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特開2022-178630基板収納容器用蓋体及び基板収納容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178630
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】基板収納容器用蓋体及び基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20221125BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01L21/68 V
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085575
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃裕
(72)【発明者】
【氏名】田鹿 紗代
(72)【発明者】
【氏名】波賀野 賢
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA03
3E096BA16
3E096BB02
3E096CA02
3E096CB03
3E096CC02
3E096DA30
3E096FA03
3E096GA03
5F131AA02
5F131CA12
5F131CA49
5F131CA70
5F131DA43
5F131GA14
5F131GA15
5F131GA83
5F131GA92
5F131JA04
5F131JA16
5F131JA32
(57)【要約】
【課題】 フィルタ部材の着脱と施錠機構の動作とを連動させることにより、フィルタ部材に関する注意を喚起し、蓋体にフィルタ部材が取り付けられないのを防ぐことのできる基板収納容器用蓋体及び基板収納容器を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハを収納する容器本体の開口した正面に嵌合される蓋体10と、容器本体の正面に嵌合された蓋体10を施錠する施錠機構30と、蓋体10に着脱自在に装着される圧力調整フィルタ40と、この圧力調整フィルタ40の取り付け時には施錠機構30から離隔してその動きを許容し、圧力調整フィルタ40の取り外し時には施錠機構30に接触してその動きを規制する圧力調整フィルタ40用の失念防止部材50とを備える。圧力調整フィルタ40が未装着の場合には、容器本体の開口した正面に蓋体10を嵌合して施錠することができないので、蓋体10に圧力調整フィルタ40が装着されない事態の発生を防止できる。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する容器本体の開口した正面に嵌め合わされる蓋体と、容器本体の正面に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構と、蓋体に着脱自在に取り付けられるフィルタ部材と、このフィルタ部材の取り付け時には施錠機構の動きを許容し、フィルタ部材の取り外し時には施錠機構の動きを規制するフィルタ部材用の失念防止部材とを含んでなることを特徴とする基板収納容器用蓋体。
【請求項2】
蓋体は、容器本体の正面に嵌め合わされる蓋本体を含み、この蓋本体に、容器本体の内部と連通するフィルタ部材用の装着孔を設けるとともに、失念防止部材を支持させ、この失念防止部材が、フィルタ部材の取り付け時には規制位置から許容位置方向に動くことにより、施錠機構から離れ、フィルタ部材の取り外し時には許容位置方向から規制位置に動くことにより、施錠機構に接触する請求項1記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項3】
施錠機構は、蓋本体に回転可能に支持される回転操作体と、この回転操作体の回転に伴い進退動して先端部が蓋本体の周縁部から出没する複数の進退動部材とを含み、これら回転操作体と複数の進退動部材の少なくともいずれか一方に、失念防止部材用の被係止部を凹み形成した請求項2記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項4】
失念防止部材は、蓋本体に回転可能に支持されてフィルタ部材に接離可能な回転片を含み、この回転片の先端部を、施錠機構の被係止部に係止可能な係止部に突出形成した請求項3記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項5】
回転片のフィルタ部材と接触する面を斜面に形成した請求項4記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項6】
