(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178415
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085195
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 康明
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA73
2G051AB03
2G051AB07
2G051AC02
2G051BA10
2G051CA02
2G051CB01
2G051CB05
2G051DA06
2G051EA12
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】外観を適切に検査した蓄電デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】デバイスケース10で外装された蓄電デバイス1の製造方法は、未検査蓄電デバイス1Xの製造工程S1と、その外観検査工程S2,S3とを含む。外観検査工程S2,S3は、デバイスケースのケース表面10Sのうち被検査領域IRに検査光LILを照射し、検査光の拡散反射光DLを撮像して、デバイスケースの被検査領域の外観を検知する検知工程S22,S31,S34と、検知した被検査領域の外観の適否を判定する判定工程S23,S35と、を有し、さらに、検知工程に先立ち、デバイスケースの被検査領域のうち、少なくとも、光沢度GSが高いことにより外観の検知が困難な検知困難領域HGEに、又は、検知困難可能性領域HGSEに、外観の検知が可能となる検知可能化処理を施す検知可能化工程S21,S33を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスケースで外装された蓄電デバイスの製造方法であって、
未検査蓄電デバイスの製造工程と、
上記未検査蓄電デバイスの外観検査工程と、
を含み、
上記外観検査工程は、
上記デバイスケースのケース表面のうち被検査領域に検査光を照射し、上記検査光の拡散反射光を撮像して、上記デバイスケースの上記被検査領域の外観を検知する検知工程と、
検知した上記被検査領域の上記外観の適否を判定する判定工程と、を有し、
上記外観検査工程は、さらに、
上記検知工程に先立ち、
上記デバイスケースの上記被検査領域のうち、少なくとも、
光沢度が高いことにより上記外観の検知が困難な検知困難領域に、又は、
上記検知困難領域である可能性のある検知困難可能性領域に、
上記外観の検知が可能となる検知可能化処理を施す検知可能化工程を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記検知可能化工程は、前記検知可能化処理として、
前記検知困難領域又は検知困難可能性領域に、揮発性の液体からなる微小液滴が散点状に分布した微小液滴分布層を生じさせる
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記検知可能化工程は、前記検知可能化処理として、
前記検知困難領域又は検知困難可能性領域につや消し材層を形成する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記検知可能化工程は、前記検知可能化処理として、
前記検知困難領域又は検知困難可能性領域を荒らす荒らし加工を行う
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電デバイスの製造に当たっては、製造された未検査の蓄電デバイスについて、変形や傷などの有無を調べる外観検査を行うことが行われている。このような外観検査に用いる装置及び手法に関する従来技術として、例えば、特許文献1(特許文献1の特許請求の範囲、
図1等を参照)が挙げられる。
【0003】
この特許文献1には、乾電池、飲料、液晶パネル等の表面欠陥の検査に当たり、光沢面に対して照明光線を照射する投光部と、照明光線の反射光(鏡面反射光)を撮影するカメラと、画像処理手段と、判定手段を有する光沢面検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓄電デバイスの外観をなすデバイスケースの表面は、光沢面ではなく、むしろ梨地状やヘアライン仕上げ状やスクラッチ仕上げ状などの非光沢面となっている場合が多い。
【0006】
このため、蓄電デバイスの外観検査において、被検査領域全体の膨らみの有無やその大小、部分的な凹みの有無などの形態や、部分的に入った切創状のキズなどの有無を検査するに当たっては、いわゆる光切断法などにより、スポット状やライン状などの検査光(レーザ光など)を被検査領域に照射しつつ移動させ、照射部分からの拡散反射光を撮像して、被検査領域における蓄電デバイスの外観検査を行うことがある。
【0007】
