(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178486
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221125BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20221125BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01L21/304 648H
H01L21/304 642A
H01L21/304 651B
H01L21/304 648A
H01L21/306 E
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085328
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朋宏
【テーマコード(参考)】
5F043
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA35
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5F157DB45
(57)【要約】
【課題】バッチ処理部と枚葉処理部とを使う基板処理において、基板処理全体を効率的に進める。
【解決手段】基板処理方法は、バッチ処理部において薬液処理が行われた後で、かつ、枚葉処理部において乾燥処理が行われる前の基板の枚数である待機枚数に応じて、基板が枚葉処理部における基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間を算出する工程と、所要時間が、バッチ処理部における薬液処理にかかる時間よりも短くなるように、バッチ処理部における薬液処理の開始時刻を制御する工程とを備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板に対する薬液処理を含む基板処理を行うバッチ処理部と、1枚の前記基板に対する乾燥処理を含む前記基板処理を行う少なくとも1つの枚葉処理部とを使って前記基板処理を行う基板処理方法であり、
前記バッチ処理部において前記薬液処理が行われた後で、かつ、前記枚葉処理部において前記乾燥処理が行われる前の前記基板の枚数である待機枚数に応じて、前記基板が前記枚葉処理部における前記基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間を算出する工程と、
前記所要時間が、前記バッチ処理部における前記薬液処理にかかる時間よりも短くなるように、前記バッチ処理部における前記薬液処理の開始時刻を制御する工程とを備える、
基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であり、
前記所要時間には、進行中の前記基板処理の残り時間を含む、
基板処理方法。
【請求項3】
複数の基板に対する薬液処理を含む基板処理を行うバッチ処理部と、1枚の前記基板に対する乾燥処理を含む前記基板処理を行う少なくとも1つの枚葉処理部とを使って前記基板処理を行う基板処理方法であり、
前記バッチ処理部において前記薬液処理が行われた後で、かつ、前記枚葉処理部において前記乾燥処理が行われる前の前記基板の枚数である待機枚数に応じて、前記基板が前記枚葉処理部における前記基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間を算出する工程と、
前記所要時間が、前記バッチ処理部における前記薬液処理にかかる時間よりも短くなるように、前記バッチ処理部における前記基板の処理枚数を変更する工程とを備える、
基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
前記バッチ処理部において、前記薬液処理が行われた後の複数の前記基板を洗浄槽に浸漬させて洗浄処理を行う工程をさらに備え、
前記所要時間を算出する工程は、前記洗浄槽に浸漬している前記基板の前記待機枚数に応じて、前記洗浄処理にかかる時間を含む前記所要時間を算出する工程である、
基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
前記枚葉処理部において、前記乾燥処理が行われる前の前記基板に洗浄処理を行う工程をさらに備える、
基板処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理方法であり、
前記所要時間を算出する工程は、前記バッチ処理部から前記枚葉処理部まで移動する前の前記基板の前記待機枚数に応じて、前記洗浄処理にかかる時間を含む前記所要時間を算出する工程である、
基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
前記バッチ処理部における前記薬液処理は、前記基板を薬液槽に浸漬させて行われ、
前記バッチ処理部において、前記薬液処理が行われた後の複数の前記基板を洗浄槽に浸漬させて洗浄処理を行う工程をさらに備え、
前記薬液槽は、前記薬液処理が第1の開始時刻で開始される第1の領域と、前記薬液処理が前記第1の開始時刻とは異なる時刻である第2の開始時刻で開始される第2の領域とを備え、
前記洗浄槽は、前記第1の領域で前記薬液処理が行われた前記基板に前記洗浄処理を行う第3の領域と、前記第2の領域で前記薬液処理が行われた前記基板に前記洗浄処理を行う第4の領域とを備える、
基板処理方法。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
前記所要時間は、前記基板が前記バッチ処理部から前記枚葉処理部まで移動するためにかかる時間を含む、
基板処理方法。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
前記所要時間は、前記バッチ処理部において前記基板処理された前記基板が前記枚葉処理部において前記基板処理されるための姿勢変換にかかる時間を含む、
基板処理方法。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
前記所要時間は、前記待機枚数の前記基板が複数の前記枚葉処理部に分配された場合の、1つの前記枚葉処理部において繰り返し行われる前記基板処理にかかる時間を含む、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、基板処理に関するものである。ここで、処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのflat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、セラミック基板、電界放出ディスプレイ(field emission display、すなわち、FED)用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から、リン酸を使って基板における窒化シリコン膜をエッチングするバッチ式の処理装置(以下、バッチ処理部とも称する)が提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。バッチ処理装置は、複数の基板を一括して処理することができるので、スループットが高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のバッチ処理装置で薬液処理された基板を洗浄して、さらに乾燥させる際、基板に形成される表面パターンが複雑なもの(たとえば、3次元構造)であると、乾燥処理が不十分になる場合がある。
【0005】
一方で、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置(以下、枚葉処理部とも称する)であれば乾燥能力が高いので、上記の乾燥処理を適切に行うことができる。
【0006】
乾燥処理を枚葉処理部で行う場合、バッチ処理部で処理された基板が枚葉処理部で処理されるまでの待ち時間が長くなる場合には、基板処理全体の効率が低下してしまう。
【0007】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、バッチ処理部と枚葉処理部とを使う基板処理において、基板処理全体を効率的に進めるための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書に開示される技術の第1の態様である基板処理方法は、複数の基板に対する薬液処理を含む基板処理を行うバッチ処理部と、1枚の前記基板に対する乾燥処理を含む前記基板処理を行う少なくとも1つの枚葉処理部とを使って前記基板処理を行う基板処理方法であり、前記バッチ処理部において前記薬液処理が行われた後で、かつ、前記枚葉処理部において前記乾燥処理が行われる前の前記基板の枚数である待機枚数に応じて、前記基板が前記枚葉処理部における前記基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間を算出する工程と、前記所要時間が、前記バッチ処理部における前記薬液処理にかかる時間よりも短くなるように、前記バッチ処理部における前記薬液処理の開始時刻を制御する工程とを備える。
