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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178297
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A61B1/06 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085010
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】下田代 真哉
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161DD03
4C161NN01
4C161RR02
4C161RR23
(57)【要約】
【課題】発光素子により生体組織を照明中の任意のタイミングで発光素子の射出光量を補正することができる電子内視鏡システムを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、生体組織の照明のために照明光を出射する発光素子を備える光源装置と、撮像素子の露光のタイミングと照明光の点灯のタイミングを制御するとともに、照明光を制御するように構成されたプロセッサと、発光素子が出射する出射光を検出する光検出器と、を備えた電子内視鏡システムである。プロセッサは、撮像素子の撮像によって得られる画像の隣接するフレーム間に補正期間を設定する補正期間設定部と、補正期間内に発光素子から参照光を出射するように制御し、光検出器によって受光される参照光に基づいて発光素子から出射される照明光の光量を補正する補正部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、
前記生体組織の照明のために照明光を出射する発光素子を備える光源装置と、
前記撮像素子の露光のタイミングと前記照明光の点灯のタイミングを制御するとともに、前記照明光を制御するように構成されたプロセッサと、
前記発光素子が出射する出射光を検出する光検出器と、
を備え、
前記プロセッサは、
前記撮像素子の撮像によって得られる画像の隣接するフレーム間に補正期間を設定する補正期間設定部と、
前記補正期間内に前記発光素子から参照光を出射するように制御し、前記光検出器によって受光される前記参照光に基づいて前記発光素子から出射される照明光の光量を補正する補正部と、を有する、
電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記撮像素子は、前記生体組織の撮像をローリングシャッター方式で行うように構成され、
前記プロセッサは、電子シャッタにより前記撮像素子のライン毎の露光期間を設定する露光期間設定部を備え、
前記補正期間設定部は、N番目フレームの走査対象ラインの露光終了時刻からN+1番目フレームの前記電子シャッタによる露光開始時刻までの間に前記補正期間を設定する、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記撮像素子の撮像によって得られる画像の連続する複数フレームは、表示用画像として使用される表示用フレームと、表示用画像として使用されない非表示用フレームと、を含み、
前記プロセッサは、電子シャッタにより前記撮像素子の走査対象ラインに対する露光期間を設定する露光期間設定部を備え、
前記補正期間設定部は、N番目の表示用フレームの走査対象ラインの露光終了時刻からN+1番目の表示用フレームの前記電子シャッタによる露光開始時刻までの間に前記補正期間を設定する、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記撮像素子の撮像によって得られる画像の連続する複数フレームは、表示用画像として使用される表示用フレームと、表示用画像として使用されない非表示用フレームと、を含み、
前記補正期間設定部は、前記非表示用フレームを生成する期間内に前記補正期間を設定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記表示用フレームは偶数番目又は奇数番目のフレームであり、前記非表示用フレームは奇数番目又は偶数番目のフレームである、
請求項3又は4に記載された電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記補正部は、複数の前記補正期間においてそれぞれ出力レベルが異なる複数の参照光を前記発光素子から出射するように制御するとともに、前記光検出器によって受光される前記複数の参照光に基づいて前記発光素子から出射される照明光の光量を補正する、
請求項1から5のいずれか一項に記載された電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置を備えた電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内の生体組織を照明し、照明された体腔内の生体組織を被写体として撮像することにより、体腔内に潜む病変部の診断を行うのに好適な画像を生成することが可能な電子内視鏡システムが知られている。従来、照明光として白色光を発するキセノンランプやハロゲンランプ等のランプ光源が使用されていたが、最近では、ランプ光源に代えて、特定の波長帯域の光を発する発光ダイオード(LED:Light emitting diode)やレーザダイオード(LD:Laser diode)等の発光素子を有する半導体光源が用いられている。