しかしながら、蓄電デバイスのデバイスケースの一部が、光沢度が高いために、上述のように拡散反射光を用いた外観の検知が困難な領域となっている場合があることが判ってきた。高光沢の領域に検査光を照射した場合には、鏡面反射光の強度が高くなる一方、撮像に用いる拡散反射光の強度が低下するため、外観検査を行えなかったり検査精度が低下するからである。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、外観を適切に検査した蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、金属からなるデバイスケースで外装された蓄電デバイスの製造方法であって、未検査蓄電デバイスの製造工程と、上記未検査蓄電デバイスの外観検査工程と、を含み、上記外観検査工程は、上記デバイスケースのケース表面のうち被検査領域に検査光を照射し、上記検査光の拡散反射光を撮像して、上記デバイスケースの上記被検査領域の外観を検知する検知工程と、検知した上記被検査領域の外観の適否を判定する判定工程と、を有し、上記外観検査工程は、さらに、上記検知工程に先立ち、上記デバイスケースの上記被検査領域のうち、少なくとも、光沢度が高いことにより上記外観の検知が困難な検知困難領域に、又は、上記検知困難領域である可能性のある検知困難可能性領域に、上記外観の検知が可能となる検知可能化処理を施す検知可能化工程を有する蓄電デバイスの製造方法である。
【0009】
この蓄電デバイスの製造方法では、被検査領域全体の外観を検知するに先立ち、被検査領域のうち検知困難領域或いは検知困難可能性領域に、外観の検知が可能となる検知可能化処理を施す。このため、適切に被検査領域全体の外観を検知でき、ひいては、外観を適切に検査した蓄電デバイスを製造することができる。
【0010】
なお、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどのキャパシタが挙げられる。また、「未検査蓄電デバイス」は、製造後、外観検査を含む完成検査が未だ完了していない蓄電デバイスをいう。蓄電デバイス(未検査蓄電デバイス)の形態としては、直方体形状や円筒状などの形態が例示される。
また、蓄電デバイスの外装をなす「デバイスケース」の形態としては、例えば、直方体状や円筒状が挙げられる。また、「デバイスケース」の材質としては、蓄電デバイスの外装として使用し得る材質あれば良いが、例えば、アルミニウム、ジュラルミン、ステンレス、銅合金などの金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、これらにメッキを施したもの、金属箔と樹脂フィルムを重ねたラミネートフィルムが挙げられる。
【0011】
デバイスケースのケース表面のうち「被検査領域」としては、蓄電デバイス(デバイスケース)が直方体形状である場合には、例えば、6つの矩形状の側面(上面、底面、長側面、短側面)のそれぞれや、側面の一部(例えば、デバイスケースが上面をなす蓋体と他の5側面をなす凹形状のケース本体とからなる場合において、長側面のうち上面側(開口縁側)の部位や、長側面のうち短側面との間に形成される稜に近い短側面側の部位)が挙げられる。また、蓄電デバイス(デバイスケース)が円筒形状である場合には、例えば、上面、底面、円筒面のそれぞれや、その一部(例えば、デバイスケースが上面をなす蓋体と底面及び円筒面をなす凹形状のケース本体とからなる場合において、円筒面のうち上面側(開口縁側)の部位)が挙げられる。
【0012】
被検査領域に照射する「検査光」としては、照射部位が点状となるスポット光、直線状となるライン光、矩形状や円状に拡がった形状となる面状光などを用いることができる。スポット光を用いる場合には、このスポット光を直交する二方向に走査して、被検査領域を含む範囲全体にスポット光を照射すると良い。また、直線状のライン光を用いる場合には、このライン光をこのライン光が延びる方向に直交する方向に走査して、被検査領域を含む範囲全体にライン光を照射すると良い。面状光を用いる場合には、この面状光を被検査領域を含む範囲全体に一挙に照射したり、面状光を走査して被検査領域を含む範囲全体に照射すると良い。
【0013】
「光沢度」は、光沢の程度を示す指標であり、被検査領域の照射部位に光を照射した際の入射光と鏡面反射光(正反射光)の強度比、具体的には、例えば、JIS Z 8741-1997「鏡面光沢度-測定方法」に規定する鏡面光沢度、例えば、60度鏡面光沢度Gs(60°)を用いることができる。
【0014】
「検知困難領域」は、被検査領域のうち、高い光沢度を有するために検査光の拡散反射光を用いた外観の検知が困難な領域である。この検知困難領域は、例えば、デバイスケースの製造にあたり、デバイスケースのケース表面のうち特定の表面部位が、金型の表面に強く擦れつつ成型されることで滑らかにされて形成されたり、蓄電デバイスの製造において、搬送機器や組付け用の機器と強く擦れつつ搬送や保持されて形成される場合が挙げられる。但し、デバイスケースのケース表面の或る部位が常に検知困難領域となるとは限らない。例えば、多数のデバイスケースを成形したことによる金型の摩耗により、次第に、デバイスケースの特定の表面部位が高光沢になるなど、検知困難領域の発生の有無や発生箇所、発生確率が経時的に変化する場合もある。
【0015】
