(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178758
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】縁石検出装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085784
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 優
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 諒子
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181MC16
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】縁石の誤検出を抑制する。
【解決手段】縁石を検出する縁石検出装置100であって、車両に搭載された距離センサ150により得られる点群情報を用いて、点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループについて予め定められた1種類以上の特徴量を算出し、算出された特徴量に基づき、特徴量に対応する縁石尤度であってグループについての縁石らしさを示す縁石尤度を算出する尤度算出部16と、各特徴量に対応する縁石尤度を統合して統合尤度を算出する統合尤度算出部18と、統合尤度が予め定められた閾値以上である場合には、グループは縁石であると判定し、統合尤度が予め定められた閾値よりも小さい場合には、グループは縁石ではないと判定する縁石判定部20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁石を検出する縁石検出装置(100)であって、
車両に搭載された距離センサ(150)により得られる点群情報を用いて、前記点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループについて予め定められた1種類以上の特徴量を算出し、算出された前記特徴量に基づき、前記特徴量に対応する縁石尤度であって前記グループについての縁石らしさを示す縁石尤度を算出する尤度算出部(16)と、
各前記特徴量に対応する前記縁石尤度を統合して統合尤度を算出する統合尤度算出部(18)と、
前記統合尤度が予め定められた閾値以上である場合には、前記グループは縁石であると判定し、前記統合尤度が予め定められた閾値よりも小さい場合には、前記グループは縁石ではないと判定する縁石判定部(20)と、
を備える、縁石検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の縁石検出装置において、
前記特徴量は、縁石の高さと、縁石の勾配と、縁石の幅と、縁石の面の法線と、縁石の曲率と、のうちの少なくともいずれか1つを含む、縁石検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の縁石検出装置において、
前記特徴量は、縁石の高さと、縁石の幅と、縁石の位置と、縁石の長さとを含み、
前記尤度算出部は、前記グループの高さが予め定められた高さ範囲内である場合には、前記高さ範囲外である場合に比べて高い前記縁石尤度を算出し、
前記グループの幅が予め定められた幅範囲内である場合には、前記幅範囲外である場合に比べて高い前記縁石尤度を算出し、
前記グループの位置が道路脇である場合には、前記道路脇外である場合に比べて高い前記縁石尤度を算出し、
前記グループの長さが道路に沿って予め定められた長さ以上連続する場合には、前記長さ以上連続しない場合に比べて高い前記縁石尤度を算出する、縁石検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の縁石検出装置において、
前記特徴量は、縁石の勾配を含み、
前記尤度算出部は、前記グループの勾配が、予め定められた勾配範囲内である場合には、前記勾配範囲外である場合に比べて高い前記縁石尤度を算出する、縁石検出装置。
【請求項5】
請求項2に記載の縁石検出装置において、
前記特徴量は、予め定められた形状の反射式縁石鋲の配置数をさらに含み、
前記尤度算出部は、前記グループから予め定められた第1の距離範囲内に、前記反射式縁石鋲が複数位置する場合には、前記反射式縁石鋲が複数位置しない場合に比べて高い前記縁石尤度を算出する、縁石検出装置。
【請求項6】