【0009】
本願明細書に開示される技術の第2の態様である基板処理方法は、第1の態様である基板処理方法に関連し、前記所要時間には、進行中の前記基板処理の残り時間を含む。
【0010】
本願明細書に開示される技術の第3の態様である基板処理方法は、複数の基板に対する薬液処理を含む基板処理を行うバッチ処理部と、1枚の前記基板に対する乾燥処理を含む前記基板処理を行う少なくとも1つの枚葉処理部とを使って前記基板処理を行う基板処理方法であり、前記バッチ処理部において前記薬液処理が行われた後で、かつ、前記枚葉処理部において前記乾燥処理が行われる前の前記基板の枚数である待機枚数に応じて、前記基板が前記枚葉処理部における前記基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間を算出する工程と、前記所要時間が、前記バッチ処理部における前記薬液処理にかかる時間よりも短くなるように、前記バッチ処理部における前記基板の処理枚数を変更する工程とを備える。
【0011】
本願明細書に開示される技術の第4の態様である基板処理方法は、第1から3のうちのいずれか1つの態様である基板処理方法に関連し、前記バッチ処理部において、前記薬液処理が行われた後の複数の前記基板を洗浄槽に浸漬させて洗浄処理を行う工程をさらに備え、前記所要時間を算出する工程は、前記洗浄槽に浸漬している前記基板の前記待機枚数に応じて、前記洗浄処理にかかる時間を含む前記所要時間を算出する工程である。
【0012】
本願明細書に開示される技術の第5の態様である基板処理方法は、第1から3のうちのいずれか1つの態様である基板処理方法に関連し、前記枚葉処理部において、前記乾燥処理が行われる前の前記基板に洗浄処理を行う工程をさらに備える。
【0013】
本願明細書に開示される技術の第6の態様である基板処理方法は、第5の態様である基板処理方法に関連し、前記所要時間を算出する工程は、前記バッチ処理部から前記枚葉処理部まで移動する前の前記基板の前記待機枚数に応じて、前記洗浄処理にかかる時間を含む前記所要時間を算出する工程である。
【0014】
本願明細書に開示される技術の第7の態様である基板処理方法は、第1から6のうちのいずれか1つの態様である基板処理方法に関連し、前記バッチ処理部における前記薬液処理は、前記基板を薬液槽に浸漬させて行われ、前記バッチ処理部において、前記薬液処理が行われた後の複数の前記基板を洗浄槽に浸漬させて洗浄処理を行う工程をさらに備え、前記薬液槽は、前記薬液処理が第1の開始時刻で開始される第1の領域と、前記薬液処理が前記第1の開始時刻とは異なる時刻である第2の開始時刻で開始される第2の領域とを備え、前記洗浄槽は、前記第1の領域で前記薬液処理が行われた前記基板に前記洗浄処理を行う第3の領域と、前記第2の領域で前記薬液処理が行われた前記基板に前記洗浄処理を行う第4の領域とを備える。
【0015】
本願明細書に開示される技術の第8の態様である基板処理方法は、第1から7のうちのいずれか1つの態様である基板処理方法に関連し、前記所要時間は、前記基板が前記バッチ処理部から前記枚葉処理部まで移動するためにかかる時間を含む。
【0016】
本願明細書に開示される技術の第9の態様である基板処理方法は、第1から8のうちのいずれか1つの態様である基板処理方法に関連し、前記所要時間は、前記バッチ処理部において前記基板処理された前記基板が前記枚葉処理部において前記基板処理されるための姿勢変換にかかる時間を含む。
【0017】
本願明細書に開示される技術の第10の態様である基板処理方法は、第1から9のうちのいずれか1つの態様である基板処理方法に関連し、前記所要時間は、前記待機枚数の前記基板が複数の前記枚葉処理部に分配された場合の、1つの前記枚葉処理部において繰り返し行われる前記基板処理にかかる時間を含む。
【発明の効果】
【0018】
本願明細書に開示される技術の少なくとも第1、3の態様によれば、バッチ処理部における薬液処理が行われた後に、枚葉処理部において乾燥処理が行われるまでに待機している基板の枚数が増大することを抑制することができる。よって、バッチ処理部および枚葉処理部によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0019】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に関する、基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】基板に形成される3次元構造の例を部分的かつ概略的に示す図である。
【
図3】実施の形態に関する、基板に対する処理工程の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】バッチ処理部の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図5】搬送ロボットの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図6】搬送ロボットの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図7】枚葉処理部の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図8】搬送ロボットおよびその周辺の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図9】式(1)の関係を模式的に示す概念図である。
【
図10】式(2)の関係を模式的に示す概念図である。
【
図11】実施の形態に関する、基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図12】式(3)の関係を模式的に示す概念図である。
【
図13】式(4)の関係を模式的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0022】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化などが図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0023】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0024】
また、本願明細書に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0025】
また、本願明細書に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態の内容はこれらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0026】
また、本願明細書に記載される説明において、「…軸正方向」または「…軸負方向」などの表現は、図示される…軸の矢印に沿う方向を正方向とし、図示される…軸の矢印とは反対側の方向を負方向とするものである。
【0027】
また、本願明細書に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態が実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0028】
<第1の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する基板処理方法について説明する。
【0029】
<基板処理装置の全体構成について>
図1は、本実施の形態に関する、基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図1において、Z軸方向が鉛直上方向である。基板処理装置10は、基板Wに対してウェット処理を行う装置である。
【0030】
基板Wはたとえば、半導体基板であり、その表面には表面パターンが形成される。表面パターンの具体的な例としては、3次元NAND(Not-AND)フラッシュメモリの製造途中で形成される3次元構造が挙げられる。
【0031】
図2は、基板Wに形成される3次元構造の例を部分的かつ概略的に示す図である。
図2の例では、基板Wは支持層93を含んでいる。支持層93はたとえばシリコン層である。そして、支持層93の上面には積層構造90が形成されている。
【0032】
積層構造90は複数の絶縁膜91および複数の犠牲膜92を含む。絶縁膜91および犠牲膜92は、Z軸方向において交互に積層されている。絶縁膜91はたとえば二酸化シリコン膜であり、犠牲膜92はたとえば窒化シリコン膜である。絶縁膜91および犠牲膜92の厚みは、たとえば1nm以上かつ50nm以下である。
【0033】
