(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178407
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】プラント運転訓練システム、同期方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20221125BHJP
G16Z 99/00 20190101ALI20221125BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20221125BHJP
【FI】
G09B9/00 A
G16Z99/00
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085184
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】大石 晃敬
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC34
5L049DD02
(57)【要約】
【課題】よりリアリティの高いプラント運転の訓練環境を実現すること。
【解決手段】実施形態のプラント運転訓練システムは、シミュレーションにより対象プラントの仮想モデルである仮想プラントを生成するシミュレータ装置と、前記対象プラントを仮想現実空間に再現したVRプラントの映像を表示する端末装置と、を備え、前記シミュレータ装置は、前記仮想プラントの状態を前記端末装置に通知するための同期情報を生成して前記端末装置に供給する第1同期部を備え、前記端末装置は、前記シミュレータ装置から供給される前記同期情報に基づいて前記VRプラントの状態を更新する第2同期部と、前記第2同期部によって管理される前記VRプラントの状態に基づいて前記VRプラントの映像を生成する表示制御部と、を備えるプラント運転訓練システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレーションにより対象プラントの仮想モデルである仮想プラントを生成するシミュレータ装置と、
前記対象プラントを仮想現実空間に再現したVRプラントの映像を表示する端末装置と、
を備え、
前記シミュレータ装置は、
前記仮想プラントの状態を前記端末装置に通知するための同期情報を生成して前記端末装置に供給する第1同期部を備え、
前記端末装置は、
前記シミュレータ装置から供給される前記同期情報に基づいて前記VRプラントの状態を更新する第2同期部と、
前記第2同期部によって管理される前記VRプラントの状態に基づいて前記VRプラントの映像を生成する表示制御部と、
を備えるプラント運転訓練システム。
【請求項2】
前記端末装置は、
前記VRプラントの操作端に対する状態変更操作の入力を受け付ける入力部をさらに備え、
前記第2同期部は、前記状態変更操作を示す同期情報を前記シミュレータ装置に供給するとともに、前記状態変更操作による前記操作端の状態変更が前記仮想プラントに反映されたことを示す同期情報が前記シミュレータ装置から受信されたことに応じて前記操作端の状態変更を前記VRプラントの状態に反映する、
請求項1に記載のプラント運転訓練システム。
【請求項3】
前記シミュレータ装置および前記端末装置は、前記同期情報のフォーマットを定義したインタフェース情報を予め共有しており、
前記第2同期部は、前記インタフェース情報に基づいて前記同期情報を生成し、
前記第1同期部は、前記同期情報および前記インタフェース情報に基づいて前記状態変更操作の対象および操作の内容を認識する、
請求項2に記載のプラント運転訓練システム。
【請求項4】
前記シミュレータ装置および前記端末装置は、前記同期情報のフォーマットを定義したインタフェース情報を予め共有しており、
前記第1同期部は、前記インタフェース情報に基づいて前記同期情報を生成し、
前記第2同期部は、前記同期情報と前記インタフェース情報に基づいて前記仮想プラントの状態を認識する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のプラント運転訓練システム。
【請求項5】
前記インタフェース情報は、前記同期情報により通知される状態を示す情報と、前記状態の主体を示す情報と、前記同期情報の供給先または供給元を示す情報とを含む、
請求項3または4に記載のプラント運転訓練システム。
【請求項6】
前記第2同期部は、前記VRプラントにおける利用者の位置情報を前記シミュレータ装置に供給し、
前記第1同期部は、前記端末装置から供給された前記位置情報に基づき、前記VRプラントにおいて前記利用者を含む所定の範囲内に存在する機器を特定し、前記仮想プラントの状態を示す情報のうち、特定した前記機器に関する情報を前記同期情報として前記端末装置に供給し、
前記第2同期部は、前記シミュレータ装置から供給された前記同期情報に基づき、前記VRプラントにおける前記機器の状態を更新する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のプラント運転訓練システム。
【請求項7】
前記第1同期部は、前記仮想プラントの状態を示す情報のうち、直前の計算結果から状態が変化した要素に関する情報を同期情報として前記端末装置に供給する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のプラント運転訓練システム。
【請求項8】
シミュレーションにより対象プラントの仮想モデルである仮想プラントを生成するシミュレータ装置と、対象プラントが仮想現実空間に再現されたVRプラントの映像を表示する端末装置とが、前記仮想プラントの状態と前記VRプラントの状態とを同期する方法であって、
前記シミュレータ装置が、前記仮想プラントの状態を前記端末装置に通知するための同期情報を生成して前記端末装置に供給する第1同期ステップと、
前記端末装置が、前記シミュレータ装置から供給される前記同期情報に基づいて前記VRプラントの状態を更新する第2同期ステップと、
前記端末装置が、前記第2同期ステップによって管理される前記VRプラントの状態に基づいて前記VRプラントの映像を生成する表示制御ステップと、
