(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178480
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/248 20160101AFI20221125BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221125BHJP
【FI】
H01M8/248
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085318
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】森川 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 俊輔
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126BB06
5H126EE11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組み立てが簡単な押圧構造を有する燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック10の環状のバンド14は、スタック本体12の外周を、積層方向を含む囲み方向に囲んで、エンドプレート22a、22b間に積層方向の締め付け荷重を付与する。荷重調整部16は、バンド14の当接周面74に当接する荷重調整面90を有する。荷重調整部16は、荷重調整面90を介してバンド14を押圧方向に押圧することで締め付け荷重を調整する。押圧方向は、当接周面74がスタック本体12に対して接近又は離間する方向である。荷重調整面90は、該荷重調整面90が当接することで湾曲する当接周面74に包絡面を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜・電極構造体及びセパレータを有する発電セルを積層方向に複数積層した積層体を、前記積層方向の両側からエンドプレートで挟んだスタック本体を備える燃料電池スタックであって、
前記スタック本体の外周を、前記積層方向を含む囲み方向に囲んで、前記エンドプレート間に前記積層方向の締め付け荷重を付与する環状のバンドと、
前記締め付け荷重の大きさを調整する荷重調整部と、
を備え、
前記バンドは、当接周面を有し、
前記荷重調整部は、前記当接周面に当接する荷重調整面を有し、
前記荷重調整部は、前記荷重調整面を介して前記バンドを押圧方向に押圧することで前記締め付け荷重を調整し、
前記押圧方向は、前記当接周面が前記スタック本体に対して接近又は離間する方向であり、
前記荷重調整面は、該荷重調整面が当接することで湾曲する前記当接周面に包絡面を形成する、燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、
前記荷重調整面及び該荷重調整面が当接した前記当接周面は、前記押圧方向に沿った断面がクロソイド曲線を形成する、燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、
前記押圧方向は、前記積層方向に沿って前記当接周面が前記スタック本体に接近する方向であり、
前記エンドプレートは、バンド懸架面を有し、
前記バンドの内周面は、プレート対向面を有し、
前記バンド懸架面と前記プレート対向面とは、前記押圧方向に向き合い、
前記プレート対向面の裏面は、前記当接周面を有し、
前記バンド懸架面は、前記荷重調整面に押圧された前記当接周面が進入可能な凹部を有する、燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池スタックにおいて、
前記荷重調整部は、前記当接周面に当接させた前記荷重調整面と、前記凹部の内底面との距離を調整可能に前記荷重調整面及び前記内底面の相対位置を固定する固定機構を有する、燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、
前記押圧方向は、直交径方向に沿って前記当接周面が前記スタック本体に接近する方向であり、
前記直交径方向は、前記積層方向に直交する前記バンドの径方向であり、
前記積層体の側面は、包囲側面を有し、
前記バンドの内周面は、積層体対向面を有し、
前記包囲側面と前記積層体対向面とは、前記押圧方向に向き合い、
前記積層体対向面の裏面は、前記当接周面を有し、
前記押圧方向に沿った前記積層体の長さは、前記押圧方向に沿った前記エンドプレートの長さよりも短く、
前記エンドプレートと、前記包囲側面とは、前記荷重調整面に押圧された前記当接周面が進入可能な進入空間を形成する、燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池スタックにおいて、
前記当接周面は、前記直交径方向の両端側の前記積層体対向面の裏面にそれぞれ設けられ、
前記荷重調整部は、一組の前記荷重調整面を有し、
一方の前記荷重調整面と他方の前記荷重調整面との間に、前記積層体及び前記バンドが配置される、燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池スタックにおいて、
前記荷重調整部は、
一組の前記荷重調整面の一方を有する第1調整部本体と、
一組の前記荷重調整面の他方を有する第2調整部本体と、
前記第1調整部本体及び前記第2調整部本体の相対位置を固定する固定機構と、
を有し、
前記固定機構は、前記第1調整部本体の前記荷重調整面と前記第2調整部本体の前記荷重調整面との相対距離を調整可能である、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料電池は、燃料電池スタックの形態で用いられる。燃料電池スタックは、発電セル(単位燃料電池)を複数積層した積層体と、該積層体の積層方向の両端側に配設したエンドプレートと、を備える。この種の燃料電池スタックでは、積層体を構成する各発電セルに適切な大きさの面圧を生じさせること等を目的として、エンドプレート間に締め付け荷重(圧縮荷重)を付与している。例えば、特許文献1には、積層体及びエンドプレートの外周を積層方向に囲み、エンドプレート間に締め付け荷重を付与する弾性ゴムベルトを備える燃料電池スタックが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の燃料電池スタックの組み立て工程では、積層体をエンドプレートで挟んでスタック本体を形成する。そして、スタック本体の外周を囲むように、スタック本体に弾性ゴムベルトを取り付ける。これによってスタック本体に弾性ゴムベルトの締め付け力が付与されることで、エンドプレート間に締め付け荷重が付与される。つまり、バンドとスタック本体との関係のみによって締め付け荷重の大きさが決定される。このため、上記の燃料電池スタックでは、弾性ゴムベルトがスタック本体に取り付けられた際に、締め付け荷重が適切な大きさとなるように、弾性ゴムベルトの内周の長さが厳密に設定される。この場合、スタック本体に取り付けられる前の弾性ゴムベルトの内周の長さは、囲み方向におけるスタック本体の外周の長さよりも短くなる。
