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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178350
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】自動操縦作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/00 20060101AFI20221125BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A01B63/00 B
A01B69/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085097
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】青井 航一
(72)【発明者】
【氏名】倉富 夏菜
【テーマコード(参考)】
2B043
2B304
【Fターム(参考)】
2B043AA03
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA17
2B043EA33
2B043EE02
2B304KA16
2B304KA19
2B304LA02
2B304LA03
2B304LA04
2B304LB05
2B304LC18
2B304MB06
2B304QA05
2B304RB02
2B304RB06
2B304RB07
(57)【要約】
【課題】本発明は、走行車体の後部に作業機を装着する自動操縦作業車両が一般道路を走行しようとした場合に遠隔管理者に低速走行車マークの装着が必要であることを知らせたり、自動的に低速走行車マークを表示したりすることによって安全を図ることが課題である。
【解決手段】機体位置を認識する測位装置20と送信器21を設け、走行制御15で走行装置を制御して作業地内を自動走行する自動操縦作業車両において、走行車体1に低速車マーク70を装着しないで作業地から一般道路に移動しようとすると、送信器21から管理者の持つ通信端末24に低速走行車マーク不表示の警報を発信して通知することを特徴とする自動操縦作業車両とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体位置を認識する測位装置(20)と送信器(21)を設け、走行制御(15)で走行装置を制御して作業地内を自動走行する自動操縦作業車両において、走行車体(1)に低速車マーク(70)を装着しないで作業地から一般道路に移動しようとすると、送信器(21)から管理者の持つ通信端末(24)に低速走行車マーク不表示の警報を発信して通知することを特徴とする自動操縦作業車両。
【請求項2】
走行車体(1)に低速車マーク(70)を非装着のままで作業地から一般道路に移動しようとすると、走行を一旦停止することを特徴とする請求項1に記載の自動操縦作業車両。
【請求項3】
測位装置(20)で機体位置を認識して作業地内を自動走行する走行制御(15)を有する自動操縦作業車両であって、走行車体(1)が作業地から一般道路に向かって走行を開始すると機体後部の作業機(22)を所定の高さに上昇することを特徴とする自動操縦作業車両。
【請求項4】
測位装置(20)で機体位置を認識して作業地内を自動走行する走行制御(15)を有する自動操縦作業車両であって、走行車体(1)の後方から見える位置に低速車マーク(70)を写すマーク映写機(34)を設け、走行車体(1)が作業地から一般道路に入ると前記マーク映写機(34)で低速車マーク(70)を走行車体(1)に投影することを特徴とする自動操縦作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業地の地形を認識して自動操縦を行う自動操縦作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農地作業や土木作業に使用する作業車両は、一般道路を走行する場合には、走行速度が一般車両と比較して低速であるために、車体の後部に低速車マーク(低速走行車マーク)を表示して、後続する一般車両に注意を促すようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の作業車両は、車体の後部に装着した作業機を上昇させて走行するが、作業機を上昇させて車体の後部に装着する低速走行車マークが後方から確認できない状態であると作業車両を操縦する作業者にそのことを警報して注意を促すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-108687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動操縦作業車両は、圃場などの作業地では低速走行車マークを付けずに自動操縦で作業を行うようにしているが、作業地から一般道路に出る場合には低速走行車マークを車体に付けて低速走行する車両であることを知らさなければならない。
【0006】
そのために、本発明は、走行車体の後部に作業機を装着する自動操縦作業車両が一般道路を走行しようとした場合に遠隔管理者に低速走行車マークの装着が必要であることを知らせたり、自動的に低速走行車マークを表示したりすることによって安全を図ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、機体位置を認識する測位装置20と送信器21を設け、走行制御15で走行装置を制御して作業地内を自動走行する自動操縦作業車両において、走行車体1に低速車マーク70を装着しないで作業地から一般道路に移動しようとすると、送信器21から管理者の持つ通信端末24に低速走行車マーク不表示の警報を発信して通知することを特徴とする自動操縦作業車両とする。
