬容器)についてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有することが明らかとされた。このため、この部材を搬送経路形成部材として利用することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる。
【0014】
本発明の第6局面に係る部材は、算術平均高さSaは1.50μm以上3.00μm以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvは0.150mL/m2以上0.200mL/m2以下の範囲内であり、コア部空間体積Vvcは2.00mL/m2以上3.00mL/m2以下の範囲内であり、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は2.15mL/m2以上3.20mL/m2以下の範囲内である粗面を有する。
【0015】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記粗面を有する部材は、特に包装袋(例えば、おしぼりの包装袋や飴の包装袋)や、ゴム栓、紙コップについてバフ研磨処理や電解研磨処理が施された部材よりも高い滑走性や滑落性を有することが明らかとされた。このため、この部材を搬送経路形成部材として利用することによって、物品の搬送処理速度のさらなる向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1、比較例1および比較例2の試験板の被処理面に対するダンボール箱、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器およびティーパックの滑落角度を比較する棒グラフ図である。
【
図2】実施例2、比較例1および比較例2の試験板の被処理面に対する包装箱(薬箱)、ペットボトル用キャップ、樹脂容器(目薬)および樹脂容器(汎用)の滑落角度を比較する棒グラフ図である。
【
図3】実施例3、比較例1および比較例2の試験板の被処理面に対する包装袋(おしぼり)、包装袋(飴)ゴム栓および紙コップの滑落角度を比較する棒グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明の実施の形態に係る粗面化部材>
本発明の実施の形態に係る粗面化部材は、例えば、包装物等の物品を搬送する搬送ラインを構成する装置(例えば、計量機や、充填機、包装機、搬送排出機等)のホッパー、シューター、バケット、フィーダー、コンベアベルト(トラフ式等)の搬送経路を形成する搬送経路形成部材(包装材接触部材)等や、包装材を切断するための刃物等に応用され得る。なお、この粗面化部材は、金属や樹脂から形成され得る。そのような金属としては、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS316等)、アルミニウム合金、SS材(例えば、SS400等)等が挙げられる。そして、この粗面化部材では、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内であると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内である粗面が滑走面または滑落面とされる。
【0018】
なお、算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcは独立して調整することができるものではない。現時点でその効果を確認することができたものの代表例に係る粗面のパラメータは以下の通りであるが、本発明がこれらの代表例に限定されることはない。
【0019】
(代表例1)
算術平均高さSa:0.15μm以上0.50μm以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvv:0.050mL/m2以上0.100mL/m2以下の範囲内
コア部空間体積Vvc:0.50mL/m2以上1.00mL/m2以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.55mL/m2以上1.10mL/m2以下の範囲内
なお、このような粗面は、特にダンボール箱や、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパックの滑走性・滑落性向上に有効である。
【0020】
(代表例2)
算術平均高さSa:0.50μm以上1.50μm以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvv:0.100mL/m2以上0.150mL/m2以下の範囲内
コア部空間体積Vvc:1.00mL/m2以上2.00mL/m2以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:1.10mL/m2以上2.15mL/m2以下の範囲内
なお、このような粗面は、特に包装箱(例えば、薬箱)や、ペットボトル用キャップ、樹脂製容器(例えば、目薬容器)の滑走性・滑落性向上に有効である。
【0021】
(代表例3)
算術平均高さSa:1.50μm以上3.00μm以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvv:0.150mL/m2以上0.200mL/m2以下の範囲内
コア部空間体積Vvc:2.00mL/m2以上3.00mL/m2以下の範囲内
突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:2.15mL/m2以上3.20mL/m2以下の範囲内
なお、このような粗面は、特に包装袋(例えば、おしぼりの包装袋や飴の包装袋)や、ゴム栓、紙コップの滑走性・滑落性向上に有効である。
【0022】
<本発明の実施の形態に係る粗面化部材の作製方法>
ところで、本発明の実施の形態に係る粗面化部材は、第1湿式ブラスト処理工程、第2湿式ブラスト処理工程および研磨処理工程を経て製造される。なお、必要に応じて、第1湿式ブラスト処理工程前に前処理工程が実施されてもかまわない。以下、これらの工程について詳述する。
【0023】
(1)第1湿式ブラスト処理工程
第1湿式ブラスト処理工程では、部材に対して第1条件で湿式ブラスト処理が施されて、第1粗面を有する部材が作製される。
【0024】
第1条件の項目としては、例えば、砥粒の形状や構造、砥粒の材質、砥粒の平均粒子径(50%粒子径)、分散媒の種類、分散媒に対する砥粒の割合、砥粒分散液の吐出圧、砥粒分散液の吐出角度、砥粒分散液噴射ノズルの被処理面までの距離、処理時間等が挙げられる。
