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特開2022-178444汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージおよびこれを備える汚泥消化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178444
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージおよびこれを備える汚泥消化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085250
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】種市 準
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA00
4D059BA11
4D059BA49
4D059BJ02
4D059BJ12
4D059BK14
(57)【要約】
【課題】ドラフトチューブの姿勢保持性能を、より長期に亘って維持し得る汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージを提供する。
【解決手段】姿勢保持ケージ40は、縦型の消化槽10と、消化槽10の中央に垂下される縦型の軸流ポンプ30と、軸流ポンプ30を覆うドラフトチューブ20と、を備える汚泥消化装置1に用いられ、ドラフトチューブ20の姿勢を保持するために、ドラフトチューブ20側の支持部と消化槽10の内壁側の支持部との間に介設される枠体型のケージ本体41を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化槽と、該消化槽内に立設されて上端および下端に開口を有するドラフトチューブと、前記消化槽の頂部中央に配置されるとともに前記ドラフトチューブ内に延伸するように回転軸が垂下される縦型の軸流ポンプと、を備える汚泥消化装置に用いられ、
前記消化槽の内壁上部に自身上部が支持された垂下姿勢で前記消化槽内に固定されるとともに自身下部側が前記ドラフトチューブの上部側の支持部に固定されて前記ドラフトチューブの立設姿勢を保持する枠体型のケージ本体を有することを特徴とする汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージ。
【請求項2】
前記ケージ本体は、
自身基端部が前記消化槽内壁側の支持部に連結された状態で垂下される複数の腕部と、
前記複数の腕部によって支持されるとともに前記消化槽の上下方向に離隔して配置される複数の枠部と、
前記複数の枠部のいずれか一の枠部と前記ドラフトチューブとの間に掛け渡されて前記ドラフトチューブを支持する複数の桁と、
を有する請求項1に記載の汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージ。
【請求項3】
前記複数の桁と前記ドラフトチューブとの間に、前記複数の桁と前記ドラフトチューブとの架け渡し状態を調整可能なクリアランス調整部が設けられている請求項2に記載の汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージ。
【請求項4】
消化槽と、該消化槽内に立設されて上端および下端に開口を有するドラフトチューブと、前記消化槽の頂部中央に配置されるとともに前記ドラフトチューブ内に延伸するように回転軸が垂下される縦型の軸流ポンプと、前記ドラフトチューブの姿勢を保持する姿勢保持部材と、を備え、
前記姿勢保持部材として、請求項1~3のいずれか一項に記載の汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージを有することを特徴とする汚泥消化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥消化装置に係り、特に、汚泥消化装置のドラフトチューブの姿勢保持用として好適な姿勢保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥消化装置として、図11に一例を示すように、消化槽210と、消化槽210内に立設されて上端および下端に開口を有するドラフトチューブ220と、消化槽210の頂部中央に配置されるとともにドラフトチューブ220内に延伸するように回転軸が垂下される縦型の軸流ポンプ230と、を備える汚泥消化装置200が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種の汚泥消化装置200では、消化槽210頂部中央に配置された軸流ポンプ230に対し、その回転軸先端部の撹拌スクリュ232の周囲を囲うように、ドラフトチューブ220が軸線を縦にして設置される。
