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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178429
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 9/12 20060101AFI20221125BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20221125BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20221125BHJP
   B66C 23/78 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B60S9/12
B66F9/075 L
B66F9/24 S
B66C23/78 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085223
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】川島 延之
(72)【発明者】
【氏名】太田 満
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊
【テーマコード(参考)】
3D026
3F205
3F333
【Fターム(参考)】
3D026EA07
3D026EA16
3D026EA26
3D026EA44
3F205AA06
3F205FA10
3F205HA04
3F205HB06
3F333AA08
3F333CA15
3F333FA10
(57)【要約】
【課題】ジャッキ装置の作動条件を満足しているにも拘わらず、装置の不具合などによってジャッキ装置の作動条件を満足していないと判断された場合において、安全性を確保しつつジャッキ装置を作動させることができる作業車の安全装置を提供する。
【解決手段】
車体の前後方向傾斜角度を検出する傾斜角度検出装置63と、所定の安全確保条件を満足する状態であるか否かを判断するコントローラ30と、を備え、傾斜角度検出装置63により検出された車体の前後傾斜角度が所定角度範囲を越えたときには、搭乗者検出装置64によって運転席に人が検出されたことによって所定の安全確保条件を満足していると判断される場合にのみ、ジャッキ操作レバー18aの操作に応じてジャッキシリンダ55を作動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に前輪及び後輪を備え、駆動源からの駆動力を、変速装置を介して前記前輪及び前記後輪のうちの駆動輪に伝えることで走行可能に構成され、
停車時に前記前輪及び前記後輪のいずれかを制動するパーキングブレーキ装置と、
前記車体に設けられた作業装置と、
前記車体を持ち上げ支持可能なジャッキ装置と、
前記ジャッキ装置を作動させるために作業者が操作するジャッキ操作装置と、
前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置の作動を制御するジャッキ作動制御装置と、を備えた作業車の安全装置であって、
前記車体の前後方向傾斜角度を検出する傾斜角度検出装置と、
所定の安全確保条件を満足する状態であるか否かを判断する安全確保判断装置と、を備え、
前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が所定角度範囲内であるときには、前記安全確保判断装置による判断の如何に拘わらず、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させ、
前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が前記所定角度範囲を越えたときには、前記安全確保判断装置により前記所定の安全確保条件を満足していると判断された場合にのみ、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させることを特徴とする作業車の安全装置。
【請求項2】
前記ジャッキ装置が格納されて前記前輪及び後輪が接地して停車している状態において、前記パーキングブレーキ装置により前記前輪及び前記後輪のいずれかが制動され、前記変速装置が中立状態であり、前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が所定角度範囲内であるときには、前記安全確保判断装置による判断の如何に拘わらず、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させ、
前記ジャッキ装置が格納されて前記前輪及び後輪が接地して停車している状態において、前記パーキングブレーキ装置により前記前輪及び前記後輪のいずれかが制動され、前記変速装置が中立状態であり、前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が前記所定角度範囲を越えたときには、前記安全確保判断装置により前記所定の安全確保条件を満足していると判断された場合にのみ、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の作業車の安全装置。
【請求項3】
前記作業車に設けられた運転席の搭乗者を検出する搭乗者検出装置を備え、
前記安全確保判断装置は、
前記搭乗者検出装置によって前記運転席の搭乗者が検出された場合に、前記所定の安全確保条件を満足していると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車の安全装置。
【請求項4】
前記前輪及び前記後輪の双方を制動するメインブレーキ装置を備え、
前記安全確保判断装置は、前記メインブレーキ装置により前記前輪及び前記後輪の双方が制動されている場合に、前記所定の安全確保条件を満足していると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を持ち上げて支持するジャッキ装置を備えた作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体上に設けられた作業装置を用いて作業を行う際に、車体の前後左右に設けられたジャッキ装置によって車体を持ち上げ支持する作業車として、例えば高所作業車がある。高所作業車の中には、トラック車両をベースとし、運転キャビン後方の架装部に、作業装置として先端部に作業台が設けられて起伏作動自在なブームを旋回自在に支持する旋回台が設けられたものがある。この種の高所作業車は、作業を行う場合、パーキングブレーキによって前輪又は後輪のいずれか(通常は後輪)が制動されるようになっている。一般に、作業装置を用いて作業を行う場合は、車体を停車させた後にパーキングブレーキを掛けて後輪(ベースとして用いたトラック車両の仕様によっては前輪)を制動した状態でジャッキ装置を伸張させて車体を持ち上げて支持する。
【0003】
