(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178313
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】燃料ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20221125BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085039
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田邊 稔
(72)【発明者】
【氏名】楊 帆
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA14
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA24
3E172EA35
3E172EA48
3E172EB02
3E172EB17
3E172KA03
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】第1継手と第2継手とが不必要に分離することを抑制できる燃料ガス充填装置を提供する。
【解決手段】ワイヤ34は、充填ノズル7とディスペンサ筐体4との間を接続する。第1継手36は、充填ノズル7側のワイヤとなる第1ワイヤ34Aに接続されている。第2継手37は、ディスペンサ筐体4側のワイヤとなる第2ワイヤ34Bに接続されている。シェアピン38は、第1継手36と第2継手37とを締結する。引っ張りコイルばね39は、第1継手36と第2継手37との間に設けられている。引っ張りコイルばね39は、第1継手36が第2継手37より分離する方向とは逆方向の力を付与する。第2継手37には、長孔37Cが設けられている。長孔37Cは、第1継手36と第2継手37とが相対変位したときに、第2継手37に対してシェアピン38が相対変位することを許容する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管路とガス供給接続路により接続された充填ノズルと、筐体と、を備え、前記充填ノズルを用いて車両の燃料タンクへ燃料ガスを充填する燃料ガス充填装置において、
緊急時に、前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路、または、前記充填ノズル側の前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路側の前記ガス供給接続路とを分離させる分離手段と、
前記充填ノズルと前記筐体との間を接続するワイヤと、
前記充填ノズルまたは前記充填ノズル側の前記ワイヤに接続された第1継手と、
前記筐体または前記筐体側の前記ワイヤに接続された第2継手と、
前記第1継手と前記第2継手とを締結する締結部材と、
前記第1継手と前記第2継手との間に設けられ、前記第1継手が前記第2継手より分離する方向とは逆方向の力を付与する弾性部材と、
前記第1継手と前記第2継手とのうちの一方の継手に設けられ、前記第1継手と前記第2継手とが相対変位したときに、前記一方の継手に対して前記締結部材が変位することを許容する孔と、
を備えたことを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項2】
ガス供給管路とガス供給接続路により接続された充填ノズルと、筐体と、を備え、前記充填ノズルを用いて車両の燃料タンクへ燃料ガスを充填する燃料ガス充填装置において、
緊急時に、前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路、または、前記充填ノズル側の前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路側の前記ガス供給接続路とを分離させる分離手段と、
前記充填ノズルと前記筐体との間を接続するワイヤと、
前記充填ノズルまたは前記充填ノズル側の前記ワイヤに接続された第1継手と、
前記筐体または前記筐体側の前記ワイヤに接続された第2継手と、
前記第1継手と前記第2継手とを締結する第1締結部材と、
前記第1継手と前記第2継手とのうちの一方の継手に設けられ、前記第1締結部材から外れた位置で前記第1継手と前記第2継手とが相対変位する方向に延びる窪み部と、
前記窪み部内に設けられ、前記第1締結部材が破断したときに、前記窪み部と係合することにより前記第1継手と前記第2継手とが締結した状態を維持する第2締結部材と、
を備えたことを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項3】
前記第1継手と前記第2継手とのうちの一方の継手には、前記第1締結部材が破断したときに、前記第1継手と前記第2継手とのうちの他方の継手から露出することにより、前記第1締結部材が破断したことを報知する報知部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の燃料ガス充填装置。
【請求項4】
前記第1継手と前記第2継手との間には、前記第1継手と前記第2継手とが分離する方向の力を付与する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の燃料ガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、車両の燃料タンクに水素ガス等の燃料ガスを充填する燃料ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両の燃料タンクに水素ガス等の燃料ガスを充填する燃料ガス充填装置が記載されている。特許文献1の燃料ガス充填装置は、ディスペンサ筐体の上部にアームが設けられており、このアームから繰り出されるワイヤに充填ノズルが接続されている。これにより、特許文献1の燃料ガス充填装置は、充填ノズルが車両または作業員の手から落下しても、地面に衝突してしまうことを抑制できる。特許文献1の燃料ガス充填装置の場合、アームとワイヤとの接続部には、充填ノズルに対して過剰な外力が付加された場合に接続を解除させる解除機構(中間連結具38のコネクタ38A)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の解除機構は、合成樹脂材料からなる脆弱性のコネクタにより構成されている。これに対して、解除機構として、例えば、分離継手、即ち、分離可能な第1継手と第2継手とをシェアピンで接続する構成が考えられる。この構成によれば、充填ノズルに対して過剰な外力が付加された場合に、シェアピンが破断することにより、第1継手と第2継手とを分離させることができる。しかし、このような構成の場合、例えば、作業員の手から充填ノズルが落下したとき等に、この落下に伴う衝撃がシェアピンに加わり、シェアピンが疲労(例えば、金属疲労)する可能性がある。これにより、燃料ガスの充填中に車両が誤発進する等の緊急時でないにも関わらず、疲労に起因してシェアピンが破断(疲労破壊)することにより、第1継手と第2継手とが分離する可能性がある。
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、第1継手と第2継手とが緊急時でないにも関わらず、分離することを抑制できる燃料ガス充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、ガス供給管路とガス供給接続路により接続された充填ノズルと、筐体と、を備え、前記充填ノズルを用いて車両の燃料タンクへ燃料ガスを充填する燃料ガス充填装置において、緊急時に、前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路、または、前記充填ノズル側の前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路側の前記ガス供給接続路とを分離させる分離手段と、前記充填ノズルと前記筐体との間を接続するワイヤと、前記充填ノズルまたは前記充填ノズル側の前記ワイヤに接続された第1継手と、前記筐体または前記筐体側の前記ワイヤに接続された第2継手と、前記第1継手と前記第2継手とを締結する締結部材と、前記第1継手と前記第2継手との間に設けられ、前記第1継手が前記第2継手より分離する方向とは逆方向の力を付与する弾性部材と、前記第1継手と前記第2継手とのうちの一方の継手に設けられ、前記第1継手と前記第2継手とが相対変位したときに、前記一方の継手に対して前記締結部材が変位することを許容する孔と、を備える。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、ガス供給管路とガス供給接続路により接続された充填ノズルと、筐体と、を備え、前記充填ノズルを用いて車両の燃料タンクへ燃料ガスを充填する燃料ガス充填装置において、緊急時に、前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路、または、前記充填ノズル側の前記ガス供給接続路と前記ガス供給管路側の前記ガス供給接続路とを分離させる分離手段と、前記充填ノズルと前記筐体との間を接続するワイヤと、前記充填ノズルまたは前記充填ノズル側の前記ワイヤに接続された第1継手と、前記筐体または前記筐体側の前記ワイヤに接続された第2継手と、前記第1継手と前記第2継手とを締結する第1締結部材と、前記第1継手と前記第2継手とのうちの一方の継手に設けられ、前記第1締結部材から外れた位置で前記第1継手と前記第2継手とが相対変位する方向に延びる窪み部と、前記窪み部内に設けられ、前記第1締結部材が破断したときに、前記窪み部と係合することにより前記第1継手と前記第2継手とが締結した状態を維持する第2締結部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、第1継手と第2継手とが不必要に分離することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態による燃料ガス充填装置を模式的に示す全体構成図である。
