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特開2022-178462飛灰循環型排ガス処理設備、及び飛灰循環型排ガス処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178462
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】飛灰循環型排ガス処理設備、及び飛灰循環型排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/40 20060101AFI20221125BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 46/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B01D53/40 ZAB
B01D53/68 100
B01D53/83
B01D46/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085280
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】倉田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】大山 譲
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 全一
【テーマコード(参考)】
4D002
4D058
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA19
4D002AB01
4D002AC04
4D002BA03
4D002BA12
4D002BA13
4D002BA14
4D002CA11
4D002CA13
4D002DA02
4D002DA05
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA66
4D002EA01
4D002EA07
4D002FA10
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB04
4D002GB20
4D058JA04
4D058NA04
4D058RA19
4D058SA08
(57)【要約】
【課題】中和薬剤費、及びファン動力費を含むランニングコスト全体を抑えることができる飛灰循環型排ガス処理設備を提供する。
【解決手段】排ガスが導入されるバグフィルタ21と、バグフィルタ21の上流側に中和薬剤を供給する中和薬剤供給装置30と、バグフィルタ21の下流側に配設される誘引ファン23と、バグフィルタ21で捕集した未反応の中和薬剤を含む飛灰の一部をバグフィルタ21の上流側に戻して循環させる飛灰循環装置40とを備える飛灰循環型排ガス処理設備20であって、中和薬剤の薬剤費、及び誘引ファン23のファン動力費を含むランニングコストが最小となるように、飛灰循環装置40によって循環される飛灰の循環率を制御する制御装置70を備えるものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが導入されるバグフィルタと、前記バグフィルタの上流側に中和薬剤を供給する中和薬剤供給装置と、前記バグフィルタの下流側に配設される誘引ファンと、前記バグフィルタで捕集した未反応の前記中和薬剤を含む飛灰の一部を前記バグフィルタの上流側に戻して循環させる飛灰循環装置とを備える飛灰循環型排ガス処理設備であって、
前記中和薬剤の薬剤費、及び前記誘引ファンのファン動力費を含むランニングコストが最小となるように、前記飛灰循環装置によって循環される前記飛灰の循環率を制御する制御装置を備える飛灰循環型排ガス処理設備。
【請求項2】
前記制御装置は、
所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から、前記中和薬剤の薬剤費を算出する薬剤費算出部と、
前記バグフィルタの入口側、及び出口側の差圧に関する差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて、飛灰循環率に対する前記誘引ファンのファン動力費を算出するファン動力費算出部と、
算出された前記薬剤費と前記ファン動力費との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率を算出するコスト最小飛灰循環率算出部と、
前記コスト最小飛灰循環率を目標飛灰循環率に設定する目標飛灰循環率設定部と、
前記飛灰循環装置の飛灰循環率が前記目標飛灰循環率に近づくように調整する飛灰循環率調整部と、
を含む請求項1に記載の飛灰循環型排ガス処理設備。
【請求項3】
排ガスが導入されるバグフィルタの上流側に中和薬剤を供給する中和薬剤供給工程と、前記バグフィルタの下流側に設けられる誘引ファンによる誘引作用により、前記中和薬剤を含む排ガスを前記バグフィルタに導入する排ガス導入工程と、前記バグフィルタで捕集した未反応の前記中和薬剤を含む飛灰の一部を前記バグフィルタの上流側に戻して循環させる飛灰循環工程とを包含する飛灰循環型排ガス処理方法であって、