従来、車体を持ち上げる際、及び持ち上げられた車体を接地させる際は、パーキングブレーキを掛けることが強く推奨されている。例えばパーキングブレーキによって後輪が制動される場合において、前輪が接地した状態で後輪側のジャッキ装置を伸張させると、後輪が地面から浮き上がったときに、制動されてない前輪によって車体の前方が支えられることになる。このとき、車体が傾斜地に停車していた場合、接地している前輪が転がり、車体が傾斜に沿って勝手に動き出す(すなわち逸走する)虞れがある。
【0004】
このため、例えば特許文献1に記載された高所作業車では、運転キャビン内の運転席に運転者が居るか否かを検出し、運転者が検出されない場合はジャッキ装置を作動させないようにしている。これにより、ジャッキ装置を作動させる際には運転席に運転者が居ることになるため、ジャッキ装置の作動中に逸走が生じる虞がある場合は、直ちに運転者が逸走を未然に防ぐための措置をとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-229446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に記載された高所作業車では、ジャッキ装置を作動させる際の安全性を確保することができるものの、その作業にはジャッキ装置の操作を行う者と運転席に座る者の、二人の作業者が必要となるため作業効率は低下することになる。そこで、例えばジャッキ装置の操作を行う際にパーキングブレーキの作動状況や車体の傾斜角度などを検出し、パーキングブレーキが作動していなかったり車体の傾斜角度が安全な角度範囲を越えていたりした場合(すなわち、逸走が生じる虞がある場合)はジャッキ装置が作動しないように規制する安全装置を備えることが考えられる。このような安全装置を備えることで、作業者が単独でジャッキ装置を操作する場合であっても高所作業車の逸走を回避することができる。
【0007】
しかしながら、上述したような安全装置を備えた場合において、例えば車体の傾斜を検出する検出器の不具合などにより、車体の傾斜角度を検出できない場合や、車体の傾斜角度が安全な角度範囲内にあるにも拘わらず、それを越える傾斜角度が検出されてしまう場
合も起こり得る。そのような場合のために、車体の傾斜角度によるジャッキ装置の作動の規制を解除することができる機能を備えていることが望ましいが、無条件で規制の解除を可能にしてしまうと、安全装置としての本来の役割を果たせなくなる場合が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ジャッキ装置の作動条件を満足しているにも拘わらず、装置の不具合などによってジャッキ装置の作動条件を満足していないと判断された場合において、安全性を確保しつつジャッキ装置を作動させることができる作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業車は、車体に前輪及び後輪(例えば、実施形態における前輪3a及び後輪3b)を備え、駆動源(例えば、実施形態におけるエンジン4)からの駆動力を、変速装置(例えば、実施形態におけるトランスミッション5)を介して前記前輪及び前記後輪のうちの駆動輪に伝えることで走行可能に構成され、停車時に前記前輪及び前記後輪のいずれかを制動するパーキングブレーキ装置と、前記車体に設けられた作業装置(例えば、実施形態における作業装置10)と、前記車体を持ち上げ支持可能なジャッキ装置(例えば、実施形態におけるアウトリガジャッキ17)と、前記ジャッキ装置を作動させるために作業者が操作するジャッキ操作装置(例えば、実施形態におけるジャッキ操作レバー18a)と、前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置の作動を制御するジャッキ作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ30)と、を備えた作業車(例えば、実施形態における高所作業車1)の安全装置であって、前記車体の前後方向傾斜角度を検出する傾斜角度検出装置(例えば、実施形態における傾斜角度検出装置63)と、所定の安全確保条件を満足する状態であるか否かを判断する安全確保判断装置(例えば、実施形態におけるコントローラ30)と、を備え、前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が所定角度範囲内であるときには、前記安全確保判断装置による判断の如何に拘わらず、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させ、前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が前記所定角度範囲を越えているときには、前記安全確保判断装置により前記所定の安全確保条件を満足していると判断された場合にのみ、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させる。
【0010】
また、上記構成の作業車の安全装置において、前記ジャッキ装置が格納されて前記前輪及び前記後輪が接地して停車している状態において、前記パーキングブレーキ装置により前記前輪及び前記後輪のいずれかが制動され、前記変速装置が中立状態であり、前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が所定角度範囲内であるときには、前記安全確保判断装置による判断の如何に拘わらず、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させ、前記ジャッキ装置が格納されて前記前輪及び前記後輪が接地して停車している状態において、前記パーキングブレーキ装置により前記前輪及び前記後輪のいずれかが制動され、前記変速装置が中立状態であり、前記傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が前記所定角度範囲を越えているときには、前記安全確保判断装置により前記所定の安全確保条件を満足していると判断された場合にのみ、前記ジャッキ作動制御装置により前記ジャッキ操作装置の操作に応じて前記ジャッキ装置を作動させることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の作業車の安全装置において、前記作業車に設けられた運転席の搭乗者を検出する搭乗者検出装置(例えば、実施形態における搭乗者検出装置64)を備え、前記安全確保判断装置は、前記搭乗者検出装置によって前記運転席の搭乗者が検出された場合に、前記所定の安全確保条件を満足していると判断することが好ましい。
【0012】
さらに、上記構成の作業車の安全装置において、前記前輪及び前記後輪の双方を制動するメインブレーキ装置を備え、前記安全確保判断装置は、前記メインブレーキ装置により前記前輪及び前記後輪の双方が制動されている場合に、前記所定の安全確保条件を満足していると判断することことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業車の安全装置によれば、傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が所定角度範囲内であった場合は、安全確保判断装置による判断の如何に拘わらず、ジャッキ作動制御装置によりジャッキ操作装置の操作に応じてジャッキ装置を作動させることができるため、運転席に搭乗者がいない状態であってもジャッキ装置を作動させることができる。これに対して、傾斜角度検出装置により検出された車体前後傾斜角度が所定角度範囲を越えた場合は、安全確保判断装置により所定の安全確保条件を満足していると判断された場合にのみ、ジャッキ操作装置の操作に応じてジャッキ装置を作動させることができる。このため、仮に傾斜角度検出装置が不具合などにより車体前後傾斜角度を正確に検出できない場合であっても、安全性を確保したうえでジャッキ装置を作動させることができる。
