(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178563
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ウェットシート及びウェットシートを含む包装体
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A47K7/00 E
A47K7/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085445
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219680
【氏名又は名称】株式会社トライフ
(71)【出願人】
【識別番号】507369811
【氏名又は名称】特種東海製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】大坂 篤史
(72)【発明者】
【氏名】山岸 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】服部 景
(57)【要約】
【課題】紙をシート基材として使用するにもかかわらず、アルカリ性水を含むシート基材の経時的な紙面pH値の低下を抑制することができるウェットシートを提供すること。
【解決手段】アルカリ性水を含む紙基材を備えるウェットシートであって、前記紙基材が、カッパー価が26以下の未晒パルプからなることを特徴とする、ウェットシート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性水を含む紙基材を備えるウェットシートであって、
前記紙基材が、カッパー価が26以下の未晒パルプからなることを特徴とする、ウェットシート。
【請求項2】
8.7以上の紙面pH値を有する、請求項1記載のウェットシート。
【請求項3】
アルカリ性水がアルカリ電解水である、請求項1又は2に記載のウェットシート。
【請求項4】
前記アルカリ性水が塩基性化剤を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のウェットシート。
【請求項5】
前記紙基材が水解性である、請求項1乃至4のいずれかに記載のウェットシート。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のウェットシートを含む包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の洗浄作業に使用されるウェットシート及び当該ウェットシートを含む包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットシートは液体を含浸可能なシート基材に各種の液体を含浸させた湿潤状態のシートであり、例えば、人間又は動物の皮膚の清拭、或いは、床、トイレ、台所周り、家具等の清掃といった各種の洗浄作業に用いられる。ウェットシートは、湿潤状態を保持するために、通常は、密閉包装された包装体の形態として市販されている。
【0003】
そして、ウェットシートに優れた洗浄効果を付与するために、シート基材に含浸させる液体として、アルカリ性水を使用する場合がある(特許文献1)。
【0004】
また、ウェットシートのシート基材としては、通常は、不織布が使用されているが、紙を使用するものも存在する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5604749号公報
【特許文献2】特開2017-66543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シート基材にアルカリ性水を含浸させたウェットシートでは、当該含浸後のシート基材の紙面pH値が高い方が優れた洗浄効果を発揮することができる。
【0007】
しかし、アルカリ性水を含浸させるシート基材として紙を使用すると、アルカリ性水含浸後のシート基材の紙面pH値が経時的に低下する場合があることが判明した。
【0008】
アルカリ性水含浸後のシート基材の紙面pH値が経時的に低下するとウェットシートの洗浄効果が経時的に低下してしまう。
【0009】
本発明は、紙をシート基材として使用するにもかかわらず、アルカリ性水を含むシート基材の紙面pH値の経時的な低下を抑制することができるウェットシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鋭意検討の結果、本発明者らは、未晒パルプ製の紙をシート基材として使用する場合に、カッパー価が26以下の未晒パルプ製の紙をシート基材として使用すると、当該シート基材にアルカリ性水を含浸させても、当該含浸後のシート基材の紙面pH値の経時的な低下を抑制可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、アルカリ性水を含む紙基材を備えるウェットシートであって、
前記紙基材が、カッパー価が26以下の未晒パルプからなることを特徴とする、ウェットシートに関する。
