(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178438
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 49/00 20060101AFI20221125BHJP
B60R 1/06 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B62D49/00 N
B62D49/00 D
B60R1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085236
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】萩山 丈士
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝司
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】河本 創
【テーマコード(参考)】
3D053
【Fターム(参考)】
3D053FF31
3D053GG01
(57)【要約】
【課題】ルーフ上面に設ける通信制御ユニットをほこりや雨水から保護すべく覆う幌シートの不測の干渉を防止することを目的とする。
【解決手段】走行車体1に運転席7部を囲うキャビン16を備え、キャビン16の左右の前支柱18L,18Rにサイドミラー31L,31Rを取り付けるミラーステー32L,32Rを設け、左右の後支柱20L,20Rにキャビン16を吊り上げるためのフック用係止具40L,40Rを設け、左右のミラーステー32L,32Rには前基部ステー35L,35Rを、左右のフック用係止具40L,40Rには後基部ステー42L,42Rをそれぞれ構成し、前基部ステー35L,35Rと後基部ステー42L,42Rとの間に側面視逆U状のパイプフレーム30L,30Rを取付ると共に、左右一対のパイプフレーム30L,30Rを中間部において横フレーム46で連結する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)に運転席(7)部を囲うキャビン(16)を備え、キャビン(16)の左右の前支柱(18L,18R)にサイドミラー(31L,31R)を取り付けるミラーステー(32L,32R)を設け、左右の後支柱(20L,20R)にキャビン(16)を吊り上げるためのフック用係止具(40L,40R)を設け、左右のミラーステー(32L,32R)には前基部ステー(35L,35R)を、左右のフック用係止具(40L,40R)には後基部ステー(42L,42R)をそれぞれ構成し、前基部ステー(35L,35R)と後基部ステー(42L,42R)との間に側面視逆U状のパイプフレーム(30L,30R)を取付ると共に、左右一対のパイプフレーム(30L,30R)を中間部において横フレーム(46)で連結することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
ミラーステー(32L,32R)に対する前基部ステー35L,35Rの連結、フック用係止具(36L,36R)に対する後基部ステー42L,42Rの連結、及びパイプフレーム(30L,30R)に対する横フレーム(46)の連結は、それぞれノブボルト(39,43,47)によって締結する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
左右のパイプフレーム(30L,30R)の端部に割ピン(48)の挿通孔(30d)を設けた請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ等の作業車両に関し、特に車両のキャビンルーフ上面に配設した通信制御ユニット等の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
運転席を囲い、運転者が乗り込むキャビンのルーフに通信制御ユニットを搭載し、通信制御ユニットの上方を囲うガードを立設して、上方からカバーで覆うことで通信制御ユニットを保護できる作業車両が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成すると、ガード部材によって通信制御ユニットを保護し破損防止の効果がある。しかしながら、多機能化してきた近年の作業車両においては、ルーフの上に搭載される部品の数も多くなってきており、カバーをかける際にルーフを全体的に保護する必要が出てきた。
【0005】
本発明は、ルーフ上面に設ける通信制御ユニットをほこりや雨水から保護すべく覆う幌シートの不測の干渉を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、走行車体1に運転席7部を囲うキャビン16を備え、キャビン16の左右の前支柱18L,18Rにサイドミラー31L,31Rを取り付けるミラーステー32L,32Rを設け、左右の後支柱20L,20Rにキャビン16を吊り上げるためのフック用係止具40L,40Rを設け、左右のミラーステー32L,32Rには前基部ステー35L,35Rを、左右のフック用係止具40L,40Rには後基部ステー42L,42Rをそれぞれ構成し、前基部ステー35L,35Rと後基部ステー42L,42Rとの間に側面視逆U状のパイプフレーム30L,30Rを取付ると共に、左右一対のパイプフレーム30L,30Rを中間部において横フレーム46で連結する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ミラーステー32L,32Rに対する前基部ステー35L,35Rの連結、フック用係止具36L,36Rに対する後基部ステー42L,42Rの連結、及びパイプフレーム30L,30Rに対する横フレーム46の連結は、それぞれノブボルト39,43,47によって締結する構成とした。