前記飛灰循環工程において、前記中和薬剤の薬剤費、及び前記誘引ファンのファン動力費を含むランニングコストが最小となるように、前記飛灰の循環率を制御する飛灰循環率制御工程を実施する飛灰循環型排ガス処理方法。
【請求項4】
前記飛灰循環率制御工程は、
所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から、前記中和薬剤の薬剤費を算出する薬剤費算出工程と、
前記バグフィルタの入口側、及び出口側の差圧に関する差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて、飛灰循環率に対する前記誘引ファンのファン動力費を算出するファン動力費算出工程と、
算出された前記薬剤費と前記ファン動力費との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率を算出するコスト最小飛灰循環率算出工程と、
前記コスト最小飛灰循環率を目標飛灰循環率に設定する目標飛灰循環率設定工程と、
前記飛灰の循環率が前記目標飛灰循環率に近づくように調整する飛灰循環率調整工程と、
を含む請求項3に記載の飛灰循環型排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バグフィルタで捕集した飛灰の一部をバグフィルタの上流側に戻して循環させる飛灰循環型排ガス処理設備、及び飛灰循環型排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物等を燃焼炉で燃焼させるに伴い発生した排ガスには、煤塵が含まれている。また、排ガスには、燃焼させる廃棄物等に塩素(Cl)や硫黄(S)の成分が含まれている場合、塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガスも含まれている。これらの酸性ガスを除去する方法としては、消石灰や重曹系薬剤等の中和薬剤と酸性ガスとを反応させて除去するという方法が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0003】
特許文献1には、排ガスが流れる煙道の途中に設けられるバグフィルタと、バグフィルタの上流側に中和薬剤を供給する中和薬剤供給装置と、バグフィルタの下流側に設けられる誘引ファンとを備える排ガス処理設備が開示されている。
【0004】
特許文献1の排ガス処理設備においては、排ガス中の酸性ガスと中和薬剤との反応によって反応生成物が生成される。反応生成物は、誘引ファンの作動による誘引作用により、排ガス中の煤塵と未反応中和薬剤と共に飛灰としてバグフィルタに導入される。導入された飛灰(煤塵+反応生成物+未反応中和薬剤)は、バグフィルタ内に設けられたろ布によって捕集される。こうして、排ガス中の酸性ガスが除去される。
【0005】
特許文献2には、特許文献1の排ガス処理設備と基本構成が同様である排ガス処理設備において、バグフィルタで捕集した飛灰をバグフィルタの底部より取り出し、取り出した飛灰の一部を、バグフィルタ入口側の煙道に戻す飛灰循環型排ガス処理方法を実施する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-213499号公報
【特許文献2】特開2014-24052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の排ガス処理設備では、バグフィルタで捕集された飛灰に、未反応中和薬剤が多く含まれていることがあり、中和薬剤が効率的に利用されていない場合があった。
【0008】
特許文献2の飛灰循環型排ガス処理方法を実施する装置では、バグフィルタの底部より取り出した飛灰の一部を、バグフィルタ入口側の煙道に戻して循環させるようにしているので、飛灰に含まれる未反応中和薬剤が酸性ガスとの反応に供されることになり、中和薬剤を効率的に利用することができる。しかしながら、特許文献2の装置では、飛灰の循環率を増加させるに伴いバグフィルタでの圧損が大きくなる場合に、誘引ファンの動力損出が大きくなる。このため、中和薬剤の薬剤費を削減することができる一方で、ファン動力費が増加してしまうことになる。これとは逆に、飛灰の循環率を減少させると、バグフィルタでの圧損が減り、誘引ファンの動力損出を抑えることができるものの、中和薬剤の利用効率が低下し、中和薬剤の薬剤費が増加してしまうことになる。
【0009】
上記のように、中和薬剤費削減とファン動力費削減とは、相反する関係にあるが、中和薬剤費、及びファン動力費を含むランニングコスト全体について、総合的な経済性が求められている。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、中和薬剤費、及びファン動力費を含むランニングコスト全体を抑えることができる飛灰循環型排ガス処理設備、及び飛灰循環型排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る飛灰循環型排ガス処理設備の特徴構成は、
排ガスが導入されるバグフィルタと、前記バグフィルタの上流側に中和薬剤を供給する中和薬剤供給装置と、前記バグフィルタの下流側に配設される誘引ファンと、前記バグフィルタで捕集した未反応の前記中和薬剤を含む飛灰の一部を前記バグフィルタの上流側に戻して循環させる飛灰循環装置とを備える飛灰循環型排ガス処理設備であって、