【0025】
砥粒の形状は多角形または球形であることが好ましい。砥粒の構造としては単層構造であることが好ましい。砥粒の材質はセラミックであることが好ましい。分散媒は水であることが好ましい。分散媒には、平均粒子径の異なる二種以上の砥粒を分散させるのが好ましい。なお、平均粒子径の異なる二種の砥粒を分散媒に分散させる場合、大きい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して5.0g以上9.0g以下の範囲内で含まれることが好ましく、6.0g以上8.0g以下の範囲内で含まれることがより好ましく、小さい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して0.5g以上3.5g以下の範囲内で含まれることが好ましく、1.0g以上2.5g以下の範囲内で含まれることがより好ましい。砥粒分散液の吐出圧は0.3MPa以上0.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液の吐出角度は被処理面に対して60°以上90°以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液噴射ノズルの被処理面までの距離は50mm以上300mm以下の範囲内であることが好ましい。処理時間は、例えば300mm×300mmの面積を処理する場合、5分以上とすることが好ましい。
【0026】
また、上記代表例1のパラメータを有する粗面を形成するには、45μm以上55μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、15μm以上25μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して5.5g以上6.5g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して2.0g以上2.5g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0027】
また、上記代表例2のパラメータを有する粗面を形成するには、95μm以上105μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、45μm以上55μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して6.0g以上7.0g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して1.5g以上2.5g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0028】
また、上記代表例3のパラメータを有する粗面を形成するには、395μm以上405μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、95μm以上105μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して7.5g以上8.5g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して1.0g以上2.0g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0029】
(2)第2湿式ブラスト処理工程
第2湿式ブラスト処理工程では、第1粗面を有する部材に対して第2条件で湿式ブラスト処理が施されて、第2粗面を有する部材が作製される。
【0030】
第2条件の項目は、第1条件の項目と同様であって、例えば、砥粒の形状や構造、砥粒の材質、砥粒の平均粒子径(50%粒子径)、分散媒の種類、分散媒に対する砥粒の割合、砥粒分散液の吐出圧、砥粒分散液の吐出角度、処理時間等である。
【0031】
砥粒の形状は多角形または球形であることが好ましい。砥粒の構造としては単層構造であることが好ましい。砥粒の材質はセラミックであることが好ましい。なお、ここで、使用される砥粒の平均粒子径は、第1湿式ブラスト処理工程で用いられる砥粒の平均粒子径よりも小さい。分散媒は水であることが好ましい。分散媒には、平均粒子径の異なる二種以上の砥粒を分散させるのが好ましい。なお、平均粒子径の異なる二種の砥粒を分散媒に分散させる場合、大きい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して4.5g以上7.5g以下の範囲内で含まれることが好ましく、5.0g以上7.0g以下の範囲内で含まれることがより好ましく、小さい平均粒子径を有する砥粒は分散媒100gに対して0.5g以上3.5g以下の範囲内で含まれることが好ましく、1.0g以上3.0g以下の範囲内で含まれることがより好ましい。砥粒分散液の吐出圧は0.1MPa以上0.3MPa以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液の吐出角度は被処理面に対して30°以上60°以下の範囲内であることが好ましい。砥粒分散液噴射ノズルの被処理面までの距離は50mm以上300mm以下の範囲内であることが好ましい。処理時間は、例えば300mm×300mmの面積を処理する場合、4分以上とすることが好ましい。
【0032】
また、上記代表例1~3のパラメータを有する粗面を形成するには、1.5μm以上2.5μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「大砥粒」という場合がある)と、0.1μm以上1.0μm以下の範囲内の平均粒子径を有する砥粒(以下「小砥粒」という場合がある)とを分散媒に分散させることが好ましい。また、かかる場合、大砥粒は分散媒100gに対して5.0g以上7.0g以下の範囲内で分散媒に含まれることが好ましく、小砥粒は分散媒100gに対して1.0g以上3.0g以下の範囲内で分散媒に含まれていることが好ましい。
【0033】
(3)研磨処理工程
研磨処理工程では、第2粗面を有する部材に対して研磨処理が施されて、第3粗面を有する部材が作製される。なお、この研磨処理工程では、本発明の主旨を損なわない限り、種々の研磨処理が行われてもよいが、特殊研磨処理が行われるのが好ましい。
【0034】