その際、従来の汚泥消化装置200において、ドラフトチューブ220は、図12に要部を拡大図示するように、ドラフトチューブ220の上側開口部221が、消化槽210の内壁面に、ターンバックル240tを有するタイロッド240によって固定される。
【0004】
同図の例では、タイロッド240は、消化槽210を上から見て十字方向に4本が配置され、これら4本のタイロッド240により、各ターンバックル240tを締め込むことによって張力がそれぞれに与えられ、ドラフトチューブ220の上側開口部221を緊迫支持するようになっている。
これにより、ドラフトチューブ220は、チューブ内面が軸流ポンプ230の撹拌スクリュ232に接触しないように、また、消化槽210内の流れによってドラフトチューブ220自体が振動しないように支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-314744号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ドラフトチューブの勢保持部材が、複数のタイロッド240に張力を与えてドラフトチューブ220の上側開口部221を緊迫固定する姿勢保持構造であると、数年~十数年に亘る汚泥消化装置200の長期使用において、タイロッド240が疲労破断するおそれがある。そのため、従来のタイロッド240は、ドラフトチューブ220の姿勢保持性能を長期に亘って維持する上で未だ改善の余地がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ドラフトチューブの姿勢保持性能をより長期に亘って維持し得る、汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージおよびこれを備える汚泥消化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージは、消化槽と、該消化槽内に立設されて上端および下端に開口を有するドラフトチューブと、前記消化槽の頂部中央に配置されるとともに前記ドラフトチューブ内に延伸するように回転軸が垂下される縦型の軸流ポンプと、を備える汚泥消化装置に用いられ、前記消化槽の内壁上部に自身上部が支持された垂下姿勢で前記消化槽内に固定されるとともに自身下部側が前記ドラフトチューブの上部側の支持部に固定されて前記ドラフトチューブの立設姿勢を保持する枠体型のケージ本体を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージによれば、従来のタイロッドのように、ターンバックルを締め込むことによって張力を与えて緊迫する姿勢保持構造とは異なり、ドラフトチューブ側の支持部と消化槽内壁側の支持部との間に枠体型のケージ本体を介設している。これにより、ドラフトチューブの姿勢をリジッドな剛接合によって固定できる。
そのため、本発明の一態様に係る汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージによれば、張力を与えて緊迫する方式のタイロッドと比較して、剛構造からなるケージ本体の疲労破断を防止または抑制できる。よって、ケージ本体によるドラフトチューブの姿勢保持性能をより長期に亘って維持できる。
【0009】
ここで、本発明の一態様に係る汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージにおいて、前記ケージ本体は、自身基端部が前記消化槽内壁側の支持部に連結された状態で垂下される複数の腕部と、前記複数の腕部によって支持されるとともに前記消化槽の上下方向に離隔して配置される複数の枠部と、前記複数の枠部のいずれか一の枠部と前記ドラフトチューブとの間に掛け渡されて前記ドラフトチューブを支持する複数の桁と、を有する構成とすることができる。