【0012】
本発明のウェットシートは8.7以上の紙面pH値を有することが好ましい。
【0013】
前記アルカリ性水はアルカリ電解水であることが好ましい。
【0014】
前記アルカリ性水は塩基性化剤を含んでもよい。
【0015】
前記紙基材は水解性であることが好ましい。
【0016】
本発明は、上記のウェットシートを含む包装体にも関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のウェットシートは、紙をシート基材として使用するにもかかわらず、アルカリ性水を含むシート基材の紙面pH値の経時的な低下を抑制することができる。したがって、本発明のウェットシートは長期に亘って優れた洗浄効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のウェットシートは、
アルカリ性水を含む紙基材を備えており、
前記紙基材が、カッパー価が26以下の未晒パルプからなることを特徴とする。
【0019】
パルプのカッパー価はパルプのリグニン含有量の指標であり、カッパー価が少ない方がパルプに含まれるリグニンの量が少ない。したがって、本発明のウェットシートは、ウェットシートのシート基材としてリグニンの量が少ない未晒パルプからなる紙を使用することを特徴とする。
【0020】
理論に束縛されるものではないが、紙中には紙の原料であるパルプに由来するリグニンが存在しているために、紙をシート基材としてアルカリ性水を含浸すると、紙中のリグニンがアルカリ性水中のアルカリ成分を経時的に中和するために、当該含浸後のシート基材の紙面pH値が経時的に低下するものと考えられる。本発明では、リグニン含有量が少ないパルプからなる紙をシート基材として使用するので、当該シート基材にアルカリ性水を含浸しても当該アルカリ性水中のアルカリ成分の経時的な中和が抑制され、シート基材の経時的な紙面pH値の低下を抑制することができると考えられる。
【0021】
以下、本発明のウェットシートについて説明する。
【0022】
[紙基材]
本発明のウェットシートは、シート基材としての紙基材を備える。紙基材は、多孔性であり、液体を含浸可能である。
【0023】
紙基材の数は、特には限定されるものではなく、単一又は複数とすることができる。
【0024】
アルカリ性水を含浸する前の紙基材の厚みは特には限定されるものではないが、30~300μmが好ましく、40~150μmがより好ましく、50~100μmが更により好ましい。
【0025】
アルカリ性水を含浸する前の紙基材の坪量も特には限定されるものではないが、10~100g/m2が好ましく、15~50g/m2がより好ましく、20~30g/m2が更により好ましい。
【0026】
本発明における紙基材は未晒パルプからなる。本発明における「からなる」は「から形成されている」の意味である。すなわち、本発明における紙基材は未晒パルプから形成されている。したがって、未晒パルプは本発明における紙基材の原料である。未晒パルプを使用することで、形成される紙基材の強度が向上する効果が得られる。例えば、ウェットシートが使用される場面では、紙基材の引張強度が高いことで包装体からの取り出しに難が生じない。
【0027】
本発明における紙基材の原料としての未晒パルプのカッパー価は26以下である。未晒パルプのカッパー価は25以下が好ましく、24以下がより好ましく、23以下が更により好ましい。このように、未晒パルプのカッパー価は少ないほど好ましいが、パルプからリグニンを取り除くには限界があり、カッパー価が極端に下げるには製造の手間や多大なコストを要する。この点を考慮すると、カッパー価は14以上が好ましい。
【0028】
パルプのカッパー価は、JIS P8211:2011に準拠して測定することができる。
【0029】
カッパー価以外の点では未晒パルプの種類は特には限定されるものではなく、紙の原料として使用可能な様々な未晒パルプを使用することができる。
【0030】
本発明で使用可能な未晒パルプとしては、木材パルプが好ましく、例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、及び、これらの混合物が挙げられる。
【0031】
針葉樹パルプとは針葉樹由来のパルプであり、その製造方法は特には限定されない。
【0032】
針葉樹としては、マツ目の樹木が好ましく、例えば、スギ(マツ目ヒノキ科)、ヒノキ(マツ目ヒノキ科)、マツ(マツ目マツ科)、モミ(マツ目マツ科)、ツガ(マツ目マツ科)、シラベ(マツ目マツ科)、トウヒ(マツ目マツ科)、ダグラスファー(マツ目マツ科)、ホワイトファー(マツ目マツ科)、スプルース(マツ目マツ科)、バルサムファー(マツ目マツ科)、シダー(マツ目マツ科)、パイン(マツ目マツ科)、ラジアータパイン(マツ目マツ科)が挙げられる。1種の針葉樹パルプを使用してもよく、2種以上の針葉樹パルプを併用してもよい。
【0033】
広葉樹パルプとは広葉樹由来のパルプであり、その製造方法は特には限定されない。
【0034】
