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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178497
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】振動式部品搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/24 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B65G27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085347
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】松島 昌良
(72)【発明者】
【氏名】梶本 武志
(72)【発明者】
【氏名】志村 洋一
【テーマコード(参考)】
3F037
【Fターム(参考)】
3F037AA04
3F037BA03
3F037CA11
3F037CB02
3F037CB03
3F037CB06
3F037CC01
(57)【要約】
【課題】トラフのピッチング運動を確実に抑制することが可能な複合振動式の部品搬送装置を提供する。
【解決手段】上部振動体2に前後方向の加振力を付与する水平加振用電磁石8と、上部振動体2に上下方向の加振力を付与する鉛直加振用電磁石9とを有する振動式部品搬送装置において、鉛直加振用電磁石9は、上部振動体2の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、水平加振用電磁石8を間に挟んで前後に並んで設けられた前側鉛直加振用電磁石9aおよび後側鉛直加振用電磁石9bで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に直線状に延びる部品搬送路(11)をもつトラフ(1)と、
前記トラフ(1)が取り付けられる上部振動体(2)と、
床(F)上に設置されるベース板(5)と、
前記ベース板(5)の上側に対向して配置される基台(4)と、
前記基台(4)と前記ベース板(5)とを連結する防振連結部材(10)と、
前記上部振動体(2)と前記基台(4)との間に設けられる中間振動体(3)と、
前記上部振動体(2)と前記中間振動体(3)とを連結する第1の振動用板ばね(6)と、
前記中間振動体(3)と前記基台(4)とを連結する第2の振動用板ばね(7)と、
前記上部振動体(2)に前後方向の加振力を付与する水平加振用電磁石(8)と、
前記上部振動体(2)に上下方向の加振力を付与する鉛直加振用電磁石(9)とを有し、
前記第1の振動用板ばね(6)と前記第2の振動用板ばね(7)のうちの一方を前後方向に振動する水平振動用板ばねとし、前記第1の振動用板ばね(6)と前記第2の振動用板ばね(7)のうちの他方を上下方向に振動する鉛直振動用板ばねとした振動式部品搬送装置において、
前記鉛直加振用電磁石(9)は、前記上部振動体(2)の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、前記水平加振用電磁石(8)を間に挟んで前後に並んで設けられた前側鉛直加振用電磁石(9a)および後側鉛直加振用電磁石(9b)で構成されていることを特徴とする振動式部品搬送装置。
【請求項2】
前記上部振動体(2)の前後方向の変位を検出する水平変位センサ(23)と、
前記上部振動体(2)の前側部分の前記ベース板(5)に対する上下方向の変位を検出する前側鉛直変位センサ(21a)と、
前記上部振動体(2)の後側部分の前記ベース板(5)に対する上下方向の変位を検出する後側鉛直変位センサ(21b)と、
前記水平変位センサ(23)の出力信号と前記前側鉛直変位センサ(21a)の出力信号と前記後側鉛直変位センサ(21b)の出力信号とに基づいて前記水平加振用電磁石(8)と前記前側鉛直加振用電磁石(9a)と前記後側鉛直加振用電磁石(9b)の作動を制御するコントローラ(25)と、を更に有する請求項1に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項3】
前記上部振動体(2)と前記中間振動体(3)とを連結する前記第1の振動用板ばね(6)が前記水平振動用板ばねであり、前記中間振動体(3)と前記基台(4)とを連結する前記第2の振動用板ばね(7)が前記鉛直振動用板ばねである請求項1または2に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項4】
前記水平振動用板ばねは、前後方向を板厚方向とし、水平方向のうち前後方向に直交する方向である左右方向を長手方向とするように配置され、
前記水平振動用板ばねの左右方向の一端が前記上部振動体(2)に固定され、他端が前記中間振動体(3)に固定されている請求項3に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項5】
前記基台(4)は、前記上部振動体(2)および前記中間振動体(3)を間にして、水平方向のうち前後方向に直交する方向である左右方向に対向して配置される左右一対の側板(4b)を有し、
前記一対の側板(4b)は、前記上部振動体(2)の上端よりも上方まで延びる高さを有する請求項1から4のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項6】
前記中間振動体(3)と前記水平加振用電磁石(8)とが水平方向に見て重なる配置となるように、前記水平加振用電磁石(8)は、前記中間振動体(3)の中央部分を上下方向に貫通して形成した水平加振用電磁石収容孔(18)に収容した状態で前記基台(4)の中央部分に固定して設けられ、
前記水平加振用電磁石(8)に吸引される水平加振用鉄心(17)が、前記水平加振用電磁石収容孔(18)内で前記水平加振用電磁石(8)と前後方向に対向するように前記上部振動体(2)の中央部分の下面に固定して設けられ、
前記中間振動体(3)と前記前側鉛直加振用電磁石(9a)とが水平方向に見て重なる配置となるように、前記前側鉛直加振用電磁石(9a)は、前記中間振動体(3)の前側部分を上下方向に貫通して形成した前側鉛直加振用電磁石収容孔(20a)に収容した状態で前記基台(4)の前側部分に固定して設けられ、
前記前側鉛直加振用電磁石(9a)に吸引される前側鉛直加振用鉄心(19a)が、前記前側鉛直加振用電磁石(9a)と上下方向に対向するように前記上部振動体(2)の前側部分の下面に固定して設けられ、
前記中間振動体(3)と前記後側鉛直加振用電磁石(9b)とが水平方向に見て重なる配置となるように、前記後側鉛直加振用電磁石(9b)は、前記中間振動体(3)の後側部分を上下方向に貫通して形成した後側鉛直加振用電磁石収容孔(20b)に収容した状態で前記基台(4)の後側部分に固定して設けられ、
前記後側鉛直加振用電磁石(9b)に吸引される後側鉛直加振用鉄心(19b)が、前記後側鉛直加振用電磁石(9b)と上下方向に対向するように前記上部振動体(2)の後側部分の下面に固定して設けられている請求項1から5のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラフを振動させて部品を搬送する振動式部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前後方向に直線状に延びる部品搬送路をもつトラフを振動させて部品を搬送する振動式部品搬送装置として、前後方向の水平振動と上下方向の鉛直振動とを独立して発生し、その水平振動と鉛直振動を合成した振動で部品を搬送する複合振動式のものが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1の振動式部品搬送装置は、前後方向に直線状に延びる部品搬送路をもつトラフと、そのトラフが取り付けられる上部振動体と、中間振動体と、基台とを有する。上部振動体と中間振動体は、上下方向に振動する鉛直振動用板ばねで連結され、中間振動体と基台は、前後方向に振動する水平振動用板ばねで連結されている。また、上部振動体は、水平加振用電磁石の作動により前後方向の加振力が付与され、鉛直加振用電磁石の作動により上下方向の加振力が付与されるようになっている。基台は、床上に設置されるベース板に防振連結部材を介して連結されている。