一方、「検知困難可能性領域」は、被検査領域のうち、上述の「検知困難領域」である可能性を有する領域、即ち、「検知困難領域」となる虞のある領域である。デバイスケースや蓄電デバイスの製造にあたり、複数のデバイスケースに共通して、ケース表面の或る部位に検知困難領域が常に生じるとは限らない。前述したように、金型の摩耗などにより、検知困難領域の発生の有無や発生箇所、発生確率が経時的に変化する場合がある。従って、金型の使用初期では、ケース表面の検知困難領域にならなかった或る部位が、デバイスケースの製造回数の増加によって金型の摩耗が進行すると共に、次第に検知困難領域となる場合がある。この場合には、或るデバイスケースでは当該或る部位は検知困難領域では無いが、別の或るデバイスケースでは当該或る部位は検知困難領域となる。検知困難可能性領域は、このような検知困難領域となる可能性を有する領域である。
【0016】
「検知可能化処理」は、検知困難領域或いは検知困難可能性領域に施して、当該領域の光沢度を、少なくとも検知工程を行うまで一時的に又は恒久的に、拡散反射光による外観の検知が可能となる光沢度として、検知困難領域或いは検知困難可能性領域であった領域について外観検査可能とする処理である。
検知可能化処理を行う処理領域は、被検査領域のうち検知困難領域或いは検知困難可能性領域のみとしても良いが、検知困難領域或いは検知困難可能性領域を含む領域であれば良い。従って、この処理領域は、検知困難領域或いは検知困難可能性領域を含む被検査領域の一部としても、被検査領域の全体としても、さらには、被検査領域を含む被検査領域よりも広い領域としても良い。
また、検知可能化処理の具体的な手法としては、例えば、処理領域に冷却ガスを吹き付けて結露を生じさせたり、液体を霧状にして吹き付けたりして、水や有機溶媒などの揮発性の液体からなる微小液滴が散点状に分布した微小液滴分布層を生じさせる手法や、処理領域につや消し塗料を塗布したり微粒粉末を付着させたりして、つや消し層を形成する手法、処理領域の表面を荒らす手法などが挙げられる。
【0017】
(2)(1)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記検知可能化工程は、前記検知可能化処理として、前記検知困難領域又は検知困難可能性領域に、揮発性の液体からなる微小液滴が散点状に分布した微小液滴分布層を生じさせる蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0018】
この蓄電デバイスの製造方法では、検知困難領域又は検知困難可能性領域に微小液滴分布層を生じさせるので、検知工程において、検知困難領域又は検知困難可能性領域を含む被検査領域全体について適切に外観を検知することができ、被検査領域の外観の良否を適切に判定することができる。
しかも、微小液滴分布層は、揮発性の液体の微小液滴からなるので、揮発して無くなり、デバイスケースのケース表面に残らないので、蓄電デバイスの外観やその後の取り扱い等に影響を与えない。
【0019】
検知困難領域又は検知困難可能性領域に「微小液滴分布層」を生じさせる具体的な手法としては、冷却ガスを検知困難領域や検知困難可能性領域に吹き付けて冷却し、結露によって微小水滴が散点状に分布した微小水滴分布層を生じさせる手法が例示できる。この手法に用いる冷却ガスとしては、検知困難領域や検知困難可能性領域を冷却し得るガスであれば良いが、例えば、液化プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、HFC-134a(テトラフルオロエタン)、炭酸ガス、圧縮空気などの液化ガス、高圧ガスが挙げられる。
また、検知困難領域や検知困難可能性領域に揮発性の液体を霧状にして吹き付けて微小液滴分布層を生じさせる手法も例示できる。この手法に用いる揮発性の液体としては、水、メタノール、エタノール、IPAなどのアルコールや、アセトンなどの有機溶媒、フロリナート(商標名)などのフッ素系液体が挙げられる。
【0020】
(3)(1)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記検知可能化工程は、前記検知可能化処理として、前記検知困難領域又は検知困難可能性領域につや消し材層を形成する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0021】
この蓄電デバイスの製造方法では、検知困難領域又は検知困難可能性領域につや消し材層を形成することができるので、検知工程において、被検査領域全体について適切に外観を検知することができ、被検査領域の外観の良否を適切に判定することができる。
【0022】
検知困難領域や検知困難可能性領域に「つや消し材層」を形成する手法としては、検知困難領域や検知困難可能性領域に、つや消し塗料を塗布する手法が例示できる。このつや消し塗料の塗布手法としては、例えば、エアスプレー(エアブラシ)やLPGなどのガスと共に塗料を噴射するガススプレーが挙げられる。
