(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178428
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ドレンボルト取り外し工具
(51)【国際特許分類】
B25B 13/02 20060101AFI20221125BHJP
B25B 13/48 20060101ALI20221125BHJP
F01M 11/00 20060101ALI20221125BHJP
F01M 11/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B25B13/02 M
B25B13/48 E
B25B13/48 Z
F01M11/00 Q
F01M11/00 R
F01M11/00 W
F01M11/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085222
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】寺谷 大樹
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BB04
3G015BK05
(57)【要約】
【課題】ドレンボルトの取り外し作業において、作業者へのオイルの付着を抑制するとともに、オイルによる熱害を抑制する。
【解決手段】ドレンボルト取り外し工具1は、ドレンボルト100に嵌合するボルト嵌合部10と、作業者が把持する把持部20と、ボルト嵌合部10と把持部20とを連結する軸状の中間部30と、中間部30にそれぞれ設けられ、中間部30の軸方向と交差する方向に広がる傘状をなす複数の傘状部33,34と、を備える。複数の傘状部33,34は、中間部30の軸方向に所定の間隔を開けて配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパンに締結されたドレンボルトを取り外すドレンボルト取り外し工具であって、
前記ドレンボルトに嵌合するボルト嵌合部と、
作業者が把持する把持部と、
前記ボルト嵌合部と前記把持部とを連結する軸状の中間部と、
前記中間部にそれぞれ設けられ、前記中間部の軸方向と交差する方向に広がる傘状をなす複数の傘状部と、を備え、
前記複数の傘状部は、前記軸方向に所定の間隔を開けて配置されていることを特徴とするドレンボルト取り外し工具。
【請求項2】
請求項1に記載のドレンボルト取り外し工具において、
前記複数の傘状部のうち前記把持部に最も近い傘状部は、前記軸方向から見たときの大きさが、他の傘状部よりも大きいことを特徴とするドレンボルト取り外し工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドレンボルト取り外し工具において、
前記中間部は、前記ボルト嵌合部との接続部に、磁石を着脱可能に収納するための磁石収容部と、該磁石収容部に向かって前記軸方向と直交する方向に延びる連通孔とを有することを特徴とするドレンボルト取り外し工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、ドレンボルト取り外し工具に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにはエンジンオイルを貯蔵するオイルパンが設けられており、オイルパンの下部にはオイルを抜くための排出口が設けられている。排出口は、通常はドレンボルトが締結されることで閉じられており、ドレンボルトはオイル交換時にオイルパンから取り外される。ドレンボルトを取り外すときには、ドレンパンからオイルが流出するため、流出したオイルが作業者の手に付いてしまうという問題があった。この問題に対して、ドレンボルト取り外し工具の構成を工夫することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排油コック(ドレンボルト)に嵌着する第1ソケット孔を端部に有するソケット部と、作業者が把持する把持部との間に、ソケット部の周方向に拡大する様に同ソケット部に接続された受皿を設けたドレンボルト取り外し工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オイルは冷えていると粘度が高くなるため、オイル交換は、エンジンの停止直後などオイルが高温の状態で行われる。特許文献1に記載のような工具では、ドレンボルトの取り外し作業を行ったときに、受皿を介してオイルの熱が作業者の手に伝達されてしまう(熱害が発生する)という問題があった。把持部における受皿から離れた位置を把持すれば、オイルによる熱害を抑制できるが、この場合、把持部の握りが弱くなり作業性が悪化してしまう。