【0009】
請求項2の発明は、走行車体1に低速車マーク70を非装着のままで作業地から一般道路に移動しようとすると、走行を一旦停止することを特徴とする請求項1に記載の自動操縦作業車両とする。
【0010】
請求項3の発明は、測位装置20で機体位置を認識して作業地内を自動走行する走行制御15を有する自動操縦作業車両であって、走行車体1が作業地から一般道路に向かって走行を開始すると機体後部の作業機22を所定の高さに上昇することを特徴とする自動操縦作業車両とする。
【0011】
請求項4の発明は、測位装置20で機体位置を認識して作業地内を自動走行する走行制御15を有する自動操縦作業車両であって、走行車体1の後方から見える位置に低速車マーク70を写すマーク映写機34を設け、走行車体1が作業地から一般道路に入ると前記マーク映写機34で低速車マーク70を走行車体1に投影することを特徴とする自動操縦作業車両とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明で、自動操縦作業車両は測位装置20で走行車体1の地形地図上の位置を認識しながら走行制御15で走行装置を制御して自動操縦で作業地内を走行して作業するが、作業を終了して一般道路に移動しようとすると、管理者の持つ通信端末24に低速走行車マーク不表示の警報を発信して通知するので、管理者が自動操縦作業車両に近づいて低速車マーク70を取り付けることが出来るので、低速車マーク70が無いままで一般道路を走行することが無く、安全である。
【0013】
請求項2の発明で、自動操縦作業車両が低速車マーク70を非装着のままで作業地から一般道路に移動しようとすると、走行を一旦停止するので、管理者が余裕をもって自動操縦作業車両に近づいて低速車マーク70を取り付けることが出来る。
【0014】
請求項3の発明で、走行車体1が作業地から一般道路に向かって走行を開始すると機体後部の作業機22を走行に支障の無い所定の高さに上昇するので、作業機22が路面を傷付けることなく、安全に走行できる。
【0015】
請求項4の発明で、自動操縦作業車両の走行車体1が作業地から一般道路に入るとマーク映写機34で低速車マーク70を後方から視認出来るように投影することで、管理者が何もすることなく、一般道路を安全にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例を示す自動操縦作業車両の左側面図である。
図2】本発明の実施例を示す自動操縦作業車両の右側面図である。
図3】本発明の実施例を示す自動操縦作業車両の昇降シリンダケース部分の詳細図である。
図4】本発明の実施例を示す自動操縦作業車両の制御装置のブロック図である。
図5】本発明の実施例を示す自動操縦作業車両の低速車マークの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0018】
なお、本明細書では運転席を設ける自動操縦作業車両の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【0019】
図示の例では、作業者が搭乗して操縦操作を行っているが、管理者として作業者が畦際に立って管理しながら自動操縦も行える自動操縦作業車両の実施例として、作業機としてロータリ耕耘装置を装着したトラクタの左側面図を示し、図2には同じく右側面図を示す。また、図3には図2の昇降シリンダケース部分の詳細図を示し、図4には、制御装置のブロック図を示す。尚、作業車両としては、防除装置、刈草装置等の作業機を装着した作業車両でも良い。
【0020】
トラクタは、左右前輪2、2と左右後輪3、3を備えた走行車体1の前部にエンジンEを搭載し、その回転動力をミッションケース4内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪2、2と後輪3、3の四輪に伝えるように構成している。
【0021】
走行車体1の中央に配置されるハンドルポスト5にはステアリングハンドル6が支持され、その後方には運転席7が設けられている。ステアリングハンドル6の下方には、走行車体1の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー8が設けられている。また、ハンドルポスト5を挟んで前後進レバー8の反対側のステップフロア12の左コーナー部には、クラッチを調節するクラッチペダル9が設けられ、ステップフロア12の右コーナー部には左右の後輪3、3にブレーキをそれぞれ作動させる左右のブレーキペダル10L、10RとエンジンEの回転を増減速するアクセルペダル11が設けられている。なお、アクセルペダル11は主として路上走行時に走行速度を変速調整するために使用し、踏み込みをペダルセンサ41で検出する。
【0022】
また、主変速装置(図示せず)を中立と1速、2速、3速とに切り換える主変速レバー14は運転席7の左前方部にあり、副変速装置(図示せず)を低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー16はその後方にあり、更にその後方にはロータリ耕耘装置の回転速度を、低速、中立、高速とに変更するPTO変速レバー17を設けている。これらの変速装置は、ギアなどのメカ機構、油圧クラッチなどの油圧駆動式のものなどがある。なお、副変速レバー16は路上走行に適した高速に変速すると、副変速センサ43で変速操作を検出する。
【0023】