【0004】
この振動式部品搬送装置は、水平加振用電磁石と水平振動用板ばねとで発生する前後方向の水平振動と、鉛直加振用電磁石と鉛直振動用板ばねとで発生する鉛直振動とを所定の位相差で合成することにより、トラフおよび上部振動体の楕円振動(トラフおよび上部振動体の各点が、水平に対して傾斜した長軸をもつ楕円状の軌跡を描くように往復動する運動)を作り出し、その楕円振動によってトラフ上の部品を後側から前側に向かって移動させる。
【0005】
図17は、複合振動式の部品搬送装置を簡略化して示すモデル図である。図17において、振動式部品搬送装置は、前後方向(図の左右方向)に直線状に延びる部品搬送路をもつトラフAと、上部振動体Bと、中間振動体Cと、基台Dと、上部振動体Bと中間振動体Cとを連結する鉛直振動用板ばねKbと、中間振動体Cと基台Dとを連結する水平振動用板ばねKcとを有する。基台Dは、防振連結部材Kdを介して床Fに連結されている。
【0006】
鉛直振動用板ばねKbは、上下方向を板厚方向とし、前後方向を長手方向とするように配置され、その鉛直振動用板ばねKbの前後方向の一端が上部振動体Bに固定され、他端が中間振動体Cに固定されている。この鉛直振動用板ばねKbは、上部振動体Bと中間振動体Cを上下方向に相対変位させるが、上部振動体Bと中間振動体Cの前後方向の相対変位は許容しないように上部振動体Bと中間振動体Cとを連結している。
【0007】
同様に、水平振動用板ばねKcは、前後方向を板厚方向とし、上下方向を長手方向とするように配置され、その水平振動用板ばねKcの上端が中間振動体Cに固定され、下端が基台Dに固定されている。この水平振動用板ばねKcは、中間振動体Cと基台Dを前後方向に相対変位させるが、中間振動体Cと基台Dの上下方向の相対変位は許容しないように中間振動体Cと基台Dとを連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-34950号公報
【特許文献2】特開2013-95597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図17に示す振動式部品搬送装置は、振動系として、大きく3つの構成要素、すなわち、トラフAと上部振動体Bとが一体になったものと、中間振動体Cと、基台Dとを有する。トラフAと上部振動体Bと中間振動体Cの重心(以下「上方部材ABCの重心」という)をGabcとし、基台Dの重心をGdとし、トラフAと上部振動体Bと中間振動体Cと基台Dの重心(以下「装置全体の重心」という)をGabcdとし、上方部材ABCの重心Gabcから装置全体の重心Gabcdまでの距離をr1とし、基台Dの重心Gdから装置全体の重心Gabcdまでの距離をr2とする。
【0010】
図示省略した水平加振用電磁石のみを作動させると、トラフAと上部振動体Bと中間振動体Cと基台Dのうち、トラフAと上部振動体Bと中間振動体Cとが前後方向の一方向に一体に移動し、基台Dのみが前後方向の他方向に移動する。このとき、図18に示すように、上方部材ABCの重心Gabcには、前後方向の一方向の振動力F1が作用し、その反作用によって、基台Dの重心Gdには前後方向の他方向の振動力F2が作用する。そのため、装置全体の重心Gabcdまわりに、F1×r1およびF2×r2のモーメント荷重Mが発生し、その結果、装置全体が、装置全体の重心Gabcdを中心として回動する。
【0011】
また、図示省略した水平加振用電磁石のみを作動させたとき、図19に示すように、上方部材ABCの重心Gabcと基台Dの重心Gdは前後方向に互いに逆向きに移動する。このとき、上方部材ABCの重心Gabcと基台Dの重心Gdは、装置全体の重心Gabcdを通る共通の直線eの上にある位置関係を保つので、上方部材ABCの重心Gabcの振動変位(上方部材ABCの前後方向の振幅)X1と、基台Dの重心Gdの振動変位(基台Dの前後方向の振幅)X2の比は、上方部材ABCの重心Gabcから装置全体の重心Gabcdまでの距離r1と、基台Dの重心Gdから装置全体の重心Gabcdまでの距離r2の比、すなわち、上方部材ABCの質量の逆数と基台Dの質量の逆数の比となる。
【0012】
また、図示省略した水平加振用電磁石のみを作動させたとき、図20図21に示すように、基台Dの重心Gdは前後方向に変位し、このとき生じる基台Dの重心Gdまわりのモーメント荷重Mによって、基台Dが、水平方向に対してα度傾いた状態となり、この基台Dの傾動に応じて、図22に示すように、トラフAも水平方向に対して傾いた状態となる。このように、基台Dのピッチング運動(傾動)はトラフAのピッチング運動(傾動)の原因となり、トラフAに所望の楕円振動を行わせる上で大きな課題となる。
【0013】
そこで、トラフのピッチング運動を抑制するため、特許文献2の振動式部品搬送装置においては、基台に複数の錘を取り付け、その錘の個数を増減することで基台のピッチング運動の大きさを調整し、基台のピッチング運動でトラフのピッチング運動を相殺しようとしている。
【0014】
しかしながら、特許文献2のように、基台に取り付ける錘の個数により基台のピッチング運動の大きさを調整するようにしても、通常、トラフは、振動式部品搬送装置で搬送する部品の性状や、振動式部品搬送装置の上流側および下流側に配置する装置などとの関係で個別に設計して製作されるため、搬送する部品の性状等に応じてトラフの長さや質量は異なったものとなり、そのトラフのピッチング運動を完全に抑制するのは難しい。
【0015】
この発明が解決しようとする課題は、トラフのピッチング運動を確実に抑制することが可能な複合振動式の部品搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成の振動式部品搬送装置を提供する。
前後方向に直線状に延びる部品搬送路をもつトラフと、
前記トラフが取り付けられる上部振動体と、
床上に設置されるベース板と、
前記ベース板の上側に対向して配置される基台と、
前記基台と前記ベース板とを連結する防振連結部材と、
前記上部振動体と前記基台との間に設けられる中間振動体と、
前記上部振動体と前記中間振動体とを連結する第1の振動用板ばねと、
前記中間振動体と前記基台とを連結する第2の振動用板ばねと、
前記上部振動体に前後方向の加振力を付与する水平加振用電磁石と、
前記上部振動体に上下方向の加振力を付与する鉛直加振用電磁石とを有し、
前記第1の振動用板ばねと前記第2の振動用板ばねのうちの一方を前後方向に振動する水平振動用板ばねとし、前記第1の振動用板ばねと前記第2の振動用板ばねのうちの他方を上下方向に振動する鉛直振動用板ばねとした振動式部品搬送装置において、
前記鉛直加振用電磁石は、前記上部振動体の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、前記水平加振用電磁石を間に挟んで前後に並んで設けられた前側鉛直加振用電磁石および後側鉛直加振用電磁石で構成されていることを特徴とする振動式部品搬送装置。
【0017】
このようにすると、上部振動体の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、前側鉛直加振用電磁石と後側鉛直加振用電磁石とが水平加振用電磁石を間に挟んで前後に並んで設けられているので、上部振動体の前側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさと、上部振動体の後側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさとを別々に設定することができる。そのため、上部振動体を前後方向に振動させたときに生じるトラフおよび上部振動体のピッチング運動を、確実に抑制することが可能である。
【0018】
前記上部振動体の前後方向の変位を検出する水平変位センサと、
前記上部振動体の前側部分の前記ベース板に対する上下方向の変位を検出する前側鉛直変位センサと、
前記上部振動体の後側部分の前記ベース板に対する上下方向の変位を検出する後側鉛直変位センサと、
