(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178561
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】水中油型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20221125BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221125BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/11
A61K8/06
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/894
A61K8/86
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085443
(22)【出願日】2021-05-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】田中 静磨
(72)【発明者】
【氏名】松下 裕史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC392
4C083AC401
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC531
4C083AC641
4C083AD042
4C083AD051
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD352
4C083AD511
4C083BB04
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB41
4C083CC03
4C083DD14
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF05
4C083KK01
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、香り立ちに優れ、かつ安定性にも優れた、油性カプセルを含んでなる化粧料を提供する。
【解決手段】(A)(A1)固形油分および(A2)液状油分を含んでなる平均粒子径100μm以上の油性カプセルと、(B)(B1)HLB8.5以上の界面活性剤、および(B2)香料を含んでなる香料複合体とを含んでなる水中油型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)固形油分および(A2)液状油分を含んでなる平均粒子径100μm以上の油性カプセルと、
(B)(B1)HLB8.5以上の界面活性剤および(B2)香料を含んでなる香料複合体と
を含んでなる水中油型化粧料。
【請求項2】
前記(B1)界面活性剤の配合量が、化粧料の総量に対して、0.01~0.45質量%である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(B2)香料の配合量が、化粧料の総量に対して、0.001~0.5質量%である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記(B1)界面活性剤と、前記(B2)香料と、の質量比が1:0.02~1:0.4である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(B1)界面活性剤が前記(B2)香料を内包してなる可溶化ミセルを形成している、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記香料複合体の平均粒子径が500nm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記(B1)界面活性剤が非イオン界面活性剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
前記(B1)界面活性剤が、ポリエーテル変性シリコーン、POE-ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、POE-脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル、プルロニック、POE・POP-アルキルエーテル、テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物、POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POE-ミツロウ・ラノリン誘導体、POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキレンオキシド/エチレンオキシド-ダイマージオールエーテル、POE-アルキルアミン、およびPOE-脂肪酸アミドからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の水中油型化粧料の製造方法であって、以下の工程:
融点を超える温度に調整し液状とされた、(A1)固形油分および(A2)液状油分を、10~1500rpmでの撹拌下、融点を越える温度に調整された水性溶媒に導入して混合物とし、当該撹拌下で、前記混合物を室温に冷却し、平均粒子径100μm以上の(A)油性カプセルを形成させる工程;
