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特開2022-178721略矩形状等のパイル織物、支持部材、及び、それらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178721
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】略矩形状等のパイル織物、支持部材、及び、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 27/00 20060101AFI20221125BHJP
   D03D 15/68 20210101ALI20221125BHJP
【FI】
D03D27/00 A
D03D15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085713
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】394022015
【氏名又は名称】妙中パイル織物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】妙中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】妙中 正司
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AB10
4L048AC19
4L048BA28
4L048BA30
(57)【要約】
【課題】パイル糸を略矩形状にする等により、「パイルの新たな外観」などを実現する。
【解決手段】基布2からパイル糸3が立設したパイル織物1である。基布2は経糸4と緯糸5を有し、パイル糸3は1本以上の緯糸5に係止され、パイル糸3は略矩形状等である。又、パイル糸3はモノフィラメント糸であり、経糸4は隣接するパイル糸3間に複数本配置されたり、パイル糸3は隣接する3本以上の緯糸5に係止されても良い。パイル織物1の製造方法は、基布2とパイル糸3を織成する織成工程S1の後に、連結糸3’で連結された表基布2aや裏基布2bを熱処理する熱処理工程S2で、連結糸3’を略矩形状等のパイル糸3に形成する。又、緯糸5中の可溶性繊維を溶解させる溶解工程S3を備えても良い。更に、上述したパイル織物1と弾性材を有した支持部材や、その支持部材の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布(2)からパイル糸(3)が立設したパイル織物であって、
前記基布(2)は、経糸(4)と緯糸(5)を有し、
前記パイル糸(3)は、1本以上の緯糸(5)に係止され、
前記パイル糸(3)は、先端側が側面視で略コ字状である、及び/又は、基端側が側面視で前記基布(2)に対して略直立状であることを特徴とするパイル織物。
【請求項2】
前記パイル糸(3)は、先端側が側面視で略半円状である、及び、基端側が側面視で前記基布(2)に対して略直立状であることを特徴とする請求項1に記載のパイル織物。
【請求項3】
前記パイル糸(3)は、モノフィラメント糸であり、
前記経糸(4)は、前記緯糸(5)の長手方向である緯方向において隣接するパイル糸(3)の間に、複数本配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパイル織物。
【請求項4】
前記パイル糸(3)は、前記経糸(4)の長手方向である経方向において隣接する3本以上の緯糸(5)に係止され、
前記パイル糸(3)は、前記隣接する3本以上の緯糸(5)に対して、当該隣接する3本以上の緯糸(5)における1本又は複数本の緯糸(5)の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸(5)における別の1本又は複数本の緯糸(5)の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸(5)におけるまた別の1本又は複数本の緯糸(5)の下を通って係止されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のパイル織物。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のパイル織物(1)と、略板状の弾性材とを有していて、固化可能な構造体を支持する支持部材であって、
前記パイル織物(1)は、前記基布(2)が前記弾性材の弾性変形に応じて変形可能に、前記弾性材の外面に固定され、
前記パイル織物(1)のパイル糸(3)は、前記固化可能な構造体に埋没していることを特徴とする支持部材。
【請求項6】
基布(2)からパイル糸(3)が立設したパイル織物の製造方法であって、
経糸(4)と緯糸(5)をそれぞれ有した表基布(2a)及び裏基布(2b)の間を、2本以上の前記緯糸(5)に係止された連結糸(3’)で連結して、前記基布(2)とパイル糸(3)を織成する織成工程(S1)と、
前記織成工程(S1)の後に、前記表基布(2a)、及び/又は、前記裏基布(2b)を熱処理する熱処理工程(S2)を備え、
前記連結糸(3’)を、先端側が側面視で略コ字状である、及び/又は、基端側が側面視で前記基布(2)に対して略直立状である前記パイル糸(3)に形成することを特徴とするパイル織物の製造方法。
【請求項7】
基布(2)からパイル糸(3)が立設したパイル織物の製造方法であって、
経糸(4)と緯糸(5)をそれぞれ有した表基布(2a)及び裏基布(2b)の間を、2本以上の前記緯糸(5)に係止された連結糸(3’)で連結して、前記基布(2)とパイル糸(3)を織成し、且つ、
織成した前記表基布(2a)、及び/又は、織成した前記裏基布(2b)を熱処理する織成・熱処理工程(S1’)を備え、
前記連結糸(3’)を、先端側が側面視で略コ字状である、及び/又は、基端側が側面視で前記基布(2)に対して略直立状である前記パイル糸(3)に形成することを特徴とするパイル織物の製造方法。
【請求項8】
前記緯糸(5)は、可溶性繊維を含み、
前記可溶性繊維を溶解させる溶解工程(S3)を備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載のパイル織物の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8の何れか1項に記載の製造方法により製造されたパイル織物(1)と、略板状の弾性材とを有していて、固化可能な構造体を支持する支持部材の製造方法であって、
前記パイル織物(1)を、前記基布(2)が前記弾性材の弾性変形に応じて変形可能に、前記弾性材の外面に固定させる固定工程と、
前記パイル織物(1)のパイル糸(3)を、前記固化可能な構造体に埋没させる埋没工程を備えていることを特徴とする支持部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸と緯糸を有した基布と、この基布からパイル糸が立設したパイル織物、支持部材、及び、それらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基体とループパイルを備えてなり、前記ループパイルは、その基部が基体に結合された状態で基体上に配設されているループパイル保持体が知られている(特許文献1)。
