(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178651
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H02K1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085602
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 彰英
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA30
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC02
5H601CC05
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GA24
5H601GB13
5H601GB34
5H601GC12
5H601JJ05
5H601KK13
5H601KK19
(57)【要約】
【課題】ロータコアのシャフト挿入孔にロータシャフトを圧入する際のロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を容易に低減することが可能なロータを提供する。
【解決手段】このロータ100では、ロータシャフト20のうちのロータコア10のシャフト挿入孔11内に配置された挿入部21は、シャフト挿入孔11に圧入されている圧入部21aと、シャフト挿入孔11に圧入されていない非圧入部21bと、を含む。非圧入部21bは、ロータシャフト20の挿入部21のうちのZ方向(軸方向)における圧入部21a以外の部分に、圧入部21aよりもR1側(径方向内側)に凹むように設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるシャフト挿入孔を含むロータコアと、
前記シャフト挿入孔内に配置された挿入部を含むロータシャフトと、を備え、
前記ロータシャフトの前記挿入部は、
前記シャフト挿入孔に圧入されている圧入部と、
前記ロータシャフトの前記挿入部のうちの前記軸方向における前記圧入部以外の部分に、前記圧入部よりも前記ロータコアの径方向内側に凹むように設けられ、前記シャフト挿入孔に圧入されていない非圧入部と、を含む、ロータ。
【請求項2】
前記圧入部の前記軸方向における長さは、前記非圧入部の前記軸方向における長さよりも小さい、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記圧入部は、前記ロータシャフトの前記挿入部の前記軸方向における両端部に設けられている、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記ロータシャフトは、前記ロータコアの前記軸方向における一方側において、前記ロータシャフトの前記挿入部よりも径方向外側に突出するフランジ部をさらに含み、
前記ロータコアの前記軸方向における他方側において、前記ロータシャフトに前記軸方向における一方側に向かって嵌め込まれた締結部材をさらに備え、
前記フランジ部と前記締結部材とにより前記ロータコアを前記軸方向に挟み込むことによって、前記ロータコアと前記ロータシャフトとの間でトルクを伝達するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
前記締結部材は、ナットであり、
前記ロータシャフトは、前記ロータコアの前記軸方向における他方側において、前記ナットと螺合する雄ねじが形成された雄ねじ形成部をさらに含み、
前記ロータシャフトの前記雄ねじ形成部の外径は、前記ロータシャフトの前記圧入部の外径よりも小さい、請求項4に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコアとロータシャフトとを備えるロータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、貫通孔が形成されたロータコアと、ロータコアの貫通孔に圧入されたロータシャフトと、を備えるロータが開示されている。上記特許文献1に記載のロータでは、ロータコアの貫通孔は、軸方向に沿って、ロータシャフトが圧入されている圧入部としての凸部と、貫通孔にロータシャフトが圧入されていない非圧入部としての凹部と、を含む。ロータコアの凸部および凹部は、軸方向において、ロータコアのうちの凹部が設けられる部分と凸部が設けられる部分との間で貫通孔の内径を異ならせることによって形成されている。すなわち、ロータコアに非圧入部(凹部)がない場合と比較して、ロータコアの貫通孔のうちの圧入部(凸部)の軸方向における長さが小さい。