(B1)HLB8.5以上の界面活性剤および(B2)香料を、低級アルコールまたは多価アルコールに溶解させて、水性溶媒に導入し、撹拌し、(B)香料複合体を形成させる工程;および
前記(A)油性カプセルおよび前記(B)香料複合体を混合する工程
を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型化粧料に関する。より詳細には、目視可能な大きさの油性カプセルを含んでなる水中油型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
平均粒子径が50μm~10mmという大きな油性粒子を水相に分散させた水中油型乳化化粧料が知られている。このような大きな油性粒子が配合された化粧料は、目視可能な大きさの油性粒子が分散しているために視覚的に斬新で美しいばかりでなく、肌に適用した際にみずみずしく、さっぱりした感触があり、時間をおくとしっとりした感触になるといった従来になかった使用感が得られる。また、大きな油性粒子に分解性の油溶性成分を保持すれば当該油溶性成分の分解を抑制できるという効果も有する。
例えば、特許文献1には、常温で固体の油性成分を含む平均粒子径が100μm以上の油性カプセルが水性媒体中に分散されたカプセル含有化粧料が開示されている。
【0003】
従来、香料を内包するマイクロカプセルは洗濯洗剤や消臭剤に広範に利用され、好ましい香りを徐放する等の効果が期待されている。化粧料についても、香りに対する使用者の要求は高まっており、香料をマイクロカプセルに内包させる技術が開発されている。
上記の大きな油性カプセルが配合された化粧料に関して、良好な香り立ちを有するものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
上記の油性カプセルが配合された化粧料について、良好な香り立ちを達成することを目的に、カプセル中に香料を内包させた場合に、良好な香り立ちを達成しづらいことがわかってきた。また、カプセルに内包させずに、カプセル外に香料を配合するだけでは、同様に良好な香り立ちを達成しづらいこともわかってきた。
そのような中、本発明者らは、驚くべきことに、油性カプセルとは別に、特定の界面活性剤と香料を含んでなる香料複合体を形成させて、カプセル外に配合することにより、香り立ちに優れ、かつ安定性に優れる化粧料を提供できることを発見した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
したがって、本発明は、油性カプセルおよび香料複合体を含んでなる化粧料を開示する。
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1](A)(A1)固形油分および(A2)液状油分を含んでなる平均粒子径100μm以上の油性カプセルと、
(B)(B1)HLB8.5以上の界面活性剤および(B2)香料を含んでなる香料複合体と
を含んでなる水中油型化粧料。
[2](B1)界面活性剤の配合量が、化粧料の総量に対して、0.01~0.45質量%である、[1]に記載の化粧料。
[3](B2)香料の配合量が、化粧料の総量に対して、0.001~0.5質量%である、[1]または[2]に記載の化粧料。
[4](B1)界面活性剤と、(B2)香料と、の質量比が1:0.02~1:0.4である、[1]~[3]のいずれかに記載の化粧料。
[5](B1)界面活性剤が(B2)香料を内包してなる可溶化ミセルを形成している、[1]~[4]のいずれかに記載の化粧料。
[6]前記香料複合体の平均粒子径が500nm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の化粧料。
[7](B1)界面活性剤が非イオン界面活性剤である、[1]~[6]のいずれかに記載の化粧料。
[8](B1)界面活性剤が、ポリエーテル変性シリコーン、POE-ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、POE-脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル、プルロニック、POE・POP-アルキルエーテル、テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物、POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POE-ミツロウ・ラノリン誘導体、POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキレンオキシド/エチレンオキシド-ダイマージオールエーテル、POE-アルキルアミン、およびPOE-脂肪酸アミドからなる群から選択される、[1]~[7]のいずれかに記載の化粧料。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の水中油型化粧料の製造方法であって、以下の工程:
融点を超える温度に調整し液状とされた、(A1)固形油分および(A2)液状油分を、10~1500rpmでの撹拌下、融点を越える温度に調整された水性溶媒に導入して混合物とし、当該撹拌下で、前記混合物を室温に冷却し、平均粒子径100μm以上の(A)油性カプセルを形成させる工程;
(B1)HLB8.5以上の界面活性剤および(B2)香料を、低級アルコールまたは多価アルコールに溶解させて、水性溶媒に導入し、撹拌し、(B)香料複合体を形成させる工程;および
(A)油性カプセルおよび(B)香料複合体を混合する工程
を含んでなる、方法。
【0008】
本発明によれば、香り立ちに優れ、かつ安定性に優れた、油性カプセルを含んでなる化粧料を提供することができる。