【0005】
従って、燃料電池スタックの組み立て時には、スタック本体を積層方向に大きく圧縮変形させたり、弾性ゴムベルトをその内径が拡張するように大きく弾性変形させたりした状態で、弾性ゴムベルトがスタック本体に取り付けられる。その結果、燃料電池スタックの組み立て工程が煩雑になる懸念がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、電解質膜・電極構造体及びセパレータを有する発電セルを積層方向に複数積層した積層体を、前記積層方向の両側からエンドプレートで挟んだスタック本体を備える燃料電池スタックであって、前記スタック本体の外周を、前記積層方向を含む囲み方向に囲んで、前記エンドプレート間に前記積層方向の締め付け荷重を付与する環状のバンドと、前記締め付け荷重の大きさを調整する荷重調整部と、を備える。前記バンドは、当接周面を有し、前記荷重調整部は、前記当接周面に当接する荷重調整面を有する。前記荷重調整部は、前記荷重調整面を介して前記バンドを押圧方向に押圧することで前記締め付け荷重を調整する。前記押圧方向は、前記当接周面が前記スタック本体に対して接近又は離間する方向である。前記荷重調整面は、該荷重調整面が当接することで湾曲する前記当接周面に包絡面を形成する。
【発明の効果】
【0008】
この燃料電池スタックでは、バンドの当接周面に、荷重調整部の荷重調整面を当接させて押圧方向に押圧することで、締め付け荷重の大きさを調整できる。つまり、バンドの内周の長さ等を厳密に設定する工程を不要にしても、エンドプレート間に適切な大きさの締め付け荷重を付与できる。
【0009】
従って、例えば、バンドとスタック本体との関係のみによって締め付け荷重の大きさが決定される場合に比して、エンドプレート間に適切な大きさの締め付け荷重を容易に付与できる。また、バンドの内周の長さ等の設計自由度を高めることができる分、スタック本体にバンドを容易に取り付けることが可能になる。つまり、スタック本体にバンドを取り付ける際、スタック本体を積層方向に大きく圧縮変形させたり、バンドをその内径が拡張する方向に大きく弾性変形させたりすることを回避できる。その結果、燃料電池スタックの組み立て工程を簡単にすることができる。
【0010】
さらに、荷重調整面は、該荷重調整面が当接することで湾曲するバンドの当接周面に包絡面を形成する。このため、荷重調整面を当接周面に当接させてバンドを押圧しても、当接周面に加えられる面圧を良好に分散させること等が可能になる。これによって、バンドの耐久性を維持しつつ、スタック本体に適切な大きさの締め付け荷重を容易に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る燃料電池スタックの斜視図である。
【
図4】セパレータにおける第1バイポーラプレートのMEA側面の説明図である。
【
図5】変形例に係る荷重調整部を備える燃料電池スタックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
図1及び
図2に示す本実施形態に係る燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車等の燃料電池車両に搭載される。なお、燃料電池スタック10は、燃料電池車両以外の搭載体に搭載されてもよいし、定置型として用いることも可能である。
【0014】
燃料電池スタック10は、スタック本体12と、バンド14と、荷重調整部16と、を備える。スタック本体12は、複数の発電セル18を積層方向に積層した積層体20と、該積層体20を積層方向の両側から挟むエンドプレート22a、22bとを有する。また、スタック本体12は、積層体20とエンドプレート22aとの間に配置されるターミナルプレート24a及びインシュレータ26aをさらに有する。スタック本体12は、積層体20とエンドプレート22bとの間に配置されるターミナルプレート24b及びインシュレータ26bをさらに有する。
【0015】
具体的には、スタック本体12では、積層体20の積層方向の一端部(矢印A1方向の端部)に、ターミナルプレート24a、インシュレータ26a及びエンドプレート22aが外方に向かってこの順に配設されている。また、スタック本体12では、積層体20の積層方向の他端部(矢印A2方向の端部)に、ターミナルプレート24b、インシュレータ26b及びエンドプレート22bが外方に向かってこの順に配設されている。
【0016】
インシュレータ26a、26bは、例えば、ポリカーボネート(PC)又はフェノール樹脂等の絶縁性材料から形成される。なお、インシュレータ26a、26bのそれぞれは、積層方向に重ね合わされた複数枚(例えば、2枚)から構成してもよい。また、不図示ではあるが、インシュレータ26a、26bの各々の積層体20に向く面には、積層体20から離間する側に陥没する陥没部が形成されてもよい。この場合、インシュレータ26a、26bの陥没部内にターミナルプレート24a、24bがそれぞれ配設される。
【0017】
積層体20の矢印C方向の長さは、エンドプレート22a、22bの矢印C方向の長さよりも短い。このため、スタック本体12では、矢印C方向において、エンドプレート22a、22bの端部が積層体20より外方に突出している。
図2に示すように、エンドプレート22a、22bの各々は、積層体20に向く内面と、該内面の裏面である外面とを有する。エンドプレート22a、22bの各々の外面は、バンド懸架面28を有している。
図1に示すように、バンド懸架面28は、上記外面の矢印B方向の略中央を、矢印C方向の一端から他端にわたって延在する。
図2に示すように、バンド懸架面28の矢印C方向の略中央には、積層体20に向かって陥没する凹部30が設けられている。つまり、バンド懸架面28の矢印C方向の両端側には、凹部30に対して相対的に突出する凸部32がそれぞれ設けられている。バンド懸架面28及び凹部30の詳細については後述する。
【0018】
図3に示すように、発電セル18は、樹脂枠付きMEA34と、該樹脂枠付きMEA34を挟持する一組のセパレータ36とを有する。樹脂枠付きMEA34は、電解質膜・電極構造体(MEA)38の外周を樹脂枠部材40によって囲むことで構成されている。電解質膜・電極構造体38は、電解質膜42と、該電解質膜42の一方(矢印A2側)の面に設けられたアノード電極44と、電解質膜42の他方(矢印A1側)の面に設けられたカソード電極46とを有する。
