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特開2022-178525パッドホルダ及び鉄道車両用ブレーキキャリパ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178525
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】パッドホルダ及び鉄道車両用ブレーキキャリパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/095 20060101AFI20221125BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20221125BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F16D65/095 C
F16D65/092 B
F16D65/092 Z
F16D65/092 D
B61H5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085395
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】勝田 直志
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA87
3J058BA65
3J058BA70
3J058CA47
3J058CA49
3J058CA50
3J058CC02
3J058CC22
3J058DD05
3J058FA21
(57)【要約】
【課題】ブレーキパッドが装着の仕方を誤って装着されることが防止されたパッドホルダを提供する。
【解決手段】パッドホルダは、弓形の形状であるブレーキパッドが台板に装着されるパッドホルダである。台板は、ブレーキパッドに設けられた直線状の挿入部が挿入される被挿入部と、挿入部が長手方向の一方の向きで挿入された場合にブレーキパッドが接触せず、挿入部が他方の向きで挿入された場合にブレーキパッドと接触して、挿入部の被挿入部への挿入を制限する制限部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弓形の形状であるブレーキパッドが台板に装着されるパッドホルダであって、
前記台板は、
前記ブレーキパッドに設けられた直線状の挿入部が挿入される被挿入部と、
前記挿入部が長手方向の一方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドが接触せず、前記挿入部が他方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドと接触して、前記挿入部の前記被挿入部への挿入を制限する制限部と、
を有する、パッドホルダ。
【請求項2】
前記ブレーキパッドは、
前記被挿入部の幅方向における中心線から前記幅方向一方への最大長さである第1長さが、前記中心線から前記幅方向他方への最大長さである第2長さより長く、
前記制限部は、前記幅方向において前記中心線との距離が、前記第2長さより大きく前記第1長さ未満の前記台板上の領域に設けられる、
請求項1に記載のパッドホルダ。
【請求項3】
前記制限部は、前記ブレーキパッドが挿入される入口側に設けられる、請求項1又は2に記載のパッドホルダ。
【請求項4】
前記ブレーキパッドは、一繋がりの前記挿入部が、前記長手方向に垂直な分割面において、前記分割面を対称面として面対称となるように2分割されており、2分割された前記ブレーキパッドの前記長手方向の全長は、当該ブレーキパッドが有する前記挿入部の全長より長く、
前記パッドホルダは、2分割された前記ブレーキパッドの前記挿入部が前記一方の向きで挿入された場合の、前記ブレーキパッドの挿入方向と反対側の前記挿入部の端部が位置する場所で前記ブレーキパッドと係り合って、前記ブレーキパッドを固定する固定部を更に有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のパッドホルダ。
【請求項5】
前記2分割されたブレーキパッドが正しい向きで前記台板に装着された場合、前記2分割されたブレーキパッドのうち前記挿入方向の先端側に位置する先端パッドの前記挿入方向と反対側の端部と、前記2分割されたブレーキパッドのうち前記挿入方向と反対側に位置する根元パッドの前記挿入方向の先端側の端部と、は、一続きになる、請求項4に記載のパッドホルダ。
【請求項6】
前記ブレーキパッドは、UIC規格に準拠した形状である、請求項4又は5に記載のパッドホルダ。
【請求項7】
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の200cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部の幅方向における中心線から前記被挿入部の幅方向に6.5cmより大きく且つ7.5cm未満離れた領域である、請求項6に記載のパッドホルダ。
【請求項8】
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の200cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部のうち前記ブレーキパッドの挿入方向の先端側の端部から前記長手方向に32.1cmより大きく且つ35.95cm未満離れた領域である、請求項6又は7に記載のパッドホルダ。
【請求項9】
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の175cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部の幅方向における中心線から前記被挿入部の幅方向に6.4cmより大きく且つ7.6cm未満離れた領域である、請求項6に記載のパッドホルダ。
【請求項10】
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の175cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部のうち前記ブレーキパッドの挿入方向の先端側の端部から前記長手方向に30.46cmより大きく且つ32.27cm未満離れた領域である、請求項6又は9に記載のパッドホルダ。
【請求項11】
前記制限部の高さ方向の長さは、3mm以上且つ前記ブレーキパッドの摩耗限度未満である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のパッドホルダ。
【請求項12】
前記台板の、前記ブレーキパッドの挿入方向の先端側には、鉄道車両の台車に取り付けられるハンガーと回動可能に連結するためのピンを取り付ける取付穴が設けられる、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のパッドホルダ。
【請求項13】
それぞれ弓形の形状である一対のブレーキパッドが台板に装着される一対のパッドホルダであって、前記台板は、前記ブレーキパッドに設けられた直線状の挿入部が挿入される被挿入部と、前記挿入部が長手方向の一方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドが接触せず、前記挿入部が他方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドと接触して、前記挿入部の前記被挿入部への挿入を制限する制限部と、を有する、一対のパッドホルダと、
前記一対のパッドホルダのそれぞれが先端に取り付けられる一対のキャリパレバーと、
前記一対のキャリパレバーのそれぞれを、前記パッドホルダに装着された前記ブレーキパッドが鉄道車両の車輪に押し付けられるように駆動するアクチュエータと、
を備える鉄道車両用ブレーキキャリパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドホルダ及び鉄道車両用ブレーキキャリパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両などの車輪と一体に回転するディスクにブレーキパッドを押しつけることにより車輪にブレーキ力を付与するブレーキキャリパ装置が知られている。ブレーキキャリパ装置は、例えば、ブレーキパッドが装着されるパッドホルダと、パッドホルダが取り付けられたキャリパレバーと、圧縮空気などの流体により動作してキャリパレバーを移動させ、パッドホルダをディスクに接近及び離間させるシリンダ装置と、を有する。