【0006】
また、本願発明者らが鋭意研究したところ、特許文献1に記載のような工具では、ドレンボルトの取り外し作業を行ったときに、オイルが受皿の把持部側の面を伝って、作業者に付着してしまうことが分かった。
【0007】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドレンボルトの取り外し作業において、作業者へのオイルの付着を抑制するとともに、オイルによる熱害を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術は、オイルパンに締結されたドレンボルトを取り外すドレンボルト取り外し工具を対象として、前記ドレンボルトに嵌合するボルト嵌合部と、作業者が把持する把持部と、前記ボルト嵌合部と前記把持部とを連結する軸状の中間部と、前記中間部にそれぞれ設けられ、前記中間部の軸方向と交差する方向に広がる傘状をなす複数の傘状部と、を備え、前記複数の傘状部は、前記軸方向に所定の間隔を開けて配置されている、という構成とした。
【0009】
この構成によると、ドレンボルトの取り外し作業時において、オイルが流出したときには、ボルト嵌合部に最も近い傘状部によりオイルがはじかれる。複数の傘状部は軸方向に所定の間隔を開けて配置されているため、作業者が把持部における傘状部の近くを把持していたとしても、作業者にオイルの熱が伝わることはない。また、オイルが、ボルト嵌合部に最も近い傘状部を伝って把持部側に流れてきたとしても、他の傘状部によりこのオイルをはじくことで、作業者にオイルが付着することを抑制することができる。これにより、作業者へのオイルの付着を抑制するとともに、オイルによる熱害を抑制することができる。
【0010】
さらに、複数の傘状部が、軸方向に所定の間隔を開けて配置されていることにより、取り外し工具を、例えばドレーナーの縁に掛けておくことができる。これにより、ボルト嵌合部や中間部をドレーナー側に向けておくことで、ボルト嵌合部や中間部に付着したオイルが他の工具等に付着してしまうことを抑制することもできる。
【0011】
前記ドレンボルト取り外し工具において、前記複数の傘状部のうち前記把持部に最も近い傘状部は、前記軸方向から見たときの大きさが、他の傘状部よりも大きい、という構成でもよい。
【0012】
この構成によると、オイルが作業者の手に付着するのをより適切に抑制することができる。
【0013】
前記ドレンボルト取り外し工具において、前記中間部は、前記ボルト嵌合部との接続部に、磁石を着脱可能に収納するための磁石収容部と、該磁石収容部に向かって前記軸方向と直交する方向に延びる連通孔とを有する、という構成でもよい。
【0014】
この構成によると、磁力によりボルトをボルト嵌合部に引きつけることができるため、ドレンボルトの取り外し作業の効率を向上させることができる。また、中間部の軸方向と直交する方向に延びる連通孔が形成されているため、磁石収容部に収容された磁石の交換が容易になる。
【0015】
また、従来のように、磁石をボルト嵌合部に嵌合させると、磁石がドレンボルトに吸着して、ドレンボルトと一緒にボルト嵌合部から外れるおそれがある。これに対して、前記の構成では、中間部に磁石を配置するため、磁石がドレンボルトと一緒にボルト嵌合部から外れることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、作業者へのオイルの付着を抑制するとともに、オイルによる熱害を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態にかかるドレンボルト取り外し工具の斜視図である。
【
図2】
図2は、ドレンボルト取り外し工具の側面図である。
【
図3】
図3は、ドレンボルト取り外し工具の正面図である。
【
図4】
図4は、ドレンボルト取り外し工具の底面図である。
【
図5】
図5は、ドレンボルト取り外し工具の先端側を、軸方向に沿って延びる平面で切断した縦断面図である。
【
図6】
図6は、ドレンボルトの取り外し作業を説明する図であって、ドレンボルト取り外し工具がドレンボルトに嵌合する前の状態を示す。
【
図7】
図7は、ドレンボルトの取り外し作業を説明する図であって、ドレンボルトにドレンボルト取り外し工具が嵌合した状態を示す。
【
図8】
図8は、ドレンボルトの取り外し作業を説明する図であって、ドレンボルトを取り外した状態を示す。
【
図9】