このような構成であれば、ドラフトチューブを直接的に支持する複数の桁の長さを比較的に短くできるため、ドラフトチューブの姿勢をリジッドな剛接合によって固定しつつ、ドラフトチューブの芯の位置を保持する構造として好適である。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る汚泥消化装置は、消化槽と、該消化槽内に立設されて上端および下端に開口を有するドラフトチューブと、前記消化槽の頂部中央に配置されるとともに前記ドラフトチューブ内に延伸するように回転軸が垂下される縦型の軸流ポンプと、前記ドラフトチューブの姿勢を保持する姿勢保持部材と、を備え、前記姿勢保持部材として、本発明の一態様に係る汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る汚泥消化装置によれば、ドラフトチューブの姿勢を保持する姿勢保持部材として、本発明の一態様に係る汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持ケージを有するので、ドラフトチューブの姿勢保持性能をより長期に亘って維持できる。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、汚泥消化装置のドラフトチューブの姿勢保持性能をより長期に亘って維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様に係るドラフトチューブ用姿勢保持ケージを備えた汚泥消化装置の一実施形態の説明図であり、同図では、軸線に沿った断面を示している。
図2図1の汚泥消化装置における姿勢保持ケージの部分の拡大図である。
図3図2の姿勢保持ケージを構成する上腕部の説明図((a)正面視、(b)側面視、(c)上面視)である。
図4図2の姿勢保持ケージを構成する下腕部の説明図((a)正面視、(b)側面視、(c)上面視)である。
図5図2の姿勢保持ケージを構成する上枠部の説明図であり、同図中に、鋼製部材である横桁および補強桁を分解した図を併せて示している。
図6図2の姿勢保持ケージを構成する中枠部の説明図であり、同図中に、鋼製部材である横桁および補強桁を分解した図を併せて示している。
図7図2の姿勢保持ケージを構成する下枠部の説明図(a)、(b)であり、同図(a)中には、鋼製部材である横桁を分解した図を併せて示している。また、同図(b)は同図(a)でのV-V断面の部分を拡大して示す、クリアランス調整部の説明図である。
図8図2の姿勢保持ケージのクリアランス調整部を構成する調整座板の説明図((a)平面図、(b)正面図)である。
図9図2の姿勢保持ケージのクリアランス調整部を構成する調整ブラケットの説明図((a)平面図、(b)正面図)である。
図10図1の汚泥消化装置における姿勢保持ケージの装着工程を説明する模式図であり、同図は、メンテナンス用の足場を設けた状態を示している。
図11】従来のタイロッドを備えた汚泥消化装置の一例の説明図であり、同図では、軸線に沿った断面を示している。
図12図11の汚泥消化装置における従来のタイロッドの部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の汚泥消化装置1は、汚泥を入れる消化槽10と、消化槽10内に縦に配置されたドラフトチューブ20と、消化槽10の頂部中央に配置された軸流ポンプ30と、を備える。
ドラフトチューブ20は、その軸線が消化槽10の中心に沿って鉛直に配置され、ドラフトチューブ20の下部が複数の支持脚15によって消化槽10の底部12に固定される。つまり、ドラフトチューブ20の下部は、複数の支持脚15によって底部12に固定されるため、完全な剛性体での支持構造となる。
【0016】
軸流ポンプ30は、回転軸31を有するモータ部35を備える。モータ部35は、消化槽10の頂部中央に設けられた蓋部13の上部に取り付けられて消化槽10の外部に配置され、回転軸31は消化槽10の内部に向けて垂下される。
回転軸31の先端には、撹拌スクリュ32が設けられている。撹拌スクリュ32の部分は、ドラフトチューブ20の上側開口部21内に位置するように配置される。また、本実施形態の軸流ポンプ30では、撹拌スクリュ32よりも軸方向上方の位置に、上部スクリュ33およびスプレーディスク34が回転軸31に装備されている。
【0017】
