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特開2022-178703菌床栽培用袋及び菌床栽培用袋の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178703
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】菌床栽培用袋及び菌床栽培用袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 18/66 20180101AFI20221125BHJP
【FI】
A01G18/66
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085673
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】513038727
【氏名又は名称】株式会社エフテック
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】白羽根 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】友井 修
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011AA02
2B011AA04
2B011BA06
2B011EA01
2B011EA07
2B011GA03
2B011KA01
2B011PA01
(57)【要約】
【課題】袋から菌床を取り出す際にキノコ菌糸の被膜を破ることがないとともに、菌床を適正な形状に確実に成形しうる菌床栽培用袋を提供する。
【解決手段】菌床栽培用袋1は、プラスチックフィルムから形成される菌床栽培用袋であり、前後に対向配置される胴面部20,21と、前記胴面部20,21の両側方に接続される折込ガゼット部22と、前記胴面部20,21及び前記折込ガゼット部22の下端を熱溶着して形成される底シール部23と、前記胴面部20,21の下端部側と前記折込ガゼット部22とを斜め方向に熱溶着して形成される傾斜シール部27と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムから形成される菌床栽培用袋であり、
前後に対向配置される胴面部と、
前記胴面部の両側方に接続される折込ガゼット部と、
前記胴面部及び前記折込ガゼット部の下端を熱溶着して形成される底シール部と、
前記胴面部の下端部側と前記折込ガゼット部とを斜め方向に熱溶着して形成される傾斜シール部と、を備えた菌床栽培用袋。
【請求項2】
前記傾斜シール部は、前記底シール部と前記折込ガゼット部の折込み谷部との交差部近傍から所定の傾斜角度方向に形成される請求項1に記載の菌床栽培用袋。
【請求項3】
前後に対向配置される胴面部の両側方に折込ガゼット部が接続されるとともに底シール部で下端が閉鎖されたプラスチックフィルム製袋本体の前記折込ガゼット部の間に中間部材を挟み込む工程と、
前記折込ガゼット部の間に中間部材を挟み込んだ状態で前記胴面部の下端部側と前記折込ガゼット部とを斜め方向に熱溶着して傾斜シール部を形成する工程と、
前記中間部材を前記折込ガゼット部の間から抜き去る工程と、を備えた菌床栽培用袋の製造方法。
【請求項4】
前記中間部材は、板状芯材と、
前記板状芯材の両面に弾性素材を積層して形成された弾性層と、
前記弾性層の外面側に熱による前記袋本体の折込ガゼット部との貼り付きを防止するために積層された貼付き防止層と、を有する積層板を使用することとした請求項3記載の菌床栽培用袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シイタケやマイタケ等のキノコを人工栽培する際に用いられる菌床栽培用袋及び菌床栽培用袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キノコを人工栽培する際に、プラスチックフィルムからなる菌床栽培用袋が多く用いられるようになってきた。
【0003】
この種の菌床栽培用袋を用いてキノコを人工栽培するに際しては、まず、オガクズ等の木質基材に米糠等の栄養源を混ぜて水分を調整した人工の培地(菌床)を、当該菌床栽培用袋に充填して、高圧蒸気等により殺菌し、その後、前記菌床にキノコ種菌を接種して培養を行う(培養工程)。
【0004】
培養工程では、菌床にキノコ菌糸が成長して、菌床表面に被膜を形成してキノコ発生に備える。
【0005】
菌床栽培用袋は、使い捨てされるものであるため、安価であることが必要であり、できるだけ簡単な構成で製造されることが望ましい。
【0006】
また、菌床栽培用袋を用いてキノコ種菌を培養する際には、菌の生育に必要な空気を供給し、雑菌の侵入を阻止する必要がある。
【0007】