図9は、ドレンボルトの取り外し作業を説明する図であって、ドレンボルト取り外し工具をドレーナーの縁に引っ掛けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るドレンボルト取り外し工具1(以下、単に、取り外し工具1という)を示す。この取り外し工具1は、例えば、車両のエンジンに設けられたオイルパンPに締結されたドレンボルト100(
図6参照)を取り外す際に用いられる工具である。
【0020】
取り外し工具1は、先端側にドレンボルト100と嵌合するボルト嵌合部10を有し、基端側に作業者が把持する把持部20を有する。ボルト嵌合部10と把持部20との間は、軸状の中間部30により連結されている。ボルト嵌合部10、把持部20、及び中間部30は、無負荷状態において軸心が同じになるように構成されている。取り外し工具1は、樹脂系エストラマー、例えばシリコン樹脂で構成されている。ボルト嵌合部10、把持部20、及び中間部30は、一体に構成されている。
【0021】
ボルト嵌合部10は、中間部30側に底部11を有する有底筒状をなしている。周壁部12は、外周部は断面円形をなし、内周部は断面が十二個の溝部12aを備えた十二角形状(二重六角形状)をなしている。特に、周壁部12の内周部の断面形状は、ドレンボルト100の頭部の六角形に適合して係合するような十二角形状をなしている。尚、ボルト嵌合部10は、後述する細軸部31よりは硬くなるように構成されている。
【0022】
把持部20は、実際に作業者が握る把持部本体21と、把持部本体21の基端側の端部に設けられたテール部22とを有する。
図2に示すように、把持部本体21は、軸心に向かって僅かにくびれた形状を有する。テール部22は、円錐台形状をなしている。テール部22は、先端側の端部から基端側の端部に向かって縮径している。
図1、
図2、及び
図4に示すように、把持部本体21とテール部22との間の境界部分には、軸心に向かって窪んだ複数の窪み部23が形成されている。窪み部23は、テール部22の周方向に等間隔に形成されている。
【0023】
中間部30は、断面六角形状の細軸部31を有する。細軸部31は、取り外し工具1の他の部分よりも細い部分である。
【0024】
細軸部31の先端側の部分には、ボルト嵌合部10と一体に接続された接続部32が設けられている。接続部32は、細軸部31からボルト嵌合部10に向かって徐々に軸心から離れる方向に拡大する形状をなしている。接続部32には、磁石40を収容するための磁石収容部32aが設けられている。
【0025】
図5に示すように、磁石収容部32aは、接続部32のボルト嵌合部10に近い部分に形成されている。
図3及び
図5に示すように、磁石収容部32aは、磁石40をボルト嵌合部10の中央に位置させるように、磁石40を収容する。磁石収容部32aは、中間部30の軸方向から見て円形をなしている。磁石収容部32aの内径は、ボルト嵌合部10の内径よりも小さい。尚、磁石収容部32aは、磁石40の形状が円柱形や円環形であれば特に収容しやすい。磁石収容部32aは、接続部32が可撓性の樹脂材料で構成されているため磁石40の形状が矩形状であっても、当該磁石40を収容することが可能である。
【0026】
磁石収容部32aは、前記軸方向と直交する方向に延びる連通孔32bにより外部と連通している。連通孔32bの前記軸方向の幅は、磁石収容部32aの前記軸方向の幅よりも小さくなっており、磁石収容部32aと連通孔32bとの間には、前記軸方向の両側に段差部32cがそれぞれ形成されている。この各段差部32cは、磁石40が磁石収容部32aに収容された状態で、該磁石40が連通孔32bを通って抜け出さないようにするストッパの役割をそれぞれ果たす。連通孔32bの前記軸方向及び孔軸方向に直交する方向の幅は、磁石収容部32aの直径と同じである。
【0027】
図1及び
図2に示すように、中間部30は、細軸部31と把持部20との間に設けられた複数の傘状部を有する。具体的には、中間部30は、細軸部31の基端側の端部に接続された第1傘状部33と、把持部20の先端側の端部に接続された第2傘状部34とを有する。
図3に示すように、第1及び第2傘状部33,34は、それぞれ中間部30の軸心を中心とする円形状をなしている。つまり、第1及び第2傘状部33,34は、前記軸方向から見て、ボルト嵌合部10及び把持部20と同心になるように形成されている。第1及び第2傘状部33,34は、それぞれ中間部30の軸心と直交する方向に広がる円板のみで構成されており、各周縁部分は、折り返し等を有していない。第1及び第2傘状部33,34は、軸心を含む面で切断した断面が、径方向の外側に向かうにつれて前記軸方向の幅が僅かに狭くなるテーパー形状になっている。
【0028】
第1傘状部33は、
図3に示すように、ボルト嵌合部10よりも大径に構成されている。第1傘状部33の径は、ボルト嵌合部10に対して2倍程度である。