前記水平変位センサの出力信号と前記前側鉛直変位センサの出力信号と前記後側鉛直変位センサの出力信号とに基づいて前記水平加振用電磁石と前記前側鉛直加振用電磁石と前記後側鉛直加振用電磁石の作動を制御するコントローラと、を更に設けると好ましい。
【0019】
このようにすると、水平変位センサで検出した上部振動体の前後方向の変位と、前側鉛直変位センサで検出した上部振動体の前側部分の上下方向の変位と、後側鉛直変位センサで検出した上部振動体の後側部分の上下方向の変位と基づいて、トラフおよび上部振動体が所望の楕円振動をするようにフィードバック制御することが可能となる。
【0020】
また、前側鉛直変位センサおよび後側鉛直変位センサは、基台に対する上下方向の変位ではなく、ベース板に対する上下方向の変位を検出するように設けられているので、防振連結部材の変形により基台が傾動した場合にも、その基台の傾きによらず、上部振動体の前側部分および後側部分の上下方向の変位を正確に検出することが可能である。そのため、基台がピッチング運動している状態でもトラフおよび上部振動体のピッチング運動を効果的に抑制することが可能となる。
【0021】
前記上部振動体と前記中間振動体とを連結する前記第1の振動用板ばねが前記水平振動用板ばねであり、前記中間振動体と前記基台とを連結する前記第2の振動用板ばねが前記鉛直振動用板ばねである構成を採用すると好ましい。
【0022】
このようにすると、水平振動用板ばねに対して上部振動体の側の質量に対する、水平振動用板ばねに対して基台の側の質量の比が大きくなるので、水平加振用電磁石を作動させたときに基台に生じるピッチング運動を小さく抑えることができ、また部品の搬送速度を高めることも可能となる。すなわち、水平振動用板ばねに対して上部振動体の側の部材を前後方向の一方向に移動させたとき、その反作用によって、水平振動用板ばねに対して基台の側の部材は前後方向の他方向に移動する。ここで、上部振動体と中間振動体とを水平振動用板ばねで連結し、中間振動体と基台とを鉛直振動用板ばねで連結した構成を採用した場合、上部振動体と中間振動体とを鉛直振動用板ばねで連結し、中間振動体と基台とを水平振動用板ばねで連結した場合と比較して、水平振動用板ばねに対して上部振動体の側の質量に対する、水平振動用板ばねに対して基台の側の質量の比が大きいものとなる。そのため、上部振動体と中間振動体とを水平振動用板ばねで連結し、中間振動体と基台とを鉛直振動用板ばねで連結した構成を採用すると、基台の振動変位(前後方向の振幅)が比較的小さいものとなり、水平加振用電磁石を作動させたときに基台の側に生じるピッチング運動を小さく抑えることが可能となる。また、上部振動体の振動変位(前後方向の振幅)が比較的大きいものとなるので、部品の搬送速度を高めることも可能となる。
【0023】
前記水平振動用板ばねは、前後方向を板厚方向とし、水平方向のうち前後方向に直交する方向である左右方向を長手方向とするように配置され、
前記水平振動用板ばねの左右方向の一端が前記上部振動体に固定され、他端が前記中間振動体に固定されている構成を採用すると好ましい。
【0024】
このようにすると、水平振動用板ばねの長手方向が水平方向を向くように水平振動用板ばねが配置されているので、水平振動用板ばねの長手方向が上下方向を向くように水平振動用板ばねを配置した場合に比べて、水平振動用板ばねで連結された状態の上部振動体と中間振動体の上下方向の厚さを抑えることができる。そのため、上部振動体の側の重心位置と基台の側の重心位置とが近くなり、水平加振用電磁石を作動させたときに基台に生じるピッチング運動を効果的に抑えることが可能となる。
【0025】
前記基台は、前記上部振動体および前記中間振動体を間にして、水平方向のうち前後方向に直交する方向である左右方向に対向して配置される左右一対の側板を有し、
前記一対の側板は、前記上部振動体の上端よりも上方まで延びる高さを有する構成を採用すると好ましい。
【0026】
このようにすると、上部振動体の上端よりも上方まで延びる高さを有する側板を基台に設けた分、基台の重心が高くなるので、上部振動体の側の重心位置と基台の側の重心位置とが近くなる。そのため、水平加振用電磁石を作動させたときに基台に生じるピッチング運動を効果的に抑えることが可能となる。
【0027】
前記中間振動体と前記水平加振用電磁石とが水平方向に見て重なる配置となるように、前記水平加振用電磁石は、前記中間振動体の中央部分を上下方向に貫通して形成した水平加振用電磁石収容孔に収容した状態で前記基台の中央部分に固定して設けられ、
前記水平加振用電磁石に吸引される水平加振用鉄心が、前記水平加振用電磁石収容孔内で前記水平加振用電磁石と前後方向に対向するように前記上部振動体の中央部分の下面に固定して設けられ、
前記中間振動体と前記前側鉛直加振用電磁石とが水平方向に見て重なる配置となるように、前記前側鉛直加振用電磁石は、前記中間振動体の前側部分を上下方向に貫通して形成した前側鉛直加振用電磁石収容孔に収容した状態で前記基台の前側部分に固定して設けられ、
前記前側鉛直加振用電磁石に吸引される前側鉛直加振用鉄心が、前記前側鉛直加振用電磁石と上下方向に対向するように前記上部振動体の前側部分の下面に固定して設けられ、
前記中間振動体と前記後側鉛直加振用電磁石とが水平方向に見て重なる配置となるように、前記後側鉛直加振用電磁石は、前記中間振動体の後側部分を上下方向に貫通して形成した後側鉛直加振用電磁石収容孔に収容した状態で前記基台の後側部分に固定して設けられ、
前記後側鉛直加振用電磁石に吸引される後側鉛直加振用鉄心が、前記後側鉛直加振用電磁石と上下方向に対向するように前記上部振動体の後側部分の下面に固定して設けられている構成を採用すると好ましい。
【0028】
このようにすると、水平加振用鉄心と前側鉛直加振用鉄心と後側鉛直加振用鉄心とがいずれも中間振動体ではなく上部振動体に固定されているので、上部振動体に対する加振力の付与を中間振動体を介してではなく、直接的に行なうことができ、その結果、上部振動体の振動を精度よく制御することが可能となる。また、水平加振用電磁石が、中間振動体の中央部分を上下方向に貫通して形成した水平加振用電磁石収容孔に収容され、前側鉛直加振用電磁石が、中間振動体の前側部分を上下方向に貫通して形成した前側鉛直加振用電磁石収容孔に収容され、後側鉛直加振用電磁石が、中間振動体の後側部分を上下方向に貫通して形成した後側鉛直加振用電磁石収容孔に収容されているので、振動式部品搬送装置の上下方向の寸法を低く抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0029】
この発明の振動式部品搬送装置は、上部振動体の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、前側鉛直加振用電磁石と後側鉛直加振用電磁石とが水平加振用電磁石を間に挟んで前後に並んで設けられているので、上部振動体の前側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさと、上部振動体の後側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさとを別々に設定することができる。そのため、上部振動体を前後方向に振動させたときに生じるトラフおよび上部振動体のピッチング運動を、確実に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】この発明の実施形態にかかる振動式部品搬送装置を示す断面図
図2図1のII-II線に沿った断面図
図3図1の振動式部品搬送装置の前側部分を拡大して示す図
図4図1の振動式部品搬送装置の後側部分を拡大して示す図
図5図3のV-V線に沿った断面図
図6図3のVI-VI線に沿った断面図
図7図1の振動式部品搬送装置のコントローラを示すブロック図
図8図1の振動式部品搬送装置の水平加振用電磁石のみを作動させたときに、水平変位センサと前側鉛直変位センサと後側鉛直変位センサでそれぞれ検出される変位の時間変化を示す図
図9図1の振動式部品搬送装置の水平加振用電磁石のみを作動させたときに、水平変位センサで検出される変位と後側鉛直変位センサで検出される変位とに基づいて得られるリサージュ図形を示す図