このループパイル保持体は、前記ループパイルを形成するループパイル形成糸は、略円柱形状をなし、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントが、ループパイル形成糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されており、前記ループパイルは、(ループパイルの高さ)/(ループパイル形成糸の直径)の比が1/1乃至5/1であり且つ(ループパイルの両基部の中心同士の距離)/(ループパイル形成糸の直径)の比が3/1以下であって、基体の表面に対し自立性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-18892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたループパイル保持体は、その図1等に開示されたように、当該ループパイルの側面視における形状(外観)が、略円形状であるとも言え、新たな外観が求められている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、パイル糸を略矩形状にする等によって、「パイルの新たな外観」などを実現できるパイル織物、支持部材、及び、それらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパイル織物1は、基布2からパイル糸3が立設したパイル織物であって、前記基布2は、経糸4と緯糸5を有し、前記パイル糸3は、1本以上の緯糸5に係止され、前記パイル糸3は、先端側が側面視で略コ字状である、及び/又は、基端側が側面視で前記基布2に対して略直立状であることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係るパイル織物1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記パイル糸3は、先端側が側面視で略半円状である、及び、基端側が側面視で前記基布2に対して略直立状である点にある。
【0008】
本発明に係るパイル織物1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記パイル糸3は、モノフィラメント糸であり、前記経糸4は、前記緯糸5の長手方向である緯方向において隣接するパイル糸3の間に配置されている点にある。
【0009】
本発明に係るパイル織物1の第4の特徴は、上記第1~3の特徴に加えて、前記パイル糸3は、前記経糸4の長手方向である経方向において隣接する3本以上の緯糸5に係止され、前記パイル糸3は、前記隣接する3本以上の緯糸5に対して、当該隣接する3本以上の緯糸5における1本又は複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本又は複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本又は複数本の緯糸5の下を通って係止されている点にある。
【0010】
これらの特徴により、1本以上の緯糸5に係止されるパイル糸3における、先端側を側面視で略コ字状としたり、基端側を側面視で基布2に対して略直立状とすることで、パイル糸3が略矩形状等となるため、ループパイルの側面視における外観が略円形状である特許文献1とは異なり、「パイルの新たな外観」を実現できる。
尚、このようなパイル織物1は、「略矩形状等のパイル織物」であるとも言える。
その他、前記パイル糸3における、先端側を側面視で略半円状とし、且つ、基端側を側面視で前記基布2に対して略直立状としても良い。
【0011】
又、パイル糸3をモノフィラメント糸とし、複数本の経糸4を緯方向に隣接するパイル糸3の間に配置することで、略矩形状等のパイル糸3を、緯方向に所定間隔で立設させることが出来、より新しい外観を有したパイルの実現が図れる。
【0012】
更に、パイル糸3を、経方向に隣接する3本以上の緯糸5に係止することで、略矩形状等のパイル糸3における経方向に略沿った幅が所定値以上に確保され、より新しい外観を有したパイルが実現できると同時に、略矩形状等のパイル糸3がより抜け難くなる(「パイルの新たな外観」と「パイル抜止めの向上」が両立できる)。
【0013】
本発明に係る支持部材は、上述したパイル織物1と、略板状の弾性材とを有していて、固化可能な構造体を支持する支持部材であって、前記パイル織物1は、前記基布2が前記弾性材の弾性変形に応じて変形可能に、前記弾性材の外面に固定され、前記パイル織物1のパイル糸3は、前記固化可能な構造体に埋没していることを第1の特徴とする。
【0014】
この特徴により、パイル織物1を、基布2が弾性材の弾性変形に応じて変形可能に、弾性材の外面に固定し、パイル織物1のパイル糸3を、固化可能な構造体に埋没することで、支持部材で、略棒状のコンクリート製などの固化可能な構造体を支持しつつ、当該支持部材と、固化可能な構造体の位置がずれ難くなり、支持が安定する(「支持の安定化」)。
【0015】
本発明に係るパイル織物1の製造方法は、基布2からパイル糸3が立設したパイル織物の製造方法であって、経糸4と緯糸5をそれぞれ有した表基布2a及び裏基布2bの間を、2本以上の前記緯糸5に係止された連結糸3’で連結して、前記基布2とパイル糸3を織成する織成工程S1と、前記織成工程S1の後に、前記表基布2a、及び/又は、前記裏基布2bを熱処理する熱処理工程S2を備え、前記連結糸3’を、先端側が側面視で略コ字状である、及び/又は、基端側が側面視で前記基布2に対して略直立状である前記パイル糸3に形成することを第1の特徴とする。
【0016】
本発明に係るパイル織物1の製造方法の第2の特徴は、基布2からパイル糸3が立設したパイル織物の製造方法であって、経糸4と緯糸5をそれぞれ有した表基布2a及び裏基布2bの間を、2本以上の前記緯糸5に係止された連結糸3’で連結して、前記基布2とパイル糸3を織成し、且つ、織成した前記表基布2a、及び/又は、織成した前記裏基布2bを熱処理する織成・熱処理工程S1’を備え、前記連結糸3’を、先端側が側面視で略コ字状である、及び/又は、基端側が側面視で前記基布2に対して略直立状である前記パイル糸3に形成する点にある。
【0017】
本発明に係るパイル織物1の製造方法の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記緯糸5は、可溶性繊維を含み、前記可溶性繊維を溶解させる溶解工程S3を備えている点にある。
【0018】
これらの特徴により、織成工程S1の後に、表基布2aや裏基布2bを熱処理する熱処理工程S2を備えて、表基布2aと裏基布2bの間の連結糸3’を、先端側が側面視で略コ字状であったり、基端側が側面視で基布2に対して略直立状であるパイル糸3に形成することで、パイル糸3が略矩形状等となるため、ループパイルの側面視における外観が略円形状である特許文献1とは異なり、「パイルの新たな外観」を実現できると同時に、織成工程S1及び熱処理工程S2を1回行うだけで、略矩形状等のパイル糸3を有したパイル織物1が2つ製造できることから、パイル織物1の製造効率が上がる(「パイルの新たな外観」と「製造効率の向上」が両立できる)。
尚、このようなパイル織物1の製造方法は、「略矩形等のパイル織物の製造方法」であるとも言える。
その他、上述した織成工程S1と熱処理工程S2が1つの工程となった織成・熱処理工程S1’を備えていても良い。
【0019】
又、緯糸5に含まれる可溶性繊維を溶解させる溶解工程S3を備えることで、連結糸3’が係止した可溶性繊維を含む緯糸5が溶解して係止が外れて、略矩形状等のパイル糸3となる連結糸3’を切断することなく、素早く表基布2aと裏基布2bを分離でき、更なる「パイルの新たな外観」と「製造効率の向上」の両立が図れる。
