(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178485
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20221125BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20221125BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H01L23/02 C
H03H9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085327
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 優樹
(72)【発明者】
【氏名】西舘 徹
(72)【発明者】
【氏名】山内 基
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 亮太
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097FF01
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA04
5J097JJ01
5J108BB01
5J108CC04
5J108EE03
5J108GG03
5J108GG14
5J108GG15
(57)【要約】
【課題】リッドの撓みを低減すること。
【解決手段】弾性波デバイス100は、支持基板10と、支持基板10上に設けられる弾性波素子50と、平面視して弾性波素子50を囲んで支持基板10上に設けられる枠体18と、支持基板10とで空隙22を挟んで枠体18上に設けられ、空隙22内に弾性波素子50を封止するリッド30と、空隙22内において支持基板10とリッド30との間に設けられる柱状体26と、リッド30の空隙22側の面に設けられ、長さが柱状体26の幅よりも長い細長形状の補強部32とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられる機能素子と、
平面視して前記機能素子を囲んで前記基板上に設けられる枠体と、
前記基板とで空隙を挟んで前記枠体上に設けられ、前記空隙内に前記機能素子を封止するリッドと、
前記空隙内において前記基板と前記リッドとの間に設けられ、前記基板に対して前記リッドを支持する柱状体と、
前記リッドの前記空隙側の面に設けられ、平面視して細長形状をしていて、長さが前記柱状体の長さよりも長い補強部と、を備える電子部品。
【請求項2】
前記補強部は、平面視して前記柱状体と重なって設けられ、
前記柱状体は、前記補強部を介して前記リッドを支持する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記リッドは、平面視して略矩形状であり、
前記補強部は細長形状であり、前記補強部の長手方向の長さは前記長手方向と同じ方向における前記リッドの長さに対して1/2以上である、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記枠体は、四辺を有する略矩形の環状であり、
前記補強部は、前記枠体の対向する辺の両方に接している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記補強部は、平面視における前記リッドの中心を通って設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記補強部の幅は、前記柱状体の長さの0.5倍以上3倍以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記リッド、前記柱状体、および前記補強部は、金属またはシリコンを主成分とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記機能素子は弾性波素子である、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記弾性波素子によりフィルタが形成されている、請求項8に記載の電子部品。
【請求項10】
前記フィルタによりマルチプレクサが形成されている、請求項9に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
機能素子を空隙内に封止することが知られている(例えば特許文献1から特許文献3)。機能素子を囲む枠体上にリッドを設け、リッドと基板との間の空隙内に機能素子を封止する電子部品が知られている(例えば特許文献4)。リッドに圧力が加わった場合でも、リッドが撓むことを抑制するために、空隙内で基板とリッドとの間に柱状体を設けることが知られている(例えば特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-102894号公報
【特許文献2】特開2006-196799号公報
【特許文献3】特開2018-160829号公報