【
図2】
図1中のディスペンサユニットを前側からみた正面図である。
【
図3】
図1中のディスペンサユニットを示す斜視図である。
【
図4】
図2の左側からディスペンサユニットをみた左側面図である。
【
図5】第1の実施形態によるワイヤ、第1継手、第2継手、締結部材等を3つの異なる状態でそれぞれ示す縦断面図である。
【
図6】第1継手および第2継手を
図5中の矢示VI-VI方向からみた横断面図である。
【
図7】第1継手および第2継手の断面形状の別例を示す
図6と同様位置の横断面図である。
【
図8】第2の実施形態によるワイヤ、第1継手、第2継手、第1締結部材、第2締結部材等を3つの異なる状態でそれぞれ示す縦断面図である。
【
図9】第1の変形例によるワイヤ、第1継手、第2継手、第1締結部材、第2締結部材等を示す縦断面図である。
【
図10】第2の変形例によるワイヤ、第1継手、第2継手、第1締結部材、第2締結部材等を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態による燃料ガス充填装置として、車両の燃料タンク(被充填タンク)に水素ガスを充填する車両用の水素ガス充填装置を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
【0011】
図1ないし
図6は、第1の実施形態を示している。
図1において、水素ガス充填装置1は、例えば、燃料電池自動車等の車両71の燃料タンク72(以下、被充填タンク72という)に、圧縮状態の水素ガス(燃料ガス、充填ガス)を充填する。車両用の水素ガス充填装置1は、例えば、水素ガス供給ステーションと呼ばれる設備(燃料供給所)に設置されている。水素ガス充填装置1は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部(貯蔵タンク)としてのガス蓄圧器2と、ガス蓄圧器2からの水素ガスを車両71の被充填タンク72に充填する充填機構としてのディスペンサユニット3と、ガス蓄圧器2からディスペンサユニット3のディスペンサ筐体4内にわたって延びる水素ガス供給管路5とを含んで構成されている。
【0012】
ガス蓄圧器2は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵する水素ガスの供給源である。即ち、蓄圧器としてのガス蓄圧器2には、燃料ガスとなる水素ガスが蓄圧されている。ガス蓄圧器2は、ディスペンサユニット3に接続されている。ガス蓄圧器2は、水素ガス供給管路5の上流側で、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部を構成している。ディスペンサユニット3は、ディスペンサ筐体4、ガス供給接続路としての充填ホース6、充填ノズル7、ノズル掛け9、流量調整弁12、遮断弁13、熱交換器15、流量計17、圧力センサ18、温度センサ19、充填開始スイッチ20、充填停止スイッチ21、脱圧弁23、コントローラ(コントロールユニット)となる制御装置24(制御回路)を含んで構成されている。
【0013】
筐体としてのディスペンサ筐体4は、ディスペンサユニット3の外形をなす建屋(箱体)を構成するもので、例えば、上下方向に長尺な直方体状(ボックス状)に形成されている。ディスペンサ筐体4内には、水素ガス供給管路5、流量調整弁12、遮断弁13、熱交換器15、圧力センサ18、温度センサ19、制御装置24等が収容されている。ディスペンサ筐体4のうち、水素ガスの充填作業を行う作業者や顧客と対面する前面側には、表示器としての表示部25が設けられている。表示部25は、例えば、液晶モニタ、液晶タッチパネル等により構成されている。
【0014】
ディスペンサ筐体4の側面側には、充填ノズル7が取外し可能に掛止めされるノズル掛け9が設けられている。ノズル掛け9は、充填ノズル7を保持する保持部に相当する。充填ノズル7は、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)にノズル掛け9に掛止めされる。水素ガスを充填するときは、充填作業の作業者によりノズル掛け9から充填ノズル7が取外される。
【0015】
図1に示すように、水素ガス供給管路5は、ディスペンサ筐体4内に配設され、加圧状態の水素ガスをガス蓄圧器2から充填ホース6側に向けて供給する。このために、ガス供給管路としての水素ガス供給管路5は、上流側がガス蓄圧器2に接続されている。即ち、水素ガス供給管路5は、ガス蓄圧器2側が上流側となり、充填ホース6側が下流側となっている。水素ガス供給管路5の下流側の端部には、ディスペンサ筐体4の外部へと延びる燃料ホースとしての充填ホース6が接続されている。充填ホース6は、可撓性を有する耐圧ホースが用いられている。充填ホース6は、基端側が水素ガス供給管路5の下流端に接続されている。充填ホース6の先端には、被充填タンク72の充填口72Aに連結される充填ノズル7が設けられている。
【0016】
図3および
図4に示すように、充填ホース6は、充填ノズル7側のホースとなる第1ホース6Aと、ディスペンサ筐体4側(換言すれば、水素ガス供給管路5側)のホースとなる第2ホース6Bとを備えている。これら第1ホース6Aと第2ホース6Bは、緊急離脱カップリング8を介して接続されている。充填ノズル7側の第1ホース6Aは、先端側に充填ノズル7が接続されている。第1ホース6Aの基端側は、緊急離脱カップリング8のノズル側継手8Aに接続されている。ディスペンサ筐体4側の第2ホース6Bは、先端側に緊急離脱カップリング8の筐体側継手8Bが接続されている。第2ホース6Bの基端側は、水素ガス供給管路5の下流端に接続されている。充填ホース6は、水素ガス供給管路5と共に、水素ガス充填経路(燃料ガス充填経路)を構成している。水素ガス充填経路は、水素ガスを燃料として走行する車両71に搭載された被充填タンク72にガスを充填するための経路(管路)である。
【0017】
緊急離脱カップリング8は、ガス供給接続路となる充填ホース6の途中位置、即ち、充填ノズル7側の第1ホース6Aとディスペンサ筐体4側(換言すれば、水素ガス供給管路5側)の第2ホース6Bとの間に設けられている。緊急離脱カップリング8は、第1ホース6Aと第2ホース6Bとを接続しており、緊急時に分離する安全装置である。緊急離脱カップリング8は、例えば、水素ガスの充填中または充填終了後に車両71が誤発進したときに、充填ホース6が強い力で引っ張られることにより分離する。緊急離脱カップリング8は、分離したときに充填ホース6から水素ガスが放出されることを阻止する弁体(遮断弁)が内部に設けられている。なお、第2ホース6Bは、筐体となるディスペンサ筐体4内より延設された水素ガス供給管路5であってもよい。
【0018】
緊急離脱カップリング8は、充填ノズル7側の第1ホース6Aに接続されたノズル側継手8Aと、ディスペンサ筐体4側(換言すれば、水素ガス供給管路5側)の第2ホース6Bに接続された筐体側継手8Bと、これらノズル側継手8Aと筐体側継手8Bとの間に設けられた仮接続部材となるシェアピン(図示せず)とを備えている。シェアピンは、緊急時に、即ち、ノズル側継手8Aと筐体側継手8Bとの間に大きな力が加わったときに、破断することにより、ノズル側継手8Aと筐体側継手8Bとが分離することを許容する。このように、緊急離脱カップリング8は、緊急時に、充填ノズル7側の第1ホース6Aと水素ガス供給管路5側の第2ホース6Bとを分離させる分離手段である。
【0019】
充填ノズル7は、充填ホース6(第1ホース6A)の先端側に気密状態で接続されており、所謂充填カップリングを構成している。充填ノズル7は、ディスペンサ筐体4(より具体的には、水素ガス供給管路5)と充填ホース6(ホース6A,6B)により接続されている。充填ノズル7には、開閉弁(図示せず)が内蔵されている。開閉弁は、水素ガスの流通を許可する「開位置」と水素ガスの流通を遮断する「閉位置」とに切換えられる。
【0020】
図1に示すように、充填ノズル7の先端側は、接続カプラ7Aとなっており、被充填タンク72の接続口となる充填口72Aに着脱可能に接続される。即ち、充填ノズル7の接続カプラ7Aは、充填ノズル7内の管路を通じて車両71の被充填タンク72に水素ガスを供給するときに、被充填タンク72の充填口72Aに気密状態で着脱可能に接続される。また、充填ノズル7は、被充填タンク72の充填口72Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、充填ノズル7は、水素ガスの充填時に充填口72Aから不用意に外れることを抑制できる。
【0021】
ガス蓄圧器2内の高圧な水素ガスは、充填ノズル7が被充填タンク72の充填口72Aに対してロック機構によりロックされた状態で、水素ガス供給管路5、充填ホース6および充填ノズル7を通じて車両71の被充填タンク72に充填される。即ち、水素ガス充填装置1は、充填ノズル7と、ディスペンサ筐体4とを備えており、充填ノズル7を用いて車両71の被充填タンク72へ水素ガスを充填する。充填ノズル7は、充填作業が行われていないときに、ノズル掛け9に保持される。
【0022】
図1に示すように、ディスペンサユニット3には、それぞれ水素ガス供給管路5の途中に位置して、例えば手動操作により開,閉される入口弁11と、入口弁11の下流側に接続され制御装置24によって開,閉弁されることにより水素ガス供給管路5を流れる燃料の流量を調整可能に制御する制御弁としての流量調整弁12と、流量調整弁12よりも下流側に接続された弁装置である遮断弁13とが設けられている。なお、水素ガス供給管路5の上流側から下流側に向けて設けられている流量計17、流量調整弁12、遮断弁13の配置(取付けの順番)は、