前記中和薬剤の薬剤費、及び前記誘引ファンのファン動力費を含むランニングコストが最小となるように、前記飛灰循環装置によって循環される前記飛灰の循環率を制御する制御装置を備えることにある。
【0012】
本構成の飛灰循環型排ガス処理設備によれば、中和薬剤の薬剤費、及び誘引ファンのファン動力費を含むランニングコストが最小となるように、飛灰循環装置によって循環される飛灰の循環率が制御装置によって制御されるので、中和薬剤費、及びファン動力費を含むランニングコスト全体を抑えることができる。
【0013】
本発明に係る飛灰循環型排ガス処理設備において、
前記制御装置は、
所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から、前記中和薬剤の薬剤費を算出する薬剤費算出部と、
前記バグフィルタの入口側、及び出口側の差圧に関する差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて、飛灰循環率に対する前記誘引ファンのファン動力費を算出するファン動力費算出部と、
算出された前記薬剤費と前記ファン動力費との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率を算出するコスト最小飛灰循環率算出部と、
前記コスト最小飛灰循環率を目標飛灰循環率に設定する目標飛灰循環率設定部と、
前記飛灰循環装置の飛灰循環率が前記目標飛灰循環率に近づくように調整する飛灰循環率調整部と、
を含むことが好ましい。
【0014】
本構成の飛灰循環型排ガス処理設備によれば、飛灰循環率に対する中和薬剤の薬剤費は、薬剤費算出部により、所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から算出される。これにより、飛灰循環率に対する中和薬剤の薬剤費を正確に求めることができる。また、飛灰循環率に対する誘引ファンのファン動力費は、ファン動力費算出部により、バグフィルタの入口側、及び出口側の差圧に関する差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて算出される。これにより、飛灰循環率に対する誘引ファンのファン動力費を正確に求めることができる。そして、算出された中和薬剤の薬剤費と誘引ファンのファン動力費との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率が、コスト最小飛灰循環率算出部により算出され、算出されたコスト最小飛灰循環率が、目標飛灰循環率設定部により、目標飛灰循環率として設定され、飛灰循環装置の飛灰循環率がその目標飛灰循環率に近づくように飛灰循環率調整部によって調整される。これにより、飛灰循環装置の飛灰循環率を、中和薬剤の薬剤費と誘引ファンのファン動力費とを含むランニングコストが最小となる目標飛灰循環率に確実に近づけることができる。従って、ランニングコスト全体を確実に抑えることができる。
【0015】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る飛灰循環型排ガス処理方法の特徴構成は、
排ガスが導入されるバグフィルタの上流側に中和薬剤を供給する中和薬剤供給工程と、前記バグフィルタの下流側に設けられる誘引ファンによる誘引作用により、前記中和薬剤を含む排ガスを前記バグフィルタに導入する排ガス導入工程と、前記バグフィルタで捕集した未反応の前記中和薬剤を含む飛灰の一部を前記バグフィルタの上流側に戻して循環させる飛灰循環工程とを包含する飛灰循環型排ガス処理方法であって、
前記飛灰循環工程において、前記中和薬剤の薬剤費、及び前記誘引ファンのファン動力費を含むランニングコストが最小となるように、前記飛灰の循環率を制御する飛灰循環率制御工程を実施することにある。
【0016】
本構成の飛灰循環型排ガス処理方法によれば、飛灰循環工程において、中和薬剤の薬剤費、及び誘引ファンのファン動力費を含むランニングコストが最小となるように、飛灰の循環率を制御する飛灰循環率制御工程が実施されるので、中和薬剤費、及びファン動力費を含むランニングコスト全体を抑えることができる。
【0017】
本発明に係る飛灰循環型排ガス処理方法において、
前記飛灰循環率制御工程は、
所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から、前記中和薬剤の薬剤費を算出する薬剤費算出工程と、
前記バグフィルタの入口側、及び出口側の差圧に関する差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて、飛灰循環率に対する前記誘引ファンのファン動力費を算出するファン動力費算出工程と、
算出された前記薬剤費と前記ファン動力費との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率を算出するコスト最小飛灰循環率算出工程と、
前記コスト最小飛灰循環率を目標飛灰循環率に設定する目標飛灰循環率設定工程と、
前記飛灰の循環率が前記目標飛灰循環率に近づくように調整する飛灰循環率調整工程と、
