(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178601
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B60R16/02 660T
B60R16/02 660A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085526
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平沼 和彦
(57)【要約】
【課題】制御処理部の計算リソースの不足を抑制し、また計算処理部の増加を抑制しながら、センサ等の追加が容易な車両制御ユニットを提供することにある。
【解決手段】車両制御ユニットは、例えば、車両を制御するための情報を取得する取得部と、情報に対応する第一の制御機能を実行する第一の制御プログラムと、第一の制御機能とは異なる第二の制御機能を実行する第二の制御プログラムと、を保持する記憶部と、情報の取得の有無に基づき、第一の制御プログラムを記憶部から読み出すか第二の制御プログラムを読み出すかを決定する決定部と、決定部が読み出す制御プログラムを決定する都度に、現在実行中の制御プログラムを廃棄し、読み出された制御プログラムを実行し対応する制御機能を実行するプログラム実行部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御するための情報を取得する取得部と、
前記情報に対応する第一の制御機能を実行する第一の制御プログラムと、前記第一の制御機能とは異なる第二の制御機能を実行する第二の制御プログラムと、を保持する記憶部と、
前記情報の取得の有無に基づき、前記第一の制御プログラムを前記記憶部から読み出すか前記第二の制御プログラムを読み出すかを決定する決定部と、
前記決定部が読み出す制御プログラムを決定する都度に、現在実行中の制御プログラムを廃棄し、読み出された制御プログラムを実行し対応する制御機能を実行するプログラム実行部と、
を備える、車両制御システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記第一の制御プログラムを実行するための前記情報として、前記車両の利用者の行動予測情報を取得する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記取得部は、前記第一の制御プログラムを実行するための前記情報として、前記車両に搭載された車載の監視システムから提供される前記行動予測情報を取得する、請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記車両の利用者の行動予測情報を取得する予測センサを備える、請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記第一の制御プログラムは、前記車両の車載機器を動作させる制御プログラムであり、前記第二の制御プログラムは、前記車両の状態を検出するセンサからの検出情報を処理する制御プログラムであり、
前記決定部は、前記第一の制御プログラムの読み出しを決定する場合、前記情報に基づき、少なくとも一つ以上の前記第一の制御プログラムの中から一つの制御プログラムを決定し、前記第二の制御プログラムの読み出しを決定する場合、少なくとも一つ以上の前記第二の制御プログラムの中から少なくとも一つ以上の制御プログラムを決定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、より安全な走行、より快適な居住性等を実現するために、車両には数多くの制御装置(電子機器、制御対象機器等)が搭載されている。各制御装置は、車両の各所に配置されて車両の状態を検出するセンサや乗員の状態や行動等を検出するセンサからの検出結果に基づいて制御が実行される。各制御装置は、検出結果に基づく各種演算処理や判定処理、アクチュエータ等の駆動処理等を実行する制御処理部として、例えばECU(Electronic Control Unit)によって制御される。例えば、ドアの開閉制御等を行う場合、専用のECUが設けられる。また、近年では、ECUの高性能化に伴い、車両の制御状況に応じて複数の機能を一つのECUで実現する技術が提案されている。例えば、一つのECUを、イグニッションスイッチのON/OFF状態に応じて、スマートキーシステムの制御用として機能させたり、タイヤ空気圧監視システムの制御用として機能させたりする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術の場合、単一のECUで複数の制御機能を実現させるために、計算リソースを多く使用するため、計算リソースが不足して、処理速度が低下したり、処理速度の低下を回避するために高性能のECUを準備する必要があったりするという問題があった。また、より高精度、より高機能の車両制御を実現するためにセンサ等を増加する場合があるが、その場合、センサから供給されるセンサ信号の処理を行うためにECUを追加する必要があり、コスト増加の原因になり、システムの複雑化の原因になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、制御処理部の計算リソースの不足を抑制し、また計算処理部の増加を抑制しながら、センサ等の追加を容易に行える車両制御ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかる車両制御ユニットは、例えば、車両を制御するための情報を取得する取得部と、上記情報に対応する第一の制御機能を実行する第一の制御プログラムと、上記第一の制御機能とは異なる第二の制御機能を実行する第二の制御プログラムと、を保持する記憶部と、上記情報の取得の有無に基づき、上記第一の制御プログラムを上記記憶部から読み出すか上記第二の制御プログラムを読み出すかを決定する決定部と、上記決定部が読み出す制御プログラムを決定する都度に、現在実行中の制御プログラムを廃棄し、読み出された制御プログラムを実行し対応する制御機能を実行するプログラム実行部と、を備える。