広葉樹としては、例えば、ブナ、カバ、アスペン、マングローブ、オーク、ユーカリ、ドロノキ、ハコヤナギ、シナノキ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、アカシア、オルダー、ラワンが挙げられる。1種の広葉樹パルプを使用してもよく、2種以上の広葉樹パルプを併用してもよい。
【0035】
本発明における紙基材の原料としての未晒パルプはカッパー価が26超の未晒パルプを含まない。
【0036】
本発明における紙基材は未晒パルプから形成されているが、未晒パルプのみから形成されている必要はない。したがって、本発明における紙基材の原料は未晒パルプ以外の成分を含んでもよい。
【0037】
本発明における紙基材の原料におけるカッパー価が26以下の未晒パルプの含有量は、原料の総重量を基準として、85重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上が更により好ましい。
【0038】
本発明における紙基材の原料は非木材パルプを含んでもよい。非木材パルプは、特には限定されるものではないが、麻、竹、藁、ケナフ、バガス、三椏、楮、木綿等に由来するパルプが挙げられる。1種の非木材パルプを使用してもよく、2種以上の非木材パルプを併用してもよい。
【0039】
本発明における紙基材の原料が非木材パルプを含む場合、非木材パルプの含有量は特には限定されるものではないが、原料の全重量を基準として、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更により好ましい。
【0040】
本発明における紙基材の原料は再生パルプを含んでもよい。再生パルプは、特には限定されるものではないが、古紙、レーヨン、キュプラ等に由来するパルプが挙げられる。1種の再生パルプを使用してもよく、2種以上の再生パルプを併用してもよい。
【0041】
本発明における紙基材の原料が再生パルプを含む場合、再生パルプの含有量は特には限定されるものではないが、原料の全重量を基準として、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更により好ましい。
【0042】
いずれにしても、本発明における紙基材は、パルプから構成されるために、セルロース繊維を含む。本発明における紙基材を構成する全てのセルロース繊維はカッパー価が26以下の未晒パルプに由来するものであることが好ましい。すなわち、本発明における紙基材の原料としてのパルプはカッパー価が26以下の未晒パルプのみであることがより好ましい。
【0043】
本発明における紙基材の原料は晒パルプを含んでもよい、本発明における紙基材の原料が晒パルプを含む場合、晒パルプの含有量は特には限定されるものではないが、原料の全重量を基準として、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更により好ましい。本発明における紙基材の原料は晒パルプを含まないことが好ましい。
【0044】
本発明における紙基材は、必要に応じて、各種の有機繊維、無機繊維又はこれらの複合繊維から選択される非セルロース繊維を含むことができる。1種の非セルロース繊維を使用してもよく、2種以上の非セルロース繊維を併用してもよい。
【0045】
有機繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエステル誘導体、アクリル系重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン、これらの誘導体からなる単繊維又はこれらの樹脂を2種類以上複合してなる複合繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、ジルコニア繊維、窒化珪素繊維、炭化珪素繊維等が挙げられる。
【0046】
紙基材が非セルロース繊維を含む場合、非セルロース繊維の含有量は、紙基材の全重量を基準として、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下が更により好ましい。
【0047】
紙基材は、製紙分野で通常使用されている任意の添加剤を含むことができる。添加剤は特には限定されるものではなく、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、タルク、クレー等の填料;ポリアクリルアミド等の歩留向上剤;カチオン化澱粉等の濾水向上剤;ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の湿潤紙力増強剤;ポリアクリルアミド等の乾燥紙力増強剤;着色剤;防黴剤、消泡剤、帯電防止剤、スライムコントロール剤の助剤等が挙げられる。
【0048】
本発明における紙基材は水解性であることが好ましい。紙基材が水解性の場合、本発明のウェットシートは、使用後に、例えば、トイレにそのまま流して廃棄することができる。
【0049】