また、積層構造90には、トレンチ94が形成されている。トレンチ94は基板Wの厚み方向に沿って積層構造90を貫通する。また、積層構造90には、図示しないピラーが設けられる。ピラーは犠牲膜92が除去された場合に、絶縁膜91を支持する。ピラーの幅(基板Wの主面に平行な幅)は、たとえば1nm以上かつ50nm以下である。
【0034】
本実施の形態では具体的な一例として、基板処理装置10が犠牲膜92をエッチングする場合について述べるものの、基板処理装置10は他の処理を基板Wに対して行ってもよい。以下、基板処理装置10の全体構成の一例について概説し、その後、それぞれの構成の一例について詳述する。
【0035】
図1に例が示されるように、基板処理装置10は、複数の基板Wに対して一括して処理を行う(すなわち、バッチ式の基板処理を行う)バッチ処理部30と、基板を1枚ずつ処理する(すなわち、枚葉式の基板処理を行う)枚葉処理部50と、バッチ間搬送部60と、バッチ枚葉間搬送部70とを備える。
【0036】
また、
図1の例では、基板処理装置10は筐体100を含んでおり、この筐体100は、少なくとも、バッチ処理部30と、枚葉処理部50と、バッチ間搬送部60と、バッチ枚葉間搬送部70とを収納する。すなわち、
図1の例では、基板処理装置10は、バッチ処理部30と枚葉処理部50とが同一の筐体100内に混在するハイブリッド式の基板処理装置である。
【0037】
図1の例では、基板処理装置10には、外部から複数の基板Wが搬入される搬入ポートとしてのロードポート11も設けられている。ロードポート11には、複数の基板Wを収納する可搬型の収納器(以下、キャリアC1と呼ぶ)が搬入される。
図1の例では、ロードポート11において、複数のキャリアC1がY軸方向に沿って一列に載置されている。
【0038】
キャリアC1としては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、または、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)が採用されてもよい。ここでは、複数の基板Wは、その表面がZ軸正方向を向く水平姿勢で、かつ、Z軸方向において並んだ状態でキャリアC1に収納される。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢である。キャリアC1内に収納される基板Wの枚数は特に制限されないものの、たとえば、25枚である。
【0039】
図1の例では、基板処理装置10には、それぞれのキャリアC1とバッチ間搬送部60との間で複数の基板Wを搬送するインデクサ搬送部20も設けられている。インデクサ搬送部20は筐体100内に設けられる。インデクサ搬送部20は、それぞれのキャリアC1から複数の基板Wを一括して取り出し、基板Wの姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変換し、起立姿勢の複数の基板Wをバッチ間搬送部60に搬送する。ここでいう起立姿勢とは、基板Wの厚み方向が水平方向に沿う姿勢である。
【0040】
インデクサ搬送部20は、たとえば、基板Wの表面がY軸負方向を向く起立姿勢で、複数の基板Wをバッチ間搬送部60に渡す。
【0041】
バッチ間搬送部60は、インデクサ搬送部20から起立姿勢の複数の基板Wを一括して受け取り、受け取った複数の基板Wを一括してバッチ処理部30に順次搬送する。
【0042】
バッチ処理部30は、複数の基板Wに対して一括してウェット処理を行うバッチ式の処理装置である。具体的には、バッチ処理部30は、後述の処理槽31を含んでいる。処理槽31には処理液が貯留される。処理槽31内の処理液に複数の基板Wが浸漬することによって、バッチ処理部30は、処理液に応じた処理を複数の基板Wに対して一括して行うことができる。
【0043】
図1の例では、複数のバッチ処理部30がX軸方向に沿って一列に配列される。また、
図1の例では、複数のバッチ処理部30として、薬液用のバッチ処理部30aと、リンス液用のバッチ処理部30bとが設けられている。
【0044】
バッチ処理部30aの処理槽31は薬液を貯留する。基板処理装置10が基板Wの犠牲膜92をエッチングする場合、薬液は、犠牲膜92を除去可能なエッチング液(たとえば、高温のリン酸)を含む。この薬液に複数の基板Wが浸漬することによって、薬液がそれぞれの基板Wのトレンチ94を通じて犠牲膜92に作用し、犠牲膜92をエッチングすることができる。
【0045】
バッチ処理部30bの処理槽31はリンス液を貯留する。リンス液はたとえば、純水を含む。薬液処理後の複数の基板Wがリンス液に浸漬することによって、複数の基板Wに付着した薬液をリンス液に置換して洗浄することができる。
【0046】
バッチ間搬送部60は、まず、起立姿勢の複数の基板Wをインデクサ搬送部20から受け取り、受け取った複数の基板Wをバッチ処理部30aに搬送する。該複数の基板Wはバッチ処理部30aによって一括に薬液処理される。これによって、たとえば、それぞれの基板Wの犠牲膜92が除去される。この犠牲膜92の除去によって、絶縁膜91が犠牲膜92によって支持されなくなる。したがって、絶縁膜91は倒壊しやすくなる。
【0047】
次に、バッチ間搬送部60は、薬液処理済みの複数の基板Wをバッチ処理部30aから受け取り、受け取った複数の基板Wをバッチ処理部30bに搬送する。この搬送において、複数の基板Wは処理液(ここでは薬液)が付着した状態で搬送される。したがって、この搬送において、乾燥に起因する基板Wの3次元構造(たとえば、絶縁膜91)の倒壊を抑制することができる。
【0048】
バッチ処理部30bに搬送された複数の基板Wは、バッチ処理部30bによって一括的にリンス処理される。これによって、それぞれの基板Wに付着した薬液がリンス液に置換される。
【0049】
図1の例では、バッチ枚葉間搬送部70は、バッチ処理部30bに対してY軸負方向に設けられている。バッチ枚葉間搬送部70は、バッチ間搬送部60によってバッチ処理部30bから取り出された複数の基板Wを受け取り、それぞれの基板Wを1枚ずつ枚葉処理部50に搬送する。
【0050】
バッチ枚葉間搬送部70は、リンス液が付着している状態の基板Wをバッチ間搬送部60から取り出す。そして、バッチ枚葉間搬送部70は、水平姿勢の基板Wそれぞれを1枚ずつ枚葉処理部50に搬送する。
【0051】
図1の例では、枚葉処理部50はバッチ枚葉間搬送部70に対してY軸負方向に設けられている。また、
図1の例では、複数の枚葉処理部50が平面視において行列状に配列されている。具体的な一例として、4つの枚葉処理部50が2行2列の行列状に配列されている。バッチ枚葉間搬送部70はそれぞれの枚葉処理部50に対して1枚ずつ基板Wを搬送する。
【0052】
枚葉処理部50は基板Wに対して、少なくとも乾燥処理を行う。乾燥処理は特に制限されないものの、たとえば、スピンドライであってもよい。すなわち、枚葉処理部50は、基板Wの中心部を通り、かつ、Z軸に沿う回転軸線Q1のまわりで基板Wを回転させることによって、基板Wを乾燥させてもよい。枚葉処理部50は1枚ずつ基板Wを乾燥させるので、より高い乾燥性能で基板Wを乾燥させることができる。したがって、乾燥に起因する基板Wの3次元構造の倒壊を抑制することができる。
【0053】
なお、枚葉処理部50は乾燥処理よりも前の処理として、適宜に、リンス液(純水)またはIPAなどを基板Wの主面に供給してもよい。
【0054】
バッチ枚葉間搬送部70は、それぞれの枚葉処理部50から乾燥処理済みの基板Wを取り出し、中継ユニット12を通じて、インデクサ搬送部20に該基板Wを搬送する。中継ユニット12は、複数の基板WをZ軸方向に沿って並べた状態で複数の基板Wを収納する収納器(不図示)を含んでいる。
【0055】
バッチ枚葉間搬送部70は枚葉処理部50から1枚ずつ基板Wを中継ユニット12に搬送する。この搬送の度に、中継ユニット12に収納される基板Wの枚数が増える。中継ユニット12に所定枚数(たとえば、25枚)の基板Wが収納されると、インデクサ搬送部20は中継ユニット12から複数の基板Wを一括して取り出し、該複数の基板Wをロードポート11のキャリアC1に搬送する。
【0056】
<基板処理装置の動作の例について>
図3は、本実施の形態に関する、基板Wに対する処理工程の一例を概略的に示すフローチャートである。
図3に例が示されるように、まず、複数の基板Wに対して、バッチ式の薬液処理が行われる(ステップST1)。
【0057】
次に、複数の基板Wに対しバッチ式のリンス処理が行われる(ステップST2)。なお、後述のように、当該リンス処理は、枚葉式のリンス処理であってもよい。
【0058】
次に、それぞれの基板Wに対し枚葉式の乾燥処理が行われる(ステップST3)。
【0059】
枚葉処理部50によって乾燥された基板Wはバッチ枚葉間搬送部70、中継ユニット12およびインデクサ搬送部20を経由してキャリアC1に搬送される。
【0060】
なお、順次行われるバッチ処理部における薬液処理の開始時刻の制御、および、バッチ処理部において薬液処理が行われる基板Wの枚数の制御については、後述する。
【0061】
