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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178590
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H01L21/92 602A
H01L21/92 602D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085508
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】小野 研太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴志
(57)【要約】
【課題】信頼性の向上が図られた電子部品を提供する。
【解決手段】 電子部品1においては、拡散防止層35の第2部分37が、基材5の主面5aに対して平行に延びている。電子部品1を実装基板に表面実装したときに、電子部品1の電極30A、30Bと実装基板のランド電極との間にははんだ等の導電性の接合材が介在する。拡散防止層35と基板10との間の接合面が広いと、接合面Sを通って接合材の金属成分が電極30A、30Bの本体部31まで達しづらい。したがって、接合材の金属成分が本体部31に拡散する事態が抑制され、拡散に起因する電極30A、30Bの強度低下が抑制される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を構成する絶縁膜を有する基材と、
前記基材の主面に設けられ、該主面の上側に位置する本体部と、該本体部から前記基材側に延びて前記絶縁膜を貫通する導通部と、前記本体部を覆う拡散防止層とを含む厚膜電極と
を備え、
前記拡散防止層が、前記本体部の表面を直接的に覆う第1部分と、前記本体部の周辺領域の前記主面を直接的に覆うとともに該主面に対して平行に延びる第2部分とを有する、電子部品。
【請求項2】
前記基材の主面を覆う部分の前記拡散防止層の厚さが、前記本体部を覆う部分の前記拡散防止層の最も薄い部分の厚さより厚い、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記基材の主面に、複数の前記厚膜電極が設けられており、
隣り合う前記厚膜電極間の距離をDとし、前記本体部を覆う部分の前記拡散防止層の厚さをt1とし、前記基材の主面を覆う部分の前記拡散防止層の長さをLとしたときに、t1<L<D/2である、請求項1または2に記載の電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品を実装基板に実装する際には、電子部品のパッド電極と実装基板のランド電極との間の良好な接合が求められる。電子部品のパッド電極と実装基板のランド電極との間に接合不良が生じた場合には、接触抵抗の増大に加えて、振動などによって電子部品が実装基板から脱離しやすくなることで信頼性が低下する。
【0003】
電子部品を実装基板に実装する技術の一つとして、表面実装技術が知られている(たとえば、下記特許文献1)。表面実装技術においては、実装基板上に搭載された電子部品面の各パッドと実装基板の各ランド電極とを互いに位置合わせし、両者をはんだ等の導電性の接合材を介して接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-45843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した表面実装技術においては、接合材の金属成分がパッド電極やランド電極内に拡散すると、所望の強度を実現できなくなる虞があり、十分な信頼性を実現することが難しかった。
【0006】
本発明の一側面は、信頼性の向上が図られた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電子部品は、主面を構成する絶縁膜を有する基材と、基材の主面に設けられ、該主面の上側に位置する本体部と、該本体部から基材側に延びて絶縁膜を貫通する導通部と、本体部を覆う拡散防止層とを含む厚膜電極とを備え、拡散防止層が、本体部の表面を直接的に覆う第1部分と、本体部の周辺領域の主面を直接的に覆うとともに該主面に対して平行に延びる第2部分とを有する。
【0008】
上述した電子部品においては、拡散防止層の第2部分が、基材の主面に対して平行に延びているため、拡散防止層と基材との間の接合面の拡大が図られている。そのため、電子部品を実装基板に表面実装したときに、電子部品の厚膜電極と実装基板のランド電極との間に介在する接合材の金属成分が厚膜電極の本体部に達しづらく、拡散に起因する厚膜電極の強度低下が抑制されている。
【0009】
他の側面に係る電子部品は、基材の主面を覆う部分の拡散防止層の厚さが、本体部を覆う部分の拡散防止層の最も薄い部分の厚さより厚い。
【0010】
