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特開2022-178323電解コンデンサ、及び電解コンデンサの製造方法
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  • 特開-電解コンデンサ、及び電解コンデンサの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178323
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電解コンデンサ、及び電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20221125BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20221125BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/145
H01G9/00 290C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085056
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000190091
【氏名又は名称】ルビコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 芳崇
(72)【発明者】
【氏名】飯島 聡
(72)【発明者】
【氏名】野澤 隆
(57)【要約】
【課題】従来よりも液漏れ抑制効果を高めつつ、低ESRにできて、50V以上の電圧で使用可能な電解コンデンサを提供する。
【解決手段】電解コンデンサ1は、巻回型のコンデンサ素子2と、コンデンサ素子2に導入された電解液2eを備え、陽極箔2aは皮膜耐電圧が65V以上であり、電解液2eは、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとで構成された四級化環状アミジニウム塩が25重量%以下の割合で含有されており、一種以上の有機酸と一種以上の非四級アミンからなる第1組成物であって前記非四級アミンの共役酸のpKaは12以下である前記第1組成物が5重量%以上含有されている構成である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に導入された電解液を備え、前記陽極箔の皮膜耐電圧は65V以上であり、前記電解液は、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとで構成された四級化環状アミジニウム塩が25重量%以下の割合で含有されており、一種以上の有機酸と一種以上の非四級アミンからなる第1組成物であって前記非四級アミンの共役酸のpKaは12以下である前記第1組成物が5重量%以上含有されていること
を特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記電解液は、γ-ブチロラクトンが50重量%以上含有されており、前記四級化環状アミジニウム塩が2重量%以上含有されていること
を特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記非四級アミンのうち少なくとも一種は三級アミンであること
を特徴とする請求項1または2記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記四級化環状アミジニウムカチオンのモル数に対する前記非四級アミンのモル数のモル比は0.2以上であること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に導入された電解液を備えた電解コンデンサの製造方法であって、
酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとで構成された四級化環状アミジニウム塩を有機溶媒に含有させた第1溶液を調製する第1ステップと、
一種以上の有機酸と一種以上の非四級アミンからなる第1組成物であって前記非四級アミンの共役酸のpKaは12以下である前記第1組成物を前記第1溶液に加えることで前記電解液における前記四級化環状アミジニウムカチオンのモル数に対する前記非四級アミンのモル数のモル比を調整し定格電圧50V以上に対応させる第2ステップを有すること
を特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ、及び電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四級化アミジニウム塩系電解液が知られており、電解液にさらにホウ酸とマンニット等の糖アルコールを配合し耐電圧を上げて、定格電圧50~100[V]に対応させた電解コンデンサが提案されている(特許文献1:特開平9-213583号公報、特許文献2:特開2011-204949号公報、特許文献3:WO2014/051129号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-213583号公報
【特許文献2】特開2011-204949号公報
