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  • 特開-流量計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178418
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/20 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G01F1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085206
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】平野 尭将
(72)【発明者】
【氏名】布施 幸則
(72)【発明者】
【氏名】渡部 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松岡 達也
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CC09
2F030CE02
2F030CE04
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で異物が絡まるなどの問題が生じにくい流量計を提供することを課題とする。また、流体が不定期に流入し、しかも、その流量の変動幅が大きい管路であっても、流量測定が可能な流量計を提供することを課題とする。
【解決手段】管路50内の頂面51に取り付けられた、荷重を電気信号に変換するセンサ10と、センサ10が得た電気信号から流量を求める電気信号処理装置20と、センサ10に一端側が連結され管路内を流れる流体の動的圧力Fをセンサ10に伝える圧受部30とを備え、圧受部30は、球状の錘部31と、錘部31をセンサ10に連結する可撓性の連結線32とを有し、錘部31は、連結線32により、管路50の底面52に接触可能にセンサ10に連結され、流体の動的圧力Fを受けた際に浮遊して、流体の流れに沿って移動しようとすることにより、連結線32を通じて、センサ10にモーメント荷重を付与する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平に敷設された管路内を流れる流体の流量を測定する流量計であって、
管路内の上方に取り付けられた、荷重を電気信号に変換するセンサと、前記センサが得た電気信号から流量を求める電気信号処理装置と、前記センサに一端側が連結され前記管路内を流れる流体の動的圧力を前記センサに伝える圧受部とを備え、
前記圧受部は、錘部と、前記錘部を前記センサに連結する可撓性の連結線とを有し、
前記錘部は、前記連結線により、前記管路の底面に接触可能に前記センサに連結され、少なくとも前記管路の底面に接触し得る部分が凸曲面とされていると共に、前記管路内を流れる流体の動的圧力を受けた際に浮遊して、前記流体の流れに沿って移動しようとすることにより、前記連結線を通じて、前記センサにモーメント荷重を付与することを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記錘部が球状とされている、請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記流体が水であり、前記錘部の比重が7~9である、請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記流体が雨水である、請求項3に記載の流量計。
【請求項5】
前記錘部がステンレス製である、請求項1~4のいずれか一項に記載の流量計。
【請求項6】
前記センサが、前記連結線を通じて付与されたモーメント荷重を一軸荷重に変換する変換部と、一軸荷重を電気信号に変換するロードセルとを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲリラ豪雨と呼ばれるような集中豪雨が発生し、都市の雨水排水インフラが溢れるなどの問題が生じている。そのため、建物に、浸透桝、雨水貯留槽など一時的に雨水を貯留する設備(以下、「仮貯留設備」という。)を設け、公共下水管への雨水の流出量を抑制する対策が取られている。
【0003】
これらの仮貯留設備を有効活用するためには、雨水が流入する管路に流量計を設置することが必要である。
比較的構造が簡単で安価な流量計としては、管路内に設置し、流体の動的圧力を利用する羽根車式流量計等が知られている。しかし、羽根車等に雨水中の異物が絡まるなどして、管路としての本来の機能を阻害しやすい。また、羽根車は継続的に回転するので、軸受け部が磨耗しやすい問題もある。