【発明の具体的説明】
【0009】
[化粧料]
本発明は、(A)(A1)固形油分および(A2)液状油分を含んでなる平均粒子径100μm以上の油性カプセルと、(B)(B1)HLB8.5以上の界面活性剤および(B2)香料を含んでなる香料複合体とを含んでなる水中油型化粧料に関するものである。
【0010】
(A)油性カプセル
本発明による水中油型化粧料(以下、化粧料と称することがある)は、(A1)固形油分、および(A2)液状油分を含んでなる平均粒子径が100μm以上の油性カプセル(以下、油性カプセルまたは(A)成分と称することがある。他の成分も同様である)を含んでなる。
本発明による油性カプセルは、(A2)成分を含む内層の周囲を、(A1)成分が被覆した(外層)カプセル構造を有すると考えられる。また、外層をなす固形油分が結晶化することにより、適度な堅さとなって独特の使用感を生じさせる。
油性カプセルの平均粒子径は、100μm以上であり、好ましくは100μm~1.5mmであり、より好ましくは100μm~1mmである。油性カプセルの粒子径は、顕微鏡を用いて測定することができる。
(A)油性カプセルの配合量は、化粧料総量に対して、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。
【0011】
(A1)固形油分
(A)油性カプセルは、(A1)固形油分を含んでなる。本発明において、「固形油分」は、常温(25℃)で固体または半固体の油分を意味する。
(A1)固形油分としては、例えば、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、ビースワックス、バリコワックス、ポリエチレンワックス、シリコンワックス、高級アルコール(例えば、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール等)、バチルアルコール、カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ホホバロウ、ラノリン、セラックロウ、鯨ロウ、モクロウ、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等)、エステル油(例えば、ミリスチン酸ミリスチル等)、カカオ脂、硬化ヒマシ油、硬化油、水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、ポリエチレン、ワセリン、各種の水添動植物油脂、脂肪酸モノカルボン酸ラノリンアルコールエステル等が挙げられる。
(A1)固形油分の融点は、高温での安定性の観点から、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは55℃以上であり、さらに好ましくは65℃以上である。また、粒子形成性や分散性の観点から、融点は85℃以下であることが好ましい。より好ましい(A1)固形油分としては、水添ホホバ油(融点:68℃)、ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル(融点:66℃)、ステアリルアルコール(融点:52~62℃)やベヘニルアルコール(融点:68℃)等の炭素数16以上、好ましくは炭素数18以上の高級アルコール、マイクロクリスタリンワックス(融点:80℃)、セレシン(融点:68~75℃)、ポリエチレンワックス(融点:80℃)、バチルアルコール(融点:70℃)、カルナウバロウ(融点:83℃)、キャンデリラロウ(融点:71℃)、硬化ヒマシ油(融点:84℃)、ステアリン酸(融点:58~63℃)、ベヘニン酸(融点:69~80℃)、12-ヒドロキシステアリン酸(融点:70℃)等が挙げられる。
【0012】
(A1)成分は、1種または2種以上を配合することができる。本発明の組成物における(A1)成分の配合量は、(A)成分の総量に対して、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。この範囲とすることで、油性カプセルの安定性を良好にすることができ、また油性カプセルが適度な固さをもたせ、肌なじみ等の使用性を良好にすることができる。
【0013】
(A2)液状油分
(A)油性カプセルは、(A2)液状油分を含んでなる。本発明において、「液状油分」は、常温(25℃)で液体の油分を意味する。
(A2)液状油分としては、例えば、
アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の油脂オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、トリ-2-エチルヘキサエン酸グリセリン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等のイソオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のリンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油、
流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、ワセリン等の炭化水素油、
ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン(フェニルメチコン)、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油の変性シリコーンを含むシリコーン油等が挙げられる。