図10図1の振動式部品搬送装置の水平加振用電磁石のみを作動させたときに、水平変位センサで検出される変位と前側鉛直変位センサで検出される変位とに基づいて得られるリサージュ図形を示す図
図11図3に示す水平変位センサで検出する変位のプラスとマイナスの方向を説明する図
図12図1の振動式部品搬送装置の水平加振用電磁石のみを作動させたときに上部振動体に生じるピッチング運動を無くすように、水平加振用電磁石と前側鉛直加振用電磁石と後側鉛直加振用電磁石のそれぞれの印加電圧を制御したときの印加電圧の時間変化と、このとき水平変位センサと前側鉛直変位センサと後側鉛直変位センサでそれぞれ検出される変位の時間変化とを示す図
図13】前側鉛直加振用電磁石に電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさと、後側鉛直加振用電磁石に電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさとが同じになるように、水平加振用電磁石と前側鉛直加振用電磁石と後側鉛直加振用電磁石のそれぞれの印加電圧を制御することで、図1の振動式部品搬送装置の上部振動体に楕円振動を生じさせたときの、水平変位センサと前側鉛直変位センサと後側鉛直変位センサでそれぞれ検出される変位の時間変化とを示す図
図14図13に示す前側鉛直変位の振幅の大きさと後側鉛直変位の振幅の大きさとがいずれも共通の目標値になるように前側鉛直加振用電磁石の印加電圧と後側鉛直加振用電磁石の印加電圧とを補正する制御を行なったときの、水平変位センサと前側鉛直変位センサと後側鉛直変位センサでそれぞれ検出される変位の時間変化とを示す図
図15図14に示す水平変位に対する前側鉛直変位の位相差と水平変位に対する後側鉛直変位の位相差とがいずれも共通の目標値になるように前側鉛直加振用電磁石の印加電圧と後側鉛直加振用電磁石の印加電圧とを補正する制御を行なったときの、水平変位センサと前側鉛直変位センサと後側鉛直変位センサでそれぞれ検出される変位の時間変化とを示す図
図16図15に示す補正を行なったときの水平変位センサで検出される変位と前側鉛直変位センサで検出される変位(または後側鉛直変位センサで検出される変位)とに基づいて得られるリサージュ図形を示す図
図17】従来の複合振動式の部品搬送装置を簡略化して示すモデル図
図18図17のトラフおよび上部振動体を前後方向に水平振動させたときの上方部材ABCの重心Gabcと、基台Dの重心Gdとに作用する振動力およびモーメントを説明する図
図19図17のトラフおよび上部振動体を前後方向に水平振動させたときの上方部材ABCの重心Gabcの振動変位の大きさと、基台Dの重心Gdの振動変位の大きさを説明する図
図20図17の上部振動体に前後方向の水平加振力を作用させたときに上部振動体が水平変位する前の状態を模式的に示す図
図21図17の上部振動体に前後方向の水平加振力を作用させたときに上部振動体が水平変位した後の状態を模式的に示す図
図22図21に示す状態の部品搬送装置を図17に対応して示す図
図23図1に示す振動式部品搬送装置の上部振動体を前後方向に水平振動させたときに振動する上部振動体の側の重心Gabと、基台の側の重心Gcdとを図18に対応して示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に、この発明の実施形態にかかる振動式部品搬送装置を示す。この振動式部品搬送装置は、トラフ1と、トラフ1が取り付けられる上部振動体2と、中間振動体3と、基台4と、床Fの上に設置されるベース板5と、上部振動体2と中間振動体3とを連結する第1の振動用板ばね6と、中間振動体3と基台4とを連結する第2の振動用板ばね7と、上部振動体2に前後方向(部品の搬送方向)の加振力を付与する水平加振用電磁石8と、上部振動体2に上下方向の加振力を付与する鉛直加振用電磁石9と、基台4とベース板5とを連結する防振連結部材10とを有する。
【0032】
トラフ1は、前後方向に直線状に延びる部品搬送路11を有する。部品搬送路11は、トラフ1の上面を水平に延びる溝(図5参照)である。トラフ1は、上部振動体2の上面に形成されたトラフ取付面12に、図示しないボルトで着脱可能に固定されている。
【0033】
上部振動体2は、上方から見て矩形に形成されている。上部振動体2の上面にはトラフ取付面12が形成されている。トラフ取付面12は、トラフ1を固定するねじ穴(図示せず)が形成された上向きの平面である。上部振動体2の下面には、図2に示すように矩形の対角の二隅の位置から下方に柱状に延びる一対の板ばね取付片13が形成されている。
【0034】
図2に示すように、中間振動体3は、上方から見て矩形の枠形状に形成されている。中間振動体3には、矩形の対角の二隅の位置に一対の板ばね取付部14が形成されている。上部振動体2(図1参照)の板ばね取付片13には、第1の振動用板ばね6の左右方向(水平方向のうち前後方向に直交する方向)の一端が固定され、中間振動体3の板ばね取付部14には、第1の振動用板ばね6の左右方向の他端が固定されている。
【0035】
第1の振動用板ばね6は、水平に直交する前後方向と左右方向のうち、前後方向を板厚方向とし、左右方向を長手方向とするように配置された水平振動用板ばねである。この第1の振動用板ばね6(水平振動用板ばね)は、上部振動体2と中間振動体3を前後方向に相対変位させるが、上部振動体2と中間振動体3の上下方向の相対変位は許容しないように上部振動体2と中間振動体3とを連結している。
【0036】
上部振動体2の前後一対の板ばね取付片13のうちの前側の板ばね取付片13と、中間振動体3の前後一対の板ばね取付部14のうちの前側の板ばね取付部14は、左右方向に対向して配置されている。また、上部振動体2の前後一対の板ばね取付片13のうちの後側の板ばね取付片13と、中間振動体3の前後一対の板ばね取付部14のうちの後側の板ばね取付部14も、左右方向に対向して配置されている。
【0037】
ここで、上部振動体2の一対の板ばね取付片13と、中間振動体3の一対の板ばね取付部14は、上方から見て、一対の板ばね取付片13同士を結ぶ直線と、一対の板ばね取付部14同士を結ぶ直線とを想定したときに、その2本の直線が交差する関係となるように配置されている。すなわち、前側の板ばね取付片13と前側の板ばね取付部14の左右の位置関係は、後側の板ばね取付片13と後側の板ばね取付部14の左右の位置関係を入れ替えたものとなっている。
【0038】
図1に示すように、基台4は、ベース板5の上側に対向して配置されている。基台4とベース板5を連結する防振連結部材10は、基台4の前側部分の下面をベース板5の上面に連結するとともに、基台4の後側部分の下面をベース板5の上面に連結するように前後に複数設けられている。防振連結部材10の上端は基台4の下面に固定され、防振連結部材10の下端はベース板5に固定されている。防振連結部材10は、基台4の振動が床Fに伝わるのを防ぐように基台4の振動に応じて変形する弾性部材である。防振連結部材10としては、変形部分にゴムを用いたものや、コイルばねを用いたものを採用することができる。ベース板5は、図示しないボルトで床Fに固定されている。
【0039】
図3図5に示すように、中間振動体3と基台4を連結する第2の振動用板ばね7は、上下方向を板厚方向とするように配置された鉛直振動用板ばねである。中間振動体3には、上下に貫通する貫通孔15が形成され、その貫通孔15に基台4の上面に形成された柱状突起16が挿入されている。第2の振動用板ばね7(鉛直振動用板ばね)は、前後方向を長手方向とするように配置され、その第2の振動用板ばね7の前後方向の両端部が中間振動体3の貫通孔15の前後の縁部に固定され、第2の振動用板ばね7の中央が、基台4の柱状突起16の上端に固定されている。
【0040】
第2の振動用板ばね7(鉛直振動用板ばね)は、中間振動体3と基台4を上下方向に相対変位させるが、中間振動体3と基台4の前後方向の相対変位は許容しないように中間振動体3と基台4とを連結している。第2の振動用板ばね7は、左右方向を長手方向とするように配置し、その第2の振動用板ばね7の左右方向の両端部を中間振動体3の貫通孔15の左右の縁部に固定するようにしてもよい。