【0019】
電解質膜42は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜等の固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。電解質膜42は、アノード電極44及びカソード電極46によって挟持される。なお、電解質膜42は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することもできる。
【0020】
アノード電極44は、何れも不図示のアノード電極触媒層及びアノードガス拡散層を有する。アノード電極触媒層は、電解質膜42の一方(矢印A2側)の面に接合される。アノードガス拡散層は、アノード電極触媒層に積層される。カソード電極46は、何れも不図示のカソード電極触媒層及びカソードガス拡散層を有する。カソード電極触媒層は、電解質膜42の他方(矢印A1側)の面に接合される。カソードガス拡散層は、カソード電極触媒層に積層される。
【0021】
例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともにアノードガス拡散層の表面に一様に塗布される。これにより、アノード電極触媒層が形成される。例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともにカソードガス拡散層の表面に一様に塗布される。これにより、カソード電極触媒層が形成される。
【0022】
カソードガス拡散層及びアノードガス拡散層の各々は、カーボンペーパ又はカーボンクロス等の導電性多孔質シートから形成される。カソード電極触媒層とカソードガス拡散層との間、及びアノード電極触媒層とアノードガス拡散層との間の少なくとも一方に、多孔質層(不図示)を設けてもよい。
【0023】
樹脂枠部材40は、額縁状である。例えば、樹脂枠部材40の内周端縁部が、電解質膜・電極構造体38の外周縁部に接合されている。このように電解質膜・電極構造体38の外周に樹脂枠部材40が設けられる。このため、1枚の発電セル18を構成するために必要とされる電解質膜42の面積を小さくすること等が可能になる。よって、比較的高額な電解質膜42の使用量を少なくすることができる。
【0024】
樹脂枠部材40と電解質膜・電極構造体38との接合構造は特に限定されない。例えば、カソードガス拡散層の外周端縁部とアノードガス拡散層の外周端縁部との間に樹脂枠部材40の内周端縁部が挟持されてもよい。この場合、樹脂枠部材40の内周端面は、電解質膜42の外周端面に近接してもよいし、当接してもよいし、重なってもよい。
【0025】
上記の接合構造に代えて、電解質膜42の外周縁部をカソードガス拡散層及びアノードガス拡散層よりも外方に突出させることにより、且つ該電解質膜42の外周縁部の両側に枠形状のフィルムを設けることにより、樹脂枠部材40を構成してもよい。すなわち、積層された複数枚の枠状のフィルムが接着剤等により接合されることで、樹脂枠部材40が構成されてもよい。
【0026】
発電セル18(
図3)及びインシュレータ26a、26b(
図1)の各々の矢印B1側の縁部には、酸化剤ガス入口連通孔48aと、冷却媒体入口連通孔50aと、燃料ガス出口連通孔52bとが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔48aと、冷却媒体入口連通孔50aと、燃料ガス出口連通孔52bとは、矢印C方向に配列されている。発電セル18及びインシュレータ26a、26bの各々の矢印B2側の縁部には、燃料ガス入口連通孔52aと、冷却媒体出口連通孔50bと、酸化剤ガス出口連通孔48bとが設けられる。燃料ガス入口連通孔52aと、冷却媒体出口連通孔50bと、酸化剤ガス出口連通孔48bとは、矢印C方向に配列されている。
【0027】
積層体20における各発電セル18に設けられた酸化剤ガス入口連通孔48aは、積層方向に互いに連通する。つまり、酸化剤ガス入口連通孔48aは、インシュレータ26a、26b、積層体20を積層方向に貫通する。同様に、冷却媒体入口連通孔50a、燃料ガス出口連通孔52b、燃料ガス入口連通孔52a、冷却媒体出口連通孔50b、酸化剤ガス出口連通孔48bのそれぞれも、インシュレータ26a、26b、積層体20を積層方向に貫通する。
【0028】
本実施形態では、各発電セル18等に、酸化剤ガス入口連通孔48a、冷却媒体入口連通孔50a、燃料ガス出口連通孔52b、燃料ガス入口連通孔52a、冷却媒体出口連通孔50b、酸化剤ガス出口連通孔48b(以下、これらを総称して単に「連通孔」ともいう)がそれぞれ1個ずつ設けられている例を示す。しかしながら、各発電セル18に設けられる各連通孔の個数は特に限定されず、単数でもよく、複数でもよい。また、各連通孔の形状及び配置も、
図1及び
図2に記載の本実施形態には限定されず、要求される仕様に応じて適宜設定することができる。
【0029】
図1に示すように、エンドプレート22a、22bの矢印B1側の各々の縁部には、酸化剤ガス入口154aと、冷却媒体入口156aと、燃料ガス出口158bとが、矢印C方向に沿って設けられる。酸化剤ガス入口154aは、酸化剤ガス入口連通孔48aに連通する。冷却媒体入口156aは、冷却媒体入口連通孔50aに連通する。燃料ガス出口158bは、燃料ガス出口連通孔52bに連通する。エンドプレート22a、22bの各々の矢印B2側の縁部には、燃料ガス入口158aと、冷却媒体出口156bと、酸化剤ガス出口154bとが矢印C方向に沿って設けられる。燃料ガス入口158aは、燃料ガス入口連通孔52aに連通する。冷却媒体出口156bは、冷却媒体出口連通孔50bに連通する。酸化剤ガス出口154bは、酸化剤ガス出口連通孔48bに連通する。
【0030】
なお、エンドプレート22a、22bの各々において、バンド懸架面28は、矢印B1側に設けられた酸化剤ガス入口154a、冷却媒体入口156a及び燃料ガス出口158bと、矢印B2側に設けられた燃料ガス入口158a、冷却媒体出口156b及び酸化剤ガス出口154bとの間に設けられている。
【0031】
図3に示すように、酸化剤ガス入口連通孔48aには、酸化剤ガス入口154aを介して、例えば、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。冷却媒体入口連通孔50aは、冷却媒体入口156aを介して、例えば、純水、エチレングリコール、オイル等の少なくとも何れかが冷却媒体として供給される。燃料ガス出口連通孔52bからは、燃料ガス出口158bを介して、例えば、水素含有ガス等の燃料ガスが排出される。燃料ガス入口連通孔52aには、燃料ガス入口158aを介して、燃料ガスが供給される。冷却媒体出口連通孔50bからは、冷却媒体出口156bを介して、冷却媒体が排出される。酸化剤ガス出口連通孔48bからは、酸化剤ガス出口154bを介して、酸化剤ガスが排出される。