特殊研磨処理では、樹脂やゴム等の弾性コア材に微細な砥粒を積層した粒子が圧縮空気または遠心力で第2粗面上を滑走させられる。なお、ここで、粒子としては樹脂製のコアに砥粒を被覆した粒子であることが好ましい。また、そのコアの直径は0.1mm以上0.8mm以下の範囲内であることが好ましく、砥粒の直径は1.0μm以上8.0μm以下の範囲内であることが好ましく、圧縮空気の圧力は0.1MPa以上0.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。また、粒子の投射角度は被処理面に対して30°以上60°以下の範囲内であることが好ましく、処理時間は、例えば300mm×300mmの面積を処理する場合、8分以上であることが好ましい。
【0035】
なお、この研磨処理工程では、算術平均高さSaが0.15μm以上3.00μm以下の範囲内となると共に、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和が0.50mL/m2以上3.50mL/m2以下の範囲内となるように被処理面が粗面化される。
【0036】
(4)前処理工程
前処理工程は、部材の被処理面の算術平均高さSaが1.0μm以上である場合に行われることが好ましい。これは、後工程の第2湿式ブラスト処理工程および研磨処理工程において所望の粗面度の表面を得るためである。前処理としては、例えば、特殊研磨等の研磨処理等が挙げられる。特殊研磨処理では、被処理面に対して、樹脂やゴム等の弾性コア材に微細な砥粒を積層した粒子が圧縮空気または遠心力で滑走させられて、切削や研磨等により形成された凹凸痕が除去されて表面粗さが低減される。なお、ここで、粒子としては樹脂製のコアに砥粒を被覆した粒子であることが好ましい。また、そのコアの直径は0.1mm以上0.8mm以下の範囲内であることが好ましく、砥粒の直径は1μm以上8μm以下の範囲内であることが好ましく、圧縮空気の圧力は0.2MPa以上0.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。また、粒子の投射角度は被処理面に対して45°以上60°以下の範囲内であることが好ましく、処理時間は30分以上45分以下の範囲内であることが好ましい。
【0037】
<湿式ブラスト処理の特徴>
本発明の実施の形態に係る粗面化部材の作製に用いられる湿式ブラスト処理は以下の特徴を有する。
(1)乾式ブラスト処理に比べて細かい凹凸を形成することができる。
(2)乾式ブラスト処理に比べて凹凸構造の均一性が高い。
(3)砥粒の残留リスクが少なく、クリーンな表面仕上げを行うことができると共に、処理後の洗浄工程を省略し得る。
(4)乾式ブラスト処理に比べて被処理面の変形リスクが低く、薄板材にも適用可能である。
(5)乾式ブラスト処理に比べて被処理面の発熱が少なく、処理焼けが生じない。
(6)粒度が異なる砥粒を混ぜて使用することができるため、乾式ブラスト処理に比べて砥粒の選択の幅が広くなり、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを向上させやすい。
【0038】
<本発明の実施の形態に係る粗面化部材の特徴>
本発明の実施の形態に係る粗面化部材は、従前の粗面化部材よりも滑走性・滑落性に優れる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態に係る粗面化部材が上記のような性能を示すのは、作製時の第1湿式ブラスト処理工程において比較的な大きなスケールの複雑な凹凸が形成され、第2湿式ブラスト処理工程およびその後の研磨処理工程においてその比較的大きなスケールの凹凸に比較的小さなスケールの複雑な凹凸が形成されるからであると推察される。
【0040】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明がこの実施例には限定されることはない。
【実施例0041】
1.ステンレス鋼板の粗面化処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して、第1湿式ブラスト処理、第2湿式ブラスト処理および特殊研磨処理をこの順序で施して、被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0042】
なお、上記処理に先立って各処理用の砥粒分散液を調製した。具体的には、50%平均粒径(メジアン径)50μmのセラミック粒子を1400g、50%平均粒径(メジアン径)20μmのセラミック粒子を500g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。また、50%平均粒径(メジアン径)2.0μmのセラミック粒子を1500g、50%平均粒径(メジアン径)1.0μmのセラミック粒子を300g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。
【0043】
第1湿式ブラスト処理では、第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.4MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度90°で5分間噴射した。第2湿式ブラスト処理では、第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.2MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度60°で4分間噴射した。特殊研磨処理では、粉末ゴムに微細なダイヤモンド砥粒を積層した粒子を、0.3MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面上を滑走させた。なお、ここで、粉末ゴムの直径は0.1~0.8mmであり(平均直径は0.5mmであった。)、ダイヤモンド砥粒の直径は1.0~8.0μmであった(平均直径は4.0μmであった。)。また、特殊研磨処理の際、粒子の投射角度を被処理面に対して45°とし、その処理時間を8分とした。
【0044】
2.被処理面の表面分析
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は0.340μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.047mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは0.530mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.577mL/m2であった(表1参照)。