以上のように、基板処理装置10によれば、バッチ処理部30が複数の基板Wを一括して処理することができる(ステップST1およびステップST2)。これによって、高いスループットで基板Wを処理することができる。
【0062】
そして、バッチ式の処理の後には複数の基板Wはリンス液が付着している状態となるので、バッチ処理部30bから枚葉処理部50へ搬送する間に、基板Wが乾燥することを抑制することができる。したがって、当該乾燥に起因する基板Wの3次元構造の倒壊を抑制することができる。
【0063】
また、基板Wは枚葉処理部50によって1枚ずつ乾燥処理を施される(ステップST3)。すなわち、本実施の形態では、バッチ式のウェット処理の後には、バッチ式ではなく、枚葉式の乾燥処理が行われる。したがって、高い乾燥性能で基板Wを乾燥させることができる。したがって、乾燥に起因する基板Wの3次元構造の倒壊を抑制することができる。
【0064】
<それぞれの構成の具体例について>
以下、基板処理装置10のそれぞれの構成の具体的な一例について述べる。
【0065】
<インデクサ搬送部について>
図1の例では、インデクサ搬送部20は搬送ロボット21を含んでいる。搬送ロボット21は、ロードポート11よりもX軸正方向において、Y軸方向に沿って移動可能に設けられている。搬送ロボット21は、ロードポート11に載置されたそれぞれのキャリアC1とX軸方向において向かい合う位置で停止することができる。
【0066】
図1の例では、搬送ロボット21は複数(たとえば、25個)のハンド211と起立支持部材212とを含む。複数のハンド211は、Z軸方向において並んで設けられている。搬送ロボット21は、複数のハンド211を移動させることによって、未処理の複数の基板WをキャリアC1から取り出す。これによって、それぞれのハンド211の上には1枚の基板Wが載置される。
【0067】
それぞれのハンド211には、その根本部において基板Wを支持する起立支持部材212が設けられている。起立支持部材212は、X軸方向において移動可能に設けられており、ハンド211の上に基板Wが保持された状態でX軸負方向に移動することによって、基板WのX軸負方向の端部をその厚み方向において挟持する。
【0068】
ここでは、搬送ロボット21は、複数の基板Wの姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変換させる姿勢変換機能を有している。具体的には、搬送ロボット21は、Y軸方向に沿う回転軸線のまわりで複数のハンド211を90度回転させる。この回転はたとえば、モータなどによって実現される。これによって、基板Wの厚み方向はX軸方向に沿う。また、搬送ロボット21は、Z軸方向に沿う回転軸線のまわりで複数のハンド211を90度回転させる。この回転もたとえば、モータなどによって実現される。これによって、基板Wの厚み方向はY軸方向に沿う。ここでは、搬送ロボット21は、基板Wの表面がY軸負方向を向くように、基板Wの姿勢を変換する。そして、搬送ロボット21は複数の基板Wを保持したまま、その移動経路のY軸正方向の端に移動し、複数の基板Wをバッチ間搬送部60に渡す。
【0069】
以上のように、インデクサ搬送部20は未処理の複数の基板WをキャリアC1から取り出し、基板Wの姿勢を起立姿勢に変換し、起立姿勢の複数の基板Wをバッチ間搬送部60に搬送する。
【0070】
また、搬送ロボット21は、その移動経路の所定の位置において、中継ユニット12から処理済みの複数の基板Wを一括して取り出す。そして、搬送ロボット21は処理済みの複数の基板Wをロードポート11のキャリアC1に収納する。
【0071】
<バッチ処理部について>
次に、バッチ処理部30について説明する。
図1の例では、複数のバッチ処理部30は、X軸方向に沿って一列に配列されている。
【0072】
図4は、バッチ処理部30の構成の一例を概略的に示す図である。バッチ処理部30は、処理槽31とリフタ32とを含んでいる。処理槽31はZ軸正方向に開口する箱形状を有し、処理液を貯留する。
【0073】
リフタ32は、複数の基板Wを起立姿勢で保持する複数(図では3つ)の保持部材33と、保持部材33を支持するベース34と、ベース34を昇降させる昇降機構35とを含む。それぞれの保持部材33は、Y軸方向に延在する長尺状の形状を有し、そのY軸正方向の基端部がベース34に取り付けられている。それぞれの保持部材33には複数の溝(不図示)がY軸方向に並んで形成されている。該溝のピッチは複数の基板Wのピッチと等しい。保持部材33のそれぞれの溝に基板Wの端部が挿入されることで、複数の保持部材33が複数の基板Wを起立姿勢で保持する。ベース34は板状の形状を有しており、その厚み方向がY軸方向に沿う姿勢で設けられる。昇降機構35はベース34を昇降させることによって、保持部材33によって保持された複数の基板Wを昇降させる。以下、昇降機構35による昇降の主体をリフタ32として説明することがある。
【0074】
リフタ32は複数の基板Wを、処理槽31よりもZ軸正方向の受渡位置と、処理槽31内の処理位置との間で昇降させる。受渡位置は、リフタ32とバッチ間搬送部60との間で複数の基板を受け渡しする際の位置である。
図4の例では、受渡位置に位置するリフタ32が実線で示されている。処理位置は、複数の基板Wが処理液に浸漬する位置である。リフタ32が複数の基板Wを処理位置に移動させることによって、複数の基板Wに対する処理が行われる。
図4の例では、処理位置に位置するリフタ32および基板Wが模式的に二点鎖線で示されている。
【0075】
ここで、処理槽31において処理される基板Wの数は、処理槽31に収容可能な全容量に対応する基板Wの数に相当する場合に限られるものではなく、たとえば、処理槽31に収容可能な全容量の半分に対応する基板Wの数であってもよい。
【0076】
その場合、処理槽31を複数の領域に分け、それぞれの領域で異なる開始タイミングの(薬液処理およびリンス処理を含む)基板処理を行ってもよい。たとえば、
図1におけるバッチ処理部30aの処理槽31において2つの領域を設け、それぞれの領域で薬液処理を行い、バッチ処理部30bの処理槽31においても対応する2つの領域を設け、それぞれの領域でリンス処理を行うことができる。
【0077】
なお、バッチ処理部30には、処理槽31に処理液を供給する供給部、および、処理槽31から処理液を排出する排出部が設けられる。また、必要に応じて、処理槽31内の処理液にガスを供給するガス供給部、および、処理槽31のZ軸正方向から溢れさせた処理液を再び処理槽31に戻す循環部の少なくともいずれか一方がバッチ処理部30に設けられてもよい。
【0078】
<バッチ間搬送部について>
バッチ間搬送部60は、搬送ロボット65と搬送ロボット66とを含んでいる。
図4の例では、バッチ間搬送部60の搬送ロボット65は、一対の保持部材611と開閉機構613とを含む。
【0079】
保持部材611は、起立姿勢の複数の基板Wを保持する部材である。保持部材611はX軸方向において並んで設けられており、図示しないベース部材に対して変位可能に取り付けられる。
【0080】
開閉機構613は保持部材611をそれぞれの閉位置と開位置との間で変位させる。閉位置は、2つの保持部材611の間隔が狭い位置であり、保持部材611が複数の基板Wを挟持する位置である。
図4の例では、閉位置に位置する保持部材611を二点鎖線で模式的に示している。開位置は、2つの保持部材611の間隔が閉位置での間隔よりも広い位置であり、保持部材611が複数の基板Wの保持を解除する位置である。開閉機構613は、たとえば、モータまたはエアシリンダを有する。
【0081】
搬送ロボット65はバッチ処理部30aとバッチ処理部30bとの直上をX軸方向において移動可能に設けられている。搬送ロボット65の移動機構(たとえば、ボールねじ機構)はバッチ処理部30よりもY軸正方向に設けられている。搬送ロボット65は、その移動経路内のX軸負方向の端部において、インデクサ搬送部20(たとえば、搬送ロボット21)から起立姿勢の複数の基板Wを受け取る。ここでは、搬送ロボット65は、基板Wの表面がY軸正方向を向く起立姿勢で複数の基板Wを受け取る。そして、搬送ロボット65は該複数の基板Wをバッチ処理部30a、バッチ処理部30bにこの順で搬送する。
【0082】
搬送ロボット66は、バッチ処理部30bの直上をX軸方向に沿って移動可能に設けられている。搬送ロボット66はバッチ処理部30bから起立姿勢の複数の基板Wを受け取り、該複数の基板Wをバッチ枚葉間搬送部70に搬送する。
【0083】
また、搬送ロボット66はバッチ処理部30bから起立姿勢の複数の基板Wを受け取り、複数の基板Wの姿勢を起立姿勢から水平姿勢に変換する。
【0084】
図5および
図6は、搬送ロボット66の構成の一例を概略的に示す図である。
図5は、Y軸方向に沿って見た場合の搬送ロボット66を示し、
図6は、Z軸方向に沿って見た場合の搬送ロボット66を示す。
【0085】
図5および
図6に例が示されるように、搬送ロボット66は、一対の保持部材661とベース662と開閉機構663と回転機構664とを含む。保持部材661は、複数の基板Wを保持する部材である。
