(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178562
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】遮熱シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20221125BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221125BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20221125BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B32B7/023
A01G13/02 B
A01G9/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085444
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 喜正
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
4F100
【Fターム(参考)】
2B024DA00
2B024DB01
2B029EB03
2B029EC02
2B029EC03
4F100AA21B
4F100AK03A
4F100AK41B
4F100AN01B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA13B
4F100DE01B
4F100EH61B
4F100EJ86B
4F100GB01
4F100JD10B
4F100JL00
4F100JL11
4F100JM01B
4F100JN01
(57)【要約】
【課題】屋外での使用により遮熱層が徐々に劣化して、遮熱層の脱離が容易な遮熱性シート材を提供する。
【解決手段】ポリオレフィンのシート状の基材20の表面に、遮熱層30が形成された遮熱シート10であって、可視光透過率が27%以上であり、遮熱層30は、ベース樹脂と遮熱材とを含み、ベース樹脂31は、天然ゴムとポリ乳酸とを含み、遮熱材32は、平均粒径10μm以下の細粒子と、平均粒径10μmを超える粗粒子とを含み、細粒子は、ベース樹脂100重量部に対して10~20重量部含み、粗粒子は、ベース樹脂100重量部に対して50~120重量部含むようにすれば、遮熱層30が徐々に劣化して、除去しやすくすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンのシート状の基材の表面に、遮熱層が形成された遮熱シートであって、
可視光透過率が27%以上であり、
前記遮熱層は、ベース樹脂と遮熱材とを含み、
前記ベース樹脂は、天然ゴムとポリ乳酸とを含み、
前記遮熱材は、平均粒径10μm以下の細粒子と、平均粒径10μmを超える粗粒子とを含み、
前記細粒子は、ベース樹脂100重量部に対して10~20重量部含み、
前記粗粒子は、ベース樹脂100重量部に対して50~120重量部含む
ことを特徴とする遮熱シート。
【請求項2】
前記天然ゴムとポリ乳酸との配合比率(重量比率)は、天然ゴム:ポリ乳酸=5~55:95~45であり、
サンシャインウェザオメーターによる促進耐候試験24時間後において、遮熱層が基材に密着していることを特徴とする請求項1に記載の遮熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用のビニールハウスやトンネル栽培で用いる農業用シートにおいて、合成樹脂からなるシートの表面に、遮熱性を有する遮熱層が形成された遮熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
農園芸用のビニールハウスやトンネル栽培においては、夏期は内部の温度が上昇するので、適切な温度を保持するために、空調設備を導入したり、ビニールハウスやトンネル栽培で表面を覆う被覆材の一部を開閉可能として通気を可能にしたり、被覆材として遮熱シートを用いたりすることがある。
【0003】
被覆材として遮熱シートを用いる場合は、シート材の表面に遮熱性塗料を塗装して遮熱層を設ける場合や、基材と遮熱材料が添加された遮熱層を有する複数層かなるシート材を成形する場合などがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、合成樹脂繊維からなる不織布の少なくとも片面に、屈折率の高い白色顔料を分散した合成樹脂バインダーをコーティング、乾燥して得られる遮光資材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の遮光資材は、適度な遮光性を有し、散乱光を被覆系内に透過させると共に、高い遮熱性を有することが期待される。しかしながら、被覆材として遮光性が必要となれるのは、通年ではなく、日差しが強い夏期である場合が多い。冬期においては、むしろ、日光を取り入れる必要があるので、コーティング層は除去又は脱離が可能な形態が要望されていた。