これらのうち、トリ-2-エチルヘキサエン酸グリセリン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等の極性油分は、油性カプセルの存在による肌なじみのよさと共に、しっとり感を付与できるため、好ましい。また、シリコーン油は、油性カプセルの存在による肌なじみのよさと共に、しっとり感やすべすべ感を付与できるため、好ましい。
【0014】
(A2)成分は、1種または2種以上を配合することができる。本発明の組成物における(A2)成分の配合量は、(A)成分の総量に対して、好ましくは50~95質量%であり、より好ましくは60~90質量%である。この範囲とすることで、油性カプセルの安定性を良好にすることができ、また油性カプセルが適度な固さをもたせ、肌なじみ等の使用性を良好にすることができる。
【0015】
(A)油性カプセルは、(A1)および(A2)の必須成分に加えて、他の成分を本発明の効果を阻害しない範囲で含有することもできる。油性カプセルに配合できる他の成分としては、例えば、油溶性増粘剤、保湿剤、油溶性薬剤(例えば、油溶性ビタミン類、油溶性植物抽出物等)、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調製剤、防腐剤、色素、染料、界面活性剤、粉末成分等が挙げられる。
【0016】
(B)香料複合体
本発明による化粧料は、(B1)HLB8.5以上の界面活性剤および(B2)香料を含んでなる香料複合体を含んでなる。(B1)界面活性剤が、(B2)香料を内包してなる可溶化ミセルを形成していることが好ましい。
(B1)界面活性剤と、(B2)香料と、の質量比は、好ましくは1:0.02~1:0.4であり、より好ましくは1:0.05~1:0.2である。
香料複合体の平均粒子径は、好ましくは、500nm以下であり、より好ましくは1~200nmである。香料複合体の平均粒子径は、複合体の形状を球状と仮定して、動的光散乱法等により光学的に測定することができる。
【0017】
(B1)HLB8.5以上の界面活性剤
(B)油性カプセルは、(B1)HLB8.5以上の界面活性剤を含んでなる。
HLB(hydrophile-lipophile balance)値は、好ましくは8.5~19ある。本発明において、HLB値は、好ましくはデイビス法によって算出される。
(B1)成分は、好ましくは非イオン界面活性剤である。
【0018】
(B1)界面活性剤は、好ましくは、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、PEG/PPG-30/10ジメチコン)、POE-ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンテトラオレエート等)、POEソルビット脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等)、POE-グリセリン脂肪酸エステル(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート)、POE-脂肪酸エステル(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等)、POE-アルキルエーテル(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等)、プルロニック、POE・POP-アルキルエーテル(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等)、テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物(例えば、テトロニック等)、POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等)、POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等)、POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキレンオキシド/エチレンオキシド-ダイマージオールエーテル(例えば、PEG/ポリブチレングリコール-44/15メチルエーテル水添ダイマージリノレイル)、POE-アルキルアミン、およびPOE-脂肪酸アミドからなる群から選択される。(B1)成分は、より好ましくは、ポリエーテル変性シリコーン、POE-グリセリン脂肪酸エステル、POE・POP-アルキルエーテル、POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、およびアルキレンオキシド/エチレンオキシド-ダイマージオールエーテルからなる群から選択される。
【0019】
(B1)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(B1)成分の配合量は、化粧料の総量に対して、好ましくは0.01~0.45質量%であり、より好ましくは0.05~0.4質量%である。この範囲とすることで、安定的な油性カプセルを形成でき、かつ塗布後のべたつきを抑制することができる。
【0020】
(B2)香料
(B)油性カプセルは、(B2)香料を含んでなる。(B2)香料は、特に限定されず、天然香料であっても、合成香料であってもよい。
【0021】