【0041】
図1に示すように、基台4の前後方向の中央部分には、水平加振用電磁石8が固定して設けられ、上部振動体2の中央部分の下面には、水平加振用電磁石8に吸引される水平加振用鉄心17が固定して設けられている。水平加振用電磁石8と水平加振用鉄心17は、前後方向に対向して配置されている。水平加振用電磁石8は、交流電磁石(ケイ素鋼板の積層体からなるコアにコイルを巻回したもの)である。水平加振用電磁石8に通電すると、水平加振用電磁石8と水平加振用鉄心17の間に生じる電磁吸引力によって、上部振動体2に前後方向の水平の加振力が付与される。
【0042】
中間振動体3の中央部分には、中間振動体3を上下方向に貫通する水平加振用電磁石収容孔18が形成されている。水平加振用電磁石収容孔18には水平加振用電磁石8が収容され、中間振動体3と水平加振用電磁石8とが水平方向に見て重なる配置となっている。また、水平加振用鉄心17も水平加振用電磁石収容孔18に収容され、中間振動体3と水平加振用鉄心17とが水平方向に見て重なる配置となっている。
【0043】
鉛直加振用電磁石9は、上部振動体2の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、水平加振用電磁石8を間に挟んで前後に並んで設けられた前側鉛直加振用電磁石9aおよび後側鉛直加振用電磁石9bで構成されている。前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bは、いずれも交流電磁石である。
【0044】
前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bは、水平加振用電磁石8を間に挟んで前後に配置されている。また、上記の第2の振動用板ばね7(鉛直振動用板ばね)は、前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bを間に挟んで前後に一対配置されている。
【0045】
図3に示すように、基台4の前側部分には、前側鉛直加振用電磁石9aが固定して設けられ、上部振動体2の前側部分の下面には、前側鉛直加振用電磁石9aに吸引される前側鉛直加振用鉄心19aが固定して設けられている。前側鉛直加振用電磁石9aと前側鉛直加振用鉄心19aは、上下方向に対向して配置され、前側鉛直加振用電磁石9aに通電すると、前側鉛直加振用電磁石9aと前側鉛直加振用鉄心19aの間に生じる電磁吸引力によって、上部振動体2の前側部分に上下方向の鉛直の加振力が付与されるようになっている。
【0046】
中間振動体3の前側部分には、中間振動体3を上下方向に貫通する前側鉛直加振用電磁石収容孔20aが形成されている。前側鉛直加振用電磁石収容孔20aには前側鉛直加振用電磁石9aが収容され、中間振動体3と前側鉛直加振用電磁石9aとが水平方向に見て重なる配置となっている。
【0047】
同様に、図4に示すように、基台4の後側部分には、後側鉛直加振用電磁石9bが固定して設けられ、上部振動体2の後側部分の下面には、後側鉛直加振用電磁石9bに吸引される後側鉛直加振用鉄心19bが固定して設けられている。後側鉛直加振用電磁石9bと後側鉛直加振用鉄心19bは、上下方向に対向して配置され、後側鉛直加振用電磁石9bに通電すると、後側鉛直加振用電磁石9bと後側鉛直加振用鉄心19bの間に生じる電磁吸引力によって、上部振動体2の後側部分に上下方向の鉛直の加振力が付与されるようになっている。
【0048】
中間振動体3の後側部分には、中間振動体3を上下方向に貫通する後側鉛直加振用電磁石収容孔20bが形成されている。後側鉛直加振用電磁石収容孔20bには後側鉛直加振用電磁石9bが収容され、中間振動体3と後側鉛直加振用電磁石9bとが水平方向に見て重なる配置となっている。
【0049】
図5図6に示すように、基台4は、ベース板5の上側に対向する基台本体4aと、基台本体4aの左右両端から上方に延びる左右一対の側板4bとを有する。左右一対の側板4bは、上部振動体2および中間振動体3を間にして左右方向に対向して配置されている。一対の側板4bは、上部振動体2の上端(トラフ取付面12)よりも上方まで延びる高さを有する。中間振動体3は、上部振動体2と基台本体4aとの間に配置されている。
【0050】
図2に示すように、基台本体4aは、上方から見て矩形に形成されている。側板4bの前後方向の長さは、基台本体4aの前後方向の長さと同じか、それよりも長く設定することができる。図では、側板4bの前後方向の長さが、基台本体4aの前後方向の長さよりも長く設定され、側板4bの前端が基台本体4aの前端よりも前方に位置するように基台本体4aから前方に張り出し、側板4bの後端が基台本体4aの後端よりも後方に位置するように基台本体4aから後方にも張り出している。
【0051】
ベース板5は、上方から見て矩形に形成されている。ベース板5の前後方向の長さは、中間振動体3の前後方向の長さよりも長い。ベース板5は、上方から見てベース板5の中間振動体3よりも前方にはみ出した部分を有し、その部分に前側鉛直変位センサ21aが取り付けられている。同様に、ベース板5は、上方から見てベース板5の中間振動体3よりも後方にはみ出した部分を有し、その部分に後側鉛直変位センサ21bが取り付けられている。
【0052】
図3に示すように、前側鉛直変位センサ21aは、上部振動体2の前端に取り付けられた前側鉛直変位検出用ドグ22aの下方に対向して配置されている。前側鉛直変位センサ21aは、前側鉛直変位検出用ドグ22aと前側鉛直変位センサ21aの上下方向の間隔の変化に応じて変化する信号を出力し、その出力信号に基づいて、上部振動体2の前側部分のベース板5に対する上下方向の変位を検出することが可能となっている。
【0053】
図4に示すように、後側鉛直変位センサ21bは、上部振動体2の後端に取り付けられた後側鉛直変位検出用ドグ22bの下方に対向して配置されている。後側鉛直変位センサ21bは、後側鉛直変位検出用ドグ22bと後側鉛直変位センサ21bの上下方向の間隔の変化に応じて変化する信号を出力し、その出力信号に基づいて、上部振動体2の後側部分のベース板5に対する上下方向の変位を検出することが可能となっている。
【0054】
図3に示すように、基台4の前後方向の中央部分の上面には、水平変位センサ23が取り付けられている。水平変位センサ23は、上部振動体2の前後方向の中央部分の下面に取り付けられた水平変位検出用ドグ24と前後方向に対向して配置されている。水平変位センサ23と水平変位検出用ドグ24は、中間振動体3に形成された水平加振用電磁石収容孔18に収容して設けられている。
【0055】
水平変位センサ23は、水平変位検出用ドグ24と水平変位センサ23の前後方向の間隔の変化に応じて変化する信号を出力し、その出力信号に基づいて、上部振動体2の基台4に対する前後方向の変位を検出することが可能となっている。
【0056】
図11に示すように、水平変位センサ23は、水平変位検出用ドグ24が静止状態にあるときに、上部振動体2の前後方向の変位を0とし、水平変位検出用ドグ24が水平変位センサ23に近づけばマイナスの変位を検出し、水平変位検出用ドグ24が水平変位センサ23から遠ざかればプラスの変位を検出するように構成されている。
【0057】
同様に、図3に示す前側鉛直変位センサ21aも、前側鉛直変位検出用ドグ22aが静止状態にあるときに、上部振動体2の前側部分の上下方向の変位を0とし、前側鉛直変位検出用ドグ22aが前側鉛直変位センサ21aに近づけばマイナスの変位を検出し、前側鉛直変位検出用ドグ22aが前側鉛直変位センサ21aから遠ざかればプラスの変位を検出するように構成されている。また、図4に示す後側鉛直変位センサ21bも、後側鉛直変位検出用ドグ22bが静止状態にあるときに、上部振動体2の後側部分の上下方向の変位を0とし、後側鉛直変位検出用ドグ22bが後側鉛直変位センサ21bに近づけばマイナスの変位を検出し、後側鉛直変位検出用ドグ22bが後側鉛直変位センサ21bから遠ざかればプラスの変位を検出するように構成されている。
【0058】