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、屋外での使用により遮熱層が徐々に劣化して、遮熱層の脱離が容易な遮熱性シート材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究した結果、ポリ乳酸と天然ゴムとからなるベース樹脂と遮熱材料とを含む組成物を用いて、ポリエチレン系のシート状の基材の表面に遮熱層を形成して、所定の遮熱性能を備えた遮熱シートを作成すれば、屋外において、所定の期間は遮熱性能を保持しつつ、遮熱層が劣化して、徐々に除去しやすくなることを知得し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る遮熱シートは、ポリオレフィンのシート状の基材の表面に、遮熱層が形成された遮熱シートであって、可視光透過率が27%以上であり、前記遮熱層は、ベース樹脂と遮熱材とを含み、前記ベース樹脂は、天然ゴムとポリ乳酸とを含み、前記遮熱材は、平均粒径10μm以下の細粒子と、平均粒径10μmを超える粗粒子とを含み、前記細粒子は、ベース樹脂100重量部に対して10~20重量部含み、前記粗粒子は、ベース樹脂100重量部に対して50~120重量部含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る遮熱シートにおいて、前記天然ゴムとポリ乳酸との配合比率(重量比率)は、天然ゴム:ポリ乳酸=5~55:95~45であり、サンシャインウェザオメーターによる促進耐候試験24時間後において、遮熱層が基材に密着していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明に係る遮熱シートを、農業用ハウスや、いわゆる、ビニールハウスで用いられる農業用シートとして利用すると、遮熱性能が必要となる夏期に設置すれば、遮熱性能が不要となる冬期の前には遮熱層に含まれる天然ゴム成分が特に劣化しやすいので、一部は降雨により地面に落下し、基材に残存する遮熱層も経時的に密着性が低下することが期待されるので除去しやすくなる。
【0012】
本発明において、天然ゴムとポリ乳酸との配合比率(重量比率)は、天然ゴム:ポリ乳酸=5~55:95~45であり、サンシャインウェザオメーターによる促進耐候試験24時間後において、遮熱層が基材に密着しているようにすれば、劣化しやすい天然ゴム成分が含まれていても、所定の期間は遮熱層が保持されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る遮熱シートにおいて実施の一形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態にについて、図面に基づき以下に具体的に説明する。
図1は本発明に係る遮熱シートの実施の一形態を示す断面図である。遮熱シート10は、ポリエチレン系のシート状の基材20の一方の面に遮熱層30を有するものである。基材の厚さは0.05~0.15μmが好適であり、乾燥塗膜重量1.0~2.0mg/m
2が好適である。
【0015】
基材20は、農業用ハウスやビニールハウス用に用いられるポリオレフィン系シートのものであれば、特に限定されるものではない。ポリオレフィン系シートの材料の具体例としては、ポリエチレン、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)、EAA(エチレン-アクリル酸共重合体)などを挙げることができる。また、市販品としては、ダイヤスター(三菱ケミカルアグリドリーム社)、スーパーダイヤスター(三菱ケミカルアグリドリーム社)、農サクビ(昭和パックス社)などが挙げられる。
【0016】
遮熱層30は、ベース樹脂31と遮熱材32とを含むものである。ベース樹脂31は、天然ゴムと、ポリ乳酸とを有するものである。したがって、遮熱シート10を屋外で使用すると、経時的に劣化するとともに、降雨によって遮熱層30の一部が基材20から剥離して地面に流されることになる。天然ゴム及びポリ乳酸は、いずれも生分解性を有するので徐々に分解されるため、一般的な合成樹脂のように、劣化しても破片として残存し、いわゆる、マイクロプラスチックスが生じるおそれが少なく、環境への負荷を小さくすることができる。
【0017】
遮熱材32は、遮熱性能を付与できるものであれば、特に限定されるものではないが、無機物が好適に用いられる。無機物としては、平均粒子径が10μm以下のものを細粒子とし、平均粒径が10μmを超えるものを粗粒子とすれば、一般に、ベース樹脂31に対する配合割合が同量の場合、細粒子を用いた方が粗粒子を用いる場合よりも粒子の数が多くなり、よって、遮光層30の厚み方向に対して隙間なく配向されるため、細粒子を用いた方が光を反射しやすくなる。ここで、本発明に係る遮熱フィルムに求められる遮熱性は、主に近赤外線の反射性能であって、植物の光合成に必要な波長を含む可視光線は遮蔽しにくい方が好ましい。
【0018】
平均粒子径の測定は、粒度分布計(日機装社製 マイクロトラック粒度分布計 MT3300EX2)によって実施し、測定値においてD50の値を平均粒子径とした。
【0019】
すなわち、細粒子のもののみ添加した場合、近赤外線の反射性能を上げると、可視光線の遮蔽率も上がってしまう。加えて、近赤外線の反射性能は、可視光線の遮蔽率よりは上がり難い傾向を示したため、細粒子と粗粒子との双方を含むようにすることで、適切な遮熱性を容易に得られることを見いだした。
【0020】
具体的には、ベース樹脂(固形分量)100重量部に対して、細粒子を10~20重量部含み、かつ、粗粒子を50~120重量部含むようにすると、遮熱シート10が優れた遮熱性を有するものとなる。
【0021】
遮熱層30を基材の一方の面に設ける方法としては、既設の農業用シートに適用できることが好ましいことから、遮熱層30の材料を含む塗料を作成し、これを基材20の一方の面に塗布できることが好ましい。具体的には、ベース樹脂31の分散液に遮熱材32を添加した塗料を作成し、噴霧器を用いて、ベース樹脂31の一方の面に塗布して乾燥後、遮熱層30を形成するものである。
【0022】
既設の農業用シートを構成する基材に塗布することを考慮すると、遮熱層30の材料を含む塗料としては水系塗料が好ましい。加えて、噴霧器で噴霧することから、塗料が噴霧器で目詰まりしないような塗料の固形成分の適度な分散性が必要となる。
【0023】
遮熱シート10の遮熱性能としては、上述の通り、近赤外線は反射しやすく、可視光線は遮蔽しにくいものが好ましい。具体的には、赤外線領域(波長領域として780~2500nm)における日射反射率が27%以上である。
【0024】
基材に対する遮熱層の密着性としては、基材の一方の面に遮熱層を形成した状態で、初期及びサンシャインウェザオメーターによる促進耐候性試験(JIS K 7350-4:2008 プラスチック-実験室光源による暴露試験方法-第4部:オープンフレームカーボンアークランプに準拠)において、試験時間24時間後、塗膜の脱落が目視で確認されないことである。これにより、屋外設置から概ね1~3ヶ月は基材の表面に遮熱層が保持されていることが期待される。
【0025】
次に、本発明に係る遮熱シートの実施例を示す。
【0026】
(実施例1)
基材10としては、ポリオレフィンシート(三菱ケミカルアグリドリーム社製 ダイヤスター、三菱ケミカルアグリドリーム社製スーパーダイヤスター、昭和パックス社製農サクビ)の3種類を準備した。
遮熱層のベース樹脂としては、ポリ乳酸エマルション(ミヨシ油脂社製 ランディー PL-3000、固形分量40重量%)、天然ゴムエマルション(レジテックス社製 ULACOL、固形分量40重量%)を9:1の割合で混練したベース樹脂エマルションを作製した。更に、ベース樹脂エマルション250重量部(固形分量として100重量部)に対して、遮熱材として、細粒子(テイカ社製赤外線遮蔽酸化チタン JR-1000 平均粒子径:1.1μm)11.1重量部、粗粒子としてパール顔料(日本光研工業社製 TWINCLEPEARL RXE 平均粒子径:36μm)115.6重量部を添加して、遮熱層を形成するための塗料を作製した。この塗料を用いて、乾燥塗膜重量が1.0mg/m2以上となるように噴霧器(株式会社工進社製 背負い式エンジン動噴機 ES-10C)で3種類の基材にそれぞれ塗布し、乾燥させて遮熱シートを作製した。
【0027】
(吹付け性)
遮熱層を形成するための塗料を噴霧器で基材に吹き付ける際の噴霧状態を確認した。噴霧器で正常に噴霧できた場合は評価を「○」とし、噴霧器で異常(目詰まり)が発生した場合は評価を「×」とした。評価結果を表1に表す。
【0028】
(初期密着性)
作製した遮熱シートについて、塗料乾燥後の状態で目視による外観観察を実施した。3種類の基材10に対して、いずれも塗膜の脱落が認められない場合は評価を「○」とし、3種類の基材10に対して、ひとつでも塗膜の脱落が認められる場合は評価を「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0029】
(密着耐久性)
作製した遮熱シートについて、遮熱層側が光源側になるように配置して促進耐候性試験24時間後に目視による外観観察を実施した。塗膜の脱落が認められない場合は評価を「○」とし、塗膜の脱落が認められる場合は評価を「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0030】
(日射反射率)
上述の遮熱層を形成するための塗料をポリオレフィンシート(三菱アグリドリームケイカル社製 ダイヤスター)に塗布し、乾燥塗膜重量が1.0mg/m2となるように小型エアースプレーガン(アネスト岩田株式会社製 小型スプレーガン WIDER1)で基材に塗布し、40℃で1時間乾燥させて遮熱層付きガラス板を作製した。これを、自記分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、UH4150)を用いて、φ60積分球を使用し、780~2500nmの分光反射率を測定し、JIS K5600 塗膜の日射反射率の求め方に準拠し、近赤外線領域における日射反射率を求めた。日射反射率が27%以上の場合は評価を「○」とし、日射反射率が27%未満の場合は評価を「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱層のベース樹脂として、ポリ乳酸エマルションと天然ゴムエマルションとを1:1の割合で混練した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