を有する同期方法。
【請求項9】
シミュレーションにより対象プラントの仮想モデルである仮想プラントを生成するシミュレータ装置と、対象プラントが仮想現実空間に再現されたVRプラントの映像を表示する端末装置とを備えるプラント運転訓練システムにおいて、
前記シミュレータ装置に、前記仮想プラントの状態を前記端末装置に通知するための同期情報を生成して前記端末装置に供給する第1同期ステップを実行させ、
前記端末装置に、前記シミュレータ装置から供給される前記同期情報に基づいて前記仮想プラントの状態を更新する第2同期ステップを実行させ、
前記端末装置に、前記第2同期ステップによって管理される前記仮想プラントの状態に基づいて前記仮想プラントの映像を生成する表示制御ステップを実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント運転訓練システム、同期方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の3Dモデルデータに基づいて仮想空間内にアバターを表示するとともに、当該アバターをユーザの操作に応じて動作させ、仮想空間内の機器とアバターの位置関係に基づいて当該機器のインタフェース詳細画面を表示させるプラント運転訓練装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術によるプラント運転の訓練は、プラント運転の訓練を受ける者が、仮想空間が表示されたモニタを見ながらアバターを操作するものであるためリアリティに欠け、必ずしも効果的な訓練とならない可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、よりリアリティの高いプラント運転の訓練環境を実現することができるプラント運転訓練システム、同期方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シミュレーションにより対象プラントの仮想モデルである仮想プラントを生成するシミュレータ装置と、前記対象プラントを仮想現実空間に再現したVRプラントの映像を表示する端末装置と、を備え、前記シミュレータ装置は、前記仮想プラントの状態を前記端末装置に通知するための同期情報を生成して前記端末装置に供給する第1同期部を備え、前記端末装置は、前記シミュレータ装置から供給される前記同期情報に基づいて前記VRプラントの状態を更新する第2同期部と、前記第2同期部によって管理される前記VRプラントの状態に基づいて前記VRプラントの映像を生成する表示制御部と、を備えるプラント運転訓練システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記のプラント運転訓練システムであって、前記端末装置は、前記VRプラントの操作端に対する状態変更操作の入力を受け付ける入力部をさらに備え、前記第2同期部は、前記状態変更操作を示す同期情報を前記シミュレータ装置に供給するとともに、前記状態変更操作による前記操作端の状態変更が前記仮想プラントに反映されたことを示す同期情報が前記シミュレータ装置から受信されたことに応じて前記操作端の状態変更を前記VRプラントの状態に反映する。
【0008】
本発明の一態様は、上記のプラント運転訓練システムであって、前記シミュレータ装置および前記端末装置は、前記同期情報のフォーマットを定義したインタフェース情報を予め共有しており、前記第2同期部は、前記インタフェース情報に基づいて前記同期情報を生成し、前記第1同期部は、前記同期情報および前記インタフェース情報に基づいて前記状態変更操作の対象および操作の内容を認識する。
【0009】
本発明の一態様は、上記のプラント運転訓練システムであって、前記シミュレータ装置および前記端末装置は、前記同期情報のフォーマットを定義したインタフェース情報を予め共有しており、前記第1同期部は、前記インタフェース情報に基づいて前記同期情報を生成し、前記第2同期部は、前記同期情報と前記インタフェース情報に基づいて前記仮想プラントの状態を認識する。
【0010】
本発明の一態様は、上記のプラント運転訓練システムであって、前記インタフェース情報は、前記同期情報により通知される状態を示す情報と、前記状態の主体を示す情報と、前記同期情報の供給先または供給元を示す情報とを含む。
【0011】
本発明の一態様は、上記のプラント運転訓練システムであって、前記第2同期部は、前記VRプラントにおける利用者の位置情報を前記シミュレータ装置に供給し、前記第1同期部は、前記端末装置から供給された前記位置情報に基づき、前記VRプラントにおいて前記利用者を含む所定の範囲内に存在する機器を特定し、前記仮想プラントの状態を示す情報のうち、特定した前記機器に関する情報を前記同期情報として前記端末装置に供給し、前記第2同期部は、前記シミュレータ装置から供給された前記同期情報に基づき、前記VRプラントにおける前記機器の状態を更新する。
【0012】
本発明の一態様は、上記のプラント運転訓練システムであって、前記第1同期部は、前記仮想プラントの状態を示す情報のうち、直前の計算結果から状態が変化した要素に関する情報を同期情報として前記端末装置に供給する。
【0013】
本発明の一態様は、シミュレーションにより対象プラントの仮想モデルである仮想プラントを生成するシミュレータ装置と、対象プラントが仮想現実空間に再現されたVRプラントの映像を表示する端末装置とが、前記仮想プラントの状態と前記VRプラントの状態とを同期する方法であって、前記シミュレータ装置が、前記仮想プラントの状態を前記端末装置に通知するための同期情報を生成して前記端末装置に供給する第1同期ステップと、前記端末装置が、前記シミュレータ装置から供給される前記同期情報に基づいて前記VRプラントの状態を更新する第2同期ステップと、前記端末装置が、前記第2同期ステップによって管理される前記VRプラントの状態に基づいて前記VRプラントの映像を生成する表示制御ステップと、を有する同期方法である。
【0014】