【特許文献4】特開2016-152612号公報
【特許文献5】特開2021-52359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献5に記載のように基板とリッドとの間に柱状体を設けた場合でも、リッドの撓みを低減する点において改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、リッドの撓みを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられる機能素子と、平面視して前記機能素子を囲んで前記基板上に設けられる枠体と、前記基板とで空隙を挟んで前記枠体上に設けられ、前記空隙内に前記機能素子を封止するリッドと、前記空隙内において前記基板と前記リッドとの間に設けられ、前記基板に対して前記リッドを支持する柱状体と、前記リッドの前記空隙側の面に設けられ、平面視して細長形状をしていて、長さが前記柱状体の長さよりも長い補強部と、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記補強部は、平面視して前記柱状体と重なって設けられ、前記柱状体は、前記補強部を介して前記リッドを支持する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記リッドは、平面視して略矩形状であり、前記補強部は細長形状であり、前記補強部の長手方向の長さは前記長手方向と同じ方向における前記リッドの長さに対して1/2以上である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記枠体は、四辺を有する略矩形の環状であり、前記補強部は、前記枠体の対向する辺の両方に接している構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記補強部は、平面視における前記リッドの中心を通って設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記補強部の幅は、前記柱状体の長さの0.5倍以上3倍以下である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記リッド、前記柱状体、および前記補強部は、金属またはシリコンを主成分とする構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記機能素子は弾性波素子である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記弾性波素子によりフィルタが形成されている構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記フィルタによりマルチプレクサが形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リッドの撓みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図1(b)は、実施例1におけるリッドの平面図である。
【
図3】
図3は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
【
図4】
図4(a)はフィルタの回路図、
図4(b)はディプレクサのブロック図である。
【
図5】
図5(a)から
図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図7】
図7(a)から
図7(c)は、実施例1の変形例1から変形例3に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図8】
図8(a)から
図8(c)は、比較例1から比較例3に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図9】
図9は、シミュレーションに用いたモデルの平面図である。
【
図11】
図11(a)から
図11(c)は、シミュレーションしたリッドのモデルH、I、Jの平面図である。
【
図13】
図13(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図、
図13(b)は、実施例2における弾性波素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について、電子部品として弾性波デバイスの場合を例に説明する。
【実施例0019】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の平面図、
図1(b)は、実施例1におけるリッド30の平面図である。
図2(a)は、
図1(a)のA-A断面図、
図2(b)は、
図1(a)のB-B断面図である。
図1(a)は、リッド30を透視して、支持基板10、圧電層12、ビア配線16、枠体18、配線20、柱状体26、補強部32、および弾性波素子50を主に示している。