この構成によれば、例えば、車両の制御状態に応じて、プログラム実行部(制御処理部)で実行される制御プログラムが、車両を制御するための情報の有無に基づき、その都度決定される。つまり、現在利用対象となる制御プログラムのみが記憶部から読み出され実行され、現在利用対象でない制御プログラムは破棄される。その結果、プログラム実行部における計算リソースの軽減が可能になる。また、例えば、第一の制御プログラムがドアの開閉を制御する制御プログラムの場合、ドアの開閉が行われない場合、例えば走行中の場合、第一の制御プログラムは、プログラム実行部から破棄され、第二の制御プログラム(他の制御プログラム)として、例えば、センサから供給される検出結果(センサ信号)の処理を実行することが可能となる。その結果、計算リソースの有効活用に寄与し、計算リソースの不足回避が行い易くなる。また、第一の制御プログラムが実行されない場合に第二の制御プログラムにより、例えば、センサからの検出結果の処理が可能になるので、計算リソースの増加やプログラム実行部(制御処理部)の増加、コストの増加を回避しつつ、必要な計算処理を実現することができる。
【0007】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御システムの上記取得部は、例えば、上記第一の制御プログラムを実行するための上記情報として、上記車両の利用者の行動予測情報を取得するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、決定部で読出しを決定する制御プログラムの決定を、利用者の行動状況に応じて、適切、かつ容易に実行しやすくなる。
【0008】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御システムの上記取得部は、例えば、上記第一の制御プログラムを実行するための上記情報として、上記車両に搭載された車載の監視システムから提供される上記行動予測情報を取得するようにしてもよい。この構成によれば、より正確な行動予測情報を容易かつスムーズに得ることができる。
【0009】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御システムは、例えば、上記車両の利用者の行動予測情報を取得する予測センサを備えてもよい。この構成によれば、外部の行動予測システムを用いることなく、車両制御システム単独で、制御プログラムの選択、実行をおこなうことが可能になり、当該車両制御システムの適用性を向上することができる。
【0010】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御システムの上記第一の制御プログラムは、例えば、上記車両の車載機器を動作させる制御プログラムであり、上記第二の制御プログラムは、上記車両の状態を検出するセンサからの検出情報を処理する制御プログラムであり、上記決定部は、上記第一の制御プログラムの読み出しを決定する場合、上記情報に基づき、少なくとも一つ以上の上記第一の制御プログラムの中から一つの制御プログラムを決定し、上記第二の制御プログラムの読み出しを決定する場合、少なくとも一つ以上の上記第二の制御プログラムの中から少なくとも一つ以上の制御プログラムを決定するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、車載機器の制御を行う第一の制御プログラムが実行される場合は、複数の制御プログラムの中から選択された一つの制御プログラムが単独で実行される。その結果、複数種類の車載機器の制御が可能でありながらプログラム実行時の計算リソースの不足が回避しやすい。また、車載機器の制御に比べ計算リソースが少なくて済み易いセンサからの検出情報の処理を行う第二の制御プログラムは、複数でも実行可能なため計算リソースを効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる車両制御システム(車両制御部)の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる車両制御システムが実行する第一の制御プログラムの制御対象が、車両のサンルーフであり、サンルーフの開閉を行う利用者の行動予測を行うことを説明する例示的かつ模式的な図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる車両制御システムの第一の制御プログラムを車両のサンルーフの開閉制御に適用した場合に、第一の制御プログラムと第二の制御プログラムの切り替えを説明する例示的なフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる車両制御システムが実行する第一の制御プログラムの制御対象が、車両のドアである場合を示す例示的かつ模式的な説明図であり、車両(ドア)を制御するための情報を車室外監視システムにより取得することを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる車両制御システムが実行する第一の制御プログラムの制御対象が、車両のドアである場合を示す例示的かつ模式的な説明図であり、車室外監視システムによりドアの開閉を行う利用者の行動予測を行うことを説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる車両制御システムが実行する第一の制御プログラムの制御対象が、車両のドアである場合を示す例示的かつ模式的な説明図であり、車室内監視システムによりドアの開閉を行う利用者の行動予測を行うことを説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる車両制御システムの第一の制御プログラムを車両のドアの開閉制御に適用した場合に、第一の制御プログラムと第二の制御プログラムの切り替えを説明する例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0013】
図1は、実施形態にかかる車両制御部システム(以下、車両制御部10という)の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【0014】
車両制御部10は、車両に搭載された各種電子機器(制御対象機器)の制御を行う。車両制御部10は、例えば、ドアの開閉制御、サンルーフの開閉制御、空気調和装置の制御、オーディオ制御、シートの位置や姿勢の制御、車室内の照明制御、車高制御等のうち少なくとも一つを実行し、使い勝手の向上や、より快適な車室内空間の確保、より安全かつスムーズな走行の実現を行う。また、車両制御部10は、車両に搭載された各種センサが取得する検出結果(センサ信号)の処理も行う。車両制御部10が検出結果の処理を行うセンサは、例えば、車室内の空気質を検出するセンサ、車室内の乗員の生体情報を取得するセンサ、車室内の温度を検出するセンサ、車高検出センサ等である。なお、これらの電子機器やセンサは一例であり、電気的な制御が可能な機器や、電気的に検出情報を出力可能なセンサであれば、種々の電子機器、センサを含む。
【0015】
車両制御部10は、周知のECU(Electronic Control Unit)で構成可能である。車両制御部10は、取得部12、記憶部14、決定部16、プログラム実行部18、ドライバ20等のモジュールを含む。また、車両制御部10には、監視システム22、センサ24、アクチュエータ26等が電気的または通信により接続されている。
【0016】
本実施形態の車両制御部10(ECU)は、特定の単一の制御プログラムを実行するものではなく、状況に応じて、その都度、実行すべき制御プログラムを決定して、記憶部からダウンロードして特定の機器の制御を実行する。すなわち、現在実行中の機器の制御が不要になった場合には、不要になった制御プログラムを一旦破棄し、現在の状況において実行が必要な制御プログラムを新たにダウンロードして、現在の状況で実行が必要になった機器(例えばセンサ)に対する制御を実行するものである。以下、車両制御部10を構成する各モジュールについて説明する。
【0017】
本実施形態では、車両制御部10は、車両に搭載された電子機器のうち、例えば、サンルーフの開閉制御を主として行い、サンルーフの開閉制御を行わない場合には、他のセンサのセンサ信号の処理を行うECUである場合を説明する。また、他の実施例では、サンルーフの開閉制御に代えて、車両のドア(例えば、スライドドア)の開閉制御を主として行い、ドアの開閉制御を行わない場合には、他のセンサのセンサ信号の処理を行うECUである場合を説明する。
【0018】
取得部12は、車両を制御するための情報を取得する。この場合、取得部12は、サンルーフの開閉制御を行うための情報、すなわち、車両制御部10がサンルーフの開閉制御を行うECUである場合、サンルーフの開閉を行う操作を行うと予測される行動予測情報を取得する。また、車両制御部10がドアの開閉制御を行うECUである場合、ドアの開閉を行う操作を行うと予測される行動予測情報を取得する。
【0019】
この行動予測情報は、例えば、車載された車室内や車室外の監視を行う監視システム22から取得可能である。ここで、監視システム22は、例えば、車室内の監視を行う車室内監視システム(乗員監視システムという場合もある)や車室外の監視を行う車室外監視システム(周辺監視システムという場合もある)等を含む。監視システム22は、例えば、カメラ22aと当該カメラ22aによって撮像された撮像情報に基づき乗員の行動を予測する行動予測部22bとを含む。この場合、カメラ22aが予測センサとして機能する。本実施形態において、取得部12は、前述したように、主として、監視システム22から提供される車両の利用者(乗員)の行動予測情報を取得して、取得した行動予測情報は、制御プログラムの選択処理に利用する。つまり、取得部12は、監視システム22から取得した情報としての行動予測情報を決定部16に提供し、予測された利用者の行動に対応する制御プログラムの決定を実行させる。
【0020】
カメラ22aは、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。カメラ22aは、所定のフレームレートで撮像情報(静止画情報、動画情報:撮像画像)を出力することができる。カメラ22aは、例えば、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、車室内を監視するシステムに備えられている場合、例えば、単一のカメラ22aで車室内の広範囲を撮像可能である。また、カメラ22aが車室外を監視するシステムに備えられている場合、カメラ22aは、例えば、車両の周囲を前後左右の領域を四分割し、領域ごとに設けられた単一のカメラ22aでそれぞれの領域の撮像を行う。