【0004】
管路内の流体に接触せずに流量を測定できる流量計としては、非接触超音波流量計などもあるが、一定長さ(直系の10倍程度)の直管部が必要だったり、配管内が満水(液)状態であることが必要であったり、高価だったりして、容易には取り付けられない。
そこで特許文献1では、簡易な流量計として、流体流通により揚力が作用するウイングを管路内に設置し、このウイングを保持するステイへの作用力をロードセルで検知する流量計が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-26338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の流量計も、ステイにウイングを保持させる部分の構造が複雑な上、上流側に整流板を配置することが必要とされており、依然として、簡易な構造とは言い難い。また、特許文献1の流量計も配管内が満水(液)状態、又は満水(液)状態に近い状態でなければ流量を測定できない。そのため、雨水のように不定期に流入し、しかも、その流量の変動幅が大きい管路に設置する流量計としては不適格である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構造で異物が絡まるなどの問題が生じにくい流量計を提供することを課題とする。また、流体が不定期に流入し、しかも、その流量の変動幅が大きい管路であっても、流量測定が可能な流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]略水平に敷設された管路内を流れる流体の流量を測定する流量計であって、
管路内の上方に取り付けられた、荷重を電気信号に変換するセンサと、前記センサが得た電気信号から流量を求める電気信号処理装置と、前記センサに一端側が連結され前記管路内を流れる流体の動的圧力を前記センサに伝える圧受部とを備え、
前記圧受部は、錘部と、前記錘部を前記センサに連結する可撓性の連結線とを有し、
前記錘部は、前記連結線により、前記管路の底面に接触可能に前記センサに連結され、少なくとも前記管路の底面に接触し得る部分が凸曲面とされていると共に、前記管路内を流れる流体の動的圧力を受けた際に浮遊して、前記流体の流れに沿って移動しようとすることにより、前記連結線を通じて、前記センサにモーメント荷重を付与することを特徴とする流量計。
[2]前記錘部が球状とされている、[1]に記載の流量計。
[3]前記流体が水であり、前記錘部の比重が7~9である、[1]又は[2]に記載の流量計。
[4]前記流体が雨水である、[3]に記載の流量計。
[5]前記錘部がステンレス製である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の流量計。
[6]前記センサが、前記連結線を通じて付与されたモーメント荷重を一軸荷重に変換する変換部と、一軸荷重を電気信号に変換するロードセルとを有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の流量計。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流量計によれば、簡易な構造で異物が絡まるなどの問題が生じにくく、かつ、流体が不定期に流入し、しかも、その流量の変動幅が大きい管路であっても、流量測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る流量計の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る流量計を図1に基づいて説明する。
本実施形態の流量計1は、略水平に敷設された管路50内を流れる流体の流量を測定する流量計であり、センサ10と電気信号処理装置20と圧受部30とで概略構成されている。
【0012】
管路50は、略水平に敷設されている。ここで、略水平とは、管路50の内壁が、底面52側に流体が流れていても、頂面51には流体が達しない状況が生じる程度に、上下位置が異なる頂面51と底面52とを観念できる水平又は水平に近い状態であることを意味する。例えば、管路50内の流体の移動を促進する程度の傾きは許容される。寧ろ完全な水平ではなく、管路50内の流体の移動を促進する程度の傾き(水勾配)があることが好ましい。管路50の水平からの傾きは、例えば、2~3゜とすることができる。
管路50の断面形状に特に限定はなく、円形、長方形、逆台形等とすることができる。
【0013】