本発明の一態様は、シミュレーションにより対象プラントの仮想モデルである仮想プラントを生成するシミュレータ装置と、対象プラントが仮想現実空間に再現されたVRプラントの映像を表示する端末装置とを備えるプラント運転訓練システムにおいて、前記シミュレータ装置に、前記仮想プラントの状態を前記端末装置に通知するための同期情報を生成して前記端末装置に供給する第1同期ステップを実行させ、前記端末装置に、前記シミュレータ装置から供給される前記同期情報に基づいて前記仮想プラントの状態を更新する第2同期ステップを実行させ、前記端末装置に、前記第2同期ステップによって管理される前記仮想プラントの状態に基づいて前記仮想プラントの映像を生成する表示制御ステップを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、よりリアリティの高いプラント運転の訓練環境を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態のプラント運転訓練システムの構成例を示す図である。
【
図2】VRデータに含まれる三次元データの一例を示す図である。
【
図3】VRプラントの各オブジェクトの状態を視覚的に識別することができるように構成されたVR映像の一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態におけるIF情報の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態のVR端末装置においてバルブV1の開度を変更する操作が入力された場合のVR映像の表示例を示す図である。
【
図6】第1実施形態のプラントシミュレータが実行する第1同期処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態のVR端末装置が実行する第2同期処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】VR端末装置とプラントシミュレータとの連携動作により、或る操作端について変更された状態がVRプラントと仮想プラントとの間で同期される流れの一例を示すシーケンスチャートである。
【
図9】第2実施形態のプラント運転訓練システムの構成例を示す図である。
【
図10】第2実施形態の同期部が同期情報により仮想プラントの状態変化を通知する範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のプラント運転訓練システム1Aの構成例を示す図である。
図1に示すプラント運転訓練システム1Aは、対象プラントの仮想モデル(以下「仮想プラント」という。)を用いて対象プラントの運転操作を訓練するシステムである。プラント運転訓練システム1Aは、例えばVR端末装置10およびプラントシミュレータ20を備える。VR端末装置10とプラントシミュレータ20とはネットワークNWを介して通信可能である。VR端末装置10およびプラントシミュレータ20は、ネットワークNWを介して同期情報をやり取りすることにより、それぞれが管理する仮想プラントの状態を同期する。
【0018】
例えば、VR端末装置10は、いわゆるVRゴーグルであり、利用者に仮想現実(VR:Virtual Reality)を知覚させることができる頭部装着型の端末装置である。VR端末装置10は、プラントシミュレータ20によって管理される仮想プラントの状態に基づいて対象プラントを仮想現実空間に再現するとともに、対象プラントが再現された仮想現実空間の映像を(以下「VR映像」という。)をディスプレイに表示する。利用者(訓練対象者)は、VR端末装置10を装着してVR映像を視聴することにより、あたかも自身が実際の対象プラントに存在しているかのような感覚を持ちながら運転操作の訓練を行うことができる。
【0019】
プラントシミュレータ20は、対象プラントのシミュレーションモデルに基づいて仮想プラントを生成する装置である。プラントシミュレータ20は、所定の計算周期ごとに仮想プラントの状態を更新し、更新結果を示す情報を同期情報としてVR端末装置10に供給する。この計算周期ごとに行われる同期情報の供給により、プラントシミュレータ20は、諸条件によって時々刻々と変化する仮想プラントの状態変化を逐次、VR端末装置10に通知することができる。
【0020】
このように構成される第1実施形態のプラント運転訓練システム1Aでは、利用者は、対象プラントにおいて様々な要因で生じ得る様々な経時的変化を視覚的に認知しながら仮想プラントを操作することが要求されるため、より実際の運用に近い感覚で対象プラントの操作を学習することができる。以下、このような効果を奏するVR端末装置10およびプラントシミュレータ20の構成について詳細に説明する。まず先にプラントシミュレータ20の構成について説明した後、VR端末装置10の構成について説明する。
【0021】
プラントシミュレータ20は、記憶部220と、通信部230と、制御部250とを備える。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0022】
記憶部220は、例えば、HDDやフラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部220は、DVDやCD-ROM等の記録媒体により実現されてもよい。記憶部220は、プラントシミュレータ20が実行するプログラムや設定情報などプラントシミュレータ20の動作に関する各種情報を記憶する。
【0023】
例えば、記憶部220は、対象プラントのプロセスモデルを示すプロセスモデルデータと、操作端モデルを示す操作端モデルデータと、プラント制御モデルを示すプラント制御モデルデータと、インタフェース情報(以下「IF情報」という。)とを記憶する。プロセスモデルは、対象プラントにおける操作量と制御量との関係を表現するモデルである。具体的には、プロセスモデルは、操作端モデルから仮想プラントに対する操作量を入力し、入力した操作量によって変化する制御量の時間応答を出力する。プロセスモデルの出力は、時間応答の時系列に同期してプラント制御モデルに入力される。IF情報は、VR端末装置10とプラントシミュレータ20との間で予め共有されている情報であり、両者の間でやり取りされる同期情報のフォーマットを規定する情報である。
【0024】