さらに、菌床栽培用袋を用いたキノコの人工栽培においては、培養工程の後に、キノコ発生の前に菌床を前記菌床栽培用袋から取り出してキノコを発生させる工程(キノコ(子実体)の発生工程)が必要である。
【0008】
従来、以上のような要求を満足する菌床栽培用袋として、以下のような構成のものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に開示された菌床栽培用袋は、図8に示すように、上端が開口し、縦方向の引張強度が横方向の引張強度よりも大きい分子配向となるように形成されたプラスチックフィルムからなる袋本体101と、袋本体の上部に形成された通気孔105と、通気孔を覆った状態で袋本体に溶着された、空気を通過させ雑菌の侵入を阻止するフィルタ106と、を備えている。
【0010】
袋本体2は、インフレーション加工によって形成された薄肉チューブの両側部をガセット折りして両側にガゼット部102が形成され、下端部を溶着によってシール(103)して袋状としたものである。なお、図8では図示を省略しているが、袋本体2を破断し引き裂くための破断用つまみも備えているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015-8690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1のような従来の菌床栽培用袋の構成では、図8(a)、図8(b)に示すように、菌床を充填するためにガゼット部102を広げて袋本体を略直方体状とすると、ガゼット部の下端部が三角形状に折り込まれて、底マチとの重なり角底が形成される。
【0013】
広げた袋の角底状の底マチに対してガゼット部102の下端部から三角形状に折り込まれた部分は、袋の底内側に三角形状のポケット部分104を形成することとなるが、袋内部に菌床を充填した際に、服る内部と連通する三角形状のポケット部分104にも菌床を形成しているオガクズ等が入り込んでしまっていた。
【0014】
このようにポケット部分にオガクズ等が入り込んだ状態では培養工程で、三角形状のポケット部分に入り込んだオガクズ等にもキノコ菌が伸長していくので、キノコ菌糸が成長して菌床に被膜が形成された後、袋から該菌床を取り出す際に、当該ポケット部分に入り込んだキノコ菌が剥がれて、菌床の表面に形成された被膜を破ってしまい、キノコ発生に悪影響を及ぼしてしまう問題があった。
【0015】
さらに、従来の菌床栽培用袋では、袋本体が可撓性のプラスチックフィルムからなることもあって、菌床栽培袋に菌床を充填して略直方体状に形成する際に、袋本体の四隅部分と菌床の間にゆるみが発生しやすい。
【0016】
この袋の四隅部分のゆるみの発生は、しわが生じたり、袋形状が斜めになって菌床の重心が歪んでしまったりし、菌床の適正な形状への成形の確実性に劣る問題があった。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、袋から菌床を取り出す際にもキノコ菌糸の被膜を破ることがないとともに、菌床を適正な形状に確実に成形しうる菌床栽培用袋及び菌床栽培用袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る菌床栽培用袋1は、プラスチックフィルムから形成される菌床栽培用袋であり、前後に対向配置される胴面部20,21と、前記胴面部20,21の両側方に接続される折込ガゼット部22と、前記胴面部20,21及び前記折込ガゼット部22の下端を熱溶着して形成される底シール部23と、前記胴面部20,21の下端部側と前記折込ガゼット部22とを斜め方向に熱溶着して形成される傾斜シール部27と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、前記傾斜シール部27は、前記底シール部23と前記折込ガゼット部22の折込み谷部24との交差部(28)近傍から所定の傾斜角度θ方向に形成されることとしてもよい。
【0020】
また、本発明に係る菌床栽培用袋の製造方法は、前後に対向配置される胴面部20,21の両側方に折込ガゼット部22が接続されるとともに底シール部23で下端が閉鎖されたプラスチックフィルム製袋本体(2b)の前記折込ガゼット部22の間に中間部材7を挟み込む工程(S1)と、前記折込ガゼット部22の間に中間部材7を挟み込んだ状態で前記胴面部20,21の下端部側と前記折込ガゼット部22とを斜め方向に熱溶着して傾斜シール部27を形成する工程(S2)と、前記中間部材7を前記折込ガゼット部22の間から抜き去る工程(S3)と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