本実施形態の汚泥消化装置1では、軸流ポンプ30は、正転・逆転の両方が可能であり、軸流ポンプ30を正転作動させることで、撹拌スクリュ32によって、消化槽10内の汚泥がドラフトチューブ20の上側開口部21からドラフトチューブ20内に導入される下降流が形成され、ドラフトチューブ20の下側開口部22から導出されて消化槽10内を循環する。これにより、消化槽10内の汚泥が撹拌されるようになっている。
【0018】
ここで、本実施形態の汚泥消化装置1では、図2に要部を拡大図示するように、ドラフトチューブ20の上側開口部21についても、姿勢保持ケージ40によって消化槽10の内壁上部11に支持される。なお、本明細書において、消化槽10の内壁上部11とは、消化槽10の内壁のうちドラフトチューブ20の上側開口部21よりも高い部分をいう。
【0019】
これにより、本実施形態の姿勢保持ケージ40は、上述したターンバックル型のタイロッド140のような、張力を用いた緊迫支持によらずに、ドラフトチューブ20の姿勢をリジッドな剛接合によって固定可能になっている。そのため、姿勢保持ケージ40の疲労破壊が防止されるとともに、クリアランスの調整機能も満足できるようになっている。
【0020】
詳しくは、本実施形態の姿勢保持ケージ40は、堅牢な枠体状のケージ本体41を備える。枠体型のケージ本体41は、消化槽10の上部側から順に水平に配置される、上枠部70、中枠部80および下枠部90と、これら枠部70、80、90を相互に繋ぐ複数(この例では4本)の腕部50、60と、を有する。
本実施形態の姿勢保持ケージ40では、複数の腕部50、60相互は、下方に向かうにつれて相互の水平方向での対向距離が短くなるように斜めに設けられている。そのため、複数の枠部70、80、90についても、上側が最も大きく下方に向かって順に小さな枠体を構築している。
【0021】
本実施形態のケージ本体41の腕部50、60および枠部70、80、90は、基本的には円筒状パイプ材から形成されており、他の部材との連結部分には、円環状の接続フランジ若しくは板状の継ぎ手が溶接されて構成されている。接続フランジ若しくは継ぎ手には、他の部材側の接続フランジ若しくは継ぎ手とボルト・ナットによって連結可能とする複数の貫通穴若しくは雌ねじが適所に形成されている。なお、各部のボルト・ナットおよび溶接による連結構造自体は通常の方法によるので詳細な説明は省略する。
【0022】
より具体的には、上腕部50は、図3に示すように、円筒状パイプ材から形成され、その上端には消化槽10の内壁上部11にアンカボルトにより固定される板状の壁側連結部52が溶接されている。
また、その下端には円環状の連結フランジ51が溶接され、下腕部60上端の連結フランジ61に連結可能になっている。さらに、円筒状パイプ材の途中部分には、直交方向を向く二つの接続フランジ53が側方に向けて溶接され、上枠部70の横桁71端部の接続フランジ73にそれぞれ連結可能になっている。
【0023】
下腕部60は、図4に示すように、円筒状パイプ材から形成され、その上端には円環状の連結フランジ61が溶接され、上記上腕部50下端の連結フランジ51に連結可能になっている。
また、円筒状パイプ材の途中部分には、直交方向を向く二つの接続フランジ64が側方に向けて溶接され、中枠部80の横桁81端部の接続フランジ84にそれぞれ連結可能になっている。さらに、円筒状パイプ材の下端近傍には、直交方向を向く二つの接続フランジ65が側方に向けて溶接され、下枠部90の横桁91端部の接続フランジ95にそれぞれ連結可能になっている。
【0024】
上枠部70は、図2に示すように、消化槽10の最も上部側の支持部であって、腕部50,60の途中部分に上枠部70が接続されることで、ケージ本体41の剛性がより向上される。
上枠部70は、図5に示すように、3つの枠体のうち最も大きな矩形状の枠体構造とされている。上枠部70は、円筒状パイプ材から形成された4本の横桁71と、円筒状パイプ材から形成されて、隣り合う横桁71間を斜めに繋ぐ4本の補強桁76と、を有する。
各横桁71の両端には、円環状の接続フランジ73が溶接され、上腕部50の接続フランジ53に連結可能になっている。また、各横桁71の中央部には、ドラフトチューブ20側に張り出すように補強桁接続板72が溶接され、上記4本の補強桁76両端の接続板77が連結可能になっている。
【0025】