図1中に示した順番に限定されるものではない。
【0023】
入口弁11は、ディスペンサ筐体4内に位置して水素ガス供給管路5の途中に設けられている。なお、入口弁11は、必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを省略してもよい。流量調整弁12および遮断弁13は、水素ガス供給管路5を流れる水素ガスの流れ(即ち、流量、圧力)を制御する制御機器を構成している。流量計17、圧力センサ18および温度センサ19は、水素ガス供給管路5を流れる水素ガスの状況(即ち、流量、圧力、温度)を計測する計測機器を構成している。
【0024】
ディスペンサユニット3内に設けられた流量調整弁12は、例えば空圧作動式の弁装置であり、エアの供給で開弁し、制御信号(制御電流)で制御圧(エア圧)を制御して弁開度が調整される。流量調整弁12は、制御装置24の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、水素ガス供給管路5内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。
【0025】
遮断弁13は、水素ガス供給管路5の途中部位(例えば、流量調整弁12と冷却器14との間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁13は、制御装置24からの制御信号に基づいて開閉されることにより、水素ガス供給管路5内で水素ガス(燃料ガス、充填ガス)の流通を許容または遮断する。
【0026】
即ち、制御装置24は、充填ノズル7を介して車両71の被充填タンク72に水素ガスを充填するとき、または、水素ガスの充填を停止(終了)するときに、流量調整弁12と遮断弁13との開閉弁制御を行う。流量調整弁12および遮断弁13は、水素ガス供給管路5の途中に設けられており、開弁することによりガス蓄圧器2内の水素ガスを充填ノズル7へ供給する供給制御弁に相当する。
【0027】
冷却器14は、水素ガス供給管路5内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器14は、被充填タンク72に充填される水素ガスの温度上昇を抑えるため、水素ガス供給管路5の途中位置で水素ガスを冷却する。即ち、冷却器14は、水素ガス供給管路5を介して車両71(被充填タンク72)に供給される水素ガスを冷却する。冷却器14は、遮断弁13と温度センサ19との間に位置して水素ガス供給管路5の途中部位に設けられた熱交換器15と、熱交換器15に冷媒管路14A,14Bを介して接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構(図示せず)を備えたチラーユニット16とを含んで構成されている。
【0028】
冷却器14には、チラーユニット16から熱交換器15側に向けて冷媒(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を供給する供給側の冷媒管路14Aと、熱交換器15からチラーユニット16側に向けて熱交換後の冷媒を戻す戻り側の冷媒管路14Bとが設けられている。チラーユニット16は、冷媒管路14A,14Bを介して熱交換器15との間に冷媒を循環させる。これにより、冷却器14の熱交換器15は、水素ガス供給管路5内を流れる水素ガスと冷媒との間で熱交換を行い、充填ホース6に向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
【0029】
ディスペンサ筐体4内には、水素ガス供給管路5の途中に位置して被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計17が設けられている。流量計17は、例えば入口弁11と流量調整弁12との間で水素ガス供給管路5内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果(検出信号)を制御装置24へと出力する。制御装置24は、車両71の被充填タンク72に対する水素ガスの充填量を演算し、水素ガス燃料の払出し量(給油量に相当)を表示部25等で表示する。これにより、例えば顧客等に表示内容を報知する。
【0030】
圧力センサ18は、遮断弁13よりも下流側(即ち、充填ノズル7側)の水素ガス供給管路5に設けられている。圧力センサ18は、ガス蓄圧器2から供給される水素ガスの圧力(即ち、被充填タンク72の圧力、または、被充填タンク72内の圧力にほぼ相当する管路途中の圧力)を検知する。圧力センサ18は、充填ノズル7の近傍で水素ガス供給管路5内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置24へと出力する。
【0031】
温度センサ19は、遮断弁13と圧力センサ18との間に位置して水素ガス供給管路5の途中に設けられている。温度センサ19は、水素ガス供給管路5内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出結果(検出信号)を制御装置24へと出力する。なお、温度センサ19と圧力センサ18との配置関係は、
図1に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0032】
充填開始スイッチ20と充填停止スイッチ21は、例えばディスペンサ筐体4の前面側に設けられている。充填開始スイッチ20および充填停止スイッチ21は、例えば燃料供給所(水素ステーション)の作業者が手動操作可能なスイッチである。充填開始スイッチ20は、水素ガスの充填を開始するときに操作される。充填停止スイッチ21は、水素ガスの充填中にガスの充填を停止するときに操作される。充填開始スイッチ20と充填停止スイッチ21は、操作状態に応じた信号を制御装置24にそれぞれ出力する。これにより、制御装置24は、これらの信号に応じて遮断弁13を開弁または閉弁させる。
【0033】
水素ガス供給管路5の遮断弁13よりも下流側には、例えば充填ホース6側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路22が分岐して設けられている。脱圧管路22の途中には、例えば電磁式または空圧作動式の弁装置である脱圧弁23が設けられている。脱圧弁23は、充填ホース6(充填ノズル7)を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁13が閉弁されたときに、制御装置24からの信号に基づいて開弁制御される。脱圧弁23は、ノーマルクローズ弁である。
【0034】
充填ノズル7の接続カプラ7Aを被充填タンク72の充填口72Aから取外す場合には、充填ホース6内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁23を一時的に開弁して脱圧管路22の先端側を大気に開放させる。これにより、充填ホース6側の水素ガスは、外部に放出されて充填ホース6内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、充填ノズル7の接続カプラ7Aは、被充填タンク72の充填口72Aから取外し可能となる。
【0035】
制御装置24は、流量調整弁12、遮断弁13、脱圧弁23、表示部25等を制御するコントローラ(コントロールユニット)である。制御装置24は、流量調整弁12および遮断弁13の制御を行うことにより充填対象となる被充填タンク72への燃料供給を制御する。即ち、制御装置24は、供給制御弁となる流量調整弁12および遮断弁13を開閉制御することにより、車両71の被充填タンク72への水素ガスの供給を制御する充填制御手段を構成している。制御装置24は、例えば、CPU(演算装置)、メモリ24A(記憶装置)、タイマ等を備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。
【0036】
制御装置24の入力側には、流量計17、圧力センサ18、温度センサ19、湿度センサ(図示せず)、充填開始スイッチ20、充填停止スイッチ21、ノズル検出器26等が接続されている。一方、制御装置24の出力側は、流量調整弁12、遮断弁13、脱圧弁23、表示部25等と接続されている。
【0037】
表示部25は、ディスペンサ筐体4の前面側に設けられている。表示部25は、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。ディスペンサ筐体4の前面側には、表示部25の他に充填開始スイッチ20、充填停止スイッチ21等の操作部が設けられている。
【0038】
ノズル掛け9には、ノズル検出器26が設けられている。ノズル検出器26は、充填ノズル7が掛止めされたか否かを検出する。ノズル検出器26は、制御装置24に接続されている。ノズル検出器26は、例えば、充填ノズル7をノズル掛け9に掛止めすると、充填ノズル7によって押動され、オン(ON)状態に切換わる。ノズル検出器26は、充填ノズル7がノズル掛け9から取出される(または取外される)と、オフ(OFF)状態に切換わる。
【0039】
ノズル検出器26は、充填ノズル7がノズル掛け9に掛止めされたか否かに対応する検出信号(ON信号またはOFF信号)を、制御装置24に出力する。なお、ノズル検出器26は、ディスペンサ筐体4側のノズル掛け9に設けるものに限らず、充填ノズル7側に設けてもよい。いずれの場合も、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)は、ディスペンサユニット3のノズル掛け9に充填ノズル7が保持される。即ち、車両71の被充填タンク72に水素ガスを充填する充填作業が終了すると、充填ノズル7は、ノズル掛け9に戻され、収容状態に保持される。