他の側面に係る電子部品は、基材の主面に、複数の厚膜電極が設けられており、隣り合う厚膜電極間の距離をDとし、本体部を覆う部分の拡散防止層の厚さをt1とし、基材の主面を覆う部分の拡散防止層の長さをLとしたときに、t1<L<D/2である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の種々の側面によれば、信頼性の向上が図られた電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電子部品を示す断面図である。
図2図1の電子部品の要部拡大図である。
図3図1の電子部品を製造する際の各工程を示した図である。
図4図1の電子部品を製造する際の各工程を示した図である。
図5図1の電子部品を製造する際の各工程を示した図である。
図6図1の電子部品を製造する際の各工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0014】
図1および図2を参照して、実施形態に係る電子部品の構成について説明する。実施形態に係る電子部品1は、基材5および一対の電極30A、30Bを備えて構成されている。電子部品1は、一例として半導体素子であり、たとえばLED素子または半導体レーザ素子である。
【0015】
基材5は、基板10および絶縁膜20を含んで構成されており、主面5aを有する。
【0016】
基板10は、平坦な主面10aを有する。本実施形態においては、主面10aは半導体層で構成されている。
【0017】
絶縁膜20は、基板10の主面10aを覆っている。絶縁膜20は、いわゆる不動態膜(パッシベーション膜)である。絶縁膜20は、Si、Al、Zr、Mg、Ta、TiおよびYの少なくとも1種類の元素を含む酸化物もしくは窒化物、または、樹脂によって構成される。絶縁膜20は、主面10aの第1領域11および第2領域12において略均一な厚さTを有する。絶縁膜20には貫通孔21が設けられている。本実施形態において、貫通孔21は、主面10aに対して直交する方向から見て、直径D1の円形状を呈する。
【0018】
一対の電極30A、30Bはいずれも金属材料で構成されており、本実施形態ではCuで構成されている。各電極30A、30Bは、基材5の主面5aに設けられ、基板10の主面の法線方向に延びる厚膜電極(パッド電極)である。各電極30A、30Bは、本体部31と導通部32とを含む。本体部31は、絶縁膜20の上側に位置する部分である。本実施形態において、本体部31は、主面10aに対して直交する方向から見て正方形状を呈する。導通部32は、本体部31から基材5側に延びる部分であり、絶縁膜20の貫通孔21内を延びて基板10まで達している。本実施形態では、導通部32は、絶縁膜20の貫通孔21を完全に充たすように設けられている。そのため、本実施形態では、導通部32は直径D1の円柱状を呈する。
【0019】
電極30A、30Bの本体部31および導通部32は、Cuの電解めっきにより形成することができる。この場合、各電極30A、30Bは電極膜33を含んで構成される。電極膜33はCu等の金属材料で構成され得る。電極膜33は、基板10と絶縁膜20とを一体的に覆う。より詳しくは、電極膜33は、基材5の主面5a(すなわち、絶縁膜20の上面20aにおける貫通孔21の縁と、貫通孔21から露出した基板10の主面10a)および貫通孔21の側面を一体的に覆う。
【0020】
本実施形態では、各電極30A、30Bの本体部31は隆起部34をさらに備える。隆起部34は、本体部31の上面30aから隆起する部分であり、絶縁膜20の貫通孔21の縁に対応する環状領域に形成されている。
【0021】
各電極30A、30Bは、本体部31を覆う拡散防止層35をさらに備える。拡散防止層35は、電極30A、30Bの金属成分(本実施形態では、Cu)が、半田等の導電性接合材内に拡散することを防止するための層である。拡散防止層35は、Ni、Ta、Ti、W、Mo、Cr、Zn、In、Nb、Sn、Cの少なくともいずれか一種を含む材料で構成することができる。拡散防止層35は、たとえばスパッタ成膜により形成することができる。拡散防止層35は、単層であってもよく、複数層で構成されていてもよい。本実施形態において、拡散防止層35は、本体部31を直接覆うNi層で構成されている。
【0022】
拡散防止層35は、本体部31の表面を直接的に覆う第1部分36、および、本体部31の周辺領域の基材5の主面5aを直接的に覆う第2部分37を有する。拡散防止層35の第1部分36と第2部分37とは連続的に形成されている。拡散防止層35は、基材5の主面5a(より詳しくは絶縁膜20の上面20a)上における本体部31の外周(図2の断面の点P)において、第1部分36と第2部分37とが切り替わっている。第2部分37は、基材5の主面5aに対して平行に延びている。図2に示すように、スパッタ成膜により形成された拡散防止層35では、第1部分36は、基材5の主面5aに対して平行な部分(たとえば本体部31の隆起部の頂部を覆う部分や隆起部間の谷底を覆う部分)の厚さに比べて、基板10の主面の法線方向に沿う方向に延びる部分(たとえば本体部31の隆起部の側面を覆う部分)の厚さが薄くなり得る。この場合、第1部分36は、基板10の主面の法線方向に沿う方向に延びる部分において最も薄い厚さt1となる。本実施形態においては、拡散防止層35の第2部分37の厚さt2(すなわち、基材5の主面5aに対する高さ)は、第1部分36の最も薄い部分の厚さt1より厚くなっている(t2>t1)。