センサ10は、管路50の内壁の頂面51に固定された取付け板11と、取付け板11の下面に固定されたロードセル12と、一端がヒンジ部14により取付け板11に固定されたL字型の変換部13とで構成されている。変換部13は、ヒンジ部14を回転軸として、時計回りに回動することにより、ヒンジ部14に固定された端部と反対側の端部が、ロードセル12を上方向に向けて横圧するようになっている。
【0014】
本発明において、センサ10は管路50の上方に取り付けられる。上方に取り付けられることにより、常時は、流体に接触させずおくことができるため、メンテナンスが容易である。
本実施形態では、センサ10が固定される場所を管路50の内壁において、最も高い部分(頂面51)としたので特に好ましい。
【0015】
本実施形態では、ロードセル12として、一軸荷重を電気信号(例えば電圧)に変換するロードセルを用いた例を示している。
一軸荷重を電気信号に変換するロードセルの種類に特に限定はなく、小型圧縮型ロードセル、ばね式や圧電素子式、磁歪式ロードセル、静電容量型ロードセル、ジャイロ式ロードセル、ひずみゲージ式ロードセルなどを使用できる。中でも小型圧縮型ロードセルが、管内に設置しやすいため好ましい。
電気信号処理装置20は、ロードセル12と信号線21で接続されており、ロードセル12で得られた電気信号が入力されるようになっている。
【0016】
圧受部30は、錘部31と可撓性の連結線32とで構成されている。
連結線32は、一端が錘部31に取りつけられ、他端が、センサ10の変換部13に取りつけられることにより、錘部31をセンサ10に連結している。
連結線32の具体的態様に特に限定はなく、可撓性と、錘部31を流体の流れに抗してセンサ10に連結しておく強度があればよい。例えば、紐状、帯状、チェーン状等とすることができる。連結線32の材質は、流体に対して耐性のある材質とすることが好ましい。流体が水の場合は、例えば、ステンレス(SUS)、鉄等とすることができる。
【0017】
連結線32は、管路50内面の底面52から頂面51までの高さよりも長く形成されている。その結果、錘部31は、連結線32により、管路50の底面52に接触可能にセンサ10に連結されている。そのため、錘部31は、流体がない状態又は流体の流れがない状態では、管路50内面の底面52に沈むなどして底面52に接触し、流体の流れがある状態では、流体による動的圧力を受けて浮遊して底面52から離れ、連結線32による拘束が許容する範囲内で流体の流れに沿って移動可能となっている。
【0018】
図1において、錘部31は球状とされているが、底面52に接触し得る部分が凸曲面とされていればよい。底面52に接触し得る部分が凸曲面とされていることにより、底面52との摩擦が低減され、底面52に沈んだ状態(接触した状態)から、流体による動的圧力によって速やかに浮遊できるようになっている。
【0019】
底面52に接触する部分が凸曲面とされている形状としては、球状の他、長球状、扁平楕円体状、雫状等が挙げられる。中でも球状とすることが管内に流れるゴミを取り除きやすいため好ましい。
錘部31が球状の場合の直径は、2~3cmであることが好ましいが、管径が100mmを超える場合は3cm以上であることが好ましい。錘部31の直径が好ましい範囲の下限値以上であることにより、流体の動的圧力を充分に受けることができる。錘部31の直径が好ましい範囲の上限値以下であることにより、細い管路にも対応できる。
【0020】
流体が水である場合、錘部31の比重は、7~9であることが好ましく、7.5~8.5であることがより好ましく、8程度が特に好ましい。錘部31の比重が好ましい範囲の下限値以上であることにより、水量が少なくなったときに、速やかに底面52に向けて沈み、底面52に接触した状態に戻ることができる。また、水流により不安定な動きをすることを回避できる。
【0021】
錘部31の比重が好ましい範囲の上限値以下であることにより、流量が小さい場合にも浮遊しやすく、流量測定が可能となる。
錘部31の材質は、適度な比重があり、流体に対して耐性のある材質とすることが好ましい。流体が水の場合は、例えば、ステンレス(SUS)、鉄等とすることができる。
【0022】
本実施形態の流量計1は、管路50に流体が存在しない、又は流れていない場合、錘部31は底面52に接触している。このとき、連結線32は、錘部31とセンサ10との間で緩んだ状態となる。すなわち、錘部31は、連結線32に張力を与えておらず、連結線32を通じてセンサ10にモーメント荷重を付与していない。
【0023】
このとき、センサ10の変換部13はヒンジ部14の下に垂れ下がるような状態となり、ロードセル12を横圧せず、ロードセル12は、荷重を検知しない。すなわち、ロードセル12は、流れ方向に沿う動的圧力Fに応じた電気信号を電気信号処理装置20に出力しないので、電気信号処理装置20は、流量ゼロと判断することができる。