回転片の係止部を施錠機構の被係止部に係止することにより、進退動部材の先端部が蓋本体の周縁部から突出するのを規制するようにした請求項4又は5記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項7】
回転片の末端部に可撓性を付与して施錠機構方向に屈曲させ、この回転片の末端部を蓋本体にスライド可能に接触させた請求項4、5、又は6記載の基板収納容器用蓋体。
【請求項8】
複数枚の半導体ウェーハを整列収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを含み、この蓋体を、請求項1ないし7のいずれかに記載された基板収納容器用蓋体としたことを特徴とする基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の基板を輸送する際に使用される基板収納容器用蓋体及び基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体のウェーハメーカーとデバイスメーカー間の輸送には、FOSB(Front Opening Shipping Box)と呼ばれる専用の基板収納容器が使用されている。この種の基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備えて構成されている。
【0003】
蓋体には、容器本体の正面に嵌合された蓋体を施錠動作して施錠する施錠機構と、蓋体の嵌合された容器本体の内外の圧力を調整する着脱自在の圧力調整フィルタとが配設されている(特許文献1、2参照)。これらの施錠機構や圧力調整フィルタは、基板収納容器が未だ使用されていない新品の場合、基板収納容器が洗浄された後、洗浄された蓋体に配設される。
【0004】
このような基板収納容器は、複数枚の半導体ウェーハを収納し、陸路、空路、海路といったあらゆる経路で輸送され、使用された後に出荷先から回収され、洗浄して再利用されることがある。この洗浄して再利用される際、圧力調整フィルタは、蓋体から取り外され、基板収納容器の洗浄後、洗浄された蓋体に再度装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2020/184353号公報
【特許文献2】特開2018‐133447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、圧力調整フィルタが洗浄時に蓋体から取り外され、洗浄された蓋体に再度装着されるが、作業員の失念等により、洗浄済みの蓋体に圧力調整フィルタが装着されないことがある。圧力調整フィルタは、基板収納容器の内外の圧力を調整する役割の他、空気が基板収納容器の外部から内部に流入して半導体ウェーハを汚染させるのを防止するという重要な役割を果たすので、洗浄済みの蓋体に装着されない場合には、基板収納容器の内外圧力の調整に支障を来したり、半導体ウェーハの汚染を招くこととなる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、フィルタ部材の着脱と施錠機構の動作とを連動させることにより、フィルタ部材に関する注意を喚起し、蓋体にフィルタ部材が取り付けられないのを防ぐことのできる基板収納容器用蓋体及び基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体の開口した正面に嵌め合わされる蓋体と、容器本体の正面に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構と、蓋体に着脱自在に取り付けられるフィルタ部材と、このフィルタ部材の取り付け時には施錠機構の動きを許容し、フィルタ部材の取り外し時には施錠機構の動きを規制するフィルタ部材用の失念防止部材とを含んでなることを特徴としている。
【0009】
なお、蓋体は、容器本体の正面に嵌め合わされる蓋本体を含み、この蓋本体に、容器本体の内部と連通するフィルタ部材用の装着孔を設けるとともに、失念防止部材を支持させ、この失念防止部材が、フィルタ部材の取り付け時には規制位置から許容位置方向に動くことにより、施錠機構から離れ、フィルタ部材の取り外し時には許容位置方向から規制位置に動くことにより、施錠機構に接触すると良い。
また、蓋体は、蓋本体の正面に取り付けられる蓋カバーを含み、この蓋カバーに、フィルタ部材用の取付孔や固定爪を形成することができる。
【0010】
また、施錠機構は、蓋本体に回転可能に支持される回転操作体と、この回転操作体の回転に伴い進退動して先端部が蓋本体の周縁部から出没する複数の進退動部材とを含み、これら回転操作体と複数の進退動部材の少なくともいずれか一方に、失念防止部材用の被係止部を凹み形成すると良い。
また、フィルタ部材は、蓋本体の正面の設置領域に重なって失念防止部材に接触可能な板部と、この板部に形成される収納部とを備え、板部に、収納部に連通して蓋本体の設置領域の装着孔に挿入される装着管を接続し、収納部内には、空気中の塵埃を除去する濾材を充填することができる。