【0021】
また、行動予測部22bは、カメラ22aが撮像して撮像情報に対して周知の演算処理を施し、乗員(利用者)の行動を予測する。例えば、姿勢や腕、手、指等の動きに基づき、これから操作しようとしている車載機器の特定や、操作内容の予測を行う。
【0022】
監視システム22が車室内監視システムの場合、車室内の例えばルームミラーの近傍にカメラ22aを配置し、逐次取得した撮像画像(静止画や動画)に基づき、車室内の状況や乗員の監視が実行される。例えば、カメラ22aで撮像された撮像画像の解析により、乗員の特徴を取得することで、性別や大人/子供の識別、登録された利用者か否かの判定等を行い、乗員に適した走行制御やシート位置/姿勢の制御、サスペンションの設定制御等に反映させることができる。また、撮像画像の解析により、乗員の状態や挙動を取得することにより、乗員の健康状態の把握、居眠りや脇見運転の検出等ができる。さらに、撮像画像に基づき行動予測部22bが、監視対象の乗員の腕や手指の動き、位置等により、操作しようとしている車載機器の予測、その車載機器に対する操作の開始、継続、終了等の操作全般に対する予測を行うことができる。例えば、車両制御部10がサンルーフの開閉制御を行うECUとして機能する場合は、サンルーフの開閉制御を行うスイッチの操作状況の予測を行う。また、車両制御部10がドアの開閉制御を行うECUとして機能する場合は、乗員が降車する際に操作するスイッチの操作状況の予測を行う。
【0023】
監視システム22が車室外監視システムの場合、例えば、車両の外周部分に設置されたカメラ22aで車両周辺の撮像画像(静止画や動画)を逐次取得する。車外に設置されるカメラ22aは、例えば、フロントグリルやフロントバンパ、左右のドアミラー、リヤウインドウの枠部分やリアバンパ等に設置することができる。なお、車室外監視システムのカメラ22aは、例えばウインドウ越しに車両周辺を臨むことができる車内に設置されてもよい。例えば、ルームミラーの背面(前方面側)やサイドウインドウの内側、リヤウインドウの内側等に配置されてもよい。車室外監視システムは、カメラ22aで撮像して画像情報の解析により、自車周辺に存在する物体(障害物や他車、自転車、歩行者等)の検出および物体までの距離等を算出する。そして、取得した画像に基づく情報は、物体に接触することなく走行するための経路の算出や自動走行制御、物体との接触の可能性がある場合の警告制御等に利用可能である。また、車室外監視システムの行動予測部22bは、車両制御部10がドアの開閉制御を行うECUとして機能する場合、車両に接近する物体(主として、乗車が許可されている乗員)を検出し、その行動予測を用いることにより、乗車の意思、例えばドアの開閉スイッチの操作検出等をより正確かつ容易に行うことができる。また、既存の監視システム22を利用することにより、乗員の行動予測をより正確に、より容易に行うことができる。
【0024】
なお、取得部12は、車載の他の車両制御部(ECU)と情報の送受信を行う通信部を備え、情報の相互利用を可能にしている。また、通信部は、車外の通信機器やデータベース等とも通信可能で、車外からの情報を取得し、また自車で取得した情報の送信が可能で、情報の相互共有、相互利用を可能にしている。
【0025】
また、取得部12が取得する車両を制御するための情報は、監視システム22のカメラ22aが取得する画像情報に基づく行動予測情報に限らず、電波センサや静電容量センサ等を用いた検出結果に基づき、車室内や車室外の利用者の行動を予測した情報を取得してもよい。この場合、電波センサや静電容量センサが予測センサとして機能する。そして、電波センサや静電容量センサが取得した情報(行動予測情報等)は、車両制御部10に接続され、取得部12によって取得可能とすることができる。この場合、監視システム22等のシステムを非搭載の車両にも本実施形態の車両制御部10が搭載可能となり、適用性の向上に寄与できる。
【0026】
記憶部14は、例えば、不揮発性記憶素子である。記憶部14は、取得部12が取得した行動予測情報に対応する第一の制御機能を実行する第1制御プログラム14a(第一の制御プログラム)を記憶する。また、記憶部14は、第一の制御機能とは異なる第二の制御機能を実行する第2制御プログラム14b(第二の制御プログラム)を保持する。
【0027】
第1制御プログラム14aは、例えば、車両制御部10に接続されたアクチュエータ26を制御して、制御対象機器28(車載機器)を制御する(動作させる)ためのプログラムである。アクチュエータ26は、モータや流体圧シリンダ等である。制御対象機器28は、一例として、サンルーフやスライドドア等である。制御対象機器28は、前述したように、車載機器であれば、例えば、空気調和装置、オーディオ装置、電動シート、照明装置、車高制御装置等でもよい。第1制御プログラム14aは、例えば、一定の条件を満たした場合に使用可能になる制御対象機器28を制御する制御プログラムである。例えば、制御対象機器28が、サンルーフの場合、第1制御プログラムは、サンルーフの開閉動作のときのみに利用される制御プログラムであり、利用者がサンルーフを開閉するスイッチを操作する場合のみに実行される。換言すれば、サンルーフの開閉を行わない場合には、休止する(不要な)制御プログラムである。また、第1制御プログラム14aが、ドアの開閉を行う制御プログラムの場合、第1制御プログラム14aは、車両が停車している場合で利用者が乗降する場合のみ利用される制御プログラムで、車両が走行している場合(利用者が乗降しない場合)には、休止する(不要な)制御プログラムである。このように、第1制御プログラム14aは、車両の利用者が一定の行動を伴う場合のみ利用可能な制御プログラムということができる。