【0014】
また、上記の構成の作業車の安全装置において、好ましくは、作業車に設けられた運転席の搭乗者を検出する搭乗者検出装置を備え、安全確保判断装置は、搭乗者検出装置によって前記運転席の搭乗者が検出された場合に、所定の安全確保条件を満足していると判断する。これにより、仮に傾斜角度検出装置が不具合などにより車体前後傾斜角度を正確に検出できない状態でジャッキ装置を作動させたとしても、ジャッキ装置の作動中に逸走が生じる虞がある場合は、直ちに運転席の搭乗者が逸走を未然に防ぐための措置をとることができるため、安全性を確保することができる。
【0015】
また、上記構成の作業車の安全装置において、好ましくは、前輪及び後輪の双方を制動するメインブレーキ装置を備え、安全確保判断装置は、メインブレーキ装置により前輪及び後輪の双方が制動されている場合に、所定の安全確保条件を満足していると判断する。これにより、仮に車体の前輪及び後輪のうちパーキングブレーキ装置が制動していない方の車輪が接地している状態で、ジャッキ装置によりパーキングブレーキ装置が制動している方の車輪を持ち上げてしまったとしても、逸走の発生を防ぐことができるため、安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る作業車の第1実施形態である高所作業車の外観を示す側面図である。
図2】上記高所作業車の作動制御に関する構成を示すブロック図である。
図3】上記高所作業車において、ジャッキ張出時における制動制御処理の内容を示すフローチャートである。
図4】上記高所作業車において、ジャッキ格納時における制動制御処理の内容を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る作業車の第2実施形態である高所作業車における作動制御に関する構成を示すブロック図である。
図6】上記高所作業車において、ジャッキ張出時における制動制御処理の内容を示すフローチャートである。
図7】上記高所作業車において、ジャッキ格納時における制動制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1に示す本発明に係る作業車の第1実施形態である高所作業車1の全体構成について、図1に示す側面図を参照しつつ概要説明する。高所作業車1は、トラック式車両の車体2を有し、車体2の前後にタイヤ車輪3(前輪3a及び後輪3b)を備え、車体2の前部に設けられた運転キャビン2aから走行運転の操作が可能になっている。運転キャビン2aの後ろに位置する架装部には、旋回台11と、この旋回台11の上部に基端部が支持された伸縮ブーム(以下、単に「ブーム」と称する)12と、このブーム12の先端部に取り付けられた作業者が搭乗可能な作業台15とを含んで構成される作業装置10が設けられている。
【0018】
旋回台11は、車体2の後部において上下方向の軸を中心に回転自在に取り付けられている。車体2の内部には旋回モータ51が設けられており、この旋回モータ51を回転駆動させると、図示しないギヤを介して旋回台11を水平旋回作動させることができる。ブーム12は、旋回台11側から順に、基端ブーム12a、中間ブーム12b及び先端ブーム12cが入れ子式に組み立てられた構成になっている。ブーム12の内部には伸縮シリンダ53が設けられており、伸縮シリンダ53の伸縮駆動によって基端ブーム12aに対して中間ブーム12b及び先端ブーム12cが相対的に移動し、これによりブーム12全体を軸方向に伸縮作動させることができる。また、基端ブーム12aと旋回台11との間には起伏シリンダ52が跨設されており、この起伏シリンダ52の伸縮駆動によって起伏軸HSを軸としてブーム12全体を垂直面内で起伏作動させることができる。
【0019】
先端ブーム12cの先端部には、ブームヘッドを介して垂直ポスト13が上下方向に揺動自在に枢支されている。垂直ポスト13は、先端ブーム12cとの間に配設された上部レベリングシリンダ56bにより揺動制御される。上部レベリングシリンダ56bは、旋回台11と基端ブーム12aとの間に跨設された下部レベリングシリンダ56aと連通する油路で結ばれており、いわゆる油圧閉回路式のレベリング装置を構成している。このレベリング装置により、ブーム12の起伏の如何に拘らず垂直ポスト13が常時垂直姿勢に保持される構成となっている。運転キャビン2aの背後には、ブーム12を格納姿勢で支持するためのブーム受け20が設けられている。ここで、ブーム12の格納姿勢は、基端ブーム12aの中間部下面をブーム受け20に載置した姿勢であり、このときブーム12の先端部は車体2の前方へ向き、ほぼ水平となるまで倒伏した状態となる。
【0020】
作業台15は、上端が開口した略箱形状になっており、搭乗した作業者が作業装置10を操作することができる上部操作装置16が設けられている。作業台15は、上部操作装置16の側面から突出して設けられたアーム14を介して垂直ポスト13の上端部に回動自在に取り付けられる。アーム14の内部には首振りモータ54が設けられており、この首振りモータ54の回転駆動によって作業台15全体を垂直ポスト13まわりに首振り作動(水平旋回作動)させることができる。ここで、垂直ポスト13は、前述したようにレベリング装置によって常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台15の床面はブーム12の起伏角度によらず常時水平に保持される。上部操作装置16には、旋回台11の旋回操作、ブーム12の起伏・伸縮操作、作業台15の首振り操作等を行うための操作レバーが設けられており、作業台15に搭乗した作業者が操作レバーを操作して、旋回台11やブーム12等の作動操作(これらを総称して「ブーム操作」ともいう)を行い得るように構成されている。
【0021】
車体2の前後左右には、上下に伸縮可能なアウトリガジャッキ17が設けられている。このアウトリガジャッキ17は、アウトリガビーム(図示略)によって車体2の側面から突出する方向(水平方向)に移動可能に支持されている。ここで、アウトリガジャッキ17とアウトリガビームとをまとめてアウトリガ機構と称する。また、車体2の架装部の前部(前輪3aの後側に接近した位置)に設けられた左右のアウトリガジャッキ17を前輪側アウトリガジャッキ17aと称し、車体2の架装部の後端部に設けられた左右のアウト
リガジャッキ17を後輪側アウトリガジャッキ17bと称する。これらのアウトリガジャッキ17は、内部に取り付けられたジャッキシリンダ55により上下方向に伸縮動する。また、アウトリガジャッキ17は、上述したアウトリガビームの内部に設けられた伸縮シリンダ(図示略)により、水平方向に移動する。
【0022】
