(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178602
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】更生材投入機
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20221125BHJP
B29C 63/34 20060101ALI20221125BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E03F3/04 Z
B29C63/34
F16L1/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085527
(22)【出願日】2021-05-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】510183291
【氏名又は名称】株式会社オクムラ道路
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】草木 敏夫
【テーマコード(参考)】
2D063
4F211
【Fターム(参考)】
2D063BA19
2D063BA37
2D063EA06
4F211AD12
4F211AH43
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
4F211SG06
4F211SJ01
4F211SJ13
4F211SJ15
(57)【要約】
【課題】投入する更生材の寸法や柔軟性、投入先の埋設管及び経由させる開口部の内径等の違いに適切かつ容易に対応可能であり汎用性の高い更生材投入機を提供すること。
【解決手段】平置き時にシート状に平坦化する柔軟性を有する長尺筒状の更生材2を、該更生材2の幅方向に折り畳みつつ、該更生材2の長さ方向に搬送する折畳み搬送部4を有する更生材投入機1であって、前記折畳み搬送部4には、水平ローラ7が位置する水平ローラ領域と傾斜ローラ8が位置する傾斜ローラ領域とが前記更生材2の搬送方向に交互に並び、前記水平ローラ7は、その回転軸が前記搬送方向と直交する水平方向に延び、前記傾斜ローラ8は、複数の前記水平ローラ7上を流れて前記搬送方向に進む前記更生材2をその幅方向から挟むように対で設けられ、前記傾斜ローラ8の回転軸の水平面に対する傾斜角度と、更生材2を挟んで対向する対となる傾斜ローラ8間の距離とを調整可能とした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平置き時にシート状に平坦化する柔軟性を有する長尺筒状の更生材を、該更生材の幅方向に折り畳みつつ、該更生材の長さ方向に搬送する折畳み搬送部を有する更生材投入機であって、
前記折畳み搬送部には、水平ローラが位置する水平ローラ領域と傾斜ローラが位置する傾斜ローラ領域とが前記更生材の搬送方向に交互に並び、
前記水平ローラは、その回転軸が前記搬送方向と直交する水平方向に延び、
前記傾斜ローラは、複数の前記水平ローラ上を流れて前記搬送方向に進む前記更生材をその幅方向から挟むように対で設けられ、
前記傾斜ローラの回転軸の水平面に対する傾斜角度と、前記更生材を挟んで対向する対となる前記傾斜ローラ間の距離とを調整可能とした更生材投入機。
【請求項2】
前記傾斜ローラ領域に、
前記搬送方向と直交する水平方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝と、
前記傾斜ローラをその軸回りに回転可能に支持し、その下端が前記係合溝に係脱可能に係合する傾斜ローラケースと、
前記傾斜ローラケースにおける下端よりも上方の部位に一端部が連結され、他端部が前記係合溝に係脱可能に係合するケース支持部材とを設けた請求項1に記載の更生材投入機。
【請求項3】
前記折畳み搬送部に対して前記搬送方向の下流側に位置する作業台を具備し、
該作業台は、前記搬送方向に間隔をあけて並ぶ複数の搬送ローラと、昇降床とを有し、
前記昇降床は、前記更生材を前記搬送ローラに接触しないように押し上げ保持する上昇位置と、前記更生材の前記搬送ローラへの接触を許容する下降位置とに昇降可能である請求項1または2に記載の更生材投入機。
【請求項4】