操作端モデルは、操作端とプロセスモデルとの間の入出力を表現するモデルである。例えば、操作端モデルは、バルブ(操作端の一例)の開度の入力に対して、その開度に応じた流量を計算してプロセスモデルに出力する。このような操作端モデルの機能により、操作端に対して行われた操作をプロセスモデルに反映することができる。
【0025】
プラント制御モデルは、対象プラントの制御方法を表現するモデルである。第1実施形態において、プラント制御モデルは特定の制御方法によるものに限定されないが、例えば、プラント制御モデルによって表される制御方法の一例として、フィードバック制御やフィードフォワード制御、PID制御などの制御方法が挙げられる。プラント制御モデルは、プロセスモデルによって計算された仮想プラントの状態に基づいて対象プラントの操作量を更新していくことにより、仮想プラントを制御目的に応じた状態に制御することができる。なお、プラント制御モデルは、操作端モデルを介してプロセスモデルに操作量を入力してもよいし、プロセスモデルに対して直接、操作量を入力してもよい。
【0026】
通信部230は、プラントシミュレータ20をネットワークNWに接続する通信インタフェースである。通信部230は、無線通信インタフェースであってもよいし、有線通信インタフェースであってもよい。具体的には、通信部230は、制御部250が出力する同期情報をVR端末装置10に送信するとともに、VR端末装置10から同期情報を受信して制御部250に出力する。
【0027】
制御部250は、プロセスシミュレータ251と、操作端シミュレータ252と、プラント制御シミュレータ253と、第1同期部254Aとを備える。プロセスシミュレータ251は、プロセスモデルに基づいて対象プラントのシミュレーションを実行する機能部である。操作端シミュレータ252は、操作端モデルに基づいて操作端のシミュレーションを実行する機能部である。プラント制御シミュレータ253は、プラント制御モデルに基づいて対象プラントの制御をシミュレーションする機能部である。プロセスシミュレータ251と、操作端シミュレータ252と、プラント制御シミュレータ253とが連携して各シミュレーションを実行することにより仮想プラントが生成される。
【0028】
第1同期部254Aは、プラントシミュレータ20が管理する仮想プラントの状態と、VR端末装置10が管理するVRプラントの状態とを同期する機能を有する。具体的には、第1同期部254Aは、シミュレーションの結果を示す同期情報を生成してVR端末装置10に供給する。VR端末装置10では、第2同期部153Aがプラントシミュレータ20から受信された同期情報に基づいてVRプラントの状態を更新し、表示制御部152が更新後のVRプラントの状態に基づいてVR映像を生成する。このような同期情報の連携により、第1同期部254Aは、プラントシミュレータ20が管理する仮想プラントの状態に同期したVR映像をVR端末装置10に表示させることができる。
【0029】
続いて、VR端末装置10の構成について説明する。VR端末装置10は、例えば、入力装置11と、入力部110と、記憶部120と、通信部130と、映像出力部140と、制御部150とを備える。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0030】
入力装置11は、利用者が仮想プラントに関する操作を入力する装置である。例えば入力装置11は、ボタンやスティック、タッチセンサなどの入力素子を備え、これらの出力信号を利用者の操作を示す操作情報として入力部110に出力する。例えば、入力装置11は、利用者が仮想プラントの操作端に対して行った操作や、仮想プラントにおける利用者の視点を変更する操作を入力し、これらの操作を示す情報を操作情報として出力する。
【0031】
入力部110は、入力装置11から利用者の操作情報を入力する。例えば、入力部110は、入力装置11をVR端末装置10に接続する外部入力インタフェースとして構成される。入力部110は、入力装置11から入力した操作情報を制御部150に出力する。
【0032】
記憶部120は、例えば、HDDやフラッシュメモリ、SSD、EEPROM、ROM、RAM等により実現される。記憶部120は、DVDやCD-ROM等の記録媒体により実現されてもよい。記憶部120は、VR端末装置10が実行するプログラムや設定情報などVR端末装置10の動作に関する各種情報を記憶する。
【0033】
例えば、記憶部120は、VRデータと、インタフェース情報(以下「IF情報」という。)とを記憶する。VRデータは、仮想プラントの生成に用いられるデータである。例えば、VRデータには、対象プラントの三次元構造を示す情報(以下「三次元データ」という。)や、対象プラントを構成する各種オブジェクトの画像データなどが含まれる。また、VRデータには、VR映像とともに再生される音声データなどが含まれてもよい。
【0034】
IF情報は、上述のとおり、VR端末装置10とプラントシミュレータ20との間で予め共有される情報であり、両者の間でやり取りされる同期情報のフォーマットを規定する情報である。記憶部120が記憶するIF情報は、プラントシミュレータ20が記憶部220に記憶するIF情報と同じものであってよい。
【0035】
通信部130は、VR端末装置10をネットワークNWに接続する通信インタフェースである。通信部130は、無線通信インタフェースであってもよいし、有線通信インタフェースであってもよい。具体的には、通信部130は、制御部150が出力する同期情報をプラントシミュレータ20に送信するとともに、プラントシミュレータ20から同期情報を受信して制御部150に出力する。
【0036】
映像出力部140は、VR映像を表示するディスプレイや、VR映像に関する音声を出力するスピーカなどを含む。VR映像の表示方式や音声出力の方式は、特定のものに限定されない。例えば、VR映像の表示方式は、網膜投影方式であってもよいし、虚像投影方式であってもよい。また、例えば、音声出力の方式は、空気伝導方式であってもよいし、骨伝導方式であってもよい。
【0037】