車体2の後端部には、上部操作装置16と同様にブーム操作を行うための各種操作レバーと、アウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作レバー18aと、アウトリガジャッキ17の作動が規制された場合にその規制を所定の条件下で解除することができる規制解除スイッチ18bとを備えた下部操作装置18(図2参照)が取り付けられている。ジャッキ操作レバー18a及び規制解除スイッチ18bについては後に詳しく説明する。
【0023】
次に図2に示すブロック図を参照して、本実施形態の高所作業車1における作動制御に関する構成について説明する。本実施形態においては、コントローラ30によって作業装置10及びアウトリガジャッキ17の作動制御を行っている。コントローラ30は、上部操作装置16及び下部操作装置18に設けられた各種操作レバーの操作に基づいて、前述した旋回モータ51、起伏シリンダ52、伸縮シリンダ53、首振りモータ54及びジャッキシリンダ55などの各油圧アクチュエータの作動を制御する。油圧ユニット40内には各油圧アクチュエータに対応して電磁比例制御弁が配設されており、コントローラ30は、上部操作装置16及び下部操作装置18に設けられた各種操作レバーから出力される操作信号に応じて、各油圧アクチュエータに対応する電磁比例制御弁のバルブ開度を制御することで、各油圧アクチュエータの作動を制御している。
【0024】
油圧ユニット40には、油圧ポンプ41よって作動油タンク42内の作動油が供給されており、油圧ポンプ41は、車体2の走行用のエンジン4の駆動力によって作動する。すなわち、エンジン4のトランスミッション5にはパワーテイクオフ機構6が組み込まれており、運転キャビン2a内にあるPTO操作レバー7がオフからオンに操作されるとパワーテイクオフ機構6の機構部が作動し、エンジン4の駆動力が油圧ポンプ41に伝達されるようになる。また、PTO操作レバー7がオンからオフに操作されると、エンジン4の駆動力は油圧ポンプ41から車体2の後輪3bに伝達されるようになる。トランスミッション5は、複数のレンジを有するオートマティックトランスミッションであり、運転キャビン2a内に設けられているセレクトレバーによって選択されたレンジに応じた変速制御が行われるようになっている。複数のレンジには、駐車時に使用されるパーキングレンジ(Pレンジ)、後退時に使用されるリバースレンジ(Rレンジ)、トランスミッション5を中立状態(エンジン5の駆動力が後輪3bに伝達されない状態)にするニュートラルレンジ(Nレンジ)、通常走行時に使用されるドライブレンジ(Dレンジ)が含まれている。
【0025】
下部操作装置18に設けられているジャッキ操作レバー18aは、車体2の前後左右に設けられた4つのアウトリガジャッキ17に個々に対応する4つの作動切替レバーと、アウトリガジャッキ17の作動操作を行う1つのメイン操作レバーと、により構成されている。4つの作動切替レバー及び1つのメイン操作レバーは、いずれも中立位置から上方位置又は下方位置へ傾動操作可能になっており、各操作レバーが、上方位置、中立位置、下方位置のうち、いずれの位置になっているかを示すジャッキ操作信号をコントローラ30へ出力する。コントローラ30は、入力されたジャッキ操作信号に基づいて各アウトリガジャッキ17の作動制御を行う。
【0026】
上述した各作動切替レバーは、対応するアウトリガジャッキ17の作動内容を設定するレバーである。作動切替レバーが上方位置になっている場合、コントローラ30は、対応するアウトリガジャッキ17をメイン操作レバーの操作に応じて車幅方向にスライド移動
させる。作動切替レバーが下方位置になっている場合、コントローラ30は、対応するアウトリガジャッキ17をメイン操作レバーの操作に応じて上下方向に伸縮移動させる。作動切替レバーが中立位置になっている場合、コントローラ30は、メイン操作レバーが操作されたとしても、対応するアウトリガジャッキ17を作動させない。
【0027】
メイン操作レバーは、作動切替レバーによって作動内容が設定されているアウトリガジャッキ17を作動操作させるレバーである。例えば、あるアウトリガジャッキ17に対応する作動切替レバーが上方位置になっている(すなわち、スライド移動が設定されている)状態で、メイン操作レバーが中立位置から上方位置へ傾動されると、コントローラ30は、そのアウトリガジャッキ17を車体2から離れる方向へスライド移動させる。これに対して、メイン操作レバーが中立位置から下方位置へ傾動されると、コントローラ30は、そのアウトリガジャッキ17を車体2へ近づく方向へスライド移動させる。また、あるアウトリガジャッキ17に対応する作動切替レバーが下方位置になっている(すなわち、伸縮移動が設定されている)状態でメイン操作レバーが上方位置へ傾動されると、コントローラ30は、そのアウトリガジャッキ17を張り出させて、アウトリガジャッキ17の先端部を地面に向かって移動させる。これに対して、メイン操作レバーが下方位置へ傾動されると、コントローラ30は、そのアウトリガジャッキ17を収縮させて、アウトリガジャッキ17の先端部が格納される方向へ移動させる。
【0028】
なお、作動内容が設定されている作動切替レバーが複数存在する状態でメイン操作レバーが操作されると、コントローラ30は、作動内容が設定されていた複数の作動切替レバーに対応する各アウトリガジャッキ17を同時に作動させる。例えば左右の前輪側アウトリガジャッキ17aに対応する2つの作動切替レバーが共に下方位置になっている(すなわち、伸縮移動が設定されている)状態でメイン操作レバーが傾動操作されると、コントローラ30は、その傾動操作に応じて左右の前輪側アウトリガジャッキ17aが同時に伸縮移動させる。
【0029】
作業者は、作業装置10によって高所作業を行う前に、ジャッキ操作レバー18aを操作して、各アウトリガジャッキ17を周囲の障害物との相対位置関係に応じて車幅方向に拡幅伸長させ、かつ、下方に張り出させて車体2を持ち上げ支持することにより安定姿勢を確保する必要がある。特に傾斜地に車体2を停車させている場合は、車体2の逸走を防止するために、アウトリガジャッキ17を作動させて車体2を持ち上げ支持する場合や、持ち上げ支持された車体2を接地させる場合は、パーキングブレーキ(図示せず)を掛けることが強く推奨されている。
【0030】
規制解除スイッチ18bは、コントローラ30によりアウトリガジャッキ17の作動が規制(より詳細には作動が禁止)される場合に、その規制を解除るためのスイッチである。規制解除スイッチ18bは、例えば押しボタン式スイッチであり、ボタンが押されている間だけコントローラ30へオン信号を出力するモーメンタリのスイッチである。
【0031】
コントローラ30には、パーキングブレーキセンサ61、ギヤポジションセンサ62、傾斜角度検出装置63及び搭乗者検出装置64から出力される各種信号が入力される。パーキングブレーキセンサ61は、運転キャビン2aに設けられているパーキングレバーのオン/オフを検出し、パーキングレバーがオン操作(パーキングブレーキを作動させる操作)されたときはオン信号を出力し、パーキングレバーがオフ操作(パーキングブレーキの作動を終了させる操作)されたときはオフ信号を出力する。なお、本実施形態ではパーキングブレーキが作動した場合、後輪3bのみに制動力が付加される。
【0032】
ギヤポジションセンサ62は、運転キャビン2a内に設けられたセレクトレバーによって選択されているレンジの種類を検出し、検出したレンジの種類を表すレンジ種別信号を
