IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バイオガスシステム 図1
  • 特開-バイオガスシステム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178479
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】バイオガスシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20221125BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221125BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F02D19/02 A
F02D45/00 369
C10L3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085317
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川口 昇
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 正訓
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亘
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AB06
3G092AC08
3G092DE17
3G092HB05Z
3G092HF01Z
3G384AA13
3G384AA22
3G384FA21Z
(57)【要約】
【課題】システムの構成に要する費用が嵩むことを抑制しながらガス成分の濃度を検知することができるバイオガスシステムを提供する。
【解決手段】バイオガスシステム10は、発酵槽11と、貯留槽13と、燃焼機関15と、流量センサ23と、各種センサ25と、を備える。発酵槽11はバイオマス原料を発酵させることによってバイオガスを生成する。貯留槽13は発酵槽11で生成されるバイオガスを貯留する。燃焼機関15はバイオガスを燃料として稼働する。流量センサ23はバイオガスの流量を検出する。各種センサ25は燃焼機関15の稼働状態を示す情報を検出する。制御装置27は流量センサ23及び各種センサ25の各々から出力される検出値と基準データとに基づいて、バイオガス中のメタンガスの濃度を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料を発酵させることによってバイオガスを生成する発酵槽と、
前記発酵槽で生成される前記バイオガスを貯留する貯留槽と、
前記貯留槽から供給される前記バイオガスを燃料として稼働する燃焼機関と、
前記貯留槽から前記燃焼機関に供給される前記バイオガスの流量を検出して前記流量の検出値の信号を出力する流量センサと、
前記燃焼機関の稼働状態を示す情報を検出して前記情報の検出値の信号を出力する検出部と、
前記流量及び前記情報と前記バイオガス中のメタンガスの濃度との対応関係を示す基準データを記憶するとともに、前記流量センサ及び前記検出部の各々から出力される前記検出値と前記基準データとに基づいて、前記バイオガス中のメタンガスの濃度を取得する処理部と、
を備える、
ことを特徴とするバイオガスシステム。
【請求項2】
前記燃焼機関の動力により発電する発電機を備え、
前記燃焼機関の稼働状態を示す前記情報は、前記発電機の発電電力を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のバイオガスシステム。
【請求項3】
前記燃焼機関にメタンガスの濃度が既知である基準ガスを供給する基準ガス供給部を備え、
前記処理部は、前記基準ガス供給部から前記燃焼機関に前記基準ガスを供給することによって前記基準データを作成又は較正する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバイオガスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、メタン発酵のモデル又は屈折率及び音波の伝搬速度等のガス物性に基づく関係式によってバイオガスのメタン濃度を算出する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-223386号公報
【特許文献2】特開2019-045434号公報
【特許文献3】国際公開第2013/141083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来技術の方法では、モデルの不確かさに起因してガス濃度の算出精度を向上させることが困難になるおそれがある。また、ガス物性若しくはガス濃度を検出又はガスの定量分析を行うための特別なセンサ又は機器を必要とする場合、システムの構成に要する費用が嵩むとともに、演算処理が複雑になるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、システムの構成に要する費用が嵩むことを抑制しながらガス成分の濃度を検知することができるバイオガスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るバイオガスシステム(例えば、実施形態でのバイオガスシステム10)は、バイオマス原料を発酵させることによってバイオガスを生成する発酵槽(例えば、実施形態での発酵槽11)と、前記発酵槽で生成される前記バイオガスを貯留する貯留槽(例えば、実施形態での貯留槽13)と、前記貯留槽から供給される前記バイオガスを燃料として稼働する燃焼機関(例えば、実施形態での燃焼機関15)と、前記貯留槽から前記燃焼機関に供給される前記バイオガスの流量を検出して前記流量の検出値の信号を出力する流量センサ(例えば、実施形態での流量