前記昇降床の上方に、該昇降床とで前記更生材を挟み込み可能なブレーキ板を高さ調整可能に設けた請求項3に記載の更生材投入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、更生材を地上から開口部(マンホール、縦孔等)経由で地中の埋設管(上下水道管、ガス導管等)内へと投入する管路更生工法に用いて好適な更生材投入機に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水道管等の埋設管の老朽化対策に、更新(新しい埋設管に取り替えること)と長寿命化対策(既存の埋設管の一部を残したまま補強等を行うこと)とがある。このうち、特に都心部では、交通制限の最小化等の観点から、道路の掘削を必要とする更新よりも必要としない長寿命化対策が実施されることが多い。
【0003】
斯かる長寿命化対策の一つに、長尺筒状に成形され、その柔軟性によりシート状に平坦化している更生材(ガラス繊維または有機質繊維等に樹脂を含侵させた材料)を埋設管内に引込み投入した後、その内側に空気圧や水圧をかけて筒状に広げて埋設管の内側全体に密着させ、この状態で熱や光(紫外線)の作用により更生材の硬化を図る管路更生工法がある。
【0004】
ところで、上記管路更生工法では、更生材を地上から開口部(マンホール等)経由で地中の埋設管内へと引込み投入するが、木箱等に収容されて施工現場まで運搬されてきた更生材は開口部の内径より大きな幅を持つシート状に平坦化しているため、適宜に折り畳まなければ開口部内にスムーズに引き込めない。そして、従来、この折畳み作業を人力で行っており、更生材は比較的大きく重量もあるので、その労力は多大で危険も伴う。
【0005】
この点、特許文献1には、マンホールの入り口や埋設管を通過可能な断面形状となるように、更生材を容易に且つスムーズに連続して曲折させて、マンホールや埋設管の内部に投入することを目的とした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、投入する更生材の寸法や柔軟性、投入先の埋設管及び経由させる開口部の内径等は一律ではなく、上記装置ではこうした違いに充分に対応できない恐れがある。
【0008】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、投入する更生材の寸法や柔軟性、投入先の埋設管及び経由させる開口部の内径等の違いに適切かつ容易に対応可能であり汎用性の高い更生材投入機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る更生材投入機は、平置き時にシート状に平坦化する柔軟性を有する長尺筒状の更生材を、該更生材の幅方向に折り畳みつつ、該更生材の長さ方向に搬送する折畳み搬送部を有する更生材投入機であって、前記折畳み搬送部には、水平ローラが位置する水平ローラ領域と傾斜ローラが位置する傾斜ローラ領域とが前記更生材の搬送方向に交互に並び、前記水平ローラは、その回転軸が前記搬送方向と直交する水平方向に延び、前記傾斜ローラは、複数の前記水平ローラ上を流れて前記搬送方向に進む前記更生材をその幅方向から挟むように対で設けられ、前記傾斜ローラの回転軸の水平面に対する傾斜角度と、前記更生材を挟んで対向する対となる前記傾斜ローラ間の距離とを調整可能とした(請求項1)。
【0010】
上記更生材投入機において、前記傾斜ローラ領域に、前記搬送方向と直交する水平方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝と、前記傾斜ローラをその軸回りに回転可能に支持し、その下端が前記係合溝に係脱可能に係合する傾斜ローラケースと、前記傾斜ローラケースにおける下端よりも上方の部位に一端部が連結され、他端部が前記係合溝に係脱可能に係合するケース支持部材とを設けてもよい(請求項2)。
【0011】
上記更生材投入機が、前記折畳み搬送部に対して前記搬送方向の下流側に位置する作業台を具備し、該作業台は、前記搬送方向に間隔をあけて並ぶ複数の搬送ローラと、昇降床とを有し、前記昇降床は、前記更生材を前記搬送ローラに接触しないように押し上げ保持する上昇位置と、前記更生材の前記搬送ローラへの接触を許容する下降位置とに昇降可能としてもよい(請求項3)。
【0012】
上記更生材投入機において、前記昇降床の上方に、該昇降床とで前記更生材を挟み込み可能なブレーキ板を高さ調整可能に設けてもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、投入する更生材の寸法や柔軟性、投入先の埋設管及び経由させる開口部の内径等の違いに適切かつ容易に対応可能であり汎用性の高い更生材投入機が得られる。