制御部150は、入力部110、記憶部120、通信部130および映像出力部140との間で情報を入出力することにより、VR端末装置10の動作を制御する。制御部150は、例えば、VRプラント生成部151と、表示制御部152と、第2同期部153Aとを備える。VRプラント生成部151は、対象プラントを仮想現実空間に再現する機能を有する。以下、仮想現実空間に再現された対象プラントを「VRプラント」と称し、プラントシミュレータ20が生成する仮想プラントと区別することにする。
【0038】
具体的には、VRプラント生成部151は、VRデータを参照し、対象プラントを構成する各オブジェクトの三次元構造を仮想現実空間の三次元座標に対応させてメモリ上に展開するとともに、各オブジェクトの状態を予め定められた初期状態に初期化することにより、初期状態のVRプラントを生成する。また、VRプラント生成部151は、第2同期部153Aを介してプラントシミュレータ20とやり取りされる同期情報に基づいてVRプラントの状態を逐次更新する。
【0039】
表示制御部152は、VRプラント生成部151によって生成されたVRプラントを映像化することによりVR映像を生成し、その映像信号を映像出力部140に出力する。具体的には、表示制御部152は、操作情報に基づいてVRプラントにおける利用者の視野範囲を特定し、特定した視野範囲に含まれる各オブジェクトをそれぞれの状態に応じて映像化することによりVR映像を生成する。このようにして生成されるVR映像が映像出力部140に表示されることにより、利用者は、あたかも自身が実際の対象プラントに存在しているかのような感覚で各オブジェクトの状態を確認したり、各オブジェクトの状態を変更する操作を入力したりすることができる。
【0040】
図2は、VRデータに含まれる三次元データの一例を示す図である。例えば、
図2に示す三次元データは、対象プラントを構成するオブジェクトの三次元位置情報に、各オブジェクトの識別情報を対応づけることによって生成されたものである。この場合の三次元データは、例えば以下のような手順によって生成することができる。
(1)対象プラントを3Dスキャナによりスキャンする。(これにより、対象プラントを構成するオブジェクトの点群(三次元位置情報)が取得される。)
(2)(1)で取得された点群をオブジェクトごとのグループ分類する。
(3)(2)で分類された各グループの点群にオブジェクトの識別情報を対応づける。
【0041】
VRプラント生成部151は、このようにして取得された三次元データを仮想現実空間の座標に対応させてメモリ上に展開することによりVRプラントを生成することができる。また、VRプラント生成部151は、各オブジェクトの状態を示す情報を各オブジェクトの識別情報に対応づけて記憶することにより、VRプラントを構成する各オブジェクトの状態を管理することができる。
【0042】
一方、表示制御部152は、VRプラント生成部151によってメモリ上に展開された各オブジェクトの点群を利用者の視野範囲に応じた平面に投影することにより、利用者の視点から見たVRプラントの映像(VR映像)を生成することができる。また、表示制御部152は、VRプラント生成部151によって管理される各オブジェクトの状態に基づき、各オブジェクトについてそれぞれの状態を示す画像を表示することにより、利用者が各オブジェクトの状態を視覚的に識別することができるようなVR映像を生成することができる。
【0043】
図3は、VRプラントの各オブジェクトの状態を視覚的に識別することができるように構成されたVR映像の一例を示す図である。例えば、
図3は、VRプラント内の計器M1の計測値を示す画像IM1を計器M1に対応づけて表示させたVR映像の例を示す。このような表示は、表示制御部152が、仮想現実空間における各オブジェクトの三次元位置情報に基づいて利用者の視野範囲に計器M1が含まれることを認識し、計器M1の状態値(ここでは計測値)を計器M1の三次元位置に対応づけることによって実現することができる。
【0044】
なお、
図3は、計器M1の計測値を示す画像IM1を計器M1自体の画像IM2とは異なる画像として生成する場合の表示例を示しているが、計測値は他の態様で表示されてもよい。例えば、計器M1がメータなどの表示部を有している場合には、表示制御部152は、計測値を表示している状態の表示部の画像を生成し、その画像を計器M1の画像に合成して表示するように構成されてもよい。また、表示制御部152は、このような状態値の表示を利用者の視野範囲に含まれる全てのオブジェクトについて常に行うように構成されてもよいし、特定の条件が満たされたオブジェクトについて行うように構成されてもよい。
【0045】
例えば、表示制御部152は、利用者が所定の操作を入力したオブジェクトについて状態表示を行うように構成されてもよい。例えば、所定の操作は、状態表示の対象としてオブジェクトを選択する操作であってもよいし、オブジェクトの状態を変更する操作であってもよいし、状態表示のオン・オフを切り替える操作であってもよい。
【0046】
また、例えば、表示制御部152は、VRプラントにおける利用者の視点位置に基づいて状態表示の有無を切り替えるように構成されてもよい。例えば、表示制御部152は、利用者の視点位置から所定の範囲内に存在するオブジェクトについて状態表示を行うように構成されてもよい。このような表示方法によれば、利用者は近くに存在するオブジェクトの状態を効率良く認識することができる。また、これとは逆に、表示制御部152は、利用者の視点位置から所定の範囲外に存在するオブジェクトについて状態表示を行うように構成されてもよい。このような表示方法によれば、利用者は視認が難しい遠方のオブジェクトの状態を正確に認識することができる。
【0047】
また、VR端末装置10が利用者の視線方向を検出する機能を有している場合、表示制御部152は、利用者の視線方向に存在するオブジェクトについて状態表示を行うように構成されてもよい。例えば、表示制御部152は、加速度センサなどにより検出されるVR端末装置10の向きを利用者の視線方向とみなしてもよいし、利用者の眼球が撮像された画像に基づいて利用者の視線方向を検出するように構成されてもよい。また、表示制御部152は、状態表示の有無をオブジェクトの種別や状態に応じて切り替えるように構成されてもよい。
【0048】