【0024】
一方、管路50に流体が流れると、流体の動的圧力Fを受けて錘部31が底面52から離れて浮遊し、連結線32による拘束が許容する範囲内で流体の流れに沿って移動する。そして、連結線32による拘束の限界まで達すると、連結線32を通じてセンサ10にモーメント荷重を付与する。
【0025】
連結線32による拘束の限界とは、具体的には、錘部31が移動することにより、センサ10の変換部13がヒンジ部14の下に垂れ下がった状態から時計回りに回動し、ロードセル12に接触した時点を意味する。
その後錘部31は、動的圧力Fに応じた張力を連結線32に与え、ヒンジ部14を軸とするモーメント荷重をセンサ10に付与する。センサ10に付与されたモーメント荷重は、変換部13により一軸荷重に変換され、ロードセル12に付与される。その結果、ロードセル12は、動的圧力Fに応じた電気信号を、信号線21を通じて電気信号処理装置20に出力する。
【0026】
電気信号処理装置20は、ロードセル12から入力された電気信号に基づき凡その流量を求める。
具体的には、ロードセル12から入力された電気信号と流量との関係を示す検量線に基づき、入力された電気信号に対応する流量を求める。検量線は、既知の数種類の流量で流体を流した場合の電圧値と流量の関係に基づき、予め作成し、電気信号処理装置20に記憶させておいたものである。
そして、得られた流量を分析対象時間で積分することにより凡その積算流量を求めることができる。
なお、センサ10を設置した管路50に水位計を設置すれば、さらに正確な流量を求めることも可能である。
【0027】
本実施形態の流量計1は、管路内の上方に取り付けられた荷重を電気信号に変換するセンサと、前記センサが得た電気信号から流量を求める電気信号処理装置と、前記センサに一端側が連結され前記管路内を流れる流体の動的圧力を前記センサに伝える圧受部とを備え、前記圧受部は、前記管路内を流れる流体の動的圧力を受けた際に、前記流体の流れに沿って移動しようとすることにより、前記センサにモーメント荷重を付与する構成とされている。
【0028】
すなわち、単純な構成で流量に応じたモーメント荷重を発生させ、これを検出することにより流量を求める構成とされている。
そのため、簡易な構造で異物が絡まるなどの問題が生じにくい流量計とすることができる。
【0029】
圧受部30が、例えば、センサ10側から底面52近傍にまで達する棒状体や板状体等である場合、圧受部30が、管路50内を流れる流体の動的圧力を受けた際に、流体の流れに沿って動くためには、圧受部30と底面52との間にクリアランスが必要である。その場合、微小流量の場合、圧受部30で流体の動的圧力Fを受けることができず、流量測定ができない。
【0030】
そこで、本実施形態の流量計1は、さらに、圧受部30が錘部31と連結線32とで構成され、錘部31は、連結線32により、管路50の底面52に接触可能にセンサ10に連結されている。そのため、微小流量であっても、圧受部30の錘部31で流体の動的圧力Fを受けることができ、流量測定ができる。
【0031】
本実施形態では、さらに、錘部31の底面52に接触し得る部分が凸曲面とされているものとした。その結果、底面52との摩擦が低減され、管路50内を流れる流体の動的圧力を受けた際に速やかに浮遊して、流体の流れに沿って移動でき、連結線32を通じて、センサ10にモーメント荷重を付与できる。
【0032】
本実施形態では、また、センサ10を、連結線32を通じて付与されたモーメント荷重を一軸荷重に変換する変換部13と、一軸荷重を電気信号に変換するロードセル12で構成した。そのため、安価なロードセルでセンサ10を構成できる。
なお、本発明のセンサは、モーメント荷重を直接電気信号に変換するセンサであってもよい。
【0033】
本実施形態の流量計1が対象とする流体は液体であることが好ましい。液体は水に限定されず、例えば油であってもよい。
本実施形態の流量計1は、特に流体が水である場合に好適に使用できる。とりわけ雨水であることが好ましい。
雨水が流れる管路は、晴天であれば全く雨水が流れず、管路内は乾いた状態となる。また、雨天のときには、ごく僅かな降雨である場合もある一方、いわゆるゲリラ豪雨のように、非常に大きい流量となる場合もある。
本実施形態の流量計1によれば、このように流量の振れ幅の大きい管路の流量測定にも対応できる。
【符号の説明】
【0034】
1 流量計
10 センサ
11 取付け板
12 ロードセル
13 変換部
14 ヒンジ部
20 電気信号処理装置
21 信号線
30 圧受部
31 錘部
32 連結線
50 管路
51 頂面
52 底面
図1