【特許文献3】WO2014/051129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解液を用いた電解コンデンサは、信頼性の向上が常に要求されており、特に液漏れ抑制効果を高めていくことが求められている。しかしながら、上記特許文献の電解液ではこのような高信頼性の要求に十分に応えられなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされ、従来よりも液漏れ抑制効果を高めつつ、低ESRにできて、50V以上の電圧で使用可能な電解コンデンサを提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明の電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に導入された電解液を備え、前記陽極箔の皮膜耐電圧は65V以上であり、前記電解液は、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとで構成された四級化環状アミジニウム塩が25重量%以下の割合で含有されており、一種以上の有機酸と一種以上の非四級アミンからなる第1組成物であって前記非四級アミンの共役酸のpKaは12以下である前記第1組成物が5重量%以上含有されていることを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、特定の電解液を使用した場合に、耐液漏れ性が向上し、尚且つ、低ESRにできることを見出して、本発明を完成するに至った。つまり、この構成によれば、四級化環状アミジニウム塩を含有する電解液の低比抵抗特性によって低ESRにできるとともに、第1組成物を5重量%以上含有する電解液によって良好な耐液漏れ性が得られて、50[V]以上の電圧においても十分に使用できる。つまり、共役酸のpKaが小さい非四級アミンを用いたことで、液漏れ性に対する四級化環状アミジニウム塩の影響が抑えられて良好な耐液漏れ性が得られる。前記非四級アミンの共役酸のpKaは12以下であり、好ましくは前記非四級アミンの共役酸のpKaは11以下であり、より好ましくは前記非四級アミンの共役酸のpKaは10以下である。
【0009】
前記電解液は、γ-ブチロラクトンが50重量%以上含有されており、前記四級化環状アミジニウム塩が2重量%以上含有されていることが好ましい。この構成により、低温域における比抵抗の増大を効果的に抑制できる。一例として、電解液の溶媒は、γ-ブチロラクトン単独にしてもよい。
【0010】
前記四級化環状アミジニウム塩は、前記四級化環状アミジニウムカチオンにおける原子のうち環を構成するすべての窒素原子にアルキル基が付加されていることが好ましい。これにより、電解液を低比抵抗にできる。そのようなカチオン成分としては、一例として、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムカチオン、その他既知の四級化イミダゾリニウムカチオン、その他既知の四級化イミダゾリウムカチオン、等が挙げられる。これらのうちの一種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、電解液の比抵抗をより低くして電解コンデンサの低ESR特性により貢献させるために、四級化環状アミジニウム塩を5[重量%]以上含有してもよく、10[重量%]以上含有してもよい。他方、電解液は、四級化環状アミジニウム塩の割合と第1組成物の割合との合計値が40[重量%]以下であることが好ましく、30[重量%]以下であることがより好ましい。これにより、低温域で電解液成分の一部が析出してしまう現象を防止できる。
【0011】
前記四級化環状アミジニウムカチオンのモル数に対する前記非四級アミンのモル数のモル比は0.2以上であることが好ましい。前記モル比を大きくすることで、液漏れ性に対する四級化環状アミジニウム塩の影響が抑えられて良好な耐液漏れ性が得られる。前記モル比は0.3以上がより好ましい。前記モル比は0.4以上がより一層好ましい。
【0012】
四級化環状アミジニウム塩としては、一例として、カルボン酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとの塩が挙げられる。また、フタル酸等の多価カルボン酸のアニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとの塩を好適に使用できる。
【0013】
第1組成物を構成する有機酸としては、一例としてカルボン酸が挙げられ、特に、フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等の多価カルボン酸を好適に使用できる。これらのうちの一種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
第1組成物を構成する非四級アミンとしては、一例として、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン等の三級アミンが挙げられる。また、三級アミン、二級アミン、一級アミンのうちの一種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。前記第1組成物は三級アミン塩を含有していることが好ましい。前記第1組成物における前記非四級アミンのうち少なくとも一種は三級アミンであることが好ましい。