水平加振用電磁石8と前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bの作動は、図7に示すコントローラ25で制御される。このコントローラ25には、水平変位センサ23と前側鉛直変位センサ21aと後側鉛直変位センサ21bと水平加振用電磁石8と前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bとが電気的に接続され、水平変位センサ23の出力信号と前側鉛直変位センサ21aの出力信号と後側鉛直変位センサ21bの出力信号とに基づいて水平加振用電磁石8と前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bの作動を制御することが可能となっている。
【0059】
図1に示す振動式部品搬送装置は、水平加振用電磁石8に所定の周波数で間欠的に通電することにより、水平加振用電磁石8から上部振動体2に付与される加振力と、第1の振動用板ばね6(水平振動用板ばね)から上部振動体2に作用する弾性復元力とで、前後方向の水平振動を上部振動体2に発生させることができる。このときの水平加振用電磁石8の通電の周波数(間欠通電の周期)は、第1の振動用板ばね6(水平振動用板ばね)よりも基台4の側の振動系の固有周波数に近い周波数に設定される。
【0060】
同様に、前側鉛直加振用電磁石9aおよび後側鉛直加振用電磁石9bに所定の周波数で間欠的に通電することにより、前側鉛直加振用電磁石9aおよび後側鉛直加振用電磁石9bから上部振動体2に付与される加振力と、第2の振動用板ばね7(鉛直振動用板ばね)から上部振動体2に作用する弾性復元力とで、上下方向の鉛直振動を上部振動体2に発生させることができる。このときの前側鉛直加振用電磁石9aおよび後側鉛直加振用電磁石9bの通電の周波数は、水平加振用電磁石8の通電の周波数と同じ大きさに設定される。
【0061】
そして、この振動式部品搬送装置は、水平加振用電磁石8と第1の振動用板ばね6(水平振動用板ばね)とで発生する前後方向の水平振動と、前側鉛直加振用電磁石9aおよび後側鉛直加振用電磁石9bと第2の振動用板ばね7(鉛直振動用板ばね)とで発生する上下方向の鉛直振動とを所定の位相差で合成することにより、トラフ1および上部振動体2の楕円振動(トラフ1および上部振動体2の各点が楕円状の軌跡を描くように往復動する運動)を作り出し、その楕円振動によってトラフ1上の部品を後側から前側に向かって移動させることが可能となっている。
【0062】
ここで、トラフ1および上部振動体2が前後方向に水平振動するとき、トラフ1および上部振動体2が水平方向に対して傾くピッチング運動(トラフ1および上部振動体2が左右方向の軸線まわりに上下の傾動を繰り返す運動)が生じる可能性がある。このトラフ1および上部振動体2のピッチング運動は、トラフ1に所望の楕円振動を行わせる上で大きな課題となる。
【0063】
このトラフ1のピッチング運動の課題に対し、この実施形態の振動式部品搬送装置は、上部振動体2の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bとが水平加振用電磁石8を間に挟んで前後に並んで設けた構成を採用している。そのため、前側鉛直加振用電磁石9aに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさと、後側鉛直加振用電磁石9bに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさとを別々に設定することで、上部振動体2の前側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさと、上部振動体2の後側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさとを別々に設定することが可能であり、これにより、上部振動体2を前後方向に振動させたときに生じるトラフ1および上部振動体2のピッチング運動を抑制することが可能となっている。
【0064】
以下、この実施形態の振動式部品搬送装置を使用してトラフ1および上部振動体2のピッチング運動を抑制する制御のメカニズムについて説明する。
【0065】
図8は、水平加振用電磁石8と前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bのうち、水平加振用電磁石8のみを作動させ、上部振動体2を前後方向に水平振動させたときの、水平変位センサ23と前側鉛直変位センサ21aと後側鉛直変位センサ21bでそれぞれ検出される変位の時間変化を示す。図8において、縦軸は変位を示し、横軸は時間を示す。図8に示すように、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位(上部振動体2の前側部分の上下方向の変位)と、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位(上部振動体2の後側部分の上下方向の変位)とが逆位相で時間変化していることから、上部振動体2がピッチング運動していることが分かる。
【0066】
図9は、図8と同様に上部振動体2を前後方向に水平振動させたときに、上部振動体2の後側部分の変位の変化を、縦軸に上下方向の変位(鉛直変位)をとり、横軸に前後方向の変位(水平変位)をとり、リサージュ図形にしたものである。図9において、縦軸は、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位であり、横軸は、水平変位センサ23で検出される変位である。
【0067】
図10も、図8と同様に上部振動体2を前後方向に水平振動させたときに、上部振動体2の前側部分の変位の変化を、縦軸に上下方向の変位(鉛直変位)をとり、横軸に前後方向の変位(水平変位)をとり、リサージュ図形にしたものである。図10において、縦軸は、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位であり、横軸は、水平変位センサ23で検出される変位である。
【0068】
図9および図10より、水平加振用電磁石8と前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bのうち、水平加振用電磁石8のみを作動させたときに、前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bは作動させていないにもかかわらず、上部振動体2の前側部分と後側部分とが、水平方向に対して斜めの傾きをもって振動しており、上部振動体2がピッチング運動していることが分かる。
【0069】
図12は、図8に示すピッチング運動を無くすように、水平変位センサ23と前側鉛直変位センサ21aと後側鉛直変位センサ21bのそれぞれの出力信号をコントローラ25で処理し、前側鉛直加振用電磁石9aに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさと、後側鉛直加振用電磁石9bに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさとを別々に設定した状態を示す。
【0070】
図12において、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位が図8ではプラスになるタイミング(すなわち、図1の上部振動体2の前側部分がピッチング運動により上方に変位するタイミング)で、前側鉛直加振用電磁石9aに電圧が印加され、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位が図8ではプラスになるタイミング(すなわち、図1の上部振動体2の後側部分がピッチング運動により上方に変位するタイミング)で、後側鉛直加振用電磁石9bに電圧が印加され、その結果、上部振動体2のピッチング運動が抑制されている。
【0071】
図13から図15は、上部振動体2に楕円振動を発生させるためのプロセスを示す。
【0072】