前記中間部材7は、板状芯材71と、前記板状芯材71の両面に弾性素材を積層して形成された弾性層72と、前記弾性層72の外面側に熱による前記袋本体2bの折込ガゼット部22との貼り付きを防止するために積層された貼付き防止層73と、を有する積層板を使用することとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、両側方にガゼット部を有する袋本体の内底部に形成される三角形状に重なり合う部分が傾斜シール部で閉鎖されるので、当該三角形状部分に培地が入り込むのを確実に防止できる。同時に、菌床を適正な直方体形状に確実に成形することが可能となる。その結果、培地の成形及び培地での培養工程、袋から培地の取り出し並びにキノコの発生工程を含むキノコ栽培工程全体を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態における菌床栽培用袋の構成を示す正面図である。
図2図1の菌床栽培用袋を広げて略直方体状とした状態の斜視図である。
図3図2の菌床栽培用袋の底面図である。
図4図1の菌床栽培用袋を用いてキノコ種菌を培養している状態を示す斜視図である。
図5図1の菌床栽培用袋の傾斜シール部の例を示す正面図である。
図6】本発明の一実施の形態における菌床栽培用袋の製造方法の各工程の概略を説明する図である。
図7図6の菌床栽培用袋の製造方法に使用される中間部材の一例の断面の拡大図である。
図8】(a)は、従来の菌床栽培用袋の構成を示す正面図、(b)は同菌床栽培用袋を広げた状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
[菌床栽培用袋の構成]
まず、本発明の一実施形態における菌床栽培用袋の構成について、図1ないし図5を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態の菌床栽培用袋1は、例えば、上端が開口したプラスチックフィルムからなる袋本体2と、袋本体2の上部に形成された通気孔3と、通気孔3を覆った状態で袋本体2に溶着された空気を通過させ雑菌の侵入を阻止するフィルタ4と、を備えている。
【0027】
なお、菌床栽培用袋1には、菌床を袋本体から取り出すために袋本体2を破断し引き裂くための破断用つまみや、ミシン目等を備えることとしてもよい。
【0028】
袋本体2は、例えば、インフレーション加工によって形成された薄肉チューブの両側部をガゼット折りし、下端部を熱溶着によってシールして袋状としたものである。
【0029】
すなわち、上記のようにして形成された袋本体2は、前後に対向配置される胴面部20、21と、胴面部20,21の両側方に接続されるV字状の折込ガゼット部22と、前後の胴面部20,21及び両側方側の折込ガゼット部22の下端を熱溶着して形成される底シール部23と、を有する上端開口の袋状体となる。なお、図1図3図5図6において、説明のためにシール部を太線で示している。
【0030】
胴面部20,21は、例えば、縦長四角形状に形成されている。胴面部20,21は、袋本体2を広げた際には下端部側が折り曲がって角底状の底マチを形成する。前後に重なり合う胴面部20の左右両側辺側からV字状に折り込まれた折込ガゼット部22が一体形成されている。
【0031】
よって、折込ガゼット部22は、谷折りされた折込み谷部24を折り線として、一方(前方)の胴面部20の両側辺に接続される第1ガゼット片25と、他方(後方)の胴面部21の両側辺に接続される第2ガゼット片26と、を有している。
【0032】
底シール部23は、前後の胴面部20、21の下端側と折込ガゼット部22の第1,第2ガゼット片25,26を重ねた状態で、該胴面部の下辺に沿って直線状に熱溶着して形成されている。
【0033】
さらに袋本体2の下部側には、底シール部23に対して傾斜方向に熱溶着された傾斜シール部27が形成されている。
【0034】
傾斜シール部27は、胴面部20,21の下端部側と、その左右両側方の折込ガゼット部22と、を斜め方向に熱溶着し、正面視で逆ハ字状に形成される。
【0035】
より詳細には、傾斜シール部27は、一方の胴面部20の下端部と、その両側方側の第1ガゼット片25と、を底シール部23に対して斜め方向に直線状に熱溶着している。同様に、傾斜シール部27は、一方の胴面部21の下端部と、その両側方側の第2ガゼット片26と、底シール部23に対して斜め方向に直線状に熱溶着している。
【0036】
そして、傾斜シール部27は、底シール部23と折込ガゼット部22の折込み谷部24との交差部28近傍から所定の傾斜角度θ方向に形成される。
【0037】
本実施形態では、傾斜シール部27の傾斜角度θは、例えば、底シール部23に対して45度程度に設定される。傾斜シール部27の傾斜角度θは、袋本体や折込ガゼット部等のサイズ等に対応して任意に設定してもよく、好適には30~60度程度の範囲に設定するとよい。図5では、傾斜シール部27の傾斜角度θを変更した例を示している。図5(a)は傾斜角度θが60度、(b)は傾斜角度θが45度、(c)は傾斜角度θが30度に、それぞれ設定された例を示している。