請求項2に記載の縁石検出装置において、
前記特徴量は、縁石の曲率を含み、
前記尤度算出部は、前記グループの曲率が、予め定められた曲率範囲内である場合には、前記曲率範囲外である場合に比べて高い前記縁石尤度を算出する、縁石検出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項の縁石検出装置において、
車両が走行または停止した履歴を示す情報であるプローブ情報を提供するデータセンター(200)から前記プローブ情報を取得する入出力インターフェイス(42)と、
前記縁石判定部は、前記グループは縁石ではないと判定した場合に、縁石ではないと判定された前記グループが示すものが縁石であるか否かを、前記プローブ情報を用いて再び判定する縁石再度判定部(22)と、をさらに備える、縁石検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の縁石検出装置において、
前記縁石再度判定部は、前記プローブ情報を用いて、縁石ではないと判定された2つの前記グループ間の切れ目に車両の走行履歴があると判定した場合には、前記統合尤度を増加させて判定し、
前記縁石再度判定部は、前記プローブ情報を用いて、縁石ではないと判定された2つの前記グループ間の切れ目に車両の走行履歴がないと判定した場合には、前記グループは縁石ではないと判定する、縁石検出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の縁石検出装置において、
前記縁石再度判定部は、前記プローブ情報を用いて、縁石ではないと判定された前記グループから予め定められた第2の距離範囲内に車両の走行履歴または停止履歴があると判定した場合には、前記統合尤度を増加させて判定し、
前記縁石再度判定部は、前記プローブ情報を用いて、縁石ではないと判定された前記グループから予め定められた第2の距離範囲内に、車両の走行履歴または停止履歴がないと判定した場合には、縁石ではないと判定する、縁石検出装置。
【請求項10】
請求項7に記載の縁石検出装置において、
前記縁石再度判定部は、前記プローブ情報を用いて、縁石ではないと判定された前記グループから予め定められた第3の距離範囲内に、道路標識のポールまたは電柱が存在すると判定した場合には、前記統合尤度を増加させて判定し、
前記縁石再度判定部は、前記プローブ情報を用いて、縁石ではないと判定された前記グループから予め定められた第3の距離範囲内に、道路標識のポールまたは電柱が存在しないと判定した場合には、縁石ではないと判定する、縁石検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縁石検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縁石を検出するための縁石検出装置が知られている。例えば、特許文献1の縁石検出装置では、車両の周辺環境を撮影した画像から候補領域を抽出するとともに、その候補領域の画像データの中から縁石候補を表す線分を抽出している。この縁石検出装置では、交差点付近に位置する上辺または下辺に傾斜部を有する形状の縁石の線分と、縁石候補を表す線分との間の距離等を基に計算した縁石確率が所定値を超える候補を縁石として検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の縁石検出装置では、撮像画像の候補領域から縁石候補を表す線分を抽出する際に、候補領域内に縁石以外の他の物に由来する線分が多い場合には縁石の誤検出が起こるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態として、縁石を検出する縁石検出装置(100)が提供される。この縁石検出装置は、車両に搭載された距離センサ(150)により得られる点群情報を用いて、前記点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループについて予め定められた1種類以上の特徴量を算出し、算出された前記特徴量に基づき、前記特徴量に対応する縁石尤度であって前記グループについての縁石らしさを示す縁石尤度を算出する尤度算出部(16)と、各前記特徴量に対応する前記縁石尤度を統合して統合尤度を算出する統合尤度算出部(18)と、前記統合尤度が予め定められた閾値以上である場合には、前記グループは縁石であると判定し、前記統合尤度が予め定められた閾値よりも小さい場合には、前記グループは縁石ではないと判定する縁石判定部(20)と、を備える。