これにより、上記特許文献1に記載のロータでは、ロータコアの貫通孔にロータシャフトを圧入する際に、軸方向において圧入によりロータコアとロータシャフトとの間に力が作用し合う部分が小さくなり、ロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のロータでは、ロータコアの凸部および凹部が、軸方向において、ロータコアのうちの凹部が設けられる部分と凸部が設けられる部分との間で貫通孔の内径を異ならせることによって形成されているので、ロータコアを成形するためのプレス金型が通常の貫通孔用(凸部用)に加えて凹部用も必要となる。なお、ロータコアの所望の形状に合わせてプレス金型を調整する作業は比較的難しい。このため、ロータコアの貫通孔(シャフト挿入孔)にロータシャフトを圧入する際のロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を容易に低減することが可能なロータが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータコアのシャフト挿入孔にロータシャフトを圧入する際のロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を容易に低減することが可能なロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるロータは、軸方向に延びるシャフト挿入孔を含むロータコアと、シャフト挿入孔内に配置された挿入部を含むロータシャフトと、を備え、ロータシャフトの挿入部は、シャフト挿入孔に圧入されている圧入部と、ロータシャフトの挿入部のうちの軸方向における圧入部以外の部分に、圧入部よりもロータコアの径方向内側に凹むように設けられ、シャフト挿入孔に圧入されていない非圧入部と、を含む。
【0008】
この発明の一の局面におけるロータでは、上記のように、ロータシャフトの挿入部は、シャフト挿入孔に圧入されている圧入部と、ロータシャフトの挿入部のうちの軸方向における圧入部以外の部分に、圧入部よりもロータコアの径方向内側に凹むように設けられ、シャフト挿入孔に圧入されていない非圧入部と、を含む。これにより、ロータシャフトに非圧入部がない場合と比較して、ロータシャフトのうちの圧入部の軸方向における長さが小さくなるので、ロータコアの貫通孔にロータシャフトを配置する際に、ロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を低減することができる。また、ロータシャフトにおいて非圧入部が圧入部よりも径方向内側に凹むように設けられているので、ロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を低減するために、ロータコアにおいて貫通孔の内径を異ならせる必要がない。すなわち、比較的難しい作業が必要となるロータコアを成形するためのプレス金型の調整が通常のシャフト挿入孔用のみで済む。なお、ロータシャフトは、従来から切削加工により所望の形状に加工されているので、ロータシャフトに凹部を新たに設ける作業は容易である。これらの結果、ロータコアのシャフト挿入孔にロータシャフトを圧入する際のロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を容易に低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、ロータコアのシャフト挿入孔にロータシャフトを圧入する際のロータコアおよびロータシャフトに生じる圧入荷重を容易に低減することが可能なロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるロータの構成を示す平面図である。
【
図2】
図1の900-900線に沿った断面図である。
【
図3】一実施形態によるロータの製造フローを示す図である。
【
図4】一実施形態の変形例によるロータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[ロータの構成]
図1および
図2を参照して、一実施形態によるロータ100の構成について説明する。
【0013】
以下の説明では、ロータ100(ロータコア10)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、Z方向の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、R方向の一方側(径方向内側)および他方側(径方向外側)を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0014】
(ロータの全体構成)
図1に示すように、ロータ100は、ステータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ロータ100およびステータ101は、それぞれ、円環状に形成されている。ロータ100は、回転軸線90回りに回転するように構成されている。ロータ100は、ロータ100の外周面とステータ101の内周面とがR方向に対向するように、ステータ101のR1側に配置されている。すなわち、ロータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部として構成されている。