【0003】
ここで、ブレーキキャリパ装置にブレーキパッドを装着する際に、装着の仕方の誤りを防止する技術が知られている。特許文献1には、上部ブレーキパッド組立体及び下部ブレーキパッド組立体に2分割されたブレーキパッド組立体のそれぞれにおいて、端面の一部を他の一部に対して偏倚させることが開示されている。特許文献1においては、上記の工夫によって、ブレーキパッド組立体の組み合わせなどが誤っている状態でブレーキパッド組立体がブレーキキャリパ装置に装着されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-10614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレーキキャリパ装置のパッドホルダにブレーキパッドを装着する際に、ブレーキパッドが装着の仕方を誤って装着されることを安定的に防止できるパッドホルダが求められている。特に、特許文献1のようにブレーキパッドの形状を特殊なものとする必要なく、装着の仕方の誤りを防止できるパッドホルダが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ブレーキパッドが装着の仕方を誤って装着されることが防止されたパッドホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるパッドホルダは、
弓形の形状であるブレーキパッドが台板に装着されるパッドホルダであって、
前記台板は、
前記ブレーキパッドに設けられた直線状の挿入部が挿入される被挿入部と、
前記挿入部が長手方向の一方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドが接触せず、前記挿入部が他方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドと接触して、前記挿入部の前記被挿入部への挿入を制限する制限部と、
を有する。
【0008】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記ブレーキパッドは、
前記被挿入部の幅方向における中心線から前記幅方向一方への最大長さである第1長さが、前記中心線から前記幅方向他方への最大長さである第2長さより長く、
前記制限部は、前記幅方向において前記中心線との距離が、前記第2長さより大きく前記第1長さ未満の前記台板上の領域に設けられてもよい。
【0009】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記制限部は、前記ブレーキパッドが挿入される入口側に設けられてもよい。
【0010】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記ブレーキパッドは、前記長手方向に垂直な分割面において、一繋がりの前記挿入部が前記分割面を対称面として面対称となるように2分割されており、2分割された前記ブレーキパッドの前記長手方向の全長は、当該ブレーキパッドが有する前記挿入部の全長より長く、
前記パッドホルダは、2分割された前記ブレーキパッドの前記挿入部が前記一方の向きで挿入された場合の、前記ブレーキパッドの挿入方向と反対側の前記挿入部の端部が位置する場所で前記ブレーキパッドと係り合って、前記ブレーキパッドを固定する固定部を更に有してもよい。
【0011】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記2分割されたブレーキパッドが正しい向きで前記台板に装着された場合、前記2分割されたブレーキパッドのうち前記挿入方向の先端側に位置する先端パッドの前記挿入方向と反対側の端部と、前記2分割されたブレーキパッドのうち前記挿入方向と反対側に位置する根元パッドの前記挿入方向の先端側の端部と、は、一続きになってもよい。
【0012】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記ブレーキパッドは、UIC規格に準拠した形状であってもよい。
【0013】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の200cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部の幅方向における中心線から前記被挿入部の幅方向に6.5cmより大きく且つ7.5cm未満離れた領域であってもよい。
【0014】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の200cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部のうち前記ブレーキパッドの挿入方向の先端側の端部から前記長手方向に32.1cmより大きく且つ35.95cm未満離れた領域であってもよい。
【0015】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の175cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部の幅方向における中心線から前記被挿入部の幅方向に6.4cmより大きく且つ7.6cm未満離れた領域であってもよい。
【0016】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記ブレーキパッドは、前記UIC規格の175cm型に準拠した形状であり、
前記制限部が設けられる領域は、前記被挿入部のうち前記ブレーキパッドの挿入方向の先端側の端部から前記長手方向に30.46cmより大きく且つ32.27cm未満離れた領域であってもよい。
【0017】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記制限部の高さ方向の長さは、3mm以上且つ前記ブレーキパッドの摩耗限度未満であってもよい。
【0018】
本発明によるパッドホルダにおいて、
前記台板の、前記ブレーキパッドの挿入方向の先端側には、鉄道車両の台車に取り付けられるハンガーと回動可能に連結するためのピンを取り付ける取付穴が設けられてもよい。
【0019】
本発明による鉄道車両用ブレーキキャリパ装置は、
それぞれ弓形の形状である一対のブレーキパッドが台板に装着される一対のパッドホルダであって、前記台板は、前記ブレーキパッドに設けられた直線状の挿入部が挿入される被挿入部と、前記挿入部が長手方向の一方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドが接触せず、前記挿入部が他方の向きで挿入された場合に前記ブレーキパッドと接触して、前記挿入部の前記被挿入部への挿入を制限する制限部と、を有する、一対のパッドホルダと、
前記一対のパッドホルダのそれぞれが先端に取り付けられる一対のキャリパレバーと、
前記一対のキャリパレバーのそれぞれを、前記パッドホルダに装着された前記ブレーキパッドが鉄道車両の車輪に押し付けられるように駆動するアクチュエータと、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブレーキパッドが装着の仕方を誤って装着されることが防止されたパッドホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態における、パッドホルダを備えるブレーキキャリパ装置を示す斜視図である。
図2】本実施形態における、パッドホルダ及びパッドホルダに装着されたブレーキパッドを示す斜視図である。
図3】本実施形態における、パッドホルダ及びパッドホルダに装着されたブレーキパッドを示す正面図である。
図4図3のA-A線に沿ったブレーキパッドの断面図である。
図5】本実施形態における、ブレーキパッドを示す側面図である。