【0020】
本発明に係る支持部材の製造方法は、上述した製造方法により製造されたパイル織物1と、略板状の弾性材とを有していて、固化可能な構造体を支持する支持部材の製造方法であって、前記パイル織物1を、前記基布2が前記弾性材の弾性変形に応じて変形可能に、前記弾性材の外面に固定させる固定工程と、前記パイル織物1のパイル糸3を、前記固化可能な構造体に埋没させる埋没工程を備えていることを第1の特徴とする。
【0021】
この特徴により、パイル織物1を、基布2が弾性材の弾性変形に応じて変形可能に、弾性材の外面に固定する固定工程と、パイル織物1のパイル糸3を、固化可能な構造体に埋没させる埋没工程を備えることで、支持部材で、略棒状のコンクリート製などの固化可能な構造体を支持しつつ、当該支持部材と、固化可能な構造体の位置がずれ難くなり、支持が安定する(「支持の安定化」)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るパイル織物、支持部材、及び、それらの製造方法によると、パイル糸を略矩形状にする等によって、「パイルの新たな外観」などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るパイル織物等の表面斜視を例示する図面代用写真である。
図2】パイル織物等の経糸の長手方向視を例示する図面代用写真である。
図3】本発明に係るパイル織物等の製造方法で表基布と裏基布の両方がパイル織物となる場合において、当該表基布と裏基布を分離している途中の斜視を例示する図面代用写真である。
図4】パイル織物等の製造方法で表基布と裏基布の両方がパイル織物となる場合において、当該表基布と裏基布を分離している途中の、パイル織物の経糸の長手方向視を例示する図面代用写真である。
図5】パイル織物において、パイル糸が3本以上の緯糸に対して係止されている場合の緯方向視を示す側断面図である。
図6】パイル織物の製造方法で表基布と裏基布の両方がパイル織物となる場合で、当該表基布と裏基布を分離する前のパイル織物(中間緯糸が1本)における、裏基布の組織図である。尚、当該図6中の黒色は、平面視(表基布側からの平面視)において、経糸やパイル糸が緯糸の上側(又は上)を通過していることを意味する。又、当該図6中の緯糸に付された符号は、X-X矢視断面図における緯糸の符号を示す。
図7図6と同じく、当該表基布と裏基布を分離する前のパイル織物における、表基布の組織図である。尚、当該図7中の黒色も、平面視(表基布の裏面からの平面視)において、経糸やパイル糸が緯糸の上側(又は上)を通過していることを意味する。又、当該図7中の緯糸に付された符号も、X-X矢視断面図における緯糸の符号を示す。
図8図6、7の組織図で例示されたパイル織物におけるX-X矢視断面図であって、(a)は当該表基布と裏基布を分離する前のパイル織物を示し、(b)は溶解工程の後に当該表基布と裏基布を分離した後のパイル織物を示す。
図9図6、7の組織図で例示されたパイル織物におけるY-Y矢視断面図であって、(a)は当該表基布と裏基布を分離する前のパイル織物を示し、(b)は溶解工程の後に当該表基布と裏基布を分離した後のパイル織物を示す。
図10図6、7の組織図で例示されたパイル織物におけるZ-Z矢視断面図であって、(a)は当該表基布と裏基布を分離する前のパイル織物を示し、(b)は溶解工程の後に当該表基布と裏基布を分離した後のパイル織物を示す。
図11図6、7の組織図で例示されたパイル織物におけるV-V矢視断面図であって、(a)は当該表基布と裏基布を分離する前のパイル織物を示し、(b)は溶解工程の後に当該表基布と裏基布を分離した後のパイル織物を示す。
図12図6、7の組織図で例示されたパイル織物におけるW-W矢視断面図であって、(a)は当該表基布と裏基布を分離する前のパイル織物を示し、(b)は溶解工程の後に当該表基布と裏基布を分離した後のパイル織物を示す。
図13】本発明に係るパイル織物等の製造方法を示すフローチャートであって、(a)は第1実施形態を示し、(b)は第2実施形態を示し、(c)は第3実施形態を示し、(d)は変形例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<パイル織物1の全体構成>
図1~12には、本発明の実施形態に係るパイル織物1が例示されている。
パイル織物1は、後述する基布2と、この基布2に織り込まれた複数のパイル糸3を有した織物であり、基布2からパイル糸3が立設しているとも言える。
【0025】
パイル織物1は、まず、それぞれ上下二重に織成される2枚のパイル織物に製織され、それらを連結しているパイル糸3を上下のパイル織物1の略中央の線(謂わば、センターカットライン)でセンターカットして2枚のパイル織物1に分割されても良い。
パイル織物1の厚みは、基布2の厚みと、パイル糸3の上下長さ(パイル長)を足した値であって、特に限定はないが、例えば、0.5mm以上15.0mm以下、好ましくは0.7mm以上10.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以上5.0mm以下であっても良い。
【0026】
<基布2>
図1~12に示したように、基布2は、後述する経糸4と、後述する緯糸5(一方側緯糸5aや他方端側緯糸5b、中間緯糸5m)を有しており、これら経糸4と緯糸5を製織して構成される。
基布2の組織(織組織)は、特に制限はないが、例えば、経糸4が織幅方向に並んで配置され、各経糸4は、複数本の緯糸5の上を通る毎に複数本の緯糸5の下を通っていても良い(綾織組織とも言える)。
【0027】
その他、各経糸4は、1本の緯糸5の上を通る毎に1本以上の緯糸5の下を通っていても良く、各緯糸5と平織組織、又は、綾織組織を構成しているとも言える。
この場合を詳解すれば、各経糸4は、1本の緯糸5の上を通る毎に1本の緯糸5の下を通る場合(平織組織)と、1本の緯糸5の上を通る毎に2本の緯糸5の下を通る場合(綾織組織)と、1本の緯糸5の上を通る毎に3本の緯糸5の下を通る場合(綾織組織)の何れでも構わない。
【0028】
基布2の厚みは、特に限定はないが、例えば、0.01mm以上1.00mm以下、好ましくは0.05mm以上0.90mm以下、更に好ましくは0.10mm以上0.80mm以下(0.3mm)であっても良い。
又、基布2の幅も、特に限定はなく、例えば、20インチ以上100インチ以下(65インチなど)であっても良い。更に、基布2やパイル糸3を製織する織機の筬の数も、特に限定はなく、例えば、10羽/インチ以上90羽/インチ以下であっても良い。
以下、この基布2における経糸4や緯糸5について、まず述べる。
【0029】
<経糸4など>
図1~12で示したように、経糸4は、製織される基布2における製織方向(一方向)又は、経糸4の長手方向(両方向、経方向とも言う)に沿って配置されている(換言すれば、織幅方向に並んで配置されている)。
経糸4は、フィラメント糸(長繊維糸)や、スパン糸(短繊維糸、紡績糸)の何れでも良く、フィラメント糸であれば、モノフィラメントやマルチフィラメントなどであったり、何も加工をしていないフィラメント糸(生糸)であっても構わない。
【0030】
経糸4の総繊度も、特に制限はないが、例えば、20d(デニール)以上1500d以下、好ましくは50d以上1000d以下、更に好ましくは100d以上600d以下(50d/30フィラメントや、50d/20フィラメントなど)であっても構わない。又、経糸4の単繊維繊度も、特に制限はないが、例えば、0.1d(デニール)以上1500d以下、好ましくは0.5d以上1000d以下、更に好ましくは1d以上600d以下であっても良い。