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、左右のパイプフレーム30L,30Rの端部に割ピン48の挿通孔30dを設けた。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、パイプフレーム30L,30Rと横フレーム46により、キャビン16に上方から幌シート(カバー)を掛けるときにキャビンルーフ全体を保護できる。このようにパイプフレーム30L,30Rは、幌シートを掛けるときに使用するが、パイプを前基部ステー35L,35Rと後基部ステー42L,42Rに挿入するだけの簡素な構成にでき、脱着が簡単である。
同一のラジエータ支持枠86をもって広幅のラジエータ84A又は狭幅のラジエータ84Bを固定できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、パイプフレーム30L,30Rの固定及び横フレーム46の固定はノブボルト39,43,47締結によるから、工具使用することなく、簡単に脱着できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1及び請求項2に記載の効果に加え、パイプフレーム30L,30R固定装着時の不測の抜けを防止できる。また、上下反転してパイプフレーム30L,30Rを取り付けることで下向きとなってキャビンドア50の開閉を防止でき、悪戯の防止となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明における実施の形態のトラクタの側面図である。
【
図2】本発明における実施の形態のトラクタのパイプフレーム標準状態のキャビンを前方上方からみた斜視図である。
【
図3】本発明における実施の形態のトラクタのパイプフレーム反転状態のキャビンを前方上方からみた斜視図である。
【
図4】本発明における実施の形態のトラクタのパイプフレーム及びその周辺の斜視図である。
【
図5】本発明における実施の形態のトラクタの前基部ステー及びその周辺の分解斜視図である。
【
図6】本発明における実施の形態のトラクタの後基部ステー及びその周辺の側面図である。
【
図7】本発明における実施の形態のトラクタの後基部ステー及びその周辺の分解斜視図である。
【
図8】本発明における実施の形態のトラクタの左右パイプフレームと横フレームの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、トラクタを示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にディーゼルエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5に伝えるようにしている。エンジンEの後方に前輪4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。ミッションケース3の後上部には油圧シリンダケース8を備え、このシリンダケース8の左右両側には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム9が回動自在に取り付けられている。リフトアーム9は昇降用油圧シリンダ10の伸縮作動により上下動する。車体後部には、トップリンク11と左右のロアーリンク12からなる3点リンク機構を設け、同リンク機構にロータリ作業機Rを装着し、リフトロッド13を介してロアーリンク12をリフトアーム9に連結することにより、作業機Rを昇降可能に構成している。
【0015】
前記ハンドル6や運転席7等は、キャビン16によって覆われている。キャビン16は、例えば防振ゴム等の弾性部材を介して車体に固定されてあり、車体の振動がキャビン16に伝達されにくくしている。
【0016】
尚キャビン16は、フロア17と、フロア17左右前部に立設した前支柱18と、運転席7の後部左右に立設した後支柱20と、左右フェンダ19中間部に立設する中間支柱62と、これら支柱上端同士を接続する上フレーム21とによって一体化した枠組み構成とし、ルーフ22で覆われている。
【0017】
前記キャビン16のルーフ22には、監視カメラ、測位コントローラ、カメラコントローラ等の運転支援に関する機器を備えている。例えば、監視カメラ23はトラクタ車体の前方、後方及び側方を撮像し撮像データを取得し、また通信制御ユニットとしての測位コントローラ25は車体の位置を演算するための情報を、同じく通信制御ユニットとしてのカメラコントローラ27を介して撮像情報を車体1に装備した制御部Cに送信出力するよう構成している。
【0018】
測位コントローラ25は、測位アンテナ(図示せず)、基地局(図示せず)情報受信アンテナ26、演算部(図示せず)、出力部(図示せず)を備えており、測位アンテナでGPS衛星等からの衛星信号を取得し、該衛星信号とアンテナ26で受信した基地局からの補正信号を演算部で処理することにより車体の位置情報や走行方位等を演算する。これら位置情報等は出力部にて制御部Cに送信されるものである。測位コントローラ25の前方下方には前方監視カメラ23fを設けている。