【0015】
従来品よりも高電圧での使用を可能にする観点から、陽極箔の皮膜耐電圧は80[V]以上にしてもよく、120[V]以上にしてもよい。また、より高電圧での使用を可能にする観点から、電解液における四級化環状アミジニウム塩の割合を20[重量%]以下にしてもよく、15[重量%]以下にしてもよい。特に、100[V]の電圧での使用を可能にするため、陽極箔の皮膜耐電圧を120[V]以上にするとともに、電解液の四級化環状アミジニウム塩の割合を15[重量%]以下にしてもよい。
【0016】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に導入された電解液を備えた電解コンデンサの製造方法であって、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとで構成された四級化環状アミジニウム塩を有機溶媒に含有させた第1溶液を調製する第1ステップと、一種以上の有機酸と一種以上の非四級アミンからなる第1組成物であって前記非四級アミンの共役酸のpKaは12以下である前記第1組成物を前記第1溶液に加えることで前記電解液における前記四級化環状アミジニウムカチオンのモル数に対する前記非四級アミンのモル数のモル比を調整し定格電圧50V以上に対応させる第2ステップを有することを特徴とする。
【0017】
この製造方法によれば、第1溶液における四級化環状アミジニウム塩の濃度を定格電圧50V以上に対応させるように調製し所望の電解液を調整できる。そして、四級化環状アミジニウム塩を含有する電解液の低比抵抗特性によって低ESRにできるとともに、第1組成物を含有する電解液によって良好な耐液漏れ性が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、四級化環状アミジニウム塩を含有する電解液の低比抵抗特性によって低ESRにできるとともに、第1組成物を含有する電解液によって良好な耐液漏れ性が得られて50V以上の電圧で使用可能にできる。したがって、低ESRであり、かつ、良好な耐液漏れ性を有し、信頼性を高めた構成の電解コンデンサが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の実施形態に係る電解コンデンサの概略構造を側面側から示す部分断面図である。
図2図2Aはリード端子と陽極箔並びにリード端子と陰極箔との位置関係を示す概略の図であり、図2Bは陽極箔、第1セパレータ、陰極箔、第2セパレータの順に重ねて巻回している状態の概略の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。電解コンデンサ1は、図1図2Aおよび図2Bに示すように、電解液2eが導入されている巻回型のコンデンサ素子2と、リード端子5およびリード端子6と、貫通穴が二箇所に形成された封口体3と、コンデンサ素子2を収納する有底形状のケース4とを備えており、ケース4の開口側が封口体3によって封止されている構成である。封口体3は、水分の浸入や酸化皮膜修復物質の飛散を防止するために高気密性を有し、ケース4の内側形状に合わせた略円柱形状になっている。ケース4はアルミニウム等の金属を加工し成形しており、封口体3は絶縁性ゴム組成物からなる。
【0021】
陽極箔2aはアルミニウム等の弁金属からなり、表面はエッチング処理により粗面化された後、化成処理によって酸化皮膜が形成されている。陰極箔2cはアルミニウム等の弁金属からなり、表面はエッチング処理により粗面化された後、自然酸化または化成処理によって酸化皮膜が形成されている。陽極箔2aと陰極箔2cとの間には第1セパレータ2d1または第2セパレータ2d2が配されている。第1セパレータ2d1並びに第2セパレータ2d2は、天然繊維や化学繊維を含む紙、不織布等が使用できる。天然繊維の原料としては、一例として、木材、マニラ麻、エスパルト等が挙げられる。化学繊維としては、一例として、レーヨン等が挙げられ、再生繊維を用いる場合もある。
【0022】
図2Bに示すように、コンデンサ素子2は、酸化皮膜が形成された陽極箔2a、第1セパレータ2d1、陰極箔2c、第2セパレータ2d2の順に重ねられ巻回される。そして、コンデンサ素子2に電解液2eが含浸される。
【0023】
一例として、電解液2eは、有機溶媒としてγ-ブチロラクトンを含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を5重量%以上25重量%以下の割合で含有し、かつ、一種以上の有機酸と一種以上の非四級アミンからなる第1組成物を5重量%以上含有し前記第1組成物を含有しない基準電解液におけるγ-ブチロラクトンの一部を前記第1組成物に置き換えた構成である。
【0024】
続いて、電解液の例A1、A2、B、C1、C2、D1,D2について、以下に説明する。
【0025】
[電解液の例A1]