センサ23)と、前記燃焼機関の稼働状態を示す情報を検出して前記情報の検出値の信号を出力する検出部(例えば、実施形態での各種センサ25)と、前記流量及び前記情報と前記バイオガス中のメタンガスの濃度との対応関係を示す基準データを記憶するとともに、前記流量センサ及び前記検出部の各々から出力される前記検出値と前記基準データとに基づいて、前記バイオガス中のメタンガスの濃度を取得する処理部(例えば、実施形態での制御装置27)と、を備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載のバイオガスシステムは、前記燃焼機関の動力により発電する発電機(例えば、実施形態での発電機17)を備え、前記燃焼機関の稼働状態を示す前記情報は、前記発電機の発電電力を含んでもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)に記載のバイオガスシステムは、前記燃焼機関にメタンガスの濃度が既知である基準ガスを供給する基準ガス供給部(例えば、実施形態での基準ガス供給部19)を備え、前記処理部は、前記基準ガス供給部から前記燃焼機関に前記基準ガスを供給することによって前記基準データを作成又は較正してもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)によれば、流量センサ及び燃焼機関の稼働状態の情報を検出する検出部等の汎用のセンサと基準データとによってバイオガス中のメタンガスの濃度を取得する処理部を備えることによって、バイオガスシステム10の構成に要する費用が嵩むことを抑制しながらメタンガスの濃度を適正に検知することができる。
【0010】
上記(2)の場合、燃焼機関のみの稼働状態の情報に加えて発電機の発電電力に応じてメタンガスの濃度を検知することによって、検知精度を向上させることができる。
【0011】
上記(3)の場合、基準ガスを供給する基準ガス供給部を備えることによって、例えば燃焼機関の劣化度合い及び不具合の発生有無等を監視することができ、システムの保全及び故障診断等での保守容易性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態でのバイオガスシステムの構成図。
図2】本発明の実施形態でのバイオガスシステムの基準データの例を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るバイオガスシステム10について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態でのバイオガスシステム10の構成図である。
図1に示すように、実施形態によるバイオガスシステム10は、例えば、発酵槽11と、貯留槽13と、燃焼機関15と、発電機17と、基準ガス供給部19と、第1開閉弁21a及び第2開閉弁21bと、流量センサ23と、各種センサ25と、制御装置27と、を備える。
【0014】
発酵槽11は、例えば有機性の廃棄物等のバイオマス原料を含む発酵液を微生物の存在下で貯蔵する。発酵槽11は、バイオマス原料をメタン発酵させることによってメタンガスを主成分とするバイオガスを生成する。発酵槽11は、例えば、第1ガス配管29aによって貯留槽13に接続されている。発酵槽11で生成されたバイオガスは貯留槽13に向かって排出され、バイオマス原料からバイオガスを発生させた後に生じる発酵残渣(例えば、消化液及び残留固形物等)は外部の処理設備等に向かって排出される。
発酵槽11と貯留槽13との間には、例えば、バイオガスからケイ素化合物及び硫黄化合物等の不要な物質を除去する精製装置が配置されてもよい。
【0015】
貯留槽13は、発酵槽11で生成されたバイオガスを貯留する。貯留槽13は、例えば、バイオガスを貯蔵するガスバック又はガスホルダー等を備える。発酵槽11は、例えば、第2ガス配管29bによって燃焼機関15に接続されている。貯留槽13は、バイオガスを燃料として燃焼機関15に供給する。
【0016】
燃焼機関15は、例えば、ガスエンジン又はガスタービン等の内燃機関を備える。燃焼機関15は、1つ以上の内燃機関を備える。
発電機17は、例えば、内燃機関の動力によって回転駆動されることによって発電する回転電機である。発電機17の数は、内燃機関の数と同一である。各発電機17の回転軸は、各内燃機関の出力軸に連結されている。
【0017】
基準ガス供給部19は、所定濃度のメタンガスを含む基準ガスを燃料として燃焼機関15に供給する。基準ガス供給部19は、例えば、バイオガスを貯蔵するガスバック又はガスホルダー等を備える。基準ガス供給部19は、例えば、第3ガス配管29cによって第2ガス配管29bに接続されている。
【0018】
第1開閉弁21a及び第2開閉弁21bの各々は、例えば、電磁弁、電動弁又は空気式弁等であって、制御装置27によって開閉及び開度等が制御される。なお、第1開閉弁21a及び第2開閉弁21bの各々は、操作者によって操作される手動バルブであってもよい。
第1開閉弁21aは、第2ガス配管29bでの貯留槽13と第3ガス配管29cの合流部との間に配置されている。第2開閉弁21bは、第3ガス配管29cに配置されている。第1開閉弁21a及び第2開閉弁21bは、例えば、互いの開閉状態が異なる(反転する)ように設定される。第1開閉弁21aが開及び第2開閉弁21bが閉に設定される状態は、貯留槽13から燃焼機関15にバイオガスが供給される状態である。第1開閉弁21aが閉及び第2開閉弁21bが開に設定される状態は、基準ガス供給部19から燃焼機関15に基準ガスが供給される状態である。
【0019】
流量センサ23は、第2ガス配管29bでの第3ガス配管29cの合流部と燃焼機関15との間に配置されている。流量センサ23は、例えば、貯留槽13から燃焼機関15に供給されるバイオガスの流量及び基準ガス供給部19から燃焼機関15に供給される基準ガスの流量の各々を検出し、各流量(ガス流量)の検出値の信号を出力する。
【0020】