また、検知困難領域や検知困難可能性領域に微粒粉末を付着させる手法も例示できる。微粒粉末としては、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末などを微粒粉末が挙げられる。これらの微粒粉末の付着手法としては、例えば、微粒粉末をバインダを溶解した揮発性の溶液に分散させた分散液や、微粒粉末とバインダの混合粉末をエアスプレーやガススプレーにより吹き付けて堆積させる手法が挙げられる。
【0023】
なお、蓄電デバイスに形成したつや消し材層は、そのまま蓄電デバイスに形成したままとしても良いし、外観検査工程を終了した後、除去工程を設けて、つや消し材層を除去するようにしても良い。
【0024】
(4)(1)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記検知可能化工程は、前記検知可能化処理として、前記検知困難領域又は検知困難可能性領域を荒らす荒らし加工を行う蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0025】
この蓄電デバイスの製造方法では、検知困難領域又は検知困難可能性領域を荒らす荒らし加工を行うので、検知工程において、被検査領域について適切に外観を検知することができ、被検査領域の外観の適否を適切に判定することができる。
【0026】
検知困難領域又は検知困難可能性領域を荒らす「荒らし加工」とは、検知困難領域又は検知困難可能性領域の表面粗度を高める加工をいい、例えば、検知困難領域等を研磨布や研磨スポンジで研磨して研磨痕を生じさせる研磨加工や、砂、ガラス粉末などを吹き付けるブラスト加工が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態及び変形形態1~3に係る電池の斜視図である。
【
図2】実施形態及び変形形態1~3に係る電池について、外観検査を行う様子を示す説明図である。
【
図3】実施形態及び変形形態1~3に係る電池について、外観検査を行って得られる外観データ(外観プロファイル)例のうち、外観データが正常に得られた場合及びキズがある場合を示す説明図である。
【
図4】電池の外観検査を行って得られる外観データ(外観プロファイル)例のうち、外観データが正常に得られない場合を示す説明図である。
【
図5】実施形態及び変形形態1~3に係る電池のうち検知困難領域を、及び変形形態3に係る電池のうち処理領域を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係る電池のうち、検知困難領域、検知困難可能性領域及び処理領域を示す説明図である。
【
図7】実施形態及び変形形態1に係る電池の製造方法のフローチャートである。
【
図8】変形形態1に係る電池のうち、検知困難領域、検知困難可能性領域及び処理領域を示す説明図である。
【
図9】変形形態2に係る電池の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を、
図1~
図7を参照しつつ説明する。本実施形態は、リチウムイオン二次電池(以下、単に電池ともいう)1の製造において、本発明を適用したものである。即ち、本実施形態では、蓄電デバイスの製造方法として、電池1の製造方法を例示する。
【0029】
まず、本実施形態に係る電池1及び未検査電池1X(
図1参照)について説明する。未検査電池1Xは、後述する外観検査が未了の電池であるが、外観や構成は外観検査を完了した電池1と同じである。電池1(未検査電池1X)は、直方体形状の電池ケース10内に電極体及び電解液(図示しない)を収容した角形電池である。電池1を外装するアルミニウム製の電池ケース10は、
図1において上方が開口し底面が閉じた矩形筒状のケース本体11と、ケース本体11の開口縁11Mに重なってケース本体11内を閉塞する概ね矩形板状の蓋体12とからなる。ケース本体11の開口縁11Mと蓋体12とは、レーザ溶接されている。
【0030】
なお、ケース本体11は、金型を用いた公知の絞り加工によって、アルミニウム板から一体成形してある。また、蓋体12はアルミニウム板を打ち抜き成形してある。この蓋体12には、電池1内の電極体の正極板(図示しない)に導通する正極端子13と、負極板(図示しない)に導通する負極端子14とが固着されている。
【0031】
また、電池1(未検査電池1X)における厚み方向BH、幅方向CH及び高さ方向DHの互いに直交する3方向を、
図1において矢印で示す方向に定めて、説明する。
【0032】
概ね直方体である電池ケース10のケース表面10Sは、ケース本体11をなす第1長側面部11A、第2長側面部11B、第1短側面部11C、第2短側面部11D及び底面部11Eと、蓋体12の6つに大別される(
図1参照)。これらのうち第1長側面部11A及び第2長側面部11Bは、幅方向CH及び高さ方向DHに延び、厚み方向BHを向いて互いに平行に配置されている。また、第1短側面部11C及び第2短側面部11Dは、厚み方向BH及び高さ方向DHに延び、幅方向CHを向いて互いに平行に配置され、第1長側面部11Aと第2長側面部11Bとの間を結んでいる。さらに、底面部11E及び蓋体12は、厚み方向BH及び幅方向CHに延び、高さ方向DHを向いて、第1長側面部11A、第2長側面部11B、第1短側面部11C及び第2短側面部11Dで構成される矩形筒を閉塞している。