【0032】
セパレータ36は、矢印C方向の両側の一組の長辺と、矢印B方向の両側の一組の短辺とを有する矩形状である。セパレータ36は、互いに積層された第1バイポーラプレート56及び第2バイポーラプレート58を有する。積層した第1バイポーラプレート56及び第2バイポーラプレート58の外周は、溶接、ろう付け、かしめ等により一体に接合されている。第1バイポーラプレート56及び第2バイポーラプレート58の各々は、金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。金属薄板としては、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、チタン板、又はこれらのいずれかの金属表面に防食用の表面処理を施した薄板が挙げられる。
【0033】
また、セパレータ36は、第1バイポーラプレート56及び第2バイポーラプレート58を接合して構成されるものに限定されない。セパレータ36は、1枚の金属プレート(バイポーラプレート)から構成されてもよい。セパレータ36の外縁には、絶縁性樹脂材料が設けられてもよい。
【0034】
第1バイポーラプレート56及び第2バイポーラプレート58は、セパレータ36として積層体20に組み込まれている。第1バイポーラプレート56は、樹脂枠付きMEA34に向かう面であるMEA側面56aと、その裏面である冷媒側面56bとを有する。第2バイポーラプレート58は、樹脂枠付きMEA34に向かう面であるMEA側面58aと、その裏面である冷媒側面58bとを有する。
【0035】
図4に示すように、第1バイポーラプレート56のMEA側面56aには、矢印B方向に直線状に延在する複数本の突条部が設けられている。これらの突条部同士の間に直線状の複数の溝が形成されている。当該複数の溝は、酸化剤ガス流路60を構成する。なお、各突条部及び各溝は波状であってもよい。酸化剤ガス流路60は、酸化剤ガス入口連通孔48a及び酸化剤ガス出口連通孔48bに流体的に連通することで、セパレータ36の面方向(矢印B、C方向)に酸化剤ガスを流通させる。
【0036】
また、第1バイポーラプレート56のMEA側面56aには、メタルビードシール62aが一体に設けられている。メタルビードシール62aは、樹脂枠付きMEA34(
図2)に向かって突出する。メタルビードシール62aは、例えば、プレス成形によりに設けられている。MEA側面56aにはメタルビードシール62aに代えて、ゴム等の弾性材料からなる凸状弾性シールが設けられてもよい。
【0037】
第1バイポーラプレート56のメタルビードシール62aは、酸化剤ガス流路60、酸化剤ガス入口連通孔48a及び酸化剤ガス出口連通孔48bを互いに連通させる。メタルビードシール62aは、酸化剤ガス流路60及び連通孔48a、48bの外側を一体に囲む。また、メタルビードシール62aは、燃料ガス入口連通孔52a、燃料ガス出口連通孔52b、冷却媒体入口連通孔50a及び冷却媒体出口連通孔50bの各々を囲む。メタルビードシール62aは、酸化剤ガス流路60への燃料ガス又は冷媒媒体の流入を防止する。
【0038】
図3に示すように、第2バイポーラプレート58のMEA側面58aには、矢印B方向に直線状に延在する複数本の突条部が設けられている。これらの突条部同士の間に直線状の複数の溝が形成されている。当該複数の溝は、燃料ガス流路64を構成する。なお、各突条部及び各溝は波状であってもよい。燃料ガス流路64は、燃料ガス入口連通孔52a及び燃料ガス出口連通孔52bに流体的に連通することで、セパレータ36の面方向(矢印B、C方向)に燃料ガスを流通させる。
【0039】
また、第2バイポーラプレート58のMEA側面58aには、メタルビードシール62bが一体に設けられている。メタルビードシール62bは、樹脂枠付きMEA34に向かって突出する。メタルビードシール62bは、例えば、プレス成形により設けられている。MEA側面58aには、メタルビードシール62bに代えて、ゴム等の弾性材料からなる凸状弾性シールが設けられてもよい。
【0040】
第2バイポーラプレート58のメタルビードシール62bは、燃料ガス流路64、燃料ガス入口連通孔52a及び燃料ガス出口連通孔52bのそれぞれを互いに連通させる。メタルビードシール62bは、燃料ガス流路64及び連通孔52a、52bの外側を一体に囲む。また、メタルビードシール62bは、酸化剤ガス入口連通孔48a、酸化剤ガス出口連通孔48b、冷却媒体入口連通孔50a及び各冷却媒体出口連通孔50bの各々を囲む。メタルビードシール62bは、燃料ガス流路64への酸化剤ガス又は冷却媒体の流入を防止する。
【0041】
互いに接合される第1バイポーラプレート56の冷媒側面56bと第2バイポーラプレート58の冷媒側面58bとの間には、冷却媒体流路66が設けられる。冷却媒体流路66は、冷却媒体をセパレータ36の面方向(矢印B、C方向)に流通させるべく、冷却媒体入口連通孔50aと冷却媒体出口連通孔50bとに流体的に連通する。
【0042】
冷却媒体流路66は、第1バイポーラプレート56における酸化剤ガス流路60の裏面形状と、第2バイポーラプレート58における燃料ガス流路64の裏面形状とが重なり合って形成される。また、互いに向かい合う第1バイポーラプレート56及び第2バイポーラプレート58の冷媒側面56b、58bにおいて、第1バイポーラプレート56の連通孔の周囲と、第2バイポーラプレート58の連通孔の周囲とは、互いに溶接、ろう付け等によって接合されている。
【0043】
図1に示すように、バンド14は、スタック本体12の外周を、積層方向(矢印A方向)を含む囲み方向に囲んで、エンドプレート22a、22b間に積層方向の締め付け荷重を付与する。本実施形態では、囲み方向は、エンドプレート22a、22bのバンド懸架面28を矢印C方向に沿う方向と、積層体20の包囲側面68を積層方向に沿う方向とを有する。包囲側面68は、積層体20の矢印C方向両端の側面(
図1及び
図2では、上面及び下面)にそれぞれ設けられている。本実施形態では、一方の包囲側面68は、積層体20の上面の矢印B方向の略中央に位置し、矢印A方向に沿って延在する。他方の包囲側面68は、積層体20の下面の矢印B方向の略中央に位置し、矢印A方向に沿って延在する。
【0044】