図6】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図7】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図8】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図9】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図10】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図11】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図12】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図13】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図14】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図15】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図16】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図17】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図18】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図19】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図20】ブレーキパッドが台板に誤って装着されるパターンの一例を示す図である。
図21】変形例における、パッドホルダ及びパッドホルダに装着されたブレーキパッドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1~20は、本実施形態を説明するための図である。このうち、図1は、ブレーキキャリパ装置1を示す斜視図である。
【0023】
なお、図面間での方向関係を明確化するため、図1を含むいくつかの図面には、第1方向DA、第2方向DB及び第3方向DCを図面間で共通する方向として矢印で示している。矢印の先端側が、各方向DA,DB,DCの一方SA1,SB1,SC1となる。また、図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の手前に向かう矢印を、例えば図3に示すように、円の中にXを設けた記号により示している。さらに、ブレーキキャリパ装置1に備えられるパッドホルダ2を示す図では、他の部品とともにブレーキキャリパ装置1を成している状態での方向及び向きを示している。また、後述する図5のようにパッドホルダ2に装着されるブレーキパッド3を単体で示す図では、他の部品とともにブレーキキャリパ装置1を成しているパッドホルダ2に正しく装着された状態での方向及び向きを示している。
【0024】
図示された例において、第1方向DA、第2方向DB及び第3方向DCは、互いに垂直な関係にある。また、第1方向DAは鉛直方向と平行になっている。第1方向DAにおける一方SA1は、鉛直方向における上方となり、第1方向DAにおける一方とは反対側となる他方は、鉛直方向における下方となっている。
【0025】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るパッドホルダ2を備えるブレーキキャリパ装置1について説明する。図1に示すブレーキキャリパ装置1は、鉄道車両に取り付けられて鉄道車両の車輪にブレーキ力を付与する、鉄道車両用ブレーキキャリパ装置である。
【0026】
ブレーキキャリパ装置1は、一対のパッドホルダ2と、一対のパッドホルダ2のそれぞれが先端に取り付けられる一対のキャリパレバー4と、一対のキャリパレバー4のそれぞれを、パッドホルダ2に装着された前記ブレーキパッドが鉄道車両の車輪に押し付けられるように駆動するアクチュエータ5と、を備える。
【0027】
図1に示すブレーキキャリパ装置1は、いわゆるブラケットタイプのブレーキキャリパ装置1である。ブレーキキャリパ装置1は、鉄道車両の台車に取り付けられるブラケット6と、ブラケット6に回転可能に吊り下げられるボディ7と、をさらに備える。そして、ボディ7は、一対のパッドホルダ2に装着された後述する一対のブレーキパッド3が図示しない車輪のディスクに押し付けられる位置と押し付けられない位置とに移動可能なように、一対のキャリパレバー4のそれぞれを回転可能に保持する。
【0028】
後述するように、それぞれ弓形の形状である一対のブレーキパッド3が、一対のパッドホルダ2の台板24に装着される。一対のパッドホルダ2の一方を第1パッドホルダ21と称し、一対のパッドホルダ2の他方を第2パッドホルダ22と称する。また、一対のパッドホルダ2に装着される一対のブレーキパッド3の一方を第1ブレーキパッド31と称し、一対のブレーキパッド3の他方を第2ブレーキパッド32と称する。ここで、第1ブレーキパッド31は第1パッドホルダ21に装着される。また、第2ブレーキパッド32は第2パッドホルダ22に装着される。
【0029】
また、アクチュエータ5は、一対のキャリパレバー4がパッドホルダ2及びブレーキパッド3を介してディスクを挟むための力を出力する。図1に示す例において、アクチュエータ5は、一対のキャリパレバー4がディスクを挟むための力を圧縮空気の供給と排出とによって出力する、シリンダ装置である。図1に示す例においては、アクチュエータ5であるシリンダ装置が、一対のキャリパレバー4のそれぞれを駆動してボディ7に対して回転させることによって、パッドホルダ2に装着されたブレーキパッド3がディスクに押し付けられる。
【0030】
図1に示すブレーキキャリパ装置1の一対のパッドホルダ2に、後述する一対のブレーキパッド3を装着することによって、ブレーキキャリパ装置1と一対のブレーキパッド3とを備えるブレーキパッド付ブレーキキャリパ装置を形成することができる。
【0031】
図2は、本実施形態に係る第1パッドホルダ21と、第1パッドホルダ21に正しい向きで装着された第1ブレーキパッド31とを示す斜視図である。以下、パッドホルダ2及びブレーキパッド3について、第1パッドホルダ21及び第1ブレーキパッド31を例として説明する。なお、第2パッドホルダ22は、図1に示すように、第1方向DA及び第2方向DBに平行な面を基準として第1パッドホルダ21と面対称な形状を有する。第2パッドホルダ22に関する説明は、上述のように第2パッドホルダ22の形状が第1パッドホルダ21の形状と面対称である以外は、第1パッドホルダ21に関する説明と共通する。また、第2ブレーキパッド32は、ブレーキキャリパ装置1の一対のパッドホルダ2に一対のブレーキパッド3が装着された状態において、第1方向DA及び第2方向DBに平行な面を基準として第1ブレーキパッド31と面対称な形状を有する。第2ブレーキパッド32に関する説明は、上述のように第2ブレーキパッド32の形状が第1ブレーキパッド31の形状と面対称である以外は、第1ブレーキパッド31に関する説明と共通である。
【0032】
パッドホルダ2に装着されるブレーキパッド3について説明する。図3は、本実施形態に係る第1パッドホルダ21に正しい向きで装着された第1ブレーキパッド31を、第1パッドホルダ21とともに、第1パッドホルダ21に装着された際にディスクに対向する面の側から見た様子を示す正面図である。また、図4は、図3のA-A線に沿った第1パッドホルダ21に装着された第1ブレーキパッド31の断面を、第1パッドホルダ21の断面の一部とともに示す断面図である。
【0033】
ブレーキパッド3には、直線状の挿入部33が設けられている。図4に示すように、ブレーキパッド3は、パッド本体34と、パッド本体34に形成されている挿入部33と、を有する。図4に示すように、パッド本体34は、ブレーキパッド3がパッドホルダ2に装着された際にディスクに対面する第1面3aと、パッドホルダ2に対面する第2面3bとを有する。そして、挿入部33は、パッド本体34の第2面3bに形成されている。図3における符号331、符号231を付した線は、それぞれパッド本体34の第2面3bに形成されている挿入部33の基部33b、及びブレーキパッド3が装着されているパッドホルダ2の後述する被挿入部23の開口部23bの位置を示す線である。本実施形態に係る挿入部33は、図3に示すように、第1方向DAを長手方向とする直線状の形状を有している。図示はしないが、パッド本体34の第1面3aには、直線状の溝が設けられていてもよい。
【0034】