【0015】
ロータ100は、ロータコア10と、ロータシャフト20と、を備える。ロータコア10は、Z方向(軸方向)に延びるシャフト挿入孔11を含む。シャフト挿入孔11は、Z方向に見て、ロータコア10の中央部に設けられている。
図2に示すように、ロータシャフト20は、シャフト挿入孔11内に配置された挿入部21を含む。後述するように、ロータコア10とロータシャフト20とは、ロータシャフト20の挿入部21がロータコア10のシャフト挿入孔11内に配置された状態で、互いに固定されている。
【0016】
図1に示すように、ロータコア10は、複数の電磁鋼板が積層されている。ロータコア10には、電磁鋼板の積層方向(Z方向)に延びる磁石挿入孔12が形成されている。磁石挿入孔12は、ロータコア10のうちのR2側の部分に配置されている。磁石挿入孔12は、ロータコア10に複数設けられている。複数の磁石挿入孔12は、Z方向に見て、C方向に沿って等角度間隔に配置されている。
【0017】
複数の磁石挿入孔12の各々には、永久磁石13が収容されている(配置されている)。すなわち、回転電機102は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。永久磁石13は、Z方向に直交する断面が長方形形状を有している。永久磁石13は、たとえば、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。
【0018】
ロータコア10では、C方向に隣り合う一対の永久磁石13により磁極14が形成されている。すなわち、磁極14は、ロータコア10に複数形成されている。磁極14を形成する一対の永久磁石13は、R1側に凸のV字状に配置されている。なお、磁極14を形成する一対の永久磁石13の形状は、これに限られない。
【0019】
図2に示すように、ロータシャフト20は、筒状に形成されている。すなわち、ロータシャフト20は、中空構造を有している。ロータシャフト20は、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸等に接続されている。ロータコア10が回転軸線90回りに回転することにより、ロータコア10の回転力がロータシャフト20に伝達される。そして、ロータシャフト20は、ロータコア10と共に回転軸線90回りに回転する。
【0020】
(ロータコアとロータシャフトとの固定構造)
ここで、ロータシャフト20の挿入部21は、シャフト挿入孔11に圧入されている圧入部21aと、シャフト挿入孔11に圧入されていない非圧入部21bと、を含む。非圧入部21bは、ロータシャフト20の挿入部21のうちのZ方向(軸方向)における圧入部21a以外の部分に、圧入部21aよりもR1側(径方向内側)に凹むように設けられている。
【0021】
具体的には、ロータシャフト20の挿入部21のうちのZ方向における一部は、シャフト挿入孔11に圧入されている圧入部21aである。そして、ロータシャフト20の挿入部21のうちの圧入部21aと、ロータコア10のシャフト挿入孔11のうちの圧入部21aとR方向に対向する部分とは、圧入によって締り嵌めの状態となっている。すなわち、ロータシャフト20の挿入部21がロータコア10のシャフト挿入孔11内に配置された状態で、圧入部21aの外径D21は、シャフト挿入孔11の内径D11と等しい。なお、シャフト挿入孔11の内径D11は、シャフト挿入孔11のZ方向における全体に亘って等しい。
【0022】
また、ロータシャフト20の挿入部21において圧入部21a以外の部分の全ては、シャフト挿入孔11に圧入されていない非圧入部21bである。そして、ロータシャフト20の挿入部21のうちの非圧入部21bと、ロータコア10のシャフト挿入孔11のうちの非圧入部21bとR方向に対向する部分とは、R方向における微小(たとえば、数十μm)の隙間が形成され隙間嵌めの状態となっている。すなわち、非圧入部21bの外径D22は、圧入部21aの外径D21よりも小さい。なお、
図2では、図示の都合上、隙間の大きさを過大に示している。
【0023】
これにより、ロータシャフト20に非圧入部21bがない場合と比較して、ロータシャフト20のうちの圧入部21a全体のZ方向(軸方向)における長さL10が小さくなるので、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を配置する際に、ロータコア10およびロータシャフト20に生じる圧入荷重を低減することができる。また、ロータシャフト20において非圧入部21bが圧入部21aよりもR1側(径方向内側)に凹むように設けられているので、ロータコア10およびロータシャフト20に生じる圧入荷重を低減するために、ロータコア10においてシャフト挿入孔11の内径を異ならせる必要がない。すなわち、比較的難しい作業が必要となるロータコア10を成形するためのプレス金型の調整が通常のシャフト挿入孔11用のみで済む。なお、ロータシャフト20は、従来から切削加工により所望の形状に加工されているので、ロータシャフト20に凹部を新たに設ける作業は容易である。これらの結果、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を圧入する際のロータコア10およびロータシャフト20に生じる圧入荷重を容易に低減することができる。これにより、たとえば、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を圧入する際にロータシャフト20にむしれ(材料が削れて盛り上がる現象)が生じにくくなるので、むしれに起因してロータコア10に生じる応力を低減することができる。