γ-ブチロラクトンを80[重量%]含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を20[重量%]含有している構成である。四級化環状アミジニウム塩は、フタル酸と1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムとの塩である。第1組成物は含有していない。ホウ酸は含有していない。糖アルコール類は含有していない。
【0026】
[電解液の例A2]
γ-ブチロラクトンを85[重量%]含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を5[重量%]含有し、ホウ酸を4[重量%]添加し、マンニトールを6[重量%]添加している構成である。四級化環状アミジニウム塩は、フタル酸と1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムとの塩である。第1組成物は含有していない。
【0027】
[電解液の例B]
γ-ブチロラクトンを73[重量%]含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を20[重量%]含有し、ホウ酸を3[重量%]添加し、マンニトールを4[重量%]添加している構成である。四級化環状アミジニウム塩は、フタル酸と1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムとの塩である。第1組成物は含有していない。
【0028】
[電解液の例C1]
γ-ブチロラクトンを70[重量%]含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を20[重量%]含有し、さらに、アジピン酸とトリエチルアミンとが重量比で8:2の割合で構成された第1組成物を10[重量%]含有している構成である。四級化環状アミジニウム塩は、フタル酸と1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムとの塩である。電解液の例C1は、電解液の例A1を基準電解液として当該基準電解液におけるγ-ブチロラクトンの一部を同じ重量割合の前記第1組成物に置き換えて比抵抗を当該基準電解液の約1.6倍にした構成である。γ-ブチロラクトンを含有し、四級化環状アミジニウム塩を含有した第1溶液を用意し、その後、第1組成物を構成するアジピン酸とトリエチルアミンを前記第1溶液に加えることで、電解液の例C1を調製した。
【0029】
[電解液の例C2]
γ-ブチロラクトンを70[重量%]含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を20[重量%]含有し、さらに、アゼライン酸とトリエチルアミンとが重量比で8.5:1.5の割合で構成された第1組成物を10[重量%]含有している構成である。四級化環状アミジニウム塩は、フタル酸と1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムとの塩である。電解液の例C2は、電解液の例A1を基準電解液として当該基準電解液におけるγ-ブチロラクトンの一部を同じ重量割合の前記第1組成物に置き換えて比抵抗を当該基準電解液の約1.6倍にした構成である。γ-ブチロラクトンを含有し、四級化環状アミジニウム塩を含有した第1溶液を用意し、その後、第1組成物を構成するアゼライン酸とトリエチルアミンを前記第1溶液に加えることで、電解液の例C2を調製した。
【0030】
[電解液の例D1]
γ-ブチロラクトンを80[重量%]含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を5[重量%]含有し、ホウ酸を4[重量%]添加し、マンニトールを6[重量%]添加しており、さらに、等モルのフタル酸とトリエチルアミンからなる第1組成物を5[重量%]含有している構成である。四級化環状アミジニウム塩は、フタル酸と1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムとの塩である。電解液の例D1は、電解液の例A2を基準電解液として当該基準電解液におけるγ-ブチロラクトンの一部を同じ重量割合の前記第1組成物に置き換えて比抵抗を当該基準電解液の約0.9倍にした構成であるγ-ブチロラクトンを含有し、四級化環状アミジニウム塩を含有した第1溶液を用意し、その後、第1組成物を構成するフタル酸とトリエチルアミンを前記第1溶液に加えることで、電解液の例D1を調製した。
【0031】
[電解液の例D2]
γ-ブチロラクトンを75[重量%]含有し、酸アニオンと四級化環状アミジニウムカチオンとが等モルで構成された四級化環状アミジニウム塩を5[重量%]含有し、ホウ酸を4[重量%]添加し、マンニトールを6[重量%]添加しており、さらに、等モルのフタル酸とトリエチルアミンからなる第1組成物を10[重量%]含有している構成である。四級化環状アミジニウム塩は、フタル酸と1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムとの塩である。電解液の例D2は、電解液の例A2を基準電解液として当該基準電解液におけるγ-ブチロラクトンの一部を同じ重量割合の前記第1組成物に置き換えて比抵抗を当該基準電解液の約1.1倍にした構成である。γ-ブチロラクトンを含有し、四級化環状アミジニウム塩を含有した第1溶液を用意し、その後、第1組成物を構成するフタル酸とトリエチルアミンを前記第1溶液に加えることで、電解液の例D2を調製した。