【0014】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の更生材投入機では、水平ローラと傾斜ローラとを設けた折畳み搬送部で更生材を折り畳みつつ搬送することができる上、傾斜ローラの回転軸の水平面に対する傾斜角度及び対となる傾斜ローラ間の距離を調整可能としたので、更生材の折畳み方の変更が容易であり、ひいては投入する更生材の寸法や柔軟性、投入先の埋設管及び経由させる開口部の内径等の違いに適切かつ容易に対応可能であり、高い汎用性を持たせることができる。
【0015】
請求項2に係る発明の更生材投入機では、傾斜ローラを支持する傾斜ローラケースの下端と、この傾斜ローラケースを支持するケース支持部材の他端部とを、搬送方向と直交する水平方向に間隔をあけて複数設けられた係合溝にそれぞれ係合させるのであり、係合溝の数や各係合溝の配置を適宜に設定しておくことにより、傾斜ローラの傾斜角度及び位置の調整を容易に行うことができる。
【0016】
請求項3に係る発明の更生材投入機では、折畳み搬送部の下流側に位置する作業台において、更生材の搬送を一時的に停止することができ、更生材に対する作業を行い易くすることができる。
【0017】
請求項4に係る発明の更生材投入機では、作業台における更生材の搬送停止をブレーキ板によって一層確実かつ強力に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る更生材投入機を用いた管路更生工法の説明図である。
【
図2】(A)及び(B)は、前記更生材投入機が投入する更生材の元の状態及び柔軟性により平坦化した状態の縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る更生材投入機の説明図である。
【
図4】(A)及び(B)は、前記更生材投入機の折畳み搬送部の側面図及び平面図である。
【
図6】(A)~(C)は、前記折畳み搬送部の傾斜ローラ領域で用いられる抜け止め具の正面図、縦断面図及び説明図である。
【
図7】(A)及び(B)は前記抜け止め具の変形例のロック状態の正面図及び縦断面図、(C)及び(D)は同アンロック状態の正面図及び縦断面図である。
【
図8】(A)~(C)は、前記更生材投入機の作業台の平面図、側面図及び正面図、(D)は昇降床の上昇過程を示す説明図、(E)は昇降床とブレーキ板とで更生材を挟み込んだ状態を示す説明図である。
【
図9】(A)及び(B)は前記昇降床が上昇位置にあるときの前記作業台の上部の説明図及び部分縦断面図、(C)及び(D)は前記昇降床が下降(格納)位置にあるときの前記作業台の上部の説明図及び部分縦断面図、(E)は前記作業台の要部を拡大して示す部分縦断面図である。
【
図10】(A)~(C)はブレーキ板を用いて更生材の搬送停止を行う工程を示す説明図、(D)はブレーキ板の取り付け構造を示す説明図である。
【
図11】(A)及び(B)は、前記更生材投入機の試作品の傾斜ローラ領域付近及び折畳み搬送部の上流側付近の写真である。
【
図12】(A)及び(B)は、前記更生材投入機の折畳み搬送部の変形例の平面図及び説明図である。
【
図13】(A)は
図12に示す折畳み搬送部の要部の平面図、(B)は(A)のB-B線切断断面図である。
【
図14】(A)及び(B)は
図12に示す折畳み搬送部の傾動ローラの説明図及び側面図である。
【
図15】(A)及び(B)は
図12に示す折畳み搬送部の試作品の後ろ側及び傾動ローラ付近の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0020】
図1に、本例の更生材投入機1を用いた管路更生工法の一例を示す。この管路更生工法は、長尺筒状の更生材(ライニング材)2を地上からマンホール(開口部の一例)M経由で地中の埋設管(本例では下水道管)T内に引込み投入した後、その内側に空気圧をかけて筒状に広げて埋設管Tの内側全体に密着させ、この状態で光(紫外線)の作用により更生材2の硬化を図る工法である。
【0021】
なお、
図1には埋設管Tの一部しか示していないが、この埋設管Tの先には別のマンホール等(図示していない)が繋がっていて、その近傍に配置した図外のウインチ(牽引手段の一例)により、更生材2の先端に引っ掛けたワイヤーロープWを牽引し、更生材2の埋設管T内への引込み投入を行う。
【0022】
ここで、本例の管路更生工法で扱う更生材2は、
図2(A)に示すように、縦断面略円形状を有する長尺筒状に成形されたものであるが、平置き時には重力を受けて