【0086】
保持部材661は、接触部材6611と支持部材6612と回転部材6613とを含んでいる。それぞれの支持部材6612は、たとえば、Y軸方向に長い長尺状の形状を有しており、そのY軸正方向の基端部がベース662に対して変位可能に取り付けられている。2つの支持部材6612はX軸方向において互いに間隔を空けて設けられている。
【0087】
開閉機構663は、支持部材6612をそれぞれの開位置と閉位置との間で変位させる。閉位置は、2つの支持部材6612の間隔が狭い位置であり、保持部材661が複数の基板Wを支持する位置である。開位置は、2つの支持部材6612の間隔が広い位置であり、保持部材661が基板Wの保持を解除する位置である。開閉機構663は、たとえば、モータまたはエアシリンダなどを有する。
【0088】
それぞれの回転部材6613は、回転軸線Q5のまわりで回転可能に支持部材6612に取り付けられている。回転軸線Q5はX軸方向に沿う軸である。2つの回転部材6613は同軸上に設けられている。
【0089】
回転部材6613の互いに近い側の端部には、接触部材6611が設けられている。すなわち、X軸負方向の回転部材6613のX軸正方向端部には、X軸負方向に位置する接触部材6611が設けられ、X軸正方向の回転部材6613のX軸負方向端部には、X軸正方向に位置する接触部材6611が設けられている。
【0090】
接触部材6611は、ベース662に対して、支持部材6612および回転部材6613と一体に変位する。したがって、開閉機構663が支持部材6612を閉位置に移動させると、接触部材6611同士の間の間隔を狭くなる。この閉位置において、接触部材6611は起立姿勢の複数の基板Wを支持する。
【0091】
図5の例では、接触部材6611は、接触部材6611同士の間の間隔がZ軸負方向に向かうにつれて狭くなる弧状形状を有している。閉位置において、それぞれの接触部材6611のZ軸負方向の部分が複数の基板Wの側面に接触して、複数の基板Wを支持する。また、接触部材6611の互いに向かい合う面には、Y軸方向に沿って並ぶ複数の溝が形成される。当該溝のピッチは複数の基板Wのピッチと等しい。それぞれの溝に基板Wの端部が挿入されることで、それぞれの基板Wがそれぞれの接触部材6611によってY軸方向でも支持される。これによって、基板Wの起立姿勢が維持される。
【0092】
なお、接触部材6611のそれぞれの溝は、それぞれの基板Wを接触部材6611からZ軸正方向に引き抜くことができる形状を有している。以下では、起立姿勢において接触部材6611のZ軸正方向の端部をアクセス側端部と称する場合がある。
【0093】
回転機構664は、回転部材6613を支持部材6612に対して回転軸線Q5のまわりで90度回転させる。これによって、接触部材6611に保持された複数の基板Wも回転軸線Q5のまわりで90度回転し、基板Wの姿勢が起立姿勢から水平姿勢に変換される。ここでは、回転機構664は基板Wの表面がZ軸正方向を向き、かつ、接触部材6611のアクセス側端部がY軸負方向を向くように複数の基板Wを90度回転させる。
【0094】
移動機構665は、ベース662をX軸方向に沿って移動させる。これによって、保持部材661によって保持された複数の基板WをX軸方向に沿って移動させることができる。
【0095】
ここで、バッチ間搬送部60からバッチ枚葉間搬送部70への搬送の手順について述べる。まず、移動機構665は搬送ロボット66をバッチ処理部30bに対応する受渡位置に移動させる。次に、開閉機構663が保持部材661を開位置に移動させ、リフタ32が複数の基板Wを上昇させる。これによって、複数の基板Wが2つの保持部材661の間に位置する。次に、開閉機構663が保持部材661を閉位置に移動させる。これによって、保持部材661が複数の基板Wを保持する。次に、リフタ32が待機位置に下降し、回転機構664が回転部材6613を90度回転させる。これによって、複数の基板Wの表面がZ軸正方向を向き、保持部材661のアクセス側端部がY軸負方向を向く。
【0096】
そして、バッチ枚葉間搬送部70に基板Wが搬送され、さらにバッチ枚葉間搬送部70が、水平姿勢である基板Wをそれぞれの枚葉処理部50へ搬送することができる。
【0097】
<枚葉処理部について>
図7は、枚葉処理部50の構成の一例を概略的に示す図である。枚葉処理部50は、基板保持部51を含んでいる。基板保持部51は、基板Wを水平姿勢で保持する。
図7の例では、基板保持部51は、ステージ511と複数のチャックピン512とを含んでいる。ステージ511は円板形状を有し、基板WよりもZ軸負方向に設けられる。ステージ511は、その厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢で設けられる。
【0098】
複数のチャックピン512は、ステージ511のZ軸正方向の主面(つまり、上面)に設けられている。それぞれのチャックピン512は、基板Wの周縁に接触するチャック位置と、基板Wの周縁から離れる解除位置との間で変位可能に設けられる。複数のチャックピン512がそれぞれのチャック位置に移動すると、複数のチャックピン512が基板Wを保持する。複数のチャックピン512がそれぞれの解除位置に移動すると、基板Wの保持が解除される。
【0099】
図7の例では、基板保持部51は回転機構513をさらに含んでおり、回転軸線Q1のまわりで基板Wを回転させる。回転軸線Q1は基板Wの中心部を通り、かつ、Z軸方向に沿う軸である。たとえば、回転機構513はシャフト514とモータ515とを含む。シャフト514のZ軸正方向の端部(つまり、上端)はステージ511のZ軸負方向の主面(つまり、下面)に連結され、ステージ511の下面から回転軸線Q1に沿って延在する。モータ515はシャフト514を回転軸線Q1のまわりで回転させて、ステージ511および複数のチャックピン512を一体に回転させる。これによって、複数のチャックピン512によって保持された基板Wが回転軸線Q1のまわりで回転する。このような基板保持部51はスピンチャックとも呼ばれ得る。
【0100】
基板保持部51が基板Wを回転軸線Q1のまわりで高速回転させることによって、基板Wに付着した液体を基板Wの周縁から飛散させて、基板Wを乾燥させることができる(いわゆるスピンドライ)。
【0101】
図7の例では、枚葉処理部50はガード52も含んでいる。ガード52は筒状の形状を有しており、基板保持部51によって保持された基板Wを囲む。ガード52は基板Wの周縁から飛散した液体を受け止める。
【0102】
図7の例では、枚葉処理部50はノズル53も含んでいる。ノズル53は基板Wへの純水またはイソプロピルアルコールなどの供給に使われる。ノズル53は、移動機構54によってノズル処理位置とノズル待機位置との間で移動可能に設けられている。ノズル処理位置は、たとえば、基板Wの表面の中央部とZ軸方向において対向する位置であり、ノズル待機位置は、たとえば、基板Wよりも径方向外側の位置である。
【0103】
移動機構54は、たとえば、ボールねじ機構などの機構またはアーム旋回機構を有する。ノズル53がノズル処理位置に位置する状態で、回転中の基板Wに純水またはイソプロピルアルコールなどを吐出する。これによって、基板Wの表面に着液した液体は遠心力を受けて基板Wの表面の全面に広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。
【0104】
<バッチ枚葉間搬送部について>
図1の例では、バッチ枚葉間搬送部70は、搬送ロボット74と搬送ロボット73とを含んでいる。
【0105】
搬送ロボット74は、X軸方向に移動可能に設けられる。搬送ロボット74は、バッチ処理部30cと向かい合う位置に移動可能である。搬送ロボット74はハンド741を含んでおり、ハンド741を移動させることで、搬送ロボット66から水平姿勢の基板Wを取り出す。
【0106】
搬送ロボット74は、複数のハンド741を含んでいてもよい。この場合、搬送ロボット74は、複数の基板Wをハンド741によって取り出してもよい。搬送ロボット66が保持する基板Wの枚数以上のハンド741が設けられている場合には、搬送ロボット74は搬送ロボット66によって保持されたすべての基板Wを取り出してもよい。
【0107】
搬送ロボット73は、搬送ロボット74から直接に基板Wを取り出してもよいものの、
図1の例では、中継ユニット75が設けられている。中継ユニット75は、搬送ロボット74よりもY軸負方向に設けられている。中継ユニット75は、水平姿勢の複数の基板WをZ軸方向に並べて収納する据え置き型の収納器(不図示)を含む。
【0108】
搬送ロボット74は、水平姿勢の複数の基板Wを中継ユニット75の収納器に収納する。
【0109】
搬送ロボット73は、中継ユニット75よりもY軸負方向に設けられている。搬送ロボット73はハンド731を含んでおり、ハンド731を移動させることで中継ユニット75から基板Wを順次に取り出し、該基板Wをそれぞれの枚葉処理部50に搬送する。搬送ロボット73は、複数のハンド731を含んでいてもよい。