を含むことが好ましい。
【0018】
本構成の飛灰循環型排ガス処理方法によれば、飛灰循環率に対する中和薬剤の薬剤費は、薬剤費算出工程において、所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から算出される。これにより、飛灰循環率に対する中和薬剤の薬剤費を正確に求めることができる。また、飛灰循環率に対する誘引ファンのファン動力費は、ファン動力費算出工程において、バグフィルタの入口側、及び出口側の差圧に関する差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて算出される。これにより、飛灰循環率に対する誘引ファンのファン動力費を正確に求めることができる。そして、算出された中和薬剤の薬剤費と誘引ファンのファン動力費との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率が、コスト最小飛灰循環率算出工程において算出され、算出されたコスト最小飛灰循環率が、目標飛灰循環率設定工程において、目標飛灰循環率として設定され、飛灰循環率調整工程において、飛灰の循環率がその目標飛灰循環率に近づくように調整される。これにより、飛灰の循環率を、中和薬剤の薬剤費と誘引ファンのファン動力費とを含むランニングコストが最小となる目標飛灰循環率に確実に近づけることができる。従って、ランニングコスト全体を確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る飛灰循環型排ガス処理設備を具備する燃焼処理施設の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る飛灰循環型排ガス処理設備において制御装置により実施される飛灰循環率制御工程の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係を示すグラフである。
図4図4は、差圧係数と飛灰循環率との関係を示すグラフである。
図5図5は、薬剤費、及びファン動力費の合計と飛灰循環率との関係を示すグラフである。
図6図6は、本発明の別実施形態に係る飛灰循環型排ガス処理設備を具備する燃焼処理施設の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0021】
<燃焼処理施設の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る飛灰循環型排ガス処理設備20を具備する燃焼処理施設1の概略構成を示すブロック図である。図1に示す燃焼処理施設1は、例えば、都市ごみ等の廃棄物やバイオマス燃料等の被燃焼物を燃焼する燃焼炉3と、燃焼炉3での燃焼に伴い発生した排ガスが導入されるボイラ5、エコノマイザ7、及び減温塔9と、減温塔9から排出される排ガスを処理する飛灰循環型排ガス処理設備20とを備えている。
【0022】
<燃焼炉>
燃焼炉3としては、炉の形式は限定されるものではないが、例えば、ストーカ式燃焼炉や流動床式燃焼炉等を挙げることができる。
【0023】
ストーカ式燃焼炉は、炉内に配置されたストーカを動かし、ストーカ下部より燃焼空気を送り、被燃焼物を乾燥・燃焼・後燃焼させる形式の燃焼炉である。ここで、ストーカとしては、例えば、階段式ストーカとトラベリングストーカとがある。階段式ストーカは、可動火格子と固定火格子とが交互に階段状に配列されたものであり、乾燥段を形成する乾燥ストーカ、燃焼段を形成する燃焼ストーカ、及び後燃焼段を形成する後燃焼ストーカが、被燃焼物送り方向の上流側から下流側に向けて順に区分けされている。一方、トラベリングストーカは、炉内において被燃焼物を移動させる方向に所定間隔を存して配される駆動輪及び従動輪に、複数の火格子を互いに回動自在に環状に連結してなる環状火格子体を巻き掛け装着して構成されている。トラベリングストーカにおいては、環状火格子体が周回運動するように駆動され、環状火格子体で受け止めた被燃焼物投入機からの被燃焼物を移動させながら環状火格子体上で燃焼させるように構成されている。流動床式燃焼炉は、けい砂等の粒子層の下部から加圧された空気を分散供給して、蓄熱したけい砂等を流動させながら、その中で被燃焼物を燃焼させる形式の燃焼炉である。
【0024】
ボイラ5では、排ガスの熱を利用して蒸気を発生させ、エコノマイザ7では、ボイラ5に供給する水を排ガスの余熱を利用して加熱し、減温塔9では、エコノマイザ7からの排ガスを所定温度まで冷却する。
【0025】
<飛灰循環型排ガス処理設備>
飛灰循環型排ガス処理設備20は、減温塔9の排ガス流れ下流側に配設されるバグフィルタ21と、バグフィルタ21の排ガス流れ下流側に配設される誘引ファン23と、誘引ファン23の排ガス流れ下流側に配設される煙突25とを備えている。減温塔9、バグフィルタ21、誘引ファン23、及び煙突25は、相互間がダクト(煙道)11,13,15によって接続されている。飛灰循環型排ガス処理設備20においては、誘引ファン23の作動による誘引作用により、減温塔9からの排ガスが、ダクト11を介してバグフィルタ21に導入され、バグフィルタ21で除塵処理された後の排ガスが、ダクト13、誘引ファン23、ダクト15及び煙突25を介して大気中に放出されるように構成されている。