【0038】
このように袋本体2に前述したような傾斜シール部27を形成することにより、図2図3図4に示すように、オガクズ等の木質基材に米糠等の栄養源を混ぜて水分を調整した人工の培地(菌床6)を袋本体2の内部に充填する際に、袋本体2を広げて略直方体状に立体化し、折込ガゼット部22の下端を三角形状に折り重ねて角底を形成した状態では、三角形状に重なり合うポケット部分が傾斜シール部27で閉鎖されることとなる。
【0039】
よって、袋内部にオガクズ等の菌床を充填した際に、該三角形状の重ね合わせ部分29に該菌床の入り込むことを確実に防止できる。したがって、余分な箇所に菌糸が伸長することがなく袋本体から菌床を取り出す際に菌床表面に形成された被膜を損傷することを防止できる。
【0040】
さらに、袋本体2が角底を形成した状態では、傾斜シール部27の端部が角底の四隅周辺の補強する効果を奏することで、その立体化した袋本体2の四隅周辺でのゆるみがほとんどなくなり、菌床の形状が斜めになったりすることを良好に防止でき、適正な直方体形状に確実に成形することが可能となる。
【0041】
その結果、培養工程及びその後の袋本体から菌床を取り出す工程や、キノコを発生させる工程での管理を良好に行うことができる。
【0042】
なお、袋本体2の材料としては、安価であり高圧蒸気等による殺菌にも耐え得るポリプロピレン、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系材料、あるいは、ポリエステル系材料が好ましい。
【0043】
また、キノコ種菌の培養状態を観察できるように、袋本体2は、透明又は半透明なものであることが好ましい。
【0044】
本実施形態では、フィルタ4は、矩形状に形成されている。但し、フィルタの形状は、矩形状に限定されるものではなく、例えば、五角形などの多角形、円形、楕円形等、いかなる形状であってもよい。
【0045】
尚、フィルタ4は、雑菌の侵入を完全に阻止しなくても、キノコ種菌の菌糸の発育に悪影響を及ぼさない程度に阻止できればよい。そして、フィルタ4は、高圧蒸気等による殺菌に耐え、袋本体2の材料と気密に溶着されるものであればよく、例えば、市販されている多孔性プラスチックフィルタ、不織布フィルタ等を使用することができる。
【0046】
図1に示すように、フィルタ4は、通気孔3を覆った状態で配置された後、袋本体2に溶着される。図1において、参照符号5は、溶着部を示している。フィルタ4を配置する位置は、袋本体2の上部、好ましくは、雑菌の混入を避けるために袋本体2の上端開口部を折り曲げたときに折り込まれない位置である。
【0047】
[菌床栽培用袋の使用方法]
次に、本発明の一実施の形態における菌床栽培用袋の使用方法について、図4をも参照しながら説明する。
【0048】
キノコを人工栽培するに際しては、図4に示すように、まず、オガクズ等の木質基材に米糠等の栄養源を混ぜて水分を調整した人工の培地(菌床6)を、菌床栽培用袋1の袋本体2に充填して、約120℃の高圧蒸気で約2時間殺菌する。
【0049】
次に、殺菌した菌床6にキノコ種菌を接種し、袋本体2の上端開口部を熱溶着(ヒートシール)して閉鎖する。そして、キノコ種菌が接種された菌床6を、菌床栽培用袋1の袋本体2に充填したまま、温度約24℃、湿度約60%の培養室で30~90日間保管する(培養工程)。
【0050】
菌糸が菌床6にほぼ蔓延したら(培養工程が終了したら)、菌床6を菌床栽培用袋1の袋本体2から取り出し、温度約18℃、湿度約90%の環境下でキノコ(子実体)を発生させる(キノコ(子実体)の発生工程)。
【0051】
菌床から発生したキノコがある程度成長したら適宜収穫する。
【0052】
[菌床栽培用袋の製造方法]
次に本実施形態の菌床栽培用袋1を製造する方法の一実施形態について説明する。なお、上記説明したものを同一部材には同一符号を付して説明している。
【0053】
まず、上端を開口し、両側方に折込ガゼット部22が形成され、下端が熱溶着により閉鎖された袋本体2bを用意する。すなわち、袋本体2bは、前後の胴面部20,21の左右両側に折り込みガゼット部22が接続され、それらの下端を直線状に熱溶着して底シール部23が形成されている。なお、袋本体2bは、予め製造したものでも、購入したものでもよい。
【0054】
第1の工程S1では、図6(a)に示すように、該袋本体2bの両側方に形成された折込ガゼット部22の間、すなわち第1ガゼット片25と第2ガゼット片26の間に中間部材7を挟み込み、該中間部材7を折込み谷部25の奥の方まで挿入する。
【0055】
中間部材7は、傾斜シール部27を形成するために、一方の胴面部20と第1ガゼット片25との熱溶着、及び他方の胴面部21と第2ガゼット片26との熱溶着を行う際に、第1ガゼット片25と第2ガゼット片26どうしが熱溶着するのを防止するために中間に挟み込む溶着防止手段である。