【0003】
例えばLEDなどの発光素子は、経時劣化などで射出光量が徐々に低下することが知られている。そのため、システムを使用する前(つまり、被写体を撮像する前)に所定の発光パターンの光を射出させて発光素子の射出光量を補正したり、システムの使用中に発光素子の出射光を部分的に捕捉して発光素子の射出光量を補正したりすることが行われている。
後者の例として、特許文献1には、光源装置において、RGBの各色を発光するLEDの近傍に配置され、各LEDから発せられる各色の光量を露光期間において検知し、検知した光量を示す光量検知信号を生成して出力するRGBの各色用の光検出器が設けられ、制御部が、露光期間において出力される光量検知信号と、光量制御パターンとに基づいて、RGBの各色を発光するLEDを駆動させるための制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/056476号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の発光素子の射出光量の補正方法には、未だ改善の余地がある。
システムを使用する前に所定の発光パターンの光を射出させて発光素子の射出光量を補正する方法では、射出光量が少ない弱発光から射出横領の多い強発光までの全出力レンジで補正を行う場合、補正に長時間を要し不便である。他方、システムの使用中に発光素子の出射光を部分的に捕捉して発光素子の射出光量を補正する特許文献1の方法では、使用状況次第では発光素子の射出光量の全出力レンジでの補正が困難となる場合がある。例えば、気管支などの狭空洞観察では、発光素子の出射光が弱発光の状態が継続し、全出力レンジでの補正が困難である。
【0006】
そこで、本発明は、発光素子により生体組織を照明中の任意のタイミングで発光素子の射出光量を補正することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、前記生体組織の照明のために照明光を出射する発光素子を備える光源装置と、前記撮像素子の露光のタイミングと前記照明光の点灯のタイミングを制御するとともに、前記照明光を制御するように構成されたプロセッサと、前記発光素子が出射する出射光を検出する光検出器と、を備えた電子内視鏡システムである。
前記プロセッサは、前記撮像素子の撮像によって得られる画像の隣接するフレーム間に補正期間を設定する補正期間設定部と、前記補正期間内に前記発光素子から参照光を出射するように制御し、前記光検出器によって受光される前記参照光に基づいて前記発光素子から出射される照明光の光量を補正する補正部と、を有する。
【0008】
前記撮像素子は、前記生体組織の撮像をローリングシャッター方式で行うように構成され、前記プロセッサは、電子シャッタにより前記撮像素子のライン毎の露光期間を設定する露光期間設定部を備えてもよい。その場合、前記補正期間設定部は、N番目フレームの走査対象ラインの露光終了時刻からN+1番目フレームの前記電子シャッタによる露光開始時刻までの間に前記補正期間を設定してもよい。
【0009】
前記撮像素子の撮像によって得られる画像の連続する複数フレームは、表示用画像として使用される表示用フレームと、表示用画像として使用されない非表示用フレームと、を含んでもよい。その場合、前記プロセッサは、電子シャッタにより前記撮像素子の走査対象ラインに対する露光期間を設定する露光期間設定部を備え、前記補正期間設定部は、N番目の表示用フレームの走査対象ラインの露光終了時刻からN+1番目の表示用フレームの前記電子シャッタによる露光開始時刻までの間に前記補正期間を設定する。
【0010】
前記撮像素子の撮像によって得られる画像の連続する複数フレームが、表示用画像として使用される表示用フレームと、表示用画像として使用されない非表示用フレームと、を含む場合、前記補正期間設定部は、前記非表示用フレームを生成する期間内に前記補正期間を設定してもよい。
【0011】
前記表示用フレームは偶数番目又は奇数番目のフレームであり、前記非表示用フレームは奇数番目又は偶数番目のフレームであってもよい。
【0012】
前記補正部は、複数の前記補正期間においてそれぞれ出力レベルが異なる複数の参照光を前記発光素子から出射するように制御するとともに、前記光検出器によって受光される前記複数の参照光に基づいて前記発光素子から出射される照明光の光量を補正してもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述の電子内視鏡システムによれば、発光素子により生体組織を照明中の任意のタイミングで発光素子の射出光量を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】一実施形態の電源装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】一実施形態の内視鏡システムにおいて照明光の光量補正を行うための構成を示すブロック図である。
