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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178611
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20221125BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221125BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20221125BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20221125BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221125BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F01N3/28 301P
B01J35/04 301E
B01J35/04 301L
B01J23/63 A ZAB
F01N3/022 C
F01N3/24 E
F01N3/035 A
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 222
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085542
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 幸司
(72)【発明者】
【氏名】平林 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 あけみ
(72)【発明者】
【氏名】村脇 啓介
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】池部 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】高▲崎▼ 孝平
(72)【発明者】
【氏名】森島 毅
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB13
3G091BA38
3G091GA06
3G091GA16
3G091GB01W
3G091GB01X
3G091GB01Y
3G091GB02W
3G091GB03W
3G091GB04X
3G091GB04Y
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB10X
3G091GB17X
3G190BA26
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB14
4D148AA06
4D148AA13
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4D148BA34Y
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4D148CC46
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BC43B
4G169BC51B
4G169BC71B
4G169BC75B
4G169CA03
4G169CA18
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA25
4G169EA27
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169ED10
(57)【要約】
【課題】PMが内部に堆積した後の圧力損失の小さい排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス浄化装置は、排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有する基材、第一触媒層、及び第二触媒層を有する。前記基材は、前記上流端と前記下流端の間で延伸する複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有する。前記複数のセルは、前記上流端において開口し、前記下流端において封止された入側セルと、前記入側セルに前記隔壁を挟んで隣接し、前記上流端において封止され、前記下流端において開口する出側セルと、を含む。前記基材の前記上流端を含む上流領域において、前記第一触媒層が前記隔壁の表面に配置される。前記基材の前記下流端を含む下流領域において、前記第二触媒層が前記隔壁の内部に配置され、前記隔壁及び前記第二触媒層を含む第二触媒含有壁が35%以上の空隙率を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有する基材、第一触媒層、及び第二触媒層を有し、
前記基材が、前記上流端と前記下流端の間で延伸する複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、
前記複数のセルが、
前記上流端において開口し、前記下流端において封止された入側セルと、
前記入側セルに前記隔壁を挟んで隣接し、前記上流端において封止され、前記下流端において開口する出側セルと、を含み、
前記基材の前記上流端を含む上流領域において、前記第一触媒層が前記隔壁の表面に配置され、