天然香料は、植物又は動物由来の成分を主成分とする香料であり、例えば、バラ油、ジャスミン油、ネロリ油、ラベンダー油、イランイラン油、チュベローズ油、クラリセージ油、クローブ油、ペパーミント油、ゼラニウム油、パチュリー油、サンダルウッド油、シナモン油、コリアンダー油、ナツメグ油、ペッパー油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、オポポナックス油、ベチバー油、オリス油、オークモス油等の植物由来の天然香料、ムスク油、シベット油、カストリウム油、アンバーグリス油等の動物由来の天然香料が挙げられる。
合成香料は、その化学構造あるいは発香基という観点から炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、ラクトン、フェノール、アセタールなどに分類されることがある。具体例としては、リモネン、β-カリオフィレン(以上、炭化水素類)、シス-3-ヘキセノール、リナロール、ファルネソール、β-フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、シトロネロール、ターピネオール、メントール、サンタロール、バグダノール、ブラマノール(以上、アルコール類)、2,6-ノナジエナール、シトラール、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、l-カルボン、シクロペンタデカノン、リラール、リリアール(以上、アルデヒド類)、β-イオノン、ダマスコン、メチルイオノン、イロン、イソイースーパー、アセチルセドレン、ムスコン(以上、ケトン類)、リナリルアセテート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、メチルジヒドロキシジャスモネート、メチルジャスモネート(以上、エステル類)、γ-ウンデカラクトン、ジャスミンラクトン、シクロペンタデカノリッド、エチレンブラシレート(以上、ラクトン類)、オイゲノール(フェノール類)、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール(アセタール類)、ローズオキサイド、インドール、オーランチオール等が挙げられる。
【0022】
(B2)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(B2)成分の配合量は、化粧料の総量に対して、好ましくは0.001~0.5質量%であり、より好ましくは0.001~0.2質量%である。
【0023】
本発明による化粧料は、(A)および(B)成分以外の他の成分を本発明の効果を阻害しない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。これらの成分としては、例えば、水溶性増粘剤、油溶性増粘剤、保湿剤、水溶性薬剤(例えば、アルブチン、アスコルビン酸グルコシド、トラネキサム酸、4-メトキシサリチル酸塩等)、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調製剤、防腐剤、色素、染料、界面活性剤、粉末成分等が挙げられる。
【0024】
上記の成分の中で、分散物の安定性をさらに向上させるために、水溶性増粘剤を配合することが好ましい。水溶性増粘剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン、キサンタンガム等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等を挙げることができる。
【0025】
これらの水溶性増粘剤のうち、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、界面活性を有しており、巨大粒子の凝集合一化を防止する作用を兼ね備えるために、特に好適な水溶性増粘剤として選択され得る。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体とも呼ばれ、好ましくは、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーである。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30))クロスポリマーは市販品を用いてもよく、「CARBOPOL 1342」、「Pemulen TR-1 Polymeric Emulsifier」、「Pemulen TR-2 Polymeric Emulsifier」(Lubrizol Advanced Materials,Inc.製)を挙げることができる。
【0026】
本発明による化粧料は、独特の外観及び使用感を有する化粧料基剤として使用するのに適している。当該基剤を使用した化粧料としては、例えば、水性化粧料、ジェル状化粧料、乳化化粧料等の形態が挙げられる。具体的な用途としては、化粧水、ジェル、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル、ボディまたはヘア用の化粧料として用いることができる。
【0027】
[化粧料の製造方法]
本発明による化粧料の製造方法は、以下の工程:
融点を超える温度に調整し液状とされた、(A1)固形油分および(A2)液状油分を、10~1500rpmでの撹拌下、融点を越える温度に調整された水性溶媒に導入して混合物とし、当該撹拌下で、前記混合物を室温に冷却し、平均粒子径100μm以上の(A)油性カプセルを形成させる工程(以下、油性カプセル形成工程と称することがある);
(B1)HLB8.5以上の界面活性剤および(B2)香料を、低級アルコールまたは多価アルコールに溶解させて、水性溶媒に導入し、撹拌し、(B)香料複合体を形成させる工程(以下、香料複合体形成工程と称することがある);および