【0056】
中間部材7は、傾斜シール部27の形成工程の際に、熱によって折込ガゼット部22に貼り付くのを防止するための処理が表面に施された厚みが薄い板状又はシート状の部材からなる。
【0057】
本実施形態では、中間部材7は、例えば、図7に示すように、板状芯材71と、その両面に積層された弾性層72と、それぞれの弾性層72の外面側に積層された貼り付き防止層73と、を有する5層構造の積層板からなる。
【0058】
中間部材7の板状心材71は、例えば、中間部材全体構造をある程度強度とするために鉄板等の金属からなる。
【0059】
弾性層72は、熱に強くかつ熱溶着する際の圧力が袋本体2bに伝わるように弾性素材が好適であり、例えば、シリコンゴム等からなる。本実施形態では、鉄板からなる板状心材の両面にシート状のシリコンゴムを接着剤等で張り付けて形成される。
【0060】
貼付き防止層73は、熱に強く貼り付きを防止できる素材が好適であり、例えば、フッ素樹脂等からなる。本実施形態では、弾性層71の表面にシート状に形成したフッ素樹脂を接着剤等で張り付けて形成される。
【0061】
なお、中間部材7は、例えば、シリコンゴムやフッ素樹脂等の単層構造のものや、シリコンゴムの表面にフッ素樹脂等を積層した3層構造のものでもよい。
【0062】
中間部材7は、少なくとも、傾斜シール部27が形成される範囲に挟み込まれるサイズであればよい。本実施形態では、中間部材7は、傾斜シール部の縦方向幅よりも若干大きい縦幅で、かつ、傾斜シール部の横方向幅よりも若干大きい横幅、すなわち折込ガゼット部22の第1ガゼット片(第2ガゼット片)の横幅よりも若干大きい横幅となっている。
【0063】
次の工程S2では、図6(b)に示すように、折込ガゼット部22の第1ガゼット片25と第2ガゼット片26の間に中間部材7を挟み込んだ状態で、一方の胴面部20の下端部側と折込ガゼット部の第1ガゼット片25とを斜め方向に熱溶着するとともに、他方の胴面部21の下端部側と折込ガゼット部の第2ガゼット片26を斜め方向に熱溶着して傾斜シール部27を形成する。
【0064】
例えば、傾斜シール部27を熱溶着で形成する際には、熱源となる真鍮を250℃程度に設定し、該真鍮をプラスチックフィルムからなる胴面部20,21の外面側から0.75秒程度圧接させて、ヒートシールする。
【0065】
次の工程S3では、図6(c)に示すように、中間部材7を折込ガゼット部22から抜き去る。
【0066】
このようにして本発明の菌床栽培袋1を簡単かつ確実に形成することができる。なお、中間部材7の挟み込み工程や抜き去る工程を含む各工程を機械的に行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 菌床栽培用袋
2 袋本体
20 胴面部
21 胴面部
22 折込ガゼット部
23 底シール部
27 傾斜シール部
7 中間部材
71 板状芯材
72 弾性層
73 貼り付き防止層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムから形成される菌床栽培用袋であり、
前後に対向配置される縦長四角形状の胴面部と、
谷折りされた折込み谷部を折り線として、前方の前記胴面部の両側辺に接続される第1ガゼット片と、後方の前記胴面部の両側辺に接続される第2ガゼット片と、を有する折込ガゼット部と、
前後の前記胴面部の下端側と前記折込ガゼット部の前記第1及び第2ガゼット片を重ねた状態で、前記胴面部の下辺に沿って直線状に熱溶着して形成される底シール部と、
前方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第1ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して形成される第1傾斜シール部と、
後方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第2ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して形成される第2傾斜シール部と、を備えた菌床栽培用袋。
【請求項2】
前記第1及び第2傾斜シール部は、前記底シール部と前記折込ガゼット部の前記折込み谷部との交差部近傍から所定の傾斜角度方向に形成される請求項1に記載の菌床栽培用袋。
【請求項3】
請求項1に記載の菌床栽培用袋の製造方法であり、
前後の前記胴面部の下端側と前記折込ガゼット部の前記第1及び第2ガゼット片を重ねた状態で、前記胴面部の下辺に沿って直線状に熱溶着して前記底シール部を形成する工程と、
記折込ガゼット部の前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間に中間部材を挟み込む工程と、