【0011】
また、失念防止部材は、蓋本体に回転可能に支持されてフィルタ部材に接離可能な回転片を含み、この回転片の先端部を、施錠機構の被係止部に係止(係わり合って止まる)可能な係止部に突出形成すると良い。
また、回転片のフィルタ部材と接触する面を斜面に形成することが好ましい。
【0012】
また、回転片の係止部を施錠機構の被係止部に係止することにより、進退動部材の先端部が蓋本体の周縁部から突出するのを規制することが好ましい。
また、回転片の末端部に可撓性を付与して施錠機構方向に屈曲させ、この回転片の末端部を蓋本体にスライド可能に接触させることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の半導体ウェーハを整列収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを含み、この蓋体を、請求項1ないし7のいずれかに記載された基板収納容器用蓋体としたことを特徴としている。
【0014】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ300mmや450mmの半導体ウェーハ、ガラス基板、マスク基板等が含まれる。容器本体と蓋体との間には、弾性変形可能なシールガスケットを介在することができる。これら容器本体や蓋体は、透明、不透明、半透明の何れでも良い。また、フィルタ部材や失念防止部材の数は、必要に応じ、増減することができる。失念防止部材の「回転」には、失念防止部材が揺れ動く「揺動」が含まれる。さらに、基板収納容器は、輸送用のFOSBでも良いし、工程内用のFOUP(Front Opening Unify Pod)でも良い。
【0015】
本発明によれば、蓋体からフィルタ部材が取り外されると、失念防止部材が施錠機構を拘束する。取り外されたフィルタ部材を蓋体に取り付ける場合に、フィルタ部材の取り付けを失念すると、施錠機構の拘束状態が継続するので、蓋体を施錠機構により施錠するのが困難となり、蓋体の組立やフィルタ部材に関する注意が喚起される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルタ部材の着脱と施錠機構の動作とを連動させることにより、フィルタ部材に関する注意を喚起し、蓋体にフィルタ部材が取り付けられない事態の発生を防ぐことができるという効果がある。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、装着孔に対するフィルタ部材の取り付け時には、蓋本体に支持された失念防止部材が施錠機構から離れるので、施錠機構の動作が可能となり、装着孔からのフィルタ部材の取り外し時には、失念防止部材が施錠機構に接触するので、施錠機構の動作が困難となる。
請求項3記載の発明によれば、蓋本体に支持された失念防止部材が施錠機構の被係止部に係止すると、施錠機構における回転操作体の回転が規制されたり、進退動部材の進退動が規制される。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、装着孔からフィルタ部材が取り外されると、フィルタ部材と接触していた失念防止部材の回転片が許容位置から規制位置方向に回転し、この回転片の突出した係止部が施錠機構の凹んだ被係止部に単なる接触ではなく、係止するので、この係止により、施錠機構の動作が有効に規制される。
請求項5記載の発明によれば、装着孔に対するフィルタ部材の取り付け時にフィルタ部材と回転片のカム機能を有する斜面とが接触すると、この接触に伴い、回転片が押されて規制位置から許容位置方向に円滑に回転する。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、回転片の係止により、進退動部材の先端部が蓋本体の周縁部から外部に突出しないので、容器本体の開口した正面に蓋体を嵌合して施錠するのが困難となり、この結果、フィルタ部材に関する注意が喚起される。
請求項7記載の発明によれば、回転片の末端部が容器本体の一部に屈曲したまま接触するので、規制位置における回転片の係止状態が安定し、回転片の係止部が施錠機構の被係止部から外れることが少ない。
【0020】
請求項8記載の発明によれば、基板収納容器の内外の圧力を調整し、容器本体に収納された半導体ウェーハの汚染防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
図2】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における蓋体を模式的に示す正面説明図である。
図3】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における蓋体の左右半分を模式的に示す正面説明図である。