【0045】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:0.335μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.068mL/m2
・コア部空間体積Vvc:0.575mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.643mL/m2
【0046】
(2)滑落試験
本試験では、試験板固定板、微動回転ステージおよび固定柱から成る滑落角度測定装置を用いてダンボール箱、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパック、包装箱(薬箱)、ペットボトル用キャップ、樹脂容器(目薬)、樹脂容器(汎用)、包装袋(おしぼり)、包装袋(飴)、ゴム栓および紙コップの滑落角度を測定した。なお、この滑落角度測定装置では、試験板固定板が微動回転ステージを介して固定柱に取り付けられている。そして、水平方向に延びる軸回りに微動回転ステージを回転させると、それに連動して試験板固定板が傾斜する。また、滑落角度測定装置の設置室の温度および相対湿度を計測したところ、温度は20℃±1℃であり、相対湿度は58%±3%であった。
【0047】
具体的には、本試験は以下の手順で行われた。
第1ステップ:被処理面が上側になるように試験板を試験板固定版に固定する。
第2ステップ:試験板の被処理面が水平になるように微動回転ステージを調整する。
第3ステップ:試験板の被処理面上に上記物品を載置する。
第4ステップ:微動回転ステージを操作して0.1°ずつ試験板固定板を傾斜させる。なお、この角度変化の間隔は5秒とした。
第5ステップ:物品が滑落した傾斜角度を記録し、その傾斜角度を滑落角度とした。
なお、本試験では、同一の物品に対して上記手順を3回繰り返してその平均値を滑落角度とした。その結果、以下の表2に示される結果が得られた。
【実施例0048】
1.ステンレス鋼板の粗面化処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して、第1湿式ブラスト処理、第2湿式ブラスト処理および特殊研磨処理をこの順序で施して、被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0049】
なお、上記処理に先立って各処理用の砥粒分散液を調整した。具体的には、50%平均粒径(メジアン径)100μmのセラミック粒子を1500g、50%平均粒径(メジアン径)50μmのセラミック粒子を400g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。また、50%平均粒径(メジアン径)2.0μmのセラミック粒子を1400g、50%平均粒径(メジアン径)1.0μmのセラミック粒子を400g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。
【0050】
第1ブラスト処理では、第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.4MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度90°で5分間噴射した。第2ブラスト処理では、第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.3MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度60°で4分間噴射した。特殊研磨処理では、粉末ゴムに微細なダイヤモンド砥粒を積層した粒子を、0.2MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面上を滑走させた。なお、ここで、粉末ゴムの直径は0.1~0.8mmであり(平均直径は0.5mmであった。)、ダイヤモンド砥粒の直径は1.0~8.0μmであった(平均直径は4.0μmであった。)。また、特殊研磨処理の際、粒子の投射角度を被処理面に対して45°とし、その処理時間を8分とした。
【0051】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は1.024μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.129mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは1.630mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は1.759mL/m2であった(表1参照)。
【0052】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:1.024μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.128mL/m2
・コア部空間体積Vvc:1.659mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:1.787mL/m2
【0053】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【実施例0054】
1.ステンレス鋼板の粗面化処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して、第1湿式ブラスト処理、第2湿式ブラスト処理および特殊研磨処理をこの順序で施して、被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0055】
なお、上記処理に先立って各処理用の砥粒分散液を調整した。具体的には、50%平均粒径(メジアン径)400μmのセラミック粒子を1800g、50%平均粒径(メジアン径)100μmのセラミック粒子を300g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。また、50%平均粒径(メジアン径)2.0μmのセラミック粒子を1200g、50%平均粒径(メジアン径)1.0μmのセラミック粒子を600g、23L(23,000g)の水に添加して撹拌し、それを第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液とした。
【0056】