【0029】
第2傘状部34は、
図3に示すように、第1傘状部34よりも大径に構成されている。つまり、複数の傘状部のうち把持部20に最も近い傘状部(ここでは第2傘状部34)は、軸方向から見たときの大きさが、他の傘状部(ここでは第1傘状部33)よりも大きい。第2傘状部34の径は、第1傘状部33の径に対して、約10~15%程度大きい。
【0030】
第1傘状部33と第2傘状部34とは、前記軸方向に所定の間隔を開けて把持部20と同程度の径を有する太軸部35により連結されている。前記所定の間隔は、例えば、オイル交換作業で用いられるドレーナーD(
図9参照)の縁の幅よりも大きくかつドレーナーDに工具1を引っ掛けることができる程度の幅である。前記所定の間隔は、例えば、13~15mm程度である。
【0031】
次に、工具1によりドレンボルト100を取り外す際の動作について、
図6~
図8を参照しながら説明する。尚、ドレンボルト100の取り外し作業は、基本的にオイル交換の際に行われる。オイルは冷えていると粘度が高くなるため、オイル交換は、エンジンの停止直後などオイルが高温の状態で行われる。
図6~
図8に示す状態は、エンジンの停止直後であって、オイルが高温の状態である。
【0032】
図6に示すように、ドレンボルト100は、オイルパンPの底部に設けられている。ここでは、ドレンボルト100は、オイルパンPの底部に斜めに取り付けられている。ドレンボルト100の取り外し作業では、まず、不図示のレンチ等でドレンボルト100を、ドレンボルト100がオイルパンPから外れない程度に緩める。
【0033】
次に、
図7に示すように、ドレンボルト100に工具1のボルト嵌合部10を嵌合させる。このとき、ボルト嵌合部10の周壁部12の溝部12aにドレンボルト100の角部が位置するように、ドレンボルト100にボルト嵌合部10を嵌合させる。そして、把持部20を回してドレンボルト100を回転させる。ドレンボルト100は、ある程度緩められているため、回転させるのに大きなトルクは必要ない。このため、ボルト嵌合部10が可撓性の樹脂材料で構成されていてもドレンボルト100を回転させることができる。特に、細軸部31が断面六角形状をなしていることにより、細軸部31の捻り剛性がある程度高いため、回転トルクを把持部20からドレンボルト100に適切に伝達することができる。また、磁石40によりドレンボルト100を引きつられることで、ドレンボルト100とボルト嵌合部10との嵌合状態が適切に維持されるため、ドレンボルト100は、比較的容易に回転される。尚、ドレンボルト100の頭部形状が円形状であったとしても、内周部が頭部に接触したり、内周部が頭部形状に合わせて弾性変形したりすることで、該頭部と内周部と間に摩擦を生じさせることができるため、工具1により当該ドレンボルト100を回転させることができる。
【0034】
そして、
図8に示すように、ドレンボルト100を取り外すと、オイルパンP内のオイルがボルト孔を通して流出する。このとき、オイルの一部は、ボルト孔の方向に沿って、作業者側に向かって流れ出るとともに、工具1の周面に沿って、把持部20に向かって流れてくる。工具1には、第1傘状部33が設けられているため、これらのオイルを第1傘状部33ではじくことができる。また、第1傘状部33の縁から流れ落ちたり、第1傘状部33の基端側の面に沿って流れたりしたオイルは、第2傘状部34によりはじくことができる。これにより、作業者の手にオイルが付着するのを効果的に抑制することができる。
【0035】
ここで、前述したように、ドレンボルト100の取り外し作業はオイルが高温の状態で行われる。本実施形態の工具1では、大量オイルをはじく第1傘状部33よりも基端側に、第2傘状部34が設けられており、第1傘状部33と第2傘状部34との間に所定の間隔が空いているため、オイルから第1傘状部33に伝達された熱が、把持部20を握る作業者の手に伝達されにくい。これにより、オイルによる熱害を抑制することができる。
【0036】
また、第1傘状部33と第2傘状部34との間に所定の間隔が空いていることにより、
図9に示すように、ドレーナーDの縁に工具1を引っ掛けることができる。これにより、ボルト嵌合部10や中間部30に付着したオイルが他の工具等に付着してしまうことを抑制することができる。また、ボルト嵌合部10や中間部30をドレーナーD側に向けた状態で工具1を引っ掛けておくことで、ボルト嵌合部10や中間部30に付着したオイルをドレーナーDに落とすこともできる。
【0037】