挿入部33は、直線状、且つ後述するパッドホルダ2の被挿入部23と噛み合うことが可能な形状を有する。図4に示す例において、挿入部33は直線状の凸部である。この場合、後述するように、被挿入部23は直線状の凹部である。図示はしないが、挿入部33は、直線状の凹部であってもよい。この場合、被挿入部23は直線状の凸部である。直線状の凸部である挿入部33の幅の方向(図2及び3に示す第2方向DB)、又は直線状の凹部である挿入部33の幅の方向を、短手方向とも称する。以下、挿入部33が直線状の凸部であり、被挿入部23が直線状の凹部である例について説明する。
【0035】
図4に示すように挿入部33が直線状の凸部である場合において、挿入部33の高さ方向(第3方向DC)における挿入部33の先端部33aの短手方向における幅w2は、挿入部33の基部33bの短手方向における幅w1よりも、大きくなっている。
【0036】
また、ブレーキパッド3は、弓形の形状である。ここで、ブレーキパッド3が弓形の形状であるとは、図3に示すようにブレーキパッド3を厚み方向から見た場合に、ブレーキパッド3の辺のうち短手方向の一方に位置する第1辺3cの少なくとも一部が短手方向の一方に向かって凸となっており、短手方向の他方に位置する第2辺3dの少なくとも一部が短手方向の一方に向かって凹んでいることをいう。本実施形態においては、図3に示すように、ブレーキパッド3の辺のうち第2方向DBの一方SB1に位置する第1辺3cの全体が第2方向DBの一方SB1に向かって凸となっており、第2方向DBの一方SB1とは反対側に位置する第2辺3dの一部が第2方向DBの一方SB1に向かって凹んでいる。第1辺3cのうち短手方向の一方に向かって凸となっている部分は、円弧状であってもよい。また、第2辺3dのうち短手方向の一方に向かって凹んでいる部分は、円弧状であってもよい。
【0037】
図3のようにブレーキパッド3を厚み方向(図2の第3方向DC)から見た図に引くことができる、挿入部33の短手方向における中心を通り且つ挿入部33の長手方向に延伸する仮想の線L2を、挿入部中心線L2と称する。本実施形態において、挿入部33の短手方向における挿入部中心線L2から短手方向の一方(第2方向DBの一方SB1)への最大長さw5は、挿入部中心線L2から短手方向の他方(第2方向DBの一方SB1とは反対側)への最大長さw6より長い。本実施形態において、長さw5は、ブレーキパッド3の辺のうち短手方向の一方に位置する第1辺3cと挿入部中心線L2との、短手方向における最大距離に相当する。また、長さw6は、ブレーキパッド3の辺のうち短手方向の他方に位置する第2辺3dと挿入部中心線L2との、短手方向における最大距離に相当する。
【0038】
図5は、図2に示す第1ブレーキパッド31を第2方向DBの一側SB1から見た様子を示す側面図である。本実施形態に係るブレーキパッド3は、図3及び5に示すように、長手方向に垂直な分割面3eにおいて2分割されている。また、挿入部33は、図3及び5に示すように、分割面3eを対称面として面対称となっている。なお、図3及び5に示す例において、挿入部33のうち分割面3eよりも長手方向の一方(第1方向DAの一方SA1)に位置する部分と、挿入部33のうち分割面3eよりも長手方向の他方(第1方向DAの一方SA1とは反対側)に位置する部分とは、分割面3eの位置において面接触しており、これによって一繋がりとなっている。なお、ブレーキパッドが面対称に2分割されている場合において、挿入部33が一繋がりであるとは、挿入部33のうち2分割されているブレーキパッド3の一方に含まれる部分と、挿入部33のうち2分割されているブレーキパッド3の他方に含まれる部分とが、面接触することを意味する。図示はしないが、ブレーキパッド3がパッドホルダ2に装着された状態において、挿入部33のうち分割面3eよりも長手方向の一方に位置する部分と、挿入部33のうち分割面3eよりも長手方向の他方に位置する部分とは、互いから離間していてもよい。また、図3及び5に示す例においては、ブレーキパッド3の全体が、分割面3eを対称面として面対称となっている。
【0039】
2分割されているブレーキパッド3のうち、分割面3eよりも長手方向の一方(第1方向DAの一方SA1)に位置する部分を、先端パッド35と称する。また、2分割されているブレーキパッド3のうち、分割面3eよりも長手方向の他方(第1方向DAの一方SA1とは反対側)に位置する部分を、根元パッド36と称する。先端パッド35は、2分割されたパッド本体34のうち分割面3eよりも長手方向の一方に位置する部分と、2分割された挿入部33のうち分割面3eよりも長手方向の一方に位置する部分とを含む。また、根元パッド36は、2分割されたパッド本体34のうち分割面3eよりも長手方向の他方に位置する部分と、2分割された挿入部33のうち分割面3eよりも長手方向の他方に位置する部分とを含む。そして、図3及び5に示す例においては、先端パッド35と根元パッド36とが、分割面3eを対称面として面対称となっている。挿入部33のうち先端パッド35に含まれる部分を、先端挿入部351と称する。また、挿入部33のうち根元パッド36に含まれる部分を、根元挿入部361と称する。
【0040】
換言すれば、ブレーキパッド3は、互いに対して分離可能な先端パッド35と根元パッド36とを含んでいる。そして、2分割されたブレーキパッド3が正しい向きで台板24に装着された場合、先端パッド35と根元パッド36とは互いに対して面接触する。この先端パッド35と根元パッド36とが互いに対して接触する面が、上述の分割面3eに相当する。すなわち、先端パッド35及び根元パッド36が正しい向きで台板24に装着された場合に、先端パッド35と根元パッド36とは、互いに面接触する面を対称面として面対称となる。
【0041】
図3に示す例において、1つのブレーキパッド3に含まれる先端パッド35と根元パッド36とは、異なる形状を有している。なお、図1に示す第1パッドホルダ21に装着される第1ブレーキパッド31の先端パッド35と、第2パッドホルダ22に装着される第2ブレーキパッド32の根元パッド36とは、同一の形状を有する。また、図1に示す第1パッドホルダ21に装着される第1ブレーキパッド31の根元パッド36と、第2パッドホルダ22に装着される第2ブレーキパッド32の先端パッド35とは、同一の形状を有する。
【0042】
図5は、図2に示すブレーキパッド3を第2方向DBの一側SB1から見た様子を示す側面図である。図5に示すように、2分割されたブレーキパッド3の長手方向(第1方向DA)の全長w7は、ブレーキパッド3が有する挿入部33の長手方向の全長w8より長くなっている。この場合、先端パッド35と根元パッド36とに2分割されたブレーキパッド3が分割面3eを対称面として面対称であるために、以下の関係も成立する。先端パッド35の長手方向における長さw17は先端挿入部351の長手方向における長さw15より長い。また、根元パッド36の長手方向における長さw16は根元挿入部361の長手方向における長さw14より長い。
【0043】
一例として、ブレーキパッド3は、UIC規格(国際鉄道連合が定める規格)に準拠した形状である。より具体的な一例として、ブレーキパッド3は、UIC規格の200cm型に準拠した形状である。また、ブレーキパッド3は、UIC規格の175cm型に準拠した形状であってもよい。
【0044】
パッドホルダ2について説明する。パッドホルダ2は、図1に示すように、ブレーキパッド3が装着される台板24を備える。台板24は、台板本体26と、ブレーキパッド3の挿入部33が挿入される被挿入部23と、後述する制限部25と、を有する。本実施形態において、台板本体26は、図2に示すように、台板24に装着されるブレーキパッド3に対面する装着面26aを有する。そして、被挿入部23と制限部25とが、台板本体26の装着面26aに形成されている。また、本実施形態に係るパッドホルダ2は、ブレーキパッド3を固定する固定部27をさらに備える。
【0045】
被挿入部23は、上述したブレーキパッド3の挿入部33と噛み合うことが可能な形状を有する。上述したように、図4に示す例において、被挿入部23は、第1方向DAに延伸する直線状の凹部である。また、上述したように、図示はしないが、挿入部33が直線状の凹部である場合には、被挿入部23は直線状の凸部である。直線状の凹部である挿入部33の幅の方向(図2及び3に示す第2方向DB)、又は直線状の凹部である挿入部33の幅の方向を、幅方向とも称する。ブレーキパッド3が台板24に装着された状態において、挿入部33の短手方向と被挿入部23の幅方向とは一致する。図2に示す例において、挿入部33の短手方向と被挿入部23の幅方向とは、ともに第2方向DBとなっている。