経糸4は、緯方向(緯糸5の長手方向である緯方向)において隣接するパイル糸3の間に配置されていても良く、隣接するパイル糸3の間において、経糸4は、複数の糸が引き揃えて配置されていても構わない。
【0031】
経糸4の素材も、同様に特に制限はないが、例えば、PETなどのポリエステル繊維や、コットン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、これらの交撚糸、混紡糸などでも良い。
又、経糸4の1インチに当りの本数も、特に制限はなく、例えば、10本以上30本以下(21本など)等であっても良い。
【0032】
<緯糸5>
図1~12に示したように、緯糸5は、製織される基布2における織幅方向又は緯糸5の長手方向5L(両方向、緯方向とも言う。)に沿って配置されている(換言すれば、製織方向に並んで配置されている)。
緯糸5は、縮れ及び/又はうねりが形成されたフィラメント糸(長繊維糸)であっても良く、この場合には、緯糸5はウーリー加工糸であるとも言え、その構成は、モノフィラメントやマルチフィラメントなどであっても構わない。
【0033】
ここで、本発明における「縮れ」とは、緯糸5において、捲縮している部分(螺旋状に丸まっている部分など)であり、クリンプとも言う。
又、本発明における「うねり」とは、緯糸5において、曲がりくねっている部分である。
【0034】
尚、上述した経糸4がフィラメント糸である場合、当該経糸4にも縮れやうねりが形成されていたり、当該経糸4には縮れやうねりは形成されていなくとも(経糸4が、何も加工をしていないフィラメント糸(生糸)であっても)良い。
緯糸5は、その他、スパン糸(短繊維糸、紡績糸)であっても良い。
緯糸5の総繊度も、特に制限はないが、例えば、20d(デニール)以上1500d以下、好ましくは50d以上1000d以下、更に好ましくは100d以上600d以下(50d/20フィラメントや、50d/30フィラメントなど)であったり、その他、綿番手の20番手単糸を2本撚り合わせた双糸(20/2)であっても構わない。又、緯糸5の単繊維繊度も、特に制限はないが、例えば、0.1d(デニール)以上1500d以下、好ましくは0.5d以上1000d以下、更に好ましくは1d以上600d以下であっても良い。
【0035】
緯糸5の素材も、同様に特に制限はないが、例えば、PETなどのポリエステル繊維や、コットン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、これらの交撚糸、混紡糸などでも良い。
又、緯糸5の打込み本数(製織方向1インチにおいて打ち込んだ緯糸5の本数)も、特に制限はなく、例えば、20本以上250本以下、好ましくは30本以上200本以下、更に好ましくは40本以上150本以下(130本)等であっても良い。
【0036】
このような緯糸5に対して、後述するパイル糸3は係止されており、パイル糸3が係止される緯糸5の本数は、特に限定はないが、例えば、各パイル糸3は、1本以上の緯糸5に対して係止されていたり、隣接する3本以上の緯糸5に係止されていても良い。
以下、隣接する3本以上の緯糸5に対してパイル糸3が係止されている場合における各種の緯糸5について述べる。
【0037】
<3本以上の緯糸5に対してパイル糸3が係止している場合の各種緯糸5>
図1~12(特に、図5)に示したように、緯糸5は、経糸4と製織されて基布2を構成するのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、これら一方側緯糸5aと他方側緯糸5bの間にある中間緯糸5mを有していても良く、これらの緯糸5a、5b、5mは、製織方向に並んで配置されていても良い。
ここで、一方側緯糸5aは、経糸4の長手方向4Lにおいて隣接する(前後する)3本以上の緯糸5のうち最も一方側にあり、且つ経糸4の下側又は上側に織り込まれた緯糸5であり、他方側緯糸5bは、経糸4の長手方向4Lにおいて隣接する(前後する)3本以上の緯糸5のうち最も後側にあり且つ経糸4の上側又は下側に織り込まれた緯糸5であり、中間緯糸5mは、経糸4の長手方向4Lにおいて隣接する(前後する)3本以上の緯糸5のうち上述した一方側緯糸5a及び他方側緯糸5b以外の緯糸5(一方側緯糸5aと他方側緯糸5bの間の緯糸5)である。
【0038】
一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5mは、その繊度(総繊度)が全て略同じであったり、逆に少なくとも2つが互いに異なっていても良く、又、一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5mは、その素材も、互いに同じであったり、逆に少なくとも2つが異なっていても構わない。
その他、各緯糸5a、5b、5mそれぞれに対しては、複数のパイル糸3が経糸4の長手方向4Lに沿って、1本以上(又は、0本)隣接した緯糸5に係止されたり、あるパイル糸3にとっては、一方側緯糸5aとなる緯糸5や、別のパイル糸3にとっては、他方側緯糸5bや、中間緯糸5mとなっても(兼用されていても)良い。
【0039】
尚、各緯糸5a、5b、5mの本数は、後述する1本のパイル糸3に対して、一方側緯糸5aや他方側緯糸5bは、それぞれ1本ずつであると言えるが、中間緯糸5mは、1本以上(1本や、2本、3本・・・など)であっても良い。
よって、各パイル糸3が係止する、製織方向に隣接する緯糸5(一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5m)の本数は、2本以上であるとも言え、特に、各パイル糸3が係止する製織方向に隣接する緯糸5が2本であれば、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本で、中間緯糸5mが0本となり、各パイル糸3が係止する製織方向に前後する緯糸5が3本以上であれば、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本で、中間緯糸5mが1本以上となる。
【0040】
<パイル糸3>
図1~12に示したように、パイル糸3は、上述した基布2に複数織り込まれている。
パイル糸3は、基布2に織り込まれているのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、ある経糸4と別の経糸4の間に挟まれて、製織方向に沿って複数配置されても良い。
【0041】
パイル糸3は、フィラメント糸(長繊維糸)や、スパン糸(短繊維糸、紡績糸)の何れでも良く、フィラメント糸であれば、モノフィラメントやマルチフィラメントなどであったり、何も加工をしていないフィラメント糸(生糸)であっても構わない。
以下、パイル糸3は、モノフィラメント糸であるとして述べる。
パイル糸3の繊度(総繊度)も、特に制限はないが、例えば、20d(デニール)以上3000d以下、好ましくは50d以上1000d以下、更に好ましくは100d以上600d以下であっても構わない。又、パイル糸3の単繊維繊度も、特に制限はないが、例えば、0.1d(デニール)以上1500d以下、好ましくは0.5d以上1000d以下、更に好ましくは1d以上600d以下であっても良い。
【0042】