図1に戻る。第2同期部153Aは、入力装置11から入力された操作情報のうち、仮想プラントの操作端の状態を変更する操作を示す操作情報を同期情報としてプラントシミュレータ20に供給する機能を有する。一般に操作端とは、操作量の変更によりシステムの状態を直接的に制御することができる装置のことをいう。例えば、プラントにおける操作端の一例としてバルブやモータ、ポンプ、遮断機等の機器が挙げられる。操作端の操作は、手動によって行われてもよいし、プラント制御モデルに基づいて自動で行われてもよい。
【0049】
また、第2同期部153Aは、プラントシミュレータ20から供給される同期情報に基づいてVRプラントの状態を更新する機能を有する。第2同期部153AがVRプラントの状態を更新することにより、仮想プラントに生じた状態変化がVR映像に反映される。
【0050】
図4は、第1実施形態におけるIF情報の一例を示す図である。例えば、IF情報は、オブジェクトIDと、オブジェクト種別と、同期方向と、状態情報とが対応づけられた情報である。ここでオブジェクトIDは、仮想プラントを構成する各オブジェクトの識別情報である。オブジェクト種別は、オブジェクトIDによって識別されるオブジェクトの種別を表す。同期方向は、オブジェクトIDによって識別されるオブジェクトに関してVR端末装置10とプラントシミュレータ20との間で同期情報がやり取りされる方向を表す。例えば、同期方向は、同期情報の供給先または供給元によって表されてもよい。状態情報は、オブジェクトIDにより識別されるオブジェクトの状態を表す情報であって、前記状態の主体となるオブジェクトについて、VR端末装置10とプラントシミュレータ20との間で同期されるべき状態を表す情報である。
【0051】
例えば、
図4の例において、IF情報INF1は、オブジェクトID“V1”で識別されるバルブ(以下「バルブV1」という。)に関し、VR端末装置10がプラントシミュレータ20に対して、バルブV1の開度を通知するために送信する同期情報のフォーマットを定義するものである。一方、IF情報INF2は、バルブV1に関し、プラントシミュレータ20がVR端末装置10に対して、バルブV1の故障状態を示す故障フラグ(0:正常、1:故障)と、バルブV1の開度とを通知するために送信する同期情報のフォーマットを定義するものである。
【0052】
このようなIF情報に基づいて、操作対象に関する状態情報がVR端末装置10とプラントシミュレータ20との間でリアルタイムに連携されることにより、仮想プラントのプロセス状態に同期したVR映像を利用者に提供することができる。例えば、
図5は、VR端末装置10においてバルブV1の開度を変更する操作が入力された場合のVR映像の表示例を示す図である。
図5は、バルブV1~V6のうち、正常動作しているバルブV1が操作対象として選択され、バルブV1に対して開度を50%とする操作情報が入力された状況を表している。この場合、第2同期部153Aは、バルブV1のIF情報INF1を参照し、バルブV1についてプラントシミュレータ20に通知すべき状態情報が「開度」と「動作不良フラグ」であることを認識する。第2同期部153Aは、バルブV1のオブジェクトIDと、オブジェクト種別と、バルブV1の開度の値(50%)および動作不良フラグの値(0:正常)を示す状態情報と含む同期情報を生成し、プラントシミュレータ20に送信する。
【0053】
プラントシミュレータ20では、第1同期部254Aが、VR端末装置10から受信された同期情報をプロセスシミュレータ251に出力する。プロセスシミュレータ251は、同期情報が示すオブジェクトIDに基づいて操作対象がバルブV1であることを認識し、仮想プラントのバルブV1について開度の値を50%に、動作不良フラグの値を0に更新する。第1同期部254Aは、同期情報が仮想プラントの状態に反映されると、バルブV1のIF情報INF2を参照し、バルブV1についてVR端末装置10に通知すべき状態情報が「開度」であることを認識し、バルブV1のオブジェクトIDと、オブジェクト種別と、反映した開度の値(50%)を示す状態情報とを含む同期情報を生成し、VR端末装置10に送信する。
【0054】
VR端末装置10では、同期部153Aが、プラントシミュレータ20から受信された同期情報に基づいて、VRプラントにおけるバルブV1の開度の値を50%に更新する。これにより、VR端末装置10において入力されたバルブ1に対する操作の内容がVRプラントの状態に反映される。表示制御部152は、更新後のVRプラントの状態に基づいてVR映像を更新する。このように、VR端末装置10が、自装置に入力された操作の内容がプラントシミュレータ20側の仮想プラントの状態に反映された後に、VRプラントの状態を更新することにより、プラント運転訓練システム1Aは、仮想プラントのシミュレーション結果に同期してVRプラントの映像を更新することができる。
【0055】
図6は、第1実施形態のプラントシミュレータ20がVR端末装置10との間で同期情報を送受信することによりVRプラントの状態を仮想プラントの状態に同期させる処理(以下「第1同期処理」という。)の流れの一例を示すフローチャートである。まず、制御部250が、記憶部220から各種モデルデータを読み込み、対象プラントのシミュレーションを開始する(ステップS101)。
【0056】
具体的には、プロセスシミュレータ251が、記憶部220からプロセスモデルデータを読み込み、対象プラントのプロセスモデルに基づいて対象プラントのシミュレーションを開始する。また、プラント制御シミュレータ253が、記憶部220からプラント制御モデルデータを読み込み、対象プラントの制御モデルに基づいて仮想プラントのプラント制御のシミュレーションを開始する。また、操作端シミュレータ252が、記憶部220から操作端モデルデータを読み込み、操作端モデルに基づいて仮想プラントの操作端のシミュレーションを開始する。これ以降、制御部250は、所定の周期で各シミュレーションを繰り返し実行することにより、仮想プラントの状態を随時更新していく。
【0057】