図2(B)に示すようにシート状に平坦化する柔軟性を有する。
【0023】
また更生材2は、光硬化するものであり、具体的には、その最内層に透明で筒状のインナーフィルム2aを配置し、インナーフィルム2aの外側に、光硬化タイプの不飽和ポリエステル樹脂を含侵した耐酸性ガラス繊維をスパイラル円筒状に積層して本体2bを設け、その外側からアウターフィルム2cで密閉した構造を有する。
【0024】
更生材2の荷姿は、その幅に合わせた寸法を有する木箱(材料収納箱の一例)3内に、そこから容易に引き出せるようにジグザグ状に折り重ねて収納した形とされるのが一般的である(
図1参照)。その為、施工対象とする埋設管Tが長く、これに伴い使用する更生材2が長い場合には、木箱3が高くなるように大型化する傾向にある。
【0025】
以上のような更生材2の投入に用いる本例の更生材投入機1は、
図1及び
図3に示すように、折畳み搬送部4と、後方コンベア(例えばローラコンベア)5と、作業台6とを、更生材2の搬送方向の上流側からこの順に具備する。すなわち、更生材2は、折畳み搬送部4から後方コンベア5へと受け渡され、この後方コンベア5の上流部から中間部を経た後、その下流部には至らずに作業台6上を通り、その後、マンホールMへと投入される。以下、更生材投入機1の構成について詳述する。
【0026】
折畳み搬送部4は、更生材2をその幅方向に折り畳みつつ、その長さ方向(管延長方向)に搬送するためのものである。この折畳み搬送部4には、
図4(B)に示すように、水平ローラ7が位置する水平ローラ領域と傾斜ローラ8が位置する傾斜ローラ領域とが更生材2の搬送方向に交互に並ぶ。水平ローラ7は、その回転軸が更生材2の搬送方向と直交する水平方向に延び、傾斜ローラ8は、複数の水平ローラ7上を流れて搬送方向に進む更生材2をその幅方向から挟むように対で設けられている。
【0027】
そして、傾斜ローラ8の回転軸の水平面に対する傾斜角度を調整可能とするために、
図5及び
図11(A)に示すように、各傾斜ローラ領域に、前記搬送方向と直交する水平方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝9と、傾斜ローラ8をその軸回りに回転可能に支持し、その下端にあるピン10aが係合溝9に係脱可能に係合する傾斜ローラケース10と、傾斜ローラケース10における下端よりも上方の部位(本例ではその長さ方向の中央部)に一端部が連結され、他端部にあるピン11aが係合溝9に係脱可能に係合し、一端部から他端部までの長さを調整可能であるケース支持部材(本例ではターンバックル)11とを設けてある。
【0028】
本例では、各傾斜ローラ領域の両側にそれぞれ係合溝9を10対ずつ設け、各対の係合溝9にピン10a、11aのそれぞれ両端が係合するように構成してある。
【0029】
このように構成した傾斜ローラ領域では、ピン10a、11aを係合する係合溝9を適宜に選択することにより、傾斜ローラ8の回転軸の水平面に対する傾斜角度の調整及び搬送方向と直交する方向への傾斜ローラ8の位置調整を多段階に容易に行うことができ、これに加えて、ケース支持部材11の長さ調整により、上記傾斜角度の微調整も可能である。
【0030】
すなわち、本例では、投入する更生材2の寸法や柔軟性、投入先の埋設管T及び経由させるマンホールMの内径等の違いに応じて、傾斜ローラ8の傾斜角度及び位置の調整を行うことにより、埋設管Tへのスムーズな投入を可能とする折畳みを簡単に実現することができる。
【0031】
例えば、
図4(A)に示すように、搬送方向の最も上流側にある傾斜ローラ8である最上流傾斜ローラ8Aを外側に(上端ほど外側に位置するように)倒し、最も下流側にある傾斜ローラ8である最下流傾斜ローラ8Bを内側に(上端ほど内側に位置するように)倒し、両者8A、8Bの間の傾斜ローラ8は両者8A、8Bの中間の傾斜角度をとり、かつ、上流側ほど最上流傾斜ローラ8Aの傾斜角度に近く、下流側ほど最下流傾斜ローラ8Bの傾斜角度に近くなるように構成すれば、折畳み搬送部4を流れるにつれ、更生材2はその幅方向の両側が傾斜ローラ8に持ち上げられて徐々に内向きに折り返されていき、折畳み搬送部4の最下流に至った時点で所望の断面形状を有するように折り畳まれた状態となるようにすることができる。
【0032】
ここで、ピン10a、11aを係合させる係合溝9の位置、更生材2の重量等によっては、係合溝9にピン10a、11aを係合させるのみでは更生材2の搬送時に更生材2から荷重を受けた傾斜ローラケース10やケース支持部材11ががたつく等する恐れがある場合には、ピン10a、11aの少なくとも一方又は両方につき、係合溝9からの抜け止めを図るようにしてもよい。