【0040】
水素ガスを燃料として走行駆動される車両71は、例えば
図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両71は、例えば燃料電池と電動モータとを含んで構成される駆動装置(図示せず)、
図1中に点線で示す被充填タンク72等を備えている。被充填タンク72は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成され、例えば車両71の後部側に搭載されている。なお、被充填タンク72は、車両71の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。
【0041】
被充填タンク72には、充填ノズル7の接続カプラ7Aが着脱可能に取付けられる充填口72A(レセプタクル)が設けられている。車両71の被充填タンク72内には、充填ノズル7が充填口72Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガスの充填が行われる。このとき、充填ノズル7は、ロック機構により充填口72Aに対して不用意に外れることがないようにロックされる。ディスペンサユニット3は、冷却された水素ガスを車両71の被充填タンク72に差圧を利用して充填する 。なお、充填口72Aには内部に逆止弁が設けられており、充填ノズル7から車両71の被充填タンク72への水素ガスの流通を許容し、被充填タンク72から充填ノズル7への水素ガスの流通を阻止する。
【0042】
図2ないし
図4に示すように、ディスペンサ筐体4には、ノズル吊り装置31が設けられている。ノズル吊り装置31は、充填ノズル7を索具となるワイヤ34を介して吊下する。ノズル吊り装置31は、充填ノズル7がワイヤ34にて吊り下げられることで、充填ノズル7と地面との衝突を防止または低減する装置である。ノズル吊り装置31は、ディスペンサ筐体4の上部に設けられている。ノズル吊り装置31は、ディスペンサ筐体4の上方位置で、垂直軸(例えば、
図2および
図4に示す中心O-O)を中心に回動可能となるよう(即ち、旋回可能)に配置されている。ノズル吊り装置31は、
図4に示すように、収納位置と繰出位置との間で充填ノズル7の位置に応じて伸縮可能となっている。
【0043】
このため、ノズル吊り装置31は、ディスペンサ筐体4の上部に旋回可能に設けられたアーム本体32と、長さ方向一側(基端側)がアーム本体32内に収納され長さ方向他側(先端側)がアーム本体32から伸縮可能に繰出される繰出アーム33と、繰出アーム27から下側に向けて延び充填ノズル7に接続されたワイヤ34とを含んで構成されている。
図4に示すように、ワイヤ34は、繰出アーム33の先端から下方に吊下され、この状態で充填ノズル7がガス充填所の地面に接触(衝突)することがないように、予め決められたワイヤ長に形成されている。
【0044】
ところで、ワイヤ34の強度が緊急離脱カップリング8の分離力よりも強いと、車両71の誤発進等の緊急時に、緊急離脱カップリング8が分離できなくなる可能性がある。即ち、車両71の誤発進等により緊急離脱カップリング8が分離したときに、ワイヤ34も充填ホース6と同様に分離できることが好ましい。このため、ワイヤ34には、充填ノズル7の落下による衝撃荷重に耐えられるが、緊急離脱カップリング8の分離(作動)を妨げない解除機構を設けることが望ましい。
【0045】
このようなワイヤ34の解除機構として、例えば、分離継手(分離コネクタ)、即ち、分離可能な第1継手と第2継手とをシェアピン(例えば、金属、熱処理材)で接続する構成が考えられる。この構成によれば、充填ノズルに対して過剰な外力(せん断力)が付加された場合に、シェアピンが破断(せん断破壊)することにより、第1継手と第2継手とを分離させることができる。
【0046】
しかし、このような構成の場合、例えば、作業員の手から充填ノズルが落下したとき等に、この落下に伴う衝撃がシェアピンに加わり、シェアピンが疲労(例えば、金属疲労)する可能性がある。これにより、車両の誤発進等の緊急時でないにも関わらず、疲労に起因してシェアピンが破断することにより、第1継手と第2継手とが分離する可能性がある。即ち、シェアピンのせん断強度を超えなくても、充填ノズルの落下による繰り返し荷重がシェアピンに加わることにより、シェアピンが破断し、第1継手と第2継手とが分離してしまう可能性がある。このような分離を抑制するためには、定期的に検査、部品交換を行う必要があり、その作業が面倒になる他、コストの増大に繋がる。
【0047】
そこで、実施形態では、充填ノズル落下防止ワイヤの分離機構として、充填ノズルの落下による衝撃を引っ張りコイルばねにより吸収できる構成としている。これにより、メンテナンスによるコストと工数の低減を図ることができる。
【0048】
即ち、第1の実施形態では、
図2ないし
図6に示すように、充填ノズル7の落下を防止するためのワイヤ34には、ワイヤ34を分離させるワイヤ分離装置35が設けられている。ワイヤ34は、充填ノズル7とディスペンサ筐体4(より具体的には、繰出アーム33)との間を接続する。ワイヤ34は、充填ノズル7側のワイヤとなる第1ワイヤ34Aと、ディスペンサ筐体4側(換言すれば、繰出アーム33側)のワイヤとなる第2ワイヤ34Bとを備えている。これら第1ワイヤ34Aと第2ワイヤ34Bは、ワイヤ分離装置35を介して接続されている。
【0049】
充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aは、先端側に充填ノズル7が接続されている。第1ワイヤ34Aの基端側は、ワイヤ分離装置35の第1継手36に接続されている。ディスペンサ筐体4側の第2ワイヤ34Bは、先端側にワイヤ分離装置35の第2継手37が接続されている。第2ワイヤ34Bの基端側は、ディスペンサ筐体4(より具体的には、繰出アーム33)に接続されている。
【0050】
図5に示すように、ワイヤ分離装置35は、差し込みシャフトとなる第1継手36と、シャフト受け部材となる第2継手37と、締結部材としてのシェアピン38と、弾性部材としての引っ張りコイルばね39とを備えている。
図5の(1)および(2)は、ワイヤ分離装置35の通常時(分離前)および充填ノズル7の落下時を示している。この場合、ワイヤ分離装置35の第1継手36と第2継手37は、引っ張りコイルばね39およびシェアピン38により抜け止めされた状態で接続されている。これに対して、
図5の(3)は、ワイヤ分離装置35の分離時を示している。この場合、即ち、車両71の誤発進等により緊急離脱カップリング8が分離するような緊急時には、シェアピン38が破断することにより第1継手36と第2継手37とが分離する。
【0051】
第1継手36は、充填ノズル7側のワイヤとなる第1ワイヤ34Aに接続されている。第1継手36は、略円柱状に形成されている。第1継手36は、第2継手37の取付穴37Aに着脱可能に挿入される挿入部36Aと、挿入部36Aの基端側に位置して第1ワイヤ34Aが固定的に接続されるワイヤ取付部36Bとを有している。挿入部36Aの先端側には、引っ張りコイルばね39が接続されている。挿入部36Aは、引っ張りコイルばね39によって、第2継手37の取付穴37Aの奥側に向けて引っ張られている(筐体4側に付勢されている)。この場合、挿入部36Aの先端は、第2継手37の取付穴37Aの底部に当接している。
【0052】
ワイヤ取付部36Bは、第2継手37の取付穴37Aから露出している。ワイヤ取付部36Bには、第1ワイヤ34Aが挿入されるワイヤ取付孔36Cが設けられている。第1ワイヤ34Aは、例えば、ワイヤ取付部36Bのワイヤ取付孔36Cに巻き止めすることにより、第1継手36から分離できないように接続されている。
【0053】
第1継手36の挿入部36Aには、シェアピン38が装着されるシェアピン装着穴36Dが設けられている。第1の実施形態では、挿入部36Aに2つのシェアピン装着穴36Dを周方向に180°離間して設けている。そして、2つのシェアピン装着穴36Dにそれぞれシェアピン38を装着している。しかし、これに限らず、例えば、シェアピン装着穴として挿入部36Aに直径方向に貫通する貫通孔を設け、この貫通孔に一本のシェアピンを挿入する構成としてもよい。
【0054】
また、第1継手36の挿入部36Aには、シェアピン装着穴36Dよりも先端側(即ち、取付穴37Aの奥側)に位置して抑え部材40が装着される抑え部材装着孔36Eが設けられている。抑え部材40は、シェアピン装着穴36Dに装着されたシェアピン38を抑え付ける部材であり、例えば、板部材として形成されている。抑え部材40は、シェアピン38が第2継手37に直接干渉しないようにするための部材である。
【0055】
第2継手37は、ディスペンサ筐体4側のワイヤとなる第2ワイヤ34Bに接続されている。第2継手37は、有底の略円筒状に形成されており、第1継手36に対して開口している。即ち、第2継手37は、第1継手36の挿入部36Aが着脱可能に挿入される取付穴37Aを備えている。取付穴37Aの奥側には、引っ張りコイルばね39が収容される収容穴37Bが設けられている。収容穴37Bの底部には、引っ張りコイルばね39が接続されている。第2継手37のうち収容穴37Bよりも取付穴37Aとは反対側は、第2ワイヤ34Bが固定的に取付けられるワイヤ取付部となっている。第2ワイヤ34Bは、第2継手37から分離できないように接続されている。
【0056】
また、第2継手37には、第1継手36に装着されるシェアピン38が挿入される長孔37Cが設けられている。長孔37Cは、シェアピン38が装着されるシェアピン装着穴36Dに対応して設けられている。長孔37Cは、第2継手37の外周面と取付穴37Aの内周面との間を径方向に貫通する貫通孔である。この場合、長孔37Cは、第2継手37の軸方向に延びる貫通孔、即ち、第2継手37の軸方向に関する幅が周方向に関する幅よりも長い貫通孔として第2継手37に形成されている。長孔37Cは、第1継手36と第2継手37とが相対変位したときに、第2継手37に対してシェアピン38が相対変位することを許容する孔である。