(A)油性カプセルおよび(B)香料複合体を混合する工程(以下、混合工程と称することがある)
を含んでなる。
各工程について、以下に詳細に説明する。
【0028】
油性カプセル形成工程
(A1)および(A2)成分をそれぞれ融点を超える温度に調整し、液状とする。それらを、その温度と実質的に同一の温度に調整された水性溶媒に撹拌下で導入する。撹拌は、比較的低速、具体的には10~1500rpm(好ましくは20~300rpm)で、プロペラ、パドルミキサーを用いて行うことができる。水性溶媒への導入は、例えば、送液ポンプ等の注入手段を用いて、好ましくは水性溶媒の下部から直接注入することにより行うことができる。この注入を上部から行うと、直ちに油性成分の浮上分離が生じ、粒子径の均一な粒子を形成することが困難となることがある。
このようにして、撹拌下で、水性溶媒中に上記成分を導入することで、水性溶媒中に液状の粒子を形成させることができる。
次に、水性溶媒と上記成分の混合物を、撹拌下で、さらに室温まで冷却することにより、融点温度以下となった固形油分が粒子表面に析出する。これにより、平均粒子径が100μm以上の油性カプセルが、水性溶媒中に形成される。
【0029】
香料複合体形成工程
(B1)成分および(B2)成分を、低級アルコールまたは多価アルコールに溶解させる。その溶液を水性溶媒に導入し、撹拌する。撹拌条件は、特に限定されないが、一般的に混合物が目視で透明になるまで攪拌混合される。このとき攪拌速度は、好ましくは100~300rpmで行われる。これにより、(B)香料複合体を形成させる。
なお、油性カプセル形成工程と香料複合体形成工程の順序は特に限定されない。
【0030】
混合工程
(A)油性カプセルおよび(B)香料複合体が混合される。油性カプセルおよび香料複合体は、一般的に媒体中に均一に分散または溶解されているが、それぞれ、水性溶媒に含まれた状態で混合されていることも好ましい一形態である。これらの混合順序は特に限定されない。また、混合の際の温度は、油性カプセルおよび香料複合体が分解等しない温度、一般的には(A1)固形油分の融点よりも低い温度、たとえは室温にて行われる。また、混合時の攪拌条件も特に限定されないが、油性カプセルが破壊されない程度の条件で混合することが好ましい。
【実施例0031】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。配合量は特記しない限り、総量に対する質量%で示す。
【0032】
[実施例1]
表1に示される配合で、実施例1の化粧料を調製した。
具体的には、まず、水性溶媒を70℃に加熱し、プロペラミキサーを用いて250rpmで撹拌を行いつつ、70℃で溶融した(A1)および(A2)成分を送液ポンプを用いて、20m/minの速度で水性溶媒相内部に、同相の下部から注入した。注入終了後、撹拌速度を150rpmに減速し、室温まで冷却した後、水酸化カリウムを添加して、油性カプセルを含む組成物を形成させた。
次に、(B1)成分および(B2)成分を、エタノールに溶解させて、水性溶媒に導入し、200rpmで撹拌し、香料複合体を含む組成物を形成させた。
その後、油性カプセルを含む組成物と香料複合体を含む組成物を混合し、実施例1の化粧料を得た。
【0033】
[実施例2~7および比較例2]
実施例2~7および比較例2の化粧料は、表1に示される配合で、実施例1と同様に、調製した。
[比較例1]
比較例1の化粧料は、表1に示される配合で、(A1)および(A2)成分に、(B2)を加えて、油性カプセルを形成させた以外は、実施例1と同様に調製した。比較例1では、香料は、油性カプセル内に存在する。
[比較例3]
比較例3は、表1に示される配合で、(A1)および(A2)成分に、(B2)を加えて、油性カプセルを形成させ、その後、(B1)成分のみが水性溶媒に導入された以外は、実施例1と同様に調製した。比較例3では、香料は油性カプセル内に存在し、(B1)界面活性剤は、カプセル外に存在し、香料複合体は形成されていない。
【表1】
【0034】
[油性カプセルの粒子径]
上記で調製された化粧料3gを55mmφのシャーレに広げ、上部よりスケールと共にデジタルカメラで画像を取り込み、代表50個の粒子の粒子径をスケールから読み取り、平均値を算出した。得られた油性カプセルの平均粒子径は全て100μm~1.0mmであった。
【0035】
[香料複合体の粒子径]
上記で調製された化粧料をイオン交換水にて1/10希釈したものを試料とした。これらの試料を「ゼータサイザー NANO-ZS」(シスメックス株式会社製)を用いて観察し、粒子径を測定した。得られた香料複合体の平均粒子径は全て50nm以下であった。
【0036】
[香り評価]
実施例および比較例の化粧料の一定量を肌に塗布し、塗布直後の香りの強さを、以下の基準により評価した。得られた結果は表1のとおりである。
A:強い
B:弱い
【0037】
[安定性評価]
実施例および比較例の化粧料を25℃および40℃で1ヶ月保存した後の油性カプセルの状態を観察した。評価基準は以下の通りである。得られた結果は表1のとおりである。
A:いずれの保存条件でも油性カプセルの状態の変化は認められなかった
B:40℃で保存した場合のみ、20%未満の油性カプセルに凝集・変形が認められた
C:40℃で保存した場合のみ、20%以上の油性カプセルに凝集・変形が認められた
【0038】
表1の結果から、油性カプセルと、特定の界面活性剤と香料とを含む香料複合体とを含む化粧料が、香り立ちが良好で、かつ安定性に優れていることがわかった。