【0033】
具体的には、
図6(A)~(C)に示すような抜け止め具12を用いることが考えられ、
図11(A)には、ピン10aに抜け止め具12を装着した状態を示してある。この抜け止め具12は、略コの字型の金具13の二つの縦板14の上部開口14aにそれぞれ外側から挿入される舌付ボス15の筒部15aを、係合溝9に係合した状態のピン10a(11a)の両端に被せることができるようにしてある。
【0034】
各縦板14の外面側における上部開口14aの近傍には、縦板14との間に、舌付ボス15の頭部から側方に突出する舌15bを受け入れ可能な隙間16を形成するための押さえ部材17をビス18留めしてあり、ピン10a(11a)の端部に筒部15aを被せた状態の舌付ボス15を
図6(A)に矢印で示すように回転させ、舌15bを隙間16内に位置させると、舌付ボス15がピン10a(11a)から抜けない状態となる。
【0035】
この状態で、金具13の二つの縦板14の下端に両端が連なる横板19を貫く二つの蝶ボルト(締結具の一例)20を締め付け、係合溝9が設けられた縦断面コの字型の溝形成部材21(
図11(A)も参照)の下面側に接合されたベースフレーム22の下面に各蝶ボルト20を当接させれば、係合溝9に係合したピン10a(11a)を抜け止め固定することができる。
【0036】
なお、二つの縦板14の内面側には、ベースフレーム22に引っ掛かり(
図6(C)参照)、金具13の落下を防止する落下防止ボルト23を設けてある。
【0037】
図6(A)~(C)に示す抜け止め具12の代わりに、
図7(A)~(D)に示す抜け止め具24を用いてもよい。この抜け止め具24は、略コの字型の金具25の二つの縦板26の上部フック26aを、係合溝9に係合した状態のピン10a(11a)の両端に引っ掛けることができるようにしてある。
【0038】
そして、各上部フック26aをピン10a(11a)の両端に引っ掛けた状態で、金具25の二つの縦板26の下端に両端が連なる横板27を貫くねじ部材(締結具の一例)28を締め付け、
図7(A)及び(B)に示すように、ベースフレーム22の下面にねじ部材28を当接させれば、係合溝9に係合したピン10a(11a)を抜け止め固定することができる。また、
図7(C)及び(D)に示すように、ねじ部材28を緩めれば、ピン10a(11a)に対する上部フック26aの係合を解除して、抜け止め具24を取り外すことができる。
【0039】
図3に示すように、折畳み搬送部4の上流部には引取りローラ30(
図11(B)も参照)、下流部には送出しローラ31を、それぞれモータ駆動するように設けてあり、人力により木箱3内の更生材2を引き出す作業が軽減されるようにしてある。各ローラ30,31の回転速度は、モータに有線または無線で繋がったコントローラ(図示していない)を操作することにより、高速、低速の2段階に調整可能としてあり、かつ、モータの駆動をローラ30,31に伝達しない状態にもできるように図外のクラッチ機構を併せて設けてある。
【0040】
ここで、引取りローラ30は、
図11(B)に示すように、下側の支持ローラ30aと、上側の二つの押さえローラ30bとで構成してあり、間隔をあけて設けた二つの押さえローラ30bの軸方向の長さ(幅)をそれぞれ支持ローラ30aの軸方向の長さ(幅)の1/30~1/6とするのが好ましく、本例では支持ローラ30aの軸方向の長さを約1800mm、押さえローラ30bの軸方向の長さを約200mm(つまり支持ローラ30aの9分の1程度)としてある。押さえローラ30bが短過ぎると引取りローラ30による更生材2の搬送力(引取り力)が不足し、逆に長過ぎると引取りローラ30を通過する更生材2からこの更生材2に含侵させてある光硬化タイプの不飽和ポリエステル樹脂等が絞りだされてしまうのであり、こうした点を考慮して押さえローラ30bの長さを適宜に定めればよい。また、押さえローラ30bの数は例えば一つまたは三つ以上としてもよく、いずれにしても、押さえローラ30bの長さの合計が、支持ローラ30aの全長の1/15~1/3となるようにしてあるのが好ましい。
【0041】
図1に示すように、折畳み搬送部4は、更生材2を収納した木箱3とともに4tトラックVの荷台Vaに積載可能な大きさ及び重量を有するように、上述した水平ローラ7、溝形成部材21、引取りローラ30、送出しローラ31等を支持するベースフレーム22を、H形鋼、山形鋼、溝形鋼等を適宜に接合してコンパクト化かつ軽量化して構成してある。従って、折畳み搬送部4を荷台Vaに積載したまま施工可能であり、折畳み搬送部4を荷台Vaから降ろさなくて済む分、施工を低労力かつ迅速に行うことができる。