【0033】
次いで、未検査電池1X(電池ケース10)の外観検査の手法について、
図2を参照して説明する。
図2では、コンベアBC及び検査装置IIを用いて、未検査電池1Xを外装する電池ケース10のケース表面10Sのうち、第1長側面部11A全体を被検査領域IRとして、その外観を検査する場合を示している。コンベアBC上には、未検査電池1Xが第1長側面部11Aを上に向けて載置され、移動速度BCVの定速で図中右側に向けて搬送されている。
【0034】
検査装置IIは、ライン光源LTと、撮像部CAMと、移動検知部DSと、制御部CTとを有する。このうち、移動検知部DSは、コンベアBCの移動速度BCVを検知する。
【0035】
また、ライン光源LTは、照射部位が直線状になるように加工されたレーザ光である検査ライン光LILを、被検査領域IR(
図2においては、コンベアBCで移動する第1長側面部11A)に向けて出射する。これにより、被検査領域IRである第1長側面部11Aには、検査ライン光LILが照射された高さ方向DHに延びる略直線状の照射部位LPが生じる。そして、入射角θiで照射部位LPに照射された検査ライン光LILは、照射部位LPから入射角θiに等しい出射角θo1(=θi)で出射する鏡面反射光RLのほか、各方向に向けて出射する拡散反射光DLを生じる。
【0036】
そこで、撮像部CAMで照射部位LPの画像を撮像するに当たり、撮像部CAMの光軸CAMJと撮像角θo2を出射角θo1とは異なる大きさ(θo2≠θo1)とし、照射部位LPから出射した拡散反射光DLを用いて照射部位LPの画像を予め定めた時間毎に撮像する。撮像部CAMは、被検査領域IRの照射部位LPに照射された検査ライン光LILの拡散反射光DLの画像を撮像するカメラである。
【0037】
そして、制御部CTは、撮像部CAMの画像データから、公知の光切断法により、被検査領域IRのうち検査ライン光LILが照射された照射部位LPの外形を示す外観データ(外観プロファイル、
図3,
図4参照)を算出する。
【0038】
前述したように、未検査電池1XはコンベアBCに載置され搬送されているので、時間の経過と共に、照射部位LPが移動し、被検査領域IR(例えば、
図2においては、第1長側面部11A)全体について、撮像部CAMで撮像することができ、その外観データを得ることができる。例えば、
図2のように第1長側面部11Aを被検査領域IRとする場合、外観データ(外観プロファイル)として、
図3に示すように、第1長側面部11Aが存在する高さ方向位置D(高さ方向DHの位置)がD1~D2の範囲にわたり、第1長側面部11Aの厚み方向位置Bの値(厚み方向BHの高さデータ)を得ることができる。
【0039】
ここで、電池1が、キズ等が無い正常な電池である場合には、
図3において、太い実線で示す厚み方向位置B(外観データ、外観プロファイル)の例のように、高さ方向位置Dに応じた厚み方向位置Bの値が滑らかに変化している。但し、被検査領域IRにキズが存在する場合には、
図3において破線で示すように、キズKZの部分で高さが急激に変化するので、キズKZの有無及びキズ深さKZDを検知することができる。このようにして、電池1の被検査領域IRの全体に亘りその外観(膨らみや凹み、キズの有無や寸法など)を検査することができる。
【0040】
ところが、このようにして外観を検査することが適切にはできない場合がある。例えば、
図4において、細い一点鎖線で示す、高さ方向位置DがD4~D5及びD6~D7の範囲では、厚み方向位置Bの値が適切に得られない(例えば、検知不能となって厚み方向位置Bの値が得られない(算出できない)、或いは、厚み方向位置Bの値が0又は最大値となるなど)。このために、適切に未検査電池1Xの外観を検知できない場合がある。このような部位(次述する検知困難領域HGE、
図4における、高さ方向位置DがD4~D5及びD6~D7の範囲)は、高い光沢度GSを有しており、鏡面反射光RLの強度が高くなる一方、拡散反射光DLの強度が小さくなり過ぎ、撮像部CAMで拡散反射光DLの画像が適切に得られない。このために、適切な外観データ(例えば、
図4では、厚み方向位置Bの値の適切な値)が得られないためである。
【0041】
即ち、
図2に示す、本実施形態で用いる検査装置IIの検査ライン光LILを発するライン光源LTと撮像部CAMでは、被検査領域IRのうち、高い光沢度GSを有する検知困難領域HGEについては、適切な外観データ(厚み方向位置Bの値など)を得ることができず、適切に外観を検査することができない(
図5参照)。
【0042】
なお、このような検知困難領域HGEは、例えば、
図5において、実線で囲みハッチングを施して示すように、第1長側面部11Aのうち、第1短側面部11C及び第2短側面部11D付近の領域に生じ易い。絞り加工によってケース本体11を成形して製造する際、金型(図示しない)の表面に強く擦れつつ成型されることで、表面が滑らかにされ高光沢となったと考えられる。
【0043】
