(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178745
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】無線給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/50 20160101AFI20221125BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20221125BHJP
【FI】
H02J50/50
H02J50/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085768
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄基
(57)【要約】
【課題】無線給電を行うエリアにおける現場環境に対応して最適な無線給電を実現できるとともに、無線給電の電波に対する人体の悪影響も回避する。
【解決手段】固定受電部200は固定送電部210より発信した電波を移動送受電部200を経由して受信する無線給電システムにおいて、無線給電を乱す原因となる電波阻害要因230が発生した場合に、自律制御機能273は、電波阻害要因230の位置情報を無線給電エリアに配置させたカメラ271、センサ272により取得し、無線給電の通電状態を予めマッピングさせた表示装置282に表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ、センサ及び自律制御機能をそれぞれ搭載した移動送受電部、固定送電部及び固定受電部を有し、前記固定受電部は前記固定送電部より発信した電波を前記移動送受電部を経由して受信するものであり、
外部に接続するための機器として入力端末及び表示装置を有する無線給電システムにおいて、
無線給電を乱す原因となる電波阻害要因が発生した場合に、前記自律制御機能は、前記電波阻害要因の位置情報を無線給電エリアに配置させた前記カメラ、前記センサにより取得し、無線給電の通電状態を予めマッピングさせた前記表示装置に表示させる無線給電システム。
【請求項2】
前記電波阻害要因が送電及び受電環境を阻害する要因となると判断された場合に、前記自律制御機能は、前記電波阻害要因の位置、種類、大きさより演算された無線給電の初期通電状態からの電波強度の変化量に基づいて、前記移動送受電部を移動するか否かを決定する請求項1記載の無線給電システム。
【請求項3】
前記電波阻害要因が送電及び受電環境を阻害する要因となると判断された場合に、前記自律制御機能は、前記電波阻害要因の種類、電波強度の変化量の情報を基に送信電力制御を行う請求項1記載の無線給電システム。
【請求項4】
前記電波阻害要因が送電及び受電環境を阻害する要因となると判断された場合に、前記自律制御機能は、前記電波阻害要因の位置、種類、電波強度の変化量の情報を基に位相制御を行う請求項1記載の無線給電システム。
【請求項5】
前記電波阻害要因が送電及び受電環境を阻害する要因となると判断された場合に、前記自律制御機能は、予め設定した別の電波伝搬経路に変更する請求項1記載の無線給電システム。
【請求項6】
前記入力端末から入力された前記無線給電エリアにおける現場作業の計画及び情報に基づき、前記自律制御機能が最適な無線給電環境を構築する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無線給電システム。
【請求項7】
前記カメラ、前記センサ及び前記自律制御機能により、前記電波阻害要因が人であると判定された場合には、前記固定送電部に対して無線給電のための前記電波の送信を停止するための指令を発信する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線給電システム。
【請求項8】
前記センサとして、無線給電の電波強度を測定する電波強度センサを用い、前記電波強度センサが前記電波阻害要因を検知するとともに、前記電波阻害要因の判定を行う請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、無線給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術又はインターネット技術の発達に伴い、モノのインターネット(IOT:INTERNET OF THINGS)が広がっており、これに伴い無線給電に関する技術の向上も進められている。原子力発電所においても、無線給電を利用することにより、発電所内に多数敷設されている動力ケーブルを削減することができる。これによりコストを低減できるとともに、火災を抑制し、安全性を向上させることができる。
【0003】