【0042】
図3に示すように、ベースフレーム22は、昇降用ジャッキ(本例では電動ジャッキ)32によって搬送方向下流部を基点に水平方向の軸回りに回動し、上流部(つまりは引取りローラ30)が昇降するようにしてある(ベースフレーム22が上昇した状態を
図3では破線で示してある)。これにより、木箱3内に折り重ねた状態で収納された更生材2を木箱3から引き出す際の高さに応じてベースフレーム22の引取りローラ30を昇降させることができ、その引き出しをスムーズに行うことが可能となる。
【0043】
また、ベースフレーム22全体を昇降させるようにすると、折畳み搬送部4から後方コンベア5への更生材2の受け渡しに支障を来す恐れがあるが、本例では折畳み搬送部4の下流側は昇降させないので、折畳み搬送部4から後方コンベア5への更生材2の受け渡しを常にスムーズに行わせることも容易である。
【0044】
ここで、昇降用ジャッキ32によって引取りローラ30を上昇させた場合、木箱3から引取りローラ30までの距離が広がり、その間で更生材2が自重により垂れ下がり、更生材2の搬送に支障を来す恐れが生じるため、本例では、
図3に示すように、引取りローラ30の下方に補助ローラ33(
図11(B)も参照)を上流側に向かって進退可能に設け、引取りローラ30を上昇させた場合には補助ローラ33を上流側に進出させて更生材2の垂れ下がり防止を図れるようにしてある。
【0045】
図3、
図8(A)~(E)に示す作業台6は、更生材2の搬送方向に間隔をあけて並ぶ複数の搬送ローラ34と、昇降床35と、これらを支持する架台36とを有し、昇降床35は、作業台6上の更生材2を搬送ローラ34に接触しないように押し上げ保持する上昇位置(
図9(A)及び(B)に示す位置)と、更生材2の搬送ローラ34への接触を許容する下降(格納)位置(
図9(C)及び(D)に示す位置)とに昇降可能である。
【0046】
すなわち、昇降床35は、複数の搬送ローラ34が平面視縞状を呈するように並んでいるところ(
図8(A)参照)、これら複数の搬送ローラ34間に形成される各スペースを埋めるように縞状に並んだ複数の上方突出部35aを有し、複数の上方突出部35aの各下部は複数の搬送ローラ34の下方に位置するベース部35bに支持されている(
図8(C)参照)。また、ベース部35bは架台36の上部に配した四つの昇降用ボルト37によってその四つの角部が吊り下げ保持されていて(
図8(B)、
図9(E)参照)、各昇降用ボルト37を一方向(例えば右回り)に回動させると昇降床35は上昇し、逆方向に回動させると下降するように構成してある。すなわち、各昇降用ボルト37は、
図9(E)に示すように、昇降床35に固定した固定ナット35cにねじ結合し、例えばスパナ等の工具で回動操作できるように架台36を上下に貫く状態で設けてあり、その先端(下端)に設けた大径の抜け止め部37aにより、固定ナット35cからの抜け止めを図っている。
【0047】
そして、昇降床35が前記上昇位置にあるときは、各上方突出部35aの上面が各搬送ローラ34の上面よりも上方に位置し、前記下降位置にあるときは、各上方突出部35aの上面が各搬送ローラ34の上面よりも下方に位置するようにしてある。
【0048】
従って、必要に応じて、昇降床35を前記上昇位置に上昇させれば、昇降床35の床面(各上方突出部35aの上端面)が搬送ローラ34の上面を超えて上昇し、更生材2が搬送ローラ34の転がり運動を受けず、昇降床35の床面の滑り摩擦の影響で動きにくくなり、つまりは、折畳み搬送部4の下流側に位置する作業台6において、更生材2の搬送を一時的に停止することができ、この作業台6での更生材2に対するワイヤーロープWの括り付け作業等を行い易くすることができる。なお、このとき、上述したクラッチ機構を作動させて、引取りローラ30及び送出しローラ31にモータの駆動力を伝達させないようにする、あるいは、モータを停止させる、といった処置をとるのが好ましい。そして、更生材2に対するワイヤーロープWの括り付けができた後は、上記ウインチによる牽引と上記モータによる引取りローラ30及び送出しローラ31の駆動とで、更生材2を埋設管T内へと順次引込み投入することができる。
【0049】