紙基材が水解性の場合、紙基材は水溶性バインダーを含むことが好ましい。水溶性バインダーとしては、天然多糖類、多糖誘導体、合成高分子等が挙げられる。天然多糖類としては、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン等が挙げられる。多糖誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンブン又はその塩、デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。
【0050】
紙基材が水溶性バインダーを含む場合、水溶性バインダーの含有量は、紙基材の全重量を基準として、1~30重量%が好ましく、2~20重量%がより好ましく、3~10重量%が更により好ましい。
【0051】
紙基材は通常の抄紙方法によって製造することができる。水解性の紙基材についても、例えば、パルプと共に水溶性バインダーを含むスラリーを抄紙することによって製造することができる。
【0052】
抄紙の途中及び/又は抄紙後にカレンダー処理、スーパーカレンダー処理、ソフトニップカレンダー処理、エンボス等の加工を行っても構わない。加工処理により、紙基材の表面性や厚さを調整することができる。
【0053】
[アルカリ性水]
本発明のウェットシートでは、シート基材である紙基材がアルカリ性水を含む。アルカリ性水は紙基材に含浸されていることが好ましい。
【0054】
アルカリ性水のpH値は7.0超であればよいが、洗浄機能の点では、8.0超が好ましく、9.0超がより好ましく、10.0超が更により好ましい。アルカリ性水のpH値は、例えば、pH計(pH METERF-51(堀場製作所製)等)によって測定することができる。
【0055】
本発明で使用されるアルカリ性水は水を電気分解することによって製造される所謂アルカリ電解水であることが好ましい。アルカリ電解水は、化学的な塩基性化剤を使用せずとも、水に対する電気分解により容易に製造することができる。また、アルカリ電解水を使用することによって、本発明のウェットシートは油性の汚染物質に対する優れた洗浄効果を発揮することができる。
【0056】
本発明で使用されるアルカリ性水は、必要に応じて、塩基性化剤を含んでもよい。塩基性化剤の種類は特には限定されるものではなく、また、複数種類の塩基性化剤を併用してもよい。
【0057】
塩基性化剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩といった無機塩基性化剤;モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン等のアルカノールアミンといった有機塩基性化剤;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
[ウェットシート]
本発明のウェットシートは、アルカリ性水を含む紙基材を備えており、湿潤した状態である。本発明のウェットシートは、例えば、紙基材にアルカリ性水を含浸させることにより製造することができる。含浸方法は特には限定されるものではなく、例えば、紙基材上へのアルカリ性水の塗布、紙基材のアルカリ性水中への浸積等によって実施することができる。
【0059】
本発明のウェットシートは、人間又は動物の皮膚の清拭、或いは、床、トイレ、台所周り、家具等の清掃といった各種の洗浄作業に好適に使用することができる。
【0060】
本発明のウェットシートは、アルカリ性水に加えて、用途に応じて、様々な添加剤を含んでもよい。添加剤の種類は限定されるものではなく、1種類又は2種類以上であってもよい。
【0061】
添加剤としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィン等の炭化水素系油;牛脂、豚脂、魚油等の天然油脂類;トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等の合成トリグリセライド;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のエステル油;ミツロウ、カルナウバロウ等のロウ類;セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチン等の油性基剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤;石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、アシルグリシン塩、アシルザルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキシド等の半極性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤;タルク、カオリン、セリサイト、雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸ストロンチウム、硫酸バリウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、セラミックス等の無機粉末;結晶セルロース、ポリエチレン粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末等の有機粉末;殺菌剤;抗菌剤;キレート剤;抗酸化剤;紫外線吸収剤;抗炎症剤;動植物由来の天然エキス;香料等が挙げられる。