図4】参照光の点灯タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図5】参照光の点灯タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図6】参照光の点灯タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電子内視鏡システムについて添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
一実施形態の電子内視鏡システムは、電子内視鏡と、光源装置と、プロセッサとを備える。
電子内視鏡は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える。光源装置は、生体組織の照明のために照明光を出射する発光素子(発光ダイオードやレーザダイオード等)を備える。プロセッサは、撮像素子の露光のタイミングと、光源装置の発光素子による照明光の点灯のタイミングを制御するとともに、照明光を制御するように構成される。
一実施形態の電子内視鏡システムは、術者が患者の生体組織を観察中である場合等、生体組織を照明中の任意のタイミングで発光素子による照明光の光量を補正するため、発光素子が出射する出射光を検出する光検出器を備える。生体組織の観察に必要な照明光の出射光量とは無関係に広い出射光の光量レンジで補正を行うために、撮像素子によって生成される撮像画像に影響が生じないように、撮像画像の隣接するフレーム間に補正期間が設定される。この補正期間内に発光素子から補正のための出射光である参照光を出射するように制御される。出射された参照光は光検出器により検出され、検出結果が発光素子の光量補正に使用される。
【0016】
図1は、一実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、電子スコープ100、電子内視鏡用プロセッサ200、及び、モニタ300を備えている。
【0017】
電子内視鏡用プロセッサ200は、システムコントローラ202やタイミングコントローラ206を備えている。システムコントローラ202は、メモリ204に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1の全体を統括的に制御する。また、システムコントローラ202は、操作パネル208に入力されるユーザ(術者又は補助者)による指示に応じて電子内視鏡システム1の各種設定を変更する。タイミングコントローラ206は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0018】
電子内視鏡用プロセッサ200は、電子スコープ100に照明光を供給する光源装置230を備えている。照明光は、図示されない集光レンズにより集光された後、図示されない調光装置を介して電子スコープ100の光ファイバ素線の束であるLCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射されるように光源装置230は構成される。
光源装置230は、所定の色の波長帯域の光を出射する複数の発光ダイオード(以下、適宜「LED」と表記する。)を備える。LEDに代えてレーザダイオードを用いることもできる。LED及びレーザダイオードは、他の光源と比較して、低消費電力、発熱量が小さい等の特徴があるため、消費電力や発熱量を抑えつつ明るい画像を取得できるというメリットがある。明るい画像が取得できることにより、病変部の病変の程度に関する評価の精度を向上させることができる。
なお、図1に示す例では、光源装置230は、電子内視鏡用プロセッサ200に内蔵して設けられるが、電子内視鏡用プロセッサ200とは別体の装置として電子内視鏡システム1に設けられてもよい。また、光源装置230は、後述する電子スコープ100の先端部に設けられてもよい。この場合、照明光を導光するLCB102は不要である。
【0019】
入射端よりLCB102内に入射した照明光は、LCB102内を伝播して電子スコープ100の先端部内に配置されたLCB102の射出端より射出され、配光レンズ104を介して被写体に照射される。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
【0020】
撮像素子108は、例えば、IR(Infra Red)カットフィルタ108a、ベイヤ配列カラーフィルタ108bの各種フィルタが受光面に配置された単板式カラーCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上で結像した光学像に応じたR(Red)、G(Green)、B(Blue)の各原色信号を生成する。単板式カラーCCDイメージセンサの代わりに、単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることもできる。
【0021】