各種センサ25は、燃焼機関15の稼働状態を示す各種情報及び発電機17の発電電力に関する情報の各々を検出する複数の異なるセンサを備える。複数の異なるセンサは、例えば、燃焼機関15の出力軸の回転数N、燃焼機関15のスロットルバルブの開度TH、燃焼機関15の吸入圧力PB、内燃機関の潤滑油の温度(オイル温度)T及び発電機17の発電電力Pの各々を検出する複数のセンサである。
【0021】
制御装置27は、例えば、バイオガスシステム10の全体を統合的に制御する。制御装置27は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPU等のプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマー等の電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。なお、制御装置27の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路であってもよい。
【0022】
制御装置27は、例えば、貯留槽13から燃焼機関15に供給されるバイオガスの流量(ガス流量)Fと、燃焼機関15の稼働状態を示す各種情報及び発電機17の発電電力に関する情報と、バイオガス中のメタンガスの濃度(メタン濃度)Cとの対応関係を示す基準データを記憶している。基準データは、例えば、基準ガス供給部19から燃焼機関15に供給される基準ガスによって実施される試験によって作成及び較正される。例えば、基準データは、適宜の燃焼機関15及び発電機17の組み合わせに対して得られるモデルデータを、基準ガスを用いた試験によって得られるデータによって補正して作成されることで、実際のバイオガスシステム10での燃焼機関15及び発電機17の組み合わせの個体差が反映される。例えば、基準データは、適宜のタイミングで繰り返し実施される基準ガスを用いた試験によって得られるデータで較正される。
【0023】
図2は、実施形態でのバイオガスシステム10の基準データの例を示すグラフ図である。
図2に示すように、基準データは、例えば、互いに関連する6つのマップデータを備える。第1マップデータ(A)は、吸入圧力PB及びオイル温度Tが所定に固定された状態での回転数N、発電電力P及びメタン濃度Cの対応関係を示す。第1マップデータ(A)では、複数の異なるメタン濃度C(例えば、3つの濃度C11,C12,C13)の各々で回転数Nの増大に伴い発電電力Pは増大傾向に変化する。
第2マップデータ(B)は、メタン濃度C及びオイル温度Tが所定に固定された状態での回転数N、発電電力P及び吸入圧力PBの対応関係を示す。第2マップデータ(B)では、複数の異なる吸入圧力PB(例えば、3つの吸入圧力PB1,PB2,PB3)の各々で回転数Nの増大に伴い発電電力Pは増大傾向に変化する。
【0024】
第3マップデータ(C)は、吸入圧力PB及びメタン濃度Cが所定に固定された状態でのオイル温度T、発電電力P及び回転数Nの対応関係を示す。第3マップデータ(C)では、複数の異なる回転数N(例えば、3つの回転数N11,N12,N13)の各々でオイル温度Tの増大に伴い発電電力Pは増大傾向に変化する。
第4マップデータ(D)は、吸入圧力PB、オイル温度T及び回転数Nが所定に固定された状態でのガス流量F、発電電力P及びメタン濃度Cの対応関係を示す。第4マップデータ(D)では、複数の異なるメタン濃度C(例えば、3つの濃度C21,C22,C23)の各々でガス流量Fの増大に伴い発電電力Pは適宜の極大となるように変化する。
【0025】
第5マップデータ(E)は、オイル温度T及び回転数Nが所定に固定された状態での吸入圧力PB、発電電力P及びメタン濃度Cの対応関係を示す。第5マップデータ(E)では、複数の異なるメタン濃度C(例えば、3つの濃度C31,C32,C33)の各々で吸入圧力PBの増大に伴い発電電力Pは低下傾向に変化する。
第6マップデータ(F)は、オイル温度T及び吸入圧力PBが所定に固定された状態でのメタン濃度C、発電電力P及び回転数Nの対応関係を示す。第6マップデータ(F)では、複数の異なる回転数N(例えば、3つの回転数N21,N22,N23)の各々でメタン濃度Cの増大に伴い発電電力Pは増大傾向に変化する。
【0026】
制御装置27は、流量センサ23及び各種センサ25から出力される各検出値の信号に応じて基準データを参照することによって、貯留槽13から燃焼機関15に供給されるバイオガス中のメタンガスの濃度を取得する。
【0027】
上述したように、実施形態のバイオガスシステム10では、流量センサ23及び各種センサ25等の汎用のセンサと基準データとによってバイオガス中のメタンガスの濃度を取得する制御装置27を備えることによって、バイオガスシステム10の構成に要する費用が嵩むことを抑制しながらメタンガスの濃度を適正に検知することができる。
制御装置27は、燃焼機関15の吸入圧力PB、オイル温度T及び回転数N等の情報に加えて発電機17の発電電力Pに応じてメタンガスの濃度を検知することによって、検知精度を向上させることができる。
【0028】
基準ガスを供給する基準ガス供給部19を備えることによって、例えば燃焼機関15及び発電機17の劣化度合い及び不具合の発生有無等を監視することができ、バイオガスシステム10の保全及び故障診断等での保守容易性を向上させることができる。
【0029】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、燃焼機関15は、内燃機関を備えるとしたが、これに限定されず、ボイラー等を備えてもよい。
【0030】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
10…バイオガスシステム、11…発酵槽、13…貯留槽、15…燃焼機関、17…発電機、19…基準ガス供給部、23…流量センサ、25…各種センサ(検出部)、27…制御装置(処理部)。
図1
図2