バンド14は、例えば、ゴム等の弾性を有する材料から構成されている。また、バンド14は、繋ぎ目のない環状に形成されている。本実施形態に係る燃料電池スタック10は、矢印B方向を幅方向とする帯状の1個のバンド14を備える。しかしながら、燃料電池スタック10が備えるバンド14の個数は1個に限定されるものではなく、複数個であってもよい。燃料電池スタック10が複数のバンド14を備える場合、例えば、複数のバンド14は、矢印B方向に間隔を置いて並列するようにスタック本体12に配置されてもよい。
【0045】
図2に示すように、バンド14の内周面は、一対のプレート対向面70と、一対の積層体対向面72と、を有している。各積層体対向面72は、積層体20の包囲側面68を矢印C方向に向く。一方のプレート対向面70は、エンドプレート22aのバンド懸架面28を積層方向に向く。他方のプレート対向面70は、エンドプレート22bのバンド懸架面28を積層方向に向く。この際、エンドプレート22a、22bの各々において、プレート対向面70の矢印C方向の両端部は、一方の凸部32と他方の凸部32とにそれぞれ接触する。また、エンドプレート22a、22bの各々において、プレート対向面70の矢印C方向の中央部は、凹部30の内底面30aに向く。バンド14は、プレート対向面70の矢印C方向の中央部の裏面に、当接周面74を有する。つまり、当接周面74は、バンド14の外周面に設けられる。
【0046】
図1に示すように、本実施形態では、凹部30の矢印B方向の長さは、バンド14の幅よりも大きい。このため、凹部30の内底面30aは、矢印A方向にバンド14と対向しない非対向部76を有する。非対向部76は、凹部30の矢印B方向の両端部の各々に設けられている。また、
図2に示すように、各非対向部76には、ねじ穴78が設けられている。ねじ穴78は、後述するボルト80とともに固定機構82を構成する。
【0047】
凸部32は、バンド14の内周面と接触する角部32aを有している。これらの角部32aは、角丸(弧状)に形成されていることが好ましい。一層好ましくは、凸部32の角部32aに接触したバンド14の内周面が、矢印B方向視でクロソイド曲線を描くように、凸部32の角部32aの形状が設定される。この場合、バンド14に応力集中が生じることを抑制でき、バンド14の周方向にかかる張力の均等化を図ること等が可能になる。ひいては、バンド14の耐久性を向上させることが可能になる。
【0048】
荷重調整部16は、エンドプレート22a、22bの間に付与される締め付け荷重の大きさを調整する。具体的には、荷重調整部16は、調整部本体84と、該調整部本体84をエンドプレート22a、22bに固定する固定機構82と、を有する。本実施形態では、調整部本体84は、第1調整部本体86aと、第1固定機構88aと、第2調整部本体86bと、第2固定機構88bとを有する。第1調整部本体86aは、第1固定機構88aにより、エンドプレート22aに固定される。第2調整部本体86bは、第2固定機構88bにより、エンドプレート22bに固定される。
【0049】
第1調整部本体86aと、第2調整部本体86bとは、矢印A方向に互いに逆向きであることを除いて略同様に構成することができる。第1固定機構88aと、第2固定機構88bとは、矢印A方向に互いに逆向きであることを除いて略同様に構成することができる。以下では、第1調整部本体86a及び第2調整部本体86bを特に区別しない場合等には、これらを総称して調整部本体84ともいう。また、第1固定機構88a及び第2固定機構88bを特に区別しない場合等には、これらを総称して固定機構82ともいう。
【0050】
なお、荷重調整部16は、第1調整部本体86a及び第1固定機構88aのみを備え、第2調整部本体86b及び第2固定機構88bを備えていなくてもよい。また、荷重調整部16は、第2調整部本体86b及び第2固定機構88bのみを備え、第1調整部本体86a及び第1固定機構88aを備えていなくてもよい。
【0051】
調整部本体84は、バンド14の当接周面74に当接する荷重調整面90を有する。
図2に示すように、矢印B方向視において、調整部本体84の荷重調整面90は、エンドプレート22a、22bの各々の凹部30の内底面30aに向かって膨出するように湾曲する。具体的には、荷重調整面90は、該荷重調整面90が当接することで湾曲するバンド14の当接周面74に包絡面を形成する。つまり、荷重調整面90は、包絡線形状を有する。また、荷重調整面90及び該荷重調整面90が当接した当接周面74は、矢印A方向(後述する押圧方向)に沿った断面がクロソイド曲線を形成することが好ましい。
【0052】
図1に示すように、調整部本体84の矢印B方向の長さは、バンド14の幅よりも大きく、凹部30の矢印B方向の長さ以下となっている。つまり、調整部本体84は、凹部30の非対向部76を向く固定部分92を有する。固定部分92は、調整部本体84の矢印B方向の両端部の各々に設けられている。また、各固定部分92には、ボルト80を挿通することが可能な挿通孔94(
図2)が設けられている。
【0053】
固定機構82は、ねじ穴78と、挿通孔94と、ボルト80と、を含む。上記の通り、ねじ穴78は、エンドプレート22a、22bの各々の非対向部76に設けられている。ねじ穴78には、ボルト80の雄ねじと螺合する雌ねじが形成されている。挿通孔94は、調整部本体84に設けられている。調整部本体84の荷重調整面90は、バンド14の当接周面74に当接する。また、非対向部76のねじ穴78と調整部本体84の挿通孔94とは同軸に配置される。この状態で、挿通孔94にボルト80を挿通させて、ねじ穴78の雌ねじにボルト80の雄ねじを螺合させる。
【0054】
これにより、ボルト80の頭部96は、調整部本体84をバンド14の弾性力に抗して押圧方向に押圧する。本実施形態では、押圧方向は、積層方向に沿って当接周面74がスタック本体12(凹部30の内底面30a)に接近する方向である。つまり、第1調整部本体86a及び第1固定機構88aにおける押圧方向は、矢印A2方向である。第2調整部本体86b及び第2固定機構88bにおける押圧方向は、矢印A1方向である。
【0055】
その結果、調整部本体84は、バンド14を押圧方向に押圧した状態でエンドプレート22a、22bの各々に固定される。すなわち、バンド14の当接周面74に当接させた調整部本体84の荷重調整面90と、エンドプレート22a、22bの各々の凹部30の内底面30aとの相対位置が固定される。この際、荷重調整面90に押圧された当接周面74は、凹部30に進入可能となっている。
【0056】
固定機構82では、ねじ穴78に対するボルト80の螺合を進めるにつれて、ボルト80の頭部96を凹部30の内底面30a側に接近させることができる。このため、ねじ穴78とボルト80との螺合量を調整することにより、当接周面74に当接させた荷重調整面90と、凹部30の内底面30aとの距離を調整可能である。