【0007】
この形態の縁石検出装置によれば、車両に搭載された距離センサにより得られる点群情報を用いて、点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループについて予め定められた1種類以上の特徴量を算出し、算出された特徴量に基づき、特徴量に対応する縁石尤度であってグループについての縁石らしさを示す縁石尤度を算出する尤度算出部と、各特徴量に対応する縁石尤度を統合して統合尤度を算出する統合尤度算出部と、グループは縁石であるか否かを判定する縁石判定部とを備えるので、候補領域内に縁石以外の他の物に由来する線分が多い場合であっても、点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループを用いた算出および判定を行うことにより、縁石の誤検出を抑制できる。
【0008】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、縁石検出方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】縁石検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】縁石検出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】各特徴量ごとの尤度算出手順を示すフローチャートである。
【
図5】グループ間の切れ目を説明するための模式図である。
【
図6】第2実施形態の尤度算出の手順を示すフローチャートである。
【
図7】第3実施形態の尤度算出の手順を示すフローチャートである。
【
図8】反射式縁石鋲の配置の一例を説明するための説明図である。
【
図9】第4実施形態の尤度算出の手順を示すフローチャートである。
【
図11】第5実施形態の縁石検出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】縁石から所定の距離範囲内に存在する車両および道路標識のポール等を示す模式図である。
【
図13】第6実施形態の縁石検出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A-1.装置構成:
本開示の一実施形態としての
図1に示す縁石検出装置100は、車両に搭載されて縁石を検出する。縁石検出装置100は、距離センサ150により得られる点群情報を用いて縁石を検出する。具体的には後述する。本実施形態において、距離センサ150は、Lidar(Light Detection and Ranging)であり、車両に搭載されている。なお、
図1に示すデータセンター200は、後述するプローブ情報を提供する。
【0011】
図1に示すように、縁石検出装置100は、CPU10と、記憶部40と、入出力インターフェイス42とを備えるコンピュータとして構成されている。記憶部40には、縁石検出装置100の動作を制御する制御プログラムが予め記憶されている。CPU10は、記憶部40に予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、点群情報取得部12、特徴量算出部14、尤度算出部16、統合尤度算出部18、縁石判定部20、縁石再度判定部22として機能する。
【0012】
点群情報取得部12は、距離センサ150により得られた点群情報を取得する。「点群情報」とは、「物標」とも呼ばれ、Lidarからの射出光の反射光により特定される物体上の点を示す情報を意味する。取得された点群情報は、記憶部40に記憶される。
【0013】
特徴量算出部14は、記憶部40に記憶されている点群情報を用いて、かかる点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループ(以下、単に「グループ」と呼ぶ)について予め定められた4種類の特徴量を算出する。具体的には後述する。
【0014】
尤度算出部16は、特徴量算出部14によって算出された特徴量に基づき、特徴量に対応する縁石尤度を算出する。かかる縁石尤度は、グループについての縁石らしさを示す値である。
【0015】
統合尤度算出部18は、各特徴量に対応する縁石尤度を統合して統合尤度を算出する。縁石判定部20は、算出された統合尤度に応じて、グループは縁石であるか否かを判定する。
【0016】
縁石再度判定部22は、縁石判定部20によって縁石ではないと判定されたグループに対して、縁石であるか否かを再び判定する。具体的には後述する。