従来の無線給電システムにおいては、送電部及び受電部の制御動作を検出して、無線給電のための電波(ビーム)を安全状態に切り替える誤動作検出システムがあった。又人に対する所定の安全レベルを超えるビーム強度による出力を防止するシステムがあった。これらのシステムにより、無線給電の安定性及び人体に対する安全性を確保する無線給電のための安全監視技術を実現していた。しかし無線給電を行う環境を考慮し、又は人の行動の制約を受けながら十分な給電時間を確保することができなかった。
【0004】
例えば、無線給電システムにおける送電部及び受電部の制御ユニットにおいて、様々なプロセス値を取得できるセンサにより、所定のパラメータについて一つ以上の望ましくない状況になった場合には、ビーム生成器を安全状態に切り替える誤動作検出システムが開示されている。更に無線給電システムから、人がアクセスすることのできる放出レベルの所定閾値を超える確率を検出し、確率が閾値を超えた場合に安全状態に切り替えるハザード検出システムを有する安全監視技術が開示されている(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の無線給電システムにおいては、送電部及び受電部の制御動作を検出して、無線給電の電波(ビーム)を安全状態に切り替える誤動作検出システムがあった。更には人に対する所定の安全レベルを超えるビーム強度での出力を防止するシステムがあった。そしてこれらのシステムにより、無線給電の安定性及び人体への安全性を確保する無線給電のための安全監視技術を実現していた。しかし無線給電エリア内の人の行動又は一時的な現場作業などによる外的要因に対して最適な給電環境をその都度構築できるシステムはなかった。従って無線給電エリアの状況によっては無線給電のための電波の伝搬が阻害されることがあり、安定して給電を継続することが出来ない等の問題点があった。
また、人が無線給電の阻害要因となった場合、無線給電が安定して行われなくなるという問題点もあった。
【0007】
本願は上記のような課題を解決するためになされたものであり、無線給電を行うエリアにおける現場環境(人又は物)に対応して最適な無線給電を実現できるとともに、無線給電の電波に対する人体の悪影響も回避することができる無線給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される無線給電システムは、カメラ、センサ及び自律制御機能をそれぞれ搭載した移動送受電部、固定送電部及び固定受電部を有し、前記固定受電部は前記固定送電部より発信した電波を前記移動送受電部を経由して受信するものであり、外部に接続するための機器として入力端末及び表示装置を有するものであつて、
無線給電を乱す原因となる電波阻害要因が発生した場合に、前記自律制御機能は、前記電波阻害要因の位置情報を無線給電エリアに配置させた前記カメラ、前記センサにより取得し、無線給電の通電状態を予めマッピングさせた前記表示装置に表示させる無線給電システム。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される無線給電システムによれば、無線給電を行うエリアにおける現場環境(人又は物)に対応して最適な無線給電を実現できるとともに、無線給電の電波に対する人体の悪影響も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1による原子力発電所における無線給電システムの構成を示す概略システム図である。
【
図2】実施の形態1による原子力発電所における無線給電システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態2による原子力発電所における無線給電システムの構成を示す概略システム図である。
【
図4】実施の形態2による原子力発電所における無線給電システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態は、建屋内部において人の往来があり、様々な現場作業が行われる原子力発電所における無線給電システムの環境の構築を実現するためのものである。特に無線給電の安定性、及び安全性を向上させるためのシステムに関するものである。以下、実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、実施の形態1による原子力発電所における無線給電システムの構成を示す概略システム図である。本実施の形態における無線給電方式としては、マイクロ波発振器で生成された微小マイクロ波(電波)を照射することにより電力を搬送するマイクロ波給電方式を想定している。マイクロ波給電方式は、マイクロ波を電力の輸送媒体として使うことにより、遠方に無線で電力を送電することができ、ビームの制御性にも優れていることを特色としている。
【0012】