電子スコープ100の接続部内には、ドライバ信号処理回路152が備えられている。ドライバ信号処理回路152は、撮像素子108より入力される原色信号に対して色補間、マトリックス演算等の所定の信号処理を施して画像信号(輝度信号Y、色差信号Cb、Cr)を生成し、生成された画像信号を電子内視鏡用プロセッサ200の画像処理ユニット220に出力する。また、ドライバ信号処理回路152は、メモリ154にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。メモリ154に記録される電子スコープ100の固有情報には、例えば撮像素子108の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路152は、メモリ154より読み出された固有情報をシステムコントローラ202に出力する。このように、電子スコープ100は、撮像素子108を用いて、体腔内の生体組織を撮像する。
【0022】
システムコントローラ202は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、電子内視鏡用プロセッサ200に接続中の電子スコープ100に適した処理がなされるように電子内視鏡用プロセッサ200内の各回路の動作やタイミングを制御する。
【0023】
タイミングコントローラ206は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従ってクロックパルスで構成されたタイミング信号を生成し、このタイミング信号を、撮像素子108、ドライバ信号処理回路152、画像処理ユニット220、及び光源装置230に供給する。ドライバ信号処理回路152は、タイミングコントローラ206から供給されるタイミング信号のクロックパルスに従って駆動する。
【0024】
画像処理ユニット220は、システムコントローラ202による制御の下、タイミング信号に従がって、ドライバ信号処理回路152より入力した画像信号に基づいて内視鏡画像等をモニタ表示するためのビデオ信号を生成し、モニタ300に出力する。
【0025】
図2に、光源装置230のブロック図を示す。光源装置230は、第1~第4のLED111~114を備えている。第1~第4のLED111~114はそれぞれ、第1~第4LED駆動回路141~144によって個別に発光制御される。
【0026】
第1のLED111は、紫色の波長帯域(例えば、波長が395~435nm)の光を射出する紫色発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)である。第2のLED112は、青色の波長帯域(例えば、波長が430~470nm)の光を射出する青色LEDである。第3のLED113は、青色の波長帯域(例えば、波長が425~455nm)の光を射出する青色LEDと蛍光体を有している。蛍光体は、青色LEDから射出された青色LED光によって励起され、緑色の波長帯域(例えば、波長が460~600nm)の蛍光を発する。第4のLED114は、赤色の波長帯域(例えば、波長が620~680nm)の光を射出する赤色LEDである。
【0027】
各LED111~114の光の射出方向の前方にはそれぞれ、コリメートレンズ121~124が配置されている。第1のLED111から射出された紫色LED光は、コリメートレンズ121によって平行光に変換され、ダイクロイックミラー131に入射される。また、第2のLED112から射出されたLED光は、コリメートレンズ122によって平行光に変換され、ダイクロイックミラー131に入射される。ダイクロイックミラー131は、第1のLED111から射出された光の光路と、第2のLED112から射出された光の光路とを合成する。詳しくは、ダイクロイックミラー131は、波長430nm付近にカットオフ波長を有しており、カットオフ波長よりも短い波長の光を透過させ、カットオフ波長以上の波長の光を反射する特性を有している。そのため、第1のLED111から射出された紫色LED光はダイクロイックミラー131を透過し、第2のLED112から青色LED光はダイクロイックミラー131で反射される。これにより、紫色LED光と青色LED光の光路が合成される。ダイクロイックミラー131によって光路が合成された光は、ダイクロイックミラー132に入射される。
【0028】
また、第3のLED113から射出された光、すなわち、青色LED光及び緑色の蛍光は、コリメートレンズ123によって平行光に変換され、ダイクロイックミラー132に入射される。ダイクロイックミラー132は、ダイクロイックミラー131から入射された光の光路と、第3のLED113から射出された光の光路とを合成する。詳しくは、ダイクロイックミラー132は、波長500nm付近にカットオフ波長を有しており、カットオフ波長よりも短い波長の光を透過させ、カットオフ波長以上の波長の光を反射する特性を有している。そのため、ダイクロイックミラー131から入射された紫色LED光及び青色LED光と、第3のLED113から射出された光のうち、緑色の蛍光は、ダイクロイックミラー132によってその光路が合成される。ダイクロイックミラー132によって光路が合成された光は、ダイクロイックミラー133に入射される。
【0029】
また、第4のLED114から射出された赤色LED光は、コリメートレンズ124によって平行光に変換され、ダイクロイックミラー133に入射される。ダイクロイックミラー133は、ダイクロイックミラー132から入射された光の光路と、第4のLED114から射出され赤色LED光の光路とを合成する。詳しくは、ダイクロイックミラー133は、波長600nm付近にカットオフ波長を有しており、カットオフ波長よりも短い波長の光を透過させ、カットオフ波長以上の波長の光を反射する特性を有している。そのため、ダイクロイックミラー132から入射された光と、第4のLED114から射出された赤色LED光は、ダイクロイックミラー133によってその光路が合成され、光源装置230から照明光Lとして射出される。