前記基材の前記下流端を含む下流領域において、前記第二触媒層が前記隔壁の内部に配置され、前記隔壁及び前記第二触媒層を含む第二触媒含有壁が35%以上の空隙率を有する、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記上流領域において、前記隔壁及び前記第一触媒層を含む第一触媒被覆壁が、ガス非透過性である、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記上流領域と前記下流領域が重複する、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、粒子状物質(PM:Particulate Matter)が含まれ、これは大気汚染の原因となることが知られている。また、排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分も含まれている。これらの排出量の規制は年々強化されている。
【0003】
PMを排ガスから捕集して除去するために、ディーゼルエンジン用のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)、ガソリンエンジン用のガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)等のパティキュレートフィルタが、内燃機関の排気通路に設けられている。パティキュレートフィルタとして、多数のセルを画成する多孔質の基材を備え、多数のセルの入口と出口が交互に閉塞されている、いわゆるウォールフロー構造を有するものが知られている。
【0004】
また、排ガスに含まれるCO、HC及びNOx等の有害成分の除去のために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が触媒として用いられている。
【0005】
特許文献1には、ウォールフロー構造の排ガス浄化装置が記載されている。特許文献1の排ガス浄化装置は、セルを隔てる隔壁が、排ガス流出側領域において、排ガス流入側領域における隔壁のガス透過率よりも高いガス透過率を有する。特許文献1によれば、このような排ガス浄化装置に流入した排ガスの大半が、排ガス流出側領域において隔壁を通過し、このことは、圧力損失を低減させ浄化性能を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-193569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排ガス浄化装置がPMを捕集すると、排ガス浄化装置を通過するガスの圧力損失が増加することがある。そこで、PMが内部に堆積した後の圧力損失の小さい排ガス浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に従えば、排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有する基材、第一触媒層、及び第二触媒層を有し、
前記基材が、前記上流端と前記下流端の間で延伸する複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、
前記複数のセルが、
前記上流端において開口し、前記下流端において封止された入側セルと、
前記入側セルに前記隔壁を挟んで隣接し、前記上流端において封止され、前記下流端において開口する出側セルと、を含み、
前記基材の前記上流端を含む上流領域において、前記第一触媒層が前記隔壁の表面に配置され、
前記基材の前記下流端を含む下流領域において、前記第二触媒層が前記隔壁の内部に配置され、前記隔壁及び前記第二触媒層を含む第二触媒含有壁が35%以上の空隙率を有する、排ガス浄化装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化装置は、PMが内部に堆積した後の圧力損失が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る排ガス浄化装置をセルの延伸方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、隔壁近傍の構成を模式的に示している。
図3図3は、第二触媒含有壁の空隙率と初期圧力損失の関係を示すグラフである。
図4図4は、第二触媒含有壁の空隙率とPM堆積後圧力損失の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照して実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。なお、以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
【0012】
図1、2に示されるウォールフロー構造の排ガス浄化装置1を説明する。排ガス浄化装置1は、基材10、第一触媒層30、及び第二触媒層50を有する。
【0013】
(1)基材10
基材10は、円筒状の枠部11と、枠部11の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁12から構成される。枠部11と隔壁12は一体的に形成されていてよい。図1の枠部11は、円筒状であるが、これに限定されず、楕円筒状、多角筒状等の任意の形状であってよい。隔壁12は、基材10の第一端(第一端面)Iと第二端(第二端面)Jの間に延設され、第一端Iと第二端Jの間で延伸する複数のセルを画成する。複数のセルは、第一セル14及び第二セル16から構成される。第一セル14は、第一端Iにおいて開口し、第二端Jにおいて封止部70により目封じ(封止)されている。第二セル16は第一端Iにおいて封止部70により目封じされ、第二端Jにおいて開口している。第一セル14と第二セル16は、隔壁12を挟んで互いに隣接するように配置される。第一セル14と第二セル16の延伸方向に直交する面で切断した断面形状は、正方形であってよいが、それに限定されず、それぞれ、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形等の種々の任意の形状であってよい。
【0014】