【0046】
図4に示すように被挿入部23が直線状の凹部である場合において、被挿入部23の底部23aの幅方向における幅w4は、被挿入部23の開口部23bの幅方向における幅w3よりも大きい。また、被挿入部23の開口部23bの幅方向における幅w3は、挿入部33の先端部33aの短手方向における幅w2より小さく、且つ挿入部33の基部33bの短手方向における幅w1以上である。また、被挿入部23の底部23aの幅方向における幅w4は、挿入部33の先端部33aの短手方向における幅w2以上である。これによって、挿入部33と被挿入部23とが噛み合った状態において、挿入部33が、図2に示す第3方向D3の一方SC1の側へと抜けることを抑制することができる。なお、図4に示す例においては、幅w1と幅w3とが同じ大きさを有し、幅w2と幅w4とが同じ大きさを有している。
【0047】
台板24の被挿入部23にブレーキパッド3の挿入部33を挿入することによって、ブレーキパッド3を台板24に装着することができる。挿入部33が直線状の凸部又は直線状の凹部の一方であり、被挿入部23が直線状の凸部又は直線状の凹部の他方である場合、以下の方法によって、ブレーキパッド3を台板24に装着することができる。まず、挿入部33の長手方向における端部に被挿入部23の延伸する方向における端部を近づけて、挿入部33の端部と被挿入部23の端部とを噛み合わせる。次に、挿入部33と被挿入部23との噛み合いを維持したまま、ブレーキパッド3を被挿入部23が延伸する方向にスライドさせる。これによって、図2に示すように、被挿入部23に挿入部33を挿入し、ブレーキパッド3を台板24に装着することができる。
【0048】
図1に示す例において、直線状の凹部である被挿入部23は、長手方向の一方(第1方向DAの一方SA1)に位置する閉鎖端部23cと、長手方向の他方(第1方向DAの一方SA1とは反対側)に位置する開口端部23dと、を有している。この場合、挿入部33の端部と被挿入部23の開口端部23dとを噛み合わせた上で、ブレーキパッド3を閉鎖端部23cに向かってスライドさせることによって、被挿入部23に挿入部33を挿入させ、ブレーキパッド3を台板24に装着することができる。
【0049】
特に、先端パッド35と根元パッド36とに2分割されているブレーキパッド3は、以下の方法によって台板24に装着することができる。まず、先端パッド35の先端挿入部351のうち、挿入部33の端部の一方である第1端部33cを形成する端部を、被挿入部23の開口端部23dと噛み合わせる。次に、先端パッド35を閉鎖端部23cに向かってスライドさせる。次に、根元パッド36の根元挿入部361のうち分割面3e側の端部を、被挿入部23の開口端部23dと噛み合わせる。そして、根元パッド36を閉鎖端部23cに向かってスライドさせる。以上の方法によって、図3に示すように2分割されているブレーキパッド3を台板24に装着することができる。
【0050】
ブレーキパッド3を台板24に装着する際に、台板24に対してブレーキパッド3をスライドさせる方向を、ブレーキパッド3の挿入方向とも称する。図1に示すパッドホルダ2において、挿入方向は、被挿入部23に沿って開口端部23dから閉鎖端部23cに向かう方向である。換言すれば、図1に示すパッドホルダ2において、挿入方向は、第1方向DAに沿って一方SA1とは反対側から一方SA1へと向かう方向である。2分割されたブレーキパッド3が正しい向きで台板24に装着された場合、先端パッド35は、2分割されたブレーキパッド3のうち、挿入方向の先端側(第1方向DAの一方SA1)に位置する一方の部分に相当する。また、根元パッド36は、2分割されたブレーキパッド3のうち挿入方向と反対側(第1方向DAの一方SA1と反対側)に位置する他方の部分に相当する。
【0051】
図3のように台板24を厚み方向(図2の第3方向DC)から見た図に引くことができる、被挿入部23の幅方向における中心を通り且つ被挿入部23が延伸する方向に延伸する仮想の線L3を、中心線L3と称する。また、図3に示すように台板24にブレーキパッド3が装着されている場合の、被挿入部23の幅方向における中心線L3からブレーキパッド3の幅方向の一方(第2方向DBの一方SB1)への最大長さを、第1長さw9と称する。さらに、被挿入部23の幅方向における中心線L3からブレーキパッド3の幅方向の他方(第2方向DBの一方SB1とは反対側)への最大長さを、第2長さw10と称する。ここで、本実施形態では、挿入部33と被挿入部23とが噛み合い、ブレーキパッド3が台板24に装着された状態において、上述した挿入部中心線L2と中心線L3とが重なる。このため、第1長さw9は上述した長さw5に一致し、第2長さw10は上述した長さw6に一致する。そして、上述したように、本実施形態のブレーキパッド3において長さw5は長さw6より長い。以上より、被挿入部23の幅方向における中心線L3から幅方向の一方への最大長さである第1長さw9は、被挿入部23の幅方向における中心線L3から幅方向の他方への最大長さである第2長さw10より長くなっている。
【0052】
次に、制限部25について説明する。制限部25は、挿入部33を誤った向きで被挿入部23に挿入された場合に、挿入部33の被挿入部23への挿入を制限する部分である。また、制限部25は、挿入部33が正しい向きで被挿入部23に挿入された場合には、挿入部33の被挿入部23への挿入を制限しない。図1に示す例において、制限部25は、台板本体26の装着面26aに形成された突起である。
【0053】
制限部25について、より具体的に説明する。図3に示すブレーキパッド3においては、長手方向における挿入部33の端部の一方である第1端部33cが、挿入方向の先端側(第1方向DAの一方SA1)に向けられている。また、長手方向における挿入部33の端部の他方である第2端部33dが、挿入方向とは反対側(第1方向DAの一方SA1とは反対側)に向けられている。このような挿入部33の向きを、長手方向の一方の向き、又は単に一方の向きと称する。また、ブレーキパッド3の挿入部33の向きとしては、図6に示す向きも考えられる。図6に示す例においては、第2端部33dが、挿入方向の先端側(第1方向DAの一方SA1)を向いている。また、第1端部33cが、挿入方向とは反対側(第1方向DAの一方SA1とは反対側)を向いている。このような挿入部33の向きを、長手方向の他方の向き、又は単に他方の向きと称する。本実施形態において、挿入部33が長手方向の一方の向きで被挿入部23に挿入された状態が、挿入部33が正しい向きで被挿入部23に挿入された状態に相当する。また、挿入部33が長手方向の他方の向きで被挿入部23に挿入された状態が、挿入部33が誤った向きで被挿入部23に挿入された状態に相当する。
【0054】
ここで、図3に示すように、挿入部33が長手方向の一方の向きで被挿入部23に挿入された場合には、制限部25にはブレーキパッド3が接触しない。このため、挿入部33が長手方向の一方の向きで被挿入部23に挿入された場合には、挿入部33が被挿入部23の閉鎖端部23cに接触するまで、挿入部33を被挿入部23に挿入することができる。また、制限部25は、図6に示すように挿入部33が他方の向きで挿入された場合に、ブレーキパッド3と接触して、挿入部33の被挿入部23への挿入を制限する。これによって、挿入部33が他方の向きで被挿入部23に挿入された場合に、挿入部33の被挿入部23への挿入を制限することができる。したがって、ブレーキパッド3が誤った向きで台板24に装着されることを防止することができる。一例として、挿入部33が他方の向きで被挿入部23に挿入された場合に、制限部25は、ブレーキパッド3のうちパッド本体34と接触する。
【0055】