【0026】
<バグフィルタ>
バグフィルタ21は、ケーシングに所要のろ布が組み込まれるとともに、払落し装置が装備されて構成されている。ケーシングの内部は、ケージプレートによって上下に仕切られており、ケーシングの内部には、ケージプレートの下側にろ過処理前排ガス室が、ケージプレートの上側にろ過処理後排ガス室が、それぞれ区画形成されている。ろ過処理前排ガス室は、ダクト11を介して減温塔9に接続されている。ろ過処理後排ガス室は、ダクト13を介して誘引ファン23に接続されている。ケージプレートには、ろ布の吊り下げ用の開口部が所要個数設けられており、各開口部からは、ろ布がろ過処理前排ガス室内に配されるように吊り下げ支持されている。ろ布は、円筒状の袋体であり、閉鎖された一端側(下端側)がろ過処理前排ガス室内に差し込まれる一方で、開放された他端側(上端側)がろ過処理後排ガス室に臨ませて配され、該ろ布の内部には、その円筒形状を維持するための骨材が組み込まれている。払落し装置は、バグフィルタ21の入口側と出口側との差圧が所定値以上となったときや、当該差圧の値に関わらず一定期間毎に、エアコンプレッサからの圧縮空気を、配管類を介して所要の噴射ノズルから払落し対象(逆洗対象)のろ布の内表面側へと噴射することにより、ろ布の外表面側に付着堆積した飛灰を吹き飛ばして払い落とすことができるように構成されている。
【0027】
飛灰循環型排ガス処理設備20は、中和薬剤供給装置30、及び飛灰循環装置40をさらに備えている。
【0028】
<中和薬剤供給装置>
中和薬剤供給装置30は、バグフィルタ21の上流側に中和薬剤を供給する装置であり、主として、薬剤輸送管31、圧送ブロワ33、薬剤タンク35、及びフィーダ37を備えている。薬剤輸送管31は、バグフィルタ21の入口側のダクト11に接続されている。圧送ブロワ33は、薬剤輸送管31内にダクト11に向かう押込み気流を発生させる。薬剤タンク35には、排ガス中の酸性ガスを中和するための、例えば、消石灰や重曹系薬剤等の中和薬剤(本例では消石灰)が貯留されている。フィーダ37は、薬剤タンク35に貯留されている中和薬剤を薬剤輸送管31内へと供給する。
【0029】
中和薬剤供給装置30においては、圧送ブロワ33の作動によって押込み気流を薬剤輸送管31内に発生させながら薬剤タンク35内に貯留されている中和薬剤をフィーダ37によって薬剤輸送管31内へと供給することにより、薬剤輸送管31内の押込み気流によって中和薬剤をバグフィルタ21の入口側のダクト11内に吹き込み、バグフィルタ21の上流側に中和薬剤を供給することができるように構成されている。
【0030】
<飛灰循環装置>
飛灰循環装置40は、バグフィルタ21で捕集した未反応の中和薬剤を含む飛灰の一部をバグフィルタ21の上流側に戻して循環させる装置であり、主として、搬出コンベヤ41、振り分けコンベヤ45、及び飛灰供給部50を備えている。
【0031】
搬出コンベヤ41は、バグフィルタ21のケーシングの底部に貯留されている飛灰を搬出する。振り分けコンベヤ45は、搬出コンベヤ41によってバグフィルタ21から搬出された飛灰を、当該搬出コンベヤ41の一端側、及び他端側にそれぞれ振り分け、飛灰の一部を、当該搬出コンベヤ41の一端側に接続された送出管17を介して飛灰供給部50へと送り、残部を、当該搬出コンベヤ41の他端側に接続された排出管19を介して系外に排出する。
【0032】
飛灰供給部50は、バグフィルタ21の上流側に飛灰を供給する装置であり、主として、飛灰輸送管51、圧送ブロワ53、飛灰タンク55、及びフィーダ57を備えている。飛灰輸送管51は、バグフィルタ21の入口側のダクト11における、薬剤輸送管31が接続されている位置よりも排ガス流れ下流側の位置に接続されている。圧送ブロワ53は、飛灰輸送管51内にダクト11に向かう押込み気流を発生させる。飛灰タンク55には、振り分けコンベヤ45から送出管17を介して送り出された飛灰が導入されて貯留される。フィーダ57は、飛灰タンク55に貯留されている飛灰を飛灰輸送管51内へと供給する。
【0033】
飛灰供給部50においては、圧送ブロワ53の作動によって押込み気流を飛灰輸送管51内に発生させながら飛灰タンク55内に貯留されている飛灰をフィーダ57によって飛灰輸送管51内へと供給することにより、飛灰輸送管51内の押込み気流によって飛灰をバグフィルタ21の入口側のダクト11内に吹き込み、バグフィルタ21の上流側に飛灰を供給することができるように構成されている。
【0034】
飛灰循環型排ガス処理設備20は、入口側酸性ガス濃度計(連続分析計)61、出口側酸性ガス濃度計(連続分析計)63、入口側圧力計65、及び出口側圧力計67、排ガス流量計69をさらに備えている。入口側酸性ガス濃度計61は、バグフィルタ21の入口側のダクト11における、薬剤輸送管31が接続されている位置よりも上流側において、ダクト11内を流れる排ガス中の酸性ガス(HCl、SOx等)の濃度を計測する。出口側酸性ガス濃度計63は、バグフィルタ21の出口側のダクト13内を流れる排ガス中の酸性ガスの濃度を計測する。入口側圧力計65は、バグフィルタ21の入口側の圧力を計測する。出口側圧力計67は、バグフィルタ21の出口側の圧力を計測する。排ガス流量計69は、バグフィルタ21の出口側のダクト13内を流れる排ガスの流量を計測する。