図1(b)は、リッド30を透視して補強部32を図示している。
図1(a)では、図の明瞭化のために、枠体18、配線20、補強部32、および弾性波素子50にハッチングを付している。
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)、および
図2(b)に示すように、実施例1の弾性波デバイス100は、支持基板10の上面に圧電層12が接合されている。
【0020】
支持基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、炭化シリコン基板、またはシリコン基板であり、その厚さは50μm~300μmである。サファイア基板は単結晶のAl2O3基板であり、アルミナ基板は多結晶のAl2O3基板であり、スピネル基板は単結晶または多結晶のMgAl2O4基板である。石英基板はアモルファスSiO2基板であり、水晶基板は単結晶SiO2基板である。炭化シリコン基板は多結晶または単結晶のSiC基板であり、シリコン基板は単結晶または多結晶のSi基板である。支持基板10の線膨張係数は圧電層12の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波素子50の周波数温度依存性を小さくできる。
【0021】
圧電層12は、例えば単結晶タンタル酸リチウム層または単結晶ニオブ酸リチウム層であり、その厚さは0.5μm~30μmである。圧電層12の厚さは、例えば弾性波素子50が励振する主モードの弾性波(例えば弾性表面波)の波長より小さい。支持基板10と圧電層12との間に酸化シリコン、酸化アルミニウム、および/または窒化アルミニウム等の絶縁層を設けてもよい。このように、圧電層12は支持基板10に直接または間接的に接合されている。
【0022】
圧電層12の上面に、1または複数の弾性波素子50が設けられている。支持基板10の下面に端子14が設けられている。端子14は、弾性波素子50を外部と電気的に接続するためのフットパッドである。支持基板10を貫通するビア配線16が設けられている。ビア配線16の一端は端子14に接続されている。ビア配線16の他端は圧電層12の上面から支持基板10の上面に延在する配線20に接続されている。これにより、弾性波素子50は配線20およびビア配線16を介して端子14に電気的に接続される。端子14、ビア配線16、および配線20は、例えばチタン、銅、アルミニウム、白金、ニッケル、および/または金等を含む金属層である。端子14、ビア配線16、および配線20は、単層の金属層の場合でもよいし、複数層が積層された積層金属層の場合でもよい。
【0023】
支持基板10の周縁領域には圧電層12は設けられていない。平面視において、圧電層12および弾性波素子50を囲むように支持基板10上に枠体18が設けられている。枠体18は圧電層12から離れて支持基板10上に設けられている。枠体18は、例えば銅、コバール、金、アルミニウム、および/またはタングステンを含む金属層、若しくはシリコン層、或いは樹脂層である。コバールは、鉄にニッケルとコバルトを配合した合金である。枠体18は、単層の場合でもよいし、複数層が積層されている場合でもよい。枠体18の高さは例えば15μm~30μm程度であり、幅は例えば10μm~40μm程度である。
【0024】
枠体18上に、支持基板10との間に空隙22が形成されるようにリッド30が設けられている。枠体18とリッド30は、はんだ等の接合層により接合されている。弾性波素子50は、枠体18とリッド30により空隙22内に封止されている。リッド30は、例えばコバール、銅、金、アルミニウム、および/またはタングステン等の金属、若しくはシリコンにより形成されている。コバールは、上述したように、鉄にニッケルとコバルトを配合した合金である。リッド30は、単層の場合でもよいし、複数層が積層されている場合でもよい。リッド30の厚さは例えば20μm~50μm程度である。
【0025】
枠体18およびリッド30が金属で形成されている場合、枠体18は、支持基板10の下面に設けられたグランド端子に支持基板10を貫通するビア配線を介して電気的に接続されていてもよい。これにより、枠体18にグランド電位を供給することで、枠体18およびリッド30にシールド効果を付与することができる。また、枠体18およびリッド30が金属で形成されている場合、弾性波素子50を空隙22内に気密性良く封止することができる。なお、枠体18およびリッド30は支持基板10上では弾性波素子50に電気的に接続されていない。
【0026】
圧電層12は、リッド30の中央付近に位置し、上面から下面にかけて貫通する開口24を有する。開口24では例えば支持基板10の上面が露出している。開口24において、支持基板10とリッド30との間でリッド30の中央付近に位置し、支持基板10に対してリッド30を支持する柱状体26が設けられている。柱状体26は、空隙22内に位置し、圧電層12から離れて設けられ、例えば支持基板10の上面に接している。柱状体26は、例えば銅、コバール、金、アルミニウム、および/またはタングステンを含む金属層、若しくはシリコン層、或いは樹脂層である。柱状体26は、単層の場合でもよいし、複数層が積層されている場合でもよい。実施例1においては、柱状体26の高さは枠体18の高さより低く、例えば10μm~25μm程度であり、柱状体26の幅は枠体18の幅より大きく、例えば30μm~60μm程度である。なお、柱状体26は、支持基板10とリッド30との間に1つ設けられる場合に限られず、2つ以上設けられていてもよい。