隔壁12は、排ガスが通過可能な多孔質材料から形成される。例えば、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、アルミニウムチタネート、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックス、合金(ステンレス等)から形成されてよい。多孔質材料から形成される隔壁12は、排ガスが通過可能な細孔を含む。枠部11の材料は特に限定されないが、例えば、隔壁12と同様の材料から形成されてよい。
【0015】
図1中の白抜き矢印は、排ガス浄化装置1に導入され、排ガス浄化装置1から排出される、排ガスの向きを示している。第一端Iを通って排ガス浄化装置1に流入した排ガスは、第二端Jを通って排ガス浄化装置1から排出される。そのため、以降、適宜、第一端Iを上流端I、第二端Jを下流端Jとも呼ぶ。また、排ガスは、図2中の破線矢印で示すように、上流端Iを通って第一セル14に流入し、第一セル14とそれに隣接する第二セル16とを仕切る多孔質の隔壁12を通過して第二セル16に流入し、下流端Jを通って第二セル16から排出される。そのため、第一セルを入側セル、第二セルを出側セルとも呼ぶ。
【0016】
(2)第一触媒層30
第一触媒層30は、基材10の上流端Iから、上流端Iから入側セル14及び出側セル16の延伸方向(すなわち隔壁12の延設方向であり、以下適宜「延伸方向」と称する)に沿って第一距離Dxを隔てた第一位置Kまでの領域(本明細書において、「上流領域」と称する)Xにおいて、隔壁12の入側セル14側の表面(すなわち、入側セル14に面している表面であり、以下適宜「第一表面」と称する)12aに配置される。すなわち、第一触媒層30は、上流領域Xにおいて、隔壁12の第一表面12aを被覆する。第一触媒層30は、上流領域X以外の領域には配置されていなくてよい。上流領域Xは、上流端Iを一端として含む、延伸方向の長さDxを有する領域である。上流領域Xの延伸方向の長さDxは、所望の排ガス浄化性能が得られるように適宜設定してよいが、例えば、上流端Iから下流端Jまでの距離(すなわち、基材10の延伸方向の長さ)Dの10~90%、特に10~50%としてよい。
【0017】
上流領域Xにおいて、隔壁12及び第一触媒層30を含む第一触媒被覆壁は、ガス非透過性であってよい。第一触媒層30は隔壁12の細孔を閉鎖してよく、それにより上流領域Xにおいて第一触媒被覆壁をガス非透過性とすることができる。それにより、図2において破線矢印で示すように、上流領域Xにおいて、排ガスは、第一触媒層30と接触しながら、入側セル14内を下流領域Yに向かって第一触媒層30に沿って移動する。なお、本願において、「ガス非透過性」とは、実質的にガスを透過しないことを意味する。
【0018】
第一触媒層30は、第一金属触媒を含む。第一金属触媒は、HCを酸化させるための触媒又はNOxを還元するための触媒として機能してよい。第一金属触媒は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)からなる群から選択される一種以上であってよく、特にPt又はPdであってよい。第一触媒層30は、第一金属触媒の機能が損なわれない程度に、その他の金属、例えば、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属をさらに含んでもよい。
【0019】
第一金属触媒は、担体粒子上に担持されてもよい。第一金属粒子は、含浸担持法、吸着担持法、吸水担持法等の任意の担持法により、担体粒子に担持することができる。
【0020】
担体粒子は、酸化物粒子であってよく、特に金属酸化物粒子であってよい。より具体的には、担体粒子は、元素周期表の3族、4族、及び13族の金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物若しくは複合酸化物、又はこれらの混合物の粒子であってよい。これらの2種以上を併用してもよい。担体粒子は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物若しくは複合酸化物、又はこれらの混合物であってよい。担体粒子は、Y、La、Ce、Ti、Zr及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物若しくは複合酸化物、又はこれらの混合物の粒子であってよい。
【0021】
第一触媒層30は、その他の任意成分をさらに含んでもよい。その他の任意成分の例としては、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)材、バインダ、及び添加物が挙げられる。
【0022】
OSC材の例として、酸化セリウム、及びセリウムを含む複合酸化物(例えば、CeとZrの複合酸化物(CZ複合酸化物)、AlとCeとZrの複合酸化物(ACZ複合酸化物))が挙げられる。これらの2種以上を併用してもよい。CZ複合酸化物は、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であるため、OSC材として、CZ複合酸化物を使用してよい。CZ複合酸化物をランタナ(La)、イットリア(Y)等とさらに複合化させた材料もOSC材として用いることができる。
【0023】
バインダ及び添加物の例として、アルミナ、ジルコニア、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO)、及びこれらの複合体が挙げられる。これらの2種以上を併用してもよい。
【0024】
例えば以下のようにして、第一触媒層30を上流領域Xにおいて隔壁12の第一表面12aに配置することができる。まず、第一金属触媒を担持した担体粒子を含むスラリーを調製する。あるいは、第一金属触媒の前駆体及び担体粒子を含むスラリーを調製してもよい。スラリーは、OSC材、バインダ、添加物等をさらに含んでよい。調製したスラリーを、上流領域X内の隔壁12の第一表面12aに塗布する。例えば、基材10を上流端I側から第一距離Dxに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、スラリーを隔壁12の第一表面12aに塗布できる。あるいは、基材10の上流端I側から入側セル14にスラリーを流し込み、上流端Iにブロアーで風を吹きつけてスラリーを下流端Jに向かって塗り広げることにより、スラリーを隔壁12の第一表面12aに塗布してもよい。次に、所定の温度および時間でスラリーを乾燥、焼成する。それにより、上流領域Xにおいて、隔壁12の第一表面12aに第一触媒層30が形成される。