【0062】
本発明のウェットシートの紙面pH値は8.7以上が好ましく、8.8以上がより好ましく、8.9以上が更により好ましい。紙面pH値がより高い方がより優れた洗浄効果を発揮することができる。
【0063】
紙面pH値は、紙の表面のpH値であり、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49-1:2000によって決定することができる。
【0064】
一方、紙を水に浸積して抽出を行い、抽出後の水のpH値を測定する水抽出pH値の概念が存在する。例えば、JIS P 8133-1:2013は抽出に熱水を使用する所謂熱水抽出pH値を規定する。しかし、水抽出pH値は紙全体のpH値に対応するものであり、紙面のpH値に対応する紙面pH値とは異なる。
【0065】
本発明では、ウェットシートの紙面pH値の経時的な低下が抑制される。本発明では、紙基材にアルカリ性水を含浸直後のウェットシートの紙面pH値(或いは、含浸直前のアルカリ性水のpH値)から、含浸1週間後のウェットシートの紙面pH値の低下が2.3以内であることが好ましく、2.2以内がより好ましく、2.1以内が更により好ましい。本発明のウェットシートは、紙面pH値の経時的な低下が抑制されているので、長期に亘って優れた洗浄効果を発揮することができる。
【0066】
[包装体]
本発明のウェットシートは、その湿潤状態を維持するために、包装により包装体とされることが好ましい。
【0067】
包装体としては、例えば、プラスチックフィルム等からなる液体非浸透性の包装袋内に本発明のウェットシートを密封したものが挙げられる。
【0068】
包装体の製造方法は特には限定されるものではなく、例えば、ロール状に巻かれたウェットシートを、一方向のみ開口している袋状のプラスチックフィルム製容器に収納し、その後、当該容器の開口部でヒートシールを行う方法;1枚ずつ折り重ねたウェットシートを、一方向のみ開口している袋状のプラスチックフィルム製容器に収納し、その後、当該容器の開口部でヒートシールを行う方法;ロール状に巻かれた紙基材を、一方向のみ開口している袋状のプラスチックフィルム製容器に収納し、アルカリ性水を更に袋内に導入して紙基材にアルカリ性水を含浸させた後、当該容器の開口部でヒートシールを行う方法;1枚ずつ折り重ねたウェットシートを、一方向のみ開口している袋状のプラスチックフィルム製容器に収納し、アルカリ性水を更に袋内に導入して紙基材にアルカリ性水を含浸させた後、当該容器の開口部でヒートシールを行う方法等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のウェットシートは、洗浄効果の経時的な低下が抑制されるので、長期に亘って優れた洗浄効果を発揮することができる。したがって、本発明のウェットシートは、長期に亘って保存可能であり、また、各種の洗浄作業に好適である。
【0070】
また、本発明のウェットシートは、洗浄効果以外にも、アルカリ性水による、除菌、抗菌、消臭等の効果をも発揮することができる。アルカリ性水としてアルカリ電解水を使用することが好ましい。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0072】
[実施例1~2及び比較例1~5]
【0073】
(紙基材の製造)
下記表1に示す各種の市販の未晒パルプ(市販品A~G:各未晒パルプのカッパー価を表1に示す)を、それぞれ、スラリー(濃度0.3重量%)とし、JIS P 8222に準拠した方法で手すきをすることにより紙基材を製造した。各紙基材の坪量は30g/m2であった。
【0074】
(ウェットシートの製造)
上記のようにして製造された各紙基材に、坪量に対して1.4倍の割合でアルカリ性水(pH値11)を含浸させて実施例1~2及び比較例1~5のウェットシートを製造した。
【0075】
(紙面pH値)
実施例1~2及び比較例1~5のウェットシートの製造1週間後、各ウェットシートの紙面pH値をJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49-1:2000によって決定した。結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
上記表1から明らかなように、カッパー価が26以下の市販品A及び市販品Bの未晒パルプからなる紙基材を備えるウェットシートは経時的な紙面pH値の低下が抑制されていた。
【0078】
シート基材にアルカリ性水を含浸させたウェットシートでは、当該含浸後のシート基材の紙面pH値が高い方が優れた洗浄効果を発揮することができる。したがって、実施例1及び2のウェットシートは比較例1~5のウェットシートよりも優れた洗浄効果を発揮することができる。