【0024】
また、圧入部21a全体のZ方向(軸方向)における長さL10は、非圧入部21b全体のZ方向における長さL20よりも小さい。すなわち、圧入部21a全体のZ方向における長さL10は、挿入部21のZ方向における長さL30の1/2よりも小さい。たとえば、圧入部21a全体のZ方向における長さL10は、挿入部21のZ方向における長さL30の1/5よりも小さくてもよいし、挿入部21のZ方向における長さL30の1/10よりも小さくてもよい。これにより、ロータシャフト20のうちの圧入部21aのZ方向(軸方向)における長さL10を、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を配置する際にロータコア10およびロータシャフト20に生じる圧入荷重が低減されるように、十分に小さくすることができる。
【0025】
また、圧入部21aは、ロータシャフト20の挿入部21のZ方向(軸方向)における両端部21cに設けられている。具体的には、圧入部21aは、ロータシャフト20の挿入部21において、2つ設けられている。2つの圧入部21aは、それぞれ、ロータシャフト20の挿入部21のZ1側の端部21cおよびZ2側の端部21cに設けられている。そして、非圧入部21bは、Z1側の端部21cに設けられた圧入部21aとZ2側の端部21cに設けられた圧入部21aとの間に設けられている。すなわち、ロータシャフト20の挿入部21において、圧入部21aと、非圧入部21bと、圧入部21aとが、この順にZ方向に並んでいる。なお、2つの圧入部21aの各々のZ方向における長さL11は、圧入部21a全体のZ方向における長さL10の半分である。すなわち、2つの圧入部21aのZ方向における長さL11は、互いに等しい。これにより、ロータシャフト20の挿入部21のZ方向(軸方向)における両端部21cに隙間が形成されないので、ロータコア10の回転中心とロータコア10の回転中心とがずれるのを防止することができる。
【0026】
また、ロータシャフト20は、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)において、ロータシャフト20の挿入部21よりもR2側(径方向外側)に突出するフランジ部22を含む。具体的には、フランジ部22は、ロータコア10のZ1側において、フランジ部22のZ2側の面22aが、ロータコア10のZ1側の端面10aと当接するようにR2側に突出するように設けられている。すなわち、ロータシャフト20の挿入部21のZ1側(軸方向における一方側)の端部21cに設けられた圧入部21aは、Z方向(軸方向)においてフランジ部22と隣り合う。これにより、ロータシャフト20がフランジ部22を含む構成において、圧入部21aをロータシャフト20の挿入部21のZ1側(軸方向における一方側)の端部21cに確実に設けることができる。
【0027】
また、ロータ100は、ロータコア10のZ2側(軸方向における他方側)において、ロータシャフト20にZ1側(軸方向における一方側)に向かって嵌め込まれたナット30を備える。具体的には、ナット30は、ロータコア10のZ2側において、ナット30のZ1側の面30aが、ロータコア10のZ2側の端面10bと当接するようにロータシャフト20にZ1側に向かって嵌め込まれている。すなわち、ロータシャフト20の挿入部21のうちのZ2側(軸方向における他方側)の端部21cに設けられた圧入部21aは、Z方向(軸方向)においてナット30と隣り合う。これにより、ロータ100がナット30を備える構成において、圧入部21aをロータシャフト20の挿入部21のZ2側(軸方向における他方側)の端部21cに確実に設けることができる。なお、ナット30は、特許請求の範囲の「締結部材」の一例である。
【0028】
そして、ロータ100は、フランジ部22とナット30とによりロータコア10をZ方向(軸方向)に挟み込むことによって、ロータコア10とロータシャフト20との間でトルクを伝達するように構成されている。具体的には、フランジ部22とナット30とによりロータコア10をZ方向に挟み込んだ締付け力(軸力)によって、ロータコア10とロータシャフト20とが固定されている。そして、ロータコア10の回転力(トルク)がロータシャフト20に伝達される。これにより、ロータコア10とロータシャフト20との間でトルクを伝達するために、ロータシャフト20の挿入部21のうちの圧入部21a全体のZ方向(軸方向)における長さL10を大きくする必要がない。これにより、ロータシャフト20の挿入部21のうちの圧入部21a全体のZ方向における長さL10を、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を配置する際にロータコア10およびロータシャフト20に生じる圧入荷重が低減されるように、容易に小さくすることができる。