原子力発電所における無線給電システムのシステム構成として、カメラ271、センサ(熱センサ)272、自律制御機能273をそれぞれ搭載した移動送受電部200、固定送電部210及び固定受電部220がある。又外部に接続するための機器として入力端末281、表示装置282を有している。又システム全体を制御するための全体制御システム291を有している。ここで自律制御機能273とは、無線給電状態確認部、障害物情報判定部、異常判定部、移動可能範囲判定部、自装置位置制御部及び他装置位置制御要請部を有するものであり、後述の
図2に示す動作を実現するためのものである。
【0013】
無線給電状態確認部は、新たな障害物の発生による給電状態への影響を確認するものである。障害物情報判定部は、カメラ又は各センサからの情報、及び予め入力端末281より入力された障害物になり得るものの物性情報に基づき、障害物の種類及び発生した位置を判定するものである。異常判定部は、上記の新たに発生した障害物の情報により、予め計画されていた障害物情報に基づく給電経路を変更する必要があると判定するものであり、変更する場合には、以下の部位により最適な給電経路の再構築を実施させ、同時に表示装置282に対して注意警報を発信するものである。移動可能範囲判定部は、当該エリア(移動可能範囲250)における移動送受電部200の移動可能範囲を判定するものである。自装置位置制御部は、移動可能な範囲内で最適な給電経路を生成するための位置に移動を制御するものである。他装置位置制御要請部は、移動送受電部200において最適な給電経路を生成できない場合、他のエリア(移動可能範囲251、
図1の点線で囲われている部分)の移動送受電部200Aの位置制御部に支援信号を伝送し、給電経路生成のための支援を要請するものである。
【0014】
原子力発電所における無線給電システムにおいては、入力端末281から入力された該当する無線給電エリアにおける現場作業の計画及び情報(作業に従事する作業員の人数、詳細作業エリア、使用する機材(物)、作業開始及び終了時間、作業完了後に生じ得る機器配置変更情報)に基づき、移動送受電部200、固定送電部210及び固定受電部220に実装されている自律制御機能273の機能が実行され、最適な無線給電環境を構築し、電波(ビーム)の方向及び移動送受電部200の配置を最適化する。尚入力端末281からは、移動送受電部200、固定送電部210及び固定受電部220に対して給電エリアの詳細情報が送信され、移動送受電部200から入力端末281に対しても移動送受電部200の位置情報又はカメラ271からの給電エリアの状態(映像)情報が送信される(記号B、C、D、E)。
【0015】
移動送受電部200、固定送電部210及び固定受電部220には、それぞれカメラ271、熱センサ272、自律制御機能273が搭載されており、入力端末281から自律制御のために伝送される無線給電エリアの情報以外に、計画外の障害物などが発生した場合にはそれを検知し、自律制御機能273の機能により優先的に最適な送電及び受電環境に書き換えるようにする。
固定受電部220は、固定送電部210より発信したマイクロ波を移動送受電部200を経由して受信する。無線給電においては、送電部と受電部でマイクロ波の送受を行うという一般的な構成に基づくものである。
【0016】
移動送受電部200においては、入力端末281から自律制御のために伝送される無線給電エリアの情報に基づき最適な配置を決定する。更に必要に応じて、予め定められた移動可能範囲250に配備された移動送受電部200のみで最適な給電環境が構築できない場合には、別の移動可能範囲251において優先度の低い給電経路に用いられ、あるいは予備品として待機状態にある移動送受電部200Aを移動させ(矢印X)、最適な給電環境を構築する。
【0017】
表示装置282は、無線給電エリアにおいて、移動送受電部200、固定送電部210及び固定受電部220に搭載されたカメラ271、熱センサ272、自律制御機能273により電波阻害要因(人あるいは物)230を検知した場合に、該当する給電エリアにおいて電波阻害要因230が発生したことを注意警報として表示させ(記号F)、該当する無線給電エリア及び中央制御室の作業員及び運転員に対して注意喚起を行う。また移動送受電部200より、移動送受電部200の現在位置情報についても受信し、端末上に表示させ、確認することを可能とする。表示装置282は移動端末を有している。
【0018】
該当する無線給電エリアにおいて、移動送受電部200、固定送電部210及び固定受電部220に搭載されたカメラ271、熱センサ272、自律制御機能273においては、特に熱センサ272により電波阻害要因230の温度分布が人のものであると判定した場合には、固定送電部210に対して無線給電の電波の送信を緊急に停止するための指令を、表示装置282への注意警報Fと同時に発信する。