【0057】
即ち、実施形態では、シェアピン38は、長孔37C内で第2継手37に対して相対変位が可能となっている。換言すれば、第1継手36がシェアピン38と共に第2継手37に対して分離方向(軸方向)に相対変位しても、シェアピン38の相対変位が長孔37C内の範囲であれば、シェアピン38は長孔37Cの周縁(より具体的には、長孔37Cの周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)と接触しない。
【0058】
この場合には、シェアピン38には、長孔37Cの周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)と接触することによるせん断方向の力が加わらない。従って、引っ張りコイルばね39の弾性力を調整することにより、第1継手36と第2継手37との間に予め設定した所定の力以上の力が加わらない限り、シェアピン38が長孔37Cの周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)と接触しないように規制できる。
【0059】
図6に示すように、「第1継手36の挿入部36Aの断面形状」および「第2継手37の取付穴37Aの断面形状」は、第1継手36と第2継手37とが相対回転しない形状となっている。即ち、実施の形態では、挿入部36Aおよび取付穴37Aの断面形状は、円孔の一部が直線上となった欠円状としている。なお、「第1継手36の挿入部36Aの断面形状」および「第2継手37の取付穴37Aの断面形状」は、
図6に示す形状に限らず、例えば、
図7の(1)および(2)に示す形状としてもよい。
【0060】
即ち、
図7の(1)に示すように、「第1継手36の挿入部36Aの断面形状」および「第2継手37の取付穴37Aの断面形状」を多角形(より具体的には、四角形)としてもよい。
図7の(2)に示すように、第1継手36の挿入部36Aと第2継手37の取付穴37Aの間に、これらの相対回転を阻止するためのキー部材41を設ける構成としてもよい。
【0061】
シェアピン38は、第1継手36と第2継手37とを締結する。シェアピン38は、第1継手36と第2継手37との間に分離する方向の大きな力が加わると、自身が破断することにより、第1継手36と第2継手37とが分離することを許容する。即ち、緊急離脱カップリング8の分離に伴ってワイヤ34に引っ張り方向の大きな荷重が加わると、第1継手36と第2継手37との間に分離する方向の大きな力が加わる。
【0062】
これにより、シェアピン38は、第2継手37の長孔37Cの周縁(より具体的には、周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)と接触すると共にせん断方向の大きな力が加わり、破断する。シェアピン38が破断すると、第2継手37の取付穴37Aから第1継手36の挿入部36Aが抜け出ることが可能となり、第1継手36と第2継手37とが分離する。
【0063】
引っ張りコイルばね39は、第1継手36と第2継手37との間に設けられている。引っ張りコイルばね39は、第1継手36が第2継手37より分離する方向とは逆方向の力を付与する。即ち、引っ張りコイルばね39は、第1継手36に対して、第2継手37に近付く方向の力、換言すれば、第1継手36の挿入部36Aが第2継手37の取付穴37Aに近付く方向の引っ張り力を付与する。引っ張りコイルばね39は、第1継手36と第2継手37との間に充填ノズル7が落下する程度の小さな力が加わったときに、この力を吸収する。
【0064】
このために、引っ張りコイルばね39の弾性力は、充填ノズル7が落下する程度の小さな力が加わったときは、シェアピン38が第2継手37の長孔37Cの一端側の周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)に接触しないように規制している。なお、引っ張りコイルばね39の弾性力は、充填ノズル7が落下する程度の小さな力が加わったときに、シェアピン38が第2継手37の長孔37Cの一端側の周縁に接触しても、シェアピン38の疲労が進行しない程度の力となるように規制してもよい。
【0065】
いずれにしても、引っ張りコイルばね39は、充填ノズル7が落下する程度の小さな力が加わった場合は、第1継手36および第2継手37から外れない。即ち、この場合は、第1継手36と第2継手37とが引っ張りコイルばね39によって連結された状態が維持される。これに対して、緊急離脱カップリング8の分離に伴う大きな力が加わると、引っ張りコイルばね39は、第1継手36と第2継手37とのうちの少なくとも一方の継手(例えば、第1継手36)から外れる。
【0066】
このように、実施形態では、第2継手37の側面に長孔37Cが設けられている。このため、第1継手36およびシェアピン38は、引っ張りコイルばね39の引っ張り力(弾性力)により、長孔37Cの範囲で変位が許容される。そして、充填ノズル7が落下する程度の小さな力が第1継手36と第2継手37との間、即ち、引っ張りコイルばね39に加わった場合には、引っ張りコイルばね39の引っ張り力(弾性力)により、シェアピン38が第2継手37の長孔37Cの一端側の周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)に接触しない。
【0067】
一方、第1継手36と第2継手37との間(即ち、引っ張りコイルばね39)に、緊急離脱カップリング8の分離に伴って大きな力が加わると、シェアピン38が抑え部材40と長孔37Cの一端側の周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)とに挟まれ、そのせん断力によってシェアピン38が破断する。これにより、第1継手36と第2継手37とが分離する。引っ張りコイルばね39の引っ張り力(弾性力)および長孔37Cの長さは、充填ノズル7が落下する程度の小さな力では、シェアピン38が長孔37Cの一端側の周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)に接触しないように設定することができる。
【0068】
即ち、引っ張りコイルばね39の引っ張り力(弾性力)、長孔37Cの寸法および位置、シェアピン38の断面積および数は、必要な分離力の要求に応じて調整することができる。また、実施形態では、
図6に示すように、第1継手36と第2継手37は、第1継手36と第2継手37とが相対回転しない断面形状(ねじれない形状)となっている。実施形態では、充填ノズル7が落下する程度の小さな力が第1継手36と第2継手37との間に加わっても、引っ張りコイルばね39により吸収できる。このため、充填ノズル7の落下が複数回あっても、シェアピン38が不必要に破断してしまうことを抑制できる。
【0069】
しかも、実施形態では、第1継手36と第2継手37とを締結させるときに、引っ張りコイルばね39をセットした状態で長孔37Cを通じてシェアピン38を第1継手36のシェアピン装着穴36Dに装着することができる。このとき、長孔37Cに対するシェアピン装着穴36Dの軸方向の自由度が高いため、第1継手36と第2継手37との軸方向の厳密な位置合わせを行う必要がなく、長孔37Cを通じてシェアピン装着穴36Dにシェアピン38を容易に装着できる。このため、第1継手36と第2継手37とを締結させる作業を容易に行うことができる。また、シェアピン38は、第2継手37の開口より延出するよう設けられているので、作業員はシェアピン38が破断されているか否かが容易に把握できる。
【0070】
実施形態による水素ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、水素ガス充填装置1による水素ガスの充填作業について説明する。
【0071】
車両71の被充填タンク72に水素ガスを充填するときに、充填作業を行う作業者は、充填ノズル7をノズル掛け9から取外す。そして、
図1中に二点鎖線で示すように、充填ノズル7を被充填タンク72の充填口72Aに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が充填開始スイッチ20をON操作すると、制御装置24は、流量調整弁12と遮断弁13に開弁信号を出力して流量調整弁12と遮断弁13を開弁させる。
【0072】
これにより、ガス蓄圧器2内の水素ガスは、水素ガス供給管路5、充填ホース6および充填ノズル7を通じて車両71の被充填タンク72に充填される。制御装置24は、例えば流量計17、圧力センサ18、温度センサ19の測定結果を監視しつつ、流量調整弁12の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、水素ガス供給管路5内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0073】
このとき、制御装置24は、流量計17からの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算し、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または圧力センサ18により検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力(目標充填圧)に達したか否かを判定する。目標とする充填量(圧力)に達したと判定したときには、制御装置24からの信号により流量調整弁12および遮断弁13が閉弁され、被充填タンク72への水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止スイッチ21を操作した場合にも、充填作業は終了される。