【0110】
搬送ロボット73は、Y軸方向に沿って移動可能に設けられており、その搬送経路の両側のそれぞれにおいて、複数の枚葉処理部50がY軸方向に沿って並んで配列される。
【0111】
また、搬送ロボット73は、乾燥処理済みの基板Wをそれぞれの枚葉処理部50から順次に取り出し、中継ユニット75に順次に搬送する。これによって、中継ユニット75内の基板Wのすべてがいずれ乾燥処理済みの基板Wに置き換わる。
【0112】
搬送ロボット74は、乾燥処理済みの複数の基板Wを中継ユニット75から一括して取り出し、該複数の基板Wを、中継ユニット12を介して搬送ロボット21に搬送する。そして、搬送ロボット21は複数の基板WをキャリアC1に搬送する。
【0113】
<遮断板について>
図8は、搬送ロボット66およびその周辺の構成の一例を概略的に示す図である。
図8に例示するように、搬送ロボット66よりもZ軸正方向、かつ、ファンフィルターユニット80よりもZ軸負方向には、遮蔽板81が設けられていてもよい。ファンフィルターユニット80は、筐体100の上部に設けられ、かつ、クリーンルーム内の空気を取り込んで当該空気を筐体100内の枚葉処理部50などに送り出すためのファンおよびフィルタ(たとえば、high efficiency particulate air filter(HEPA)フィルタ)を備える。
【0114】
遮蔽板81は、搬送ロボット66によって保持された複数の基板WとZ軸方向において対向する位置に設けられており、平面視において、搬送ロボット66によって保持された複数の基板Wを覆う。すなわち、平面視における遮蔽板81の輪郭は、姿勢変換の直前の複数の基板Wおよび姿勢変換の直後の複数の基板Wの両方を囲む。
【0115】
これによれば、ファンフィルターユニット80からの気流が遮蔽板81によって遮られるので、搬送ロボット66によって保持された複数の基板Wに気流が作用することを抑制することができる。したがって、当該気流に起因する基板Wの乾燥を抑制することができるので、乾燥に起因する基板Wの3次元構造の倒壊を抑制することができる。
【0116】
遮蔽板81は搬送ロボット66と一体に移動可能であってもよい。たとえば、遮蔽板81は不図示の固定部材を介して搬送ロボット66のベース662に取り付けられていてもよい。これによれば、搬送ロボット66の位置によらずに、遮蔽板81が搬送ロボット66によって保持された複数の基板Wの直上に位置するので、複数の基板Wに気流が当たることを確実に抑制することができる。
【0117】
また、遮蔽板81は基板処理装置10の筐体100に対して移動不能に固定されていてもよい。この場合、遮蔽板81は搬送ロボット66の移動領域の全体に設けられていてもよい。
【0118】
なお、本実施の形態では、姿勢変換の機能は搬送ロボット66に具備されているが、搬送ロボット66が姿勢変換の機能を有さずに、搬送ロボット74が姿勢変換の機能を有していてもよいし、姿勢変換を行うための構成(姿勢変換部)が別途設けられていてもよい。姿勢変換部における姿勢変換のための機構は、たとえば、搬送ロボット66における保持部材661と同様の機構で実現することができる。
【0119】
姿勢変換部で姿勢変換の機能が実現される場合には、遮蔽板81を姿勢変換部の上方に位置させる(たとえば、姿勢変換部の上方を覆う蓋形状とする)ことによって、上記と同様に、複数の基板Wに気流が当たることを確実に抑制することができる。
【0120】
<薬液処理の開始時刻について>
以下、バッチ処理部30で薬液処理およびリンス処理が行われた後の基板Wを、待ち時間を抑制しつつ枚葉処理部50に搬送して、枚葉処理部50において乾燥処理を行うための、薬液処理の開始時刻について説明する。
【0121】
バッチ処理部30における基板処理が行われた後のタイミングで、枚葉処理部50が基板処理中である場合(複数の枚葉処理部50が設けられる場合にはそのいずれもが基板処理中である場合)、すなわち、枚葉処理部50の空きがない場合には、バッチ処理部30における基板処理を終えた基板Wは所定の場所で待機する必要がある。
【0122】
本実施の形態では、このような基板Wの待機場所は、リンス液用のバッチ処理部30bの処理槽31内であるものとする。基板Wがリンス液用のバッチ処理部30bの処理槽31内で待機することによって、待機している間に基板Wが乾燥することが抑制されるため、基板Wの表面に形成されたパターンが損傷(倒壊)することを抑制することができる。
【0123】
ここで、バッチ処理部30における基板処理と、枚葉処理部50における基板処理と、上記の待ち時間との間には、以下のような関係が成り立つ。
【0124】
【0125】
ここで、TRは、バッチ処理部30bにおけるリンス処理の残り時間を示し、TTLは、基板Wの待機場所(本実施の形態ではバッチ処理部30bの処理槽31内)から枚葉処理部50まで移動するためにかかる時間を示し、TSLは、複数の枚葉処理部50において進行中の基板処理(本実施の形態では乾燥処理)の残り時間のうちの最も長いもの(枚葉処理部50が1つである場合にはその1つの枚葉処理部50における進行中の基板処理の残り時間)を示し、CNは、待機場所に待機している基板Wの枚数を枚葉処理部50の数で割った値の切り上げ整数値(すなわち、小数点以下が0でなかった場合に整数部分を1増やし、かつ、小数点以下を0とする端数処理が行われた値)を示し、TSは、それぞれの枚葉処理部50における基板処理(本実施の形態では乾燥処理)に要する時間を示し、TPは、バッチ処理部30における薬液処理に要する時間を示し、TDは、基板Wの待機場所(本実施の形態ではバッチ処理部30bの処理槽31内)における待ち時間を示す。ここで、薬液処理が行われた後で、かつ、枚葉処理部50で乾燥処理が行われる前の基板Wの枚数を待機枚数とする。本実施の形態では、待機枚数は、待機場所に待機している基板Wの枚数である。
図9は、式(1)の関係を模式的に示す概念図である。
【0126】
ここで、待機場所に待機している基板Wが枚葉処理部50における基板処理を終えるまでにかかる時間を所要時間とする。上記の式(1)では、左辺の合計が所要時間に対応する。
【0127】
また、上記の式(1)のうち、CNは、枚葉処理部50に分配されたすべての基板Wを処理し終えるまでに要する基板処理の繰り返し数に相当する。また、本実施の形態では枚葉処理部50の数は4つであるが、枚葉処理部50の数は1つ以上であればよい。
【0128】
また、基板Wが待機場所から枚葉処理部50まで移動するための時間であるTTLには、搬送ロボット66によって行われる基板Wの姿勢変換にかかる時間も含まれる。
【0129】
上記の式(1)を参照すれば、バッチ処理部30における薬液処理を終えた基板Wが待機場所で待つ待ち時間(TD)を算出することができる。逆に言えば、上記の式(1)を参照して算出された待ち時間(TD)以上にバッチ処理部30における薬液処理の開始時刻を遅らせれば、バッチ処理部30における薬液処理にかかる時間(TP)よりも所要時間(左辺の合計)が短くなる。そのため、遅らせた当該タイミングで薬液処理が開始された基板Wは、バッチ処理部30bにおいて待機せずに円滑に枚葉処理部50に搬送され、かつ、枚葉処理部50において乾燥処理が行われることとなる。すなわち、上記の式(1)を参照して算出された待ち時間(TD)以上にバッチ処理部30における薬液処理の開始時刻を遅らせれば、少なくとも、待機場所で待つ基板Wの増大を抑制することができる。
【0130】
以上より、算出された待ち時間(TD)以上にバッチ処理部30における薬液処理の開始時刻を遅らせることによって、待機場所で待つ基板Wの増大を抑制して、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0131】
<薬液処理が行われる基板Wの枚数について>
以下、バッチ処理部30で薬液処理およびリンス処理が行われた後の基板Wを、待ち時間を抑制しつつ枚葉処理部50に搬送して、枚葉処理部50において乾燥処理を行うための、薬液処理が行われる基板Wの枚数について説明する。
【0132】
上記のように、バッチ処理部30における基板処理と、枚葉処理部50における基板処理と、基板Wの待ち時間との間には式(1)のような関係が成り立つが、バッチ処理部30における薬液処理が行われる基板Wの枚数(処理枚数WI)を制御することによっても、待機場所で待つ基板Wの増大を抑制することができる。
【0133】
ここで、式(1)において待ち時間(TD)を0とし、かつ、枚葉処理部50において進行中の基板処理がないものとすると、式(1)は以下のように変形される。
図10は、以下の式(2)の関係を模式的に示す概念図である。
【0134】
【0135】
そして、上記の式(2)が成り立つCNを算出することによって、待ち時間(TD)を0とすることができる基板Wの処理枚数WIを算出することができる。ここで、CNは基板Wの待機枚数を枚葉処理部50の数で割った値の切り上げ整数値であるので、算出されたCNに枚葉処理部50の数を掛けることによって、基板Wのおおよその処理枚数WIを算出することができる。