遮熱層を形成するための塗料において、ベース樹脂エマルション250重量部(固形分量として100重量部)に対して、遮熱材として、細粒子11.1重量部、粗粒子としてパール顔料57.8重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱層のベース樹脂として、ポリ乳酸エマルションと天然ゴムエマルションとを1:1の割合で混練し、ベース樹脂エマルション250重量部(固形分量として100重量部)に対して、遮熱材として、細粒子11.1重量部、粗粒子としてパール顔料57.8重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)
遮熱層を形成するための塗料において、ベース樹脂エマルション250重量部(固形分量として100重量部)に対して、遮熱材として、細粒子22.2重量部、粗粒子としてパール顔料57.8重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0035】
(比較例1)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱材として、細粒子11.1重量部、粗粒子としてパール顔料28.9重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0036】
(比較例2)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱材として、細粒子を加えず、粗粒子としてパール顔料57.8重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0037】
(比較例3)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱材として、細粒子を加えず、細粒子5.6重量部、粗粒子としてパール顔料重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0038】
(比較例4)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱層のベース樹脂として、天然ゴムエマルションのみを用いたこと以外は、実施例1と同様に、この塗料を用いて噴霧器で基材に塗布する際、噴霧器に目詰まりが発生したので、遮熱シートを作製できなかった。このため、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験は実施しなかった。
【0039】
(比較例5)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱層のベース樹脂として、ポリ乳酸エマルションのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0040】
(比較例6)
遮熱層を形成するための塗料において、遮熱層のベース樹脂として、ポリ乳酸エマルションのみを用い、遮熱材として、細粒子11.1重量部、粗粒子としてパール顔料57.8重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして遮蔽シートを得た。実施例1と同様に、吹き付け性、初期密着性、密着耐久性、日射反射率の評価試験結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
以上、実施例1~5及び比較例1~6の結果からも明らかなように、本発明の遮熱シートは、遮熱層を形成するための塗料において、優れた吹き付け性を示すとともに、初期密着性、密着耐候性、日射反射率においても優れた性能を有することが分かった。
【0043】
加えて、遮熱層のベース樹脂において、ポリ乳酸のみでは十分な密着耐候性が確保できず、また、遮熱層の遮熱材において、無機物が少ないと十分な日射反射率が確保できないことが分かった。
【0044】
更に、実施例3と比較例2~3とを対比すると、遮熱層の遮熱材において、細粒子は添加量が比較的少ない場合は、日射反射率の性能向上への寄与が大きいが、実施例3に対して、実施例1と実施例5とを対比すると、細粒子の添加量を増やしても、日射反射率の性能向上への寄与が比較的小さく、粗粒子の添加量を増やした方が日射反射率の性能向上への寄与が比較的大きい傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る遮熱シートをビニールハウスやトンネル栽培で用いる農業用シートに適用することによって、特にハウス内やトンネル内の温度が上昇しやすい夏期において、温度上昇を抑えることが期待できる。加えて、農業用シートとして使用後は、耐候劣化により遮熱層が徐々に劣化、或いは基材に対する遮熱層の密着性の低下が予想され、自然に脱落、または、遮熱層の除去が容易な状態となり、冬期においては、遮熱層が除去された状態が期待される。また、脱落した遮熱層は地面に落ち、その後に生分解されることが期待されるから、環境への負荷を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 遮熱シート
20 基材
30 遮熱層
31 ベース樹脂
32 遮熱材