図3及び6に示す例において、制限部25は、幅方向において中心線L3との距離が、上述した第2長さw10より大きく第1長さw9未満の台板24上の領域に設けられる。すなわち、図3に示す制限部25と中心線L3との幅方向における距離w11は、第2長さw10より大きく第1長さw9未満となっている。ここで、第1長さw9は、挿入部33が被挿入部23に挿入された場合における、ブレーキパッド3の第1辺3cと中心線L3との幅方向における最大距離に相当する。また、第2長さw10は、挿入部33が被挿入部23に挿入された場合における、ブレーキパッド3の辺の第2辺3dと中心線L3との幅方向における最大距離に相当する。このため、制限部25と中心線L3との幅方向における距離w11が、上述した第2長さw10より大きく第1長さw9未満となっていることによって、以下の効果が得られる。図3に示すように、幅方向において中心線L3から見て制限部25側(第2方向DBの一方SB1とは反対側)にブレーキパッド3の第2辺3dが向けられた状態で挿入部33を被挿入部23に挿入する際には、ブレーキパッド3の第2辺3dは制限部25に接触しない。この場合には、挿入部33の被挿入部23への挿入が制限されないようにすることができる。また、図6に示すように、幅方向において中心線L3から見て制限部25側(第2方向DBの一方SB1とは反対側)にブレーキパッド3の第1辺3cが向けられた状態で挿入部33を被挿入部23に挿入する際には、ブレーキパッド3の第1辺3cが制限部25に接触する。この場合には、挿入部33の被挿入部23への挿入を制限することができる。
【0056】
本実施形態においては、図3に示すようにブレーキパッド3が正しい向きで台板24に装着された場合に、幅方向の一方(第2方向DBの一方SB1)に第1辺3cが位置し、幅方向の他方(第2方向DBの一方SB1とは反対側)に第2辺3dが位置する。そして、制限部25は、ブレーキパッド3が正しい向きで台板24に装着された場合における第2辺3dの位置よりも、幅方向の他方に位置している。このために、ブレーキパッド3を正しい向きにて台板24に装着しようとする場合には、制限部25がブレーキパッド3に接触しないため、ブレーキパッド3の装着は制限されない。また、ブレーキパッド3を誤った向き、すなわち図6に示すように第1辺3cが幅方向の他方に位置し且つ第2辺3dが幅方向の一方に位置する向きにて台板24に装着しようとする場合には、制限部25がブレーキパッド3の第1辺3cに接触するため、ブレーキパッド3の装着は制限される。
【0057】
一例として、台板24に装着されるブレーキパッド3の形状が、UIC規格の200cm型に準拠した形状である場合、制限部25が設けられる領域は、被挿入部23の幅方向における中心線L3から被挿入部23の幅方向に6.5cmより大きく且つ7.5cm未満離れた領域である。すなわち、制限部25と中心線L3との幅方向における距離w11は、6.5cmより大きく且つ7.5cm未満である。UIC規格の200cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合、上述した第1長さw9は7.5cmであり、第2長さw10は6.5cmである。このため、距離w11を6.5cmより大きく且つ7.5cm未満とすることによって、UIC規格の200cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合に、上述した距離w11が第2長さw10より大きく第1長さw9未満であるとの条件を満たすことができる。
【0058】
別の一例として、台板24に装着されるブレーキパッド3の形状が、UIC規格の175cm型に準拠した形状である場合、制限部25が設けられる領域は、被挿入部23の幅方向における中心線L3から被挿入部23の幅方向に6.4cmより大きく且つ7.6cm未満離れた領域である。すなわち、制限部25と中心線L3との幅方向における距離w11は、6.4cmより大きく且つ7.6cm未満である。UIC規格の175cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合、上述した第1長さw9は7.6cmであり、第2長さw10は6.4cmである。このため、距離w11を6.4cmより大きく且つ7.6cm未満とすることによって、UIC規格の175cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合に、上述した距離w11が第2長さw10より大きく第1長さw9未満であるとの条件を満たすことができる。
【0059】
被挿入部23の延伸する方向(第1方向DA)における制限部25の位置について説明する。図3に示すように、制限部25は、ブレーキパッド3が挿入される入口側に設けられる。ここで、制限部25が入口側に設けられるとは、制限部25が、正しい向きで挿入部33を被挿入部23に挿入してブレーキパッド3を台板24に装着した場合における挿入部33の長手方向における中心よりも、入口側に設けられることを意味する。本実施形態においては、開口端部23dが挿入部33を被挿入部23に挿入する入口となっており、制限部25は開口端部23d側に設けられる。制限部25が入口側に設けられることによって、制限部25が閉鎖端部23cにより近い位置に設けられている場合よりも、挿入部33を誤った向きで被挿入部23に挿入して挿入方向にスライドさせる際に、より早期にブレーキパッド3が制限部25に接触するようになる。このため、ブレーキパッド3を台板24に装着する作業者が、より早期に、挿入部33の向きの誤りに気付くことができる。なお、制限部25は、少なくとも部分的に、正しい向きで挿入部33を被挿入部23に挿入してブレーキパッド3を台板24に装着した場合における挿入方向とは反対側のブレーキパッド3の端部3gの位置よりも、入口側に位置していてもよい。
【0060】
図2に示す制限部25の高さ方向(図2の第3方向DC)の長さw12は、3mm以上且つブレーキパッド3の摩耗限度未満である。ブレーキパッド3の摩耗限度の意味について説明する。ブレーキキャリパ装置1が使用されると、ブレーキパッド3はブレーキディスクに接触して摩耗する。ブレーキパッド3の摩耗が進行することで、ブレーキパッド3の厚みは減少する。ここで、ブレーキパッド3の摩耗限度とは、ブレーキパッド3の摩耗が許容できる最大の度合いまで進行したときの、ブレーキパッド3の厚みである。摩耗限度は、ブレーキキャリパ装置1のブレーキ動作に伴い摩耗するブレーキパッド3の使用限度及び使用最大摩耗量に応じた値である。
【0061】
長さw12が3mm以上であることによって、正しい向きとは反対の向きで挿入部33が被挿入部23に挿入された場合に、制限部25のブレーキパッド3への接触によって、安定的に挿入部33の被挿入部23への挿入を制限することができる。また、長さw12がブレーキパッド3の摩耗限度未満であることによって、ブレーキパッド3の摩耗が進行することでディスクブレーキと制限部25とが接触することが抑制される。このため、ディスクブレーキ及び制限部25が互いに接触することで損傷することが抑制される。
【0062】
固定部27について説明する。固定部27は、正しい向きで被挿入部23に挿入された挿入部33と係り合って、ブレーキパッド3を固定する部分である。図3における符号271を付した線は、固定部27の位置を示す線である。図1及び2に示す例において、台板本体26の装着面26aには、幅方向に延伸する溝部27aが設けられている。そして、固定部27として、溝部27aに収容可能な、幅方向に延伸する直線状の部材が設けられている。本実施形態において、固定部27は、ばねなどにより、少なくとも部分的に直線状の凹部である被挿入部23の内部に位置するように付勢されている。固定部27は、付勢に抗して押されることによって、溝部27aに収容されて、被挿入部23の内部に位置しなくなる。
【0063】
パッドホルダ2が固定部27を備える場合、固定部27を押して溝部27aに収容することで、固定部27に制限されることなく挿入部33を被挿入部23に挿入することができる。また、挿入部33を正しい向きで被挿入部23に挿入して挿入方向にスライドさせると、挿入部33の第2端部33dが固定部27よりも挿入方向に移動した際に、固定部27が、ばねなどによる付勢のために再び被挿入部23の内部に進出する。このために、被挿入部23の延伸する方向における挿入部33の位置が、固定部27と閉鎖端部23cとの間に固定される。これによって、被挿入部23の延伸する方向におけるブレーキパッド3の位置を固定することができる。
【0064】