また、本実施形態では、第1及び第2傘状部33,34は、いずれも中間部30の軸心と直交する方向に広がる円板のみにより構成されている。これにより、各第1及び第2傘状部33,34に高温のオイルが溜まることがない。この結果、オイルによる熱害をより効果的に抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、第2傘状部34は、第1傘状部33よりも大径である。これにより、オイルが第1傘状部33の縁に沿って流れたとしても、第2傘状部34で効果的にオイルをはじくことができる。この結果、オイルが作業者の手に付着するのをより適切に抑制する。
【0039】
また、本実施形態では、中間部30は、ボルト嵌合部10との接続部32に、磁石40を着脱可能に収納するための磁石収容部32aと、該磁石収容部32aに向かって前記軸方向と直交する方向に延びる連通孔32bとを有する。これにより、磁力によりドレンボルト100をボルト嵌合部10に引きつけることができるため、ドレンボルト100の取り外し作業の効率を向上させることができる。また、連通孔32bは、中間部30の軸方向と直交する方向に延びているため、磁石収容部32aに収容された磁石40の交換が容易になる。
【0040】
また、磁石40の磁力により、ドレンボルト100をオイルパンPから外した後も、ドレンボルト100をボルト嵌合部10に嵌合させたままにすることができる。さらに、前述したように、細軸部31は、断面六角形状をなしていて、前述の捻り剛性に加えて、曲げ剛性についてもある程度高いため、把持部20を把持した際に、ドレンボルト100の重みで細軸部31が撓みにくい。これらにより、ドレンボルト100をオイルパンPから外した後、ドレンボルト100がボルト嵌合部10に嵌合したまま、該ドレンボルト100をパーツクリーナー等で洗浄して、再度オイルパンPに取り付けることができる。特に、細軸部31が撓みにくいことで、ドレンボルト100をボルト孔に挿入する際の狙いを定め易い。さらに、前述したように、細軸部31の捻り剛性が高いことで、ドレンボルト100をボルト孔に挿入した後に、ドレンボルト100に回転トルクを伝達させやすい。
【0041】
特に、本実施形態では、連通孔32bの前記軸方向及び孔軸方向に直交する方向の幅は、磁石収容部32aの直径と同じであるため、磁石40の交換が容易である。一方で、磁石収容部32aと連通孔32bとの間には、前記軸方向の両側に段差部32cがそれぞれ形成されているため、磁石収容部32aに収容した磁石40が連通孔32bを通って抜け落ちることは抑制することができる。また、接続部32も可撓性を有する樹脂材料で構成されているため、段差部32cがあったとしても、磁石40の交換時には磁石収容部32aを広げるように変形させることで磁石40を容易に取り出すことができる。
【0042】
ここに開示された技術は、前記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0043】
例えば、前述の実施形態では、第1傘状部33と第2傘状部34の2つの傘状部が設けられていたが、3つ以上の傘状部を設けてもよい。
【0044】
また、前述の実施形態では、第1及び第2傘状部33,34は、いずれも中間部30の軸心と直交する方向に広がる円板のみにより構成されていた。これに限らず、第1及び第2傘状部33,34のいずれか一方又は両方を、前記軸方向の把持部20側に向かって僅かに傾斜する形状にしてもよい。
【0045】
また、前述の実施形態では、第1及び第2傘状部33,34は、前記軸方向から見て、それぞれ円形状をなしていた。これに限らず、第1及び第2傘状部33,34は、前記軸方向から見て、楕円形状や矩形状をなしていてもよい。
【0046】
また、前述の実施形態では、ボルト嵌合部10の内周部は、断面が十二角形状をなしていた。これに限らず、ボルト嵌合部10の内周部が断面円形をなしていてもよい。このときには、内周部は、一般的なドレンボルト100の頭部よりも僅かに小さくなる程度の径を有する。
【0047】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の技術の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
ここに開示された技術は、オイルパンに締結されたドレンボルトを取り外すドレンボルト取り外し工具として有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 ドレンボルト取り外し工具
10 ボルト嵌合部
20 把持部
30 中間部
32 接続部
32a 磁石収容部
32b 連通孔
33 第1傘状部(他の傘状部)
34 第2傘状部(把持部に最も近い傘状部)
40 磁石
100 ドレンボルト
P オイルパン