図4】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における蓋本体から蓋カバーを取り外した状態を模式的に示す正面説明図である。
図5】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における蓋本体から回転操作リールと失念防止部材を取り外した状態を模式的に示す正面説明図である。
図6】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における失念防止部材を模式的に示す斜視説明図である。
図7】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における圧力調整フィルタと失念防止部材を模式的に示す斜視説明図である。
図8】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における失念防止部材が許容位置方向に揺動を開始する状態を模式的に示す正面説明図である。
図9】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における失念防止部材の揺動屈曲片がラッチバーの被係止溝から外れた状態を模式的に示す正面説明図である。
図10】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における失念防止部材の揺動屈曲片がラッチバーの被係止溝から外れ、回転操作リールが回転する状態を模式的に示す正面説明図である。
図11】本発明に係る基板収納容器用蓋体の実施形態における失念防止部材の揺動屈曲片がラッチバーの被係止溝から外れ、ラッチバーの先端部の嵌合係止爪が蓋体の出没口から突出した状態を模式的に示す正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図11に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを整列収納する容器本体1の開口した正面2に嵌合される蓋体10と、容器本体1の正面2に嵌合された蓋体10を施錠する施錠機構30と、蓋体10に着脱自在に装着される圧力調整フィルタ40と、この圧力調整フィルタ40の取り付け時には施錠機構30から離隔してその動きを許容し、圧力調整フィルタ40の取り外し時には施錠機構30に接触してその動きを規制する圧力調整フィルタ40用の失念防止部材50とを備えた輸送用のFOSBであり、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0023】
半導体ウェーハWは、例えばφ300mmの薄く脆い高品質のシリコンウェーハからなり、25枚が容器本体1内に挿入して収納されるとともに、容器本体1の内部上下方向に整列する。
【0024】
容器本体1、蓋体10、施錠機構30、失念防止部材50は、所定の樹脂を含有した成形材料によりそれぞれ成形される。成形材料の樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0025】
係る成形材料には、上記樹脂の他、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性の向上に資するガラス繊維や炭素繊維等も選択的に添加される。
【0026】
容器本体1は、図1に示すように、透明のフロントオープンボックスに成形され、開口した正面2に着脱自在の蓋体10がエンドレスのシールガスケットを介して嵌合される。この容器本体1は、その内部両側に相対向する棚板が装着され、この左右一対の棚板の対向面に、半導体ウェーハWを略水平に支持する一対の支持片3が対設されており、この一対の支持片3が上下方向に所定の間隔で配列形成される。
【0027】
容器本体1の正面内周は、段差構造に屈曲形成され、上部両側と下部両側とには、施錠機構30用の施錠口4がそれぞれ凹み形成されており、この複数の施錠口4に施錠機構30が嵌入係止されることにより、容器本体1の正面2に嵌合された蓋体10が施錠されてその位置ずれや脱落が有効に防止される。
【0028】
容器本体1の天井の略中央部には、平面矩形のロボティックフランジ5がオプションとして着脱自在に装着され、このロボティックフランジ5が図示しない工場の天井搬送機構に把持される。また、容器本体1の両側部外面には、握持用の操作ハンドル6がオプションとしてそれぞれ着脱自在に装着される。
【0029】
蓋体10は、図1ないし図5図8ないし図11に示すように、容器本体1の正面内周の段差部に圧入して嵌合される着脱自在の蓋本体11と、この蓋本体11の正面に覆着される一対の蓋カバー22とを備え、これら蓋本体11と一対の蓋カバー22との間の空間に、施錠機構30、圧力調整フィルタ40、失念防止部材50が介在して配設されており、専用の蓋体自動開閉装置により容器本体1の正面2に嵌合して施錠されたり、開錠して取り外される。