中枠部80は、図2に示すように、上枠部70と下枠部90との間の支持部であって、腕部50,60の途中部分に中枠部80が接続されることで、ケージ本体41の剛性がより一層向上されている。
中枠部80は、図6に示すように、3つの枠体のうち中程度の大きさの矩形状の枠体構造とされている。中枠部80は、上枠部70同様に、円筒状パイプ材から形成された4本の横桁81と、円筒状パイプ材から形成されて、隣り合う横桁81間を斜めに繋ぐ4本の補強桁86と、を有する。
各横桁81の両端には、円環状の接続フランジ84が溶接され、下腕部60の接続フランジ64に連結可能になっている。また、各横桁81の中央部には、ドラフトチューブ20側に張り出すように補強桁接続板82が溶接され、上記4本の補強桁86両端の接続板87が連結可能になっている。
【0026】
下枠部90は、図2に示すように、消化槽10の最も下部側の支持部であり、3つの枠体のうち最も小さな矩形状の枠体構造とされている。ドラフトチューブ20の上側開口部21の近傍であって撹拌スクリュ32の周囲でのドラフトチューブ20を囲むように設けられる。
下枠部90は、図7に示すように、円筒状パイプ材から形成されて周方向に4等配された4本の横桁91と、円筒状パイプ材から形成されて、各横桁91の中央部分からドラフトチューブ20側に向けて水平に張り出すように略T字状に溶接された支持桁92と、を有する。
【0027】
各横桁91の両端には、円環状の接続フランジ95が溶接され、下腕部60の接続フランジ65に連結可能になっている。また、中央の支持桁92の先端には、円環状の支持フランジ93が溶接され、支持桁92の先端とドラフトチューブ20との間に設けられるクリアランス調整部100に十字方向から連結されるようになっている。
【0028】
本実施形態では、ドラフトチューブ20の上部は、図2に示すように、上側開口部21を有する中空円筒状の開口部ケーシング22と、開口部ケーシング22の下部に連結される中空円筒状の上部ケーシング23と、を有する。上部ケーシング23は、ドラフトチューブ20の本体(下側部分)と対向するフランジ部分からボルト・ナットによって着脱可能である。
【0029】
また、開口部ケーシング22および上部ケーシング23相互は対向するフランジ部分からボルト・ナットによって、撹拌スクリュ32の周囲での分解・組付けおよびメンテナンスが容易に行えるようになっている。本実施形態のクリアランス調整部100は、上部ケーシング23の下側のフランジ部に装着されるようになっている。
クリアランス調整部100には、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの対向隙間(クリアランス)を所定に維持するように、各支持桁92による架け渡し状態を調整可能なクリアランス調整機構が設けられている。
【0030】
本実施形態のクリアランス調整部100は、図7(b)に示すように、調整ブラケット110と、調整座板120と、を有する。調整座板120は、図8に示すように、円盤状の板部材であり、中心部にドラフトチューブ20に対する挿通穴121を有し、外周部分には、複数の調整穴122が周方向に離隔して貫通形成されている。また、調整ブラケット110は、図9に示すように、平面視が八角形形状に形成された枠体状の部材であり、中心部にドラフトチューブ20に対する挿通穴111を有する。八角形形状の上下左右の4面が支持桁92の連結部112となっている。
【0031】
このクリアランス調整部100は、後述する姿勢保持ケージ40の装着方法で詳述するように、調整ブラケット110と調整座板120との固定穴部分の径方向の位置を調整穴122の範囲で調整することで、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの芯ズレを調整可能になっている。
本実施形態の汚泥消化装置1では、このクリアランス調整部100の調整機能により、大型構造の消化槽10であっても、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの芯ズレを吸収して安定した支持姿勢を姿勢保持ケージ40で保持できるようになっている。
【0032】
次に、本実施形態の汚泥消化装置1に対し、本実施形態の姿勢保持ケージ40を装着する方法、およびこの姿勢保持ケージ40を用いて軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの対向隙間(クリアランス)を所定に維持する方法について説明する。