【0074】
次に、この状態で制御装置24は充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、制御装置24からの信号により脱圧弁23を閉弁状態から開弁するように制御する。そして、脱圧弁23が開弁したときには、脱圧管路22が大気に開放されることにより、充填ノズル7側のガスが外部に放出されて充填ノズル7の圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は充填ノズル7の接続カプラ7Aを被充填タンク72の充填口72Aから取外すことができる。
【0075】
被充填タンク72の充填口72Aから取外された充填ノズル7は、作業者によってディスペンサ筐体4側のノズル掛け9に戻され、手動操作により掛止めされる。ノズル掛け9に設けられたノズル検出器26は、充填ノズル7がノズル掛け9に戻されたか否かを検出する。充填ノズル7がノズル掛け9に戻されて掛止めされると、ノズル検出器26からの検出信号が制御装置24に出力される。これにより、制御装置24は、充填ノズル7による充填作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。
【0076】
ここで、例えば、充填作業が行われているときに、充填ノズル7が車両71または作業員の手から落下すると、充填ノズル7は、ノズル吊り装置31のワイヤ34によって地面に接触(衝突)することが阻止される。このとき、
図5の(2)に示すように、ワイヤ分離装置35の第1継手36と第2継手37との間に充填ノズル7の落下に伴う力が加わるが、この力に基づく衝撃は、引っ張りコイルばね39によって吸収される。即ち、充填ノズル7の落下に伴う力が第1継手36と第2継手37との間に加わっても、引っ張りコイルばね39の引っ張り力によって、シェアピン38が第2継手37の長孔37Cの周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)に接触することが阻止される。
【0077】
一方、車両の誤発進等により充填ホース6が大きな力引っ張られると、緊急離脱カップリング8のノズル側継手8Aと筐体側継手8Bとが分離する。このとき、ワイヤ分離装置35の第1継手36と第2継手37との間にも、緊急離脱カップリング8の分離に伴って大きな力が加わる。この場合には、
図5の(3)に示すように、引っ張りコイルばね39の引っ張り力に抗して、シェアピン38が第2継手37の長孔37Cの周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)に接触する。これにより、シェアピン38に大きなせん断方向の力が加わり、シェアピン38が破断することにより、第1継手36と第2継手37が分離する。
【0078】
以上のように、第1の実施形態によれば、第1継手36と第2継手37との間には、これらが分離する方向とは逆方向の力を付与する引っ張りコイルばね39が設けられている。これに加えて、第1継手36と第2継手37とのうちの一方の継手となる第2継手37には、第1継手36と第2継手37とが相対変位したときに、第2継手37に対してシェアピン38が変位することを許容する長孔37Cが設けられている。このため、仮に作業員の手から充填ノズル7が落下しても、シェアピン38が長孔37Cの内部で移動する。即ち、充填ノズル7が落下する程度の小さな力が第1継手36と第2継手37との間に加わることにより、第1継手36と第2継手37とが分離する方向に相対変位しても、引っ張りコイルばね39によってシェアピン38が長孔37Cの周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)に接触しないように規制することができる。
【0079】
これにより、シェアピン38が疲労によって破断することを抑制でき、第1継手36と第2継手37とが不必要に分離することを抑制できる。一方、水素ガスの充填中に車両71が誤発進する等の緊急時には、引っ張りコイルばね39の弾性力に抗して第1継手36と第2継手37とが分離する方向に相対変位し、シェアピン38が長孔37Cの周縁(周縁のうち第2継手37の開口側に位置する部分)に大きな力で接触する。これにより、シェアピン38が破断し、第1継手36と第2継手37とが分離する。これにより、第1継手36と第2継手37とが分離すべきときに、第1継手36と第2継手37とを分離させることができる。
【0080】
なお、第1の実施形態では、柱状の第1継手36を充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aと接続し、筒状の第2継手37をディスペンサ筐体4(より具体的には、繰出アーム33)側の第2ワイヤ34Bに接続する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、柱状の第1継手36をディスペンサ筐体4(より具体的には、繰出アーム33)側の第2ワイヤ34Bに接続し、筒状の第2継手37を充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aと接続してもよい。この場合には、第2継手37が「充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aに接続される第1継手」に対応し、第1継手36が「ディスペンサ筐体4側の第2ワイヤ34Bに接続される第2継手」に対応する。
【0081】
次に、
図8は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、第1継手と第2継手との間に第1締結部材と第2締結部材とを設ける構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
第2の実施形態では、分離継手(分離コネクタ)であるワイヤ分離装置51にシェアピン交換表示機能を持たせることにより、充填ノズル7の落下によるワイヤ分離装置51の分離を抑制する。即ち、第2の実施形態では、2種類の締結部材(第1シェアピン54、第2シェアピン55)を備えると共に、充填ノズル7の落下に伴う繰り返し荷重により第1シェアピン54が破断しても、その旨を報知する報知部57を備えている。報知部57は、シェアピン交換表示機能に対応する。このため、この報知部57の報知に基づいて、第1シェアピン54を交換することができる。これにより、充填ノズル7の落下に伴って第1継手52と第2継手53とが不必要に分離することを抑制でき、充填ノズル7の損傷を低減できる。以下、第2の実施形態のワイヤ分離装置51について説明する。
【0083】
ワイヤ分離装置51は、第1継手52と、第2継手53と、第1締結部材としての第1シェアピン54と、第2締結部材としての第2シェアピン55とを備えている。また、ワイヤ分離装置51は、弾性部材としての圧縮コイルばね56と、報知部57とを備えている。第1継手52は、充填ノズル7側のワイヤとなる第1ワイヤ34Aに接続されている。第1継手52は、略円柱状に形成されている。第1継手52は、第2継手53の取付穴53Aに着脱可能に挿入される挿入部52Aと、挿入部52Aの基端側に位置して第1ワイヤ34Aが固定的に接続されるワイヤ取付部52Bとを有している。
【0084】
挿入部52Aの先端側には、圧縮コイルばね56が圧縮された状態で当接している。従って、挿入部52Aは、圧縮コイルばね56によって、第2継手53の取付穴53Aの開口側(充填ノズル7側)に向けて押圧されている。この場合、第1継手52(挿入部52A)は、第2継手53に対して第1シェアピン54によって抜け止めされている。
【0085】
ワイヤ取付部52Bは、第2継手53の取付穴53Aから露出している。ワイヤ取付部52Bには、第1ワイヤ34Aが挿入されるワイヤ取付孔52Cが設けられている。第1ワイヤ34Aは、例えば、ワイヤ取付部52Bのワイヤ取付孔52Cに巻き止めすることにより、第1継手52から分離できないように接続されている。
【0086】
第1継手52の挿入部52Aには、第1シェアピン54が装着されるシェアピン装着穴52Dが設けられている。第2の実施形態では、挿入部52Aに2つのシェアピン装着穴52Dを周方向に180°離間して設けている。そして、2つのシェアピン装着穴52Dにそれぞれ第1シェアピン54を装着している。しかし、これに限らず、例えば、シェアピン装着穴として挿入部52Aに直径方向に貫通する貫通孔を設け、この貫通孔に一本の第1シェアピンを挿入する構成としてもよい。
【0087】
また、第1継手52の挿入部52Aには、シェアピン装着穴52Dよりも先端側(即ち、取付穴53Aの奥側)に位置して第2シェアピン55が装着される窪み部52Eが設けられている。窪み部52Eは、挿入部52Aの周方向に関してシェアピン装着穴52Dと対応する位置に設けられている。即ち、挿入部52Aには、2つの窪み部52Eが周方向に180°離間して設けられている。窪み部52Eは、第1シェアピン54から外れた位置で第1継手52と第2継手53とが相対変位する方向に延びている。
【0088】
即ち、窪み部52Eは、挿入部52Aのうち第1シェアピン54よりも先端側に位置している。窪み部52Eは、第1継手52と第2継手53とが相対変位する方向、即ち、第1継手52と第2継手53とが分離する方向である軸方向に延びている。窪み部52Eは、第1継手52の軸方向に関する幅が周方向に関する幅よりも長い凹溝(長溝)として第1継手52の挿入部52Aに形成されている。なお、窪み部52Eは、挿入部52Aの全周にわたって径方向に凹むくびれ部としてもよい。
【0089】