【0030】
なお、図3ないし図5図8ないし図11においては、説明の便宜上、蓋体10の左右半分を図示するが、残りの半分も略同様の構成である。
【0031】
蓋体10の蓋本体11は、正面略矩形に形成され、正面の中央部12が縦長で厚く(高く)、正面の両側部がそれぞれ縦長で薄く(低く)凹み形成されており、この低い両側部が施錠機構30用の設置領域13にそれぞれ区画形成される。この蓋本体11の正面中央部における側部上方と側部下方には、蓋体自動開閉装置の吸着パッドに位置決めして真空吸着される吸着領域14がそれぞれ略半円形に区画形成される。
【0032】
設置領域13には、施錠機構30用の円を描く複数の支持突起15や上下方向に伸びる複数のガイド片16等が配設される他、容器本体1の内部と連通する装着孔17が穿孔され、この装着孔17に、基板収納容器の内外の圧力を調整する圧力調整フィルタ40が着脱自在に圧入して装着される。
【0033】
装着孔17は、例えば施錠機構30用のガイド片16の横方向に位置する小径の貫通孔からなり、内部あるいは周縁部に、圧力調整フィルタ40の位置ずれや脱落を規制する係合部が選択的に形成される。装着孔17と施錠機構30用のガイド片16の間には、失念防止部材50用の支持穴18が穿孔され、この支持穴18に失念防止部材50が揺動可能に支持される。
【0034】
蓋本体11の背面(裏面)周縁部には、枠形のシールガスケットが弾性変形可能に嵌合され、このシールガスケットが容器本体1の段差構造の正面内周に圧接されて変形することにより、基板収納容器の気密性やシール性が確保される。また、蓋本体11の周縁部の上方両側と下方両側とには、施錠機構30用の出没口19がそれぞれ開口形成され、各出没口19が蓋体10の嵌合時に容器本体1の施錠口4に対向する。
【0035】
蓋本体11の背面中央部には、例えば略枠形のフロントリテーナ20が装着され、このフロントリテーナ20の両側部には、容器本体1方向に屈曲しながら伸びる複数の弾性片21がそれぞれ配列形成される。この複数の弾性片21は、容器本体1に整列収納された複数枚の半導体ウェーハWの前部周縁を変形しながら保持するが、この保持により、複数枚の半導体ウェーハWの位置ずれやガタツキが有効に防止される。
【0036】
各蓋カバー22は、例えば蓋本体11の設置領域13に対応する縦長の透明板に成形され、側部上方あるいは側部下方に、蓋本体11の吸着領域14に嵌合する切り欠き23が湾曲形成されており、設置領域13に着脱自在に装着されて施錠機構30や失念防止部材50等を保護する。この蓋カバー22には、少なくとも施錠機構30用の操作口24、圧力調整フィルタ40用の取付孔25や固定爪26、及び失念防止部材50用の支持穴18等がそれぞれ穿孔される。
【0037】
施錠機構30は、図1図4図5図8ないし図11に示すように、蓋本体11の設置領域13に支持される左右一対の回転操作リール31と、各回転操作リール31の回転に伴い上下方向にスライドして先端部の嵌合係止爪36が蓋本体11の出没口19から出没する上下一対のラッチバー34とを備え、これら回転操作リール31とラッチバー34の少なくともいずれか一方に、失念防止部材50用の被係止溝38が凹み形成される。
【0038】
回転操作リール31は、例えば断面略ハット形の円板に形成され、設置領域13の中央部付近における複数の支持突起15に回転可能に嵌入支持される。この回転操作リール31の突出した中央部には、蓋カバー22の操作口24を貫通した蓋体自動開閉装置に操作される操作穴32が穿孔され、回転操作リール31の周縁部近傍には、ラッチバー34に隙間を介して連結される一対の湾曲溝孔33が180°の間隔をおいてそれぞれ半円弧形に穿孔される。
【0039】
各ラッチバー34は、例えば蓋体10の上下方向に伸びる縦長の板に形成されて回転操作リール31の上下方向に位置し、設置領域13の複数のガイド片16間にスライド可能に嵌合配置されて回転操作リール31に連結される。ラッチバー34は、末端部が回転操作リール31の周縁部に重なるが、この末端部の中央に連結ピン35が装着され、この連結ピン35が回転操作リール31の湾曲溝孔33にスライド可能に遊嵌される。
【0040】
ラッチバー34の先端部には、設置領域13に揺動可能に支持された嵌合係止爪36が連結軸支され、この嵌合係止爪36が蓋体10の施錠時に揺動して蓋本体11の出没口19から外部に突出し、この突出した嵌合係止爪36が容器本体1の施錠口4に嵌入係止される。
【0041】
ラッチバー34の両側部にはガイドピン等のピン37が配設され、この複数のピン37が設置領域13のガイド片16に摺接することにより、ラッチバー34の上下方向へのスライドが円滑にガイドされる。また、ラッチバー34の一側部には、失念防止部材50用の被係止溝38が矩形に切り欠かれ、この被係止溝38に失念防止部材50が圧力調整フィルタ40の取り外し時に係止する。