【0017】
入出力インターフェイス42は、
図1に示すデータセンターからプローブ情報を取得する。「プローブ情報」とは、車両が走行または停止した履歴を示す情報を意味する。
【0018】
A-2.縁石検出処理:
本実施形態において、距離センサ150であるLidarがレーザ光を照射し、かかるレーザ光が物体に当たり、かかる物体から反射波が返ってくると、
図2に示す縁石検出処理が実行される。レーザ光は、本実施形態において、100ミリ秒間隔で定期的に距離センサ150から照射される、なお、100ミリ秒間隔に限らず、任意の時間間隔でレーザ光が照射されてもよい。縁石検知処理とは、縁石検出装置100によって、グループが縁石であるか否かを検出するための処理である。なお、縁石検出装置100および距離センサ150を搭載した車両が走行している状態で、縁石検出処理が行われる。なお、「走行している状態」とは、車両が動いている場合に限らず、信号待ちの状態等も含まれる。
【0019】
点群情報取得部12は、距離センサ150により得られる点群情報を取得する(ステップS10)。取得された点群情報は、記憶部40に記憶される。
【0020】
特徴量算出部14は、記憶部40に記憶された点群情報に基づいて、三次元の座標位置(X,Y,Z)を定める(ステップS12)。
【0021】
特徴量算出部14は、点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループについて予め定められた4種類の特徴量を算出する(ステップS14)。第一実施形態において、かかる4種類の特徴量は、縁石の高さと、縁石の幅と、縁石の位置と、縁石の長さである。
【0022】
尤度算出部16は、ステップS14で算出された特徴量に基づき、かかる特徴量に対応する縁石尤度を算出する(ステップS16)。ステップS14およびステップS16についての具体的な処理については、各特徴量ごとの縁石尤度算出(ステップSR100)として、
図3を用いて説明する。
【0023】
図3に示すように、4種類の特徴量に対して、それぞれの縁石尤度の算出が並行して行われる。
図3に示す処理が、
図2に示すステップS14およびステップS16に対応する。
【0024】
縁石の高さについて、特徴量算出部14は、隣接する観測点のZ座標の値の差分が予め定められた閾値以下の観測点を同じグループとしてまとめる(ステップS102)。例えば、特徴量算出部14は、2つの隣接する観測点(X1,Y1,Z1)と観測点(X2,Y2,Z2)の高さのZ差分、言い換えると、|Z2-Z1|の値が予め定められた閾値以下となる観測点を同じグループとしてまとめる。
【0025】
特徴量算出部14は、グループの高さの平均を算出する(ステップS104)。
【0026】
尤度算出部16は、縁石の高さに対応する高さ尤度を算出する(ステップS106)。ここで、縁石の高さを示す数値と高さ尤度とを対応付けたテーブル(以後、単に「テーブル」と呼ぶ。)が事前に用意されており、かかるテーブルが予め記憶部40に記憶されている。テーブルに基づいて、グループの高さが予め定められた高さ範囲内である場合には、予め定められた高さ範囲外である場合に比べて高い縁石尤度が算出される。尤度算出部16は、かかるテーブルに基づいて、ステップS104で算出された高さ平均の値に対する高さ尤度を算出する。
【0027】
縁石の幅について、特徴量算出部14は、観測点の高さの差分、言い換えるとZの差分が0(ゼロ)である観測点を同じグループとしてまとめる(ステップS112)。例えば、
図4に示す縁石CS3の破線で囲まれた上面に含まれる複数の観測点は、高さを示すZの座標位置が等しいので、特徴量算出部14はかかる複数の観測点を同じグループとしてまとめる。
【0028】
特徴量算出部14は、グループの幅の平均を算出する(ステップS114)。
【0029】
尤度算出部16は、縁石の幅に対応する幅尤度を算出する(ステップS116)。ここで、ステップS106における高さ尤度算出と同様に、尤度算出部16は、予め記憶部40に記憶された幅尤度を示すテーブルに基づいて、幅尤度を算出する。かかるテーブルは、具体的には、縁石の幅を示す数値と、幅尤度とを対応付けたテーブルである。テーブルに基づいて、グループの幅が予め定められた幅範囲内である場合には、予め定められた幅範囲外である場合に比べて高い縁石尤度が算出される。
【0030】
縁石の位置について、特徴量算出部14は、隣接する観測点のZ座標の値の差分が予め定められた閾値以下の観測点を同じグループとしてまとめる(ステップS122)。ステップS122の詳細手順は、上述のステップS102と同じである。特徴量算出部14は、グループと道路の距離を算出する(ステップS124)。
【0031】
尤度算出部16は、縁石の位置に対応する位置尤度を算出する(ステップS126)。ここで、ステップS106における高さ尤度算出と同様に、尤度算出部16は、予め記憶部40に記憶された位置尤度を示すテーブルに基づいて、位置尤度を算出する。かかるテーブルは、具体的には、縁石と道路の距離を示す数値と、位置尤度とを対応付けたテーブルである。テーブルに基づいて、グループの位置が道路脇である場合には、道路脇外である場合に比べて高い縁石尤度が算出される。
【0032】
縁石の長さについて、特徴量算出部14は、隣接する観測点のZ座標の値の差分が予め定められた閾値以下の観測点を同じグループとしてまとめる(ステップS132)。ステップS132の詳細手順は、上述のステップS102と同じである。特徴量算出部14は、グループの長手方向の長さの平均を算出する(ステップS134)。なお、縁石の長さとは、縁石の長手方向の長さを意味し、例えば
図4において、縁石CSのY軸方向の長さを意味し、一般には道路に沿った長さを意味する。
【0033】
尤度算出部16は、縁石の長さに対応する長さ尤度を算出する(ステップS136)。ここで、ステップS106における高さ尤度算出と同様に、尤度算出部16は、予め記憶部40に記憶された長さ尤度を示すテーブルに基づいて、長さ尤度を算出する。かかるテーブルは、具体的には、縁石の長さを示す数値と、長さ尤度とを対応付けたテーブルである。テーブルに基づいて、グループの長さが道路に沿って予め定められた長さ以上連続する場合には、予め定められた長さ以上連続しない場合に比べて高い縁石尤度が算出される。
【0034】
図2に示すように、統合尤度算出部18は、算出された各特徴量ごとの縁石尤度を統合して統合尤度を算出する(ステップS18)。2つの特徴量の統合尤度LEは、LE=(A×B)/((A×B)+((1-A)×(1-B)))の演算式で算出される。ここで、Aは、一方の特徴量の縁石尤度を示し、Bは、他方の特徴量の縁石尤度を示す。3つの特徴量の統合尤度LE1は、2つの特徴量について算出された統合尤度LEを用いて、LE1=(LE×C)/((LE×C)+((1-LE)×(1-C)))の演算式で算出される。なお、Cは、3つ目の特徴量の縁石尤度を示す。4つ以上の特徴量の統合尤度についても、同様にして演算を繰り返すことにより算出される。
【0035】
縁石判定部20は、ステップS18で算出された統合尤度が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する(ステップS20)。統合尤度が予め定められた閾値以上であると判定された場合(ステップS20:Yes)、縁石判定部20は、グループは縁石であると判定する(ステップS22)。
【0036】
統合尤度が予め定められた閾値より小さいと判定された場合(ステップS20:No)、縁石判定部20は、グループは縁石ではないと判定する。入出力インターフェイス42は、データセンター200からプローブ情報を取得する(ステップS24)。取得されたプローブ情報は、記憶部40に記憶される。
【0037】
縁石再度判定部22は、プローブ情報を用いて対象とするグループが縁石であるか否かを再び判定する。具体的には、縁石再度判定部22は、グループ間の切れ目に車両の走行履歴があるか否かを判定する(ステップS26)。
図5に示すように、例えば、縁石再度判定部22は、プローブ情報を用いて、グループGAとグループGBとの間の切れ目CLに車両の走行履歴があるか否かを判定する。なお、
図5では、グループGAとグループGBが模式的に示されている。
【0038】
グループ間の切れ目に車両の走行履歴がないと判定された場合(ステップS26:No)、縁石再度判定部22は、グループは縁石ではないと判定する(ステップS28)。
【0039】
グループ間の切れ目に車両の走行履歴があると判定された場合(ステップS26:Yes)、縁石再度判定部22は、統合尤度を増加させる(ステップS30)。縁石再度判定部22は、ステップS30で増加された統合尤度が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する(ステップS32)。かかる統合尤度が予め定められた閾値よりも小さいと判定された場合(ステップS32:Nо)、縁石再度判定部22は、グループは縁石ではないと判定する(ステップS28)。
【0040】