【0057】
荷重調整部16では、上記のように、調整部本体84が、固定機構82によりエンドプレート22a、22bの各々に固定される。また、調整部本体84が、当接周面74に当接する荷重調整面90を介して、バンド14を押圧方向に押圧する。これにより、締め付け荷重を調整することができる。また、荷重調整部16では、例えば、ねじ穴78に対して螺合を進める方向にボルト80を回転させることで、締め付け荷重を大きくすることができる。一方、荷重調整部16では、例えば、ねじ穴78に対してボルト80の螺合を解除する方向にボルト80を回転させることで、締め付け荷重を小さくすることができる。
【0058】
以下、
図1~
図4を参照しつつ、燃料電池スタック10の動作について、簡単に説明する。燃料電池スタック10で発電を行う場合、燃料ガス入口連通孔52aに燃料ガスが供給され、酸化剤ガス入口連通孔48aに酸化剤ガスが供給され、冷却媒体入口連通孔50aに冷却媒体が供給される。
【0059】
図4に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔48aから酸化剤ガス流路60に導入される。この酸化剤ガスは、該酸化剤ガス流路60に沿って矢印B方向に移動しつつ、電解質膜・電極構造体38のカソード電極46に供給される。一方、燃料ガスは、
図3に示すように、燃料ガス入口連通孔52aから燃料ガス流路64に導入される。この燃料ガスは、該燃料ガス流路64に沿って矢印B方向に移動しつつ、電解質膜・電極構造体38のアノード電極44に供給される。
【0060】
従って、各電解質膜・電極構造体38では、酸化剤ガスと燃料ガスとが、カソード電極触媒層及びアノード電極触媒層内で電気化学反応により消費される。これにより、発電が行われる。
【0061】
電気化学反応で消費されなかった酸化剤ガス(酸化剤排ガス)は、酸化剤ガス流路60から酸化剤ガス出口連通孔48bへと流入する。この酸化剤排ガスは、該酸化剤ガス出口連通孔48bを矢印A方向に流れて燃料電池スタック10から排出される。同様に、電気化学反応で消費されなかった燃料ガス(燃料排ガス)は、燃料ガス流路64から燃料ガス出口連通孔52bへと流入する。この燃料排ガスは、燃料ガス出口連通孔52bを矢印A方向に流れて燃料電池スタック10から排出される。
【0062】
冷却媒体は、冷却媒体入口連通孔50aから冷却媒体流路66に導入される。この冷却媒体は、該冷却媒体流路66に沿って矢印B方向に移動しつつ、電解質膜・電極構造体38と熱交換する。熱交換後の冷却媒体は、冷却媒体出口連通孔50bに流入し、冷却媒体出口連通孔50bを矢印A方向に流れて燃料電池スタック10から排出される。
【0063】
以下、本実施形態に係る燃料電池スタック10の製造方法の一例を説明する。この燃料電池スタック10の製造方法では、先ず、エンドプレート22a、22b、ターミナルプレート24a、24b、インシュレータ26a、26b、及び複数の発電セル18を上記のように積層してスタック本体12を形成する。次に、スタック本体12の外周を囲み方向に沿ってバンド14が延在するように、スタック本体12にバンド14を取り付ける。次に、エンドプレート22a、22bの各々に固定機構82を取り付けることで、バンド14を介してエンドプレート22a、22b間に付与される締め付け荷重の大きさを調整する。すなわち、荷重調整部16の荷重調整面90を介してバンド14を押圧方向に押圧することで、締め付け荷重の大きさを調整する。その結果、エンドプレート22a、22b間に適切な大きさの締め付け荷重が付与される。これにより、積層体20を構成する各発電セル18に適切な大きさの面圧を生じさせた燃料電池スタック10が得られる。
【0064】
以上から、本実施形態に係る燃料電池スタック10では、バンド14の当接周面74に、荷重調整部16の荷重調整面90を当接させて、当接周面74を押圧方向に押圧する。これにより、締め付け荷重の大きさを調整できる。つまり、バンド14の内周の長さ等を厳密に設定する工程をなくしても、エンドプレート22a、22b間に適切な大きさの締め付け荷重を付与できる。
【0065】
従って、例えば、バンド14とスタック本体12との関係のみによって締め付け荷重の大きさが決定される場合に比して、エンドプレート22a、22b間に適切な大きさの締め付け荷重を容易に付与できる。また、バンド14の内周の長さ等の設計自由度を高めることができるため、スタック本体12にバンド14を容易に取り付けることが可能になる。つまり、例えば、スタック本体12の積層方向の外周の長さに対するバンド14の内周の長さの割合を比較的大きくする。これにより、スタック本体12にバンド14を取り付ける際に、スタック本体12が積層方向に大きく圧縮変形することを回避できる。また、スタック本体12にバンド14を取り付ける際に、バンド14の内径が拡張する方向へのバンド14の大きな弾性変形を回避できる。その結果、燃料電池スタック10の組み立て工程を簡単にすることができる。
【0066】
さらに、荷重調整面90は、該荷重調整面90が当接することで湾曲するバンド14の当接周面74に包絡面を形成する。このため、荷重調整面90を当接周面74に当接させてバンド14を押圧しても、当接周面74に加えられる面圧を良好に分散させること等が可能になる。これによって、バンド14の耐久性を維持しつつ、スタック本体12に適切な大きさの締め付け荷重を容易に付与することができる。
【0067】
ところで、燃料電池スタック10の使用時間の経過とともに、クリープによるバンド14の変形量が大きくなり、エンドプレート22a、22b間に付与される締め付け荷重が低減することがある。本実施形態に係る燃料電池スタック10では、荷重調整部16により、締め付け荷重を調整することができる。このため、バンド14が変形して締め付け荷重が小さくなった場合であっても、バンド14を交換することなく、荷重調整部16により、締め付け荷重を大きくすることができる。一方、例えば、バンド14とスタック本体12との関係のみによって締め付け荷重の大きさが決定される燃料電池スタック(不図示)を考える。このような燃料電池スタックでは、締め付け荷重が所定値よりも小さくなった場合に、変形したバンド14をスタック本体12から取り外し、新たなバンド14をスタック本体12に取り付けるといった煩雑な工程を要する。本実施形態に係る燃料電池スタック10によれば、このような煩雑な工程を省略することが可能になる。
【0068】
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10では、荷重調整面90及び荷重調整面90が当接した当接周面74は、押圧方向に沿った断面がクロソイド曲線を形成する。この場合、バンド14に応力集中が生じることを効果的に抑制できるため、バンド14の耐久性を一層良好に向上させることが可能になる。