【0033】
図10に模式図を示すように、本実施形態の姿勢保持ケージ40を装着する際には、汚泥消化装置1に対して、消化槽10の内部に仮設足場Sを組んでから施工する。仮設足場Sは、施工後に解体して撤去する。本実施形態の姿勢保持ケージ40によれば、既設タイロッドが、図11に示したような、ターンバックル240tを有するタイロッド240であっても、これに替えて同じ装着位置に装着できるため、メンテナンス時のリプレースが容易である。
【0034】
ここで、汚泥消化装置1の消化槽10の内部における作業は、消化槽10の頂部中央に設けられた蓋部13の開口部からの搬入出作業となる。そのため、蓋部13の開口部からの搬入出が可能な寸法であることは勿論、搬入出の作業性や分解組み付け性に優れた構成であることが望ましい。
これに対し、本実施形態の姿勢保持ケージ40は、腕部50、60が軸方向の途中で分割された二分割構造とされるとともに、枠部70,80,90についても、上下に離隔した三段階構造とされており、さらに、各枠部70,80,90それぞれも分解可能になっているので、蓋部13の狭い開口部からの搬入出作業も行い易い。また、腕部50、60および各枠部70,80,90の基本構造も共通しているので、分解組み付け性に優れている。
【0035】
本実施形態の姿勢保持ケージ40を装着する手順は、ケージ本体41については、ドラフトチューブ20の上側開口部21に臨む所定の位置にて、4本の上腕部50の壁側連結部52を消化槽10の内壁上部11にアンカボルトにより装着する。次いで、4本の上腕部50の接続フランジ53に対して上枠部70を組付けて剛構造をより確かに構築する。
【0036】
さらに、4本の上腕部50先端の連結フランジ51に下腕部60の連結フランジ61をそれぞれ接続し、次いで、4本の下腕部60の接続フランジ64に対して中枠部80を組付けて剛構造をより確かに構築する。
次いで、4本の下腕部60先端側の接続フランジ65に対して下枠部90を組付けるとともに、ドラフトチューブ20の先端に対して調整ブラケット110の仮掛け渡し作業を行う。
【0037】
この仮掛け渡し作業では、図10に示す仮設足場S上にて作業者が門型を組んでおき、不図示の懸架機器を用いて構築する部材をそれぞれ吊った状態で所期する姿勢を保持しつつ所望の位置に調整ブラケット110が位置するように組み立てる。
仮掛け渡し作業において、ドラフトチューブ20側に対しては、上記開口部ケーシング22および上部ケーシング23を予め取り外しておき、図7(b)に示すように、ドラフトチューブ20の本体(下側部分)の上端に調整ブラケット110の挿通穴111を挿通するとともに、調整座板120の挿通穴121を挿通する。
【0038】
次いで、ドラフトチューブ20の本体上端のフランジと上部ケーシング23の下部フランジとの間に調整座板120を同軸に介装し、複数のフランジ連結用ボルト・ナット133および複数の座板用ボルト・ナット132で全周に亘って調整座板120をドラフトチューブ20に固定する。
そして、4つの連結部112に対し、4本の支持桁92先端の支持フランジ93をそれぞれ連結して仮掛け渡し作業を行う。これにより、調整ブラケット110は、ドラフトチューブ20の上部側の支持部を兼ねるかたちで仮固定される。
【0039】
次いで、クリアランス調整部100により、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの対向隙間(クリアランス)を所定に維持するように、調整ブラケット110と、調整ブラケット110上の調整座板120との固定穴部分でのスライド範囲での径方向での位置を調整する。
対向隙間(クリアランス)を所定に維持可能なように径方向の位置が決まったら、複数(この例では6か所)の板ナット130と調整用ボルト・ナット131とによってその位置を固定する。その際、4本の支持桁92は、自身軸方向への張力が付与されない状態で架け渡される。
【0040】
クリアランス調整部100でのクリアランス調整を終えたならば、調整ブラケット110と調整座板120とを必要に応じて現場溶接し、これによって、クリアランス調整部100のスライド位置が本固定され、4本の支持桁92との軸方向でのクリアランス調整を終えた掛け渡し状態が確実に保持される。
【0041】
次に、本実施形態の汚泥消化装置1の動作並びに姿勢保持ケージ40の作用効果について説明する。