但し、この検知困難領域HGEは、同じ金型を用いて製造されるケース本体11の全てに発生する(必ず発生する)とは限らない。また、発生する検知困難領域HGEの形態(形状や面積の大小)や位置も一定ではない。しかし、本実施形態のケース本体11において、例えば第1長側面部11Aについて言えば、第1短側面部11C及び第2短側面部11D付近の、
図6において破線で囲む検知困難可能性領域HGSE内に発生し易いことが判っている。また、ケース本体11の絞り加工で用いる金型が使用により摩耗してきた場合に、徐々に発生することも判ってきた。即ち、検知困難可能性領域HGSEは、被検査領域IRのうち、検知困難領域HGEとなる可能性のある領域である。
【0044】
そこで本実施形態では、このような検知困難領域HGEが発生する虞のある、即ち、検知困難可能性領域HGSEが存在するケース本体11を用いた電池1を、以下のようにして製造する(
図7参照)。
【0045】
先ず、未検査電池の製造工程S1において、未検査電池1Xを公知の手法により製造する。本件では、未検査電池1Xの製造の詳細は、説明を省略する。
なお、未検査電池1Xの製造工程S1には、図示しない電極体をケース本体11内に収容し、ケース本体11と蓋体12とをレーザ溶接するなど、未検査電池1Xを形成する工程の他、初充電工程、高温エージング工程、絶縁検査などの特性検査工程などをも含めることもできる。即ち、未検査電池1Xを形成した後、特性検査工程などをも経た未検査電池1Xを製造し、その後、次述する電池外観検査工程S2に移行するようにしても良い。一方、未検査電池1Xを形成して未検査電池の製造工程S1を終えたとし、次述する電池外観検査工程S2に移行し、その後、次工程として、初充電工程、高温エージング工程、絶縁検査などの特性検査工程などを行うようにしても良い。
【0046】
次いで、製造された未検査電池1Xについて、
図7において破線で囲む、電池外観検査工程S2を行う。本実施形態におけるこの電池外観検査工程S2では、被検査領域IRについての外観検査を、前述の検査装置IIを用いて行う(
図2参照)。
【0047】
具体的には、先ず、検知可能化工程S21において、検知可能化処理を施す。即ち、処理領域LGE1の光沢度GSを、少なくとも検知工程S22を行うまで一時的に又は恒久的に、検査装置IIによる拡散反射光DLを用いた外観の検知が可能となる光沢度GSとして、処理領域LGE1について外観検査可能とする。なお本実施形態では、被検査領域IRにおける検知困難領域HGEの有無や具体的な位置や形態を特定することなく、被検査領域IRの全体(例えば、
図2のように第1長側面部11A全体を被検査領域IRとする場合には、第1長側面部11A全体)を処理領域LGE1とし、この処理領域LGE1全体に検知可能化処理を施す(
図6参照)。
【0048】
その後、検知工程S22において、拡散反射光DLを用いて被検査領域IR全体(例えば、第1長側面部11A全体)についての外観データ(外観プロファイル)を検知する。具体的には、コンベアBCを駆動し被検査領域IR全体(例えば、第1長側面部11A全体)について検査ライン光LILを順次照射して(
図2参照)、外観データ(
図3参照)を被検査領域IR全体について取得し、被検査領域IR全体の外観(膨らみや凹み、キズの有無などのプロファイル)を検知する。
【0049】
この際、被検査領域IRは、その全体に検知可能化処理が施されているので、被検査領域IR内に、検知困難領域HGEの発生の有無に拘わらず、被検査領域IRのいずれの部位についても、適切に外観検査が可能となっている。即ち、例え、被検査領域IRの一部が検知困難領域HGEになっていたとしても(例えば
図6に示すように、第1長側面部11Aの一部が、ハッチングで示す検知困難領域HGEになっていたとしても)、この検知困難領域HGEのみならず、破線で示す検知困難可能性領域HGSEを包含する処理領域LGE1(本実施形態では被検査領域IR全体)について、検知可能化処理を施しているので、被検査領域IRのいずれの部位も、適切に外観検査が可能となっている。
【0050】
そして、判定工程S23では、検知工程S22の検知結果に基づいて、当該被検査領域IRの外観の適否を判定し、不良(No)と判定した場合には、当該電池1を廃棄等する。一方、当該被検査領域IRの外観が良好(Yes)と判定した場合には、電池1の製造工程を終了する。或いは前述したように、更なる次工程に進む。
かくして、適切に被検査領域IR全体の外観を検知でき、ひいては、外観を適切に検査した電池1を製造することができる。
【0051】
なお、上述では、第1長側面部11Aのみ検査する場合で説明したが、ケース本体をなす5面(第1長側面部11A、第2長側面部11B、第1短側面部11C、第2短側面部11D及び底面部11E)或いは電池ケース10をなす6面(上述の5面及び蓋体12)について、外観検査を行う場合には、判定工程S23の後に、他の面についてS21~S23に対応する工程を繰り返し、検査する全ての面について外観検査が良好となった電池1のみを製造する、或いは更なる次工程に進めるようにすると良い。
【0052】