図13は、前側鉛直加振用電磁石9aに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさと、後側鉛直加振用電磁石9bに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさとが同じになるように、水平加振用電磁石8と前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bとにそれぞれ電圧を印加し、上部振動体2に楕円振動を発生させたときの水平変位センサ23と前側鉛直変位センサ21aと後側鉛直変位センサ21bでそれぞれ検出される変位の時間変化を示す。
【0073】
図13において、上部振動体2のピッチング運動の影響により、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位の振幅の大きさと、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位の振幅の大きさとが異なったものとなっている。
【0074】
図14は、図13に示す状態に対し、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位の振幅の大きさと、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位の振幅の大きさとが、いずれも共通の目標値となるように、前側鉛直加振用電磁石9aに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさを補正したときの水平変位センサ23と前側鉛直変位センサ21aと後側鉛直変位センサ21bでそれぞれ検出される変位の時間変化を示す。
【0075】
図14において、上部振動体2のピッチング運動の影響が補正され、その結果、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位の振幅の大きさと、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位の振幅の大きさとが同じになっている。ただし、上部振動体2のピッチング運動の影響により、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位の位相と、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位の位相とがずれた状態となっている。
【0076】
図15は、図14に示す状態に対し、さらに、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位の位相の、水平変位センサ23で検出される変位の位相に対する位相差と、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位の位相の、水平変位センサ23で検出される変位の位相に対する位相差とが、いずれも共通の目標値となるように、後側鉛直加振用電磁石9bに電圧を印加するタイミングおよびその電圧の大きさを補正したときの水平変位センサ23と前側鉛直変位センサ21aと後側鉛直変位センサ21bでそれぞれ検出される変位の時間変化を示す。
【0077】
図15において、上部振動体2のピッチング運動の影響がさらに補正され、その結果、前側鉛直変位センサ21aで検出される変位の振幅の大きさおよびその位相と、後側鉛直変位センサ21bで検出される変位の振幅の大きさおよびその位相とが、同じになっている。
【0078】
図16は、図15の補正を行なったときの、上部振動体2の前側部分および後側部分の変位の変化を、縦軸に上下方向の変位(鉛直変位)をとり、横軸に前後方向の変位(水平変位)をとり、リサージュ図形にしたものである。図16において、縦軸は、前側鉛直変位センサ21aおよび後側鉛直変位センサ21bで検出される変位であり、横軸は、水平変位センサ23で検出される変位である。図16に示すように、上部振動体2の前側部分と後側部分がいずれも同じ楕円運動をしていることが分かる。
【0079】
図7に示すコントローラ25は、上述の制御を行なうように構成されている。図7に示すコントローラ25は、水平変位センサ23が出力する正弦波信号を直流信号に変換する直流変換器と、その直流変換器が出力する直流信号(上部振動体2の前後方向の振幅の大きさに対応する信号)と水平の振幅設定器で設定される振幅の目標値とを比較し、出力生成器にその偏差を補正振幅情報として送り込む振幅補正演算器とを有する。
【0080】
また、コントローラ25は、水平変位センサ23からコントローラ25に入力される正弦波信号を矩形波に変換する矩形波変換器と、その矩形波変換器が出力する矩形波から上部振動体2の前後方向の振動の共振点を検出する共振点検出器とを有する。
【0081】
また、コントローラ25は、上記の水平方向の振幅補正演算器から送り込まれた補正振幅情報と共振点検出器が出力する共振周波数情報とに基づいてPWM信号を生成する出力生成器と、その出力生成器で生成されたPWM信号の電力を増幅する電力増幅器とを有する。この水平方向の電力増幅器で得られる矩形電圧が、水平加振用電磁石8に印加される。
【0082】
また、コントローラ25は、前側鉛直変位センサ21aが出力する正弦波信号を直流信号に変換する直流変換器と、その直流変換器が出力する直流信号(上部振動体2の前側部分の上下方向の振幅の大きさに対応する信号)と鉛直の振幅設定器で設定される振幅の目標値とを比較し、出力生成器にその偏差を補正振幅情報として送り込む振幅補正演算器とを有する。
【0083】
また、コントローラ25は、前側鉛直変位センサ21aからコントローラ25に入力される正弦波信号を矩形波に変換する矩形波変換器と、その矩形波変換器が出力する矩形波の位相と水平方向の矩形波変換器が出力する矩形波の位相とを比較してその位相差を検出する位相比較器と、その位相比較器が出力する位相差と位相差設定器で設定される位相差の目標値とを比較し、その偏差に基づいてPWM信号(矩形電圧信号)の位相を補正する位相補正器とを有する。
【0084】
また、コントローラ25は、上記の前側の鉛直方向の振幅補正演算器から送り込まれた補正振幅情報と前側の鉛直方向の位相補正器が出力する位相補正値とに基づいてPWM信号を生成する出力生成器と、その出力生成器で生成されたPWM信号の電力を増幅する電力増幅器とを有する。この前側の鉛直方向の電力増幅器で得られる矩形電圧が、前側鉛直加振用電磁石9aに印加される。
【0085】
同様に、コントローラ25は、後側鉛直変位センサ21bが出力する正弦波信号を直流信号に変換する直流変換器と、その直流変換器が出力する直流信号(上部振動体2の後側部分の上下方向の振幅の大きさに対応する信号)と鉛直の振幅設定器で設定される振幅の目標値とを比較し、出力生成器にその偏差を補正振幅情報として送り込む振幅補正演算器とを有する。
【0086】
また、コントローラ25は、後側鉛直変位センサ21bからコントローラ25に入力される正弦波信号を矩形波に変換する矩形波変換器と、その矩形波変換器が出力する矩形波の位相と水平方向の矩形波変換器が出力する矩形波の位相とを比較してその位相差を検出する位相比較器と、その位相比較器が出力する位相差と位相差設定器で設定される位相差の目標値とを比較し、その偏差に基づいてPWM信号(矩形電圧信号)の位相を補正する位相補正器とを有する。
【0087】
また、コントローラ25は、上記の後側の鉛直方向の振幅補正演算器から送り込まれた補正振幅情報と後側の鉛直方向の位相補正器が出力する位相補正値とに基づいてPWM信号を生成する出力生成器と、その出力生成器で生成されたPWM信号の電力を増幅する電力増幅器とを有する。この後側の鉛直方向の電力増幅器で得られる矩形電圧が、後側鉛直加振用電磁石9bに印加される。
【0088】
このコントローラ25は、上記の動作を繰り返すことにより、上部振動体2の前後方向の水平変位の位相に対する、上部振動体2の前側部分の上下方向の鉛直変位の位相差と、上部振動体2の前後方向の水平変位の位相に対する、上部振動体2の後側部分の上下方向の鉛直変位の位相差とを、常に目標値(位相差設定器で設定される位相差)に近づけることができる。
【0089】