【0042】
このような施錠機構30は、容器本体1の正面2に嵌合された蓋体10の施錠時には蓋体自動開閉装置の回転操作により、回転操作リール31が所定の回転角で回転して一対のラッチバー34を基準位置から進出位置にスライドさせ、各ラッチバー34の先端部の嵌合係止爪36が蓋本体11の出没口19から突出して容器本体1の施錠口4に嵌入係止されることにより、容器本体1の正面2に嵌合された蓋体10が施錠される。この際、ラッチバー34は、ガイド片16のカム面に案内されつつ水平にスライドし、このスライドにより、嵌合係止爪36が斜めに揺動して本体11の出没口19から突出する。
【0043】
これに対し、容器本体1の正面2に嵌合された蓋体10の開錠時には蓋体自動開閉装置の回転操作により、回転操作リール31が所定の回転角で反対方向に回転して一対のラッチバー34をスライド位置から基準位置にスライドさせ、各ラッチバー34の先端部の嵌合係止爪36が容器本体1の施錠口4から蓋本体11の出没口19内に退没して施錠口4に対する嵌入係止を解除することにより、容器本体1の正面2に嵌合された蓋体10が開錠され、蓋体10が取り外し可能となる。この際、ラッチバー34は、ガイド片16のカム面に案内されつつ水平にスライドし、このスライドにより、嵌合係止爪36が元の基準位置に揺動復帰する。
【0044】
圧力調整フィルタ40は、図7ないし図11に示すように、蓋本体11の設置領域13に重ねられて蓋カバー22の固定爪26に係止される円板部41と、この円板部41の表面に一体形成される円筒収納部42とを備え、基板収納容器の洗浄時に蓋体10から取り外され、洗浄された蓋本体11の設置領域13に蓋カバー22の固定爪26を介し再度装着される。
【0045】
円板部41は、蓋カバー22の取付孔25を嵌通可能な大きさに形成され、裏面の中心には、円筒収納部42に連通して設置領域13の装着孔17に着脱自在に挿入される縮径の装着管43が接続されており、円筒収納部42内には、空気中の塵埃を除去する濾材が充填される。このような圧力調整フィルタ40は、基板収納容器の内外の圧力を調整する調整手段の他、失念防止部材50を動作させる付勢手段としても機能する。
【0046】
失念防止部材50は、図4図6図7図8ないし図11に示すように、設置領域13や蓋カバー22の相対向する支持穴18に揺動可能に支持されて圧力調整フィルタ40の円板部41に接離する揺動屈曲片51を備え、この揺動屈曲片51が装着孔17に対する圧力調整フィルタ40の取り付け時には、圧力調整フィルタ40と接触して規制位置RPから隣接する許容位置TP方向に揺動することにより、施錠機構30から離隔してその動きを許容し、装着孔17からの圧力調整フィルタ40の取り外し時には、圧力調整フィルタ40から離れて許容位置TPから規制位置RPに揺動することにより、施錠機構30に接触してその動きを規制するよう機能する。
【0047】
揺動屈曲片51は、細長い略クランク形に屈曲形成され、先端部がラッチバー34の被係止溝38に係止可能な鉤爪形の係止爪52に突出形成されており、この係止爪52がラッチバー34の凹んだ被係止溝38に噛合して係止することにより、回転操作リール31の回転やラッチバー34のスライド、そして、ラッチバー34の嵌合係止爪36が蓋本体11の出没口19から外部に突出するのが規制される。
【0048】
揺動屈曲片51の中央部は、設置領域13の装着孔17近傍に位置し、設置領域13や蓋カバー22の相対向する支持穴18に回転可能に挿入される一致の挿入ピン53が突出形成されており、圧力調整フィルタ40の円板部41に対向圧接される面が滑らかな斜面54に傾斜形成されてカムとして機能する。
【0049】
また、揺動屈曲片51の末端部55は、可撓性(バネ性)が付与されて施錠機構30方向に変形可能に屈曲し、蓋本体11の一部である設置領域13のガイド片16に横方向からスライド可能に摺接する。このような揺動屈曲片51の末端部55は、圧力調整フィルタ40の取り外し時には、屈曲状態でラッチバー34の被係止溝38に係止爪52を接近させ、装着孔17の周縁部に揺動屈曲片51の斜面54を近接させる。これに対し、圧力調整フィルタ40の取り付け時には、屈曲状態から伸長状態に変形し、ラッチバー34の被係止溝38から係止爪52を引き離し、装着孔17の周縁部から揺動屈曲片51の斜面54を離隔させる。
【0050】
上記構成において、基板収納容器が洗浄される場合、圧力調整フィルタ40が蓋体10から取り外されるが、圧力調整フィルタ40が取り外されると、圧力調整フィルタ40の円板部41周面と接触していた揺動屈曲片51が許容位置TPから規制位置RP方向に揺動し、この揺動屈曲片51の係止爪52がラッチバー34の被係止溝38に係止する(図4参照)。
【0051】