【0028】
第2制御プログラム14bは、例えば、車両の状態を検出するセンサとして、車両制御部10に接続されたセンサ24の検出信号(検出情報、センサ信号)の処理を行うためのプログラムである。センサ24は、例えば、検出結果を常時検出する必要のないセンサ、例えば、数分周期の検出や数十分周期の検出でも、センサとしての検出目的を達成できるものである。例えば、車室内の空気質を検出するセンサや乗員(利用者)の体温や車室内や車室外の温度を検出するセンサ、シートに与えられている荷重の大きさを検出するセンサ、車室内や車室外の明るさを検出するセンサ、車室内の騒音の大きさを検出するセンサ等である。換言すれば、車両を安全に走行させるためには、必ずしも必要ないが、車両を快適に走行させるために、補助的に利用することが可能な情報で、間欠的にセンサ信号を検出する場合でも十分に活用可能な情報を取得するセンサである。例えば、IOT化が進むにつれて、搭載数が増加するセンサも第2制御プログラム14bでセンサ情報を処理可能となるセンサに含むことができる。
【0029】
また、本実施形態の車両制御部10は、監視システム22の行動予測部22bが出力する行動予測情報に基づいて、第1制御プログラム14aと第2制御プログラム14bとを選択的に一方のみ実行し、同時に実行することはない。したがって、第1制御プログラム14aが停車時のみに利用されるプログラムの場合、第1制御プログラム14aに代えて実行される第2制御プログラム14bは、走行時のみに利用されるプログラムとすることができる。逆に、第1制御プログラム14aが走行時のみに利用されるプログラムの場合、第1制御プログラム14aに代えて実行される第2制御プログラム14bは、停車時のみに利用されるプログラムとすることができる。つまり、第2制御プログラム14bは、第1制御プログラム14aが実行されている場合には、実行する必要がない制御プログラムであるともいえる。なお、別の例では、記憶部14は、制御プログラムに代えて、制御を実現する第1回路データ、第2回路データ等を保持してもよい。
【0030】
決定部16は、例えば、監視システム22の行動予測部22bが出力する行動予測情報に基づいて、現在の車両の利用状況において、第1制御プログラム14aと第2制御プログラム14bとのいずれを記憶部14から読み出すかを決定する。例えば、車両制御部10制御する制御対象機器28がサンルーフである場合を考える。この場合、取得部12が行動予測部22bから取得した乗員の行動予測情報として、サンルーフの開閉を行う行動予測情報を取得した場合、決定部16は、記憶部14から第1制御プログラム14aを読み出す。一方、取得部12が行動予測部22bから行動予測情報を取得していない場合、乗員は、サンルーフを開閉する行動は起こさないと予測される。その場合、決定部16は、記憶部14から第2制御プログラム14bを読み出す。つまり、サンルーフの開閉制御を行う制御プログラム以外の例えば、センサ信号の処理を行う制御プログラムの読み出しを決定する。なお、サンルーフ開閉スイッチ(センサ)の信号は取得部12を介して取得され、プログラム実行部18で実行されている第1制御プログラム14aによって処理される。同様に、センサ24から提供されるセンサ信号は、取得部12を介して取得され、プログラム実行部18で実行されている第2制御プログラム14bによって処理される。
【0031】
プログラム実行部18は、決定部16が読み出す制御プログラムを決定する都度に、現在実行中の制御プログラムを廃棄し、読み出された制御プログラムを実行し、その制御プログラムに対応する制御機能を実行する。例えば、車両制御部10がサンルーフの開閉を制御するECUである場合、ドライバ20は、サンルーフの開閉を行うアクチュエータ26(モータ)を制御するFET素子等である。そして、決定部16がサンルーフの開閉制御を行う第1制御プログラム14aを決定した場合、現在実行中の第2制御プログラム14b、例えば、車室内に空気質を検出するセンサ24の信号処理プログラムを廃棄する。そして、読み出された第1制御プログラムを実行し、サンルーフの開閉を実行するドライバ20の制御を可能とする。また、決定部16がセンサ24のセンサ信号の処理を行う第2制御プログラム14bを決定した場合、現在実行中の第1制御プログラム14a、例えば、サンルーフの開閉制御を行うプログラムを廃棄する。そして、読み出された第2制御プログラムを実行し、センサ24のセンサ信号の処理を実行し、適宜他のシステムや電子機器に提供する。なお、プログラム実行部18は、例えば、マイクロコンピュータやFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の書き換え可能なデバイスとすることができる。
【0032】
以上のように構成される車両制御部10の動作を
図2~
図7を用いて説明する。まず、
図2、
図3を用いて、車両制御部10が
図2に示すようなサンルーフの開閉制御を主として行う場合を説明する。
【0033】
図2に示されるように、車両30の天井部分にサンルーフ装置32が設置されている場合、運転席に利用者が着座した姿勢のまま、手指Wが届く位置、例えば、サンルーフ装置32の開口部前方の位置にサンルーフ開閉スイッチSWaが配置されている。監視システム22(車室内監視システム)の行動予測部22bは、手指Wがサンルーフ開閉スイッチSWaに接近する動作をカメラ22aから提供される撮像画像に基づき予測した場合、サンルーフ装置32の開閉制御が実行される可能性があるという行動予測を行う。
【0034】