パイル糸3の素材も、同様に特に制限はないが、例えば、PETなどのポリエステル繊維や、コットン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、これらの交撚糸、混紡糸などでも良く、その他、コットン繊維やレーヨン繊維などの非熱可塑性繊維を、ポリエステル繊維やナイロン繊維、アセテート繊維などの熱可塑性繊維と合糸したり、引き揃えたものであっても構わない。
又、パイル糸3の1インチに当りの本数も、特に制限はなく、例えば、10本以上100本以下であっても良い。
【0043】
このようなパイル糸3は、その先端(パイル先端3a)側が側面視で略コ字状である、及び/又は、その基端(パイル基端3b)側が側面視で基布2に対して略直立状である。
尚、パイル糸3は、ループパイルである。よって、1つのループパイル(パイル糸3のうちの1つのループパイル部分)において、上述したパイル基端3b側は、当該パイル糸3の立設方向に延びる部分(立設部3A、3B)が2本存在し、当該2本の立設部3A、3Bそれぞれが、側面視で基布2とのなす角(立設角)αが略90°であったり、当該立設角αが70°以上90°以下、好ましくは80°以上90°以下、更に好ましくは85°以上90°以下であっても良い。又、2本の立設部3A、3Bそれぞれの立設角αは、略同じであったり、それぞれが異なっていても良く、その他、2本の立設部3A、3Bそれぞれと基布2との間に丸い部分(側面視で略1/4円状の部分)を有していても構わない。
【0044】
一方、1つのループパイル部分におけるパイル先端3a側は、当該パイル糸3の立設方向(上下方向)に延びる部分(立設部3A、3B)が2本と、当該立設部3A、3Bの先端側それぞれから、基布2の表面と略平行(経方向、前後方向)に延びて、前後の立設部3A、3Bを連結する部分(連結部3C)が1つ(1本)存在し、当該2本の立設部3A、3Bそれぞれが、側面視で当該連結部3Cとのなす角(連結角)βが略90°であったり、当該連結角βが60°以上90°以下、好ましくは70°以上90°以下、更に好ましくは80°以上90°以下であっても良い。又、2本の立設部3A、3Bそれぞれと連結部3Cの連結角βは、略同じであったり、それぞれが異なっていても良く、その他、2本の立設部3A、3Bそれぞれと連結部3Cとの間に丸い部分(側面視で略1/4円状の部分)を有していても構わない。
その他、パイル糸3は、パイル先端3a側が側面視で略半円状であると同時に、パイル基端3b側が側面視で基布2に対して略直立状であっても良く、この場合、パイル糸3は、一方側の立設部3Aの先端(上端)部分から、連結部3Cを介し、他方側の立設部3Bの先端(上端)部分にかけて、側面視で略1/2円状となるとも言える。
【0045】
ここまで述べたパイル糸3それぞれ(各パイル糸3)は、上述したように、1本以上の緯糸5に係止されたり、経方向において隣接する3本以上の緯糸5に係止されても良い。
各パイル糸3が1本以上の緯糸5に対して係止されている場合のうち、各パイル糸3が1本のみに係止されている場合は、当該1本の緯糸5の下を通って係止されることとなる。この場合、各パイル糸3は、ルーズパイル(Loose Pile)を構成しているとも言える。又、この場合は、各パイル糸3は、経糸4には係止されていないとも言える。
【0046】
各パイル糸3が1本以上の緯糸5に対して係止されている場合のうち、パイル糸3が製織方向に隣接する(前後する)2本のみに係止されている場合は、当該2本の緯糸5の下を連続して通って係止されることとなる(仮に、当該2本の緯糸5のうち1本の緯糸5のみの下を通って係止された場合は、上述した1本の緯糸5のみに係止される場合となる)。この場合も、各パイル糸3は、ルーズパイルを構成しているとも言える。又、この場合も、各パイル糸3は、経糸4には係止されていないとも言える。
以下、隣接する3本以上の緯糸5に対してパイル糸3が係止されている場合における各種の緯糸5について述べる。
【0047】
又、各パイル糸3は、上述したように、製織方向に隣接する(前後する)3本以上の緯糸5(上述した一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5m)に対して、当該隣接する3本以上の緯糸5における1本又は複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本又は複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本又は複数本の緯糸5の下を通って係止されていても良い。
この場合、各パイル糸3は、ファストパイル(Fast Pile)を構成しているとも言える。又、この場合も、各パイル糸3は、経糸4には係止されていないと言える。
【0048】
各パイル糸3が3本以上の緯糸5に係止している場合を詳解すれば、各パイル糸3は、<1-1-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<1-1-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されたり、<1-2-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<1-2-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-1-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-1-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-2-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-2-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されても良い。
尚、各パイル糸3はループパイルであるため、パイル糸3が途中で切断されることで、各パイル糸3において基布2から突出した部分(パイル片部分)を有さない。尚、各パイル糸3のループパイル部分は、上下方向に延びる部分(つまり、一方側(前側)立設部3Aと、他方側(後側)立設部3B)と、経方向(前後方向)に延びて前後の立設部3A、3Bを連結する部分(つまり、連結部3C)を有しているとも言える。
【0049】
各パイル糸3(ループパイル部分)の上下長さ(パイル長)とは、これら各ループパイル部分における立設部3A、3Bそれぞれの上下方向の長さであって、特に制限はないが、例えば、0.1mm以上30.0mm以下、好ましくは0.5mm以上20.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以上10.0mm以下(3.5mmや、3.41mmなど)であっても良い。
又、各パイル糸3(ループパイル部分)の経方向長さ(前後長さ)とは、これら各ループパイル部分における連結部3Cの経方向の長さであって、特に制限はないが、例えば、0.1mm以上10.0mm以下、好ましくは0.3mm以上7.0mm以下、更に好ましくは0.5mm以上5.0mm以下(2.0mmなど)であっても良い。
【0050】
ここからは、各パイル糸3が3本以上の緯糸5に係止する場合における緯糸5全体の本数・中間緯糸5mの本数と、各パイル糸3における中間部3Mとの関係について、以下に述べる。