コントローラ30へ出力する。傾斜角度検出装置63は、車体2の前後方向における傾斜角度を検出し、検出した傾斜角度の値に対応する傾斜角度信号をコントローラ30へ出力する。ここで、車体2の前部が下向きに傾斜(すなわち前傾)している場合は検出された傾斜角度が正(プラス)の値で示され、車体2の前部が上向きに傾斜(すなわち後傾)している場合は検出された傾斜角度が負(マイナス)の値で示される。なお、コントローラ30は、傾斜角度検出装置63から出力された傾斜角度の情報を記憶するための傾斜角度メモリ31を備えている。
【0033】
搭乗者検出装置64は、運転キャビン2aの運転席に座っている人物を検出し、人物が検出された場合はオン信号をコントローラ30へ出力し、人物が検出されなかった場合はオフ信号をコントローラ30へ出力する。搭乗者検出装置64としては、例えば、運転席の座面に付加された荷重を検出する圧力センサ、人感センサ、若しくはいわゆるドライバモニタリングシステム(DMS)などを使用又は利用することができる。
【0034】
次に図3及び図4を参照して、コントローラ30によるアウトリガジャッキ17の作動制御について説明する。図3は、高所作業車1を浮上させて支持する際に実行されるジャッキ張出制御の内容を示すフローチャートである。図4は、浮上支持されている高所作業車1を地上に降ろす際に実行されるジャッキ格納制御の内容を示すフローチャートである。ここで、高所作業車1が浮上支持された状態とは、少なくとも前輪3a及び後輪3bに掛かる車体2の荷重が逸走を生じさせない程度に低下している状態をいい、好ましくは、前輪3a及び後輪3bがすべて地上から浮き、前輪3a及び後輪3bに車体2の荷重が掛かっていない状態をいう。
【0035】
まず、図3に示すジャッキ張出制御について説明する。このジャッキ張出制御は、すべてのアウトリガジャッキ17が格納され、前輪3a及び後輪3bが接地している状態において、ジャッキ操作レバー18aにより、いずれかのアウトリガジャッキ17を張り出させるための操作が行われると開始される。コントローラ30は、図3のジャッキ張出制御を開始すると、まず図2に示した傾斜角度検出装置63から出力されている傾斜角度信号によって示される車体2の傾斜角度を図2に示す傾斜角度メモリ31に保存した後(ステップSa1)、パーキングブレーキが作動しているか否かを判断する(ステップSa2)。図2に示したパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力されている場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、運転キャビン2a内に設けられたセレクトレバーにおいてNレンジ又はPレンジが選択されているか否かを判断する(ステップSa3)。
【0036】
ステップSa3の判断処理で、図2に示したギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していた場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、図2に示したジャッキ操作レバー18aからいずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されたか否かを判断する(ステップSa4)。
【0037】
なお、ステップSa2の判断処理でパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力されていなかった場合、又はステップSa3の判断処理でギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していなかった場合は、各判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30は図3のジャッキ張出制御処理を終了する。
【0038】
ステップSa4の判断処理で、ジャッキ操作レバー18aからコントローラ30に対していずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が出力された場合は、判断結果がYESとなって、傾斜角度メモリ31に保存されている車体2の傾斜
角度を読み出し(ステップSa5)、読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内であるか否かを判断する(ステップSa6)。ここで、所定の角度範囲は+7゜~-3゜(前傾7゜~後傾3゜)になっている。傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内であった場合は判断結果がYESとなり、コントローラ30は、入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する(ステップSa9)。
【0039】
これに対して、傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内でなかった場合はステップSa6の判断結果がNOとなり、コントローラ30は、図2に示した規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されているか否かを判断する(ステップSa7)。規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていた場合は、判断結果がYESとなり、コントローラ30は図2に示した搭乗者検出装置64からオン信号(運転キャビン2aの運転席に座っている人物を検出したことを示す信号)が出力されているか否かを判断する(ステップSa8)。搭乗者検出装置64からオン信号が出力されていた場合は判断結果がYESとなり、前述したステップSa9へ進み、コントローラ30は入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する。そして、コントローラ30は、車体2が浮上支持されたか否かを判断する(ステップSa10)。
【0040】
なお、ステップSa4の判断処理で、いずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されなかった場合、ステップSa7の判断処理で、規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていなかった場合、及びステップSa8の判断処理で、搭乗者検出装置64からオン信号が出力されていなかった場合は、これらの判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30はステップSa10へ進む。
【0041】
ステップSa10の判断処理において、未だ車体2が浮上支持されていない場合は、判断結果がNOとなりステップSa2の処理に戻る。そして、車体2が浮上支持されるまで、コントローラ30はステップSa2~Sa10の処理を繰り返し実行し、車体2が浮上支持されると、ステップSa10の判断結果がYESとなって、コントローラ30は図3のジャッキ張出制御処理を終了する。
【0042】