図3は、第1制御プログラム14aを車両30のサンルーフ装置32の開閉制御に適用した場合に、第1制御プログラム14aと、サンルーフ装置32の開閉制御処理以外のセンサ信号処理を実行する第2制御プログラム14bとの切り替えを説明する例示的なフローチャートである。
【0035】
まず、車両制御部10は、監視システム22から車室内監視情報が取得部12によって取得されたか否かの確認を行う(S100)。車室内監視情報が取得されたものの(S100のYes)、その車室内監視情報が、サンルーフ装置32の開閉予測でない場合(S102のNo)、例えば、利用者の腕が上げられたものの、手指Wがサンルーフ開閉スイッチSWaに近づいてこない場合、決定部16は、サンルーフ装置32の開閉操作は行われないと判定する。このとき、プログラム実行部18において、第2制御プログラム14bが実行中でない場合(S104のNo)、すなわち、プログラム実行部18にサンルーフ装置32の開閉制御を実行する第1制御プログラム14aがダウンロードされ、実行可能な状態の場合、決定部16は、第2制御プログラム14bを読出し(S106)、プログラム実行部18に第1制御プログラム14aを破棄させる(S108)。そして、プログラム実行部18は、第1制御プログラム14aの破棄が完了した後、記憶部14から読み出された第2制御プログラム14bの実行処理を行う(S110)。すなわち、車両制御部10に接続されているセンサ24から提供されるセンサ信号を、取得部12を介して取得して、センサ信号の処理を実行する。
【0036】
車両制御部10は、例えば車両の電源等がOFFされ、監視システム22による車室内監視が中止(休止)された場合(S112のNo)、一旦このフローを終了する。一方、車両の電源等がOFFされることなく、監視システム22による車室内監視が継続している場合(S112のYes)、S100の処理に戻り、車室外監視情報の取得の有無の確認を継続して行い、S100以降の処理を継続して行う。
【0037】
なお、S104において、第2制御プログラム14bが既に実行中の場合(S104のYes)、S106、S108の処理をスキップして、S110において、第2制御プログラム14bの実行処理を継続する。
【0038】
S102の処理において、車室内監視情報が、サンルーフ装置32の開閉予測の場合(S102のYes)、例えば、利用者の腕が上げられ、手指Wがサンルーフ開閉スイッチSWaに近づいた場合、決定部16は、サンルーフ装置32の開閉操作が行われると判定する。このとき、プログラム実行部18において、第1制御プログラム14aが実行中でない場合(S114のNo)、すなわち、プログラム実行部18にサンルーフ装置32の開閉制御以外の制御、つまり、車両制御部10に接続されているセンサ24から提供されるセンサ信号の処理を行う第2制御プログラム14bがダウンロードされ、実行可能な状態の場合、決定部16は、第1制御プログラム14aを読出し(S116)、プログラム実行部18に第2制御プログラム14bを破棄させる(S118)。そして、プログラム実行部18は、第2制御プログラム14bの破棄が完了した後、記憶部14から読み出された第1制御プログラム14aの実行処理を行う(S120)。例えば、サンルーフ開閉スイッチSWaに利用者の手指W等が触れた場合、または操作したと見なせる範囲まで接近した場合、プログラム実行部18は、サンルーフ開閉スイッチSWaの操作状態(開動作スイッチの操作または閉動作スイッチの操作)に基づいて、サンルーフ装置32を開閉させるモータや流体圧シリンダ等のアクチュエータ26を動作させるドライバ20を制御し、サンルーフ装置32(制御対象機器28)の開閉動作を実行させる。
【0039】
車両制御部10は、サンルーフ装置32の開閉動作が終了した場合(手指Wがサンルーフ開閉スイッチSWaから離れた場合)、S112の処理に移行する。そして、車両の電源等がOFFされ、監視システム22による車室内監視が中止(休止)された場合、一旦このフローを終了する(S112のNo)。一方、車両の電源等がOFFされることなく、監視システム22による車室内監視が継続している場合(S112のYes)、S100の処理に戻り、車室内監視情報の取得の有無の確認を継続して行い、S100以降の処理を継続して行う。
【0040】
なお、S114において、第1制御プログラム14aが既に実行中の場合(S114のYes)、S116、S118の処理をスキップして、S120において、第1制御プログラム14aの実行処理を継続する。
【0041】
また、S100の処理において、監視システム22による車室内監視情報が取得部12に取得されていない場合(S100のNo)、車両制御部10は制御プログラムの切替制御が行われない状態であると判定して、このフローを一旦終了する。
【0042】
このように、本実施形態の車両制御部10の場合、車両制御部10が主として制御するサンルーフ装置32が開閉制御されないと判定した場合、サンルーフ装置32を開閉制御するための第1制御プログラム14aを一旦破棄し、車両制御部10の計算リソースを他の制御機能、すなわち第2制御プログラム14bのために利用する。その結果、サンルーフ装置32の制御およびセンサ24のセンサ信号の処理を単一の車両制御部10で行いつつ、車両制御部10の計算リソースの不足を抑制することができる。また、従前は、サンルーフ装置32の制御専用に利用されていた車両制御部10をセンサ24のセンサ信号の処理に利用することができるので、センサ24の制御を行う専用のプログラム実行部18(車両制御部10)が増加すること(コスト増加)を抑制しながら、センサ24等の追加が容易に行うことができる。
【0043】
次に、
図4~
図7を用いて、車両制御部10が