更にその右側にはエンジンEの回転を作業に適した回転数に設定する作業回転設定レバー13や作業機22の高さを設定するポジションレバー18などが配置されている。また安全フレーム(ロプスとも言う)19が運転席7の後方に立設されている。
【0024】
ポジションレバー18の基部には、操作位置を検出するポジションレバーセンサ(ポテンショメータなど)18a(図4)が設けられている。作業機22は、後輪3のアクスルケース23に固着する支持部材25と支持部材25に回動可能に連結する支持アーム27を介して、走行車体1の後部に連結している。また、昇降シリンダ30のピストンロッド30aの先端部には回動アーム32の一端が連結し、回動アーム32の他端は回動アーム軸33に固着している。回動アーム軸33には、リフトアーム50の一端も固着しており、リフトアーム50の他端には、リフトロッド51の一端が回動可能に連結している。また、リフトロッド51の他端は前記支持アーム27に回動可能に連結している。
【0025】
ポジションレバー18を運転者が前方に操作すると、電磁油圧バルブ(昇降ソレノイドバルブ)40の上昇側ソレノイド40aが作動して昇降シリンダケース35内の昇降シリンダ30が伸張し、回動アーム32が回動アーム軸33を回転させることで、リフトアーム50が回動アーム軸33を支点として矢印A方向(上方)に回動し、リフトロッド51及び支持アーム27を介して作業機22が上昇する。同様に、ポジションレバー18を運転者が後方に操作すると、下降側ソレノイド40bが作動して昇降シリンダケース35内の昇降シリンダ30が収縮し、リフトアーム50が回動アーム軸33を支点として矢印A方向とは反対方向(下方)に回動することで、作業機22が下降する。
【0026】
走行車体1の運転席7後部に安全フレーム19を立設し、この安全フレーム19の後下部に低速車マーク70を着脱可能に設け、マークセンサ60で低速車マーク70の取付を検出し、低速車マーク70を取り外すとオフとなって検出しない。
【0027】
マークセンサ60のセンサ信号が制御装置100に入力し、圃場から一般道路に出る際に低速車マーク70を装着していないと、制御装置100からメータパネル63上にある報知ブザー65や報知ランプ67に信号が出力されることで、報知ブザー65が鳴ったり、報知ランプ67が点灯したりする。尚、報知ブザー65と報知ランプ67は両方設けても良いが、どちらか一方でも構わない。また、ブザーやランプに限らず、音声やパネル上に絵や文字が表示されるなど、聴覚又は視覚によって認識できる報知手段であれば良い。
【0028】
さらに、自動スイッチ45をオンして自動操縦状態にしている場合は、送信器(送信機)21から作業管理者の持つ通信端末24へ低速車マークが非装着であることを通知する。
【0029】
なお、制御装置100は、測位衛星からの電波を受けて、走行車体1が圃場地図上のどの位置に居るかを認識し、圃場から一般道路に移動しようとすると上記の警報通知を行い、走行制御15が前輪2,2と後輪3,3からなる走行装置の駆動を止めて走行を一旦停止し、所定時間が経過するとエンジンも停止する。その後、作業者が走行車体1に近づき低速車マーク70を取り付けて自動走行を再開できる。
【0030】
農業用の作業車両は、一般の自動車と比較して走行速度の遅いものが多く、特に夕方から夜間に掛けては後方から接近する自動車からの認知が遅れやすい。そこで、路上を走行する場合は低速車マークを機体後部に装着して走行することで安全な走行が図られる。
【0031】
低速車マーク70の正面図を図5に示す。
【0032】
低速車マーク70は略三角形状であり、三角形状部材70aの周囲に反射板70bが設置されている。後続車両の前照灯により反射板70bの部分が三角形の輪郭として浮かび上がることで、車両の存在が認識される。
【0033】
図4の自動制御ブロック図において、制御装置100には、アクセルペダル11の踏み込み操作がアクセルセンサ46からオン信号として入力し、副変速レバー16の高速への変速操作が副変速センサ43のオン信号として入力し、低速車マーク70がマーク取付部44に取り付けられているとマークセンサ42のオン信号として入力する。
【0034】
さらに、測位装置20が測位衛星からの電波で走行車体1の圃場地図上の位置情報が入力、自動スイッチ45の入力によって走行制御15が圃場内を自動走行して作業する。
【0035】
また、低速車マーク70をマーク取付部44に取り付けない状態で、アクセルペダル11を踏み込んだり副変速レバー16を高速位置に変速操作したり路上走行モードS1に設定すると、報知ブザー65や報知ランプ67が駆動されて、作業車の操縦者に気付かせ、
報知ブザー65や報知ランプ67による警告後に、作業者が走行開始を止めて低速車マーク70をマーク取付部44に取り付けると、路上走行を支障なく開始できる。
【0036】
圃場内での作業走行が終了して低速車マーク70を装着せずに一般道路に移動しようとする場合は、報知ランプ67が点滅し、報知ブザー65が断続的に鳴るようにし、走行を停止し、送信器21から作業者の持つ通信端末24に低速車マークが非装着であることを通知する。通知を受けた作業車は低速車マーク70を所定位置に装着することで走行を再開できる。
【0037】
また、一般道路に移動しようとする場合には、作業機22を所定高さに自動或いは遠隔操作で上昇させて道路を傷つけないようにする。
【0038】
さらに、着脱する低速車マーク70が無く、マーク映写機34を設ける場合は、一般道路に移動しようとする場合に、走行車体1の適宜位置に設けるマーク映写機34で安全フレーム19の後窓に低速車マーク70を投射させるようにする。
【符号の説明】
【0039】
1 走行車体
15 走行制御
20 測位装置
21 送信器
22 作業機
24 通信端末
34 マーク映写機
70 低速車マーク
図1
図2
図3
図4
図5