また、本実施形態では、検知可能化工程S21において、処理領域LGE1に施す検知可能化処理としては、具体的には、ケース表面10Sのうち処理領域LGE1に、揮発性の液体LQからなる微小液滴LQPが散点状に分布した微小液滴分布層LQLを生じさせる。更に具体的には、液化プロパンなどの液化ガスや高圧ガスからなる冷却ガスを、処理領域LGE1に吹き付けて、処理領域LGE1を冷却し、結露により微小水滴が散点状に分布した微小水滴分布層を生じさせた。このように、冷却ガスを吹き付けて結露により微小液滴分布層(微小水滴分布層)LQLを生じさせた場合には、その後の放置や加温により、容易に微小液滴分布層(微小水滴分布層)LQLをなす液滴LQPを揮発(蒸発)させることができ、液滴LQPが電池ケース10のケース表面10Sに残らないので、電池1の外観やその後の取り扱い等に影響を与えない。
【0053】
なお、処理領域LGE1に微小液滴分布層LQLを生じさせる手法として、水やメタノール、フロリナート(商標名)などの揮発性の液体LQを霧状にして処理領域LGE1に吹き付け、これらの液体LQの微小液滴LQPが散点状に分布した微小液滴分布層LQLを処理領域LGE1に生じさせる手法も採用できる。この場合も、容易に微小液滴分布層LQLをなす微小液滴LQPは、電池ケース10のケース表面10Sに残らないので、電池1の外観やその後の取り扱い等に影響を与えない。
【0054】
その他、検知可能化工程S21において、処理領域LGE1に施す検知可能化処理として、微小液滴分布層LQLに代えて、つや消し材層MTLを形成することもできる。このつや消し材層MTLを形成する手法としては、エアスプレーなどにより、処理領域LGE1につや消し塗料を吹き付け塗布したり、酸化亜鉛粉末などの微粒粉末をバインダを溶解した揮発性の溶液に分散させた分散液を吹き付けて微粒粉末を堆積させる手法も挙げられる。このようにしても、検知工程S22において、被検査領域IR全体について適切に外観を検知することができ、被検査領域IRの外観の良否を適切に判定することができる。
【0055】
あるいは、検知可能化工程S21において、処理領域LGE1に施す検知可能化処理として、微小液滴分布層LQLの形成に代えて、処理領域LGE1を荒らす荒らし加工を行うこともできる。この荒らす荒らし加工の手法としては、処理領域LGE1を研磨スポンジで研磨して研磨痕を生じさせる研磨加工や、処理領域LGE1に砂を吹き付けてその表面を荒らすブラスト加工が挙げられる。このようにしても、検知工程S22において、被検査領域IR全体について適切に外観を検知することができ、被検査領域IRの外観の良否を適切に判定することができる。
【0056】
(変形形態1)
上述の実施形態では、検知可能化工程S21において処理領域LGE1に検知可能化処理を施すに当たり、被検査領域IR全体(第1長側面部11A全体)を処理領域LGE1とした例を示した(
図6参照)。
【0057】
しかし、被検査領域IR全体を処理領域とする必要はなく、処理領域が、少なくとも、検知困難領域HGEとなる虞のある検知困難可能性領域HGSE全体を含んでいれば良い。そこで、本変形形態1では、電池1の製造工程のうち検知可能化工程S21(
図7参照)において、処理領域LGE2に検知可能化処理を施すに当たり、この処理領域LGE2の範囲を、被検査領域IR(第1長側面部11A全体)の一部ではあるが、
図8において一点鎖線で囲むように、破線で囲まれた検知困難可能性領域HGSE全体を含む範囲としている。
【0058】
これにより、本変形形態1の製造方法でも、検知困難領域HGEが発生する虞のある範囲、即ち、検知困難可能性領域HGSE全体について、検知可能化処理を行うことができるので、検知困難領域HGEの発生の有無に拘わらず、被検査領域IR全体の外観を適切に検知でき、ひいては、外観を適切に検査した電池1を製造することができる。
【0059】
なお、検知可能化処理の具体的手法としては、冷却ガスの吹きつけなど、実施形態において示した各手法を、本変形形態1においても採用することができる。
【0060】
(変形形態2)
実施形態及び変形形態1では、被検査領域IRにおける検知困難領域HGEの有無や具体的な位置や形態を特定することなく、検知可能化工程S21において、処理領域LGE1,LGE2に検知可能化処理を行った例を示した(
図6~
図8参照)。
【0061】
しかし、検知可能化工程で検知可能化処理を行うに先立ち、被検査領域IRにおける検知困難領域HGEの有無を検知したり、検知困難領域HGEが存在する場合には、その具体的な位置や形態を特定し、特定した検知困難領域HGEを含む領域に検知可能化処理を施すようにしても良い。本変形形態2でも、まずは、未検査電池1Xの製造工程S1において、未検査電池1Xを公知の手法により製造する(
図9参照)。
【0062】
次いで、製造された未検査電池1Xについて、
図9において破線で囲む、電池外観検査工程S3を行う。本変形形態2におけるこの電池外観検査工程S3でも、被検査領域IRについての外観検査を、前述の検査装置IIを用いて行う(
図2参照)。
【0063】
但し、実施形態及び変形形態1とは異なり、まず、第1回検知工程S31において、実施形態における検知工程S22と同様、拡散反射光DLを用いて被検査領域IR全体(例えば、第1長側面部11A全体)の外観(膨らみや凹み、キズの有無など)を検知する。
【0064】