図4~
図6に示すようなドア34の開閉制御を主として行う場合を説明する。
【0044】
図7は、第1制御プログラム14aを車両30のドア34の開閉制御に適用した場合に、第1制御プログラム14aと、ドア34の開閉制御処理以外のセンサ信号処理を実行する第2制御プログラム14bの切り替えを説明する例示的なフローチャートである。
【0045】
ドア34の開閉制御を実行する車両30の場合、例えば、
図4に示されるように、ドア34に設けられた、いわゆるキーレスエントリー装置は、所定の電波をドア34の周囲の所定の検出エリアEに送信し、専用の送信機を携帯した利用者H(正規の乗員)が検出エリアEに侵入したか否かを検出している。さらに、監視システム22(車室外監視システム)の行動予測部22bは、
図5に示されるように、例えば、ドア34の室外側のノブに設けられたドア開閉スイッチSWbに手指Wが接近する動作を、カメラ22aから提供される撮像画像に基づき予測した場合、ドア34の開閉制御が実行される可能性があるという行動予測を行う。
【0046】
なお、ドア34の場合、車内側から開閉制御する場合もある。この場合、例えば、
図6に示されるように、車両30の車室内側のドア34の近傍に当該ドア34の開閉を行うドア開閉スイッチSWcが配置されている。監視システム22(車室内監視システム)の行動予測部22bは、例えば、ドア開閉スイッチSWcに手指Wが接近する動作を、車室内側のカメラ22aから提供される撮像画像に基づき予測した場合、ドア34の開閉制御が実行される可能性があるという行動予測を行う。
【0047】
続いて、
図7を用いて、ドア34の開閉制御とセンサ24のセンサ信号の処理を切り替える処理を説明する。
【0048】
まず、車両制御部10は、車両30が現在、走行中か否かを判定する。例えば、車両制御部10は取得部12に含まれる通信部を介して、車速センサや車輪測センサからの速度情報を取得し、車両30の状態を判定する。車両30が走行中の場合(S200のYes)、車両制御部10は、ドア34の開閉は行われないと判定することができる。この場合、車両制御部10は、プログラム実行部18において、第2制御プログラム14bが実行中でない場合(S202のNo)、すなわち、プログラム実行部18にドア34の開閉制御を実行する第1制御プログラム14aがダウンロードされ、実行可能な状態の場合、決定部16は、第2制御プログラム14bを読出し(S204)、プログラム実行部18に第1制御プログラム14aを破棄させる(S206)。そして、プログラム実行部18は、第1制御プログラム14aの破棄が完了した後、記憶部14から読み出された第2制御プログラム14bの実行処理を行う(S208)。すなわち、車両制御部10に接続されているセンサ24から提供されるセンサ信号を、取得部12を介して取得し、センサ信号の処理を実行する。そして、車両制御部10は、一旦このフローを終了する。
【0049】
なお、S202において、第2制御プログラム14bが既に実行中の場合(S202のYes)、S204、S206の処理をスキップして、S208において、第2制御プログラム14bの実行処理を継続する。
【0050】
S200において、車両30が現在走行中でない場合(S200のNo)、すなわち停車している場合、車両制御部10は、ドア34の開閉が行われる可能性があると判定する。
【0051】
この場合、まず、車両制御部10は、監視システム22から車室外監視情報が取得部12によって取得されたか否かの確認を行う(S210)。車室外監視情報が取得されない(車室外監視が行われていない)場合(S210のNo)、車両制御部10は、取得部12の通信部を介して監視システム22(車室外監視システム)に車室外監視を開始させる(S212)。
【0052】
続いて、車両制御部10は取得部12を介して、監視システム22(車室外監視システム)の行動予測部22bから乗員の乗車行動を示す行動予測情報を取得したか否かの判定を行う(S214)。取得部12が乗車を予測する行動予測情報を取得した場合(S214のYes)、車両制御部10は、プログラム実行部18において、第1制御プログラム14aが実行中でない場合(S216のNo)、すなわち、プログラム実行部18にドア34の開閉制御以外の制御、つまり、車両制御部10に接続されているセンサ24から提供されるセンサ信号の処理を行う第2制御プログラム14bがダウンロードされ、実行可能な状態の場合、決定部16は、第1制御プログラム14aを読出し(S218)、プログラム実行部18に第2制御プログラム14bを破棄させる(S220)。そして、プログラム実行部18は、第2制御プログラム14bの破棄が完了した後、記憶部14から読み出された第1制御プログラム14aの実行処理を行う(S222)。すなわち、ドア34の開閉制御を実行する。例えば、車外側のドア開閉スイッチSWbに利用者の手指W等が触れた場合、または操作したと見なせる範囲まで接近した場合、プログラム実行部18は、ドア34を開動作させるモータや流体圧シリンダ等のアクチュエータ26を動作させるドライバ20を制御し、ドア34(制御対象機器28)の開動作を実行させる。そして、車両制御部10は、一旦このフローを終了する。なお、S216において、第1制御プログラム14aが既に実行中の場合(S216のYes)、S218、S220の処理をスキップして、S222において、第1制御プログラム14aの実行処理を継続する。
【0053】