移動送受電部200は、当該及び近接の無線給電エリアとの間で無線通信により常時互いの状態情報を共有しており、移動送受電部200に異常が発生した場合には、優先度の低い給電経路もしくは予備品として待機している別の移動送受電部200Aを移動可能範囲251より移動させ(矢印X)、最適な無線給電環境を維持する(矢印Yに示すように、移動送受電部200の代わりに移動送受電部200Aを採用する)。
【0019】
次に上記に示した無線給電システムの動作について
図2のフローチャートに基づき詳しく説明する。無線給電システムの動作は、
図2のフローチャートにおいて開始1と定義したフローから実行する。入力端末281より、該当する無線給電エリアにおける現場作業の計画及び情報(作業に従事する作業員の人数、詳細作業エリア、使用する機材(物)、作業開始及び終了時間、作業完了後に生じ得る機器配置の変更情報)を入力する(ステップS100、
図1の記号B)。この現場作業の計画及び情報より、自律制御機能273は計画している作業のエリアが、無線給電対象機器の近傍かどうかを、無線給電の通電状態(マイクロ波伝搬状態)を予めマッピングしたエリアのデータと照合し、判断する(ステップS101)。ステップS101の照合により、作業エリアが無線給電対象機器の近傍になく、無線給電経路を阻害しないと判断した場合は処理を終えて終了する。
【0020】
次に、ステップS101で作業のエリアが無線給電対象機器の近傍であり、無線給電経路が阻害されると判断した場合には、全体制御システム291は障害物の位置、種類(人又は物)、大きさより無線給電の初期通電状態からの電波強度の変化量を演算する。即ち、固定受電部220で観測される固定受電部220に到達時のマイクロ波の電波強度と、固定送電部210で設定したマイクロ波の初期電波強度とを比較することにより、初期通電状態からの電波強度の変化量を演算する(ステップS102)。この演算結果に基づき、給電電波が回折により対象機器への給電経路が維持できるかどうかを判断する(ステップS103)。電波強度の変化量を演算した結果、固定受電部220で観測される固定受電部220に到達時のマイクロ波の電波強度が、設定した電波強度閾値を上回っている場合には、給電電波が、回折により対象機器への給電経路を維持され得ると判断し、処理を終えて終了する。
【0021】
ステップS103で給電電波が回折により対象機器への給電経路を維持できないと全体制御システム291が判断した場合には、移動送受電部200の移動により給電経路の構築が可能かを、マッピングしたエリアのデータと照合し判断する(ステップS104)。該当する無線給電エリア内の移動送受電部200の移動により、最適な無線給電経路の構築が可能な場合には、作業開始及び終了時間の情報より、給電経路初期状態への自動復帰時間を入力端末281で設定する(ステップS107)。ここで自動復帰時間とは、現場作業によって変更されていた給電経路を元の状態に自動的に戻す時間(時刻)をいう。即ち、現場作業を考慮して変更された給電経路が継続した状態にならないようにする。これにより現場環境に則した最適な無線給電環境の構築が可能となり、即ち移動送受電部200を移動させ、電波強度及び方向制御を開始する(ステップS108)。
【0022】
次に、ステップS104において、該当する無線給電エリア内の移動送受電部200の移動により、最適な無線給電経路の構築ができないと判断した場合には、該当する無線給電エリアと近接する無線給電エリア内の移動送受電部200Aの移動により、給電経路構築が可能か否かを、マッピングしたエリアのデータと照合し、判断する(ステップS105)。近接の無線給電エリア内の移動送受電部200Aの移動により、最適な無線給電経路の構築が可能な場合には、上記と同様、作業開始及び終了時間の情報より、給電経路初期状態への自動復帰時間を入力端末281上で設定し(ステップS107)、現場環境に則した最適な無線給電環境を構築し、即ち移動送受電部200を移動させ、電波強度及び方向制御を開始する(ステップS108)。
【0023】
次に、ステップS105において、近接の無線給電エリア内の移動送受電部200Aの移動により最適な無線給電経路の構築ができないと判断した場合には、該当する無線給電エリアで計画されている現場作業により、無線給電が完全に阻害されてしまい、即ちビーム方向制御又は移動送受電部の移動による最適給電経路の構築ができないこととなるため、全体制御システム291より、作業計画及び作業情報の変更案をユーザに対して提示する(ステップS106)。作業計画及び作業情報の変更案を、入力端末281に表示させることにより作業員に通知する。本システムにより提示された変更案に基づく入力情報の変更により、再度最適な無線給電環境の構築のための一連の処理(ステップS101~105)を実行する。
【0024】
以上ステップS100において、入力端末281より入力された該当する無線給電エリアにおける現場作業の計画及び情報に基づいて、無線給電エリアにおける最適な無線給電環境を構築する場合を示した。これに対して、