緯糸5全体の本数が3本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は1本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する(前後する)3本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、その後に1本の中間緯糸5mの上を通り、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなる。
【0051】
又、緯糸5全体の本数が4本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は2本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する4本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5bと、2本の中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、例えば、その後に2本の中間緯糸5mの上を纏めて通り、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなっても良い。
以下同様に、緯糸5全体の本数が5本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は3本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する5本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5bと、3本の中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、例えば、その後に1本の中間緯糸5mの上を通る毎に1本の中間緯糸5mの上を通り(3本の中間緯糸5mのうち、最も一方側の中間緯糸5mの上を通り、その後に製織方向中央の中間緯糸5mの下を通り、その後に最も他方側の中間緯糸5mの上を通り)、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなっても良い。
【0052】
更に、緯糸5全体の本数が6本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は4本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する6本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5bと、4本の中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、例えば、その後に2本の中間緯糸5mの上を通る毎に2本の中間緯糸5mの上を通り(4本の中間緯糸5mのうち、最も一方側の中間緯糸5mと製織方向中央における一方側の中間緯糸5mの上を纏めて通り、その後に製織方向中央における他方側の中間緯糸5mと最も他方側の中間緯糸5mの上を纏めて通り)、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなっても良い。
その他、緯糸5全体の本数が7本以上である場合も同様である。
【0053】
<パイル織物1の製造方法、織成工程S1、熱処理工程S2>
図3、4、8~13等に示すように、本発明の実施形態に係るパイル織物1の製造方法は、ここまで述べた基布2にパイル糸3が織り込まれたパイル織物1の製造方法(以下、「当該製造方法」とも言う)である。
当該製造方法は、織成工程S1と熱処理工程S2を備えている(織成工程S1と熱処理工程S2のみを備えた当該製造方法を、第1実施形態とする)。
その他、当該製造方法は、溶解工程S3を備えていても良い(織成工程S1と熱処理工程S2の他に、溶解工程S3も備えた当該製造方法を、第2実施形態とする)。
【0054】
織成工程S1は、経糸4と緯糸5をそれぞれ有した表基布2a及び裏基布2bの間を、2本以上の緯糸5に係止された連結糸3’で連結して、基布2とパイル糸3を織成する工程である。
又、熱処理工程S2は、上述した織成工程S1の後に、表基布2a、及び/又は、裏基布2bを熱処理する工程である。
【0055】
当該製造方法は、上述した織成工程S1や熱処理工程S2を備えることによって、連結糸3’を、先端側が側面視で略コ字状である、及び/又は、基端側が側面視で基布2に対して略直立状であるパイル糸3に形成する。
【0056】
<溶解工程S3>
溶解工程S3は、緯糸5が可溶性繊維を含み、可溶性繊維を溶解させる工程である。
ここで、本発明における「緯糸5が可溶性繊維を含む」とは、複数本の緯糸5のうち、可溶性繊維のみを有した緯糸(謂わば、可溶緯糸5’)を1本以上含むことや、複数本の緯糸5のうち、1本以上の緯糸5が、少なくとも可溶性繊維を含むこと等を意味する。
以下、可溶性繊維を含む緯糸5は、主に、可溶性繊維のみを有した可溶緯糸5’であるとして述べる。
【0057】
尚、可溶緯糸5’等の可溶性繊維を含む緯糸5は、フィラメント糸(長繊維糸)や、スパン糸(短繊維糸、紡績糸)の何れでも良く、フィラメント糸であれば、モノフィラメント(謂わば、可溶性モノフィラメント糸)や、マルチフィラメント(謂わば、可溶性マルチフィラメント糸であっても)などであったり、縮れやうねりが形成されたフィラメント糸であったり、何も加工をしていないフィラメント糸(生糸)であっても構わない。
又、本発明における「可溶性繊維」とは、溶解が可能である繊維であり、例えば、水による溶解が可能な水溶性繊維(水溶性ビニロン(PVA)繊維など)であっても良い。
この場合、水溶性繊維が溶解し始める水の温度は、特に限定はないが、例えば、60℃であったり、30℃、55℃、70℃、80℃、90℃、95℃などであっても構わない。
【0058】
その他、本発明における「可溶性繊維」としては、熱処理等により所定の温度(融点)で溶解する合成繊維であっても良く、例えば、低融点PETなどのポリエステル繊維であったり、低融点PEや低融点PPなどのポリオレフィン繊維であっても構わない。
この場合、合成繊維である可溶性繊維が溶解し始める温度は、特に限定はないが、例えば、96℃~100℃であったり、110℃などであっても構わない。
【0059】
可溶緯糸5’等の可溶性繊維を含む緯糸5の繊度(総繊度)も、特に制限はないが、例えば、20d(デニール)以上1500d以下、好ましくは50d以上1000d以下、更に好ましくは100d以上600d以下であっても構わない。又、可溶性繊維を含む緯糸5の単繊維繊度も、特に制限はないが、例えば、0.1d(デニール)以上1500d以下、好ましくは0.5d以上1000d以下、更に好ましくは1d以上600d以下であっても良い。
又、可溶緯糸5’等の可溶性繊維を含む緯糸5を有している場合、当該可溶性繊維を含む緯糸5の1インチに当りの本数も、特に制限はなく、例えば、1本以上20本以下であっても良い。
【0060】
ここまで述べた可溶緯糸5’等の可溶性繊維を含む緯糸5は、上述した表基布2aと裏基布2bの少なくとも一方において、連結糸3’(パイル糸3)が係止する緯糸5の少なくとも一部に用いられていても良い。
当該製造方法が溶解工程S3を備える場合、当該製造方法における各工程の順番は、上述した熱処理工程S2の後であっても良く、詳解すれば、織成工程S1、熱処理工程S2、溶解工程S3の順であったり、織成工程S1、溶解工程S3、熱処理工程S2であっても構わない。
【0061】
このような溶解工程S3の後において、表基布2aと裏基布2bのうち、一方のみを、パイル織物1とし、他方は、パイル糸3を有さず、パイル織物1とはしない(謂わば、捨て基布とする)とし(謂わば、分離工程(パイル織物1と捨て基布との分離工程)S4とし)ても良い。