ステップS30で増加された統合尤度が予め定められた閾値以上であると判定された場合(ステップS32:Yes)、上述のステップS22が実行され、グループは縁石であると判定される。
【0041】
縁石判定部20または縁石再度判定部22は、グループが縁石であるか否かの検出結果を出力し(ステップS34)、かかる検出結果は記憶部40に記憶される。処理はステップS10に戻る。
【0042】
以上説明した第1実施形態の縁石検出装置100によれば、車両に搭載された距離センサ150により得られる点群情報を用いて、点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループについて縁石の高さと、縁石の幅と、縁石の位置と、縁石の長さの特徴量を算出し、算出された特徴量に基づき、特徴量に対応する縁石尤度を算出する尤度算出部と、各特徴量に対応する縁石尤度を統合して統合尤度を算出する統合尤度算出部と、グループは縁石であるか否かを判定する縁石判定部とを備えるので、候補領域内に縁石以外の他の物に由来する線分が多い場合であっても、点群情報のうちの複数の点の情報からなるグループを用いた算出および判定を行うことにより、縁石の誤検出を抑制できる。
【0043】
また、縁石ではないと判定されたグループに対して、縁石再度判定部22が、データセンターから提供されるプローブ情報を用いて、縁石であるか否かを再び判定する。具体的には、縁石再度判定部22は、プローブ情報を用いて、グループ間の切れ目に走行履歴があるか否かを判定する。グループ間の切れ目に走行履歴があると判定された場合には、統合尤度が増加された上で、再度、グループは縁石であるか否かの判定がされる。このため、縁石再度判定部22は、グループ自身ではなく、グループ以外の走行履歴といったプローブ情報を用いて、グループが縁石であるか否かの判定を再度行うので、縁石の検出精度を向上できる。
【0044】
B.第2実施形態:
第2実施形態の縁石検出装置100の構成は、第1実施形態の縁石検出装置100の構成と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第1実施形態では、縁石の高さと、縁石の幅と、縁石の位置と、縁石の長さを特徴量としていたが、第2実施形態では、これらに加えて、縁石の勾配も特徴量とする。
【0045】
第2実施形態において、
図2に示す縁石検出処理手順は、「各特徴量ごとの尤度算出」(SR100)の対象となる特徴量として、縁石の勾配が追加される点においてのみ、第1実施形態の縁石処理手順と異なる。
【0046】
図6に示すフローは、上述のステップS102、ステップS112等と並行して実行される。特徴量算出部14は、隣接する観測点の勾配を算出する(ステップS142)。特徴量算出部14は、隣接する観測点の勾配の差分が予め定められた閾値以下である点を同じグループとしてまとめる(ステップS144)。特徴量算出部14は、グループの勾配の平均を算出する(ステップS146)。「勾配」とは、例えば、任意の2点を結ぶ直線と、重力方向に平行な軸によって形成される角度を意味する。
【0047】
尤度算出部16は、縁石の勾配に対応する勾配尤度を算出する(ステップS148)。ここで、第1実施形態のステップS106における高さ尤度算出と同様に、尤度算出部16は、予め記憶部40に記憶された勾配尤度を示すテーブルに基づいて、勾配尤度を算出する。かかるテーブルは、具体的には、縁石の勾配を示す数値と、勾配尤度とを対応付けたテーブルである。テーブルに基づいて、グループの勾配が、予め定められた勾配範囲内である場合には、勾配範囲外である場合に比べて高い縁石尤度が算出される。
【0048】
以上説明した第2実施形態の縁石検出装置100によれば、第1実施形態における特徴量に加えて、縁石の勾配も特徴量とする。このため、斜面形状を有するグループに対する縁石判定の精度を向上できる。
【0049】
C.第3実施形態:
第3実施形態の縁石検出装置100の構成は、第1実施形態の縁石検出装置100の構成と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第1実施形態では、縁石の高さと、縁石の幅と、縁石の位置と、縁石の長さを特徴量としていたが、第2実施形態では、これらに加えて、反射式縁石鋲の配置数も特徴量とする。
【0050】
第3実施形態において、
図2に示す縁石検出処理手順は、「各特徴量ごとの尤度算出」(SR100)の対象となる特徴量として、反射式縁石鋲の配置数が追加される点においてのみ、第1実施形態の縁石処理手順と異なる。