次に、図4に示すジャッキ格納制御について説明する。このジャッキ格納制御は、車体2が浮上支持されている状態において、ジャッキ操作レバー18aにより、アウトリガジャッキ17を格納するための操作が行われると開始される。コントローラ30は、図4のジャッキ格納制御を開始すると、まずパーキングブレーキが作動しているか否かを判断する(ステップSb1)。図2に示したパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力されている場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、運転キャビン2a内に設けられたセレクトレバーにおいてNレンジ又はPレンジが選択されているか否かを判断する(ステップSb2)。
【0043】
ステップSb2の判断処理で、図2に示したギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していた場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、図2に示したジャッキ操作レバー18aからいずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されたか否かを判断する(ステップSb3)。
【0044】
なお、ステップSb1の判断処理でパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力されていなかった場合、又はステップSb2の判断処理でギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していなかった場合は、各判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30は、図4のジャッキ格納制御処理を終了する。
【0045】
ステップSb3の判断処理で、ジャッキ操作レバー18aからいずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力された場合は、判断結果がYESとなって、図3のステップSa1の処理によって傾斜角度メモリ31に保存された車体2の傾斜角度を読み出し(ステップSb4)、読み出した傾斜角度が所定の角度範囲(+7゜~-3゜)内であるか否かを判断する(ステップSb5)。傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内であった場合は判断結果がYESとなり、コントローラ30は、入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する(ステップSb8)。
【0046】
これに対して、傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内でなかった場合はステップSb5の判断結果がNOとなり、コントローラ30は、図2に示した規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されているか否かを判断する(ステップSb6)。規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていた場合は、判断結果がYESとなり、コントローラ30は図2に示した搭乗者検出装置64からオン信号(運転キャビン2aの運転席に座っている人物を検出したことを示す信号)が出力されているか否かを判断する(ステップSb7)。搭乗者検出装置64からオン信号が出力されていた場合は判断結果がYESとなり、前述したステップSb8へ進み、コントローラ30は入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する。そして、コントローラ30は、すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になったか否かを判断する(ステップSb9)。
【0047】
なお、ステップSb3の判断処理で、いずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されなかった場合、ステップSb6の判断処理で、規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていなかった場合、及びステップSb7の判断処理で、搭乗者検出装置64からオン信号が出力されていなかった場合は、これらの判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30はステップSb9へ進む。
【0048】
ステップSb9の判断処理において、すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になっていない場合は判断結果がNOとなり、ステップSb1の処理に戻る。そして、すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になるまで、コントローラ30はステップSb1~Sb9の処理を繰り返し実行する。すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になると、ステップSb9の判断結果がYESとなって、コントローラ30は図4のジャッキ格納制御処理を終了する。
【0049】
以上のように、図3に示すジャッキ張出制御及び図4に示すジャッキ格納制御では、ジャッキ操作レバー18aが操作されたときに、パーキングブレーキが作動していなかった場合、又は、セレクトレバーによってNレンジ又はPレンジが選択されていなかった場合は、車体2の傾斜角度に拘わらず、アウトリガジャッキ17の作動制御が行われない。一方、パーキングブレーキが作動しており、かつ、セレクトレバーによりNレンジ又はPレンジが選択されていた場合において、車体2の傾斜角度が所定の角度範囲内であった場合は、ジャッキ操作レバー18aの操作に応じてアウトリガジャッキ17の作動制御が行われる。
【0050】
また、パーキングブレーキが作動しており、かつ、セレクトレバーによりNレンジ又はPレンジが選択されている状態において、車体2の傾斜角度が所定の角度範囲内でなかった場合は、規制解除スイッチ18bがオンにされ、かつ、運転席に搭乗者が座っている場合に限ってジャッキ操作レバー18aの操作に応じてアウトリガジャッキ17の作動制御が行われる。これにより、例えば傾斜角度検出装置63の不具合などによって実際の車体2の傾斜角度を越える傾斜角度が検出されてしまった場合でも、運転席に座っている人物によって安全性を確保しつつ、アウトリガジャッキ17を作動させることができる。
【0051】
次に本発明に係る作業車の第2実施形態である高所作業車について図5図7を参照しつつ説明する。本実施形態の高所作業車の外観構成は、図1に示した第1実施形態の高所作業車1と同様であるため、以下の説明において本実施形態の外観構成については図1に示されている符号をそのまま参照する。また、本実施形態の高所作業車における作動制御に関する構成を図5のブロック図に示すが、この図に示す構成のうち、図2のブロック図に示した構成と同様のものについては同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