又、溶解工程S3の後において、溶解された可溶緯糸5’の前後(経方向)に隣接する緯糸5(中間緯糸5m等)が、可溶緯糸5’があった場所寄りにずれても良く(図8~11(b)等参照)、分離された後のパイル糸3におけるループパイル部分は、可溶緯糸5’に係止していた跡が消え、略矩形状等となっても構わない(図1~5等参照)。
更に、溶解工程S3の後において、表基布2aと裏基布2bを分離(こちらも謂わば、分離工程(表基布2a側のパイル織物1と裏基布2b側のパイル織物1との分離工程))S4して、当該表基布2aと裏基布2bの両方を、パイル織物1としても良く(図3、4参照)、この場合の実施例を以下に示す。尚、本発明の実施形態に係るパイル織物1の製造方法は、織成工程S1と熱処理工程S2と溶解工程S3の他に、分離工程S4も備えた当該製造方法を、第3実施形態とする。
【0062】
<織成・熱処理工程S1’等>
その他、ここまで述べた第1~3実施形態において、上述した織成工程S1と熱処理工程S2が1つの工程となった織成・熱処理工程S1’を備えていても良い。
詳解すれば、織成・熱処理工程S1’は、経糸4と緯糸5をそれぞれ有した表基布2a及び裏基布2bの間を、2本以上の前記緯糸5に係止された連結糸3’で連結して、前記基布2とパイル糸3を織成し、且つ、織成した前記表基布2a、及び/又は、織成した前記裏基布2bを熱処理する構成である。
【0063】
尚、第1実施形態における織成工程S1と熱処理工程S2が1つの織成・熱処理工程S1’となった場合、第1実施形態の変形例であると言え、この第1実施形態の変形例は、織成・熱処理工程S1’のみを備えることとなる。
以下同様に、第2実施形態における織成工程S1と熱処理工程S2が1つの織成・熱処理工程S1’となった場合、第2実施形態の変形例であると言え、この第2実施形態の変形例は、織成・熱処理工程S1’と溶解工程S3を備えることとなり、第2実施形態の変形例における各工程の順番は、織成・熱処理工程S1’、溶解工程S3の順となる。
又、第3実施形態における織成工程S1と熱処理工程S2が1つの織成・熱処理工程S1’となった場合、第3実施形態の変形例(図13(d)参照)であると言え、この第3実施形態の変形例は、織成・熱処理工程S1’と溶解工程S3と分離工程S4を備えることとなり、第3実施形態の変形例における各工程の順番は、織成・熱処理工程S1’、溶解工程S3、分離工程S4の順となる。
【0064】
<実施例>
図6~12に示したように、パイル糸3が係止している緯糸5が3本(中間緯糸5mが1本)であり、且つ、18本の緯糸5で1つの完全組織となる場合、これら18本の緯糸5に1~18までの番号を仮に付けたとすると、パイル糸3のうち、各立設部3A、3Bのうち、一方側(前側)立設部3Aが、裏基布2bの「最前部と略中央部(例えば、1番、10番)」の緯糸5(一方側緯糸5a)から立設するパイル糸3を、パイル糸3-1とし、以下同様に、一方側立設部3Aが、裏基布2bの「前部と後部(例えば、4番、13番)」の一方側緯糸5aから立設するパイル糸3を、パイル糸3-2とし、一方側立設部3Aが、表基布2aの「最前部と略中央部(例えば、1番、10番)」の緯糸5(一方側緯糸5a)から立設するパイル糸3を、パイル糸3-3とし、一方側立設部3Aが、表基布2aの「前部と後部(例えば、4番、13番)」の一方側緯糸5aから立設するパイル糸3を、パイル糸3-4とする。
又、図6、7のW-W矢視(つまり、図12)で、裏基布2bにおいて、パイル糸3-1、3-3それぞれを両側(緯糸5の長手方向5L両側)から挟み且つ他方側緯糸5bの上を通る経糸を、経糸4b-2、4b-3とし、パイル糸3-2、3-4それぞれを両側から挟み且つ他方側緯糸5bの下を通る経糸を、経糸4b-1、4b-4とする。
更に、図6、7のW-W矢視で、表基布2aにおいて、パイル糸3-1、3-3それぞれを両側から挟み且つ緯糸5(一方側緯糸5a、他方側緯糸5b、中間緯糸5m及び可溶緯糸5’の何れでもない緯糸)の上を通る経糸も、経糸4b-2、4b-3とし、パイル糸3-2、3-4それぞれを両側から挟み且つ緯糸5の下を通る経糸も、経糸4b-1、4b-4とする。
尚、図12(a)、(b)に示したように、W-W矢視(経糸4の長手方向視を示す側断面視)において、上述したパイル糸3-1~4は、表基布2aと裏基布2bから互い違いに立設しており、表基布2aと裏基布2bに分離した後、裏基布2bからは、パイル糸3-1、3-3が立設し、表基布2aからはパイル糸3-2、3-4が立設することとなる。又、織成工程S1における連結糸3’が、各パイル糸3における立設部3A、3Bを構成するとも言える。
【0065】
<支持部材>
本発明に係る支持部材は、ここまで述べたパイル織物1と、弾性材とを有していて、固化可能な構造体を支持する部材である。
支持部材において、パイル織物1は、基布2が弾性材の弾性変形に応じて(弾性変形に追従して)変形可能に、弾性材の外面に固定されている。
【0066】
その他、支持部材は、上述した弾性材の下面(下方側)に保護材を有していても良い。
このような支持部材が支持する固化可能な構造体について、まず詳解する。
【0067】
<固化可能な構造体>
固化可能な構造体は、上述した支持部材に支持されるものである。
固化可能な構造体の素材は、セメントやコンクリートなどのセメント系固化材で構成されていたり、その他、アスファルトなど、固化可能(又は、硬化可能)な何れの素材で構成されていても良い。
【0068】
固化可能な構造体は、その形状も特に限定はないが、例えば、長手方向を有し、断面形状(長手方向視の断面形状)が略台形のブロック体(略棒状のマクラギなど)であったり、平面視形状が略矩形や略正方形状のプレート体やタイル体などであっても良い。尚、固化可能な構造体がマクラギである場合、マクラギである当該構造体は、左右に離間した左右一対のレール固定部を備え、左右一対のレール固定部の上部には、左右の各レールの下方部(基部)両側に取り付けられるレール固定具が設けられていても良い。又、マクラギである当該構造体の底部(下方側)には、マクラギである当該構造体を支持する支持部材が接合(固定)される。その他、マクラギである当該構造体は、ピアノ線や鋼棒(PC鋼棒)等が、芯材として入っていても良い。
このような固化可能な構造体1つに対して、1つの支持部材で支持していても良いが、その他、1つの固化可能な構造体を2つ以上の支持部材で支持したり、2つ以上の固化可能な構造体を1つの支持部材で支持したり、2つ以上の支持部材を2つ以上の支持部材で支持して(例えば、長手方向を有した固化可能な構造体を、長手方向を有した支持部材が、当該長手方向に沿って互い違いにズレながら支持して)も構わない。
【0069】
ここまで述べた固化可能な構造体に対して、支持部材におけるパイル織物1のパイル糸3が、当該固化可能な構造体が固化する前(例えば、固化可能な構造体がコンクリート製のマクラギである場合には、コンクリート製のマクラギである当該構造体が生コンクリートである状態の間)に埋没(埋設、言わば、anchoring)し、当該固化可能な構造体が固化した後には、その固化可能な構造体から、パイル織物1のパイル糸3(つまり、支持部材)が抜け難く(剥離し難く)なっている、又は、抜ける(剥離する)ことはない。
このような固化可能な構造体を支持する支持部材の弾性材について、以下に詳解する。
【0070】
<弾性材>
弾性材は、略板状であり、弾力性を有し、その他、衝撃・振動吸収性能を有していても良い。