【0027】
リッド30の下面に、細長形状をした補強部32が設けられている。補強部32は、例えばリッド30の下面に接合されている、或いは、リッド30と一体成型により形成されている。実施例1においては、補強部32は、平面視して略矩形状をしたリッド30の長手方向および短手方向に直線状に延び、リッド30の対向する辺それぞれの中央を結ぶ直線上に位置して設けられ、四辺を有する略矩形の環状をした枠体18の対向する辺の両方の側面に接している。したがって、2つの補強部32は、平面視におけるリッド30の中心34を通り、中心34において交差している。2つの補強部32が交差した箇所に柱状体26が配置されている。よって、補強部32は平面視にて柱状体26と重なっていて、柱状体26は補強部32を介してリッド30を支持している。補強部32と柱状体26は、はんだ等の接合層により接合されていてもよいし、接合されずに接触していてもよい。補強部32は、細長形状における長手方向を長さとし、短手方向を幅とする。
【0028】
補強部32は、例えば銅、コバール、金、アルミニウム、および/またはタングステンを含む金属層、若しくはシリコン層、或いは樹脂層である。補強部32は、リッド30と同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。リッド30と補強部32が同じ材料で形成される場合、一体成型による製造が可能となる。リッド30と補強部32が異なる材料で形成される場合、使用状況および/または使用用途等に応じた適切な材料をそれぞれ選択することができる。補強部32の高さは、柱状体26の高さより低く、例えば2μm~5μm程度である。補強部32の幅は、例えば柱状体26の幅と略同じであり、例えば30μm~60μmである。ここで言う略同じとは、製造誤差程度の違いを許容するものである。
【0029】
図3は、実施例1における弾性波素子50の平面図である。
図3に示すように、弾性波素子50は弾性表面波共振子である。圧電層12の上面にIDT(Interdigital Transducer)51と反射器52が設けられている。IDT51は、対向する一対の櫛型電極53を有する。櫛型電極53は、複数の電極指54と、複数の電極指54が接続するバスバー55と、を有する。反射器52は、IDT51の両側に設けられている。IDT51が圧電層12に弾性表面波を励振する。一対の櫛型電極53のうち一方の櫛型電極53の電極指54のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。複数の電極指54のピッチDの2倍が、一方の櫛型電極53のピッチとなる。IDT51および反射器52は、例えばアルミニウム、銅、またはモリブデン等の金属膜により形成される。圧電層12の上面にIDT51および反射器52を覆う保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。櫛型電極53はダミー電極指を有していてもよい。
【0030】
圧電層12の上面に形成された複数の弾性波素子50によってフィルタが形成されてもよいし、デュプレクサが形成されてもよい。
図4(a)はフィルタの回路図、
図4(b)はディプレクサのブロック図である。
【0031】
図4(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に1または複数の直列共振器S1からS4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に1または複数の並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。直列共振器S1からS4および並列共振器P1、P2が弾性波素子50である。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に説明したが、フィルタは多重モード型フィルタであってもよい。
【0032】
図4(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ60が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ62が接続されている。送信フィルタ60は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ62は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。なお、マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したがトリプレクサまたはクワッドプレクサであってもよい。