【0030】
光源装置230から射出された照明光Lは、集光レンズ25によりLCB102の入射端面に集光されてLCB102内に入射される。
光検出器156は、照明光Lの一部を検出するように構成されている。光検出器156は、検出した照明光Lの一部を電気信号に光電変換する。変換後の電気信号はシステムコントローラ202に送られ、光源装置230から射出される照明光Lの光量補正に利用される。
【0031】
次に、図3を参照して、光源装置230から射出される照明光Lの光量補正を行うための構成について説明する。図3は、システムコントローラ202の内部構成と、光量補正に関連するシステムコントローラ202以外の部分とを含む機能ブロック図である。
図3に示すように、システムコントローラ202は、露光期間設定部21と、補正期間設定部22と、補正部23とを含む。
露光期間設定部21は、電子シャッタにより撮像素子108のライン毎の露光期間を設定する。
補正期間設定部22は、撮像素子108の撮像によって得られる画像の隣接するフレーム間に補正期間を設定する。
補正部23は、補正期間T内に光源装置230のLEDから参照光を出射するように制御し、光検出器156によって受光される参照光に基づいてLED111~114から出射される照明光の光量を補正する。
これらの各部は、例えば、システムコントローラ202に内蔵するマイクロコントローラがプログラムを実行することで実現されてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0032】
一実施形態では、撮像素子108は、CMOSイメージセンサであり、生体組織の撮像をローリングシャッター方式で行うように構成される。この実施形態では、ローリングシャッター方式で撮像を行う場合に、露光のタイミングを調整することで隣接するフレーム間に補正期間を設定する。この補正期間は露光が行われない期間として設けられるため、光源装置230による照明光の光量の補正を行うための参照光を出射することができる。
【0033】
具体的な補正期間の設定方法について、図4を参照して説明する。
図4(a)は、参考として、タイミング調整を行わない場合の露光タイミングを示している。図4(b)は、一実施形態の露光タイミングを示している。図4(a)及び図4(b)の縦方向は、ライン走査方向である。図4以降の各図では、ROは1フレームのラインごとの電荷読出しタイミングを示す。
図4(c)は、一実施形態の照明光の点灯(ON)及び消灯(OFF)のタイミングを示している。なお、図4(c)のタイミングチャートの縦軸は、補正期間に出射される参照光のためにLEDに与える駆動パルス電流Pn-1,P,Pn+1のレベルをも示している。
【0034】
図4(a)に示すように、タイミング調整を行わない場合には、全ラインの露光期間が重複することがないように各ラインの露光タイミングが設定されている。それに対して一実施形態では、図4(b)に示すように有効ラインをEL~ELの間に限定することで、グローバル露光期間(時刻t1~t2の期間,時刻t3~t4の期間,時刻t5~t6の期間,…)を設定するとともに、電子シャッタを設定する。電子シャッタが開いている期間は、タイミングSS~SEの間である。このように設定することで、時刻t1,t3,t5,…から電子シャッタが開くまでの間、モニタ300の表示画像に影響を与えない補正期間Tを周期的に設けることができる。図4(b)において、N-1番目フレームの点灯期間Fn-1、N番目フレームの点灯期間F、N+1番目フレームの点灯期間Fn+1を示しているが、補正期間Tは、隣接するフレームの点灯期間の間に設定される。
すなわち、一実施形態では、露光期間設定部21は、電子シャッタにより撮像素子108のライン毎の露光期間を設定する。補正期間設定部22は、N番目フレームの走査対象ラインの露光終了時刻SEからN+1番目フレームの電子シャッタが開くタイミングSSまでの間に補正期間Tを設定する。
【0035】
図3に示すように、補正部23は、光検出器156から送られる電気信号(照明光Lの一部を光電変換した信号)に基づいて、光源装置230内のLED駆動回路141~144を制御し、それによって、LED111~114から出射される照明光の光量を補正する。
好ましくは、補正部23は、複数の補正期間Tにおいてそれぞれ出力レベルが異なる複数の参照光をLED111~114から出射するようにLED駆動回路141~144を制御するとともに、光検出器156によって受光される複数の参照光に基づいてLED111~114から出射される照明光の光量を補正する。例えば、図4では、各補正期間Tにおいて出力レベルが異なる参照光を出射させるために各LEDに異なる駆動パルス電流Pn-1,P,Pn+1を与える場合が想定される。出力レベルが異なる参照光を出射することで、補正部23は、パルス電流に対するLEDの出力(光量)の線形性について補正することができる。
【0036】