【0025】
なお、上流領域Xにおいて、隔壁12の第一表面12a上に第一触媒層30が形成されるように、スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等を適宜調整してよい。例えばスラリー中の固形成分の粒径を大きくすることにより、隔壁12の第一表面12a上に第一触媒層30を形成することができる。
【0026】
(3)第二触媒層50
第二触媒層50は、基材10の下流端Jから、下流端Jから延伸方向に沿って第二距離Dyを隔てた第二位置Lまでの領域(本明細書において、「下流領域」と称する)Yにおいて、隔壁12の内部に配置される。第二触媒層50は、下流領域Y以外の領域には配置されていなくてよい。下流領域Yは、下流端Jを一端として含む、延伸方向の長さDyを有する領域である。下流領域Yの延伸方向の長さDyは、所望の排ガス浄化性能が得られるように適宜設定してよいが、例えば、上流端Iから下流端Jまでの距離Dの30~100%としてよい。
【0027】
なお、上流領域Xの延伸方向の長さDxと下流領域Yの延伸方向の長さDyの合計は、上流端Iから下流端Jまでの距離D以上であってよい。それにより、上流端Iから下流端Jまでの領域全体において、隔壁12上又は隔壁12中に第一触媒層30と第二触媒層50の少なくとも一方が形成され、排ガス浄化装置1に流入した排ガスを、第一触媒層30及び第二触媒層50にこの順で確実に接触させることができる。上流領域Xの延伸方向の長さDxと下流領域Yの延伸方向の長さDyの合計は、上流端Iから下流端Jまでの距離Dより大きくてよい。この場合、上流領域Xと下流領域Yは重複する。このことにより、排ガス浄化装置1に流入した排ガスを、一層確実に、第一触媒層30及び第二触媒層50にこの順で接触させることができる。
【0028】
本明細書において、「第二触媒層50が隔壁12の内部に配置される」とは、第二触媒層50を構成する成分(すなわち触媒、担体、バインダ、添加物等)が隔壁12の外部(典型的には外表面上)ではなく、隔壁12の内部(典型的には、隔壁12の細孔内)に主として存在することを意味する。具体的には、例えば第二触媒層50を構成する成分の総重量の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは99%以上、特に実質的に100%が、隔壁12の内部に存在することを意味する。したがって、隔壁12の内部に配置される第二触媒層50は、隔壁12の表面に配置しようとして一部が意図せずに隔壁12の内部へ浸透した触媒層とは明確に区別される。
【0029】
第二触媒層50を構成する成分は、隔壁12の内部の細孔の全てを閉塞することなく、細孔を取り囲む隔壁12の表面(内表面)に保持されてよい。それにより、下流領域Yにおいて、隔壁12及び第二触媒層50を含む第二触媒含有壁がガスを透過可能となる。ただし、下流領域Yが上流領域Xと重複する場合は、重複部分においては、隔壁12の第一表面12aに形成された第一触媒層30がガスの透過を阻止し得る。
【0030】
隔壁12及び第二触媒層50を含む第二触媒含有壁は、35%以上の空隙率を有する。空隙率は、第二触媒含有壁の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を得、そのSEM像から、空隙を含む第二触媒含有壁の面積に対する空隙の面積の比を求めることによって、測定することができる。空隙率が35%以上であることにより、後述する実施例で示すように、排ガス浄化装置1の内部におけるPMの堆積による圧力損失を低減させることができる。第二触媒含有壁の空隙率は、70%以下、又は60%以下であってよく、それにより、第二触媒含有壁が高い強度を有することができる。
【0031】
第二触媒層50は、第二金属触媒を含む。第二金属触媒は、HCを酸化させるための触媒又はNOxを還元するための触媒として機能してよい。第二金属触媒は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)からなる群から選択される一種以上であってよく、特にRhであってよい。第二触媒層50は、第二金属触媒の機能が損なわれない程度に、その他の金属、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属をさらに含んでもよい。
【0032】
第二金属触媒は、担体粒子上に担持されてもよい。第一金属粒子は、含浸担持法、吸着担持法、吸水担持法等の任意の担持法により、担体粒子に担持することができる。
【0033】
第二触媒層50は、その他の任意成分をさらに含んでもよい。その他の任意成分の例としては、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC材、バインダ、及び添加物が挙げられる。
【0034】
担体粒子、OSC材、バインダ、及び添加物の例は、第一触媒層30と同様であるため説明を省略する。
【0035】
例えば以下のようにして、第二触媒層50を、下流領域Yにおいて隔壁12の内部に配置することができる。まず、第二金属触媒を担持した担体粒子を含むスラリーを調製する。あるいは、第二金属触媒の前駆体及び担体粒子を含むスラリーを調製してもよい。スラリーは、OSC材、バインダ、添加物等をさらに含んでよい。調製したスラリーを下流領域Y内の隔壁12に浸透させる。例えば、基材10を下流端J側から第二距離Dyに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、スラリーを隔壁12に浸透させることができる。次に、所定の温度および時間でスラリーを乾燥、焼成する。それにより、下流領域Yにおいて、隔壁12の内部に第二触媒層50が形成される。