【0033】
図1においては、複数の弾性波素子50により2つのラダー型フィルタ64が形成されている場合を示している。2つのラダー型フィルタ64の一方は送信フィルタ60であり、他方は受信フィルタ62である場合を示している。
【0034】
[製造方法]
図5(a)から
図6(b)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。
図5(a)に示すように、支持基板10の上面に例えばレーザ光を照射してビアホールを形成し、ビアホール内に銅等の金属層を例えば電解めっき法を用い形成する。その後、支持基板10の上面が露出するように金属層の上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。これにより、支持基板10にビア配線16が形成される。次いで、支持基板10の上面に圧電基板を例えば表面活性化法を用い常温接合する。支持基板10と圧電基板とは数nmのアモルファス層を介し直接接合されてもよいし、絶縁層を介し間接的に接合されてもよい。その後、圧電基板の上面を例えばCMP法を用い研磨する。これにより、支持基板10の上面に直接または間接的に接合された圧電層12が形成される。
【0035】
図5(b)に示すように、圧電層12の一部を例えばエッチング法を用いて除去する。これにより、支持基板10の周縁領域の圧電層12が除去され、ビア配線16が露出する。また、圧電層12に開口24が形成される。開口24では例えば支持基板10の上面が露出している。次いで、圧電層12の上面に弾性波素子50を形成する。圧電層12の上面からビア配線16まで延在し、弾性波素子50とビア配線16とを電気的に接続する配線20を形成する。
【0036】
図5(c)に示すように、弾性波素子50および圧電層12を囲む枠体18と、圧電層12に形成した開口24内の柱状体26と、を支持基板10上に形成する。枠体18と柱状体26は、例えば電解めっき法により形成する。
【0037】
図6(a)に示すように、補強部32が設けられたリッド30を準備し、補強部32が柱状体26と重なるように位置合わせをして、リッド30をはんだ等の接合層により枠体18に接合する。補強部32と柱状体26ははんだ等の接合層で接合してもよいし、接合せずに接触した状態にしてもよい。
【0038】
図6(b)に示すように、支持基板10の下面を例えばCMP法を用い研磨する。これにより、ビア配線16が支持基板10の下面から露出する。次いで、支持基板10の下面にビア配線16に接続する端子14を形成する。以上により、実施例1に係る弾性波デバイス100が製造される。
【0039】
[変形例]
図7(a)から
図7(c)は、実施例1の変形例1から変形例3に係る弾性波デバイス110から130の断面図である。
図7(a)から
図7(c)は、
図1(a)のB-B間に相当する箇所の断面図である。
図7(a)に示すように、変形例1の弾性波デバイス110では、補強部32がリッド30と枠体18の間に挿入されていて、補強部32の延伸方向に垂直な補強部32の側面がリッド30の側面および枠体18の外側面と同一面となっている。なお、補強部32の側面は、枠体18の内側面と外側面の間に位置していてもよいし、枠体18の外側面よりも外側に位置していてもよい。その他の構成は実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0040】
図7(b)に示すように、変形例2の弾性波デバイス120では、補強部32は枠体18に接してなく、補強部32の延伸方向に垂直な補強部32の側面は、柱状体26と枠体18との間隔の半分よりも枠体18側に位置している。したがって、補強部32は、リッド30の対向する辺の間の長さが当該対向する辺の間隔の1/2以上の長さとなっている。その他の構成は実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0041】
図7(c)に示すように、変形例3の弾性波デバイス130では、補強部32の延伸方向に垂直な補強部32の側面は、柱状体26と枠体18との間隔の半分よりも柱状体26側に位置している。その他の構成は実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0042】
[比較例]
図8(a)から
図8(c)は、比較例1から比較例3に係る弾性波デバイス500から520の断面図である。
図8(a)から
図8(c)は、
図1(a)のB-B間に相当する箇所の断面図である。
図8(a)に示すように、比較例1の弾性波デバイス500では、リッド30に補強部32が設けられてなく、かつ、空隙22内で支持基板10とリッド30との間に柱状体26が設けられていない。その他の構成は実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0043】