ところで、更生材2を地上からマンホールM経由で埋設管T内にある程度引込み投入した段階で、一時的に投入をストップする必要が生じた場合、上記ウインチによる更生材2の牽引を停止すると共に、引取りローラ30及び送出しローラ31を駆動するモータを停止する、といった措置がとられる。しかし、こうした措置をとり、さらには昇降床35を上昇させて更生材2に昇降床35の床面の滑り摩擦を作用させ、つまりは更生材2に対してその投入を停止させる力を加えても、更生材2においてマンホールM内で垂れ下がっている部分に掛かる重力がそれを上回ると、更生材2において地上にある部分が次々にマンホールM内に引きずり込まれてしまい、更生材2の意図しない投入が継続してしまう(こうした事態は特にマンホールMが上下に長い場合に起こり易いと考えられる)。
【0050】
そこで、本例では、
図8(E)に示すように、昇降床35の上方に、昇降床35とで更生材2を挟み込み可能なブレーキ板38を高さ調整可能かつ着脱自在に設けている。詳述すると、このブレーキ板38の四隅には押付け調整ボルト39がそれぞれ設けられ(
図10(D)参照)、計四つの押付け調整ボルト39の下部は上下方向に延びる筒状体40の上部にそれぞれねじ結合されている。そして、筒状体40にはその長さ方向に間隔をおいて高さ調整用の貫通孔41が複数形成されていて、任意の貫通孔41と、筒状体40を昇降可能にガイドするように昇降床35の下部に設けたガイド筒35dの貫通孔(図示していない)とを合致させて高さ調整ボルト42(
図8(C)参照)を差し込むことにより、ブレーキ板38を所定高さに維持することができ、高さ調整ボルト42を差し込む貫通孔41を変えることにより、ブレーキ板38の高さを変更可能となっている。
【0051】
すなわち、例えば、
図10(A)に示すように、昇降床35を上昇位置にまで上昇させた状態にして、計四本の高さ調整ボルト42をそれぞれ貫通孔41から抜いた状態でブレーキ板38を更生材2の上まで落とし(このとき、ブレーキ板38に設けた各押付け調整ボルト39の下部に筒状体40をねじ結合させておき、かつ、各筒状体40をガイド筒35dにガイドさせておく)、高さ調整ボルト42をその高さに対応する位置にある貫通孔41に差し込み(
図10(B)参照)、この状態で、四つの押付け調整ボルト39を回動操作すれば(
図10(C)参照)、ブレーキ板38を更生材2に押し付けることができ、更生材2に対する摩擦力が増すので、作業台6における更生材2の搬送停止をブレーキ板38によって一層確実かつ強力に行うことが可能となる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0053】
上記更生材2は光硬化するものとしているが、これに限らず、例えば熱で硬化する更生材2を用いてもよい。
【0054】
上記折畳み搬送部4において、水平ローラ7及び傾斜ローラ8とは別に、その回転軸が鉛直方向に固定されていて角度調整が不能であり、搬送方向と直交する水平方向への位置調整のみ行える鉛直ローラを併せて用いるようにしてもよい。例えば、左右一対の鉛直ローラを折畳み搬送部4において全ての傾斜ローラ8よりも下流側に設け、折畳み搬送部4から後方コンベア5へと送り出される更生材2を所望の大きさ(幅)に折り畳まれた状態とし易くなるようにすることも考えられる。
【0055】
この改良例である
図12~
図13に示す折畳み搬送部43(上記折畳み搬送部4の変形例)では、全ての傾斜ローラ8よりも下流側に固定ローラではなく傾動ローラ44を左右一対で設け、各傾動ローラ44の位置(更生材2の幅方向の位置)、高さ及び傾斜角度を多段階に変更可能とすることにより、所望の大きさ(幅)に折り畳んだ更生材2が元(折り畳む前)の形状に戻ろうとし難くなるようにすることを容易としてある。
【0056】
具体的には、
図13(A)及び(B)、
図14(A)及び(B)に示すように、傾動ローラ44をその軸回りに回転可能に支持する支持ベース45と、前記搬送方向に間隔をあけて起立し、支持ベース45を支持するための一対の起立板46と、一対の起立板46の下端が一体化された底板47と、底板47を前記搬送方向に直交する方向にスライド可能に支持するガイドレール48とを設けてある(
図15(A)及び(B)も参照)。
【0057】
支持ベース45は二つの貫通孔(図示していない)を有し、各起立板46は二つの貫通孔に対応する複数(図示例では15個)の穴49を有する。そして、支持ベース45の任意の貫通孔と、この任意の貫通孔を挟む位置にある一対の起立板46の各穴49とに対し、搬送方向下流側から頭付きピンである位置決めピン50を差し込み、この状態で位置決めピン50の先端側にある差し込み穴(図示していない)に抜け止めピン(スナップピン)51を差し込むことにより、支持ベース45及び一対の起立板46からの位置決めピン50の抜け止めを図るようにしてある。