【0035】
<制御装置>
飛灰循環型排ガス処理設備20は、飛灰循環装置40によって循環される飛灰の循環率を制御する制御装置70をさらに備えている。制御装置70は、飛灰循環装置40を制御可能なコンピュータを主体に構成されるものであり、所定プログラムを実行することにより、薬剤費算出部71、ファン動力費算出部73、コスト最小飛灰循環率算出部75、目標飛灰循環率設定部77、及び飛灰循環率調整部79のそれぞれの機能が発揮される。
【0036】
以上に述べたように構成される燃焼処理施設1における飛灰循環型排ガス処理設備20においては、圧送ブロワ33の作動によって押込み気流を薬剤輸送管31内に発生させながら薬剤タンク35内に貯留されている中和薬剤をフィーダ37によって薬剤輸送管31内へと供給することにより、中和薬剤が薬剤輸送管31内の押込み気流によってバグフィルタ21の入口側のダクト11内に吹き込まれる。ダクト11内に吹き込まれた中和薬剤は、排ガス中の酸性ガスと反応する。酸性ガスと中和薬剤との反応によって生成された反応生成物は、誘引ファン23の作動による誘引作用により、排ガス中の煤塵と未反応中和薬剤と共に飛灰としてバグフィルタ21に導入される。導入された飛灰(煤塵+反応生成物+未反応中和薬剤)は、バグフィルタ21内に設けられたろ布によって捕集される。こうして、排ガス中の酸性ガスが除去される。
【0037】
バグフィルタ21においては、入口側と出口側との差圧が所定値以上となったときや、当該差圧の値に関わらず一定期間毎に払落し装置が作動して、ろ布の外表面側に付着堆積した飛灰を払い落とす払落し動作が行われる。払い落とされた飛灰は、バグフィルタ21のケーシングの底部に貯留される。バグフィルタ21の底部に貯留された飛灰は、搬出コンベヤ41によって搬出される。搬出された飛灰は、振り分けコンベヤ45によって当該振り分けコンベヤ45の一端側、及び他端側にそれぞれ振り分けられる。そして、飛灰の一部は、振り分けコンベヤ45の一端側に接続された送出管17を介して飛灰供給部50へと送り出され、残部は、振り分けコンベヤ45の他端側に接続された排出管19を介して系外に排出される。
【0038】
振り分けコンベヤ45の一端側から送出管17を介して送り出された飛灰は、飛灰供給部50における飛灰タンク55に導入されて一旦貯留される。飛灰タンク55内に貯留されている飛灰は、フィーダ57によって飛灰輸送管51内へと供給される。飛灰輸送管51内に供給された飛灰は、圧送ブロワ53の作動によって飛灰輸送管51内に生成された押込み気流により、バグフィルタ21の入口側のダクト11内に吹き込まれ、バグフィルタ21の上流側に供給される。こうして、バグフィルタ21の底部より取り出した飛灰の一部を、バグフィルタ21の入口側のダクトに戻して循環させることにより、飛灰に含まれる未反応中和薬剤が酸性ガスとの反応に供されることになり、中和薬剤を効率的に利用することができる。
【0039】
制御装置70は、飛灰循環装置40によって循環される飛灰の循環率を制御する。ここで、飛灰循環率とは、燃焼炉3での燃焼によって発生した煤塵と、中和薬剤供給装置30によって供給された中和薬剤と、中和反応による増加物とを合計した飛灰量に対する再循環する飛灰量の割合である。すなわち、燃焼炉3での燃焼によって発生した煤塵と、薬剤輸送管31を介してダクト11内に供給される中和薬剤と、供給された中和薬剤と酸性ガスとの中和反応による増加物とを合計した飛灰量をaとし、飛灰輸送管51を介してダクト11内に供給される飛灰量をbとすると、飛灰循環率は、b/a × 100(%)として求められる。以下、制御装置70により実施される飛灰循環率制御工程の手順について詳述する。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態に係る飛灰循環型排ガス処理設備20において制御装置70により実施される飛灰循環率制御工程の手順を示すフローチャートである。図2において、記号「S」はステップを表す。図3は、所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係を示すグラフである。図3のグラフにおいて、縦軸の当量比の値、及び横軸の酸性ガス除去率の値は、それぞれ矢印方向に進むほど大きくなる。図2のフローチャートに示す手順を実行するための所定プログラム、及び図3のグラフに関するデータは、制御装置70のメモリに予め記憶されており、演算等の実行時に必要に応じて読み出される。また、図3のグラフに関するデータは、飛灰循環型排ガス処理設備20の実際の運転データに基づいて定期的に自動更新される。
【0041】
<ステップS1:薬剤費算出工程>