【0051】
図7に示すフローは、上述のステップS102、ステップS112等と並行して実行される。特徴量算出部14は、隣接する観測点のZ座標の値の差分が予め定められた閾値以下の観測点を同じグループとしてまとめる(ステップS152)。特徴量算出部14は、グループにおいて、反射強度の大きい領域数を算出する(ステップS154)。
図8に示すように、縁石CSのうち、縁石CS1,CS2の上面に反射式縁石鋲Ref1,Ref2がそれぞれ配置されている場合、縁石CS1と縁石CS2の上面からの反射強度は大きくなる。
図8の例では、2つの反射式縁石鋲Ref1,Ref2が配置されているが、長手方向に縁石がさらに連続している場合には、3つ以上の反射式縁石鋲が配置されていてもよい。
【0052】
図7に示すように、尤度算出部16は、反射式縁石鋲の配置数に対応する配置数尤度を算出する(ステップS156)。ここで、第1実施形態のステップS106における高さ尤度算出と同様に、尤度算出部16は、予め記憶部40に記憶された配置数尤度を示すテーブルに基づいて、配置数尤度を算出する。テーブルは、反射式縁石鋲の配置数を示す数値と、配置数尤度とを対応付けたテーブルである。かかるテーブルは、具体的には、反射式縁石鋲の配置数が複数であるか、複数でないかの2択で構成されている。グループから予め定められた第1の距離範囲内に、反射式縁石鋲が複数位置する場合には、反射式縁石鋲が複数位置しない場合に比べて高い縁石尤度が算出される。
【0053】
以上説明した第3実施形態の縁石検出装置100によれば、第1実施形態における特徴量に加えて、反射式縁石鋲の配置数も特徴量とする。このため、グループ自身の特徴量だけでなくグループに関連する物を特徴量として、グループに対する縁石判定の精度を向上できる。
【0054】
D.第4実施形態:
第4実施形態の縁石検出装置100の構成は、第1実施形態の縁石検出装置100の構成と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第1実施形態では、縁石の高さと、縁石の幅と、縁石の位置と、縁石の長さを特徴量としていたが、第4実施形態では、これらに加えて、縁石の曲率も特徴量とする。
【0055】
第4実施形態において、
図2に示す縁石検出処理手順は、「各特徴量ごとの尤度算出」(SR100)の対象となる特徴量として、縁石の曲率が追加される点においてのみ、第1実施形態の縁石処理手順と異なる。
【0056】
図9に示すフローは、上述のステップS102、ステップS112等と並行して実行される。特徴量算出部14は、隣接する観測点との曲率を算出する(ステップS162)。なお、縁石の曲率とは、縁石の曲率半径の逆数の値である。
図10に示すように、縁石CSのうち、縁石CS41~43と、縁石CS45と、縁石CS46は、曲率半径が無限大であるので、曲率は0(ゼロ)となる。他方、縁石CS44の曲率は、縁石CS44の曲率半径の逆数となる。
【0057】
図9に示すように、尤度算出部16は、縁石の曲率に対応する曲率尤度を算出する(ステップS164)。ここで、第1実施形態のステップS106における高さ尤度算出と同様に、尤度算出部16は、予め記憶部40に記憶された曲率尤度を示すテーブルに基づいて、曲率尤度を算出する。かかるテーブルは、具体的には、縁石の曲率を示す数値と、曲率尤度とを対応付けたテーブルである。グループの曲率が、予め定められた曲率範囲内である場合には、曲率範囲外である場合に比べて高い縁石尤度が算出される。
【0058】
以上説明した第4実施形態の縁石検出装置100によれば、第1実施形態における特徴量に加えて、縁石の曲率も特徴量とする。このため、
図10に示す縁石CS44のように、側面に局面を有するグループに対して、縁石判定の精度を向上できる。
【0059】
E.第5実施形態:
第5実施形態の縁石検出装置100の構成は、第1実施形態の縁石検出装置100の構成と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第1実施形態では、
図2に示すステップS26において、縁石ではないと判定されたグループ間の切れ目に走行履歴があるか否かが判定されていたが、これに代えて、第5実施形態では、縁石ではないと判定されたグループから第2の距離範囲内に車両の走行または停止履歴があるか否かが判定される。第5実施形態のその他の処理手順は、第1実施形態と同じである。
【0060】