弾性材の素材は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やポリウレタン等の発泡体から構成されていたり、ポリウレタンを所定の発泡倍率に発泡成形したポリウレタンフォームで構成されていても良い。
【0071】
弾性材は、その形状も特に限定はないが、例えば、固化可能な構造体がマクラギである場合、マクラギである当該構造体の底面(下面)より、平面視で、一回り小さい相似形であっても良く、マクラギである当該構造体の底面から食み出し難くなっているとも言える。
尚、弾性材の厚さや強度も、特に限定はないが、例えば、固化可能な構造体がマクラギである場合、レール上を通過する電車や列車の荷重がマクラギである当該構造体を介して弾性材に加わっても圧潰又は破損しない厚さや強度であっても良い。
【0072】
このような弾性材に対して、上述したパイル織物1は、予め成形した弾性材の外面(上外面)に接着剤によって基布2を接着することで、当該弾性材に固定されていても良い。このような場合、接着剤が、ポリウレタンフォーム等である弾性材に含浸して接着すると同時に、基布2を形成する経糸4や緯糸5であったり、パイル糸3における基布2の裏面(下面)に露出した部分に含浸して接着するとも言える。
その他、弾性材がポリウレタンフォームである場合、当該弾性材を成形する型(かた)に、パイル織物1を配置した状態で、弾性材を発泡成形することで、ポリウレタンの接着力によってパイル織物1を弾性材の外面(上外面)に固定(接着)しても良い。
【0073】
<保護材>
保護材は、弾性材の下面(下方側)を被覆するシート状物である。
保護材の素材は、例えば、ポリプロピレン(PP)繊維や、ポリエチレン(PE)繊維などのポリオレフィン系の合成樹脂繊維で構成された不織布であっても良い。
【0074】
<支持部材の製造方法>
本発明に係る支持部材の製造方法は、上述した製造方法により製造されたパイル織物1と、上述した弾性材とを有する。
当該支持部材の製造方法は、パイル織物1を、基布2が前記弾性材の弾性変形に応じて変形可能に、弾性材の外面に固定させる固定工程と、パイル織物1のパイル糸3を、固化可能な構造体に埋没させる埋没工程を備えている。
その他、支持部材の製造方法は、パイル織物1のパイル糸3を、固化可能な構造体に埋没させた状態で、当該固化可能な構造体を固化させる固化工程を備えていても良い。
【0075】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。パイル織物1、パイル織物1の製造方法等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
パイル織物1は、上述した織成工程S1や熱処理工程S2を有した当該製造方法以外の方法によって製造されていても良い。
パイル糸3それぞれは、隣接する複数本の緯糸5に対して、当該複数本の緯糸5の下を纏めて通って係止されていても良い。
この場合も、各パイル糸3は、ある意味、ルーズパイル(Loose Pile)を構成しているとも言える。又、この場合も、各パイル糸3は、経糸4には係止されていないと言える。
【0076】
パイル糸3それぞれが隣接する複数本の緯糸5に対して係止された場合において、「当該隣接する複数本の緯糸5における1本又は複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する複数本の緯糸5における別の1本又は複数本の緯糸5の上を通った後」とは、当該隣接する複数本の緯糸5において、1番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、1番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通り、2番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、2番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通り、3番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、3番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通り・・・、n番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、n番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通る際、1番目、2番目、3番目・・・n番目に下や上を通る緯糸5の本数は、全て同じでも良いが、それぞれが全て異なっていたり、2つだけ同じであったり、3つだけ同じである等でも構わない。
経糸4は、緯方向において隣接するパイル糸3の間に、1本ずつ配置されていても良い。
【0077】
基布2の裏面に、アクリル樹脂系接着剤などの合成樹脂を塗布して、バックコーティング(バッキング)していても良い。尚、図1、2における基布2の裏面には、バックコーティングはしていない。
パイル織物1の製造方法は、上述したように、基布2の裏面にアクリル樹脂系接着剤などの合成樹脂を塗布して、バックコーティング(バッキング)するバッキング工程を備えていても良い。
尚、当該バッキング工程と、上述した溶解工程S3及び分離工程S4を備える場合、当該製造方法における各工程の順番は、織成工程S1、熱処理工程S2(又は、織成・熱処理工程S1’)、溶解工程S3、分離工程S4、バッキング工程の順であったり、織成工程S1、熱処理工程S2(又は、織成・熱処理工程S1’)、バッキング工程、溶解工程S3、分離工程S4であったり、織成工程S1、溶解工程S3、熱処理工程S2、分離工程S4、バッキング工程の順であったり、当該製造方法が当該バッキング工程を備えているものの、溶解工程S3及び分離工程S4を備えていなければ、織成工程S1、熱処理工程S2(又は、織成・熱処理工程S1’)、バッキング工程の順であったり、当該バッキング工程を備えているものの、溶解工程S3と分離工程S4の何れか一方を備えていなければ、織成工程S1、熱処理工程S2(又は、織成・熱処理工程S1’)、溶解工程S又は分離工程S4、バッキング工程の順であったり、織成工程S1、熱処理工程S2(又は、織成・熱処理工程S1’)、バッキング工程、溶解工程S又は分離工程S4の順等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るパイル織物、及び、パイル織物の製造方法により製造されたパイル織物は、パイル糸3(パイルループ部分)が略矩形状等である(謂わば、尖らない)ため、人の体に触れるブラシに用いたり、浴室等における履物(草履など)の裏面や、履物の中敷き(パイル糸が人の足裏に当たる部材)、面ファスナ等に用いるなど一般的なパイル織物としての用途の他、産業資材用途など何れの製品にも利用可能である。
本発明に係る支持部材、及び、支持部材の製造方法により製造された支持部材は、固化可能な構造体を支持する用途の他、産業資材用途など何れの製品にも利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 パイル織物
2 基布
2a 表基布
2b 裏基布
3 パイル
3’ 連結糸
4 経糸
5 緯糸
S1 織成工程
S1’ 織成・熱処理工程
S2 熱処理工程
S3 溶解工程
図1
図2
図3
図4
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