係る係止により、施錠機構30の回転操作リール31の回転やラッチバー34のスライドが規制され、ラッチバー34の嵌合係止爪36が蓋本体11の出没口19から外部に突出するのも規制される。この際、揺動屈曲片51の末端部55が設置領域13のガイド片16に大きく屈曲したまま接触するので、規制位置RPにおける揺動屈曲片51の係止状態の姿勢が安定し、揺動屈曲片51の係止爪52がラッチバー34の被係止溝38から外れることがない。
【0052】
基板収納容器の洗浄が終了した場合、洗浄済みの蓋体10に圧力調整フィルタ40を装着することとなるが、圧力調整フィルタ40の装着を失念すると、ラッチバー34のスライドが依然規制されるとともに、ラッチバー34の嵌合係止爪36が蓋本体11の出没口19から外部に突出しないので、容器本体1の開口した正面2に蓋体10を嵌合して施錠するのが不可能となり、蓋体10の組立や圧力調整フィルタ40に関する注意が喚起される。
【0053】
係る注意喚起により、圧力調整フィルタ40の装着し忘れを思い出し、蓋本体11の装着孔17に圧力調整フィルタ40が付勢手段として装着されると、圧力調整フィルタ40の円板部41裏面と揺動屈曲片51の傾斜した斜面54が接触(図7図8参照)し、この接触に伴い、揺動屈曲片51が押圧されて屈曲していたバネ性の末端部55を伸ばしながら規制位置RPから許容位置TP方向に揺動(図8図9参照)し、この揺動屈曲片51の係止爪52がラッチバー34の被係止溝38から外れて離隔する(図10参照)。
【0054】
係る離隔により、施錠機構30の回転操作リール31の回転規制やラッチバー34のスライド規制が解除され、ラッチバー34の嵌合係止爪36が蓋本体11の出没口19から外部に突出可能となる(図11参照)ので、容器本体1の開口した正面2に蓋体10を嵌合して施錠するのが可能となる。
【0055】
上記構成によれば、圧力調整フィルタ40の着脱に施錠機構30が連動し、圧力調整フィルタ40が未装着の場合には、容器本体1の開口した正面2に蓋体10を嵌合して施錠することができないので、洗浄済みの蓋体10に圧力調整フィルタ40が装着されない不祥事の発生を防ぐことができる。したがって、基板収納容器の内外の圧力を調整し、半導体ウェーハWの汚染防止を図ることができる。さらに、ラッチバー34の被係止溝38と揺動屈曲片51の係止爪52とが単なる接触ではなく、凹凸嵌合するので、施錠機構30の確実な規制が大いに期待できる。
【0056】
なお、上記実施形態では蓋本体11の背面周縁部に枠形のシールガスケットを嵌合したが、何らこれに限定されるものではなく、容器本体1の正面内周の段差部にシールガスケットを嵌合しても良い。また、施錠機構30の回転操作リール31、ラッチバー34、及び嵌合係止爪36の構成や動作は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、必要に応じ、変更しても良い。例えば、ラッチバー34を蓋体10の厚さ方向に傾けながらスライドさせても良いし、ラッチバー34の嵌合係止爪36を省略し、ラッチバー34の先端部を容器本体1の施錠口4にそのまま嵌入係止しても良い。
【0057】
また、ラッチバー34の両側部にガイドローラ等のローラを配設しても良い。また、ラッチバー34に失念防止部材50用の被係止溝38を切り欠いたが、回転操作リール31の周縁部に失念防止部材50用の被係止溝38を切り欠いても良いし、回転操作リール31の周縁部とラッチバー34の側部に、失念防止部材50用の被係止溝38をそれぞれ切り欠いても良い。
【0058】
また、上記実施形態では蓋カバー22の貫通孔である取付孔25に圧力調整フィルタ40を嵌通し、この圧力調整フィルタ40の円板部26の周縁に、取付孔25の周縁部から突出した固定爪26を係止させて装着したが、蓋本体11から蓋カバー22を取り外した後に圧力調整フィルタ40を装着する構成に変更することも可能である。さらに、取付孔25の周縁部から突出する固定爪26は、単数でも良いが、複数に増加することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る基板収納容器用蓋体及び基板収納容器は、半導体等の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0060】
1 容器本体
2 正面
4 施錠口
10 蓋体
11 蓋本体
13 設置領域
16 ガイド片
17 装着孔
19 出没口
22 蓋カバー
30 施錠機構
31 回転操作リール(回転操作体)
34 ラッチバー(進退動部材)
36 嵌合係止爪(先端部)
38 被係止溝(被係止部)
40 圧力調整フィルタ(フィルタ部材)
50 失念防止部材
51 揺動屈曲片(回転片)
52 係止爪(係止部)
54 斜面
55 末端部
RP 規制位置
TP 許容位置
W 半導体ウェーハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11