【0136】
バッチ処理部30において薬液処理が行われる基板Wの処理枚数を、上記のように算出された処理枚数WI以下とすることによって、上記の所要時間が、バッチ処理部30において薬液処理にかかる時間よりも短くなる。
【0137】
以上より、バッチ処理部30における薬液処理を、算出された処理枚数WI以下の基板Wに対して行うことによって、待機場所で待つ基板Wの増大を抑制して、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0138】
<第2の実施の形態>
本実施の形態に関する基板処理方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0139】
<基板処理装置の全体構成について>
図11は、本実施の形態に関する、基板処理装置10Aの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図1において、Z軸方向が鉛直上方向である。基板処理装置10Aは、基板Wに対してウェット処理を行う装置である。
【0140】
図11に例が示されるように、基板処理装置10Aは、複数の基板Wに対して一括して処理を行うバッチ処理部130と、枚葉処理部50と、バッチ間搬送部60と、バッチ枚葉間搬送部70とを備える。
【0141】
図11の例では、複数のバッチ処理部130として、薬液用のバッチ処理部30aと、待機用のバッチ処理部30cとが設けられている。
【0142】
バッチ処理部30cは、バッチ処理部30aと同様に処理槽31とリフタ32とを含むが、バッチ処理部30cの処理槽31には、薬液が貯留されないか、または、基板Wに対して反応性を有さない処理液(たとえば、常温のリン酸)を貯留する。薬液処理後の複数の基板Wは、枚葉処理部50に搬送されるまでの間バッチ処理部30cで待機する。
【0143】
バッチ間搬送部60は、薬液処理済みの複数の基板Wをバッチ処理部30aから受け取り、受け取った複数の基板Wをバッチ処理部30cに搬送する。この搬送において、複数の基板Wは処理液(ここでは薬液)が付着した状態で搬送される。したがって、この搬送において、乾燥に起因する基板Wの3次元構造(たとえば、絶縁膜91)の倒壊を抑制することができる。
【0144】
図11の例では、バッチ枚葉間搬送部70は、バッチ処理部30cに対してY軸負方向に設けられている。バッチ枚葉間搬送部70は、バッチ間搬送部60によってバッチ処理部30cから取り出された複数の基板Wを受け取り、それぞれの基板Wを1枚ずつ枚葉処理部50に搬送する。
【0145】
枚葉処理部50は基板Wに対して、リンス処理および乾燥処理を行う。乾燥処理については、枚葉処理部50は1枚ずつ基板Wを乾燥させるので、より高い乾燥性能で基板Wを乾燥させることができる。したがって、乾燥に起因する基板Wの3次元構造の倒壊を抑制することができる。
【0146】
<薬液処理の開始時刻について>
以下、バッチ処理部130で薬液処理が行われた後の基板Wを、待ち時間を抑制しつつ枚葉処理部50に搬送して、枚葉処理部50においてリンス処理および乾燥処理を行うための、薬液処理の開始時刻について説明する。
【0147】
バッチ処理部130における基板処理が行われた後のタイミングで、枚葉処理部50が基板処理中である場合(複数の枚葉処理部50が設けられる場合にはそのいずれもが基板処理中である場合)、すなわち、枚葉処理部50の空きがない場合には、バッチ処理部130における基板処理を終えた基板Wは所定の場所で待機する必要がある。
【0148】
本実施の形態では、このような基板Wの待機場所は、リンス液用のバッチ処理部30cの処理槽31内であるものとする。基板Wが待機するバッチ処理部30cの処理槽31に反応性を有さない薬液が貯留されている場合には、待機している間に基板Wが乾燥することが抑制されるため、基板Wの表面に形成されたパターンが損傷(倒壊)することを抑制することができる。
【0149】
ここで、バッチ処理部130における基板処理と、枚葉処理部50における基板処理と、上記の待ち時間との間には、以下のような関係が成り立つ。
【0150】
【0151】
ここで、TTLは、基板Wの待機場所(本実施の形態ではバッチ処理部30cの処理槽31内)から枚葉処理部50まで移動するためにかかる時間を示し、TSLは、複数の枚葉処理部50において進行中の基板処理(本実施の形態ではリンス処理および乾燥処理)の残り時間のうちの最も長いもの(枚葉処理部50が1つである場合にはその1つの枚葉処理部50における進行中の基板処理の残り時間)を示し、CNは、待機場所に待機している基板Wの枚数(待機枚数)を枚葉処理部50の数で割った値の切り上げ整数値(すなわち、小数点以下が0でなかった場合に整数部分を1増やし、かつ、小数点以下を0とする端数処理が行われた値)を示し、TSは、それぞれの枚葉処理部50における基板処理(本実施の形態ではリンス処理および乾燥処理)に要する時間を示し、TPは、バッチ処理部130における薬液処理に要する時間を示し、TDは、基板Wの待機場所(本実施の形態ではバッチ処理部30cの処理槽31内)における待ち時間を示す。
図12は、式(3)の関係を模式的に示す概念図である。
【0152】
ここで、待機場所に待機している基板Wが枚葉処理部50における基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間は、上記の式(3)における左辺の合計に対応する。
【0153】
上記の式(3)を参照すれば、バッチ処理部130における薬液処理を終えた基板Wが待機場所で待つ待ち時間(TD)を算出することができる。よって、上記の式(3)を参照して算出された待ち時間(TD)以上にバッチ処理部130における薬液処理の開始時刻を遅らせれば、バッチ処理部130における薬液処理にかかる時間(TP)よりも所要時間(左辺の合計)が短くなる。そのため、遅らせた当該タイミングで薬液処理が開始された基板Wは、バッチ処理部30cにおいて待機せずに円滑に枚葉処理部50に搬送され、かつ、枚葉処理部50においてリンス処理および乾燥処理が行われることとなる。
【0154】
以上より、算出された待ち時間(TD)以上にバッチ処理部130における薬液処理の開始時刻を遅らせることによって、待機場所で待つ基板Wの増大を抑制して、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0155】
<薬液処理が行われる基板Wの枚数について>
以下、バッチ処理部130で薬液処理が行われた後の基板Wを、待ち時間を抑制しつつ枚葉処理部50に搬送して、枚葉処理部50においてリンス処理および乾燥処理を行うための、薬液処理が行われる基板Wの枚数について説明する。
【0156】
上記のように、バッチ処理部130における基板処理と、枚葉処理部50における基板処理と、基板Wの待ち時間との間には式(3)のような関係が成り立つが、バッチ処理部130における薬液処理が行われる基板Wの枚数(処理枚数WI)を制御することによっても、待機場所で待つ基板Wの増大を抑制することができる。
【0157】
ここで、式(3)において待ち時間(TD)を0とし、かつ、枚葉処理部50において進行中の基板処理がないものとすると、式(3)は以下のように変形される。
図13は、以下の式(4)の関係を模式的に示す概念図である。
【0158】
【0159】
そして、上記の式(4)が成り立つCNを算出することによって、待ち時間(TD)を0とすることができる基板Wの処理枚数WIを算出することができる。
【0160】
バッチ処理部130において薬液処理が行われる基板Wの処理枚数を、上記のように算出された処理枚数WI以下とすることによって、上記の所要時間が、バッチ処理部130において薬液処理にかかる時間よりも短くなる。
【0161】
以上より、バッチ処理部130における薬液処理を、算出された処理枚数WI以下の基板Wに対して行うことによって、待機場所で待つ基板Wの増大を抑制して、バッチ処理部130および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0162】
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。すなわち、以下では便宜上、対応づけられる具体的な構成のうちのいずれか1つのみが代表して記載される場合があるが、代表して記載された具体的な構成が対応づけられる他の具体的な構成に置き換えられてもよい。
【0163】
また、当該置き換えは、複数の実施の形態に跨ってなされてもよい。すなわち、異なる実施の形態において例が示されたそれぞれの構成が組み合わされて、同様の効果が生じる場合であってもよい。
【0164】