図8(b)に示すように、比較例2の弾性波デバイス510では、空隙22内で支持基板10とリッド30との間に柱状体26が設けられていない。リッド30に設けられた補強部32は、変形例1の弾性波デバイス110と同じく、リッド30と枠体18との間に挿入されている。その他の構成は実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0044】
図8(c)に示すように、比較例3の弾性波デバイス520では、リッド30に補強部32が設けられていない。柱状体26は、枠体18と略同じ高さとなって、空隙22内で支持基板10とリッド30との間に設けられている。その他の構成は実施例1の弾性波デバイスと同じであるため説明を省略する。
【0045】
[シミュレーション1]
リッド30の上面に一様に外部から力が加わったときのリッド30の変形量をシミュレーションした。
図9は、シミュレーションに用いたモデルの平面図である。
図10(a)から
図10(g)は、モデルAからモデルGにおける
図9のA-A断面図である。なお、
図9では
図10(a)のモデルAを例に図示しているが、
図10(b)から
図10(g)のモデルBからモデルGでは補強部32の有無や形状が異なる点および柱状体26の有無の点以外は同じである。リッド30の法線方向をZ方向、リッド30の辺方向をX方向及びY方向とする。
【0046】
図9に示すように、シミュレーションはリッド30の1/4対称モデルを用いて行った。すなわち、リッド30の+X側の面および-Y側の面に枠体18が設けられてなく、これらの面の境界条件を鏡面条件とした。リッド30のX方向およびY方向の長さをD1およびD2とする。枠体18の幅をD3とする。柱状体26の長さおよび補強部32の幅をD4とする。
図10(a)から
図10(g)に示すように、リッド30の厚さをT1とし、補強部32の厚さをT2とする。
図10(a)、
図10(c)、
図10(d)、
図10(e)、および
図10(g)のモデルA、C、D、E、Gにおいて、枠体18の厚さをT3とする。
図10(b)および
図10(f)のモデルB、Fにおいて、枠体18の厚さをT3´とする。
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)、
図10(d)のモデルA、B、C、Dにおいて、柱状体26の厚さをT4とする。
図10(g)のモデルGにおいて、柱状体26の厚さをT4´とする。
図10(c)のモデルCにおいて、補強部32と枠体18との間隔をW1とする。
図10(d)のモデルDにおいて、補強部32と枠体18との間隔をW2とする。
【0047】
図10(a)のモデルAは実施例1に相当し、
図10(b)のモデルBは実施例1の変形例1に相当し、
図10(c)のモデルCは実施例1の変形例2に相当し、
図10(d)のモデルDは実施例1の変形例3に相当する。
図10(e)のモデルEは比較例1に相当し、
図10(f)のモデルFは比較例2に相当し、
図10(g)のモデルGは比較例3に相当する。
【0048】
シミュレーション条件は以下である。
リッド30:コバール
枠体18:銅(Cu)
柱状体26:銅(Cu)
補強部32:コバール
D1:442μm
D2:542μm
D3:23μm
D4:23μm
T1:30μm
T2:4μm
T3:20.5μm
T3´:16.5μm
T4:16.5μm
T4´:20.5μm
W1:5μm
W2:390μm
【0049】
表1は、シミュレーションに用いた材料のヤング率、ポアソン比、体積弾性率、およびせん断弾性係数を示す表である。
【表1】
【0050】
リッド30の変形量として、枠体18および柱状体26の下面が不動の固定物に固定されているとし、この状態でリッド30の上面全体に一様に6MPaの力が加わったときのリッド30の下面の最大変位量をシミュレーションした。
【0051】
表2にシミュレーション結果を示す。表2に示すように、比較例3に相当するモデルGは、柱状体26を設けたことにより、比較例1に相当するモデルEに比べて、リッド30の最大変位量が大きく低減された。しかしながら、柱状体26に加えて補強部32を設けた実施例1から実施例1の変形例3に相当するモデルA~Dは、リッド30の最大変位量がモデルGよりも更に低減された結果となった。なお、柱状体26を設けずに、補強部32だけを設けた比較例2に相当するモデルFでは、リッド30の最大変位量がほとんど低減されなかった。このことから、柱状体26と補強部32の両方を設けることでリッド30の最大変位量を低減できることが分かる。
【表2】
【0052】
[シミュレーション2]
図11(a)から
図11(c)は、シミュレーションしたリッド30のモデルH、I、Jの平面図である。
図11(a)から
図11(c)では、リッド30の全体の平面図を図示しているが、シミュレーションは、
図9のシミュレーション1と同じく、リッド30の1/4対称モデルを用いて行った。
【0053】
図11(a)に示すように、モデルHは、補強部32が3本設けられた、実施例1の変形例に相当するモデルである。3本の補強部32のうちの1本は、リッド30の長手方向で対向する辺の間をそれぞれの辺の2等分点を結んだ線上に位置して延在し、柱状体26と重なって設けられている。3本の補強部32のうちの残りの2本は、リッド30の短手方向で対向する辺の間をそれぞれの辺の3等分点を結んだ線上に位置して延在している。