窪み部52Eは、第1シェアピン54の破断に伴って第1継手52と第2継手53とが相対変位したときに、第2シェアピン55が窪み部52Eの周縁(より具体的には、窪み部52Eの周縁のうち挿入部52Aの先端側に位置する部分)に当接するまで、第1継手52が第2継手53に対して相対変位することを許容する。即ち、第1シェアピン54が破断した場合、第2シェアピン55が窪み部52Eの周縁(より具体的には、周縁のうち挿入部52Aの先端側に位置する部分)に当接するまで、第1継手52は、第2継手53から抜け出る方向に変位することができる。窪み部52E内には、挿入部52Aの先端側に位置して緩衝材58が設けられている。緩衝材58は、例えばゴム、スポンジ等の衝撃吸収部材により構成されており、第2シェアピン55が窪み部52Eの周縁(周縁のうち挿入部52Aの先端側に位置する部分)に当接するときの衝撃を緩衝する。
【0090】
第2継手53は、ディスペンサ筐体4側のワイヤとなる第2ワイヤ34Bに接続されている。第2継手53は、有底の略円筒状に形成されており、第1継手52に対して開口している。即ち、第2継手53は、第1継手52の挿入部52Aが着脱可能に挿入される取付穴53Aを備えている。取付穴53Aの奥側には、圧縮コイルばね56が収容される収容穴53Bが設けられている。収容穴53Bの底部には、ワイヤ取付孔53Cが設けられている。ワイヤ取付孔53Cには、第2ワイヤ34Bの端部が抜け止めされた状態で取付けられている。
【0091】
第2継手53には、第1シェアピン54が挿入される第1シェアピン挿通孔53Dが設けられている。第1シェアピン挿通孔53Dは、第1継手52(挿入部52A)のシェアピン装着穴52Dに対応して設けられている。第1シェアピン挿通孔53Dは、第2継手53の外周面と取付穴53Aの内周面との間を径方向に貫通する貫通孔である。第1シェアピン54は、第1シェアピン挿通孔53D内にがたつきなく挿入される。
【0092】
第2継手53には、第2シェアピン55が挿入される第2シェアピン挿通孔53Eが設けられている。第2シェアピン挿通孔53Eは、第1継手52(挿入部52A)の窪み部52Eに対応して設けられている。この場合、第2シェアピン挿通孔53Eは、窪み部52Eのうち挿入部52Aの基端側(取付穴53Aの開口側)となる部位に対応している。第2シェアピン挿通孔53Eは、第2継手53の外周面と取付穴53Aの内周面との間を径方向に貫通する貫通孔である。第2シェアピン55は、第2シェアピン挿通孔53E内にがたつきなく挿入される。
【0093】
第1シェアピン54は、第1継手52と第2継手53とを締結する。第2シェアピン55も、第1継手52と第2継手53とを締結する。第1シェアピン54および第2シェアピン55は、第1継手52と第2継手53との間に分離する方向の大きな力が加わると、自身が破断することにより、第1継手52と第2継手53とが分離することを許容する。ここで、第2シェアピン55は、窪み部52E内に設けられている。第2シェアピン55は、第1シェアピン54が破断したときに、窪み部52Eと係合することにより第1継手52と第2継手53とが締結した状態を維持する。
【0094】
即ち、第1シェアピン54が破断すると、圧縮コイルばね56(および自重)によって第1継手52が第2継手53に対して抜け出る方向に変位する。このとき、第2シェアピン55が窪み部52E内を挿入部52Aの先端側に向けて相対変位し、第2シェアピン55が窪み部52Eの周縁(具体的には、周縁のうち挿入部52Aの先端側に位置する部分)に当接する。これにより、第2シェアピン55によって、第1継手52と第2継手53とが締結した状態が維持される。なお、第1シェアピン54と第2シェアピン55は、同じシェアピンを用いてもよいし、異なるシェアピンを用いてもよい(例えば、第1シェアピン54と第2シェアピン55とで剛性、径方向寸法、材料等を異ならせてもよい)。
【0095】
圧縮コイルばね56は、第1継手52と第2継手53との間に設けられている。圧縮コイルばね56は、第1継手52と第2継手53とが分離する方向の力を付与する。即ち、圧縮コイルばね56は、第2継手53の収容穴53B内に圧縮状態で設けられている。圧縮コイルばね56は、収容穴53Bの底部と第1継手52の挿入部52Aの先端面との間で、これらが遠ざかる方向の弾性力を付与している。このため、第1シェアピン54が破断すると、第1継手52が第2継手53に対して抜け出る方向、即ち、分離する方向に変位する。この場合、第1継手52は、圧縮コイルばね56(および自重)によって第2シェアピン55が窪み部52Eの周縁(具体的には、周縁のうち挿入部52Aの先端側に位置する部分)に当接するまで相対変位する。なお、圧縮コイルばね56は省略してもよい。
【0096】
第1継手52には、挿入部52Aの基端側に位置して報知部57が設けられている。報知部57は、第1シェアピン54が破断したときに、第2継手53から露出することにより、第1シェアピン54が破断したことを報知する。報知部57は、挿入部52Aの基端部、より詳しくは、第1シェアピン54が破断する前は、第2継手53の取付穴53A内に位置しており、かつ、第1シェアピン54が破断したときに、第1継手52が第2継手53に対して相対変位することにより取付穴53Aから露出する部分に位置している。報知部57は、挿入部52Aの基端部に、「警告」と表記することにより構成されている。
【0097】
なお、報知部57は、挿入部52Aの基端部を赤色等で着色することにより構成してもよい。即ち、報知部57は、第1シェアピン54が破断することに伴って第2継手か53ら露出する部分に、着色または文字メッセージ等を付することにより構成することができる。報知部57としては、第1シェアピン54が破断したことを作業員に報知できればよい。このため、着色、文字表記以外にも、第1シェアピン54が破断することを報知できる各種の構成を採用することができる。
【0098】
このように、第2の実施形態では、車両誤発進以外の低荷重が分離コネクタとなるワイヤ分離装置51に繰り返し加わる等により、第1シェアピン54が破断しても、報知部57により警告表示を行うことができる。そして、この警告表示に基づいて、第1シェアピン54を交換することができる。即ち、複数回の充填ノズル7の落下により第1シェアピン54が破断すると、第1シェアピン54の交換タイミングとして報知部57により「警告」が表示される。
【0099】
このとき、第1継手52は、第2継手53に対して窪み部52Eの長さ分(隙間分)相対変位し、報知部57を露出しながら、充填ノズル7の落下による衝撃を受けていない第2シェアピン55により充填ノズル7の落下を防ぐことができる。このため、不注意に起因する充填ノズル7の落下により第1継手52と第2継手53とが完全に分離してしまうことを抑制でき、充填ノズル7の損傷を抑制できる。また、報知部57による「警告」を確認した場合には、第1シェアピン54および第2シェアピン55を速やかに交換する。これにより、交換後も、充填ノズル7の落下で第1継手52と第2継手53とが完全に分離してしまうことを抑制できる。
【0100】
さらに、窪み部52Eには、第1シェアピン54が破断したときに第2シェアピン55が進む側に緩衝材58が設けられている。即ち、充填ノズル7の質量によっては、第1シェアピン54が破断した後、第2シェアピン55が窪み部52Eの内面に接触するときの衝撃荷重により、第2シェアピン55が破断する可能性がある。このような衝撃を緩和するために、窪み部52Eには、緩衝材58が設けられている。
【0101】
一方、車両誤発進等の緊急時には、第1シェアピン54および第2シェアピン55が破断することにより、第1継手52と第2継手53とが完全に分離する。このため、ワイヤ分離装置51が緊急離脱カップリング8の分離を阻害しないようにできる。
【0102】
第2の実施形態は、上述の如き充填を行うもので、その基本的作用については、上述した第1の実施形態によるものと格別差異はない。即ち、第2の実施形態も、第1の実施形態と同様に、第1継手と第2継手とが不必要に分離することを抑制できる。
【0103】
即ち、第2の実施形態によれば、第1継手52と第2継手53とのうちの一方の継手となる第1継手52には、第1シェアピン54から外れた位置で第1継手52と第2継手53とが相対変位する方向に延びる窪み部52Eが設けられている。これに加えて、窪み部52E内には、第1シェアピン54が破断したときに、窪み部52Eと係合することにより第1継手52と第2継手53とが締結した状態を維持する第2シェアピン55が設けられている。
【0104】
このため、疲労により第1シェアピン54が破断しても、第2シェアピン55が窪み部52Eと係合するため、これら第2シェアピン55と窪み部52Eとの係合によって、第1継手52と第2継手53とが締結した状態を維持することができる。これにより、第1継手52と第2継手53とが不必要に分離することを抑制できる。一方、水素ガスの充填中に車両71が誤発進する等の緊急時には、第1シェアピン54が破断した後、第2シェアピン55が破断し、第1継手52と第2継手53とが分離する。これにより、第1継手52と第2継手53とが分離すべきときに、第1継手52と第2継手53とを分離させることができる。
【0105】
第2の実施形態によれば、第1継手52と第2継手53とのうちの一方の継手となる第1継手52には、第1シェアピン54が破断したことを報知する報知部57が設けられている。このため、報知部57によって第1シェアピン54が破断したことを報知することができる。この場合には、第1シェアピン54を交換することにより、初期状態に戻すことができる。
【0106】
第2の実施形態によれば、第1継手52と第2継手53との間には、第1継手52と第2継手53とが分離する方向の力を付与する圧縮コイルばね56が設けられている。このため、第1シェアピン54が破断したときに、圧縮コイルばね56によって第2シェアピン55を窪み部52Eの内面に抑え付けることができる。これにより、第1シェアピン54が破断しても、第1継手52と第2継手53とががたつくことを抑制できる。