図5のブロック図において、図2に示すブロック図と異なる点は、コントローラ30に対して搭乗者検出装置64から出力されるオン/オフ信号の代わりに、ブレーキペダルセンサ65から出力されるオン/オフ信号が入力される点である。本実施形態では、車体2の前輪3a及び後輪3bがともに制動されているか否かを、運転キャビン2a内に設けられているブレーキペダルの操作状況に基づいて判断している。ブレーキペダルセンサ65は、ブレーキペダルが踏み込まれたか否かを検出し、ブレーキペダルが踏み込まれたことを検出した場合はオン信号をコントローラ30へ出力し、ブレーキペダルが踏み込まれたことが検出されなかった場合はオフ信号をコントローラ30へ出力する。これにより、ブレーキペダルセンサ65からオン信号が出力された場合は、前輪3a及び後輪3bがともに制動されていると判断し、オフ信号が出力された場合は、前輪3a及び後輪3bが制動されていないと判断する。
【0053】
次に図6及び図7を参照して、本実施形態におけるコントローラ30によるアウトリガジャッキ17の作動制御について説明する。図6は、高所作業車1を浮上させて支持する際に実行されるジャッキ張出制御の内容を示すフローチャートである。図7は、浮上支持されている高所作業車1を地上に降ろす際に実行されるジャッキ格納制御の内容を示すフローチャートである。
【0054】
まず、図6に示すジャッキ張出制御について説明する。このジャッキ張出制御は、すべてのアウトリガジャッキ17が格納され、前輪3a及び後輪3bが接地している状態において、ジャッキ操作レバー18aにより、いずれかのアウトリガジャッキ17を張り出させるための操作が行われると開始される。コントローラ30は、図6のジャッキ張出制御を開始すると、まず図5に示した傾斜角度検出装置63から出力されている傾斜角度信号によって示される車体2の傾斜角度を図5に示す傾斜角度メモリ31に保存した後(ステップSc1)、パーキングブレーキが作動しているか否かを判断する(ステップSc2)。図5に示したパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力されている場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、運転キャビン2a内に設けられたセレクトレバーにおいてNレンジ又はPレンジが選択されているか否かを判断する(ステップSc3)。
【0055】
ステップSc3の判断処理で、図5に示したギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していた場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、図5に示したジャッキ操作レバー18aからいずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されたか否かを判断する(ステップSc4)。
【0056】
なお、ステップSc2の判断処理でパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力されていなかった場合、又はステップSc3の判断処理でギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していなかった場合は、各判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30は図6のジャッキ張出制御処理を終了する。
【0057】
ステップSc4の判断処理で、ジャッキ操作レバー18aからコントローラ30に対していずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が出力された場合は、判断結果がYESとなって、傾斜角度メモリ31に保存されている車体2の傾斜角度を読み出し(ステップSc5)、読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内であるか否かを判断する(ステップSc6)。ここで、本実施形態における所定の角度範囲も+7゜~-3゜(前傾7゜~後傾3゜)になっている。傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内であった場合は判断結果がYESとなり、コントローラ30は、入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する(ステップSc9)。
【0058】
これに対して、傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内でなかった場合はステップSc6の判断結果がNOとなり、コントローラ30は、図5に示した規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されているか否かを判断する(ステップSc7)。規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていた場合は、判断結果がYESとなり、コントローラ30は図5に示したブレーキペダルセンサ65からオン信号(ブレーキペダルの操作が検出されたことを示す信号)が出力されているか否かを判断する(ステップSc8)。ブレーキペダルセンサ65からオン信号が出力されていた場合は判断結果がYESとなり、前述したステップSc9へ進み、コントローラ30は入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する。そして、コントローラ30は、車体2が浮上支持されたか否かを判断する(ステップSc10)。
【0059】
なお、ステップSc4の判断処理で、いずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されなかった場合、ステップSc7の判断処理で、規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていなかった場合、及びステップSc8の判断処理で、ブレーキペダルセンサ65からオン信号が出力されていなかった場合は、これらの判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30はステップSc10へ進む。
【0060】
ステップSc10の判断処理において、未だ車体2が浮上支持されていない場合は、判断結果がNOとなりステップSc2の処理に戻る。そして、車体2が浮上支持されるまで、コントローラ30はステップSc2~Sc10の処理を繰り返し実行し、車体2が浮上支持されると、ステップSc10の判断結果がYESとなって、コントローラ30は図6のジャッキ張出制御処理を終了する。
【0061】
次に、図7に示すジャッキ格納制御について説明する。このジャッキ格納制御は、車体2が浮上支持されている状態において、ジャッキ操作レバー18aにより、アウトリガジャッキ17を格納するための操作が行われると開始される。コントローラ30は、図7のジャッキ格納制御を開始すると、まずパーキングブレーキが作動しているか否かを判断する(ステップSd1)。図5に示したパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力されている場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、運転キャビン2a内に設けられたセレクトレバーにおいてNレンジ又はPレンジが選択されているか否かを判断する(ステップSd2)。