【0032】
続いて、コンデンサ素子の例E~Hについて、以下に説明する。
【0033】
[コンデンサ素子の例E]
陽極箔2aおよび陰極箔2cはアルミニウム製であり、第1セパレータ2d1および第2セパレータ2d2はレーヨンが60[重量%]以上含有されている。陽極箔の皮膜耐電圧は65[V]以上である。陽極箔2aの厚さは90[μm]であり、陰極箔2cの厚さは50[μm]であり、第1セパレータ2d1の厚さは50[μm]であり、第2セパレータ2d2の厚さは50[μm]である。陽極箔2aと第1セパレータ2d1と陰極箔2cと第2セパレータ2d2の厚さの合計は240[μm]である。
【0034】
[コンデンサ素子の例F]
陽極箔2aおよび陰極箔2cはアルミニウム製であり、第1セパレータ2d1および第2セパレータ2d2はレーヨンが60[重量%]以上含有されている。陽極箔の皮膜耐電圧は65[V]以上である。陽極箔2aの厚さは70[μm]であり、陰極箔2cの厚さは50[μm]であり、第1セパレータ2d1の厚さは40[μm]であり、第2セパレータ2d2の厚さは40[μm]である。陽極箔2aと第1セパレータ2d1と陰極箔2cと第2セパレータ2d2の厚さの合計は200[μm]である。
【0035】
[コンデンサ素子の例G]
陽極箔2aおよび陰極箔2cはアルミニウム製であり、第1セパレータ2d1および第2セパレータ2d2はレーヨンが60[重量%]以上含有されている。陽極箔の皮膜耐電圧は65[V]以上である。陽極箔2aの厚さは65[μm]であり、陰極箔2cの厚さは40[μm]であり、第1セパレータ2d1の厚さは40[μm]であり、第2セパレータ2d2の厚さは40[μm]である。陽極箔2aと第1セパレータ2d1と陰極箔2cと第2セパレータ2d2の厚さの合計は185[μm]である。
【0036】
[コンデンサ素子の例H]
陽極箔2aおよび陰極箔2cはアルミニウム製であり、第1セパレータ2d1および第2セパレータ2d2はレーヨンが60[重量%]以上含有されている。陽極箔の皮膜耐電圧は120[V]以上である。陽極箔2aの厚さは70[μm]であり、陰極箔2cの厚さは50[μm]であり、第1セパレータ2d1の厚さは40[μm]であり、第2セパレータ2d2の厚さは40[μm]である。陽極箔2aと第1セパレータ2d1と陰極箔2cと第2セパレータ2d2の厚さの合計は200[μm]である。
【0037】
続いて、電解液の例A1、B、C1、C2とコンデンサ素子の例E~Gとを組み合わせて、定格電圧50[V]、静電容量33[μF]の電解コンデンサをそれぞれ10個ずつ試作した。そして、温度25[℃]、周波数100[kHz]におけるESRを測定して平均値を算出し、その後、温度85[℃]、湿度85[%RH]の恒温恒湿槽に入れて、定格電圧50[V]を印加する負荷試験を1,000[時間]実施し、試験後における液漏れの有無を確認した。性能評価結果を次の表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1によれば、電解液の例A1並びにBを用いた参考例1~3は、いずれも液漏れが発生した。また、電解液の例A1を用いた参考例1は、電解液の耐電圧が不十分であり、定格電圧以上の電圧を印加する所定のエージング工程における良品率が他の例よりも劣っていた。これに対して、電解液の例C1並びにC2を用いた実施例1~6は、いずれも液漏れは発生しなかった。尚且つ、定格電圧以上の電圧を印加する所定のエージング工程における良品率も良好であり、第1組成物を含有する電解液2eによって良好な耐液漏れ性と十分な耐電圧特性が得られることが確認できた。特に、コンデンサ素子の例Fまたはコンデンサ素子の例Gを用いることでコンデンサ素子の例Eを用いた構成よりも低ESRになり、また、コンデンサ素子の例Gを用いることでコンデンサ素子の例Fを用いた構成よりもさらに低ESRになることが確認できた。
【0040】
続いて、電解液の例A2、D1、D2とコンデンサ素子の例Hとを組み合わせて、定格電圧100[V]、静電容量22[μF]の電解コンデンサをそれぞれ10個ずつ試作した。そして、温度25[℃]、周波数100[kHz]におけるESRを測定して平均値を算出し、その後、温度85[℃]、湿度85[%RH]の恒温恒湿槽に入れて、定格電圧100[V]を印加する負荷試験を5,000[時間]実施し、試験後における液漏れの有無を確認した。性能評価結果を次の表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2によれば、電解液の例A2を用いた参考例4は、液漏れが発生した。これに対して、電解液の例D1並びにD2を用いた実施例7~8は、いずれも液漏れは発生しておらず、第1組成物を含有する電解液2eによって良好な耐液漏れ性が得られることが確認できた。特に、コンデンサ素子の例Hを用いることで良好な低ESRになることが確認できた。したがって、第1組成物を含有する電解液2eによる耐液漏れ性向上作用の効果は顕著である。
【0043】
本発明は、上述の実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
2a 陽極箔
2c 陰極箔
2e 電解液
3 封口体
4 ケース
5 リード端子
6 リード端子
図1
図2