上述したようにパッドホルダ2が2分割されている場合の、固定部27の作用について説明する。2分割されたブレーキパッド3の挿入部33が、一方の向き、すなわち正しい向きで挿入された場合について考える。特に、図3に示すように、2分割されたブレーキパッド3のうち先端パッド35が閉鎖端部23cに接し、根元パッド36が先端パッド35に接するように、2分割されたブレーキパッド3の挿入部33を挿入した場合について考える。この場合に、固定部27は、ブレーキパッド3の挿入方向と反対側(第1方向DAの一側SA1とは反対側)の、挿入部33の端部(第2端部33d)が位置する場所でブレーキパッド3と係り合って、ブレーキパッド3を固定する。換言すれば、固定部27は、閉鎖端部23cとの間で挿入部33を長手方向から挟んで固定することによって、ブレーキパッド3を固定する。この場合、図3に示す被挿入部23の延伸する方向における固定部27と閉鎖端部23cとの距離w13は、固定部27と閉鎖端部23cとによって挿入部33を長手方向から挟んで固定することができるように調整されている。距離w13は、挿入部33の長手方向の全長w8以上である。一例として、距離w13は、挿入部33の長手方向の全長w8と同一である。
【0065】
また、本実施形態に係る台板24は、台板本体26の装着面26aとは反対側の面に設けられた、キャリパレバー4にブレーキパッド3を取り付けるためのレバー取付部28をさらに有する。図1に示す例において、レバー取付部28は、台板本体26の装着面26aとは反対側の面から突出する一対の突出部である。図1に示す例において、パッドホルダ2のレバー取付部28は、パッド回転ピン8を介して、キャリパレバー4の先端に取り付けられている。パッド回転ピン8は、キャリパレバー4に対して回転可能である。パッド回転ピン8は、パッドホルダ2に固定されている。また、パッドホルダ2は、キャリパレバー4の先端にねじによって締結されることで取り付けられてもよい。
【0066】
次に、先端パッド35と根元パッド36とに2分割されたブレーキパッド3を台板24に装着する場合における本実施形態に係るパッドホルダ2の作用効果について、詳細に説明する。
【0067】
ブレーキパッド3が先端パッド35と根元パッド36とに2分割されている場合、ブレーキパッド3が台板24に誤って装着されるパターンとして想定されるパターンは、図6に示すパターンに限られない。例えば、先端パッド35及び根元パッド36のいずれか一方の向きは正しいが、他方の向きは誤っているような誤装着のパターンが想定される。また、誤って、先端パッド35よりも先に根元パッド36を装着してしまうような誤装着のパターンも想定される。また、正しくは形状の異なる先端パッド35と根元パッド36とを組み合わせて1つのブレーキパッド3とすべきところ、誤って、パッドホルダ2に2つの先端パッド35、又は2つの根元パッド36を装着してしまうような誤装着のパターンも想定される。以上を考慮すると、2分割されたブレーキパッド3の誤装着のパターンとしては、図6に示す1パターンと、図7~20に示す14パターンとの、合計15パターンが想定される。
【0068】
ここで、上述したように、2分割されたブレーキパッド3の長手方向の全長w7は、ブレーキパッド3が有する挿入部33の長手方向の全長w8より長くなっている。また、先端パッド35の長手方向における長さw17は先端挿入部351の長手方向における長さw15より長くなっており、根元パッド36の長手方向における長さw16は根元挿入部361の長手方向における長さw14より長くなっている。また、パッドホルダ2は、ブレーキパッド3と係り合ってブレーキパッドを固定する固定部27を備える。そして、上述したように、固定部27と閉鎖端部23cとの距離w13は、固定部27と閉鎖端部23cとによって挿入部33を長手方向から挟んで固定することができるように調整されている。
【0069】
以上を前提として、特に図9、10及び13に示すパターンのような誤装着のパターンについて考える。図9、10及び13に示す誤装着のパターンにおいては、先端パッド35又は根元パッド36の端部のうちブレーキパッド3の分割面3e側の端部が、被挿入部23の延伸する方向における外方を向くように、先端パッド35又は根元パッド36が装着されそうになっている。この場合、ブレーキパッド3の寸法と、固定部27と閉鎖端部23cとの距離w13と、の関係のために、図9、10及び13に示すように、被挿入部23の延伸する方向における固定部27と閉鎖端部23cとの間に、挿入部33が収まらなくなる。このため、図9、10及び13に示すパターンでは、固定部27を被挿入部23の内部に進出させてブレーキパッド3を固定することができなくなる。以上より、図9、10及び13などに示すようなパターンで誤装着がされそうになった場合に、作業者は、固定部27を用いてブレーキパッド3を固定することができないことを確認することで、誤装着がされそうになっていることに気付くことができる。
【0070】
なお、距離w13は、具体的には以下の条件を満たすことによって、図9、10及び13などに示すようなパターンで誤装着がされそうになっていることを作業者に気付かせることができる。距離w13は、先端挿入部351の長手方向における長さw15と根元パッド36の長手方向における長さw16との合計長さ未満である。また、距離w13は、根元挿入部361の長手方向における長さw14と先端パッド35の長手方向における長さw17との合計長さ未満である。
【0071】
一例として、台板24に装着されるブレーキパッド3の形状が、UIC規格の200cm型に準拠した形状である場合、制限部25が設けられる領域は、被挿入部23のうち、ブレーキパッド3の挿入方向の先端側(第1方向DAの一方SA1)の端部(閉鎖端部23c)から長手方向に32.1cmより大きく且つ35.95cm未満離れた領域である。すなわち、ブレーキパッド3を台板24に装着した場合に、被挿入部23の端部のうち挿入方向の先端側に位置する端部である閉鎖端部23cと、固定部27と、の距離w13は、32.1cmより大きく且つ35.95cm未満である。UIC規格の200cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合、上述した挿入部33の長手方向の全長w8の最大値は32.1cmである。また、先端挿入部351の長手方向における長さw15と根元パッド36の長手方向における長さw16との合計長さ、及び根元挿入部361の長手方向における長さw14と先端パッド35の長手方向における長さw17との合計長さの最小値は、ともに35.95cmである。このため、距離w13を32.1cmより大きく且つ35.95cm未満とすることによって、UIC規格の200cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合に、上述した距離w13が挿入部33の長手方向の全長w8以上であるとの条件、距離w13が先端挿入部351の長手方向における長さw15と根元パッド36の長手方向における長さw16との合計長さ未満であるとの条件、及び距離w13が根元挿入部361の長手方向における長さw14と先端パッド35の長手方向における長さw17との合計長さ未満であるとの条件を、満たすことができる。
【0072】
別の一例として、台板24に装着されるブレーキパッド3の形状が、UIC規格の175cm型に準拠した形状である場合、制限部25が設けられる領域は、被挿入部23のうち、ブレーキパッド3の挿入方向の先端側(第1方向DAの一方SA1)の端部(閉鎖端部23c)から長手方向に30.46cmより大きく且つ32.27cm未満離れた領域である。すなわち、ブレーキパッド3を台板24に装着した場合に、被挿入部23の端部のうち挿入方向の先端側に位置する端部である閉鎖端部23cと、固定部27と、の距離w13は、30.46cmより大きく且つ32.27cm未満である。UIC規格の175cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合、上述した挿入部33の長手方向の全長w8の最大値は30.46cmである。また、先端挿入部351の長手方向における長さw15と根元パッド36の長手方向における長さw16との合計長さ、及び根元挿入部361の長手方向における長さw14と先端パッド35の長手方向における長さw17との合計長さの最小値は、ともに32.27cmである。このため、距離w13を30.46cmより大きく且つ32.27cm未満とすることによって、UIC規格の175cm型に準拠した形状のブレーキパッド3を台板24に装着する場合に、上述した距離w13が挿入部33の長手方向の全長w8以上であるとの条件、距離w13が先端挿入部351の長手方向における長さw15と根元パッド36の長手方向における長さw16との合計長さ未満であるとの条件、及び距離w13が根元挿入部361の長手方向における長さw14と先端パッド35の長手方向における長さw17との合計長さ未満であるとの条件を、満たすことができる。