図2のフローチャートのステップS1において、薬剤費算出部71は、図3のグラフに示すような、所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から、飛灰循環率に対する中和薬剤(本例では消石灰)の薬剤費を算出する。すなわち、入口側酸性ガス濃度計61によって計測される酸性ガス(HCl)の濃度と、出口側酸性ガス濃度計63によって計測される酸性ガス(HCl)の濃度とから求められるHCl除去率がk%である場合、飛灰循環率に対する中和薬剤当量比は、図3のグラフから求められる。各飛灰循環率に対する中和薬剤当量比の一例を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示す当量比、入口側酸性ガス濃度計61によるHCl濃度、SOx濃度の計測値、排ガス流量計69によるガス量の計測値等から、所定の計算式を用いて消石灰使用量を算出し、算出した消石灰使用量と薬品単価とから薬剤費を算出する。算出した結果の一例を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
こうして、飛灰循環率に対する中和薬剤の薬剤費は、薬剤費算出部71により、所定の飛灰循環率における排ガスの酸性ガス除去率と中和薬剤当量比との関係に基づいて求められる中和薬剤使用量から算出されるので、飛灰循環率に対する中和薬剤の薬剤費を正確に求めることができる。
【0046】
図4は、差圧係数と飛灰循環率との関係を示すグラフである。図4のグラフにおいて、縦軸の差圧係数の値、及び横軸の飛灰循環率の値は、それぞれ矢印方向に進むほど大きくなる。図4のグラフに関するデータは、制御装置70のメモリに予め記憶されており、演算等の実行時に必要に応じて読み出される。また、図4のグラフに関するデータは、飛灰循環型排ガス処理設備20の実際の運転データに基づいて定期的に自動更新される。
【0047】
図4に示すグラフの縦軸の差圧係数は、入口側圧力計65、及び出口側圧力計67のそれぞれの計測値から求められるバグフィルタ21の入口側と出口側との差圧を、処理ガス量、つまり排ガス流量計69によって計測されるガス量で除した値である。
【0048】
図4のグラフにおいて、飛灰循環率がR10%からR20%に向けて増加すると、差圧係数が減少するのは、飛灰循環率がR10%からR20%に向けて増加するにつれて、飛灰がより大きな粒状となって平均粒子径が大きくなり、バグフィルタにおけるろ布上の飛灰層の通気抵抗が小さくなることに加え、飛灰がろ布から払い落とされ易くなってろ布の通気性が良好に保たれるからであると考えられる。飛灰循環率がR20%を超えると、飛灰の平均粒子径の増大による通気抵抗の減少効果よりも、飛灰循環量の増大による通気抵抗増大効果の方が優位となるため、差圧係数は飛灰循環率の増加に伴い増加することになる。このように、循環率と差圧係数とは、飛灰循環率に対して差圧係数が下に凸関数の関係にある。
【0049】
<ステップS2:ファン動力費算出工程>
図2のフローチャートのステップS2において、ファン動力費算出部73は、図4のグラフに示すような、差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて、より具体的には、飛灰循環率に対して差圧係数が下に凸関数の関係に基づいて、誘引ファン23のファン動力費を算出する。飛灰循環率に対する算出された差圧係数の一例を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示す差圧係数と排ガス流量計69の計測値等とから、所定の計算式を用いて
ファン動力費を算出する。算出した結果の一例を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
こうして、飛灰循環率に対する誘引ファン23のファン動力費は、ファン動力費算出部73により、バグフィルタ21の入口側、及び出口側の差圧に関する差圧係数と飛灰循環率との関係に基づいて算出されるので、飛灰循環率に対する誘引ファン23のファン動力費を正確に求めることができる。
【0054】
図5は、薬剤費、及びファン動力費の合計と飛灰循環率との関係を示すグラフである。
【0055】
<ステップS3:コスト最小飛灰循環率算出工程>
図2のフローチャートのステップS3において、コスト最小飛灰循環率算出部75は、算出された薬剤費(表2参照)とファン動力費(表4参照)との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率を算出する。すなわち、飛灰循環率に対する、薬剤費、及びファン動力費のデータ(表5参照)によって得られる図5のグラフに示すような関係に基づいて求められる近似式から、薬剤費とファン動力費との合計が最も小さいコスト最小飛灰循環率を求める。本例の場合、コスト最小飛灰循環率は、R33%となる(図5参照)。
【0056】
【表5】
【0057】
<ステップS4:目標飛灰循環率設定工程>
図2のフローチャートのステップS4において、目標飛灰循環率設定部77は、コスト最小飛灰循環率算出部75によって算出されたコスト最小飛灰循環率(本例の場合、R33%)を目標飛灰循環率に設定する。
【0058】
<ステップS5:飛灰循環率調整工程>
そして、ステップS5において、飛灰循環率調整部79は、飛灰循環装置40の飛灰循環率が目標飛灰循環率(本例の場合、R33%)に近づくように調整する。すなわち、飛灰循環率調整部79は、目標飛灰循環率と現在の飛灰循環率との差分に応じたフィードバック制御により、その差分を0に近づけるように、フィーダ57の薬剤送り出し量、及び/又は圧送ブロワ53の薬剤圧送量を制御する。
【0059】