ところで、本実施形態の汚泥消化装置1のような汚泥消化設備においては、消化槽10内に貯留される汚泥の水面域にはスカム層が形成される。消化槽10内の水面域で生じるスカムが固化積層した場合には、汚泥の流入や流出などの汚泥を循環させる汚泥消化処理がスムーズに行えないばかりか、ドラフトチューブ20を詰まらせて閉塞させるおそれもあり、汚泥の循環が停止して嫌気性消化処理に重大な支障を生じさせてしまうことになる。
【0042】
これに対し、本実施形態の汚泥消化装置1では、撹拌スクリュ32よりも軸方向上方の位置に上部スクリュ33およびスプレーディスク34が装備されているので、上部スクリュに33より、水面域(図2での符号HWLからLWL)でのスカム層を破砕することができる。
さらに、軸流ポンプ30を逆転作動させることで、撹拌スクリュ32によって、消化槽10内の汚泥がドラフトチューブ20の下側開口部22からドラフトチューブ20内に導入される上昇流が形成されて上側開口部21から吐出される。
【0043】
さらに、逆転作動時には、上部スクリュ33で水面域HWL~HWLのスカム層を破砕しつつスプレーディスク34により破砕されたスカムの上方への噴出しを防止するとともに水面域HWL~LWLの汚泥を周辺に均一に撒き散らすことで、ドラフトチューブ20内に上昇流または下降流を確実に且つ安定して発生させ、良好な攪拌状態を維持して汚泥消化処理が安定的に継続できる。
【0044】
ここで、汚泥消化装置が稼働時にはドラフトチューブ20は僅かに動いている。そのため、ドラフトチューブ20の上部用の姿勢保持部材が、上述したようなタイロッド240であると、ターンバックル240tを締め込むことによって張力をそれぞれに与える緊迫支持構造である。
そのため、ターンバックル240tのジョイント部では徐々に摩耗が進行して張力が抜けてタイロッド240のガタが拡大する。また、従来のタイロッド240では、大型構造の消化槽の芯ズレを吸収するような構造になっていないため、偏った力の作用によって、タイロッド240の疲労破壊がより早期に進行するおそれがある。
【0045】
これに対し、本実施形態の姿勢保持ケージ40によれば、ターンバックル型のタイロッド240のような、張力を用いた緊迫支持によらない剛固定構造になっている。つまり、本実施形態の姿勢保持ケージ40によれば、枠体型のケージ本体41が、堅牢な枠体状のケージでドラフトチューブ20を支持するため、姿勢保持ケージ40の疲労破壊が防止されるとともにクリアランス調整機能も満足できる。
【0046】
また、本実施形態の姿勢保持ケージ40によれば、クリアランス調整部100が設けられているので、大型構造の消化槽10であっても、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの芯ズレを吸収して安定した支持姿勢を保持できる。
【0047】
特に、本実施形態の姿勢保持ケージ40によれば、撹拌スクリュ32とのクリアランスを保つように、施工するドラフトチューブ20を、枠体型(かご型)の剛体である姿勢保持ケージ40にて囲繞した状態で支持する。
特に、姿勢保持ケージ40のケージ本体41は、ドラフトチューブ20上部の水面域HWL~HWLよりも高い位置から、消化槽10の躯体内壁と基礎部を介して4本の腕部50,60で強固に施工されるので、ケージ本体41が水流等の影響で揺れることが効果的に防止または抑制され、ドラフトチューブ20と撹拌スクリュ32との適正なクリアランスを維持しつつドラフトチューブ20の垂下姿勢を確実に且つ長期に亘って保持できる。
【0048】
さらに、本実施形態の構成であれば、枠部のいずれか一の枠部として、一番小型である下枠部90から比較的に短い4つの支持桁91を張り出して、これら支持桁91がドラフトチューブ20との間に掛け渡されてドラフトチューブ20を支持する構造なので、緊迫支持する方式のタイロッドと比較して、極めて短い距離で支持桁91を構成できるため、ケージ本体41が水流等の影響で揺れることが効果的に防止または抑制する上で特に優れた構造になっている。
【0049】
ここで、上述したようなスカム層の解消動作において、仮に、ドラフトチューブ20の上部の姿勢保持部材が、ドラフトチューブ20上部の水面域HWL~LWLでの攪拌流の流れやスカム層の解消動作を妨げるような構造であると、安定した汚泥消化処理を継続する上で不十分なものとなる。