【0107】
なお、第2の実施形態では、第1継手52の挿入部52Aの先端側に窪み部52E(第1シェアピン54)を配置し、窪み部52E(第2シェアピン55)よりも挿入部52Aの基端側にシェアピン装着穴52D(第1シェアピン54)を配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、
図9に示す第1の変形例のように、第1継手52の挿入部52Aの先端側にシェアピン装着穴52D(第1シェアピン54)を配置し、シェアピン装着穴52D(第1シェアピン54)よりも挿入部52Aの基端側に窪み部52E(第1シェアピン54)を配置してもよい。
【0108】
第2の実施形態では、柱状の第1継手52を充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aと接続し、筒状の第2継手53をディスペンサ筐体4(より具体的には、繰出アーム33)側の第2ワイヤ34Bに接続する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、
図10に示す第2の変形例のように、柱状の第1継手52をディスペンサ筐体4(より具体的には、繰出アーム33)側の第2ワイヤ34Bに接続し、筒状の第2継手53を充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aと接続してもよい。
【0109】
各実施形態および各変形例では、充填ノズル7が掛けられるノズル掛け9(充填ノズル7を収容する収容部)をディスペンサ筐体4の左側に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ノズル掛け(収容部)をディスペンサ筐体の右側に設ける構成としてもよく、これ以外の位置(例えば、正面)に設ける構成としてもよい。また、ディスペンサ筐体の近傍位置に、ノズル掛け(収容部)を別途設ける構成としてもよい。
【0110】
各実施形態および各変形例では、車両71の被充填タンク72に水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両以外の被充填タンク(タンク、容器等)に水素ガスを充填するときに用いることもできる。また、水素ガス充填装置1のディスペンサユニット3を、他の場所に水素ガスを給送するための管路(水素給送管路)の途中に設置してもよい。さらに、燃料ガスとして水素ガスを例に挙げて説明したが、天然ガス(NG)、プロパンガス(LPG)等の水素ガス以外の燃料ガスを用いる構成(燃料ガス充填装置)としてもよい。
【0111】
各実施形態および各変形例では、充填ホース6の途中に分離手段となる緊急離脱カップリング8を設けた場合を例に挙げて説明した。即ち、充填ノズル7側の第1ホース6Aと水素ガス供給管路5側の第2ホース6Bとの間に緊急離脱カップリング8を設け、第1ホース6Aと第2ホース6Bとを分離させる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、分離手段を充填ノズル側のホース(ガス供給接続路)とガス供給管路との間に設け、ホース(ガス供給接続路)とガス供給管路とを分離させる構成としてもよい。
【0112】
各実施形態および各変形例では、ワイヤ34の途中にワイヤ分離装置35,51を設けた場合を例に挙げて説明した。即ち、充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aとディスペンサ筐体4側の第2ワイヤ34Bとの間にワイヤ分離装置35,51を設け、第1ワイヤ34Aと第2ワイヤ34Bとを分離させる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ワイヤ分離装置を充填ノズルとワイヤとの間に設け、充填ノズルとワイヤとを分離させる構成としてもよい。即ち、ワイヤ分離装置の第1継手を充填ノズルに接続し、ワイヤ分離装置の第2継手を筐体に接続されるワイヤに接続してもよい。また、例えば、ワイヤ分離装置をワイヤと筐体との間に設け、ワイヤと筐体とを分離させる構成としてもよい。即ち、ワイヤ分離装置の第1継手を充填ノズルに接続されるワイヤに接続し、ワイヤ分離装置の第2継手を筐体に接続してもよい。
【0113】
第1の実施形態では、第2継手37に長孔37Cを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1継手に長孔となる長溝を設けてもよい。即ち、第1継手の取付部に軸方向に延びる長溝(長孔)を設けると共に、第2継手に締結部材ががたつきなく装着されるシェアピン装着孔を設ける構成としてもよい。この場合には、長溝が、第1継手と第2継手とが相対変位したときに、第1継手に対して締結部材が相対変位することを許容する孔に対応する。
【0114】
第2の実施形態では、第1継手52に窪み部52Eを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第2継手に窪み部を設けてもよい。即ち、前述の
図10に示す第2の変形例の構成を採用してもよい。この第2の変形例では、
図10の第2継手53が「充填ノズル7側の第1ワイヤ34Aに接続される第1継手」に対応し、
図10の第1継手52が「ディスペンサ筐体4側の第2ワイヤ34Bに接続される第2継手」に対応する。さらに、
図10の第2の変形例では、報知部(
図10の報知部57)は、第2継手(
図10の第1継手52)に設けられ、第1締結部材(
図10の第1シェアピン54)が破断したときに、第1継手(
図10の第2継手53)から露出する。
【0115】
各実施形態および各変形例では、1のディスペンサユニット3で1系統の水素ガス供給管路5および充填ホース6を通じて1台の車両71に水素ガスを充填する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、1のディスペンサユニットで複数の系統のガス供給管路およびガス供給接続路を通じて複数の車両に燃料ガスを充填可能な構成としてもよい。さらに、各実施形態および各変形例は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0116】
以上説明した実施形態によれば、第1継手と第2継手との間には、第1継手と第2継手とが分離する方向とは逆方向の力を付与する弾性部材が設けられている。これに加えて、第1継手と第2継手とのうちの一方の継手には、第1継手と第2継手とが相対変位したときに、一方の継手に対して締結部材が変位することを許容する孔が設けられている。このため、仮に作業員の手から充填ノズルが落下しても、締結部材が孔の内部で移動する。即ち、充填ノズルが落下する程度の小さな力が第1継手と第2継手との間に加わることにより、第1継手と第2継手とが分離する方向に相対変位しても、弾性部材によって締結部材が孔の周縁に接触しないように、または、締結部材が孔の周縁に小さい力で接触するように規制することができる。これにより、締結部材が疲労によって破断することを抑制でき、第1継手と第2継手とが不必要に分離することを抑制できる。一方、燃料ガスの充填中に車両が誤発進する等の緊急時には、弾性部材の弾性力に抗して第1継手と第2継手とが分離する方向に相対変位し、締結部材が孔の周縁に大きな力で接触する。これにより、締結部材が破断し、第1継手と第2継手とが分離する。これにより、第1継手と第2継手とが分離すべきときに、第1継手と第2継手とを分離させることができる。
【0117】
実施形態によれば、第1継手と第2継手とのうちの一方の継手には、第1締結部材から外れた位置で第1継手と第2継手とが相対変位する方向に延びる窪み部が設けられている。これに加えて、窪み部内には、第1締結部材が破断したときに、窪み部と係合することにより第1継手と第2継手とが締結した状態を維持する第2締結部材が設けられている。このため、疲労により第1締結部材が破断しても、第2締結部材が窪み部と係合するため、これら第2締結部材と窪み部との係合によって、第1継手と第2継手とが締結した状態を維持することができる。これにより、第1継手と第2継手とが不必要に分離することを抑制できる。一方、燃料ガスの充填中に車両が誤発進する等の緊急時には、第1締結部材と第2締結部材との両方が破断し、第1継手と第2継手とが分離する。これにより、第1継手と第2継手とが分離すべきときに、第1継手と第2継手とを分離させることができる。
【0118】
実施形態によれば、第1継手と第2継手とのうちの一方の継手には、第1締結部材が破断したことを報知する報知部が設けられている。このため、報知部によって第1締結部材が破断したことを報知することができる。この場合には、第1締結部材を交換することにより、初期状態に戻すことができる。
【0119】
実施形態によれば、第1継手と第2継手との間には、第1継手と第2継手とが分離する方向の力を付与する弾性部材が設けられている。このため、第1締結部材が破断したときに、弾性部材の弾性力によって第2締結部材を窪み部の内面に抑え付けることができる。これにより、第1締結部材が破断しても、第1継手と第2継手とががたつくことを抑制できる。
【符号の説明】
【0120】
1 水素ガス充填装置(燃料ガス充填装置)
4 ディスペンサ筐体(筐体)
5 水素ガス供給管路(ガス供給管路)
6 充填ホース(ガス供給接続路)
7 充填ノズル
8 緊急離脱カップリング(分離手段)
34 ワイヤ
34A 第1ワイヤ(充填ノズル側のワイヤ)
34B 第2ワイヤ(筐体側のワイヤ)
36,52 第1継手
37,53 第2継手
37C 長孔(孔)
38 シェアピン(締結部材)
39 引っ張りコイルばね(弾性部材)
52E 窪み部
54 第1シェアピン(第1締結部材)
55 第2シェアピン(第2締結部材)
56 圧縮コイルばね(弾性部材)
57 報知部
71 車両
72 被充填タンク(燃料タンク)