【0054】
図11(b)に示すように、モデルIは、補強部32が4本設けられた、実施例1の変形例に相当するモデルである。4本の補強部32のうちの2本は、リッド30の長手方向で対向する辺の間をそれぞれの辺の3等分点を結んだ線上に位置して延在している。4本の補強部32のうちの残りの2本は、リッド30の短手方向で対向する辺の間をそれぞれの辺の3等分点を結んだ線上に位置して延在している。4本の補強部32は全て柱状体26と重ならずに設けられている。
【0055】
図11(c)に示すように、モデルJは、補強部32が設けられていない、比較例3に相当するモデルである。
【0056】
シミュレーション条件は、柱状体26の長さおよび補強部32の幅D4が12.5μmの点以外は、上記シミュレーション1と同じである。また、シミュレーションに用いた材料のヤング率、ポアソン比、体積弾性率、およびせん断弾性係数は表1の値を用いた。リッド30の変形量として、上記シミュレーション1と同じく、枠体18および柱状体26の下面が不動の固定物に固定されているとし、この状態でリッド30の上面全体に一様に6MPaの力が加わったときのリッド30の下面の最大変位量をシミュレーションした。
【0057】
表3にシミュレーション結果を示す。表3に示すように、補強部32と柱状体26を設けたモデルHおよびモデルIは、柱状体26が補強部32を介してリッド30を支持している場合(モデルH)でも、補強部32を介さずにリッド30を支持している場合(モデルI)でも、柱状体26のみが設けられているモデルJに比べて、リッド30の最大変位量が低減された。リッド30の最大変位量を低減する点からは、補強部32が柱状体26と重なって設けられ、柱状体26は補強部32を介してリッド30を支持する場合が好ましい結果となった。
【表3】
【0058】
実施例1およびその変形例によれば、空隙22内において支持基板10とリッド30との間に、支持基板10に対してリッド30を支持する柱状体26が設けられている。リッド30の空隙22側の面に、平面視して細長形状をしていて、長さが柱状体26の長さよりも長い補強部32が設けられている。これにより、上記のシミュレーション1、2の結果のように、リッド30に外部から力が加わった場合でも、リッド30の撓みを低減することができる。
【0059】
リッド30の撓みを低減しようとしてリッド30全体の厚みを厚くする場合では、リッド30と弾性波素子50との間の距離が近づくため、電気的な結合が生じて特性が劣化してしまうことがある。しかしながら、実施例1およびその変形例では、リッド30に細長形状の補強部32を設けているだけであるため、リッド30および補強部32と弾性波素子50との間の距離が近づくことが抑制され、特性の劣化を抑制することができる。
【0060】
補強部32は平面視にて柱状体26と重なり、柱状体26は補強部32を介してリッド30を支持する場合が好ましい。これにより、上記のシミュレーション2の結果のように、リッド30の撓みを効果的に低減することができる。
【0061】
補強部32は、平面視して略矩形状をしたリッド30の対向する辺の間の長さが、当該対向する辺の間隔の1/2以上となる細長形状である場合が好ましい。言い換えると、補強部32の長手方向の長さは、当該長手方向と同じ方向におけるリッド30の長さに対して1/2以上である場合が好ましい。これにより、上記のシミュレーション1の結果のように、リッド30の撓みを効果的に低減できる。リッド30の撓みを低減する点から、補強部32の長手方向の長さは、当該長手方向と同じ方向におけるリッド30の長さに対して2/3以上である場合が好ましく、3/4以上である場合がより好ましい。
【0062】
また、リッド30の撓みを低減する点から、補強部32は、略矩形の環状である枠体18の対向する辺の両方に接している場合が好ましく、枠体18とリッド30との間に挿入されていてもよい。
【0063】
補強部32は、平面視におけるリッド30の中心を通って設けられている場合が好ましい。これにより、リッド30の撓みを効果的に低減することができる。ここで、リッド30の中心は、リッド30を平面で観察したときにおける重心に対応する。
【0064】
補強部32の幅は、リッド30の撓みを低減する点から、柱状体26の長さの0.5倍以上が好ましく、1倍以上がより好ましく、1.5倍以上が更に好ましい。補強部32の幅は、リッド30の2組の対向する辺のうち狭い方の間隔の1/30以上が好ましく、1/20以上がより好ましく、1/15以上が更に好ましい。一方、補強部32の幅が大きくなると、補強部32と弾性波素子50との間の距離が近づきやすくなるため、補強部32の幅は、柱状体26の長さの3倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましく、2倍以下が更に好ましい。補強部32の幅は、リッド30の2組の対向する辺のうち狭い方の間隔の1/6以下が好ましく、1/8以下がより好ましく、1/10以下が更に好ましい。補強部32の幅は柱状体26の長さと略同じである場合が好ましい。略同じとは、製造誤差程度の差を許容するものである。柱状体26の長さとは、柱状体26が平面視にて短手方向と長手方向を有する場合は長手方向の長さである。