仮想プラントのシミュレーションが開始されると、続いて、第1同期部254Aが、VR端末装置10から同期情報が受信されたか否かを判定する(ステップS102)。ここで、同期情報が受信されたと判定した場合(ステップS102-YES)、第1同期部254Aは、受信された同期情報を操作端シミュレータ252に出力することにより、VRプラントにおいて行われた操作端の状態変更を仮想プラントに反映させる(ステップS103)。一方、ステップS102において、同期情報が受信されていないと判定した場合(ステップS102-NO)、第1同期部254Aは、ステップS103をスキップしてステップS104に処理を進める。
【0058】
続いて、第1同期部254Aは、シミュレーションにより仮想プラントの状態が更新されたか否かを判定する(ステップS104)。なお、ここで判定する仮想プラントの状態変更には、ステップS102での操作端の状態変更によって変化する仮想プラントの状態変更も含まれる。ここで、仮想プラントの状態が更新されていないと判定した場合(ステップS104-NO)、第1同期部254Aは、ステップS102に処理を戻す。一方、ステップS104において、仮想プラントの状態が更新されたと判定した場合(ステップS104-YES)、第1同期部254Aは、更新内容を通知するための同期情報を生成してVR端末装置10に送信する(ステップS105)。これにより、VR端末装置10が管理するVRプラントの状態が、プラントシミュレータ20が管理する仮想プラントの状態に同期される。
【0059】
続いて、第1同期部254Aは、対象プラントのシミュレーションが終了したか否かを判定する(ステップS106)。対象プラントのシミュレーションが終了していないと判定した場合(ステップS106-NO)、第1同期部254Aは、ステップS102に処理を戻し、一連の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS106において、対象プラントのシミュレーションが終了したと判定した場合(ステップS106-YES)、第1同期部254Aは第1同期処理を終了する。
【0060】
図7は、第1実施形態のVR端末装置10がプラントシミュレータ20との間で同期情報を送受信することによりVRプラントの状態を仮想プラントの状態に同期する処理(以下「第2同期処理」という。)の流れの一例を示すフローチャートである。まず、VRプラント生成部151が、VRデータに基づいてVRプラントを生成する(ステップS201)。VRプラントの生成は、プラントシミュレータ20が対象プラントのシミュレーションを開始したことに同期して実施される。VRプラントが生成されると、表示制御部152が、生成されたVRプラントに基づいてVR映像の生成を開始し、生成したVR映像を映像出力部140に出力する(ステップS202)。
【0061】
続いて、第2同期部153Aが、操作端に対して状態変更操作が入力されたか否かを判定する(ステップS203)。ここで、操作端に対して状態変更操作が入力されたと判定した場合(ステップS203-YES)、第2同期部153Aは、入力された操作をプラントシミュレータ20に通知するための同期情報をIF情報に基づいて生成し、生成した同期情報をプラントシミュレータ20に送信する(ステップS204)。一方、ステップS203において、操作端に対して状態変更操作が入力されていないと判定した場合(ステップS203-NO)、第2同期部153Aは、ステップS204をスキップしてステップS205に処理を進める。
【0062】
続いて、第2同期部153Aは、プラントシミュレータ20から同期情報が受信されたか否かを判定する(ステップS205)。ここで、プラントシミュレータ20から同期情報が受信されたと判定した場合(ステップS205-YES)、第2同期部153Aは、受信された同期情報に基づいてVRプラントの状態を更新する(ステップS206)。VRプラントの状態が更新されると、これ以降では、更新後のプラント状態に基づいて生成されたVR映像が映像出力部140に表示される。一方、ステップS205において、プラントシミュレータ20から同期情報が受信されていないと判定した場合(ステップS205-NO)、第2同期部153Aは、ステップS206をスキップしてステップS207に処理を進める。
【0063】
続いて、第2同期部153Aは、プラントシミュレータ20による対象プラントのシミュレーションが終了したか否かを判定する(ステップS207)。ここでは、プラントシミュレータ20は、対象プラントのシミュレーションを終了すると、その旨をVR端末装置10に通知するものとし、この通知により、第2同期部153Aは、対象プラントのシミュレーションが終了したか否かを判定することができるものとする。ここで、対象プラントのシミュレーションが終了していないと判定した場合(ステップS207-NO)、第2同期部153Aは、ステップS203に処理を戻し、一連の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS207において、対象プラントのシミュレーションが終了したと判定した場合(ステップS207-YES)、第2同期部153Aは第2同期処理を終了する。
【0064】
図8は、VR端末装置10とプラントシミュレータ20との連携動作により、或る操作端について変更された状態がVRプラントと仮想プラントとの間で同期される流れの一例を示すシーケンスチャートである。
図8のシーケンスは、第1同期処理および第2同期処理が連動することにより実現される。ここでは操作端の一例としてバルブを想定する。
【0065】
まず、VR端末装置10において、操作対象のバルブ(以下「対象バルブ」という。)に対して開度を50%に変更する操作情報が入力される(ステップS301)。この操作の入力を受け、VR端末装置10は、入力された操作の内容を通知するための同期情報をIF情報に基づいて生成し(ステップS302)、生成した同期情報をプラントシミュレータ20に送信する(ステップS303)。
【0066】
続いて、プラントシミュレータ20は、VR端末装置10が送信した同期情報を受信し、受信した同期情報に基づいて、対象バルブに行われた操作を操作端モデルに適用することにより仮想プラントにおける対象バルブの状態を更新する(ステップS304)。プラントシミュレータ20は、対象バルブの状態更新を完了すると、その更新内容を示す同期情報を生成してVR端末装置10に送信する(ステップS305およびS306)。VR端末装置10は、プラントシミュレータ20が送信した同期情報を受信し、受信した同期情報に基づいてVRプラントにおける対象バルブの状態を更新する(ステップS307)。VR端末装置10は、更新後のVRプラントの状態に基づいてVR映像を生成することにより、VR映像における対象バルブの表示を更新する(ステップS308)。