次いで、検知困難領域有無判断工程S32において、第1回検知工程S31において、検知困難領域HGEの有無、即ち、検知困難領域HGEが存在するために、適切に外観データ(外観プロファイル)が得られなかったか否かを判断する。此処でNo、即ち、被検査領域IR内に検知困難領域HGEが存在せず、被検査領域IR全体に亘って、外観データ(外観プロファイル)を適切に検知できた場合には、判定工程S35まで進む。
【0065】
一方、検知困難領域有無判断工程S32においてYes、即ち、検知困難領域HGEが存在し、このために、被検査領域IRの一部について適切に外観データが得られなかった場合には、検知可能化工程S33に進む。なお、検知困難領域HGEの範囲(位置や形態)は、第1回検知工程S31で得た外観データから特定できる。
【0066】
検知可能化工程S33では、特定した検知困難領域HGEを含む範囲を処理領域LGE3とし、この検知困難領域HGEを含む処理領域LGE3に、検知可能化処理を施す。即ち、微小液滴分布層LQL(あるいはつや消し材層MTL)を形成する。あるいは、処理領域LGE3の表面を荒らす。
【0067】
その後、第2回検知工程S34において、再び、第1回検知工程S31と同様、拡散反射光DLを用いて被検査領域IR全体(例えば、第1長側面部11A全体)の外観(膨らみや凹み、キズの有無など)を検知する。
この第2回検知工程S34では、被検査領域IR内に検知困難領域HGEが発生しているにも拘わらず、処理領域LGE3に検知可能化処理を施しているため、被検査領域IR全体について、適切に外観を検知できる。
【0068】
このため、判定工程S35では、第1回検知工程S31或いは第2回検知工程S34の検知結果に基づいて、当該被検査領域IRの外観の適否を判定し、不良(No)と判定した場合には、当該電池1を廃棄等する。一方、当該被検査領域IRの外観が良好(Yes)と判定した場合には、電池1の製造工程を終了する。或いは前述したように、更なる次工程に進む。
【0069】
かくして、適切に被検査領域IR全体の外観を検知でき、ひいては、外観を適切に検査した電池1を製造することができる。
しかも本変形形態2の製造方法では、検知困難領域HGEが存在する未検査電池1Xについてのみ検知可能化工程S33及び第2回検知工程S34を行うので、低光沢処理に掛かるガスや塗料等の費用や時間を削減することができる。
【0070】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は上述の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、変形形態2では、検知困難領域HGEが存在する場合には、判定工程S35において、第2回検知工程S34で得た外観データ(外観プロファイル)のみを用いるとした。しかし、第1回検知工程S31で得た外観データ及び第2回検知工程S34で得た外観データの両者を用いても良い。また、第1回検知工程S31で得た外観データのうち、適切に得られなかった領域(検知困難領域HGEに対応)について、第2回検知工程S34で得た外観データを用いて補完するようにしても良い。この場合には、第2回検知工程S34では、被検査領域IRのうち、適切に得られなかった領域(検知困難領域HGEに対応)を含むに領域についてのみ、2回目の外観検査を行うようにして、検査時間の短縮を図るようにしても良い。
【0071】
また、変形形態2では、第1回検知工程S31で外観データを検知することで、検知困難領域HGEが有無を検知し、検知困難領域HGEが存在する未検査電池1Xについては、検知可能化工程S33を経て、第2回検知工程S34でも同様に外観データを得るようにした。しかし、第1回検知工程S31に代えて、光沢計を用いて被検査領域IRの各部の光沢度を測定して検知困難領域HGEの有無を検知する工程を設け、検知困難領域HGEが存在する未検査電池1Xについて検知可能化工程を経由させた上で、全ての未検査電池1Xについて、検知工程で拡散反射光を用いて外観データを得るようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 電池(蓄電デバイス)
1X 未検査電池(未検査蓄電デバイス)
10 電池ケース(デバイスケース)
10S (電池ケースの)ケース表面
IR (ケース表面のうち)被検査領域
HGE (被検査領域のうち)検知困難領域
HGSE (被検査領域のうち)検知困難可能性領域
LGE1,LGE2,LGE3 処理領域
11 ケース本体
11A 第1長側面部
LIL 検査ライン光(検査光)
DL 拡散反射光
LP (検査ライン光が照射された)照射部位
CAM 撮像部
GS 光沢度
θo2 (撮像部の)撮像角
S1 未検査電池の製造工程(未検査蓄電デバイスの製造工程)
S2,S3 電池外観検査工程(未検査蓄電デバイスの外観検査工程)
S21 検知可能化工程
S22 検知工程
S23 判定工程
S31 第1回検知工程
S32 検知困難領域有無判断工程
S33 検知可能化工程
S34 第2回検知工程
S35 判定工程
LQ 液体
LQP 微小液滴
LQL 微小液滴分布層
MTL つや消し材層