図2における開始2より始まるフローについて以下説明する。移動送受電部200に搭載されたカメラ271若しくは熱センサ272により、計画外の障害物230を検知した場合には、その位置、種類(人又は物)、及び大きさが移動送受電部200の自律制御機能273に入力される(ステップS109)。この障害物230は電波の阻害要因となるものであり、給電が妨害される。
【0025】
次に、ステップS109で入力された障害物の情報について、それが人であるか物であるかを移動送受電部200に搭載された熱センサ272により、障害物230の温度分布を参照し判断する(ステップS110)。自律制御機能273は、障害物が人であると判断した場合には、送電の緊急停止指示を固定送電部210に送信するとともに、表示装置282に注意警報を発信する(ステップS111)。
【0026】
ステップS110で障害物が物と判断された場合には、予め構築された無線給電環境に対して、障害物を回避してより最適な無線給電環境に優先的に更新する割込み処理を実行する(ステップS108)。即ち割込み処理は、固定送電部210、移動送受電部200及び固定受電部220に搭載されたカメラ271、熱センサ272、自律制御機能273により、計画外の障害物に対処する無線給電経路を判断し、全体制御システム291へ変更許可要請信号を出す。全体制御システム291では、予め計画された現場作業への影響がないことを判断した上で、許可信号を即座に固定送電部210、移動送受電部200及び固定受電部220に発信し、障害物を回避できる最適な無線給電環境に変更する(
図1の記号G)。
【0027】
図1において、原子力発電所における無線給電システムにおいては、原子力発電所の中で無線給電を常態的に実施しているエリアにおいて、無線給電を乱す行為(動作)をしようとする人あるいは物などの障害物(電波阻害要因)230が発生した場合に、自律制御機能273はそれらの位置情報を無線給電エリアに予め点在させたセンサ類(カメラ、温度計など)により収集し、無線給電の通電状態(マイクロ波伝搬状態)を予めマッピングさせた表示デバイス(表示装置282)上に表示させる。これにより該当する無線給電エリア、及び中央制御室の作業員及び運転員に対して注意喚起を行う。更には無線給電エリアにおいて発生した障害物230を検知した結果、それら障害物230が送電及び受電環境を阻害する行為(動作)となり得ると全体制御システム291が判断した場合に、無線給電のための移動送受電部200、固定送電部210、固定受電部220に対して移動、回避、送信停止、停波、電力可変(送信電力制御)、位相制御、経路選択のいずれかを、障害物230の位置、種類(人あるいは物)、大きさ、電波強度の変化量等の情報を基に決定し、即時に最適化のための分析を実行する。これにより、無線給電(充電)の充電時間を確保し、給電及び充電の安定性を向上させ、即ち給電及び充電時間を向上させ。更に人体に電波が暴露することを回避することもできる。
【0028】
次に上記に列挙した障害物を検知した場合に取り得る制御の概要について以下に示す。
先ず電力可変(送信電力制御)について説明する。人でない障害物がマイクロ波伝搬経路上に発生した場合に、マイクロ波の出力を強めることにより対処できる場合には、障害物により減衰した電波強度を固定受電部220に到達したマイクロ波の電力値を計算することにより判定し、マイクロ波発振器及びマイクロ波増幅回路に対して減衰量を補うように入力電力を増加させ、搬送するマイクロ波の強度を高めるように制御する。但し、障害物に対して与える熱的影響が大きい場合には、増強できるマイクロ波強度には制限が生じるため、カメラ271及び熱センサ272からの障害物情報に基づき、予め入力された物性情報を参照して、制御可能なマイクロ波強度をその都度決定するものとする。
【0029】
次に位相制御について説明する。人でない障害物がマイクロ波伝搬経路上に発生した場合に、電力搬送するマイクロ波の位相を制御するものである。これにより給電エリアにおいて意図的に磁界(マイクロ波)強度が強い領域と弱い領域を作り出し、障害物に影響されない電力伝搬経路を生成する。これは送信電力制御と同様に障害物により減衰した電波強度を固定受電部220に到達したマイクロ波の電力値を計算することにより判定し、且つ障害物の位置又はマイクロ波による熱的影響の制限などの条件を組合せることで、位相制御が最適と判断した場合に選択するものである。
次に経路選択について説明する。人を含む障害物がマイクロ波伝搬経路上に発生した場合に、自律制御機能273が、予め設定した別のマイクロ波伝搬経路に変更する制御を行うものである。基本的には上記に示した制御では対応できない場合、即ち対象物に対して十分な給電が行えない場合、もしくは人が障害物となった場合に選択されるものである。
【0030】