【0067】
一方、プラントシミュレータ20は、ステップS304において操作端モデルに適用した対象バルブの状態変更をプロセスモデルに適用する(ステップS309)。プラントシミュレータ20は、対象バルブの操作によって変化した操作量が適用されたプロセスモデルに基づいて仮想プラントの時間応答を計算することにより仮想プラントの状態を更新する(ステップS310)。プラントシミュレータ20は、時間応答の計算結果を通知するための同期情報をIF情報に基づいて生成し(ステップS311)、生成した同期情報をVR端末装置10に送信する(ステップS312)。
【0068】
続いて、VR端末装置10は、プラントシミュレータ20が送信した同期情報を受信し、受信した同期情報に基づいてVRプラントの状態を変更する(ステップS313)。VR端末装置10は、変更後のVRプラントの状態に基づいてVR映像を生成して映像出力部140に出力することにより、対象バルブの操作によって変化した仮想プラントの状態が反映されたVR映像を表示することができる(ステップS314)。
【0069】
以上説明した第1実施形態のプラント運転訓練システム1Aによれば、プラントシミュレータ20(シミュレータ装置)が、仮想プラントの状態を通知するための同期情報を生成してVR端末装置10に供給する第1同期部254Aを備え、VR端末装置10(端末装置)が、プラントシミュレータ20から供給される同期情報に基づいてVRプラントの状態を更新する第2同期部153Aと、第2同期部153Aによって管理される仮想プラントの状態に基づいてVR映像を生成する表示制御部152と、を備えることにより、よりリアリティの高いプラント運転の訓練環境を実現することができる。
【0070】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態のプラント運転訓練システム1Bの構成例を示す図である。第1実施形態のプラント運転訓練システム1Bは、VR端末装置10が第2同期部153Aに代えて第2同期部153Bを備える点、および、プラントシミュレータ20が第1同期部254Aに代えて第1同期部254Bを備える点で第1実施形態のプラント運転訓練システム1Aと異なる。プラント運転訓練システム1Bのその他の構成は、プラント運転訓練システム1Aと同様である。そのため、
図9では、プラント運転訓練システム1Aと同様の構成について
図1と同じ符号を付すことにより、説明を省略する。
【0071】
第2同期部153Bは、利用者の操作情報に加えて、VRプラントにおける利用者の位置情報を同期情報としてプラントシミュレータ20に提供する点で第1実施形態の第2同期部153Aと異なる。第2同期部153Bは、位置情報を定期的に送信するように構成されてもよいし、利用者の位置が変化した場合に位置情報を送信するように構成されてもよい。
【0072】
第1同期部254Bは、第1実施形態の同期部254Aと同様に、プラント状態の変化を通知する同期情報を生成してVR端末装置10に送信する機能を有する。ここで第1同期部254Bは、VRプラントにおける利用者の位置に応じた範囲の状態変化を通知する同期情報を生成する点で第1実施形態の第1同期部254Aと異なる。
【0073】
図10は、第1同期部254Bが同期情報により仮想プラントの状態変化を通知する範囲の一例を示す図である。
図10は、VRプラントの一部の区域VAを上から見た模式図である。
図10の例では、区域VAにはバルブV11~V15と、流量計や圧力計、温度計などの各種計器M11~M15が設置されている。このようなVRプラントにおいて、利用者が例えば地点Pに位置している場合、第1同期部254Bは、地点Pから所定の距離rの範囲内にあるオブジェクトについての状態変更を示す同期情報を生成してVR端末装置10に送信する。例えば
図10の例において、第1同期部254Bは、計器M11、計器M12、およびバルブV11の状態変化を通知する同期情報を生成する。
【0074】
このように構成された第2実施形態のプラント運転訓練システム1Bによれば、プラントシミュレータ20が、VRプラントにおける利用者の位置に応じた範囲内のオブジェクトについてのみ同期情報を生成することにより、プラントシミュレータ20がVR端末装置10に送信する同期情報のデータサイズを削減することができる。これにより、プラントシミュレータ20は、同期情報の送信に要する時間を短縮することができ、VR端末装置10との間でより高速にプラント状態を同期することが可能となる。この効果は、対象プラントが有する操作端の数が多くなるほどより顕著な効果として現れるものである。
【0075】
<変形例>
上記の各実施形態において、プラントシミュレータ20の第1同期部254A(または254B)は、シミュレーションによって得られた仮想プラントの状態を示す情報のうち、直前の計算結果から状態が変化した要素に関する情報を同期情報としてVR端末装置10に供給するように構成されてもよい。この場合、例えば、第1同期部254Aは、現在の計算周期におけるシミュレーション結果と、一つ前の計算周期におけるシミュレーション結果とを比較することにより、仮想プラントにおいて状態が変化した要素を検出するように構成されてもよい。
【0076】
以上、本発明を実施するための形態について第1実施形態および第2実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0077】
1A,1B…プラント運転訓練システム、10…VR端末装置、11…入力装置、110…入力部、120…記憶部、130…通信部、140…映像出力部、150…制御部、151…VRプラント生成部、152…表示制御部、153A,153B…第2同期部、20…プラントシミュレータ、220…記憶部、230…通信部、250…制御部、251…プロセスシミュレータ、252…操作端シミュレータ、253…プラント制御シミュレータ、254A,254B…第1同期部