【0036】
なお、下流領域Yにおいて、第二触媒層50が隔壁12の内部に形成されるように、スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等を適宜調整してよい。例えばスラリー中の固形成分の粒径を小さくすることにより、隔壁12の細孔が閉塞されることなく、第二触媒層50を隔壁12の内部に形成することができる。
【0037】
実施形態に従う排ガス浄化装置1に排ガスを導入すると、図2において破線矢印で示すように、排ガスは、基材10の上流端Iを通って入側セル14に流入する。上流領域Xにおいて、排ガスは入側セル14内を第一触媒層30に沿って下流領域Yに向かって移動する。このとき、排ガスは第一触媒層30と接触し、第一触媒層30に含まれる第一金属触媒の作用により、排ガス中の有害成分の量が低減する。次いで、下流領域Yにおいて、排ガスが隔壁12内を通過して出側セル16に流入する。このとき、排ガス中のPMが、隔壁12の表面及び細孔内に捕集される。また、排ガスが隔壁12内の第二触媒層50と接触し、第二触媒層50に含まれる第二金属触媒の作用により、排ガス中の有害成分の量がさらに低減する。下流領域Yにおいて出側セル16に流入した排ガスは、出側セル16内を隔壁12に沿って下流端Jに向かって移動し、下流端Jを通って排ガス浄化装置1の外へ排出される。
【0038】
排ガス浄化装置1は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。排ガス浄化装置1は、排ガスの流れ方向において内燃機関の直下に配置されるスタートアップコンバータ(S/C)として、又は排ガスの流れ方向においてS/Cの下流に配置されるアンダーフロアコンバータ(UF/C)として、使用することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(1)排ガス浄化装置の作製
実施例1、2及び比較例1、2
コージェライト製のウォールフロー構造の基材を用意した。基材の寸法及び構造は、以下の通りである。
【0042】
基材の外径:117mm
セルの延伸方向における基材の長さ:122mm
隔壁の厚さ:約200μm
セル密度:1平方インチ当たり300個
【0043】
担体粉末にPtを担持した。得られた粉末とセリア粉末とイオン交換水とを混合して、第一触媒スラリーを調製した。
【0044】
セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)の粉末にRhを担持して、Rh担持CZ複合酸化物粉末を調製した。得られた粉末とアルミナ粉末とイオン交換水とを混合して、第二触媒スラリーを調製した。
【0045】
表1に記載の量のRh担持CZ複合酸化物粉末とアルミナ粉末を含む第二触媒スラリーを、基材の下流端から出側セルに供給し、隔壁の内部に第二触媒スラリーを浸み込ませた。次いで、第二触媒スラリーを乾燥し、焼成した。それにより、隔壁の内部に第二触媒層が形成された。すなわち、隔壁及び第二触媒層を含む第二触媒含有壁が形成された。第二触媒層は、基材の下流端から、基材の下流端から上流端に向かって基材の延伸方向の長さの70%の距離を隔てた位置までの領域(下流領域)に形成された。
【0046】
第一触媒スラリー(固形分量29.24g)を、基材の上流端から入側セルに供給し、隔壁の入側セル側の表面に第一触媒スラリーの層を形成した。次いで、第一触媒スラリーを乾燥し、焼成した。それにより、隔壁の入側セル側の表面に第一触媒層を形成した。第一触媒層は、基材の上流端から、基材の上流端から下流端に向かって基材の延伸方向の長さの50%の距離を隔てた位置までの領域(上流領域)に形成された。以上のようにして、排ガス浄化装置を作製した。
【0047】
実施例3
実施例1で使用したCZ複合酸化物粉末よりも小さい比表面積を有するCZ複合酸化物粉末を使用したこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0048】
(2)空隙率の測定
基材の下流端から15mm離れた位置における第二触媒含有壁の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM像から、空隙を含む第二触媒含有壁の面積に対する空隙の面積の比、すなわち第二触媒含有壁の空隙率を求めた。結果を表1中に示す。
【0049】
(3)初期圧力損失の評価
排ガス浄化装置に空気を通過させて排ガス浄化装置による初期圧力損失を測定した。具体的には、排ガス浄化装置の上流端から25℃の空気を7m/分の流量で流入させ、下流端から排出させた。上流端における空気の圧力と下流端における空気の圧力を測定し、これらの圧力の差を計算することにより、初期圧力損失を求めた。結果を表1及び図3に示す。実施例及び比較例において、初期圧力損失の顕著な違いはなかった。また、第二触媒含有壁の空隙率と初期圧力損失の間に明確な相関は見られなかった。
【0050】
(4)PM堆積後の圧力損失の測定
ディーゼルエンジンベンチの排気系に、実施例及び比較例の各排ガス浄化装置を接続し、各排ガス浄化装置に排ガスを通過させた。排ガス浄化装置に3.9gのPMが堆積した時に、上流端における排ガスの圧力と下流端における排ガスの圧力を測定し、これらの圧力の差を排ガス流量(g/s)で割った値を、PM堆積後の圧力損失として求めた。結果を表1及び図4に示す。PM堆積後の圧力損失は、図4に示すように、第二触媒含有壁の空隙率に依存していた。第二触媒含有壁が35%以上の空隙率を有する実施例1~3の排ガス浄化装置は、低いPM堆積後圧力損失を示した。
【0051】
【表1】
【符号の説明】
【0052】
1:排ガス浄化装置、10:基材、11:枠部、12:隔壁、14:入側セル(第一セル)、16:出側セル(第二セル)、30:第一触媒層、50:第二触媒層、70:封止部、I:上流端(第一端)、J:下流端(第二端)、K:第一位置、L:第二位置、X:上流領域、Y:下流領域
図1
図2
図3
図4