この実施形態の振動式部品搬送装置は、図1に示すように、上部振動体2の前側部分と後側部分とをそれぞれ独立して加振することができるように、前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bとが水平加振用電磁石8を間に挟んで前後に並んで設けられているので、上部振動体2の前側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさと、上部振動体2の後側部分に加振力を付与するタイミングおよびその加振力の大きさとを別々に設定することができる。そのため、上部振動体2を前後方向に振動させたときに生じるトラフ1および上部振動体2のピッチング運動を、確実に抑制することが可能である。
【0090】
また、この振動式部品搬送装置は、水平変位センサ23と、前側鉛直変位センサ21aと、後側鉛直変位センサ21bと、これらのセンサの出力信号に基づいて水平加振用電磁石8と前側鉛直加振用電磁石9aと後側鉛直加振用電磁石9bの作動を制御するコントローラ25とを有するので、水平変位センサ23で検出した上部振動体2の前後方向の変位と、前側鉛直変位センサ21aで検出した上部振動体2の前側部分の上下方向の変位と、後側鉛直変位センサ21bで検出した上部振動体2の後側部分の上下方向の変位とに基づいて、トラフ1および上部振動体2が所望の楕円振動をするようにフィードバック制御することが可能である。
【0091】
また、この振動式部品搬送装置は、図3図4に示すように、前側鉛直変位センサ21aおよび後側鉛直変位センサ21bが、基台4に対する上下方向の変位ではなく、ベース板5に対する上下方向の変位を検出するように設けられているので、防振連結部材10の変形により基台4が傾動した場合にも、その基台4の傾きによらず、上部振動体2の前側部分および後側部分の上下方向の変位を正確に検出することが可能である。そのため、基台4がピッチング運動している状態でもトラフ1および上部振動体2のピッチング運動を効果的に抑制することが可能となっている。
【0092】
また、この振動式部品搬送装置は、図1に示すように、上部振動体2と中間振動体3とを連結する第1の振動用板ばね6を水平振動用板ばねとし、中間振動体3と基台4とを連結する第2の振動用板ばね7を鉛直振動用板ばねとしているので、水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)に対して上部振動体2の側の質量に対する、水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)に対して基台4の側の質量の比が大きくなり、その結果、水平加振用電磁石8を作動させたときに基台4に生じるピッチング運動を小さく抑えることができるとともに、部品の搬送速度を高めることが可能となっている。
【0093】
すなわち、水平振動用板ばねに対して上部振動体2の側の部材を前後方向の一方向に移動させたとき、その反作用によって、水平振動用板ばねに対して基台4の側の部材は前後方向の他方向に移動する。ここで、上記実施形態のように、上部振動体2と中間振動体3とを水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)で連結し、中間振動体3と基台4とを鉛直振動用板ばね(第2の振動用板ばね7)で連結した構成を採用した場合、例えば、図17に示すように、上部振動体2と中間振動体3とを鉛直振動用板ばねで連結し、中間振動体3と基台4とを水平振動用板ばねで連結した場合と比較して、水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)に対して上部振動体2の側の質量に対する、水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)に対して基台4の側の質量の比が大きいものとなる。すなわち、図23に示すように、上部振動体2を前後方向に水平振動させたときに振動する上部振動体2の側の重心Gabの質量(トラフ1と上部振動体2の合計質量)に対する、基台4の側の重心Gcdの質量(中間振動体3と基台4の合計質量)の比が大きいものとなる。そのため、上記実施形態のように、上部振動体2と中間振動体3とを水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)で連結し、中間振動体3と基台4とを鉛直振動用板ばね(第2の振動用板ばね7)で連結した構成を採用すると、基台4の振動変位(前後方向の振幅)が比較的小さいものとなり、水平加振用電磁石8を作動させたときに基台4の側に生じるピッチング運動を小さく抑えることが可能となる。また、上部振動体2の振動変位(前後方向の振幅)が比較的大きいものとなるので、部品の搬送速度を高めることも可能となる。
【0094】
また、この振動式部品搬送装置は、図2に示すように、水平振動用板ばねの長手方向が水平方向を向くように水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)が配置されているので、水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)の長手方向が上下方向を向くように水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)を配置した場合に比べて、水平振動用板ばね(第1の振動用板ばね6)で連結された状態の上部振動体2と中間振動体3の上下方向の厚さが抑えられている。そのため、図23に示すように、上部振動体2を前後方向に水平振動させたときに振動する上部振動体2の側の重心位置(トラフ1と上部振動体2の重心位置)Gabと、基台4の側の重心位置(中間振動体3と基台4の重心位置)Gcdとが近くなり、水平加振用電磁石8を作動させたときに基台4に生じるピッチング運動を効果的に抑えることが可能となっている。
【0095】
また、この振動式部品搬送装置は、図5に示すように、上部振動体2の上端よりも上方まで延びる高さを有する側板4bを基台4に設けた分、図23に示すように、基台4の重心が高くなり、上部振動体2を前後方向に水平振動させたときに振動する上部振動体2の側の重心位置(トラフ1と上部振動体2の重心位置)Gabと、基台4の側の重心位置(中間振動体3と基台4の重心位置)Gcdとが近くなっている。そのため、水平加振用電磁石8を作動させたときに基台4に生じるピッチング運動を効果的に抑えることが可能である。
【0096】
また、この振動式部品搬送装置は、図1に示すように、水平加振用鉄心17と前側鉛直加振用鉄心19aと後側鉛直加振用鉄心19bとがいずれも中間振動体3ではなく上部振動体2に固定されているので、上部振動体2に対する加振力の付与を中間振動体3を介してではなく、直接的に行なうことができ、その結果、上部振動体2の振動を精度よく制御することが可能である。
【0097】
また、この振動式部品搬送装置は、水平加振用電磁石8が、中間振動体3の中央部分を上下方向に貫通して形成した水平加振用電磁石収容孔18に収容され、前側鉛直加振用電磁石9aが、中間振動体3の前側部分を上下方向に貫通して形成した前側鉛直加振用電磁石収容孔20aに収容され、後側鉛直加振用電磁石9bが、中間振動体3の後側部分を上下方向に貫通して形成した後側鉛直加振用電磁石収容孔20bに収容されているので、振動式部品搬送装置の上下方向の寸法を低く抑えることが可能である。
【0098】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 トラフ
2 上部振動体
3 中間振動体
4 基台
4b 側板
5 ベース板
6 第1の振動用板ばね
7 第2の振動用板ばね
8 水平加振用電磁石
9 鉛直加振用電磁石
9a 前側鉛直加振用電磁石
9b 後側鉛直加振用電磁石
10 防振連結部材
11 部品搬送路
17 水平加振用鉄心
18 水平加振用電磁石収容孔
19a 前側鉛直加振用鉄心
19b 後側鉛直加振用鉄心
20a 前側鉛直加振用電磁石収容孔
20b 後側鉛直加振用電磁石収容孔
21a 前側鉛直変位センサ
21b 後側鉛直変位センサ
23 水平変位センサ
25 コントローラ
F 床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19
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図23