このように自律制御機能273が、特に人体に対して健康的影響が出ない範囲の送信電力制御(マイクロ波発振器及びマイクロ波増幅回路に対して人体に対して健康的影響が出ないレベルのマイクロ波強度まで弱めるよう入力電力量を制限する制御)と位相制御(マイクロ波の位相を制御することで人体に対して健康的影響が出ないレベルの磁界(マイクロ波)強度領域を作り出す)を行う。これにより計画外の障害物が発生した場合においても給電対象機器が必要とする電力を確保しつつ、最適な給電環境への変更ができるようになる。
【0031】
本実施の形態における無線給電システムにおいては、無線給電を乱す行為(動作)をしようとする人あるいは物などの障害物が発生した場合に、それらの位置情報を無線給電エリアに予め点在させたセンサ類(カメラ、LIDAR(LIGHT DETECTION AND RANGING)、ミリ波レーダ、赤外線、湿度、温度など)により収集し、無線給電の通電状態(電波の伝搬状態)を予めマッピングさせた表示デバイス上に表示させる。これにより、該当する無線給電エリア及び中央制御室の作業員及び運転員に対して注意喚起を行うものである。
【0032】
以上のように、表示デバイスにより無線給電エリアの給電阻害防止に関する注意喚起を行う構成としたので、表示デバイスとしてスマートグラス(電波の見える化)、又はデジタルサイネージ(DIGITAL SIGNAGE)などを適用する事により、現場(無線給電エリア)の阻害要因に対して速やかに阻害行為(動作)を止めさせることができる。また阻害要因を検知するためにカメラ、センサ、人工知能、自律制御などを用い、無線給電の電波(ビーム)方向を適切な角度に変更することができる。更に無線給電の移動送受電部が自律的に最適な位置へ移動することができ、無電給電の安定性及び安全性を向上させることができる。
【0033】
本実施の形態が従来技術と異なる点は、本実施の形態においては、予め無線給電エリアの環境についての計画をシステムに入力することにより、時間帯ごとに最適で安全な給電環境を構築できる点である。更にはその都度、無線給電エリアの環境変化をセンサで検知することにより、計画外の環境に変化した場合でも、柔軟に最適な環境を自動的に構築できる。従って外的要因に対しても最適な無線給電環境を構築できる。
【0034】
尚、上記実施の形態では、予め計画されている無線給電エリア内の現場作業情報を入力することにより柔軟に最適な無線給電環境を構築できる。更には無線給電エリア内に計画外の障害物が発生した場合においても無線給電を維持できるよう給電環境を制御できる。従って安定的な無線給電が可能となる。また熱センサにより障害物が人であると判断された場合には、緊急の給電停止機能及び注意警報機能を備えている。従ってより安全性にも配慮されたシステムとなっている。
【0035】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2による原子力発電所における無線給電システムの構成を示す概略システム図、
図4は実施の形態2による原子力発電所における無線給電システムの動作を示すフローチャートである。本実施の形態においては、固定送電部210、固定受電部220、移動送受電部200に搭載するセンサとして、無線給電の電波強度を測定する電波強度センサ300を用いたものである。電波強度センサ300により、無線給電エリアにおける障害物を検知する。
なお移動送受電部200等には実施の形態1と同様自律制御機能が搭載されている。
図3に示すシステムにおいては、実施の形態1におけるカメラ若しくは熱センサが電波強度センサ300に変更されている。
【0036】
次に、実施の形態2の原子力発電所における無線給電システムの動作について、
図3、
図4を用いて説明する。実施の形態2による原子力発電所における無線給電システムの処理においては、計画外の障害物の検知を電波強度センサ300により行い、電波強度の減衰指数を参照することにより障害物の種類の判定を行う(ステップS400)。具体的には、固定送電部210、移動送受電部200及び固定受電部220に搭載された電波強度センサ300により観測された電波強度と、固定送電部210で設定されている電波強度の初期値を自律制御機能273により比較する。そして比較により求められた電波強度の減衰量に対して、予め入力端末281より入力された障害物になり得るものの物性情報に基づく電波強度の減衰指数を参照することで障害物を特定する。なお、ステップS400以外の動作に関しては
図2に示すものと同じであり、その説明を省略する。
【0037】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0038】
200 移動送受電部、210 固定送電部、220 固定受電部、
230 電波阻害要因、271 カメラ、272 センサ、273 自律制御機能、
281 入力端末、282 表示装置、300 電波強度センサ。