複数の異なる駆動パルス電流Pn-1,P,Pn+1により出射される参照光により照明光の光量を補正する場合、補正部23は、パルス電流と、当該パルス電流による参照光の光量の目標値との関係を示すデータを予め記憶しておく。そして、補正期間TにおいてLEDに与えたパルス電流の値に対応する参照光の光量の目標値と、光検出器156によって検出された参照光の光量(検出値)との差分に基づいて、LED駆動回路における信号増幅率等のパラメータを補正する。
【0037】
図4(b)は、有効ラインをEL~ELの間に限定してグローバル露光期間を設定した例を示しているが、ビニング読み出しを行うことによってグローバル露光期間を設定することもできる。ビニング読み出しでは、周辺の同色画素を加算してから電荷転送を行うため、加算後の見かけ上の画素数が減少し、電荷転送時間が通常の読み出しよりも短縮されるため、グローバル露光期間を設定することができる。
【0038】
別の実施形態として、電子シャッタに依存しないようにして補正期間Tを設定する方法を採ることもできる。つまり、露光期間設定部21を設けることは必須ではない。電子シャッタに依存しないようにして補正期間Tを設定する方法について、図5を参照して説明する。
図5に示す実施形態では、表示用フレーム(Fn-1,Fn+1)は偶数番目又は奇数番目のフレームであり、非表示用フレームは奇数番目又は偶数番目のフレームであり、1/60秒単位で撮像素子108が駆動される。この場合、例えば30fps(frames per second)でモニタ300での表示が行われる。
図4(b)と同様に、図5(a)においても、有効ラインをEL~ELの間に限定することで、時刻t1~t2、時刻t5~t6の間にグローバル露出期間を設定し、この期間に照明光を点灯させる(図5(b)のON)。非表示用フレームの期間(図5に示す例では、時刻t3~t4)に補正期間Tを設定し、この補正期間Tの間に駆動パルス電流Pを各LEDに与える。
なお、表示用フレームと非表示用フレームは、1フレームごとに交互に設定することに限定されない。例えば、隣接する表示用フレームの間に非表示用フレームを複数配置することもできる。
【0039】
さらに別の実施形態として、グローバル露光期間を設定しないようにして補正期間Tを設定する方法を採ることもできる。この方法について図6を参照して説明する。
この実施形態においても図5の実施形態と同様に、表示用フレーム(各フレームに対する点灯期間をFn-1,Fn+1で示す。)は偶数番目又は奇数番目のフレームであり、非表示用フレームは奇数番目又は偶数番目のフレームであり、1/60秒単位で撮像素子108が駆動される。この場合、例えば30fps(frames per second)でモニタ300での表示が行われる。
図5の実施形態と異なるのは、図6の実施形態では、有効ラインを限定せず、グローバル露光期間を設定しない点にある。その代わり、露光期間設定部21は、電子シャッタにより撮像素子108の走査対象ラインに対する露光期間を設定する。具体的には、図6(a)に示すように、表示用フレームに対して、露光期間中に電子シャッタを設定する。電子シャッタが開いている期間は、タイミングSS~SEの間である。そして、補正期間設定部22は、全走査対象ラインの最後端のタイミング(時刻t2)から電子シャッタ開始端(時刻t3)の間に補正期間Tを設ける。
【0040】
以上説明したように、実施形態の電子内視鏡システムによれば、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、生体組織の照明のために照明光を出射するLEDを備える光源装置と、撮像素子の露光のタイミングと照明光の点灯のタイミングを制御するとともに、照明光を制御するように構成されたプロセッサと、を備える。
電子内視鏡システムはさらに、光源装置のLEDが出射する出射光を検出する光検出器を備え、プロセッサは、光検出器により受光される参照光に基づいて、LEDから出射される照明光の光量を補正する。このとき、プロセッサは、撮像素子の撮像によって得られる画像の隣接するフレーム間に補正期間を設定する。そのため、実施形態に係る電子内視鏡システムによれば、LEDにより生体組織を照明中の任意のタイミングでLEDの射出光量を補正することができる。したがって、例えば、気管支等の狭空洞観察などLEDの出射光が弱発光の状態が継続する状況であっても、LEDの射出光量の全出力レンジでの補正を実時間で行うことができる。
【0041】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
1…電子内視鏡システム
100…電子スコープ
102…LCB
104…配向レンズ
106…対物レンズ
108…撮像素子
108a…カットフィルタ
108b…ベイヤ配列カラーフィルタ
152…ドライバ信号処理回路
21…露光期間設定部
22…補正期間設定部
23…補正部
25…集光レンズ
100…電子スコープ
104…配光レンズ
106…対物レンズ
111~114…LED
121~124…コリメートレンズ
131~133…ダイクロイックミラー
141~144…LED駆動回路
152…ドライバ信号処理回路
154…メモリ
156…光検出器
200…電子内視鏡用プロセッサ
202…システムコントローラ
204…メモリ
206…タイミングコントローラ
208…操作パネル
220…画像処理ユニット
230…光源装置
300…モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6