前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間に前記中間部材を挟み込んだ状態で、前方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第1ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して前記第1傾斜シール部を形成する工程と、
前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間に前記中間部材を挟み込んだ状態で、後方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第2ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して前記第2傾斜シール部を形成する工程と、
前記中間部材を前記折込ガゼット部の前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間から抜き去る工程と、を備えた菌床栽培用袋の製造方法。
【請求項4】
前記中間部材は、板状芯材と、
前記板状芯材の両面に弾性素材を積層して形成された弾性層と、
前記弾性層の外面側に熱による前記折込ガゼット部の前記第1及び第2ガゼット片との貼り付きを防止するために積層された貼付き防止層と、を有する積層板を使用することとした請求項3記載の菌床栽培用袋の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る菌床栽培用袋は、プラスチックフィルムから形成される菌床栽培用袋であり、前後に対向配置される縦長四角形状の胴面部と谷折りされた折込み谷部を折り線として、前方の前記胴面部の側辺に接続される第1ガゼット片と、後方の前記胴面部の両側辺に接続される第2ガゼット片と、を有する折込ガゼット部と前後の前記胴面部の下端側と前記折込ガゼット部の前記第1及び第2ガゼット片を重ねた状態で、前記胴面部の下辺に沿って直線状に熱溶着して形成される底シール部と前方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第1ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して形成される第1傾斜シール部と後方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第2ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して形成される第2傾斜シール部と、を備えたことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
また、前記第1及び第2傾斜シール部は、前記底シール部と前記折込ガゼット部の前記折込み谷部との交差部近傍から所定の傾斜角度方向に形成されることとしてもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
また、本発明に係る菌床栽培用袋の製造方法は、上記本発明の菌床栽培用袋の製造方法であり、前後の前記胴面部の下端側と前記折込ガゼット部の前記第1及び第2ガゼット片を重ねた状態で、前記胴面部の下辺に沿って直線状に熱溶着して前記底シール部を形成する工程と、前記折込ガゼット部の前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間に中間部材を挟み込む工程と、前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間に前記中間部材を挟み込んだ状態で、前方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第1ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して前記第1傾斜シール部を形成する工程と前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間に前記中間部材を挟み込んだ状態で、後方の前記胴面部の下端部と、その両側方側の前記第2ガゼット片と、を前記底シール部に対して斜め方向に直線状に熱溶着して前記第2傾斜シール部を形成する工程と、前記中間部材を前記折込ガゼット部の前記第1ガゼット片と前記第2ガゼット片の間から抜き去る工程と、を備えたことを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
前記中間部材は、板状芯材と、前記板状芯材の両面に弾性素材を積層して形成された弾性層と、前記弾性層の外面側に熱による前記折込ガゼット部の前記第1及び第2ガゼット片との貼り付きを防止するために積層された貼付き防止層と、を有する積層板を使用することとしてもよい。