【0058】
そして、二つの位置決めピン50を支持ベース45の二つの貫通孔と対応する二対の穴49とに挿入することにより、支持ベース45で支持する傾動ローラ44の傾斜角度及び高さ位置を固定することができ、用いる穴49を選択することにより、
図14(A)に示すように、傾動ローラ44の傾斜角度及び高さ位置を多段階に変更・調整することができる。図示例では、高さ位置を4段階に調整可能であり、最も高い高さ位置では傾斜角度を45度、30度、15度、0度に、2番目及び3番目に高い高さ位置では45度及び30度に、最も低い高さ位置では0度のみに、それぞれ傾動ローラ44の傾斜角度を調整できるようにしてある。また、図示例では傾動ローラ44を90度に起こすことも可能としてある。そして、こうした変更・調整につき、位置決めピン50や抜け止めピン51の抜き差しのみを行えばよく、工具が不要であるため、極めて容易に行える。なお、傾動ローラ44をどのように多段階に変更・調整可能とするかは、更生材2の厚み等を考慮して適宜に定めればよいことはいうまでもない。
【0059】
また、底板47において一対の起立板46の外側に位置する箇所には底板47を上下に貫く貫通孔(図示していない)を設けてあるとともに、ガイドレール48において底板47の下方に位置する部位には平面視において搬送方向に直交する方向に延びる長孔(図示していない)を設けてあり、これら貫通孔と長孔とを挿通する固定ボルト52を締め付けると底板47はその位置で固定され、緩めると底板47はガイドレール48に沿ってスライド可能となるようにしてある。これにより、左右一対の傾動ローラ44を相互に近接及び離間させ、更生材2の折畳み寸法等に応じて左右一対の傾動ローラ44を適宜に位置決めすることが可能である。
【0060】
ここで、
図12(A)及び
図13(A)に示すように、搬送方向において最も下流側に位置する左右一対の傾斜ローラ8の間には、水平ローラ7と同一構成の隙間埋めローラ53を設け、そのすぐ下流側にある一対の傾動ローラ44による更生材2の下方への押し付け(折畳み前の状態への復帰防止)を強力に行えるようにしてある。このような隙間埋めローラ53は、上記の箇所に限らず、他の箇所(他の左右一対の傾斜ローラ8の間)に設けてもよい。
【0061】
上記作業台6では、搬送方向に並ぶ複数の搬送ローラ34が形成する搬送面が略水平に延びるようにしてあるが、これに限らず、例えば複数の搬送ローラ34が下流側ほど低くなる搬送面を形成するようにしてあってもよく、搬送面の搬送方向の傾斜角度を適宜調整可能としてあってもよい。
【0062】
設置スペースの確保が困難等の場合には、後方コンベア5、作業台6の何れか一方又は両方を省略するようにしてもよい。
【0063】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1 更生材投入機
2 更生材
2a インナーフィルム
2b 本体
2c アウターフィルム
3 木箱
4 折畳み搬送部
5 後方コンベア
6 作業台
7 水平ローラ
8 傾斜ローラ
8A 最上流傾斜ローラ
8B 最下流傾斜ローラ
9 係合溝
10 傾斜ローラケース
10a ピン
11 ケース支持部材
11a ピン
12 抜け止め具
13 金具
14 縦板
14a 上部開口
15 舌付ボス
15a 筒部
15b 舌
16 隙間
17 押さえ部材
18 ビス
19 横板
20 蝶ボルト
21 溝形成部材
22 ベースフレーム
23 落下防止ボルト
24 抜け止め具
25 金具
26 縦板
26a 上部フック
27 横板
28 ねじ部材
30 引取りローラ
30a 支持ローラ
30b 押さえローラ
31 送出しローラ
32 昇降用ジャッキ
33 補助ローラ
34 搬送ローラ
35 昇降床
35a 上方突出部
35b ベース部
35c 固定ナット
35d ガイド筒
36 架台
37 昇降用ボルト
37a 抜け止め部
38 ブレーキ板
39 押付け調整ボルト
40 筒状体
41 貫通孔
42 高さ調整ボルト
43 折畳み搬送部
44 傾動ローラ
45 支持ベース
46 起立板
47 底板
48 ガイドレール
49 穴
50 位置決めピン
51 抜け止めピン
52 固定ボルト
53 隙間埋めローラ
M マンホール
T 埋設管
V 4tトラック
Va 荷台
W ワイヤーロープ