【0062】
ステップSd2の判断処理で、図5示したギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していた場合は判断結果がYESとなり、次にコントローラ30は、図5に示したジャッキ操作レバー18aからいずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されたか否かを判断する(ステップSd3)。
【0063】
なお、ステップSd1の判断処理でパーキングブレーキセンサ61からオン信号が出力
されていなかった場合、又はステップSd2の判断処理でギヤポジションセンサ62から出力されたレンジ識別信号がNレンジ又はPレンジを示していなかった場合は、各判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30は、図7のジャッキ格納制御処理を終了する。
【0064】
ステップSd3の判断処理で、ジャッキ操作レバー18aからいずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力された場合は、判断結果がYESとなって、図6のステップSc1の処理によって傾斜角度メモリ31に保存された車体2の傾斜角度を読み出し(ステップSd4)、読み出した傾斜角度が所定の角度範囲(+7゜~-3゜)内であるか否かを判断する(ステップSd5)。傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内であった場合は判断結果がYESとなり、コントローラ30は、入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する(ステップSd8)。
【0065】
これに対して、傾斜角度メモリ31から読み出した傾斜角度が所定の角度範囲内でなかった場合はステップSb5の判断結果がNOとなり、コントローラ30は、図5に示した規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されているか否かを判断する(ステップSd6)。規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていた場合は、判断結果がYESとなり、コントローラ30は図5に示したブレーキペダルセンサ65からオン信号(ブレーキペダルの操作が検出されたことを示す信号)が出力されているか否かを判断する(ステップSd7)。ブレーキペダルセンサ65からオン信号が出力されていた場合は判断結果がYESとなり、前述したステップSd8へ進み、コントローラ30は入力されたジャッキ操作信号に応じてアウトリガジャッキ17を作動制御する。そして、コントローラ30は、すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になったか否かを判断する(ステップSb9)。
【0066】
なお、ステップSd3の判断処理で、いずれかのアウトリガジャッキ17を作動させるためのジャッキ操作信号が入力されなかった場合、ステップSd6の判断処理で、規制解除スイッチ18bからオン信号が出力されていなかった場合、及びステップSd7の判断処理で、ブレーキペダルセンサ65からオン信号が出力されていなかった場合は、これらの判断処理における判断結果がNOとなり、コントローラ30はステップSd9へ進む。
【0067】
ステップSd9の判断処理において、すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になっていない場合は判断結果がNOとなり、ステップSd1の処理に戻る。そして、すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になるまで、コントローラ30はステップSd1~Sd9の処理を繰り返し実行する。すべてのアウトリガジャッキ17が格納状態になると、ステップSd9の判断結果がYESとなって、コントローラ30は図7のジャッキ格納制御処理を終了する。
【0068】
以上のように、図6に示すジャッキ張出制御及び図7に示すジャッキ格納制御では、ジャッキ操作レバー18aが操作されたときに、パーキングブレーキが作動していなかった場合、又は、セレクトレバーによってNレンジ又はPレンジが選択されていなかった場合は、車体2の傾斜角度に拘わらず、アウトリガジャッキ17の作動制御が行われない。一方、パーキングブレーキが作動しており、かつ、セレクトレバーによりNレンジ又はPレンジが選択されていた場合において、車体2の傾斜角度が所定の角度範囲内であった場合は、ジャッキ操作レバー18aの操作に応じてアウトリガジャッキ17の作動制御が行われる。
【0069】
また、パーキングブレーキが作動しており、かつ、セレクトレバーによりNレンジ又はPレンジが選択されている状態において、車体2の傾斜角度が所定の角度範囲内でなかっ
た場合は、規制解除スイッチ18bがオンにされ、かつ、ブレーキペダルが操作されている場合に限ってジャッキ操作レバー18aの操作に応じてアウトリガジャッキ17の作動制御が行われる。これにより、例えば傾斜角度検出装置63の不具合などによって実際の車体2の傾斜角度を越える傾斜角度が検出されてしまった場合でも、前輪3a及び後輪3bがともに制動されていることによって逸走の発生を防ぎつつ、アウトリガジャッキ17を作動させることができる。
【0070】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。例えば、上述した実施形態ではパーキングブレーキが作動した場合、後輪3bのみに制動力が付加される構成になっていたが、前輪3aのみに制動力が付加される構成であってもよい。また、車体2の傾斜角度が所定の角度範囲を越えた場合に、安全が確保されているとみなす条件(安全確保条件)として、運転席に人がいること、及びブレーキペダルが操作されていることとしたが、これに限らず、例えば前輪3a及び後輪3bに輪止めが施されていることを検出する検出装置を設け、この検出装置により、前輪3a及び後輪3bに輪止めが施されていることが検出された場合に、安全確保条件が満足されたと判断してもよい。さらに、本実施形態はトラック車両をベースとした高所作業車であったが、作業装置としてクレーン装置を備えた作業車や、走行用の動力源としてエンジンの代わりに油圧モータを用いるなどしてパワーテイクオフ機構を持たない作業車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 高所作業車
2 車体
2a 運転キャビン
3 タイヤ車輪
3a 前輪
3b 後輪
5 トランスミッション
10 作業装置
11 旋回台
12 ブーム
15 作業台
17 アウトリガジャッキ
17a 前輪側アウトリガジャッキ
17b 後輪側アウトリガジャッキ
18a ジャッキ操作レバー
18b 規制解除スイッチ
30 コントローラ
61 パーキングブレーキセンサ
62 ギヤポジションセンサ
63 傾斜角度検出装置
64 搭乗者検出装置
65 ブレーキペダルセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7