第1ブラスト処理では、第1湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.3MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度90°で5分間噴射した。第2ブラスト処理では、第2湿式ブラスト処理用の砥粒分散液を、0.4MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面に対して投射角度60°で4分間噴射した。特殊研磨処理では、粉末ゴムに微細なダイヤモンド砥粒を積層した粒子を、0.2MPaの圧縮空気で、ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面上を滑走させた。なお、ここで、粉末ゴムの直径は0.1~0.8mmであり(平均直径は0.5mmであった。)、ダイヤモンド砥粒の直径は1.0~8.0μmであった(平均直径は4.0μmであった。)。また、特殊研磨処理の際、粒子の投射角度を被処理面に対して45°とし、その処理時間を8分とした。
【0057】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は2.110μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.172mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは2.225mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は2.397mL/m2であった(表1参照)。
【0058】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:2.155μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.179mL/m2
・コア部空間体積Vvc:2.304mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:2.483mL/m2
【0059】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【0060】
(比較例1)
1.ステンレス鋼板の研磨処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して#400のバフ研磨を実施して、その被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0061】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の5点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は0.018μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.003mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは0.025mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.028mL/m2であった(表1参照)。
【0062】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:0.020μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.004mL/m2
・コア部空間体積Vvc:0.028mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.032mL/m2
【0063】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【0064】
(比較例2)
1.ステンレス鋼板の研磨処理
ステンレス鋼板(SUS304)の被処理面(130mm×100mm)に対して電解研磨を実施して、その被処理面を目的の粗面構造とした。なお、以下、このようにして得られたステンレス鋼板を「試験板」を称する。
【0065】
2.被処理面の表面特性
(1)算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcの測定
ISO 25178に基づいて上記試験板の被処理面の10点の算術平均高さSa、突出谷部空間体積Vvvおよびコア部空間体積Vvcを求めたところ、算術平均高さSaの中央値は0.196μmであった。また、その算術平均高さSaの中央値に対応する突出谷部空間体積Vvvは0.032mL/m2であり、コア部空間体積Vvcは0.127mL/m2であった(表1参照)。すなわち、突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和は0.159mL/m2であった(表1参照)。
【0066】
また、上記各パラメータ5点の平均値は以下の通りであった。
・算術平均高さSa:0.202μm
・突出谷部空間体積Vvv:0.030mL/m2
・コア部空間体積Vvc:0.190mL/m2
・突出谷部空間体積Vvvとコア部空間体積Vvcの和:0.220mL/m2
【0067】
(2)滑落試験
実施例1の「(2)滑落試験」と同様にして各物品の滑落角度を求めたところ、以下の表2に示される結果が得られた。
【0068】
【0069】
【0070】
[実施例および比較例で作製された試験板の滑落角度の比較検証]
表2から明らかなように、いずれの実施例に係る試験板も、いずれの比較例に係る試験板の滑落角度よりも低い滑落角度を示した。これは、実施例に係る試験板は、比較例に係る試験板よりも滑走性・滑落性に優れることを示している。なお、実施例1に係る試験板は、特にダンボール箱、アルミニウムパウチ、アルミニウム容器、ティーパックについて、比較例1および比較例2に係る試験板よりも優れた滑走性・滑落性を示した(表2および
図1参照)。また、実施例2に係る試験板は、特に包装箱(薬箱)、ペットボトル用キャップ、樹脂容器(目薬)、樹脂容器(汎用)について、比較例1および比較例2に係る試験板よりも優れた滑走性・滑落性を示した(表2および
図2参照)。また、実施例3に係る試験板は、特に包装袋(おしぼり)、包装袋(飴)、ゴム栓および紙コップについて、比較例1および比較例2に係る試験板よりも優れた滑走性・滑落性を示した(表3および
図2参照)。
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