【0019】
測位コントローラ25の演算部等を内装する筐体25aは、前記ルーフ22の前部側上方に配置される。 カメラコントローラ27は、監視カメラ23の撮像データを演算処理する演算部、その演算結果を送信する送信回路(図示せず)、複数(図例では2本)の通信アンテナ28を備えた構成である。
【0020】
カメラコントローラ27を内装する筐体27aは、前記ルーフ22の後部側上方に配置される。
【0021】
前記測位コントローラ25の演算部等を内装する筐体25aやアンテナ26、及び前記カメラコントローラ27の演算部等を収容する筐体27aや通信アンテナ28をほこりや雨水から保護すべく車体全体を覆う幌シートの干渉を回避するために設ける左右のパイプフレーム30L,30Rの構成について説明する。
【0022】
キャビン16の左右の前支柱18L,18Rにサイドミラー31L,31Rを取り付けるミラーステー32L,32Rを設ける。ミラーステー32L,32Lに、縦回動支点回りに回動可能にミラーアーム33L,33Rを延設し、この、ミラーアーム33L,33Rの先端側にサイドミラー31L,31Rを吊持状に支持している。上記ミラーステー32L,32Rの縦状平板部32aL,32aRに、パイプ挿通用円筒34を固着したL型部材の前基部ステー35L,35Rを固定して設ける。詳細には前基部ステー35L,35Rの縦板部と対向させてなる内ステー36をもって該縦状平板部32aL,32aRを狭持状に固定する構成である。すなわち、前基部ステー35L,35Rの縦板部と対向する内ステー36とをチューブ37と小ボルト38によって間隔を一定に配置させると共に、両者はノブボルト39によってミラーステー32L,32Rを貫通しつつ狭持状に締結する構成としている。円筒34には縦姿勢のパイプ材を貫通させることができる。
【0023】
一方キャビン16の左右の後支柱20L,20Rにはキャビン16を吊り上げるためのフック用係止具40L,40Rを備える。このフック用係止具40L,40Rは、図外フックを係止しうる切欠き40aを形成し適当強度の厚さを有した平板部材を後支柱20L,20Rの上端近傍において横側方に張出状に溶接固定される構成としている。この左右フック用係止具40L,40Rに、パイプ挿通用円筒41を固着したL型部材の後基部ステー42L,42Rを固定して設ける。すなわち、後基部ステー42L,42Rをフック用係止具40L,40Rに重合させてノブボルト43締結する構成である。44は位置決めピンである。円筒41は前記円筒34同様に、縦姿勢のパイプ材を貫通させることができる。
【0024】
前記前基部ステー35L,35Rの円筒34と後基部ステー42L,42Rの円筒41との間に側面視逆U状のパイプフレーム30L,30Rを左右一対に設け、その縦状部30a,30bを前記前基部ステー35L,35Rの円筒34と後基部ステー42L,42Rの円筒41に上方から挿通している。各縦状部30a,30bにはつば部30c,30eを有してパイプ挿通位置決めを構成している。
【0025】
左右のパイプフレーム30L,30Rの前後中間部には着脱自在に横フレーム46を設けている。横フレーム46は、所定長の横パイプ46aと両端のU型嵌着具46bとからなり、U型嵌着具46bを左右のパイプフレーム30L,30Rの前後適宜の位置に嵌合させてノブボルト47により固定する構成である。
【0026】
前記のように左右のパイプフレーム30L,30R及び横フレーム46を設けることで、幌シート(カバー)部材を被せた時に、キャビン16ルーフ上面に配置した前記測位コントローラ25の筐体25aやアンテナ26、及び前記カメラコントローラ27の筐体27aやアンテナ28をガードでき、不測に干渉して破損する恐れが少ない。
【0027】
また、パイプフレーム30L,30Rは、幌シートを掛けるときに使用するが、パイプを前基部ステー35L,35Rと後基部ステー42L,42Rに挿入するだけの簡素な構成にでき、脱着が簡単である。
【0028】
前記パイプフレーム30L,30Rの縦状部30a,30b各下端部に、割ピン48用挿通孔30dを設ける。このように構成すると、割ピン48挿通使用によって不測の抜けを防止できる。また、
図3に示すように、左右のパイプフレーム30L,30Rを逆さにして円筒34と円筒41に装着し、割ピン48挿通によって下方抜け留めを行うと、パイプフレーム30L,30Rはキャビンドア50の開閉に際してこのパイプフレーム30L,30Rがドア50の回動圏内にあってドア50の開動を阻止する。したがって児童の悪戯を防止できる。
【0029】
上記実施例では、通信制御ユニットの例として測位コントローラ25又はカメラコントローラ27としたが、ルーフ22上面に配置するいかなる制御ユニット等にも応用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 走行車体
7 運転席
16 キャビン
18L 前支柱
18R 前支柱
20L 後支柱
20R 後支柱
30L パイプフレーム
30R パイプフレーム
30d (割ピン)挿通孔
31L サイドミラー
31R サイドミラー
32L ミラーステー
32R ミラーステー
35L 前基部ステー
35R 前基部ステー
39 ノブボルト
40L フック用係止具
40R フック用係止具
42L 後基部ステー
42R 後基部ステー
43 ノブボルト
46 横フレーム
47 ノブボルト
48 割ピン