【0065】
補強部32と弾性波素子50との間の距離が近づくことを抑制するために、補強部32の高さは、リッド30と圧電層12との間の距離の1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下が更に好ましい。リッド30の撓みを低減する点から、補強部32の高さは、リッド30と圧電層12との間の距離の1/10以上が好ましく、1/8以上がより好ましく、1/5以上が更に好ましい。
【0066】
リッド30、柱状体26、および補強部32は、金属またはシリコンを主成分として形成されている場合が好ましい。これにより、リッド30が撓むことを抑制できる。主成分とするとは、リッド30、柱状体26、および補強部32に含まれる元素の合計に対する金属またはシリコンの割合が50at%(原子%)以上のことであり、80at%以上でもよい。
【0067】
実施例1では、柱状体26はリッド30の中心34に設けられ、補強部32はリッド30の対向する辺の中央部間を、リッド30の長手方向および短手方向に直線状に延びて設けられている場合を例に示したが、この場合に限られない。
図12(a)から
図12(h)は、柱状体26および補強部32の他の例を示す平面図である。
図12(a)に示すように、補強部32は、リッド30の長手方向にのみ延びて設けられていてもよい。
図12(b)に示すように、補強部32は、上記シミュレーション2のモデルHのように、リッド30の長手方向に1本延びて設けられ、短手方向に2本延びて設けられていてもよい。
図12(c)に示すように、補強部32は、上記シミュレーション2のモデルIのように、リッド30の長手方向および短手方向にそれぞれ2本ずつ延びて設けられていてもよい。
【0068】
図12(d)に示すように、補強部32は、リッド30の長手方向にのみ延びて設けられ、柱状体26は、リッド30の長手方向で対向する辺それぞれの中央を結ぶ線上にリッド30の中心34に対して点対称に2つ設けられていてもよい。柱状体26がリッド30の中心34に対して点対称に2つ設けられている場合でも、
図12(e)に示すように、補強部32は、リッド30の長手方向および短手方向にそれぞれ1本ずつ延びて設けられていてもよい。
図12(f)に示すように、補強部32は、リッド30の長手方向に1本延びて設けられ、短手方向に2本延びて設けられていてもよい。
図12(g)に示すように、補強部32は、リッド30の長手方向および短手方向にそれぞれ2本ずつ延びて設けられていてもよい。また、
図12(h)に示すように、補強部32は、リッド30の対角線上に延びて設けられていてもよい。なお、補強部32は、延在方向の途中で途切れている場合でもよい。
【0069】
柱状体26は、リッド30の長手方向で対向する辺それぞれの中央を結ぶ線上、短手方向で対向する辺それぞれの中央を結ぶ線上、または対角線上に位置することが好ましい。柱状体26が1つだけ設けられる場合は、リッド30の中心34に設けられる場合が好ましく、柱状体26が複数設けられる場合は、リッド30の中心34に対して略点対称に設けられる場合が好ましい。補強部32は、平面視におけるリッド30の中心34を通って線状に設けられる場合、および/または、リッド30の中心34に対して略点対称に設けられる場合が好ましい。補強部32は直線状に設けられる場合に限られず、曲線状に設けられていてもよい。略点対称とは、完全な点対称の位置に限られず、リッド30の撓みを効果的に低減できる程度に点対称の位置からずれている場合を許容するものである。
【0070】
実施例1では、支持基板10上に圧電層12が設けられている場合を例に示したが、支持基板10が設けられずに、圧電層12が厚い圧電基板となっている場合でもよい。
下部電極70および上部電極74は例えばルテニウム膜等を含む金属膜である。圧電層72は例えば窒化アルミニウム層または酸化亜鉛層である。空隙76の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられてもよい。弾性波素子50aは一般的に知られた方法により製造される。
実施例1のように、支持基板10上に設けられた機能素子は、単結晶タンタル酸リチウム層または単結晶ニオブ酸リチウム層である圧電層12上に設けられた櫛型電極53を含む弾性波素子50の場合でもよい。実施例2のように、機能素子は、圧電層72を挟んで下部電極70と上部電極74が設けられた圧電薄膜共振子である弾性波素子50aの場合でもよい。また、機能素子は、弾性波素子以外の場合でもよく、MEMS(Micro Electro Mechanical System)素子等の圧電素子の場合や、その他の場合でもよい。
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。