【0029】
また、ロータシャフト20は、ロータコア10のZ2側(軸方向における他方側)において、ナット30と螺合する雄ねじが形成された雄ねじ形成部23を含む。具体的には、ナット30のロータシャフト20側(R1側)の部分には、雌ねじが形成された雌ねじ形成部31が設けられている。そして、ロータシャフト20のうちのナット30の雌ねじ形成部31と対向する部分には、雄ねじが形成された雄ねじ形成部23が設けられている。そして、ナット30の雌ねじ形成部31とロータシャフト20の雄ねじ形成部23とが螺号している。
【0030】
また、ロータシャフト20の雄ねじ形成部23の外径D23は、ロータシャフト20の圧入部21aの外径D21よりも小さい。すなわち、Z方向において、ロータシャフト20の挿入部21のZ1側の端部21cに設けられた圧入部21aと、雄ねじ形成部23との間には段差が形成されている。これにより、雄ねじ形成部23のR2側(径方向外側)の端部が圧入部21aのR2側の端部よりもR1側(径方向内側)に配置されるので、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を圧入する際に、雄ねじ形成部23とロータコア10のシャフト挿入孔11との接触によって雄ねじ形成部23の雌ねじおよびロータコア10の内周面が削れてしまうのを防止することができる。
【0031】
また、圧入部21aおよび非圧入部21bは、それぞれ、周状に設けられている。これにより、圧入部21aおよび非圧入部21bを、それぞれ、C方向(周方向)に沿って均等に配置することができる。これにより、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を配置する際に、ロータコア10およびロータシャフト20に生じる圧入荷重の周方向における偏りに起因してZ方向(軸方向)と直交する面内におけるロータコア10の中心とロータシャフト20の中心とがずれるのを防止することができる。また、ロータシャフト20のZ方向(軸方向)における重心と中心とがずれるのを防止することができる。これらの結果、ロータ100の回転軸線90回りの回転がアンバランスになるのを防止することができる。なお、非圧入部21bは、Z方向から見て、環状である。
【0032】
[ロータの製造方法]
図3を参照して、一実施形態によるロータ100の製造方法について説明する。
【0033】
まず、ステップS1において、ロータコア10およびロータシャフト20を準備する準備工程が行われる。具体的には、準備工程(S1)において、Z方向に延びるシャフト挿入孔11を含むロータコア10、および、圧入部21aと非圧入部21bとを含むロータシャフト20が準備される。なお、ロータシャフト20の圧入部21aと非圧入部21bは、たとえば、切削加工により形成される。
【0034】
次に、ステップS2において、ロータコア10のシャフト挿入孔11にロータシャフト20を圧入する圧入工程が行われる。具体的には、圧入工程(S2)において、ロータシャフト20がフランジ部22のZ2側の面22aがロータコア10のZ1側の端面10aと当接するまで、ロータコア10のシャフト挿入孔11に、Z1側からZ2側に向かって挿入される。圧入工程(S2)では、ロータシャフト20の圧入部21aは、ロータコア10の内周面を押圧する。
【0035】
次に、ステップS3において、ロータシャフト20の雄ねじ形成部23にナット30を締結する締結工程が行われる。具体的には、締結工程(S3)において、ナット30が、ナット30のZ1側の面30aがロータコア10のZ2側の端面10bと当接するまで、ロータシャフト20の雄ねじ形成部23に、Z2側からZ1側に向かって嵌め込まれる。
【0036】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0037】
たとえば、上記実施形態では、ロータシャフト20の挿入部21のZ1側(軸方向における一方側)の端部21cに設けられた圧入部21aが、Z方向(軸方向)においてフランジ部22と隣り合う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータシャフトの挿入部の軸方向における一方側の端部に設けられた圧入部が、軸方向においてフランジ部と離間していてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、ロータシャフト20の挿入部21のうちのZ2側(軸方向における他方側)の端部21cに設けられた圧入部21aが、Z方向(軸方向)においてナット30と隣り合う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータシャフトの挿入部のうちの軸方向における他方側の端部に設けられた圧入部21aが、軸方向においてナットと離間していてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ロータ100が、フランジ部22とナット30とによりロータコア10をZ方向(軸方向)に挟み込むことによって、ロータコア10とロータシャフト20との間でトルクを伝達するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータが、ロータシャフトの挿入部のうちの圧入部と、ロータコアのシャフト挿入孔のうちの圧入部と径方向に対向する部分との圧入による締付け力によって、ロータコアとロータシャフトとの間でトルクを伝達するように構成されていてもよい。また、キーやスプラインを用いて、ロータコアとロータシャフトとの間でトルクを伝達するように構成されていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、ロータシャフト20が、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)において、ロータシャフト20の挿入部21よりもR2側(径方向外側)に突出するフランジ部22を含み、ロータ100が、ロータコア10のZ2側(軸方向における他方側)において、ロータシャフト20にZ1側に向かって嵌め込まれたナット30を備える。例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータシャフトが上記フランジ部を含まないように構成されていてもよいし、ロータが、上記ナットを備えないように構成されていてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、2つの圧入部21aのZ方向(軸方向)における長さL11が、互いに等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、2つの圧入部の軸方向における長さが、互いに異なっていてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、圧入部21aが、ロータシャフト20の挿入部21のZ方向(軸方向)における両端部21cに設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧入部が、ロータシャフトの挿入部の軸方向における片側の端部のみに設けられていてもよい。また、圧入部が、ロータシャフトの挿入部の軸方向における中央部に設けられていてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、圧入部21aが、ロータシャフト20の挿入部21において、2つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧入部が、ロータシャフトの挿入部において、1つのみ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、圧入部21a全体のZ方向(軸方向)における長さL10が、非圧入部21b全体のZ方向における長さL20よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧入部全体の軸方向における長さが、非圧入部全体の軸方向における長さ以上であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、シャフト挿入孔11の内径D11が、シャフト挿入孔11のZ方向(軸方向)における全体に亘って等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、
図4に示すロータ200のように、シャフト挿入孔の内径が、シャフト挿入孔の軸方向における一部において異なっていてもよい。
図4に示すように、ロータ200では、ロータコア210のシャフト挿入孔211のZ1側の端部210cの内径D210が、ロータコア210において、端部210c以外の内径D11よりも大きい。端部210cは、挿入部221のZ1側の端部221cに設けられた圧入部221aとR方向に対向している。圧入部221aの外径D221は、端部210cの内径D210と等しい。すなわち、端部210cと、ロータシャフト220の挿入部221のZ1側の端部221cに設けられた圧入部221aとは、圧入によって締り嵌めの状態となっている。
【符号の説明】
【0046】
10、210…ロータコア、11、211…シャフト挿入孔、20、220…ロータシャフト、21、211…挿入部、21a、221a…圧入部、21b…非圧入部、21c、221c…(挿入部の軸方向における)端部、22…フランジ部、23…雄ねじ形成部、30…締結部材、100、200…ロータ、D21、D221…(圧入部の)外径、D23…(雄ねじ形成部の)外径、L10…(圧入部の軸方向における)長さ、L20…(非圧入部の軸方向における)長さ