【0073】
以上の通り、図9、10及び13などに示すようなパターンで誤装着がされそうになった場合には、固定部27によって、作業者に誤装着がされそうになっていることを気付かせることができる。しかしながら、図6、8及び15に示すパターンの場合には、誤装着のパターンであるにも関わらず、固定部27と閉鎖端部23cとの間に挿入部33が収まってしまう。このため、作業者は、固定部27によっては、図6、8及び15に示すパターンで誤装着がされそうになっていることに気付くことができない。
【0074】
ここで、本実施形態に係るパッドホルダ2の台板24は、制限部25を有する。上述したように、制限部25は、ブレーキパッド3の挿入部33が長手方向の一方の向きで挿入された場合には、ブレーキパッド3に接触しない。また、制限部25は、挿入部33が他方の向きで挿入された場合には、ブレーキパッド3と接触して、挿入部33の被挿入部23への挿入を制限する。本実施形態において、制限部25は、先端パッド35のうち分割面3e側の端部を挿入方向に向けて先端挿入部351を被挿入部23と噛み合わせた場合に、当該分割面3e側の端部をブレーキパッド3が台板24に正しく装着された場合に分割面3eが位置する位置までスライドさせることを制限することができる位置に設けられている。これによって、図8に示すパターンで誤装着がされそうになった場合に、制限部25によって誤装着を防止することができる。また、本実施形態において、制限部25は、根元パッド36のうち分割面3e側とは反対側の端部を挿入方向に向けて根元挿入部361を被挿入部23に噛み合わせた場合に、当該分割面3e側とは反対側の端部を閉鎖端部23cの位置までスライドさせることを制限することができる位置に設けられている。これによって、図6及び15に示すパターンで誤装着がされそうになった場合に、制限部25によって誤装着を防止することができる。
【0075】
具体的には、制限部25の位置が以下の要件を満たせば、制限部25によって図6、8及び15に示すパターンの誤装着を防止することができる。まず、上述したように、制限部25と中心線L3との幅方向における距離w11が、上述した第2長さw10より大きく第1長さw9未満となっている。また、上述したように、制限部25が、少なくとも部分的に、正しい向きで挿入部33を被挿入部23に挿入してブレーキパッド3を台板24に装着した場合における挿入方向とは反対側のブレーキパッド3の端部3gの位置よりも、入口側に位置する。
【0076】
以上より、本実施形態に係るパッドホルダ2は、制限部25と固定部27とを組み合わせることによって、図6~20に示す15パターンの誤装着の全てを防止することができる。
【0077】
なお、図7、11、12、14及び16~20に示すパターンの誤装着は、図9、10及び13に示すようなパターンの誤装着と同様に、パッドホルダ2が固定部27を有する限り、制限部25を有しなくても、固定部27によって防止することもできる。ただし、パッドホルダ2が固定部27と制限部25とを有する場合には、固定部27を有するが制限部25を有しない場合と比較して、図7、11、12、14及び16~20に示すパターンの誤装着を防止する上で、以下の効果を有する。仮に、パッドホルダ2が固定部27を有するが制限部25を有しない場合、作業者は、挿入部33を挿入方向へスライドさせる作業を完了させた後、固定部27を用いてブレーキパッド3を固定することができないことを確認することで、はじめて誤装着がされそうになっていることに気付く。これに対して、パッドホルダ2が固定部27と制限部25とを有する場合、作業者は、挿入部33を挿入方向へスライドさせる作業の途中で、ブレーキパッド3が制限部25に接触することを確認することにより、誤装着がされそうになっていることに気付く。このため、固定部27と制限部25とを有するパッドホルダ2によれば、作業工程のより早期に、作業者に誤装着がされそうになっていると気付かせることができる。
【0078】
なお、本実施形態において、図3に示すように、2分割されたブレーキパッド3が正しい向きで台板24に装着された場合、先端パッド35の挿入方向と反対側(第1方向DAの一方SA1とは反対側)の端部と、根元パッド36の挿入方向の先端側(第1方向DAの一方SA1)の端部と、は、一続きになる。図3に示す例において、先端パッド35の挿入方向と反対側の端部と、根元パッド36の挿入方向の先端側の端部とが、分割面3eの位置において互いに対して面接触している。そして、分割面3eの位置において、先端パッド35の挿入方向と反対側の端部と、根元パッド36の挿入方向の先端側の端部とが、一続きになっている。ここで、先端パッド35の挿入方向と反対側の端部と根元パッド36の挿入方向の先端側の端部とが一続きになっているとは、図3に示すように、ブレーキパッド3の第1辺3cに対して、分割面3eの位置において1つの接線L4を引くことができ、且つブレーキパッド3の第2辺3dに対して、分割面3eの位置において1つの接線L5を引くことができることを意味する。換言すれば、先端パッド35の挿入方向と反対側の端部と根元パッド36の挿入方向の先端側の端部とが一続きになるような先端パッド35及び根元パッド36の向きが、先端パッド35及び根元パッド36の正しい向きであるとも言える。
【0079】
以上の通り、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0080】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0081】
(変形例)
上述の実施形態では、ブレーキキャリパ装置1が、いわゆるブラケットタイプのものである例について説明した。しかしながら、ブレーキキャリパ装置1の形態は、これに限られない。例えば、ブレーキキャリパ装置1は、いわゆる3点吊りタイプのものであってもよい。図21は、3点吊りタイプのブレーキキャリパ装置1における、ブレーキパッド3が装着されたパッドホルダ2の一例を示す図である。図21に示す例において、パッドホルダ2の台板24の、ブレーキパッド3の挿入方向の先端側(第1方向DAの一方SA1)には、鉄道車両の台車に取り付けられるハンガーと回動可能に連結するためのピンを取り付ける、取付穴29aが設けられている。取付穴29aは、被挿入部23の延伸する方向(第1方向DA)における台板24の中心よりも、挿入方向の先端側に設けられている。
【0082】
図21に示す例において、台板24は、台板本体26の装着面26aとは反対側の面に設けられた、取付穴29aを設けるためのハンガー取付部29をさらに有する。図21に示す例において、ハンガー取付部29は、台板本体26の装着面26aとは反対側の面から突出する突出部である。図21に示す例において、ハンガー取付部29は、台板24の、挿入方向の先端側の端部に設けられている。そして、ハンガー取付部29に、幅方向(第2方向DB)に延伸するように、取付穴29aが設けられている。
【0083】
図21に示すパッドホルダ2によれば、パッドホルダ2が、ピン及び取付穴29aを用いて、パッドホルダ2の挿入方向の先端側に配置されたハンガーに取り付けられる。この場合、パッドホルダ2の、被挿入部23の延伸する方向において、挿入部33を被挿入部23に挿入する入口である開口端部23dが位置する側とは反対側に、ハンガーが配置されることとなる。このため、パッドホルダ2にブレーキパッド3を装着する際に、ハンガーが邪魔になることなく、挿入部33を被挿入部23に挿入する作業を行うことができる。
【0084】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0085】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 ブレーキキャリパ装置
2 パッドホルダ
21 第1パッドホルダ
22 第2パッドホルダ
23 被挿入部
23c 閉鎖端部
23d 開口端部
24 台板
25 制限部
26 台板本体
27 固定部
29a 取付穴
3 ブレーキパッド
3e 分割面
31 第1ブレーキパッド
32 第2ブレーキパッド
33 挿入部
35 先端パッド
36 根元パッド
4 キャリパレバー
5 アクチュエータ
図1
図2
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