以上に記載された実施の形態によれば、複数の基板Wに対する薬液処理を含む基板処理を行うバッチ処理部30(または、バッチ処理部130)と、1枚の基板Wに対する乾燥処理を含む基板処理を行う少なくとも1つの枚葉処理部50とを使って基板処理を行う基板処理方法において、以下の工程を備える。すなわち、バッチ処理部30において薬液処理が行われた後で、かつ、枚葉処理部50において乾燥処理が行われる前の基板Wの枚数である待機枚数に応じて、基板Wが枚葉処理部50における基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間を算出する工程と、所要時間が、バッチ処理部30における薬液処理にかかる時間よりも短くなるように、バッチ処理部30における薬液処理の開始時刻を制御する工程とを備える。
【0165】
このような構成によれば、バッチ処理部30における薬液処理の開始時刻を制御することによって、バッチ処理部30における薬液処理が行われた後に、枚葉処理部50において乾燥処理が行われるまでに待機している基板Wの枚数が増大することを抑制することができる。よって、待機している基板Wを収容するための待機槽などを別途用意するなどの必要がなく、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0166】
なお、特段の制限がない場合には、それぞれの処理が行われる順序は変更することができる。
【0167】
また、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0168】
また、以上に記載された実施の形態によれば、所要時間には、進行中の基板処理の残り時間を含む。このような構成によれば、枚葉処理部50における基板処理の開始タイミングに関わらず、進行中の洗浄処理、乾燥処理の残り時間も考慮して所要時間を算出することができるため、所要時間の算出精度を高めることができる。よって、バッチ処理部30における基板処理の後に枚葉処理部50における基板処理が行われる基板の待ち時間を短くすることができる。
【0169】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理方法において、以下の工程を備える。すなわち、バッチ処理部30において薬液処理が行われた後で、かつ、枚葉処理部50において乾燥処理が行われる前の基板Wの枚数である待機枚数に応じて、基板Wが枚葉処理部50における基板処理を終えるまでにかかる時間である所要時間を算出する工程と、所要時間が、バッチ処理部30における薬液処理にかかる時間よりも短くなるように、バッチ処理部30における基板Wの処理枚数を変更する工程とを備える。
【0170】
このような構成によれば、バッチ処理部における基板の処理枚数を変更することによって、バッチ処理部における薬液処理が行われた後に、枚葉処理部において乾燥処理が行われるまでに待機している基板の枚数が増大することを抑制することができる。よって、待機している基板Wを収容するための待機槽などを別途用意するなどの必要がなく、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0171】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理方法は、バッチ処理部30において、薬液処理が行われた後の複数の基板Wを洗浄槽に浸漬させて洗浄処理を行う工程を備える。ここで、洗浄槽は、たとえば、バッチ処理部30bにおける処理槽31などに対応するものである。そして、所要時間を算出する工程は、バッチ処理部30bにおける処理槽31に浸漬している基板Wの待機枚数に応じて、洗浄処理にかかる時間を含む所要時間を算出する工程である。このような構成によれば、薬液処理が行われた後の基板Wが、リンス液が貯留されている処理槽31内で枚葉処理部50における処理を待つこととなるので、基板Wが乾燥して基板Wの表面に形成されたパターンが倒壊することを抑制することができる。また、リンス処理がバッチ処理部30で複数の基板Wに対して一括して行われるため、リンス処理にかかる時間が短縮され、基板処理全体の時間も短縮される。
【0172】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理方法は、枚葉処理部50において、乾燥処理が行われる前の基板Wに洗浄処理を行う工程を備える。このような構成によれば、リンス処理が枚葉処理部50で行われるため、基板Wの性質に合わせて自由度が高く、かつ、リンス液の消費量が抑えられたリンス処理を行うことができる。
【0173】
また、以上に記載された実施の形態によれば、所要時間を算出する工程は、バッチ処理部130から枚葉処理部50まで移動する前の基板Wの待機枚数に応じて、洗浄処理にかかる時間を含む所要時間を算出する工程である。このような構成によれば、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0174】
また、以上に記載された実施の形態によれば、バッチ処理部30における薬液処理は、基板Wを薬液槽に浸漬させて行われる。ここで、薬液槽は、たとえば、バッチ処理部30aにおける処理槽31などに対応するものである。そして、基板処理方法は、バッチ処理部30において、薬液処理が行われた後の複数の基板Wをバッチ処理部30bにおける処理槽31に浸漬させて洗浄処理を行う工程を備える。ここで、バッチ処理部30aにおける処理槽31は、薬液処理が第1の開始時刻で開始される第1の領域と、薬液処理が第1の開始時刻とは異なる時刻である第2の開始時刻で開始される第2の領域とを備え、バッチ処理部30bにおける処理槽31は、第1の領域で薬液処理が行われた基板Wに洗浄処理を行う第3の領域と、第2の領域で薬液処理が行われた基板Wに洗浄処理を行う第4の領域とを備える。このような構成によれば、単一の処理槽31における複数の領域で異なるタイミングで基板処理を進めることで、基板Wの処理枚数または基板処理の内容に対する自由度が高まる。また、バッチ処理部30において同時に基板処理が終了する基板Wの枚数が小さくなるため、枚葉処理部50において要求される基板Wの最大処理枚数が小さくなる。結果として、バッチ処理部30における基板処理の後に枚葉処理部50における基板処理が行われる基板Wの待ち時間を効果的に短くすることができる。
【0175】
また、以上に記載された実施の形態によれば、所要時間は、基板Wがバッチ処理部30から枚葉処理部50まで移動するためにかかる時間を含む。このような構成によれば、バッチ処理部30から枚葉処理部50まで基板Wを移動させるための時間も考慮して、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0176】
また、以上に記載された実施の形態によれば、所要時間は、バッチ処理部30において基板処理された基板Wが枚葉処理部50において基板処理されるための姿勢変換にかかる時間を含む。このような構成によれば、バッチ処理に適する起立姿勢(鉛直姿勢)から枚葉処理に適する水平姿勢に姿勢変換するための時間も考慮して、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0177】
また、以上に記載された実施の形態によれば、所要時間は、待機枚数の基板Wが複数の枚葉処理部50に分配された場合の、1つの枚葉処理部50において繰り返し行われる基板処理にかかる時間を含む。このような構成によれば、待機している基板Wが枚葉処理部50に分配されてそのすべての基板Wを処理し終えるまでに要する基板処理の繰り返し数も考慮して、バッチ処理部30および枚葉処理部50によって行われる基板処理全体を効率的に進めることができる。
【0178】
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、限定的なものではないものとする。
【0179】
したがって、例が示されていない無数の変形例と均等物とが、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施の形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態における構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0180】
また、以上に記載された実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【符号の説明】
【0181】
10,10A 基板処理装置
11 ロードポート
12,75 中継ユニット
20 インデクサ搬送部
21,65,66,73,74 搬送ロボット
30,30a,30b,30c,130 バッチ処理部
31 処理槽
32 リフタ
33,611,661 保持部材
34,662 ベース
35 昇降機構
50 枚葉処理部
51 基板保持部
52 ガード
53 ノズル
54,665 移動機構
60 バッチ間搬送部
70 バッチ枚葉間搬送部
80 ファンフィルターユニット
81 遮蔽板
90 積層構造
91 絶縁膜
92 犠牲膜
93 支持層
94 トレンチ
100 筐体
211,731,741 ハンド
212 起立支持部材
511 ステージ
512 チャックピン
513,664 回転機構
514 シャフト
515 モータ
613,663 開閉機構
6611 接触部材
6612 支持部材
6613 回転部材