【0069】
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10では、押圧方向は、積層方向に沿って当接周面74がスタック本体12に接近する方向である。エンドプレート22a、22bは、バンド懸架面28を有する。バンド14の内周面は、プレート対向面70を有する。バンド懸架面28とプレート対向面70とは、押圧方向に向き合う。プレート対向面70の裏面は、当接周面74を有する。バンド懸架面28は、荷重調整面90に押圧された当接周面74が進入可能な凹部30を有する。この場合、荷重調整面90を当接させた当接周面74を、エンドプレート22a、22bの各々の凹部30の内底面30aに向かって押圧する。このような簡単な構成によって、締め付け荷重の大きさを調整することが可能になる。
【0070】
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10では、荷重調整部16は、固定機構82を有する。固定機構82は、当接周面74に当接させた荷重調整面90と、凹部30の内底面30aとの距離を調整可能に荷重調整面90及び内底面30aの相対位置を固定する。この場合、固定機構82により、当接周面74に当接させた荷重調整面90と、凹部30の内底面30aとの距離を調整する。これにより、締め付け荷重の大きさを容易且つ高精度に調整することが可能になる。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0072】
上記の実施形態では、荷重調整部16によるバンド14の押圧方向は、積層方向に沿って当接周面74がスタック本体12に接近する方向である。すなわち、バンド14のプレート対向面70の裏面(バンド14の外周面)に当接周面74が設けられる。しかしながら、特にこれらに限定されるものではない。
【0073】
例えば、不図示ではあるが、荷重調整部によるバンド14の押圧方向は、積層方向に沿って当接周面がスタック本体12から離間する方向としてもよい。この場合、当接周面は、バンド14のプレート対向面70(バンド14の内周面)に設けられる。また、調整部本体は、エンドプレート22a、22bの各々のバンド懸架面28と、バンド14のプレート対向面70との間に配置される。つまり、調整部本体の荷重調整面は、バンド14の径方向の内側から当接周面に当接する。
【0074】
さらに、調整部本体は、例えば、不図示の調整機構により、バンド懸架面28からスタック本体12の外側に向かって突出する方向に移動可能にエンドプレート22a、22bの各々に固定される。このため、例えば、スタック本体12にバンド14を取り付ける際には、調整機構により荷重調整部16をスタック本体12に近接する位置に配置しておくことができる。スタック本体12にバンド14を取り付けた後に、荷重調整面を当接周面74に当接させた状態で、調整機構により調整部本体をスタック本体12の外側に向かって移動させることができる。これにより、バンド14をスタック本体12に容易に取り付けた後に、バンド14をスタック本体12から離間する上記の押圧方向に押圧して、締め付け荷重を適切な大きさへと調整することが可能になる。
【0075】
また、
図5及び
図6に示す燃料電池スタック10のように、押圧方向は、直交径方向に沿って当接周面74がスタック本体12に接近する方向であってもよい。直交径方向は、積層方向に直交するバンド14の径方向(
図5及び
図6では矢印C方向)である。
【0076】
図5及び
図6の燃料電池スタック10では、当接周面74は、バンド14の直交径方向の両端側の各々において、積層体対向面72の裏面に設けられている。
図5及び
図6の燃料電池スタック10が備えるエンドプレート22a、22bの各々には、凹部30及び凸部32が設けられていなくてもよい。この場合であっても、エンドプレート22a、22bの各々のバンド14の内周面と接触する角部23は、角丸(弧状)に形成されていることが好ましい。一層好ましくは、エンドプレート22a、22bの各々の上記の角部23に接触したバンド14の内周面が、矢印B方向視でクロソイド曲線を描くことが好ましい。
【0077】
また、
図5及び
図6の燃料電池スタック10は、
図1及び
図2に示す荷重調整部16に代えて、荷重調整部100を備えている。荷重調整部100は、一組の荷重調整面90を有する。2つの荷重調整面90の間に積層体20及びバンド14が配置される。具体的には、荷重調整部100は、第1調整部本体102と、第2調整部本体104と、固定機構106と、を有する。第1調整部本体102は、一組の荷重調整面90の一方を有する。第2調整部本体104は、一組の荷重調整面90の他方を有する。固定機構106は、第1調整部本体102及び第2調整部本体104の相対位置を固定する。
【0078】
第1調整部本体102は、一組の第1側壁部108と、上壁部110とを有している。一組の第1側壁部108及び上壁部110は一体に連続している。一組の第1側壁部108は、積層体20の矢印B方向両側の側面の矢印C1側の略半分を覆う。各第1側壁部108の下端には、第1フランジ部112が設けられている。第1フランジ部112は、矢印B方向に沿って積層体20から離間する方向に突出する。第1フランジ部112は、該第1フランジ部112を矢印C方向に貫通する複数の貫通孔114を有する。なお、
図5では見えていないが、第1調整部本体102は、第1調整部本体102の矢印B2方向の端部にも、第1側壁部108と、第1フランジ部112とを有する。
【0079】
上壁部110は、バンド14の矢印C1側の当接周面74と、積層体20の矢印C1側の側面(
図5では上面)とを覆う。また、
図6に示すように、上壁部110には、当接周面74に当接する荷重調整面90が設けられている。上記の通り、スタック本体12では、矢印C方向において、エンドプレート22a、22bの端部が積層体20より外側に突出している。これにより、エンドプレート22a、22bと、積層体20の包囲側面68との間には、進入空間116が形成されている。進入空間116には、荷重調整面90に押圧された当接周面74が進入可能である。
【0080】
矢印B方向視において、第1調整部本体102の荷重調整面90は、スタック本体12の進入空間116に向かって膨出するように湾曲する。荷重調整面90は、該荷重調整面90が当接することで湾曲するバンド14の当接周面74に包絡面を形成する。つまり、当接周面74は包絡線形状である。また、荷重調整面90及び該荷重調整面90が当接した当接周面74は、押圧方向(矢印C方向)に沿った断面がクロソイド曲線を形成することが好ましい。