図11に示すように、ステップS24の処理の後、縁石再度判定部22は、グループから予め定められた第2の距離範囲内に車両の走行履歴または停止履歴があるか否かを判定する(ステップS26A)。
図11に示す他のステップの処理については、第1実施形態と同様である。
【0061】
図12に示すように、走行または停止車両の側面から予め定められた第2の距離範囲内に、前後に延びる形状の構造物があると、縁石CSである可能性が高い。本実施形態において、グループから予め定められた第2の距離は1m(メートル)である。なお、第2の距離は1mに限らず、縁石と判定するのに妥当な任意の距離であってもよい。
【0062】
以上説明した第5実施形態の縁石検出装置100によれば、縁石ではないと判定されたグループから予め定められた第2の距離範囲内に車両の走行または停止履歴があるか否かが判定される。このため、縁石ではないと判定されたグループに対して、周囲の車両との距離を用いて、縁石再度判定部22が再度判定することによって、縁石の判定精度を向上できる。
【0063】
F.第6実施形態:
第6実施形態の縁石検出装置100の構成は、第1実施形態の縁石検出装置100の構成と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第1実施形態では、
図2に示すステップS26において、縁石ではないと判定されたグループ間の切れ目に走行履歴があるか否かが判定されていたが、これに代えて、第6実施形態では、縁石ではないと判定されたグループから第3の距離範囲内に道路の標識のポール、または、電柱があるか否かが判定される。第6実施形態のその他の処理手順は、第1実施形態と同じである。
【0064】
図12に示すように、ステップS24の処理の後、縁石再度判定部22は、グループから予め定められた第3の距離範囲内に道路標識のポール等があるか否かを判定する(ステップS26B)。
図13に示す他のステップの処理については、第1実施形態と同様である。
【0065】
図12に示すように、道路標識のポールPL、または、電柱HPから予め定められた第3の距離範囲内に、前後に延びる形状の構造物が存在すると、縁石CSである可能性が高い。本実施形態において、グループから予め定められた第3の距離は1~5m(メートル)である。なお、第3の距離は1~5mに限らず、縁石と判定するのに妥当な任意の距離であってもよい。
【0066】
以上説明した第6実施形態の縁石検出装置100によれば、縁石ではないと判定されたグループから予め定められた第3の距離範囲内に道路標識のポールPL、または、電柱HPがあるか否かが判定される。このため、縁石ではないと判定されたグループに対して、周囲の構造物との距離を用いて、縁石再度判定部22が再度判定することによって、縁石の判定精度を向上できる。
【0067】
G.他の実施形態:
(G1)本実施形態の縁石検出装置100において、尤度算出部16は、複数種類の特徴量を算出していたが、1種類の特徴量を算出してもよい。すなわち、1種類以上の特徴量であればよい。
【0068】
(G2)本実施形態の縁石検出装置100において、車両に搭載された距離センサ150は、Lidarであったが、Lidarに限らず他の任意の種類の距離センサであってもよい。
【0069】
(G3)本実施形態の縁石検出装置100は、車両に搭載されていたが車両に搭載されていなくてもよい。例えば、外部の管理センター等に備えられていてもよい。
【0070】
(G4)本実施形態の縁石検出装置100において、縁石再度判定部22はなくてもよい。具体的には、データセンター200から取得したプローブ情報を用いて、縁石再度判定部22は、グループが縁石であるか否かを再び判定していたが、かかる再判定をしなくてもよい。
【0071】
(G5)本実施形態の縁石検出装置100において、特徴量として、縁石の面の法線を含んでもよい。観測点を含む面の法線ベクトルを用いて、尤度算出部16は、法線尤度を算出してもよい。
【0072】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0073】
本開示に記載の縁石検出装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の縁石検出装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の縁石検出装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
16…尤度算出部、18…統合尤度算出部、20…縁石判定部、100…縁石検出装置、150…距離センサ