また、S214の処理において、取得部12が乗車を予測する行動予測情報を取得しない場合(S214のNo)、車両制御部10は、取得部12を介して監視システム22(車室内監視システム)が車内に存在する乗員の監視を行っているか確認する(S224)。監視システム22(車室内監視システム)が動作していない場合(S224のNo)、車両制御部10は取得部12の通信部を介して車室内監視システムを動作させ、車室内監視を開始させる(S226)。なお、S224の処理において、既に車室内監視システム(監視システム22)が動作している場合(S224のYes)、S226の処理をスキップする。そして、車両制御部10は、監視システム22(車室内監視システム)の行動予測部22bから乗員の降車行動を示す行動予測情報を取得したか否かの判定を行う(S228)。取得部12が乗員の降車行動を示す行動予測情報を取得した場合(S228のYes)、車両制御部10は、S216の処理に移行し以降の処理を実行する。つまり、車両制御部10は、第1制御プログラム14aが実行中でない場合、記憶部14から第1制御プログラム14aを読出す一方、プログラム実行部18に第2制御プログラム14bを破棄させる。そして、プログラム実行部18は、第2制御プログラム14bの破棄が完了した後、記憶部14から読み出された第1制御プログラム14aの実行処理を行う。すなわち、ドア34の開閉制御を実行する。例えば、車内側のドア開閉スイッチSWcに利用者の手指W等が触れた場合、または操作したと見なせる範囲まで接近した場合、プログラム実行部18は、ドア34を開動作させるモータや流体圧シリンダ等のアクチュエータ26を動作させるドライバ20を制御し、ドア34(制御対象機器28)の開動作を実行させる。
【0054】
S228の処理において、取得部12が乗員の降車行動を示す行動予測情報を取得しない場合(S228のNo)、つまり、車両30は停車しているものの、乗車および降車が行われないと予測される場合である。この場合、車両制御部10は、S200の処理に戻り、以降の処理を繰り返し実行する。
【0055】
このように、本実施形態の車両制御部10の場合、車両制御部10が主として制御するドア34が開閉制御されないと判定した場合、ドア34を開閉制御するための第1制御プログラム14aを一旦破棄し、車両制御部10の計算リソースを他の制御機能、すなわち第2制御プログラム14bのために利用する。その結果、ドア34の制御およびセンサ24のセンサ信号の処理を単一の車両制御部10で行いつつ、車両制御部10の計算リソースの不足を抑制することができる。また、従前は、ドア34の制御専用に利用されていた車両制御部10をセンサ24のセンサ信号の処理に利用することができるので、センサ24の制御を行う専用のプログラム実行部18(車両制御部10)が増加すること(コスト増加)を抑制しながら、センサ24等の追加が容易に行うことができる。
【0056】
なお、上述の実施形態において、車両制御部10は、単一の第1制御プログラム14aで制御される単一の制御機能を実行するECUとして構成する例を示した。別の実施形態では、同時に実行されない複数の第1制御プログラム14aで制御される複数の制御機能を実行するECUとして構成されてもよい。例えば、車両制御部10がサンルーフ装置32の開閉制御を実行するとともに、ドア34の開閉制御を実行するECUとして機能してもよい。例えば、行動予測部22bにより車載の制御対象機器28の操作予測が行われる場合、同時に2種類の制御対象機器28に対する行動が予測される可能性は低い。サンルーフ装置32とドア34とが操作される場合でも、サンルーフの閉動作を行った後に、車両30から降車する。つまり、サンルーフの閉動作予測が行われ、サンルーフが閉動作して、手指Wがサンルーフ開閉スイッチSWaから離れた後(サンルーフの閉動作が完了した後)に、ドア34の開動作予測が行われる。したがって、決定部16は、まず、サンルーフ装置32の開閉制御用の第1制御プログラム14aの読出しを決定し、プログラム実行部18で実行させた後、ドア34開閉制御用の第1制御プログラム14aを読出す。プログラム実行部18は、サンルーフ装置32の開閉制御用の第1制御プログラム14aを破棄した後、ドア34の開閉制御用の第1制御プログラム14aを実行することになる。つまり、車両制御部10は、必要な制御機能を実現しつつ、実際に制御処理を行う場合には、単一の第1制御プログラム14aの実行のみを行い、計算リソースの増加を抑制することができる。また、第1制御プログラム14aが実行されない場合には、第2制御プログラム14bを実行して、車両制御部10の増加を抑制するとともに、車両制御部10の計算リソースの有効利用を行うことができる。
【0057】
同様に、上述の実施形態において、車両制御部10は、単一の第2制御プログラム14bで制御される単一の制御機能を実行するECUとして構成する例を示した。別の実施形態では、複数の第2制御プログラム14bで制御される複数の制御機能を実行するECUとして構成されてもよい。第2制御プログラム14bで制御されるセンサ信号処理は、第1制御プログラム14aで制御されるドライバ20との制御に比べて、使用する計算リソースは少ない。したがって、同時に複数のセンサ24のセンサ信号の処理を行っても計算リソースが不足することは発生し難く、計算リソースの有効利用、すなわち車両制御部10の有効利用を行うことができる。
【0058】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10…車両制御部(車両制御システム、ECU)、12…取得部、14…記憶部、14a…第1制御プログラム、14b…第2制御プログラム、16…決定部、18…プログラム実行部、20…ドライバ、22…監視システム、22a…カメラ、22b…行動予測部、24…センサ、26…アクチュエータ、28…制御対象機器、30…車両、32…サンルーフ装置、34…ドア。