【0081】
第2調整部本体104は、一組の第2側壁部118と、下壁部120とを有している。一組の第2側壁部118及び下壁部120は一体に連続している。一組の第2側壁部118は、積層体20の矢印B方向両側の側面の矢印C2側の略半分を覆う。各第2側壁部118の上端には、第2フランジ部122が設けられている。第2フランジ部122は、矢印B方向に沿って積層体20から離間する側に突出する。第2フランジ部122は、該第2フランジ部122を矢印C方向に貫通する複数の貫通孔124を有する。なお、
図5では見えていないが、第2調整部本体104は、第2調整部本体104の矢印B2方向の端部にも、第2側壁部118と、第2フランジ部122とを有する。
【0082】
下壁部120は、バンド14の矢印C2側の当接周面74と、積層体20の矢印C2側の側面(
図5では下面)を覆う。また、
図6に示すように、下壁部120には、当接周面74に当接する荷重調整面90が設けられている。下壁部120の荷重調整面90と、上壁部110の荷重調整面90とは、矢印C方向の配置が互いに逆になることを除いて、略同様に構成することができる。
【0083】
第1調整部本体102の第1フランジ部112と、第2調整部本体104の第2フランジ部122とは、矢印C方向に間隔を置いて向き合う。第1フランジ部112に設けられた貫通孔114と、第2フランジ部122に設けられた貫通孔124とは、互いに同軸となるように配置される。
【0084】
固定機構106は、複数のボルト126と、該ボルト126の個数に対応する複数のナット128とを有する。ボルト126は、互いに同軸に配置された第1フランジ部112の貫通孔114及び第2フランジ部122の貫通孔124に、矢印C方向に挿通される。例えば、第1フランジ部112から第2フランジ部122に向かって貫通孔114、124にボルト126が挿通された場合、ボルト126の頭部130は、第1フランジ部112の貫通孔114の周辺部に当接する。また、ボルト126の先端部は、第2フランジ部122の貫通孔124から下方に突出する。
【0085】
ナット128は、ボルト126の先端部の貫通孔124から突出した部分に螺合する。このため、第1フランジ部112及び第2フランジ部122は、複数のボルト126の頭部130と複数のナット128との間に挟持される。これにより、固定機構106は、第1調整部本体102及び第2調整部本体104に、バンド14の弾性力に抗して互いに接近する押圧方向の荷重を付与する。その結果、各荷重調整面90がバンド14の当接周面74を押圧方向に押圧した状態で、第1調整部本体102及び第2調整部本体104は、スタック本体12に取り付けられる。つまり、第1調整部本体102における押圧方向は、矢印C2方向である。第2調整部本体104における押圧方向は、矢印C1方向である。
【0086】
固定機構106では、ボルト126の頭部130とナット128との距離を調整することで、第1調整部本体102及び第2調整部本体104に付与する上記の荷重を調整することができる。すなわち、ボルト126とナット128との螺合量を調整することにより、当接周面74に当接させた荷重調整面90と、積層体20の包囲側面68との距離を調整可能である。
【0087】
従って、
図5及び
図6の荷重調整部100では、第1調整部本体102及び第2調整部本体104が、各々の荷重調整面90を介してバンド14を押圧方向に押圧する。これにより、エンドプレート22a、22b間の締め付け荷重を調整できる。また、荷重調整部100では、例えば、ボルト126とナット128を、螺合を進める方向に相対回転させることで、締め付け荷重を大きくすることができる。一方、荷重調整部100では、例えば、ボルト126とナット128を、螺合を解除する方向に相対回転させることで、締め付け荷重を小さくすることができる。
【0088】
以上から、
図5及び
図6の荷重調整部100を備える燃料電池スタック10においても、
図1及び
図2の荷重調整部16を備える燃料電池スタック10と同様の作用効果を得ることができる。つまり、燃料電池スタック10の組み立て工程を簡単にすることができる。また、バンド14の耐久性を維持しつつ、エンドプレート22a、22b間に適切な大きさの締め付け荷重を容易に付与することができる。
【0089】
図5及び
図6の燃料電池スタック10では、当接周面74は、直交径方向の両端側の積層体対向面72の裏面にそれぞれ設けられる。荷重調整部100は、一組の荷重調整面90を有する。一方の荷重調整面90と他方の荷重調整面90との間に、積層体20及びバンド14が配置される。
【0090】
また、
図5及び
図6の燃料電池スタック10では、荷重調整部100は、一組の荷重調整面90の一方を有する第1調整部本体102と、一組の荷重調整面90の他方を有する第2調整部本体104と、第1調整部本体102及び第2調整部本体104の相対位置を固定する固定機構106と、を有する。固定機構106は、第1調整部本体102の荷重調整面90と第2調整部本体104の荷重調整面90との相対距離を調整可能である。
【0091】
これらの場合、スタック本体12に荷重調整部100を容易に取り付けること、及び締め付け荷重を良好に調整することが可能になる。なお、
図5及び
図6の荷重調整部100においても、バンド14の押圧方向を、直交径方向に沿って当接周面74がスタック本体12から離間する方向としてもよい。この場合、当接周面74は、バンド14の積層体対向面72(バンド14の内周面)に設けられる。
【0092】
なお、上記のように、荷重調整部によるバンド14の押圧方向は、積層方向に沿って当接周面がスタック本体12から離間する方向であってもよい。この場合の燃料電池スタックは、複数本のバンド14を備えてもよい。また、
図5及び
図6に示す燃料電池スタック10も、複数本のバンド14を備えてもよい。さらに、上記のように、荷重調整部によるバンド14の押圧方向は、直交径方向に沿って当接周面74がスタック本体12から離間する方向であってもよい。この場合の燃料電池スタックも、複数本のバンド14を備えてもよい。これらの燃料電池スタックの各々において、複数本のバンド14は、例えば、矢印B方向に間隔を置いて並列される。
【符号の説明】
【0093】
10…燃料電池スタック 12…スタック本体
14…バンド 16、100…荷重調整部
18…発電セル 20…積層体
22a、22b…エンドプレート 28…バンド懸架面
30…凹部 30a…内底面
68…包囲側面 70…プレート対向面
72…積層体対向面 74…当接周面
82、106…固定機構 84…調整部本体
90…荷重調整面 102…第1調整部本体
104…第2調整部本体 116…進入空間