こうして、算出された中和薬剤の薬剤費と誘引ファン23のファン動力費との合計が最小となるコスト最小飛灰循環率が、コスト最小飛灰循環率算出部75により算出され、算出されたコスト最小飛灰循環率が、目標飛灰循環率設定部77により、目標飛灰循環率として設定され、飛灰循環装置40の飛灰循環率がその目標飛灰循環率に近づくように飛灰循環率調整部79によって調整される。従って、飛灰循環装置40の飛灰循環率を、中和薬剤の薬剤費と誘引ファンのファン動力費とを含むランニングコストが最小となる目標飛灰循環率に確実に近づけることができるので、ランニングコスト全体を確実に抑えることができる。
【0060】
図3のグラフに示すように、飛灰循環率をR10%、R20%、R30%、R40%に順に増加させると、当量比は減少するため、飛灰循環率を増加させれば薬剤費は減少する。一方、図4のグラフに示すように、飛灰循環率がR10%からR20%に向けて増加すると、差圧係数が減少し、飛灰循環率がR20%を超えると、差圧係数は飛灰循環率の増加に伴い増加するといった具合に、飛灰循環率と差圧係数とは、飛灰循環率に対して差圧係数が下に凸関数の関係にある。これは、ファン動力費に関しては、飛灰循環率の所定変域(本例では、R10%~R40%)における所定の飛灰循環率において最小になることを示している。本発明は、図3のグラフに示す関係と、図4のグラフに示す関係とを適切にマッチングさせることにより、飛灰循環率を低い水準値(例えば、R10%)と高い水準値(例えば、R40%)との間において、薬剤費とファン動力費との合計が最小になるコスト最小飛灰循環率(本例では、R33%)を求めることができるとの知見に基づいてなされたものである。
【0061】
以上、本発明の飛灰循環型排ガス処理設備、及び飛灰循環型排ガス処理方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0062】
(別実施形態)
図6は、本発明の別実施形態に係る飛灰循環型排ガス処理設備20を具備する燃焼処理施設1の概略構成を示すブロック図である。なお、図6に示す別実施形態において、図1に示す上記実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することし、以下においては、別実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0063】
図6に示す示す燃焼処理施設1において、ダクト11は、上流側水平ダクト部11a、上流側鉛直ダクト部11b、変向ダクト部11c、下流側鉛直ダクト部11d、及び下流側水平ダクト部11eが排ガス流れ上流側から下流側に向けてこの記載順に連設されて構成されている。
【0064】
<中和薬剤供給装置>
中和薬剤供給装置30は、主として、薬剤タンク35、及びフィーダ37を備え、薬剤タンク35内に貯留されている中和薬剤をフィーダ37によって上流側鉛直ダクト部11bへと供給することにより、中和薬剤を自然流下で上流側鉛直ダクト部11b内に送り込み、バグフィルタ21の上流側に中和薬剤を供給することができるように構成されている。
【0065】
<飛灰循環装置>
飛灰循環装置40は、主として、搬出コンベヤ41、飛灰移送コンベヤ46、及び飛灰供給部50を備えている。
【0066】
移送コンベヤ46は、搬出コンベヤ41によってバグフィルタ21から搬出された飛灰を、搬送路途中において当該移送コンベヤ46に接続された送出管17を介して飛灰供給部50における飛灰タンク55へと送り、飛灰タンク55に入りきれずにオーバーフローした飛灰を、当該移送コンベヤ46の搬送方向端部に接続された排出管19を介して系外に排出するように構成されている。
【0067】
飛灰供給部50は、主として、飛灰タンク55、及びフィーダ57を備え、飛灰タンク55内に貯留されている飛灰をフィーダ57によって上流側鉛直ダクト部11bへと供給することにより、飛灰を自然流下で上流側鉛直ダクト部11b内に送り込み、バグフィルタ21の上流側に飛灰を供給することができるように構成されている。ここで、上流側鉛直ダクト部11bに対するフィーダ57の供給位置は、上流側鉛直ダクト部11bに対するフィーダ37の供給位置よりも排ガス流れ下流側に設定されている。
【0068】
以上に述べた図6に示す別実施形態によっても、図1に示す上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の飛灰循環型排ガス処理設備、及び飛灰循環型排ガス処理方法は、例えば、ごみ燃焼炉や、バイオマス燃焼炉等から排出される排ガス中に含まれる塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガスを除去して、大気中に放出される排ガスを無害化する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 燃焼処理施設
20 飛灰循環型排ガス処理設備
21 バグフィルタ
23 誘引ファン
30 中和薬剤供給装置
40 飛灰循環装置
70 制御装置
71 薬剤費算出部
73 ファン動力費算出部
75 コスト最小飛灰循環率算出部
77 目標飛灰循環率設定部
79 飛灰循環率調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6