これに対し、本実施形態の姿勢保持部材、つまり姿勢保持ケージ40によれば、ケージ本体41の周囲に広い開放部分が設けられた、かご型の枠体支持構造を採用しているので、張力を与えて緊迫支持する方式のタイロッド同様に、水面域HWL~LWLでの攪拌流の流れは勿論、水面域HWL~LWLの汚泥を周辺に均一に撒き散らすスプレーディスク34の機能や上部スクリュ33での水面域のスカム層を破砕する機能を妨げることがない。
【0050】
このように、本実施形態の姿勢保持ケージ40によれば、張力を与えて緊迫支持する方式のタイロッドと比較して、ドラフトチューブ20上部を狭い範囲で囲繞しつつ支持できるため、姿勢保持ケージ40自身の疲労破断を防止または抑制できる。
よって、本実施形態の姿勢保持ケージ40によれば、攪拌流の流れや水面域HWL~LWLでのスカム層の解消動作については従来のタイロッド同様に妨げることなく、さらに、従来のタイロッドでの問題点を解消して、ドラフトチューブ20の姿勢保持性能をより長期に亘って維持できるため、汚泥消化装置のドラフトチューブ用姿勢保持部材として極めて優れているといえる。
【0051】
なお、本発明に係るポンプ配管サポート用ケージは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
つまり、本発明に係る姿勢保持ケージにおいて、ケージ本体41は、ドラフトチューブ20の姿勢を保持するために、ドラフトチューブ20側の支持部と消化槽10の内壁側の支持部との間に枠体型の剛構造で介設されるものであれば種々の態様を採用できる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、堅牢な枠体状のケージ本体41を構築する例として、ケージ本体41が、消化槽10の上部側から順に配置される、上枠部70、中枠部80および下枠部90と、これら枠部70、80、90を相互に繋ぐ複数(この例では4本)の腕部50、60と、を有する例を示したが、これに限定されるものではない。
つまり、必要な剛性が確保可能であれば、例えば上枠部70若しくは中枠部80を省略することができる。但し、ケージ本体41の剛性を向上する上では、ドラフトチューブ20と接続される桁を設ける枠部以外の枠部を更に備えることは好ましい。
【0053】
また、例えば、現場でのケージ本体の施工時に、クリアランス調整が不要な程度にクリアランスを無調整で設定可能であれば、クリアランス調整部(クリアランス調整機構)を省略できる。但し、現場でのケージ本体の施工時にクリアランス調整が生じる蓋然性は高いため、クリアランス調整部を有することが好ましい。
また、クリアランス調整部を設ける場合においても、ドラフトチューブと接続される桁とドラフトチューブとの間に限定されるものではない。但し、ドラフトチューブと接続される桁との間に設ける構成であればクリアランス調整を効率良く行う上で好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 汚泥消化装置(消化設備:撹拌機)
10 消化槽
11 内壁上部
12 底部
13 蓋部
15 支持脚
20 ドラフトチューブ(ポンプ配管)
21 上側開口部
22 開口部ケーシング
23 上部ケーシング
30 軸流ポンプ
31 回転軸
32 撹拌スクリュ
33 上部スクリュ
34 スプレーディスク
35 モータ部
40 姿勢保持ケージ
41 ケージ本体
50 上腕部(消化槽の内壁側の支持部)
51 連結フランジ
52 壁側連結部
53 (上枠部との)接続フランジ
60 下腕部
61 連結フランジ
64 (中枠部との)接続フランジ
65 (下枠部との)接続フランジ
70 上枠部
71 横桁
72 補強桁接続板
73 接続フランジ
76 補強桁
77 接続板
80 中枠部
81 横桁
82 補強桁接続板
84 接続フランジ
86 補強桁
87 接続板
90 下枠部
91 横桁
92 支持桁(ドラフトチューブを(直接)支持する桁)
93 支持フランジ
95 接続フランジ
100 クリアランス調整部
110 調整ブラケット(ドラフトチューブの上部側の支持部)
120 調整座板
130 板ナット
131 調整用ボルト・ナット
132 座板用ボルト・ナット
133 フランジ連結用ボルト・ナット
S 仮設足場
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
図11
図12