【0023】
各電極30A、30Bは、酸化防止層38をさらに備える。酸化防止層38は、拡散防止層35を直接覆っており、拡散防止層35の酸化を防止する。酸化防止層38はAu層で構成することができる。酸化防止層38を構成するAuが拡散防止層35(すなわち、Ni層)の表面が酸化することを防止することで半田等の導電性接合材に対する拡散防止層35の濡れ性が向上し、より信頼性の高い接合構造が得られる。
【0024】
続いて、図3~6を参照しつつ、上述した電子部品1を製造する手順について説明する。
【0025】
電子部品1を製造する際には、まず、図3および図4に示すように基板10に一方の電極30Aを設ける。図3は、基板10の主面10a上にパターニングされた絶縁膜20に、電極30Aが形成される領域が露出する厚膜レジスト40をリフトオフにより形成する工程を示している。図4は、厚膜レジスト40から露出した領域に、電極30Aを形成する工程を示している。電極30Aは、電極膜33をスパッタ成膜した後、電極膜33を用いて導通部32および本体部31を電解めっきにより形成し、さらに、Ni、Auの順にスパッタリングして拡散防止層35および酸化防止層38をそれぞれ形成することにより設けられる。
【0026】
続いて、図5および図6に示すように基板10に他方の電極30Bを設ける。図5は、厚膜レジスト40における電極30Bが形成される領域をリフトオフにより露出させる工程を示している。図6は、厚膜レジスト40から露出した領域に、電極30Bを形成する工程を示している。電極30Bは、電極30A同様、電極膜33をスパッタ成膜した後、電極膜33を用いて導通部32および本体部31を電解めっきにより形成し、さらに、Ni、Auの順にスパッタリングして拡散防止層35および酸化防止層38をそれぞれ形成することにより設けられる。
【0027】
上述した電子部品1においては、拡散防止層35の第2部分37が、基材5の主面5aに対して平行に延びている。そのため、拡散防止層35と基板10との間の接合面(図2の接合面S)の拡大が図られている。
【0028】
電子部品1を実装基板に表面実装したときに、電子部品1の電極30A、30Bと実装基板のランド電極との間にははんだ等の導電性の接合材が介在する。拡散防止層35と基板10との間の接合面が広いと、接合面Sを通って接合材の金属成分が電極30A、30Bの本体部31まで達しづらい。
【0029】
したがって、電子部品1においては、接合材の金属成分が本体部31に拡散する事態が抑制されており、それにより拡散に起因する電極30A、30Bの強度低下が抑制されている。
【0030】
また、電子部品1においては、拡散防止層35が拡散を抑制するためには、拡散防止層35の厚さは所定厚さ以上であることが好ましい。拡散防止層35の第2部分37の厚さt2は、第1部分36の厚さt1より厚くなるように設計され得る。第1部分36の最も薄い部分の厚さt1を拡散防止することができる十分な厚さに設計することで、t1より厚いt2を有する第2部分37においても拡散防止を実現することができ、本体部31への拡散がより確実に抑制されている。
【0031】
さらに、電子部品1においては、隣り合う電極30A、30B間の距離をDとし、拡散防止層35の第1部分36の厚さをt1とし、基材5の主面5aに対して平行な方向における第2部分37の長さをLとしたときに、t1<L<D/2を満たすように設計されている。拡散防止層35が拡散を抑制するためには、拡散防止層35と絶縁膜20との間の密着性を高めることが好ましく、そのためには、第2部分37の長さLが所定長さ以上であることが好ましい。また、隣り合う電極30A、30B間におけるショートを回避するために、第2部分37の長さLは、電極30A、30B間の距離Dの半分より短く設定しておくことが好ましい。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0033】
たとえば、電極の形成は、電解めっきに限らず、無電解めっきであってもよく、その他の成膜方法(たとえば、スパッタ成膜)等であってもよい。また、絶縁膜に設けた貫通孔の断面形状は、円形に限らず、四角形等の多角形状や楕円形状であってもよい。電極の本体部の形状は、基板の主面に対して直交する方向から見て、正方形状に限らず、円形状や多角形状、楕円形状であってよい。
【符号の説明】
【0034】
1…電子部品、5…基材、5a…主面、10…基板、20…絶縁膜、30A、30B…電極、35…拡散防止層、36…第1部分、37…第2部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6